説明

携帯端末装置およびこれを備えた運転評価システム

【課題】カメラ等の周辺状況認識機能を有する携帯端末装置を利用し、携帯端末装置の機能と車載装置の機能とを連携させることにより車両側のコストを抑えつつ、運転評価性能の向上を図る。
【解決手段】車両とその周辺の障害物との関係を示す周辺状況を認識する携帯端末装置1の前方カメラ4と、前方カメラ4により認識された周辺状況下における自車両のドライバの運転操作に関する実運転情報を車両側から取得する状況照合部9と、前方カメラ4により認識された周辺状況と類似する状況下において模範とすべき模範ドライバの運転操作に関する模範運転操作情報を保持する記憶部7とを備え、状況照合部9により取得された実運転操作情報と、記憶部7に保持された模範運転操作情報とに基づいて、自車両のドライバの運転操作のレベルを状況照合部9により評価する機能を有する携帯端末装置1を利用し、携帯端末装置1の機能と車載装置2の機能を連携させることにより車両側のコストを抑えつつ、運転評価性能の向上を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、カメラ機能を有する携帯端末装置およびこれを備えた運転評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などの携帯端末装置の分野において、携帯端末装置の高機能化が進み、例えば、音楽の視聴や動画の撮影を携帯端末上で行うことができるのは勿論のこと、各種ソフトをインターネットからダウンロードし実行するなど、それまで困難であった種々のアプリケーションを実行することができるようになった。
【0003】
この種の携帯端末装置を、車両ドライバの運転操作の補助に利用することが提案されている。例えば、携帯端末装置と車載装置との連携を容易ならしめるべく、車両内に持ち込まれた近距離無線通信機能を有する携帯端末装置を車載装置が検知し、車載装置がこれに対してペアリング処理を自動的に実施し、携帯端末装置が所有するアプリケーションを車両システム上で容易に実行できるようにしたものがある(特許文献1、2)。一方、カーナビゲーションシステムで使用される地図情報などに基づいて、各地点での模範的運転操作と自車両の運転操作とを比較・評価する技術も提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−130669(段落0018〜0020、図1参照)
【特許文献2】特開2010−199718(段落0017〜0020等、図1参照)
【特許文献3】特開2009−294250(段落0035〜0037、図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献3の運転評価システムでは、カーナビゲーションシステムなどに保存されている地図情報のみで道路状況を特定し、模範的運転操作と運転者の運転操作を比較し評価しているため、刻々と変化する道路状況に対応して的確な評価を行うことは困難である。
【0006】
さらに、上記評価装置では、運転者の運転操作(アクセル開度、ブレーキ踏込み度、舵角)が模範的運転操作と一定以上ずれると警告ブザー等で注意喚起するものの、運転の振り返りおよび運転者に対する教示効果を向上できるにとどまる。
【0007】
一方、車両の低燃費化の技術も進み、低燃費運転モード(いわゆるECOモード)搭載車両においては、ドライバの急激なアクセルの踏込みに対して一律に加速を緩やかにする制御を行うことにより低燃費化を実現しているが、周囲の状況と連動した制御を行っていないため、そもそも不要なアクセルの踏込みについては対応できない。そこで、車両にカメラ等を搭載することにより、周辺道路状況を的確に把握することを可能にし、運転操作・評価装置の性能の向上を図ることが考えられるが、カメラ等の搭載によりコストの上昇を招くという新たな不具合が生じる。このようなコストアップを抑えるために、上記した特許文献1,2のように、高機能携帯端末装置を車載装置の機能と有効に連携させ、車両側のコストを抑えつつ、車両周辺の障害物に対する運転操作を的確に評価させたいという要望がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、カメラ等の周辺状況認識機能を有する携帯端末装置を利用し、携帯端末の機能と車載装置の機能とを連携させることにより車両側のコストを抑えつつ、運転評価性能の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、本発明の携帯端末装置では、車両とその周辺の障害物との関係を示す周辺状況を認識する周辺状況認識手段と、前記周辺状況認識手段により認識された周辺状況下における当該車両のドライバの運転操作に関する実運転情報を車両側から取得する取得手段と、前記周辺状況認識手段により認識された周辺状況と類似する状況下において模範とすべき模範ドライバの運転操作に関する模範運転操作情報を保持する保持手段と、前記取得手段により取得された前記実運転操作情報と、前記保持された前記模範運転操作情報とに基づいて、当該車両のドライバの運転操作のレベルを評価する評価手段とを備えたことを特徴とする(請求項1)。
【0010】
また、本発明の運転評価システムは、上記の携帯端末装置を備えた運転評価システムにおいて、当該車両のドライバの前記実運転操作情報を前記携帯端末装置へ出力する出力手段を有する車載装置と、種々の周辺状況ごとの前記模範運転操作情報を記憶する記憶手段を有するサーバ装置とを備え、前記携帯端末装置の前記取得手段は、前記車載装置から当該ドライバの前記実運転操作情報を取得し、前記携帯端末装置の前記保持手段は、前記模範運転操作情報を通信により受信して保持することを特徴とする(請求項2)。
【発明の効果】
【0011】
請求項1にかかる発明によれば、例えばCCDカメラなどの周辺状況認識手段により、車両周辺の障害物と自車両との位置関係や相対速度などの周辺状況が認識され、認識された周辺状況下における実運転操作情報が車両側から取得され、保持手段により、その周辺状況と類似する状況下における模範運転操作情報が保持され、これらの取得された実運転操作情報と保持された模範運転操作情報とに基づき、評価手段により、当該車両のドライバーの運転操作のレベルが評価されるため、車両側には周辺状況認識手段や保持手段を設ける必要がない。
【0012】
したがって、車両周辺に障害物などが存在する周辺状況下において、実運転操作情報とその状況に類似する状況下における模範運転操作情報に基づいて運転評価をするに当たり、車両側に周辺状況認識手段や保持手段を設ける必要がなく、車両の低コスト化を図ることができる。
【0013】
また、携帯端末装置の機能と車載装置の機能を連携させ、実際に認識された周辺状況での実運転操作を模範運転操作により評価するため、例えば、周辺状況にそぐわない不要なアクセルの踏込みであるか否かの評価も可能であり、ある周辺状況において不要なアクセルの踏込みがあれば、携帯端末装置上で注意喚起を行うことによって、車両の低燃費化に寄与することが可能である。このように、周辺状況に対応した的確な運転評価が可能であり、より精度の高い運転評価装置を提供することができる。
【0014】
また、請求項2にかかる発明によれば、実運転操作情報を携帯端末装置に出力する出力手段を有する車載装置、および、模範運転操作情報を記憶する手段を有するサーバ装置を運転評価システムとして備えるため、携帯端末装置とサーバ装置との間で通信により模範運転操作情報のやりとりを行えばよく、車両にサーバ装置を設ける必要がなく、車両のコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態の運転評価システムのブロック図である。
【図2】データベースの一例の説明図である。
【図3】図1の動作説明図である。
【図4】図1動作の説明図である。
【図5】図1のシステムの動作説明用フローチャートである。
【図6】図1のシステムの動作説明用フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態について、図1〜4を参照して説明する。なお、図1は本発明における運転評価システムにおける端末装置と車両のブロック図、図2はデータベースの一例の説明図、図3は周辺状況のモデル化の一例の説明図、図4は注意喚起例の説明図、図5、6は動作説明用のフローチャートである。
【0017】
(構成)
図1に示すように、本発明にかかる一実施形態における運転評価システムは、携帯端末装置1、車載装置2、サーバ装置3から構成される。
【0018】
携帯端末装置1は、カメラ機能や通信機能を有した携帯端末装置であり、例えば、携帯電話やスマートフォンなどが挙げられる。なお、前方カメラ4が車両の前方方向の周辺状況を認識できるよう、携帯端末装置1はやや下向きに車両側に設置される。
【0019】
車載装置2は、自車両のステアリング操作角を検出する舵角センサ2a、アクセルペダルの踏込み量を検出するアクセルペダルセンサ2b、ブレーキペダルの踏込み量を検出するブレーキペダルセンサ2c、左右ウインカの点灯の有無を検出するウインカセンサ2d、ライトの点灯の有無を検出するライトセンサ2e、自車両の車速を検出する車速センサ2dを備え、これらの各センサ2a〜2fから舵角、アクセル踏込み量、ブレーキ踏込み量、ウインカ点灯の有無、ライトの点灯の有無、車速の情報を携帯端末装置1の状況照合部9に供給する。携帯端末装置1の状況照合部9はこれらの情報を、現在の周辺状況における自車両にドライバの実運転操作情報として取得する(本発明における取得手段)。このとき、有線、無線のどちらで取得するようにしてもかまわない。
【0020】
サーバ装置3は、種々の状況下における模範とすべき模範ドライバの運転操作に関する情報(模範運転操作情報)をデータベースに記憶し、それらの情報を携帯端末装置1に送信する。このとき、サーバ装置3のデータベースは、例えば図2に示すように、種々の前方状況に対応付けられた条件1,2を満たす優良ドライバ行動を、模範運転操作情報として記憶している。また、サーバ装置3は、携帯端末装置1の前方カメラ4より認識された周辺状況下における車両の実運転操作情報を携帯端末装置1の通信部11を介して受信し、受信した実運転操作情報を模範運転操作情報とすることが妥当かどうかを判断し、妥当であれば模範運転操作情報としてその周辺状況の情報とともにデータベースに登録する。
【0021】
上記模範ドライバとは、例えば、図2に示すように、衝突可能性のある状況下でアクセルの踏込みを行わない者、周辺が暗い状況下ではライトを点灯する者、走行レーンに応じた適切なウインカ点灯を行う者、自車両が道路渋滞状況下で最後尾につくときはハザード点灯を行う者など、つまり、周囲の状況に応じた適切な操作ができる者をいう。また、急ブレーキ、急発進、急ハンドル、急加速といった無駄な操作は適切な運転操作とはいえないため、無駄な運転操作が少ない者も該当する。また、無駄な操作が少ない運転は、車両の燃費が良いと考えられることから、燃費上位者が模範ドライバともいえる。そして、これらのドライバの運転操作に関する情報が模範運転操作情報である。
【0022】
前方カメラ4は、車両前方の周辺状況を認識するためのカメラであり、本発明の周辺状況認識手段に相当する。これにより、自車両前方の障害物、前方車両、対向車両と自車両との距離、位置関係、相対速度等を認識する。
【0023】
表示画面5は、通常、静止画や動画等の種々の映像を表示し、後述する状況照合部9による実運転操作情報と模範運転操作情報との比較結果が大きく異なる場合は、自車両12のドライバに対して運転操作の補正を促すために注意メッセージを表示する。このとき、表示画面5には注意メッセージとともに周辺状況を併せて表示するようにしてもよい。
【0024】
スピーカー6は、通常、音声や音楽等を出力し、後述する状況照合部9による実運転操作情報と模範運転操作情報との比較結果が大きく異なる場合は、警告音をならすなどして自車両12ドライバに注意喚起を行う。
【0025】
記憶手段7(本発明における保持手段)は、ハードディスク、ICメモリなどから構成され、運転評価に必要なデータベース化された種々の周辺状況下における模範とすべき模範ドライバの運転操作に関する情報(模範運転操作情報)を記憶する。この場合、サーバ装置3に保存された模範運転操作情報を通信部11を介して受信して記憶する。
【0026】
映像解析部8は、上記した前方カメラ4で得られた撮影映像を画像処理によりモデル化する。例えば、図3に示すように、1車線道路を北方向に走行する自車両12と、これと同じ車線を走行する前方車両13と、自車両12の対向車線を南方向に走行する対向車両14がある場合に、前方カメラ4の撮影映像に画像処理を加えることで、走行車両が1車線であることが分かるとともに他車両13,14の自車両12に対する位置関係のほか、他車両13、14との相対速度と車間距離が分かり、これらの情報をもとに自車両12の周辺状況をモデル化する。またモデル化された情報を後述する状況照合部9に送る。
【0027】
状況照合部9は、上記した携帯端末装置1の前方カメラ4により認識された周辺状況下において、車載装置2から取得した自車両12ドライバの運転操作に関する情報(実運転操作情報)とその周辺状況と類似する状況下における模範運転操作情報とを比較する。例えば、自車両12の前方カメラ4が同一車線上の前方からきた車両を撮影したとき、その撮影映像を映像解析部8で画像処理することにより、前方車両が接近していると判断すると、前方車両13と自車両12との車間距離と相対速度からその前方車両13と自車両12との衝突時間(TTC)を算出する。
そして、前方車両13が接近していることから、前方車両13に関する周辺状況が図2の最上段の「前方車両接近」という前方状況の分類に該当すると判断し、さらにTTCが5秒以内であるときは条件1を満たし、かつ、自車両12のドライバがアクセルを踏込んでいるならば、図2の最上段の前方状況における「アクセル踏込みしない」という優良ドライバの行動、つまり模範運転操作情報とは異なると判断する。このように前方カメラ4による現在の周辺状況と、これに類似する状況における優良ドライバの行動をサーバ装置3から模範運転操作情報として取得して記憶部7に保持し、実運転操作情報と模範運転操作情報とを比較する。
【0028】
管理部10は、後述する状況照合に必要な前方カメラ4により認識された周辺状況と類似する状況下における模範運転操作情報がすでに記憶部7に存在するか否かを判断し、存在する場合はその情報を記憶部7から読み出して、状況照合部9に送るとともに、通信により受信したサーバ装置3に保存された模範運転操作情報を記憶部7に格納する。
【0029】
通信部11は、携帯端末装置1とサーバ装置3との間で情報のやり取りを行う送受信機能を有し、サーバ装置3に保存された模範運転操作情報を受信するとともに、前方カメラ4や車載装置2の各センサ2a〜2fから受信した各情報等により認識された周辺状況下での実運転操作情報をサーバ装置3に送信する。
【0030】
次に、ドライバに対する注意喚起をどのように行うかの具体例について図4を参照して説明する。例えば、図4(a)に示すように、自車両12に設置された前方カメラ4により、前方を撮影し、空に該当する領域の明るさと対向車両14のライト点灯とを検知して周辺状況を認識する。そして、優良ドライバの周辺の明るさによるライト点灯の有無に関するサーバ装置3からの模範運転操作情報をもとに、自車両12のライトが非点灯である場合はライト点灯を促すべく注意喚起を行う。
【0031】
また、図4(b)に示すように、自車両12に設置された携帯端末装置1の前方カメラ4により自車両12の走行車線(右折専用レーンを示す標識15)が撮影されれば、走行中の右折専用レーンの停止線16および停止線16までの距離を検知して周辺状況を認識する。そして、右折専用レーンを走行する場合の優良ドライバのウインカ点灯に関するサーバ装置3からの模範運転操作情報をもとに、自車両12のウインカが非点灯である場合にはウインカ点灯を促すべく注意喚起を行う。
【0032】
さらに、図4(c)に示すように、自車両12に設置された携帯端末装置1の前方カメラ4により、自車両12と同一の走行車線および隣接する走行車線の前方車両13を撮影し、ハザードランプを点灯している両走行車線上の各前方車両13と自車両12との車間距離および相対車速等を検知して周辺状況として「渋滞」を認識する。そして、自車両12が減速により、渋滞中の前方車両13の走行状況に追従するために、渋滞状況下において優良ドライバがハザードランプを一定時間(5秒程度)点灯するという行動に関するサーバ装置3からの模範運転操作情報をもとに、自車両12がハザードランプ非点灯である場合には点灯を促すべく注意喚起を行う。
【0033】
(システム動作)
次に、本発明における一実施形態の運転評価システムの制御動作について、図5のフローチャートを参照して説明する。
【0034】
まず、ステップS1において、携帯端末装置1の前方カメラ4により周辺映像を取得し、映像解析部8により自車両12とその周辺の障害物(前方車両13等を含む)との関係を認識し、その周辺状況をモデル化する(ステップS2)。これにより、後述するように模範運転操作情報との比較が可能になる。
【0035】
次に、上記モデル化された周辺状況と類似する状況下における模範運転操作情報が携帯端末装置1内の記憶部7に記憶されているか否かを判定し(ステップS3)、この判定結果がNOであれば、サーバ装置3に上記モデル化された周辺状況と類似する類似状況下における模範運転操作情報が存在しているか否かを判定する(ステップS8)。この判定結果がYESであれば、管理部10はサーバ装置3から類似状況下における模範運転操作情報を通信部11を介して取得(ダウンロード)して記憶部7に記憶保持する(ステップS9)。こうすることで、記憶部7に類似状況の模範運転操作情報がない場合であっても、サーバ装置3内に保存された蓄積あるいは更新された多くの情報に基づいて運転評価が可能になる。
【0036】
一方、ステップS8の判定結果がNOであれば、携帯端末装置1の映像解析部8により認識された自車両12の周辺状況と、車載装置2から取得したそのときの実運転操作情報を通信部11を介してサーバ装置3に送信してアップロードし(ステップS10)、運転評価を終了する。このとき、サーバ装置3において、これらの情報が優良ドライバの行動である模範運転操作情報に当たるか否かを判定し、当たる場合にはこれらの情報を模範運転操作情報としてサーバ装置3に保存するが、この処理手順については後に詳述する。
【0037】
次に、ステップS3をYESで通過するか、ステップS8をYESで通過しステップS9によりダウンロードが完了すれば、ステップS4にて、自車両12のドライバの現在の周辺状況における実運転操作情報を車載装置2から取得し、実運転操作情報と模範運転操作情報とを比較する(ステップS5)。この比較は、携帯端末装置1の状況照合部9にて行う。
【0038】
次に、上記実運転操作情報と模範運転操作情報との比較に基づいて、実運転操作が不適切な操作であるか否かを判定する(ステップS6)。この判定がYESであれば、表示画面5およびスピーカー6によりドライバへの注意喚起を行い(ステップS7)、判定がNOであれば注意喚起を行わず運転評価を終了する。
【0039】
上記したステップS10へのアップロード処理の手順について、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0040】
上記のように、前方カメラ4により認識された周辺状況と類似する状況の模範運転操作情報が携帯端末装置1とサーバ装置3のどちらにも存在しない場合があるため、図6に示すように、前方カメラ4により認識された周辺状況の情報とそのときの実運転操作情報が携帯端末装置1からサーバ装置3に送信され、サーバ装置3がこれを受信し(ステップS11)、その情報発信元のドライバの運転操作に関する情報が模範運転操作情報に該当するか否かを判定する(ステップS12)。この判定結果がYESであれば、ステップS13にて、その周辺状況情報と実運転操作情報をサーバ装置3に保存し、NOであれば、保存は行わず判定処理を終了する。
【0041】
模範運転操作情報に該当するか否かの判定は、例えば、情報発信元のドライバが、それまで模範運転操作情報に登録されていない状況下において、急ブレーキや急発進、急加速、急ハンドルなどの無駄な操作が所定回数より少ないか否かで判定すればよい。この所定回数を示す回数情報は、予めサーバ装置3に保存されている。
【0042】
このように、前方カメラ4により認識された周辺状況と類似する類似情報の模範運転操作情報が携帯端末装置1およびサーバ装置3のいずれにも存在しない場合であっても、新たな模範運転操作情報をサーバ装置3に随時保存することにより、運転評価ができないという事態が回避される。
【0043】
したがって、上記実施形態によれば、携帯端末装置1は、前方カメラ4の撮影映像から自車両12の周辺状況を認識し、認識した周辺状況下における実運転操作情報を車載装置2から取得し、その周辺状況と類似する状況下における模範運転操作情報を記憶部7により保持し、取得した実運転操作情報と保持した模範運転操作情報に基づき、自車両12のドライバの運転操作のレベルを評価するため、車両側にはカメラや記憶部を設ける必要がなく、車両側のコストを抑えることができる。
【0044】
また、前方カメラ4により自車両12とその周辺に存在する他車両13,14などの障害物との関係を示す周辺状況を認識した上で運転評価を行うため、従来のカーナビゲーション機能を利用して、地図情報にもとづき周辺状況を認識し運転評価するのと比較して、より精度の高い運転評価を行うことが可能になる。
【0045】
さらに、模範運転操作情報を記憶する手段を有するサーバ装置3を運転評価システムとして車両外部に備えるため、携帯端末装置1とサーバ装置3との間で通信により模範運転操作情報のやりとりを行えばよく、自車両12にはサーバ装置を設ける必要がなく、車両側のコストをよりいっそう抑えることができる。
【0046】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0047】
例えば、上記した実施形態における優良ドライバの情報を燃費上位者の情報に置き換えたシステム構成としてもよい。例えば、前方カメラ4により認識された周辺状況とその周辺状況下におけるアクセルペダルセンサ2bによるアクセル踏込み量から燃費を導出する手段を車載装置2に設け、当該アクセル踏込み量に関する情報と記憶部7またはサーバ装置3に保持された現在の周辺状況と類似する状況下における燃費上位者のアクセル踏み込み量に関する情報とを比較し、その比較によるずれが燃費における一定の閾値以上の差になる場合には、ドライバに注意喚起を行う。こうすることで、周辺状況にそぐわない不要なアクセルの踏込みであるか否かの評価を行うことができ、いわゆるエコ運転である低燃費走行に寄与することが可能になる。
【0048】
なお、上記した実施形態では、模範運転操作情報が携帯端末装置1にもサーバ装置3にも存在しない場合に、認識された周辺状況の情報とその周辺状況下での実運転操作情報をサーバ装置3が通信により受信し、サーバ装置3によりそれらの情報が優良ドライバのものであるか否かを判定したが、この判定を携帯端末装置1で行うようにしてもよい。
【0049】
また、上記実施形態における携帯端末装置1の周辺状況認識手段はカメラで構成されているが、周辺状況を認識できるものであればいずれの手段を選択してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1… 携帯端末装置
2… 車載装置
3… サーバ装置
4… 前方カメラ(周辺認識手段)
7… 記憶部(保持手段)
9… 状況照合部(取得手段、評価手段)
11… 通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両とその周辺の障害物との関係を示す周辺状況を認識する周辺状況認識手段と、
前記周辺状況認識手段により認識された周辺状況下における当該車両のドライバの運転操作に関する実運転情報を車両側から取得する取得手段と、
前記周辺状況認識手段により認識された周辺状況と類似する状況下において模範とすべき模範ドライバの運転操作に関する模範運転操作情報を保持する保持手段と、
前記取得手段により取得された前記実運転操作情報と、前記保持された前記模範運転操作情報とに基づいて、当該車両のドライバの運転操作のレベルを評価する評価手段とを備えた携帯端末装置。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯端末装置を備えた運転評価システムにおいて、
当該車両のドライバの前記実運転操作情報を前記携帯端末装置へ出力する出力手段を有する車載装置と、
種々の周辺状況ごとの前記模範運転操作情報を記憶する記憶手段を有するサーバ装置とを備え、
前記携帯端末装置の前記取得手段は、前記車載装置から当該ドライバの前記実運転操作情報を取得し前記携帯端末装置の前記保持手段は、前記模範運転操作情報を通信により受信して保持することを特徴とする運転評価システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−256138(P2012−256138A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127840(P2011−127840)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】