携帯端末装置およびプログラム
【課題】携帯端末装置を操作するときの操作性と利便性の向上を図る。
【解決手段】センサが検出した情報に基づいて、ユーザの把持状態および操作状態を示す持ち手パタンを認識する持ち手パタン認識部16と、前記タッチパネルディスプレイに対するユーザによるスライド操作の軌跡を検出するスライド軌跡検出部13と、前記検出したスライド操作の軌跡およびスライド操作の方向を判別する判別領域に基づいて、ユーザによるスライド操作の方向を判別するスライド方向判別部18と、前記認識した持ち手パタン、前記判別したスライド操作の方向および画像を表示するアプリケーションの特性に応じて、前記タッチパネルディスプレイに表示している画像のスライド量を補正するスライド量補正部20と、を備える。
【解決手段】センサが検出した情報に基づいて、ユーザの把持状態および操作状態を示す持ち手パタンを認識する持ち手パタン認識部16と、前記タッチパネルディスプレイに対するユーザによるスライド操作の軌跡を検出するスライド軌跡検出部13と、前記検出したスライド操作の軌跡およびスライド操作の方向を判別する判別領域に基づいて、ユーザによるスライド操作の方向を判別するスライド方向判別部18と、前記認識した持ち手パタン、前記判別したスライド操作の方向および画像を表示するアプリケーションの特性に応じて、前記タッチパネルディスプレイに表示している画像のスライド量を補正するスライド量補正部20と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルディスプレイに対するユーザのスライド操作を検出し、検出したスライド操作に対応してタッチパネルディスプレイに表示している画像をスライドさせる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タッチパネルディスプレイを備えた情報端末装置が知られている。この情報端末装置を操作する場面には、片手に情報端末装置を持ち、もう一方の片手に荷物を持っている場合がある。このように片手が使えない状態においても、操作を行なう状況が多く見受けられる。また、上記の情報端末装置では、上下左右に指をスライドさせることによって入力を行なうスライド操作や、スライド操作の組み合わせに対し、画面拡大やショートカットなどの機能を割り当てるジェスチャー入力操作という操作方法が提案されている。
【0003】
特許文献1には、タッチ操作できる装置において、従来のフリック入力でのタッチ位置とスライド方向に文字を割り当てる方法に加えて、スライド操作距離も考慮した文字入力装置が開示されている。また、特許文献2には、タッチ操作できる装置において、スライド操作から取得した座標値から、それがジェスチャー入力動作なのか文字入力動作なのか判別して、入力動作に割り当てられたコマンドを返すという装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、携帯電話の片手操作を対象とし、ディスプレイ上の斜線をなぞる動作からユーザの持ち手を判別し、メニューやスクロールバーを持ち手側にずらすという装置が開示されている。また、特許文献4には、持ち手判別画面で、持ち手の左右を判別してHOME画面のメニューランチャーを持ち手側にずらすという装置が開示されている。
【0005】
これらの特許文献以外にも、片手動作を対象に持ち手を判別し、GUI(Graphical User Interface)を変更するものが数多く提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−034289号公報
【特許文献2】特開2010−231480号公報
【特許文献3】特開2011−070489号公報
【特許文献4】特開2009−294725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1および2に開示されている技術では、あるジェスチャー入力動作に対し、持ち方に関わらず、同一の動作および同一の操作量であるため、持ち方によっては操作しにくいジェスチャー入力動作が生じる。また、上記特許文献3および4では、片手操作での持ち手の左右を判別して、メニューやスクロールバーなどのGUI部品の表示位置を物理的にずらすまでにとどまっている。このため、片手操作時にGUI部品に指が届きやすくはなるが、メニューを上下方向にずらしたり、コンテンツをスクロールしたりするときの操作性については、考慮されていない。
【0008】
図10は、ユーザによるスライド操作の軌跡の例を示す図である。ユーザが同じスライド操作を行なうときでも、持ち手によって、指の軌跡は異なる傾向を示す。例えば右手での片手操作で、下から上へスライド操作したとき、親指が真上に動くのではなく、画面の上方向に動くにつれて利き手側に寄った円弧状の軌跡を描く傾向にある。また、右手での片手操作で、左から右へのスライド(持ち手方向へのスライド)と比較し、右から左へのスライド(持ち手と反対方向へのスライド)は行ないにくいため、スライドの軌跡は短くなる傾向がある。左手での片手操作では上記と反対の傾向を示し、両手操作では比較的直線的な軌跡を示す傾向がある。
【0009】
このように、同一の操作に対しても、持ち手によりスライド操作軌跡に違いが生じるため、片手での操作の場合、ユーザが上下操作を行なうつもりでも実際は円弧状に指が動いているため意図に反して横に動いてしまうことがあり得る。例えば、図11に示すように、基本的には上下方向の操作であるが、左右方向へのスライド距離が閾値を超えると画面が切り替わるアプリケーションでは、ユーザが上下操作を行なっているつもりなのに、左右操作と誤認識されて画面が切り替わってしまうことがあり、操作性や利便性が大きく低下する。また左右操作では、持ち手と反対方向へのスライド操作で、持ち手方向へのスライド操作量と同じだけ行なうのは多少負担がある。
【0010】
同様に、web閲覧用のアプリケーションのように、画面が切り替わる閾値がなく、左右方向にスライド操作可能なアプリケーションでは、上下にスライドするつもりが、左右に画面が動いてしまうことがある。また、従来では、システムが反応する上下の移動量はY方向のみしか考慮していないため、ユーザが行なったスライド操作のための指の移動量と比較し、システムがコンテンツを上下に動かした移動量が小さくなる。
【0011】
また、図12に示すように、web閲覧用のアプリケーションなどにおいて、スライド操作の組み合わせに対し、前の画面、次の画面、拡大などのコマンドを割り当てるジェスチャー操作というものがあるが、マルチタッチやある特定の動きは片手で行ないにくい動作がある。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ユーザによるスライド操作の方向を判別し、持ち手パタン、スライド操作の方向および画像を表示するアプリケーションの特性に応じて、タッチパネルディスプレイに表示している画像のスライド量を補正することによって、携帯端末装置を片手で操作するときの操作性と利便性の向上を図ることができる携帯端末装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の携帯端末装置は、タッチパネルディスプレイに対するユーザのスライド操作を検出し、前記検出したスライド操作に対応して前記タッチパネルディスプレイに表示している画像をスライドさせる携帯端末装置であって、センサが検出した情報に基づいて、ユーザの把持状態および操作状態を示す持ち手パタンを認識する持ち手パタン認識部と、前記タッチパネルディスプレイに対するユーザによるスライド操作の軌跡を検出するスライド軌跡検出部と、前記検出したスライド操作の軌跡およびスライド操作の方向を判別する判別領域に基づいて、ユーザによるスライド操作の方向を判別するスライド方向判別部と、前記認識した持ち手パタン、前記判別したスライド操作の方向および画像を表示するアプリケーションの特性に応じて、前記タッチパネルディスプレイに表示している画像のスライド量を補正するスライド量補正部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
このように、認識した持ち手パタン、判別したスライド操作の方向および画像を表示するアプリケーションの特性に応じて、タッチパネルディスプレイに表示している画像のスライド量を補正するので、携帯端末装置を片手で操作するときの操作性と利便性の向上を図ることが可能となる。
【0015】
(2)また、本発明の携帯端末装置は、前記判別領域を前記持ち手パタン毎に記憶する判別領域記憶部を更に備えることを特徴とする。
【0016】
このように、判別領域を持ち手パタン毎に記憶するので、検出した持ち手パタンに対応する判別領域を読み出すことでスライド方向を迅速に判別することが可能となる。
【0017】
(3)また、本発明の携帯端末装置において、前記判別領域は、ユーザが前記タッチパネルディスプレイにタッチした点の座標を原点とする平面上で、前記原点を通る少なくとも2つの曲線または直線でスライド方向毎に定義されることを特徴とする。
【0018】
このように、判別領域は、ユーザが前記タッチパネルディスプレイにタッチした点の座標を原点とする平面上で、前記原点を通る少なくとも2つの曲線または直線でスライド方向毎に定義されるので、ユーザの意図するスライド方向を判別することが可能となる。
【0019】
(4)また、本発明の携帯端末装置において、前記アプリケーションは、前記タッチパネルディスプレイに対する上下方向のスライド操作によって画像を上下にスライドさせる一方、前記タッチパネルディスプレイに対する左右方向のスライド操作によって表示する画像を切り替える特性を有し、前記スライド量補正部は、左右方向のスライド操作によって表示する画像を切り替えるための閾値を変更することを特徴とする。
【0020】
このように、アプリケーションが、タッチパネルディスプレイに対する上下方向のスライド操作によって画像を上下にスライドさせる一方、タッチパネルディスプレイに対する左右方向のスライド操作によって表示する画像を切り替える特性を有する場合に、左右方向のスライド操作によって表示する画像を切り替えるための閾値を変更するので、ユーザの意図するスライド方向を判別することが可能となる。
【0021】
(5)また、本発明の携帯端末装置において、前記アプリケーションは、前記タッチパネルディスプレイに対する上下左右方向のスライド操作によって画像を上下左右にスライドさせる特性を有し、前記スライド量補正部は、左右方向のスライド操作に対し、前記スライド軌跡検出部が検出可能な最小の軌跡の大きさを変更することによって、前記タッチパネルディスプレイに表示している画像のスライド量を補正することを特徴とする。
【0022】
このように、アプリケーションが、タッチパネルディスプレイに対する上下左右方向のスライド操作によって画像を上下左右にスライドさせる特性を有する場合に、左右方向のスライド操作に対し、スライド軌跡検出部が検出可能な最小の軌跡の大きさを変更することによって、前記タッチパネルディスプレイに表示している画像のスライド量を補正するので、ユーザの意図するスライド方向を判別することが可能となる。
【0023】
(6)また、本発明の携帯端末装置において、前記持ち手パタンは、左手把持および左手操作、右手把持および右手操作、右手把持および左手操作、左手把持および右手操作または両手把持および両手操作のいずれかであることを特徴とする。
【0024】
この構成により、携帯端末装置を操作するときの操作性と利便性の向上を図ることが可能となる。
【0025】
(7)また、本発明のプログラムは、タッチパネルディスプレイに対するユーザのスライド操作を検出し、前記検出したスライド操作に対応して前記タッチパネルディスプレイに表示している画像をスライドさせる携帯端末装置のプログラムであって、センサが検出した情報に基づいて、ユーザの把持状態および操作状態を示す持ち手パタンを認識する処理と、前記タッチパネルディスプレイに対するユーザによるスライド操作の軌跡を検出する処理と、前記検出したスライド操作の軌跡およびスライド操作の方向を判別する判別領域に基づいて、ユーザによるスライド操作の方向を判別する処理と、前記認識した持ち手パタン、前記判別したスライド操作の方向および画像を表示するアプリケーションの特性に応じて、前記タッチパネルディスプレイに表示している画像のスライド量を補正する処理と、の一連の処理を、コンピュータに実行させることを特徴とする。
【0026】
このように、認識した持ち手パタン、判別したスライド操作の方向および画像を表示するアプリケーションの特性に応じて、タッチパネルディスプレイに表示している画像のスライド量を補正するので、携帯端末装置を片手で操作するときの操作性と利便性の向上を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、認識した持ち手パタン、判別したスライド操作の方向および画像を表示するアプリケーションの特性に応じて、タッチパネルディスプレイに表示している画像のスライド量を補正するので、携帯端末装置を片手で操作するときの操作性と利便性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A】ユーザによる携帯端末装置の持ち手と打ち手を示す図である。
【図1B】ユーザによる携帯端末装置の持ち手と打ち手を示す図である。
【図1C】ユーザによる携帯端末装置の持ち手と打ち手を示す図である。
【図1D】ユーザによる携帯端末装置の持ち手と打ち手を示す図である。
【図1E】ユーザによる携帯端末装置の持ち手と打ち手を示す図である。
【図2】本実施形態に係る携帯端末装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】携帯端末装置の画面が遷移する例を示す図である。
【図4】携帯端末装置の画面が遷移する例を示す図である。
【図5】携帯端末装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】暗証番号入力画面の例を示す図である。
【図7】持ち手パタンに応じた判別領域の一例を示す図である。
【図8】持ち手パタンに応じた判別領域の一例を示す図である。
【図9】持ち手パタンに応じた判別領域の一例を示す図である。
【図10】ユーザによるスライド操作の軌跡の例を示す図である。
【図11】スライド操作の軌跡の一例を示す図である。
【図12】ジェスチャー操作の割り当ての一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1A〜図1Eは、ユーザによる携帯端末装置の持ち手と打ち手を示す図である。本実施形態に係る携帯端末装置は、このようなユーザによる持ち手と打ち手(以下、単に「持ち手パタン」と呼称する。)を判別し、持ち手パタン毎に、スライド操作を検出するための判別領域および入力された移動量に対してシステムが反応する移動量の補正係数を変更する機能を備えている。
【0030】
図2は、本実施形態に係る携帯端末装置の概略構成を示すブロック図である。携帯端末装置10は、表示部11で画像を表示する。また、表示部11は、ユーザに対し種々の操作画面を表示する。表示部11の水平方向をX方向、垂直方向をY方向と記す。タッチパネル入力部12は、タッチパネルでユーザからの入力を受け付ける。そして、ユーザがタッチしたときのタッチ座標情報を取得する。スライド軌跡検出部13は、ユーザがタッチパネルを押してから離すまでのスライド軌跡を検出し、記憶する。加速度センサ14は、ユーザによる操作時の加速度を検出する。
【0031】
持ち手パタン記憶部15は、持ち手パタンと加速度を対応付けて記憶する。持ち手パタン認識部16は、ユーザの持ち手パタンを認識する。図1A〜図1Eに示したように、持ち手パタンには、左持ち左打ちおよび右持ち右打ち、左持ち右打ち、右持ち左打ち、両持ち両打ちの5パタンがある。それぞれを、持ち手パタンa,b,c,d,eとする。このうち操作パタンaとbは前記述べた片手操作に相当する。上記持ち手パタン毎に、ユーザの入力動作による携帯端末装置のゆれや傾きなどの物理的動作などは異なる特徴を示す。そのため、これらの情報を用いることで、パタン認識により持ち手パタンを判別することが可能である。
【0032】
判別領域記憶部17は、持ち手パタンに対して、スライド操作で各方向を検出する領域を記憶する。スライド方向判別部18は、判別領域記憶部17とスライド軌跡検出部13の情報より、ユーザのスライド操作が、どの方向へのスライド操作であるのかを検出する。スライド量補正値記憶部19は、各持ち手パタンに対して、スライド量の補正値を記憶する。スライド量補正部20は、スライド量を補正する。以上の各構成要素は、制御バス21によって接続され、相互に信号の送受信をすることができように構成されている。
【0033】
持ち手パタン認識部16による持ち手パタンを判別するタイミングは、ユーザが携帯端末装置10を手に取り、所望の操作をする前が好ましい。本実施形態では、携帯端末装置10の暗証番号入力により、パスワードロック解除操作のタイミングで持ち手パタンを判別し、その後、スライド操作およびジェスチャー入力を行なう利用シーンを例示する。
【0034】
図3および図4は、携帯端末装置の画面が遷移する例を示す図である。図3に示すアプリケーションでは、上下方向へのスライド操作を主とし、左右方向へのスライド操作は、画面を切り替えるために用いる。図4に示すアプリケーションでは、web閲覧用のアプリケーションのように、上下方向のみならず、左右方向へのスライド操作が可能である。
【0035】
次に、以上のように構成された本実施形態に係る携帯端末装置の動作について説明する。図5は、携帯端末装置の動作を示すフローチャートである。まず、ユーザから暗証番号の入力を受け付ける(ステップS1)。ここでは、図6に示すような暗証番号入力画面を表示し、ユーザに暗証番号を入力させる。次に、加速度情報およびタッチ情報を取得し、持ち手パタンを判別する(ステップS2)。
【0036】
ステップS1における暗証番号入力時に、暗証番号入力中の加速度およびタッチ情報を取得する。持ち手パタンの判別は、入力完了時、加速度情報を元に、持ち手パタン認識部16により、持ち手パタンを判別する。持ち手パタン認識部16は、加速度情報を入力値として、上述した操作パタンa〜eを出力する。つまり、ユーザが入力動作中の加速度情報を元に、ユーザの持ち手パタンが、左持ち左打ちおよび右持ち右打ち、左持ち右打ち、右持ち左打ち、両持ち両打ちの5パタンのうち、どれかを判別する(ステップS3)。加速度の代わりに、タッチ情報または、加速度およびタッチ情報の両情報または、両情報に加えてそれらの情報から算出される値を入力値としてもよい。判別には、SVM、k近傍法など、広く利用されている識別器を利用する。あるいは、操作パタンを選択させるGUIをユーザに提示し、どれかをユーザに選択させる識別部であってもよい。本発明において、持ち手パタン認識部16は、ユーザが入力動作中のユーザの持ち手パタンが、左持ち左打ちおよび右持ち右打ち、左持ち右打ち、右持ち左打ち、両持ち両打ちの5パタンのうち、どれかを識別するものであれば、その構成、詳細実施方法は、問わない。例えば、ユーザが持ち手パタンを示す情報を入力する構成を採っても良いし、筐体に圧力センサを設け、持ち手パタンを検出する構成を採っても良い。また、その他の物理センサ、例えば、温度センサを設けて、持ち手パタンを検出するように構成しても良い。
【0037】
次に、スライド方向検出のスライド領域および入力されたスライド量に対してシステムが反応する移動量を変更する。すなわち、ステップS4において、スライド操作検出領域、操作量補正係数を決定する。次に、入力待ちの状態となり(ステップS5)、入力を検知すると(ステップS6)、スライド軌跡を記憶する(ステップS7)。次に、スライド操作量を検出し(ステップS8)、スライド操作量を補正し(ステップS9)、動作制御を行なう(ステップS10)。そして、表示変更を行ない(ステップS11)、ステップS5に遷移する。
【0038】
(A)上下操作がメインで、左右操作で画面を切り替えるアプリケーションの場合
例として、前述の通り、図3に示したようなアプリケーションが挙げられる。このようなアプリケーションでは、左右の画面の切り替えは左右のスライド距離がある閾値を超えると切り替わる。片手での操作の場合、ユーザが上下操作を行なうつもりでも、実際は円弧状に指が動いているため、左右と誤認識し画面が切り替わる可能性がある。
【0039】
図7〜図9は、持ち手パタンに応じた判別領域の一例を示す図である。図7〜図9にしめすように、ユーザによるスライド操作方向と距離の条件を変更する。判別領域の曲線は2次関数的でも良いし、楕円および円の一部の形状でもよく、下に凸でない関数であれば良い。
【0040】
例えば、2次関数で図7の持ち手パタンaの曲線部F2を表す。
【数1】
【0041】
直線部F1を、
【数2】
とするとΔy>F1,Δy>F2,Δy>δyの時に上方向へのスライド操作と判別する。
【0042】
ユーザが行なったスライド量と比較し、システムが反応する移動量は、図11に示したように小さくなりユーザの直感とは異なる。システムが反応する移動量Δy’を、
【数3】
とすることで、ユーザのスライド操作量とシステムが反応する移動量とが直結する。
【0043】
また左右方向のスライドで画面を切り替える場合は、持ち手と反対方向へのスライド操作で、持ち手方向へのスライド操作量と同じだけ行なうのはユーザに少し負担がある。そこで持ち手パタンに応じて、左スライドと右スライドで画面を切り替えるための閾値を変更する。両手での画面の切り替わるスライド量の閾値をδxとすると、片手持ちでの持ち手と反対方向へのスライド操作での閾値δx’は、
【数4】
とする。
【0044】
(B)左右にも自由に動かせるアプリケーションの場合
上下操作は上記(A)と同様であるが、(A)との違いは、画面の切り替えがなく、左右に自由に移動できる点である。(A)では、画面を切り替えるための左右スライド操作の閾値を変更したが、ここでは左右へのスライド操作と検知する最小操作量と、システムが反応する移動量を変更する。
【0045】
アプリケーションで定められているスライド操作と検知する最小操作量をδxとすると、片手持ちでの持ち手と反対方向へのスライド操作での最小操作量δx’を、
【数5】
とする。例えば、スライド操作を検知するには7px(=δx)スライドする必要があるアプリに対して、5px(=δx’)で検知するということである。
【0046】
また、操作量Δxに対して、システムが反応する移動量Δx’を、
【数6】
とすることで、持ち手と反対方向へのスライド操作という動かしにくい操作に対して、小さな操作量で行なうことができる。例えば、片手持ちでの持ち手と反対方向へのスライド操作の場合、実際には20px(=Δx)のスライド操作に対してシステムが反応する移動量は25px(=Δx’)移動するということである。
【0047】
また、(B)では、斜めへの操作もあり得る。図9に示すように、変化量ΔxとΔyの関係が2つの曲線で囲まれた領域であれば斜めと検知するものとする。2曲線は(A)の上操作と同様に2次関数的でも良いし、楕円および円の一部の形状でもよい。
【0048】
上記で示した、x1,x2,y1およびα、β、γは予め定めておいても良いし、ユーザの操作履歴から推定してもよい。また持ち手パタン、スライド方向ごとに定めてもよい。
【0049】
本実施形態では、操作パタンa、bのみについて、スライド量を変更したが、全てのパタンにおいて変更しても良い。特に、パタンeに関しては左右どちらの指で操作しているか判別し、左右各々定義しても良い。また、補正を解除しても良い。スライド方向は、図10に8方向示したが、これより多くても少なくても良い。
【0050】
(応用例)
応用例として、ジェスチャー軌跡に対するコマンドの割り当て変更を実施しても良い。web閲覧用のアプリケーションなどにおいて、図12に示したように、スライド操作の組み合わせに対し、前の画面、次の画面、拡大などのコマンドを割り当てるジェスチャー操作というものがある。しかし、マルチタッチやある特定の動きは片手で行ないにくい動作がある。
【0051】
そこで、ジェスチャー入力に対するコマンドを定義し、持ち手パタンごとにジェスチャー入力記憶部を切り替えるように構成しても良い。例えば、両手では画面の拡大、縮小はマルチタッチに割り当てられるのに対して、片手ではシングルタッチでのジェスチャーに切り替えるという例が挙げられる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、携帯端末装置の持ち手、打ち手に応じて、スライド操作を検出するための移動方向・移動量の条件および入力された移動量に対してシステムが反応する移動量の補正を行ない、また、持ち手パタンに対して、ジャスチャー操作の割り当てを変更することにより入力の操作性向上と利便性向上を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0053】
10 携帯端末装置
11 表示部
12 タッチパネル入力部
13 スライド軌跡検出部
14 加速度センサ
15 持ち手パタン記憶部
16 持ち手パタン認識部
17 判別領域記憶部
18 スライド方向判別部
19 スライド量補正値記憶部
20 スライド量補正部
21 制御バス
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルディスプレイに対するユーザのスライド操作を検出し、検出したスライド操作に対応してタッチパネルディスプレイに表示している画像をスライドさせる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タッチパネルディスプレイを備えた情報端末装置が知られている。この情報端末装置を操作する場面には、片手に情報端末装置を持ち、もう一方の片手に荷物を持っている場合がある。このように片手が使えない状態においても、操作を行なう状況が多く見受けられる。また、上記の情報端末装置では、上下左右に指をスライドさせることによって入力を行なうスライド操作や、スライド操作の組み合わせに対し、画面拡大やショートカットなどの機能を割り当てるジェスチャー入力操作という操作方法が提案されている。
【0003】
特許文献1には、タッチ操作できる装置において、従来のフリック入力でのタッチ位置とスライド方向に文字を割り当てる方法に加えて、スライド操作距離も考慮した文字入力装置が開示されている。また、特許文献2には、タッチ操作できる装置において、スライド操作から取得した座標値から、それがジェスチャー入力動作なのか文字入力動作なのか判別して、入力動作に割り当てられたコマンドを返すという装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、携帯電話の片手操作を対象とし、ディスプレイ上の斜線をなぞる動作からユーザの持ち手を判別し、メニューやスクロールバーを持ち手側にずらすという装置が開示されている。また、特許文献4には、持ち手判別画面で、持ち手の左右を判別してHOME画面のメニューランチャーを持ち手側にずらすという装置が開示されている。
【0005】
これらの特許文献以外にも、片手動作を対象に持ち手を判別し、GUI(Graphical User Interface)を変更するものが数多く提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−034289号公報
【特許文献2】特開2010−231480号公報
【特許文献3】特開2011−070489号公報
【特許文献4】特開2009−294725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1および2に開示されている技術では、あるジェスチャー入力動作に対し、持ち方に関わらず、同一の動作および同一の操作量であるため、持ち方によっては操作しにくいジェスチャー入力動作が生じる。また、上記特許文献3および4では、片手操作での持ち手の左右を判別して、メニューやスクロールバーなどのGUI部品の表示位置を物理的にずらすまでにとどまっている。このため、片手操作時にGUI部品に指が届きやすくはなるが、メニューを上下方向にずらしたり、コンテンツをスクロールしたりするときの操作性については、考慮されていない。
【0008】
図10は、ユーザによるスライド操作の軌跡の例を示す図である。ユーザが同じスライド操作を行なうときでも、持ち手によって、指の軌跡は異なる傾向を示す。例えば右手での片手操作で、下から上へスライド操作したとき、親指が真上に動くのではなく、画面の上方向に動くにつれて利き手側に寄った円弧状の軌跡を描く傾向にある。また、右手での片手操作で、左から右へのスライド(持ち手方向へのスライド)と比較し、右から左へのスライド(持ち手と反対方向へのスライド)は行ないにくいため、スライドの軌跡は短くなる傾向がある。左手での片手操作では上記と反対の傾向を示し、両手操作では比較的直線的な軌跡を示す傾向がある。
【0009】
このように、同一の操作に対しても、持ち手によりスライド操作軌跡に違いが生じるため、片手での操作の場合、ユーザが上下操作を行なうつもりでも実際は円弧状に指が動いているため意図に反して横に動いてしまうことがあり得る。例えば、図11に示すように、基本的には上下方向の操作であるが、左右方向へのスライド距離が閾値を超えると画面が切り替わるアプリケーションでは、ユーザが上下操作を行なっているつもりなのに、左右操作と誤認識されて画面が切り替わってしまうことがあり、操作性や利便性が大きく低下する。また左右操作では、持ち手と反対方向へのスライド操作で、持ち手方向へのスライド操作量と同じだけ行なうのは多少負担がある。
【0010】
同様に、web閲覧用のアプリケーションのように、画面が切り替わる閾値がなく、左右方向にスライド操作可能なアプリケーションでは、上下にスライドするつもりが、左右に画面が動いてしまうことがある。また、従来では、システムが反応する上下の移動量はY方向のみしか考慮していないため、ユーザが行なったスライド操作のための指の移動量と比較し、システムがコンテンツを上下に動かした移動量が小さくなる。
【0011】
また、図12に示すように、web閲覧用のアプリケーションなどにおいて、スライド操作の組み合わせに対し、前の画面、次の画面、拡大などのコマンドを割り当てるジェスチャー操作というものがあるが、マルチタッチやある特定の動きは片手で行ないにくい動作がある。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ユーザによるスライド操作の方向を判別し、持ち手パタン、スライド操作の方向および画像を表示するアプリケーションの特性に応じて、タッチパネルディスプレイに表示している画像のスライド量を補正することによって、携帯端末装置を片手で操作するときの操作性と利便性の向上を図ることができる携帯端末装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の携帯端末装置は、タッチパネルディスプレイに対するユーザのスライド操作を検出し、前記検出したスライド操作に対応して前記タッチパネルディスプレイに表示している画像をスライドさせる携帯端末装置であって、センサが検出した情報に基づいて、ユーザの把持状態および操作状態を示す持ち手パタンを認識する持ち手パタン認識部と、前記タッチパネルディスプレイに対するユーザによるスライド操作の軌跡を検出するスライド軌跡検出部と、前記検出したスライド操作の軌跡およびスライド操作の方向を判別する判別領域に基づいて、ユーザによるスライド操作の方向を判別するスライド方向判別部と、前記認識した持ち手パタン、前記判別したスライド操作の方向および画像を表示するアプリケーションの特性に応じて、前記タッチパネルディスプレイに表示している画像のスライド量を補正するスライド量補正部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
このように、認識した持ち手パタン、判別したスライド操作の方向および画像を表示するアプリケーションの特性に応じて、タッチパネルディスプレイに表示している画像のスライド量を補正するので、携帯端末装置を片手で操作するときの操作性と利便性の向上を図ることが可能となる。
【0015】
(2)また、本発明の携帯端末装置は、前記判別領域を前記持ち手パタン毎に記憶する判別領域記憶部を更に備えることを特徴とする。
【0016】
このように、判別領域を持ち手パタン毎に記憶するので、検出した持ち手パタンに対応する判別領域を読み出すことでスライド方向を迅速に判別することが可能となる。
【0017】
(3)また、本発明の携帯端末装置において、前記判別領域は、ユーザが前記タッチパネルディスプレイにタッチした点の座標を原点とする平面上で、前記原点を通る少なくとも2つの曲線または直線でスライド方向毎に定義されることを特徴とする。
【0018】
このように、判別領域は、ユーザが前記タッチパネルディスプレイにタッチした点の座標を原点とする平面上で、前記原点を通る少なくとも2つの曲線または直線でスライド方向毎に定義されるので、ユーザの意図するスライド方向を判別することが可能となる。
【0019】
(4)また、本発明の携帯端末装置において、前記アプリケーションは、前記タッチパネルディスプレイに対する上下方向のスライド操作によって画像を上下にスライドさせる一方、前記タッチパネルディスプレイに対する左右方向のスライド操作によって表示する画像を切り替える特性を有し、前記スライド量補正部は、左右方向のスライド操作によって表示する画像を切り替えるための閾値を変更することを特徴とする。
【0020】
このように、アプリケーションが、タッチパネルディスプレイに対する上下方向のスライド操作によって画像を上下にスライドさせる一方、タッチパネルディスプレイに対する左右方向のスライド操作によって表示する画像を切り替える特性を有する場合に、左右方向のスライド操作によって表示する画像を切り替えるための閾値を変更するので、ユーザの意図するスライド方向を判別することが可能となる。
【0021】
(5)また、本発明の携帯端末装置において、前記アプリケーションは、前記タッチパネルディスプレイに対する上下左右方向のスライド操作によって画像を上下左右にスライドさせる特性を有し、前記スライド量補正部は、左右方向のスライド操作に対し、前記スライド軌跡検出部が検出可能な最小の軌跡の大きさを変更することによって、前記タッチパネルディスプレイに表示している画像のスライド量を補正することを特徴とする。
【0022】
このように、アプリケーションが、タッチパネルディスプレイに対する上下左右方向のスライド操作によって画像を上下左右にスライドさせる特性を有する場合に、左右方向のスライド操作に対し、スライド軌跡検出部が検出可能な最小の軌跡の大きさを変更することによって、前記タッチパネルディスプレイに表示している画像のスライド量を補正するので、ユーザの意図するスライド方向を判別することが可能となる。
【0023】
(6)また、本発明の携帯端末装置において、前記持ち手パタンは、左手把持および左手操作、右手把持および右手操作、右手把持および左手操作、左手把持および右手操作または両手把持および両手操作のいずれかであることを特徴とする。
【0024】
この構成により、携帯端末装置を操作するときの操作性と利便性の向上を図ることが可能となる。
【0025】
(7)また、本発明のプログラムは、タッチパネルディスプレイに対するユーザのスライド操作を検出し、前記検出したスライド操作に対応して前記タッチパネルディスプレイに表示している画像をスライドさせる携帯端末装置のプログラムであって、センサが検出した情報に基づいて、ユーザの把持状態および操作状態を示す持ち手パタンを認識する処理と、前記タッチパネルディスプレイに対するユーザによるスライド操作の軌跡を検出する処理と、前記検出したスライド操作の軌跡およびスライド操作の方向を判別する判別領域に基づいて、ユーザによるスライド操作の方向を判別する処理と、前記認識した持ち手パタン、前記判別したスライド操作の方向および画像を表示するアプリケーションの特性に応じて、前記タッチパネルディスプレイに表示している画像のスライド量を補正する処理と、の一連の処理を、コンピュータに実行させることを特徴とする。
【0026】
このように、認識した持ち手パタン、判別したスライド操作の方向および画像を表示するアプリケーションの特性に応じて、タッチパネルディスプレイに表示している画像のスライド量を補正するので、携帯端末装置を片手で操作するときの操作性と利便性の向上を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、認識した持ち手パタン、判別したスライド操作の方向および画像を表示するアプリケーションの特性に応じて、タッチパネルディスプレイに表示している画像のスライド量を補正するので、携帯端末装置を片手で操作するときの操作性と利便性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A】ユーザによる携帯端末装置の持ち手と打ち手を示す図である。
【図1B】ユーザによる携帯端末装置の持ち手と打ち手を示す図である。
【図1C】ユーザによる携帯端末装置の持ち手と打ち手を示す図である。
【図1D】ユーザによる携帯端末装置の持ち手と打ち手を示す図である。
【図1E】ユーザによる携帯端末装置の持ち手と打ち手を示す図である。
【図2】本実施形態に係る携帯端末装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】携帯端末装置の画面が遷移する例を示す図である。
【図4】携帯端末装置の画面が遷移する例を示す図である。
【図5】携帯端末装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】暗証番号入力画面の例を示す図である。
【図7】持ち手パタンに応じた判別領域の一例を示す図である。
【図8】持ち手パタンに応じた判別領域の一例を示す図である。
【図9】持ち手パタンに応じた判別領域の一例を示す図である。
【図10】ユーザによるスライド操作の軌跡の例を示す図である。
【図11】スライド操作の軌跡の一例を示す図である。
【図12】ジェスチャー操作の割り当ての一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1A〜図1Eは、ユーザによる携帯端末装置の持ち手と打ち手を示す図である。本実施形態に係る携帯端末装置は、このようなユーザによる持ち手と打ち手(以下、単に「持ち手パタン」と呼称する。)を判別し、持ち手パタン毎に、スライド操作を検出するための判別領域および入力された移動量に対してシステムが反応する移動量の補正係数を変更する機能を備えている。
【0030】
図2は、本実施形態に係る携帯端末装置の概略構成を示すブロック図である。携帯端末装置10は、表示部11で画像を表示する。また、表示部11は、ユーザに対し種々の操作画面を表示する。表示部11の水平方向をX方向、垂直方向をY方向と記す。タッチパネル入力部12は、タッチパネルでユーザからの入力を受け付ける。そして、ユーザがタッチしたときのタッチ座標情報を取得する。スライド軌跡検出部13は、ユーザがタッチパネルを押してから離すまでのスライド軌跡を検出し、記憶する。加速度センサ14は、ユーザによる操作時の加速度を検出する。
【0031】
持ち手パタン記憶部15は、持ち手パタンと加速度を対応付けて記憶する。持ち手パタン認識部16は、ユーザの持ち手パタンを認識する。図1A〜図1Eに示したように、持ち手パタンには、左持ち左打ちおよび右持ち右打ち、左持ち右打ち、右持ち左打ち、両持ち両打ちの5パタンがある。それぞれを、持ち手パタンa,b,c,d,eとする。このうち操作パタンaとbは前記述べた片手操作に相当する。上記持ち手パタン毎に、ユーザの入力動作による携帯端末装置のゆれや傾きなどの物理的動作などは異なる特徴を示す。そのため、これらの情報を用いることで、パタン認識により持ち手パタンを判別することが可能である。
【0032】
判別領域記憶部17は、持ち手パタンに対して、スライド操作で各方向を検出する領域を記憶する。スライド方向判別部18は、判別領域記憶部17とスライド軌跡検出部13の情報より、ユーザのスライド操作が、どの方向へのスライド操作であるのかを検出する。スライド量補正値記憶部19は、各持ち手パタンに対して、スライド量の補正値を記憶する。スライド量補正部20は、スライド量を補正する。以上の各構成要素は、制御バス21によって接続され、相互に信号の送受信をすることができように構成されている。
【0033】
持ち手パタン認識部16による持ち手パタンを判別するタイミングは、ユーザが携帯端末装置10を手に取り、所望の操作をする前が好ましい。本実施形態では、携帯端末装置10の暗証番号入力により、パスワードロック解除操作のタイミングで持ち手パタンを判別し、その後、スライド操作およびジェスチャー入力を行なう利用シーンを例示する。
【0034】
図3および図4は、携帯端末装置の画面が遷移する例を示す図である。図3に示すアプリケーションでは、上下方向へのスライド操作を主とし、左右方向へのスライド操作は、画面を切り替えるために用いる。図4に示すアプリケーションでは、web閲覧用のアプリケーションのように、上下方向のみならず、左右方向へのスライド操作が可能である。
【0035】
次に、以上のように構成された本実施形態に係る携帯端末装置の動作について説明する。図5は、携帯端末装置の動作を示すフローチャートである。まず、ユーザから暗証番号の入力を受け付ける(ステップS1)。ここでは、図6に示すような暗証番号入力画面を表示し、ユーザに暗証番号を入力させる。次に、加速度情報およびタッチ情報を取得し、持ち手パタンを判別する(ステップS2)。
【0036】
ステップS1における暗証番号入力時に、暗証番号入力中の加速度およびタッチ情報を取得する。持ち手パタンの判別は、入力完了時、加速度情報を元に、持ち手パタン認識部16により、持ち手パタンを判別する。持ち手パタン認識部16は、加速度情報を入力値として、上述した操作パタンa〜eを出力する。つまり、ユーザが入力動作中の加速度情報を元に、ユーザの持ち手パタンが、左持ち左打ちおよび右持ち右打ち、左持ち右打ち、右持ち左打ち、両持ち両打ちの5パタンのうち、どれかを判別する(ステップS3)。加速度の代わりに、タッチ情報または、加速度およびタッチ情報の両情報または、両情報に加えてそれらの情報から算出される値を入力値としてもよい。判別には、SVM、k近傍法など、広く利用されている識別器を利用する。あるいは、操作パタンを選択させるGUIをユーザに提示し、どれかをユーザに選択させる識別部であってもよい。本発明において、持ち手パタン認識部16は、ユーザが入力動作中のユーザの持ち手パタンが、左持ち左打ちおよび右持ち右打ち、左持ち右打ち、右持ち左打ち、両持ち両打ちの5パタンのうち、どれかを識別するものであれば、その構成、詳細実施方法は、問わない。例えば、ユーザが持ち手パタンを示す情報を入力する構成を採っても良いし、筐体に圧力センサを設け、持ち手パタンを検出する構成を採っても良い。また、その他の物理センサ、例えば、温度センサを設けて、持ち手パタンを検出するように構成しても良い。
【0037】
次に、スライド方向検出のスライド領域および入力されたスライド量に対してシステムが反応する移動量を変更する。すなわち、ステップS4において、スライド操作検出領域、操作量補正係数を決定する。次に、入力待ちの状態となり(ステップS5)、入力を検知すると(ステップS6)、スライド軌跡を記憶する(ステップS7)。次に、スライド操作量を検出し(ステップS8)、スライド操作量を補正し(ステップS9)、動作制御を行なう(ステップS10)。そして、表示変更を行ない(ステップS11)、ステップS5に遷移する。
【0038】
(A)上下操作がメインで、左右操作で画面を切り替えるアプリケーションの場合
例として、前述の通り、図3に示したようなアプリケーションが挙げられる。このようなアプリケーションでは、左右の画面の切り替えは左右のスライド距離がある閾値を超えると切り替わる。片手での操作の場合、ユーザが上下操作を行なうつもりでも、実際は円弧状に指が動いているため、左右と誤認識し画面が切り替わる可能性がある。
【0039】
図7〜図9は、持ち手パタンに応じた判別領域の一例を示す図である。図7〜図9にしめすように、ユーザによるスライド操作方向と距離の条件を変更する。判別領域の曲線は2次関数的でも良いし、楕円および円の一部の形状でもよく、下に凸でない関数であれば良い。
【0040】
例えば、2次関数で図7の持ち手パタンaの曲線部F2を表す。
【数1】
【0041】
直線部F1を、
【数2】
とするとΔy>F1,Δy>F2,Δy>δyの時に上方向へのスライド操作と判別する。
【0042】
ユーザが行なったスライド量と比較し、システムが反応する移動量は、図11に示したように小さくなりユーザの直感とは異なる。システムが反応する移動量Δy’を、
【数3】
とすることで、ユーザのスライド操作量とシステムが反応する移動量とが直結する。
【0043】
また左右方向のスライドで画面を切り替える場合は、持ち手と反対方向へのスライド操作で、持ち手方向へのスライド操作量と同じだけ行なうのはユーザに少し負担がある。そこで持ち手パタンに応じて、左スライドと右スライドで画面を切り替えるための閾値を変更する。両手での画面の切り替わるスライド量の閾値をδxとすると、片手持ちでの持ち手と反対方向へのスライド操作での閾値δx’は、
【数4】
とする。
【0044】
(B)左右にも自由に動かせるアプリケーションの場合
上下操作は上記(A)と同様であるが、(A)との違いは、画面の切り替えがなく、左右に自由に移動できる点である。(A)では、画面を切り替えるための左右スライド操作の閾値を変更したが、ここでは左右へのスライド操作と検知する最小操作量と、システムが反応する移動量を変更する。
【0045】
アプリケーションで定められているスライド操作と検知する最小操作量をδxとすると、片手持ちでの持ち手と反対方向へのスライド操作での最小操作量δx’を、
【数5】
とする。例えば、スライド操作を検知するには7px(=δx)スライドする必要があるアプリに対して、5px(=δx’)で検知するということである。
【0046】
また、操作量Δxに対して、システムが反応する移動量Δx’を、
【数6】
とすることで、持ち手と反対方向へのスライド操作という動かしにくい操作に対して、小さな操作量で行なうことができる。例えば、片手持ちでの持ち手と反対方向へのスライド操作の場合、実際には20px(=Δx)のスライド操作に対してシステムが反応する移動量は25px(=Δx’)移動するということである。
【0047】
また、(B)では、斜めへの操作もあり得る。図9に示すように、変化量ΔxとΔyの関係が2つの曲線で囲まれた領域であれば斜めと検知するものとする。2曲線は(A)の上操作と同様に2次関数的でも良いし、楕円および円の一部の形状でもよい。
【0048】
上記で示した、x1,x2,y1およびα、β、γは予め定めておいても良いし、ユーザの操作履歴から推定してもよい。また持ち手パタン、スライド方向ごとに定めてもよい。
【0049】
本実施形態では、操作パタンa、bのみについて、スライド量を変更したが、全てのパタンにおいて変更しても良い。特に、パタンeに関しては左右どちらの指で操作しているか判別し、左右各々定義しても良い。また、補正を解除しても良い。スライド方向は、図10に8方向示したが、これより多くても少なくても良い。
【0050】
(応用例)
応用例として、ジェスチャー軌跡に対するコマンドの割り当て変更を実施しても良い。web閲覧用のアプリケーションなどにおいて、図12に示したように、スライド操作の組み合わせに対し、前の画面、次の画面、拡大などのコマンドを割り当てるジェスチャー操作というものがある。しかし、マルチタッチやある特定の動きは片手で行ないにくい動作がある。
【0051】
そこで、ジェスチャー入力に対するコマンドを定義し、持ち手パタンごとにジェスチャー入力記憶部を切り替えるように構成しても良い。例えば、両手では画面の拡大、縮小はマルチタッチに割り当てられるのに対して、片手ではシングルタッチでのジェスチャーに切り替えるという例が挙げられる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、携帯端末装置の持ち手、打ち手に応じて、スライド操作を検出するための移動方向・移動量の条件および入力された移動量に対してシステムが反応する移動量の補正を行ない、また、持ち手パタンに対して、ジャスチャー操作の割り当てを変更することにより入力の操作性向上と利便性向上を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0053】
10 携帯端末装置
11 表示部
12 タッチパネル入力部
13 スライド軌跡検出部
14 加速度センサ
15 持ち手パタン記憶部
16 持ち手パタン認識部
17 判別領域記憶部
18 スライド方向判別部
19 スライド量補正値記憶部
20 スライド量補正部
21 制御バス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルディスプレイに対するユーザのスライド操作を検出し、前記検出したスライド操作に対応して前記タッチパネルディスプレイに表示している画像をスライドさせる携帯端末装置であって、
センサが検出した情報に基づいて、ユーザの把持状態および操作状態を示す持ち手パタンを認識する持ち手パタン認識部と、
前記タッチパネルディスプレイに対するユーザによるスライド操作の軌跡を検出するスライド軌跡検出部と、
前記検出したスライド操作の軌跡およびスライド操作の方向を判別する判別領域に基づいて、ユーザによるスライド操作の方向を判別するスライド方向判別部と、
前記認識した持ち手パタン、前記判別したスライド操作の方向および画像を表示するアプリケーションの特性に応じて、前記タッチパネルディスプレイに表示している画像のスライド量を補正するスライド量補正部と、を備えることを特徴とする携帯端末装置。
【請求項2】
前記判別領域を前記持ち手パタン毎に記憶する判別領域記憶部を更に備えることを特徴とする請求項1記載の携帯端末装置。
【請求項3】
前記判別領域は、ユーザが前記タッチパネルディスプレイにタッチした点の座標を原点とする平面上で、前記原点を通る少なくとも2つの曲線または直線でスライド方向毎に定義されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の携帯端末装置。
【請求項4】
前記アプリケーションは、前記タッチパネルディスプレイに対する上下方向のスライド操作によって画像を上下にスライドさせる一方、前記タッチパネルディスプレイに対する左右方向のスライド操作によって表示する画像を切り替える特性を有し、
前記スライド量補正部は、左右方向のスライド操作によって表示する画像を切り替えるための閾値を変更することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の携帯端末装置。
【請求項5】
前記アプリケーションは、前記タッチパネルディスプレイに対する上下左右方向のスライド操作によって画像を上下左右にスライドさせる特性を有し、
前記スライド量補正部は、左右方向のスライド操作に対し、前記スライド軌跡検出部が検出可能な最小の軌跡の大きさを変更することによって、前記タッチパネルディスプレイに表示している画像のスライド量を補正することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の携帯端末装置。
【請求項6】
前記持ち手パタンは、左手把持および左手操作、右手把持および右手操作、右手把持および左手操作、左手把持および右手操作または両手把持および両手操作のいずれかであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の携帯端末装置。
【請求項7】
タッチパネルディスプレイに対するユーザのスライド操作を検出し、前記検出したスライド操作に対応して前記タッチパネルディスプレイに表示している画像をスライドさせる携帯端末装置のプログラムであって、
センサが検出した情報に基づいて、ユーザの把持状態および操作状態を示す持ち手パタンを認識する処理と、
前記タッチパネルディスプレイに対するユーザによるスライド操作の軌跡を検出する処理と、
前記検出したスライド操作の軌跡およびスライド操作の方向を判別する判別領域に基づいて、ユーザによるスライド操作の方向を判別する処理と、
前記認識した持ち手パタン、前記判別したスライド操作の方向および画像を表示するアプリケーションの特性に応じて、前記タッチパネルディスプレイに表示している画像のスライド量を補正する処理と、の一連の処理を、コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
タッチパネルディスプレイに対するユーザのスライド操作を検出し、前記検出したスライド操作に対応して前記タッチパネルディスプレイに表示している画像をスライドさせる携帯端末装置であって、
センサが検出した情報に基づいて、ユーザの把持状態および操作状態を示す持ち手パタンを認識する持ち手パタン認識部と、
前記タッチパネルディスプレイに対するユーザによるスライド操作の軌跡を検出するスライド軌跡検出部と、
前記検出したスライド操作の軌跡およびスライド操作の方向を判別する判別領域に基づいて、ユーザによるスライド操作の方向を判別するスライド方向判別部と、
前記認識した持ち手パタン、前記判別したスライド操作の方向および画像を表示するアプリケーションの特性に応じて、前記タッチパネルディスプレイに表示している画像のスライド量を補正するスライド量補正部と、を備えることを特徴とする携帯端末装置。
【請求項2】
前記判別領域を前記持ち手パタン毎に記憶する判別領域記憶部を更に備えることを特徴とする請求項1記載の携帯端末装置。
【請求項3】
前記判別領域は、ユーザが前記タッチパネルディスプレイにタッチした点の座標を原点とする平面上で、前記原点を通る少なくとも2つの曲線または直線でスライド方向毎に定義されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の携帯端末装置。
【請求項4】
前記アプリケーションは、前記タッチパネルディスプレイに対する上下方向のスライド操作によって画像を上下にスライドさせる一方、前記タッチパネルディスプレイに対する左右方向のスライド操作によって表示する画像を切り替える特性を有し、
前記スライド量補正部は、左右方向のスライド操作によって表示する画像を切り替えるための閾値を変更することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の携帯端末装置。
【請求項5】
前記アプリケーションは、前記タッチパネルディスプレイに対する上下左右方向のスライド操作によって画像を上下左右にスライドさせる特性を有し、
前記スライド量補正部は、左右方向のスライド操作に対し、前記スライド軌跡検出部が検出可能な最小の軌跡の大きさを変更することによって、前記タッチパネルディスプレイに表示している画像のスライド量を補正することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の携帯端末装置。
【請求項6】
前記持ち手パタンは、左手把持および左手操作、右手把持および右手操作、右手把持および左手操作、左手把持および右手操作または両手把持および両手操作のいずれかであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の携帯端末装置。
【請求項7】
タッチパネルディスプレイに対するユーザのスライド操作を検出し、前記検出したスライド操作に対応して前記タッチパネルディスプレイに表示している画像をスライドさせる携帯端末装置のプログラムであって、
センサが検出した情報に基づいて、ユーザの把持状態および操作状態を示す持ち手パタンを認識する処理と、
前記タッチパネルディスプレイに対するユーザによるスライド操作の軌跡を検出する処理と、
前記検出したスライド操作の軌跡およびスライド操作の方向を判別する判別領域に基づいて、ユーザによるスライド操作の方向を判別する処理と、
前記認識した持ち手パタン、前記判別したスライド操作の方向および画像を表示するアプリケーションの特性に応じて、前記タッチパネルディスプレイに表示している画像のスライド量を補正する処理と、の一連の処理を、コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図1B】
【図1C】
【図1D】
【図1E】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−80999(P2013−80999A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218645(P2011−218645)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】
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