説明

携帯端末用デバイス測定装置

【課題】携帯端末用デバイスの消費電力低減モードに対応した状態で測定ができるようにする。
【解決手段】期間判別手段30は、波形整形器27の出力信号を検出回路31で受けて、携帯端末用の被測定デバイス1からシリアルデータ信号Rdが所定のビットレートで出力されている有信号期間と、シリアルデータ信号Rdが出力されていない無信号期間とで、を有信号期間と前記無信号期間とで異なる電圧の直流の信号Vxを出力する。比較器32は、検出回路31の出力信号Vxと所定のしきい値Vrとを比較して、有信号期間と無信号期間とを判別する。そして、有信号期間と判別されている間は、スイッチ33を閉じて信号線路に対する終端抵抗25による終端状態を保持し、無信号期間と判別されている間は、スイッチ33を開いて終端抵抗25による終端状態を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末用デバイスの動作を把握するための装置に関し、特に、携帯端末用デバイスの消費電力低減モードに対応した状態で測定ができるようにするための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機に代表される携帯端末は、年々高速化され、且つそれに伴う消費電力の増加を低減するための技術も盛んに研究されている。
【0003】
このような携帯端末に用いられるデバイスは、年々集積化が進んでおり、現在では、電力増幅器やアンテナ切換部を含むフロントエンド部と、ベースバンド信号で変調された高周波の信号を生成してフロントエンド部に与え、フロントエンド部で受信した高周波の信号を復調してベースバンド信号を求めるRF信号処理部と、音声やデータなどの情報を含むベースバンド信号を生成してRF信号処理部に与え、RF信号処理部からのベースバンド信号から音声やデータを再生するベースバンド処理部とに別れており、これらのうち、RF信号処理部やベースバンド処理部は専用IC化が進んでいる。
【0004】
このような端末用デバイスを開発してその動作を評価する場合、対象となるデハイスに試験用の信号を与え、その信号に対してデバイスから出力される信号を解析する必要がある。
【0005】
このような目的で使用される端末用デバイス測定装置の一例を、本願出願人は特許文献1に開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−17131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、携帯用デバイスのRF信号処理部から出力されるベースバンド信号は、一般的に高速のシリアルデータ信号であり、このシリアルデータ信号をデータベース処理部との間で通信しており、これらの処理部を構成するデバイスは高速伝送に適した所定の出力インピーダンス(例えば50Ω)に設計されており、その信号をそのインピーダンスに等しい抵抗で終端して波形整形器等に入力する構成となっている。
【0008】
また、携帯端末用デバイスのRF信号処理部のベースバンドの出力には、一般的に0ボルト以外の直流電圧が定常的に出力されており、その直流電圧を基準にしてハイ、ローのデータ信号が出力される。
【0009】
したがって、シリアルデータ信号の有無にかかわらず、上記終端抵抗には定常的に直流電圧が印加されてそれによる電力消費がなされている。近年では、携帯端末機の消費電力低減のために、この終端抵抗で消費される電力までも低減対象とされており、終端抵抗をオンにして通信を行う状態(有信号期間)と、終端抵抗をオフにして通信を行わない状態(無信号期間)とを非常に短い時間で切り替えるようにされている。
【0010】
このため、携帯端末用デバイスの測定においても、このような状態の切り替えに対応して測定を行うことが求められている。
【0011】
本発明は、このような要求に応えるためになされたものであり、携帯端末用デバイスの消費電力低減モードに対応した状態で測定ができる携帯端末用デバイス測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明の携帯端末用デバイス測定装置は、
携帯端末用の被測定デバイス(1)から出力されるシリアルデータ信号を受けるための終端抵抗(25、25A、25B)と、
前記信号線路から受けたシリアルデータ信号に対する解析処理を行うデータ解析部(28)とを有する携帯端末用デバイス測定装置において、
前記被測定デバイスからシリアルデータ信号が所定のビットレートで出力されている有信号期間と、シリアルデータ信号が出力されていない無信号期間とを判別する期間判別手段(30)と、
前記期間判別手段で有信号期間と判別されている間は、前記信号線路に対する前記終端抵抗による終端状態を保持し、前記期間判別手段で無信号期間と判別されている間は、前記信号線路に対する前記終端抵抗による終端状態を解除する終端切換手段(33、33A、33B)とを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項2の携帯端末用デバイス測定装置は、請求項1の携帯端末用デバイス測定装置において、
前記信号線路の末端に接続され、該信号線路から出力されたシリアルデータ信号を受けて波形整形し、該波形整形されたシリアルデータ信号を前記データ解析部へ出力する波形整形器(27)を有し、
前記期間判別手段は、
前記波形整形器の出力信号を受けて、前記有信号期間と前記無信号期間とで異なる電圧の直流の信号を出力する検出回路(31)と、
前記検出回路の出力信号と所定のしきい値とを比較して、前記有信号期間とぜん無信号期間とを判別する比較器(32)とにより構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明の携帯端末用デバイス測定装置は、携帯端末用の被測定デバイスからシリアルデータ信号が所定のビットレートで出力されている有信号期間と、シリアルデータ信号が出力されていない無信号期間とを判別し、有信号期間と判別されている間は、信号線路に対する終端抵抗による終端状態を保持し、無信号期間と判別されている間は、信号線路に対する終端抵抗による終端状態を解除するようにしているから、無信号期間の終端抵抗の無駄な電力消費が発生しない動作モードでの測定が行え、低消費電力化された被測定デバイスの測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態の構成図
【図2】本発明の実施形態の動作説明図
【図3】本発明の別の実施形態の要部構成図
【図4】本発明の別の実施形態の要部構成図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した携帯端末用デバイス測定装置20の全体構成を示している。
【0017】
図1において、試験信号発生部21は、携帯端末用の被測定デバイス1の試験に必要な高周波信号Srfを生成して被測定デバイス1の高周波信号入力ポート1aに与える。
【0018】
また、この被測定デバイス1は前記RF信号処理部を含むものであって、図示しない電源供給を受け、制御部22からの試験に必要な制御信号Cを制御信号ポート1bで受け、入力された高周波信号Srfに対する周波数変換処理およびベースバンドのシリアルデータ信号Rdへの復調処理を、制御信号Cに基づいて行う。このシリアルデータ信号Rdは、8B/10Bフレームと呼ばれる高速のシリアルデータ信号である。
【0019】
この被測定デバイス1の出力ポート1cは、高周波伝送に適した所定の出力インピーダンス(例えば50Ω)を持つように設計され、その出力インピーダンスと等しい伝送インピーダンスの信号線路Lに接続され、さらにその信号線路Lの末端には前記伝送インピーダンスと等しい抵抗値の終端抵抗25と波形整形器27が接続されている。
【0020】
したがって、被測定デバイス1の出力ポート1cから出力されたシリアルデータ信号Rdは、信号線路Lを介して終端抵抗25および波形整形器27に供給される。なお、被測定デバイス1の出力ポート1cには、前記したように、0ボルト以外の直流電圧が定常的に出力されており、その直流電圧を基準にしてハイ、ローのデータ信号が出力される。
【0021】
波形整形器27は、高速の飽和型アンプ等で構成され、前記伝送インピーダンスに対して高い入力インピーダンスを有しているので、その不整合による反射成分の発生を抑制するために終端抵抗25が設けられている。
【0022】
ただし、終端抵抗25の他端側は後述するスイッチ33を介して接地されており、スイッチ33が閉じているとき終端が有効な状態となり、スイッチ33が開いているときには終端が無効な状態となる。
【0023】
波形整形器27によって波形整形されたシリアルデータ信号Rd′は、データ解析部28に入力され、例えばクロック再生処理やパラレルデータ変換処理(DEMUX)等を受けて性能評価に必要な解析処理(例えば信号解析やビット誤り検査など)がなされる。
【0024】
また、波形整形器27によって波形整形されたシリアルデータ信号Rd′は、期間判別手段30に入力されている。
【0025】
期間判定手段30は、被測定デバイス1からシリアルデータ信号Rdが所定のビットレートで連続的に出力されている有信号期間Tonと、シリアルデータ信号Rdが出力されていない無信号期間Toffとを判別するものである。
【0026】
この期間判定手段30の構成としては種々のものが考えられるが、この実施形態では、高速なシリアルデータ信号に対する処理遅れを防ぐために、波形整形器27から出力されたシリアルデータ信号Rd′を受けてダイオード検波し、その出力を平滑して(または抵抗やコイルによって直流平均値を検出して)、有信号期間Tonと無信号期間Toffとで異なる電圧の直流の信号を出力する検出回路31と、検出回路31の出力信号Vxと予め設定された所定のしきい値Vrとを比較し、有信号期間Tonと無信号期間Toffとの判別を行う高速コンパレータからなる比較器32とにより構成している。なお、検出回路31は直流平均値出力型、ピーク値出力型のいずれであってもよい。
【0027】
比較器32の出力Vcは、この実施形態の終端切換手段としてのスイッチ33に入力される。スイッチ33は、例えば高速アナログスイッチからなり、期間判別手段30で有信号期間Tonと判別されている間(Vcがハイレベルの期間とする)は閉じて、終端抵抗25の他端を接地させ、信号線路Lに対する終端抵抗25による終端状態を保持する。
【0028】
また、期間判別手段30で無信号期間offと判別されている間(Vcがローレベルの期間とする)は開いて、終端抵抗25の他端と接地との間を切断し、信号線路Lに対する終端抵抗25による終端状態を解除する。
【0029】
図2は、上記構成の携帯端末用デバイス測定装置20の動作例を示すものであり、例えば被測定デバイス1から図2の(a)のような8B/10Bフレームのシリアルデータ信号Rdが出力された場合、EOT(End of Transmission )と呼ばれるフレーム最後尾のデータの出力が終わるまでは、「1」と「0」がほぼ同じ確率で発生するマーク率1/2の状態となるので、検出回路31が直流平均値出力型とすれば、その出力信号Vxは、図2の(b)のように、データのハイレベル電圧V(H)とローレベル電圧V(L)のほぼ中間値V(M)となる。
【0030】
ここで、前記したしきい値Vrは、前記中間値V(M)とローレベル電圧V(L)との間に設定されている。したがって、この間、比較器32の出力Vcは図2の(c)のようにハイレベルが保持され、スイッチ33が閉じた状態が維持され、信号線路Lに対する終端抵抗25による終端状態が続く。
【0031】
そして、フレームの最後尾のデータの出力が終了してから、次のフレームの先頭信号が入力されるまでの期間(ストール期間という)は無信号状態となるので、検出回路31の出力信号Vxはローレベル電圧V(L)に等しくなる。
【0032】
したがって、比較器32の出力Vcが直ちにローレベルに変化し、スイッチ33が開いて、信号線路Lに対する終端抵抗25による終端状態が解除される。
【0033】
この状態では、終端抵抗25による電力消費はなく、被測定デバイス1は消費電力低減モードとなっている。
【0034】
そして、次のフレームの先頭信号(例えばプリペアと呼ばれる「1」が連続する信号)が入力されると、検出回路31の出力信号Vxはハイレベル電圧V(H)に等しくなるため、比較器32の出力Vcが直ちにハイレベルに変化し、スイッチ33が閉じて、信号線路Lに対する終端抵抗25による終端状態に戻る。
【0035】
以後プリペアに続くデータ信号が入力されている間は、検出回路31の出力信号Vxが前記中間値V(M)になっているから、終端抵抗25による終端状態が保持されることになる。
【0036】
このように、本発明の実施形態によれば、無信号期間Toffの終端抵抗25の無駄な電力消費が発生しない動作モードを模擬することができ、低消費電力モードで動作する携帯端末用デバイスの測定が可能となる。
【0037】
前記実施形態では、説明が容易なように被測定デバイス1の出力および波形整形器27がシングルエンド型の場合で説明したが、実際の測定装置を構成する場合には、高速インタフェイス用の差動標準I/O規格であるLVDS(Low voltage differential
signaling)、LVPECL(Low Voltage Positive Emitter Coupled
Logic)、PCML(Pseudo Current Mode Logic)等の方式を用いることが望ましい。
【0038】
図3は、LVDSの規格に対応した差動100Ω終端型のものであり、被測定デバイス1および波形整形器27を差動型とし、被測定デバイス1から互いに反転したシリアルデータ信号Rd(+)、Rd(−)を出力ポート1c、1c′を介して信号線路L1、L2に出力し、その末端に終端抵抗25A、25Bの一端と波形整形器27が接続されている構成であり、この場合でも本発明を同様に適用できる。
【0039】
この場合、波形整形器27の出力Rd(+)′、Rd(−)′の一方(ここではRd(+)′とする)を期間判別手段30に入力し、期間判別手段30によって有信号期間Tonと判定されている間は、例えばハイレベルの出力信号Vcによりスイッチ33を閉じ、二つ終端抵抗25A、25Bの他端同士が接続されて信号線路L1、L2間を100Ωで終端する。
【0040】
また、無信号期間Toffと判定されている間は、例えばローレベルの出力信号Vcによってスイッチ33を開き、二つ終端抵抗25A、25Bの他端同士を切り離して終端状態を解除する。この場合、終端抵抗25A、25Bによる電力消費はなく、携帯端末用デバイス1は消費電力低減モードとなっている。
【0041】
また、上記した検出波回路31と、高速コンパレータによる比較器32および高速アナログスイッチによるスイッチ33とを用いることで、実際の有信号期間から無信号期間への切り換わりや無信号期間から有信号期間への切り換わりに対して遅れ時間4〜5ns以内で終端状態の解除および復帰が行えることが確認されており、高速な8B/10Bフレームの間の無信号期間に十分対応する高速性が得られている。
【0042】
なお、ここでは100Ωの終端を二つ終端抵抗25A、25Bの直列接続で実現しているが、100Ωの単一の終端抵抗を信号線路L1、L2間にスイッチで接続させてもよい。
【0043】
図4は、LVPECL、PCMLの規格に対応したシングル50Ω終端型のものであり、信号線路L1、L2の末端に50Ωの終端抵抗25A、25Bの一端をそれぞれ接続し、それぞれの他端側を、スイッチ33A、33Bを介して規格に応じた所定の終端電位Vsに接続する構成としている。
【0044】
この構成の場合でも、前記同様に、波形整形器27の出力Rd(+)′、Rd(−)′の一方(ここではRd(+)′とする)を期間判別手段30に入力し、期間判別手段30によって有信号期間Tonと判定されている間は、例えばハイレベルの出力信号Vcによりスイッチ33A、33Bを閉じ、二つ終端抵抗25A、25Bの他端を終端電位Vsに接続して終端状態を保持する。
【0045】
また、無信号期間Toffと判定されている間は、例えばローレベルの出力信号Vcによってスイッチ33A、33Bを開き、二つ終端抵抗25A、25Bの他端を終端電位Vsから切り離して終端状態を解除する。
【0046】
なお、上記実施形態では、波形整形器27の出力信号を期間判別手段30に入力して無信号期間と有信号期間を判別していたが、波形整形器27に入力される信号を期間判別手段30に入力して無信号期間と有信号期間を判別することも可能である。
【符号の説明】
【0047】
1……被測定デバイス、20……携帯端末用デバイス測定装置、21……試験信号発生部、22……制御部、25、25A、25B……終端抵抗、27……波形整形器、28……データ解析部、30……期間判定手段、31……検出回路、32……比較器、33、33A、33B……スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末用の被測定デバイス(1)から出力されるシリアルデータ信号を受ける信号線路を終端するための終端抵抗(25、25A、25B)と、
前記信号線路から受けたシリアルデータ信号に対する解析処理を行うデータ解析部(28)とを有する携帯端末用デバイス測定装置において、
前記被測定デバイスからシリアルデータ信号が所定のビットレートで出力されている有信号期間と、シリアルデータ信号が出力されていない無信号期間とを判別する期間判別手段(30)と、
前記期間判別手段で有信号期間と判別されている間は、前記信号線路に対する前記終端抵抗による終端状態を保持し、前記期間判別手段で無信号期間と判別されている間は、前記信号線路に対する前記終端抵抗による終端状態を解除する終端切換手段(33、33A、33B)とを備えたことを特徴とする携帯端末用デバイス測定装置。
【請求項2】
前記信号線路の末端に接続され、該信号線路から出力されたシリアルデータ信号を受けて波形整形し、該波形整形されたシリアルデータ信号を前記データ解析部へ出力する波形整形器(27)を有し、
前記期間判別手段は、
前記波形整形器の出力信号を受けて、前記有信号期間と前記無信号期間とで異なる電圧の直流の信号を出力する検出回路(31)と、
前記検出回路の出力信号と所定のしきい値とを比較して、前記有信号期間と前記無信号期間とを判別する比較器(32)とにより構成されていることを特徴とする請求項1の携帯端末用デバイス測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−49968(P2011−49968A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198249(P2009−198249)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】