説明

携帯端末

【課題】ブートプログラムの更新の確実性を向上させ更新が失敗した場合でも起動不能に陥ることのない携帯端末を提供する。
【解決手段】フラッシュメモリ50には、複数のブートプログラムがそれぞれ個別に読み出し可能に記憶されるブートプログラム領域51〜53と、これら複数のブートプログラムのうちの最新のブートプログラムを選択するためのフラグが記憶されるフラグ領域54とが予め設けられている。そして、ブートプログラム領域51〜53のいずれかに最新のブートプログラムが記憶されたことに応じて、このブートプログラムが選択されるようにフラグが書き換えられる。そして、フラグ領域54に記憶されるフラグに基づいて、ブートプログラム領域51〜53のいずれかから選択されたブートプログラムを用いて起動に関する処理が、制御回路40により実施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起動時に実行されるブートプログラムが更新される携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、起動時に実行されるブートプログラムが更新される携帯端末に関する技術として、下記特許文献1に示すプログラム実行装置が知られている。このプログラム実行装置は、メモリ選択部としてデコーダおよびディップスイッチを備えており、ディップスイッチの状態に応じてデコーダがメモリアドレス信号を変更するように構成されている。
【0003】
そして、ディップスイッチがオフ状態であれば、デコーダからのメモリアドレス信号により、起動時には一方のブートプログラムブロックに格納されている書き換え可能ブートプログラムの先頭番地が選択されて実行される。また、ディップスイッチがオン状態であれば、デコーダからのメモリアドレス信号により、起動時には他方のブートプログラムブロックが選択され、書き換え不可能ブートプログラムが実行される。このため、書き換え可能ブートプログラムの書き換えに失敗した場合、あるいは、異なるブートプログラムに書き換えてしまった場合には、ディップスイッチの設定によって、書き換え不可能ブートプログラムを選択して起動させることで、装置が起動不能に陥ることをなくしている。
【0004】
また、特許文献2に示す情報処理装置では、ブートプログラムの更新失敗に起因して装置が起動不能に陥ることをなくすために、ブートプログラムを更新するためのダウンロードデータファイルが受信されると、このダウンロードデータファイルは、揮発性記憶部に一旦格納される。次に、揮発性記憶部のブートプログラムをブート領域に書き込む前に、不揮発性記憶部内の未使用領域にブートプログラムが一旦書き込まれる。続いて、不揮発性記憶部内にあるEEPROM等のデバイスに書き込み情報を管理するためにSTATUS値が所定の値にセットされる。次に、揮発性記憶部のブートプログラムが不揮発性記憶部のブート領域に書き込まれ、ブートプログラムがアップデート(更新)された後に、上述したSTATUS値が元に戻される。そして、不揮発性記憶部の未使用領域に書き込んだブートプログラムが消去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特願2004−054818号公報
【特許文献2】特願2005−250882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、携帯型の端末では、据え置き型の端末と比較して、バッテリ不足等による電力供給停止状態(以下、電源断という)の可能性が非常に高いことから、ブートプログラムの更新中に電源断して、ブートプログラムの更新が失敗する可能性が高い。
【0007】
上記特許文献1に開示されるような構成では、ブートプログラムの更新前に、書き換え前のブートプログラムを一時的にフラッシュメモリ上の別領域に退避するため、2段階の書き込みステップが必要となり、ブートプログラムの更新に時間がかかることから、起動不能にはならないものの、ブートプログラムの更新が失敗する可能性がある。
【0008】
また、上記特許文献2に開示されるような構成でも、ブートプログラムの更新前に、新しいブートプログラムを一時的に現在のブートプログラムとは別のフラッシュメモリ領域へ書き込んだ後、現在のブートプログラムに上書きするため、2段階の書き込みステップが必要となる。また、正常に書き込んだブートプログラムか、一時的に書き込んだブートプログラムか、を選択するために使用する不揮発性メモリ上のSTATUS値の更新に、セットとリセットの2回の処理が必要となる。このため、上記特許文献1の構成と同様に、ブートプログラムの更新に時間がかかることから、起動不能にはならないものの、ブートプログラムの更新が失敗する可能性がある。
【0009】
特に、上記特許文献1の構成では、ブートプログラムの書き換えに失敗したときは、退避したブートプログラムを選択するように、ディップスイッチを切り替える必要があるため、利便性について問題がある。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ブートプログラムの更新の確実性を向上させ更新が失敗した場合でも起動不能に陥ることのない携帯端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の携帯端末では、ブートプログラムが記憶される記憶手段と、前記記憶手段に記憶される前記ブートプログラムを用いて起動に関する処理を実施する制御手段と、を備える携帯端末であって、前記記憶手段には、複数のブートプログラムがそれぞれ個別に読み出し可能に記憶される第1の記憶領域と、これら複数のブートプログラムのうちの最新のブートプログラムを選択するためのフラグが記憶される第2の記憶領域とが設けられ、前記第1の記憶領域に最新のブートプログラムが記憶されたことに応じてこのブートプログラムが選択されるように前記フラグを書き換える書換手段を備え、前記制御手段は、前記第2の記憶領域に記憶される前記フラグに基づいて、前記第1の記憶領域から選択されたブートプログラムを用いて起動に関する処理を実施することを特徴とする。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1に記載の携帯端末において、前記第1の記憶領域に記憶される複数のブートプログラムのうち最新のブートプログラムを除く少なくともいずれか1つを消去可能な消去手段を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項3の発明は、請求項2に記載の携帯端末において、前記消去手段は、前記第1の記憶領域に最新のブートプログラムが記憶される際、この記憶の前に前記第1の記憶領域に記憶される複数のブートプログラムのうち最新のブートプログラムを除く少なくともいずれか1つを消去することを特徴とする。
【0014】
請求項4の発明は、請求項2または3に記載の携帯端末において、前記消去手段は、前記第1の記憶領域に記憶される複数のブートプログラムのうち最も古いブートプログラムを消去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明では、記憶手段には、複数のブートプログラムがそれぞれ個別に読み出し可能に記憶される第1の記憶領域と、これら複数のブートプログラムのうちの最新のブートプログラムを選択するためのフラグが記憶される第2の記憶領域とが設けられている。そして、書換手段により、第1の記憶領域に最新のブートプログラムが記憶されたことに応じて、このブートプログラムが選択されるようにフラグが書き換えられる。そして、第2の記憶領域に記憶されるフラグに基づいて、第1の記憶領域から選択されたブートプログラムを用いて起動に関する処理が、制御手段により実施される。
【0016】
これにより、ブートプログラムの更新時に、第1の記憶領域に最新のブートプログラムを書き込む途中で電源断等して更新が失敗しても、フラグが書き換えられない限り、今まで使用していたブートプログラムが選択されるので、装置が起動不能に陥ることもない。特に、最新のブートプログラムを第1の記憶領域に記憶するステップと、第2の記憶領域に記憶されるフラグを書き換えるステップとの2つのステップでブートプログラムを更新できるので、少ない処理、すなわち短時間でブートプログラムの更新を実施することができ、ブートプログラムの更新自体の失敗を抑制することができる。
したがって、携帯端末のような電源断しやすい端末でも、ブートプログラムの更新の確実性を向上させ更新が失敗した場合でも起動不能に陥ることをなくすことができる。
【0017】
請求項2の発明では、第1の記憶領域に記憶される複数のブートプログラムのうち最新のブートプログラムを除く少なくともいずれか1つが、消去手段により消去される。このように、消去手段により最新のブートプログラムを除くブートプログラムの少なくともいずれか1つが更新時または通常動作時に消去されることにより、最新のブートプログラムが記憶される領域を第1の記憶領域に確実に確保することができる。
【0018】
請求項3の発明では、第1の記憶領域に最新のブートプログラムが記憶される際、この記憶の前に第1の記憶領域に記憶される複数のブートプログラムのうち最新のブートプログラムを除く少なくともいずれか1つが、消去手段により消去される。このように、第1の記憶領域に最新のブートプログラムが記憶される際にブートプログラムのいずれかを消去しても、最新のブートプログラムが記憶される領域を第1の記憶領域に確実に確保することができる。
【0019】
請求項4の発明では、第1の記憶領域に記憶される複数のブートプログラムのうち最も古いブートプログラムが、消去手段により消去される。このように、複数のブートプログラムのうち最も古いブートプログラムを消去することで、最も利用価値の低いブートプログラムを消去して、最新のブートプログラムが記憶される領域を第1の記憶領域に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る光学的情報読取装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】フラッシュメモリに書き込まれたブートプログラム等の書込状態を例示する説明図である。
【図3】ブートプログラム選択処理の流れを例示するフローチャートである。
【図4】ブートプログラム更新処理の流れを例示するフローチャートである。
【図5】フラッシュメモリに書き込まれたブートプログラムとフラグとの関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の情報端末を光学的情報読取装置10に適用した一実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る光学的情報読取装置10の電気的構成を示すブロック図である。図2は、フラッシュメモリ50に書き込まれたブートプログラム等の書込状態を例示する説明図である。
【0022】
図1に示すように、光学的情報読取装置10は、物品Rに付されたバーコード等の情報コードCを光学的に読み取る装置として構成されている。この光学的情報読取装置10は、図示しないケースの内部に回路部20が収容されてなるものであり、回路部20は、主に、照明光源21、受光センサ28、結像レンズ27等の光学系と、メモリ35、制御回路40、トリガースイッチ42等のマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)系と、から構成されている。
【0023】
光学系は、投光光学系と、受光光学系とに分かれている。投光光学系を構成する照明光源21は、照明光Lfを発光可能な照明光源として機能するもので、例えば、赤色のLEDとこのLEDの出射側に設けられるレンズとから構成されている。なお、図1では、バーコードCが付された物品Rに向けて照明光Lfを照射する例を概念的に示している。
【0024】
受光光学系は、受光センサ28、結像レンズ27、反射鏡(図示略)などによって構成されている。受光センサ28は、例えば、C−MOSやCCD等の固体撮像素子である受光素子を一次元に配列したラインセンサとして構成されるものであり、バーコードCに照射されて反射した反射光Lrを受光可能に構成されている。この受光センサ28は、結像レンズ27を介して入射する入射光を受光可能にプリント配線板(図示略)に実装されている。
【0025】
結像レンズ27は、外部から読取口(図示略)を介して入射する入射光を集光して受光センサ28の受光面28aに像を結像可能な結像光学系として機能するものである。本実施形態では、照明光源21から照射された照明光LfがバーコードCにて反射した後、この反射光Lrを結像レンズ27で集光し、受光センサ28の受光面28aにコード像を結像させている。
【0026】
マイコン系は、増幅回路31、A/D変換回路33、メモリ35、アドレス発生回路36、同期信号発生回路38、制御回路40、トリガースイッチ42、発光部43、ブザー44、バイブレータ45、液晶表示器46、通信インタフェース48等から構成されている。
【0027】
光学系の受光センサ28から出力される画像信号(アナログ信号)は、増幅回路31に入力されることで所定ゲインで増幅された後、A/D変換回路33に入力されると、アナログ信号からディジタル信号に変換される。そして、ディジタル化された画像信号、つまり画像データ(画像情報)は、生成されてメモリ35に入力されると、所定のコード画像情報格納領域に蓄積される。なお、同期信号発生回路38は、受光センサ28およびアドレス発生回路36に対する同期信号を発生可能に構成されており、またアドレス発生回路36は、この同期信号発生回路38から供給される同期信号に基づいて、メモリ35に格納される画像データの格納アドレスを発生可能に構成されている。
【0028】
メモリ35は、複数の半導体メモリ装置からなるものであり、DRAM、SRAM等のRAMやフラッシュメモリ50等のROMなどによって構成されている。このメモリ35のうちのRAMには、上述したコード画像情報格納領域のほかに、制御回路40が算術演算や論理演算等の各処理時に利用する作業領域や読取条件テーブルも確保可能に構成されている。
【0029】
また、フラッシュメモリ50には、読取処理、解析処理等を実行可能な所定プログラムやその他、照明光源21、受光センサ23等の各ハードウェアを制御可能なシステムプログラム等が予め格納されている。特に、フラッシュメモリ50には、図2に例示するように、電源投入後、起動時に実施されるブートプログラムを格納(記憶)するための3つ領域(以下、ブートプログラム領域51〜53という)が予めセクタごとに設けられている。製品出荷時では、ブートプログラム領域51のみにブートプログラムが格納されて、ブートプログラム領域52,53は、何も格納されず、後述するブートプログラムの更新時に新たなブートプログラムが順次格納されることとなる。また、フラッシュメモリ50には、後述するブートプログラム選択プログラムやブートプログラム書換えプログラムが格納(記憶)される領域や、これらのプログラムで使用されるフラグが格納(記憶)されるフラグ領域54が設けられている。
【0030】
ここで、フラグ領域54に格納されるフラグと、ブートプログラム領域51〜53にそれぞれ格納されるブートプログラムとの関係について説明する。
フラグは、複数の「0」および「1」のビットから構成されており、本実施形態では、フラグの下二桁のビットが「11」の場合には、ブートプログラム領域51に格納されるブートプログラムが選択され、フラグの下二桁のビットが「10」の場合には、ブートプログラム領域52に格納されるブートプログラムが選択され、フラグの下二桁のビットが「00」の場合には、ブートプログラム領域53に格納されるブートプログラムが選択されるように構成されている。特に、製品出荷時では、ブートプログラム領域51のみにブートプログラムが格納されているため、フラグ領域54に格納されるフラグは、下二桁のビットが「11」に設定されている。なお、メモリ35およびフラッシュメモリ50は、特許請求の範囲に記載の「記憶手段」の一例に相当し得る。また、ブートプログラム領域51〜53は、特許請求の範囲に記載の「第1の記憶領域」の一例に相当し、フラグ領域54は、特許請求の範囲に記載の「第2の記憶領域」の一例に相当し得る。
【0031】
制御回路40は、光学的情報読取装置10全体を制御可能なマイコンによって構成されており、CPU、システムバス、入出力インタフェース等を有すると共に、情報処理機能を備えており、メモリ35とともに情報処理装置を構成している。本実施形態では、制御回路40に対し、トリガースイッチ42、発光部43、ブザー44、バイブレータ45、液晶表示器46、通信インタフェース48等が接続されている。
【0032】
これにより、制御回路40は、例えば、トリガースイッチ42の監視や管理、バーコードCの読み取りに関する情報を報知するインジケータとして機能する発光部43の点灯・消灯、ビープ音やアラーム音を発生可能なブザー44の鳴動のオンオフ、当該光学的情報読取装置10の使用者に伝達し得る振動を発生可能なバイブレータ45の駆動制御、液晶表示器46の表示制御や外部装置とのシリアル通信を可能にする通信インタフェース48の通信制御等を可能にしている。
【0033】
次に、起動時にフラッシュメモリ50に格納されるブートプログラム選択プログラムを実行することで所定のブートプログラムを選択するブートプログラム選択処理について、図3のフローチャートを用いて説明する。図3は、ブートプログラム選択処理の流れを例示するフローチャートである。
【0034】
電源が投入されることで制御回路40によりブートプログラム選択処理が実施されると、まず、図3のステップS101において、フラグ読出処理がなされる。この処理では、フラッシュメモリ50のフラグ領域54に格納されるフラグが読み出される。次に、ステップS103において、選択処理がなされ、ステップS101にて読み出されたフラグに応じたブートプログラムがブートプログラム領域51〜53のいずれかから選択される。
【0035】
ここで、後述するブートプログラム更新処理が実施されていない場合には、フラグの下二桁のビットが「11」であるため、ブートプログラム領域51に格納されるブートプログラムが選択される。また、後述するブートプログラム更新処理が実施されており、フラグの下二桁のビットが「10」の場合には、ブートプログラム領域52に格納されるブートプログラムが選択され、フラグの下二桁のビットが「00」の場合には、ブートプログラム領域53に格納されるブートプログラムが選択される。そして、このように選択されたブートプログラムが実行されることで、当該光学的情報読取装置10が円滑に起動し、上述したシステムプログラムが実行されて、読取処理などの所定の処理が実施可能な起動状態となる。なお、制御回路40は、特許請求の範囲に記載の「制御手段」の一例に相当し得る。
【0036】
次に、フラッシュメモリ50に格納されるブートプログラム更新プログラムを実行することで最新のブートプログラムに更新するブートプログラム更新処理について、図4のフローチャートを用いて説明する。図4は、ブートプログラム更新処理の流れを例示するフローチャートである。図5は、フラッシュメモリに書き込まれたブートプログラムとフラグとの関係を示す説明図であり、図5(A)は、ブートプログラム領域52に最新のブートプログラムが書き込まれた状態を示し、図5(B)は、ブートプログラム領域53に最新のブートプログラムが書き込まれた状態を示し、図5(C)は、ブートプログラム領域51に最新のブートプログラムが書き込まれた状態を示す。なお、図5では、ブートプログラムが書き込まれるブートプログラム領域を、ハッチングを付すことで概念的に示し、特に、最新のブートプログラムが書き込まれるブートプログラム領域には、クロスハッチングを付して概念的に示している。
【0037】
まず、図4のステップS201においてブートプログラムダウンロード処理がなされ、外部装置からのダウンロードにより取得した最新のブートプログラムがRAMに書き込まれる。次に、ステップS203にてフラグ読取処理がなされ、フラッシュメモリ50のフラグ領域54に格納されるフラグが読み出される。
【0038】
続いて、ステップS205にて、ブートプログラム領域51〜53の全てにブートプログラムが書き込まれているか否かについて判定される。ここで、例えば、本光学的情報読取装置10にとって最初のブートプログラムの更新であるために、ブートプログラム領域51にのみブートプログラムが書き込まれ、ブートプログラム領域52,53にブートプログラムが書き込まれていない場合には、ステップS205にてNoと判定される。
【0039】
このようにステップS205にてNoと判定されると、ステップS209にてブートプログラム書き込み処理がなされる。この処理では、ブートプログラムが書き込まれていないブートプログラム領域のいずれかに、一旦RAMに書き込まれた最新のブートプログラムが書き込まれて記憶される。
【0040】
続いて、ステップS211において、フラグ書換処理がなされる。この処理では、フラグ領域54に格納されるフラグが、ステップS209にて最新のブートプログラムが書き込まれたブートプログラム領域に応じて、書き換えられる。具体的には、図5(A)に例示するように、ブートプログラム領域52に最新のブートプログラムが書き込まれた場合には、フラグの下二桁のビットが「10」に書き換えられ、図5(B)に例示するように、ブートプログラム領域53に最新のブートプログラムが書き込まれた場合には、フラグの下二桁のビットが「00」に書き換えられる。
【0041】
一方、数回ブートプログラム更新処理が実施されたことから、ブートプログラム領域51〜53の全てにブートプログラムが書き込まれているために、ステップS205にてYesと判定されると、ステップS207において、セクタイレーズ処理がなされる。この処理では、ブートプログラム領域51〜53に格納されたブートプログラムのうち最も古いブートプログラムがセクタ単位でイレーズ(消去)されて、このイレーズされたブートプログラム領域に対して、最新のブートプログラムを格納可能な状態になる。なお、ステップS207を実施する制御回路40は、特許請求の範囲に記載の「消去手段」の一例に相当し得る。
【0042】
そして、ステップS209にて、ブートプログラム書き込み処理がなされ、ステップS207にてイレーズされたブートプログラム領域に、一旦RAMに書き込まれた最新のブートプログラムが書き込まれて記憶される。そして、ステップS211にてフラグ書換処理がなされ、フラグ領域54に格納されるフラグが、ステップS209にて最新のブートプログラムが書き込まれたブートプログラム領域に応じて、書き換えられる。具体的には、ブートプログラム領域51に格納されたブートプログラムが最も古いブートプログラムである場合には、このブートプログラムが消去されて、図5(C)に例示するように、ブートプログラム領域51に最新のブートプログラムが書き込まれ、フラグの下二桁のビットが「11」に書き換えられる。なお、ステップS211を実施する制御回路40は、特許請求の範囲に記載の「書換手段」の一例に相当し得る。
【0043】
ここで、最新のブートプログラムを書き込むブートプログラム領域を選択する方法として、以下のような選択方法を採用してもよい。
すなわち、予め設けられるブートプログラム領域の総数をnとし、フラグ領域54に格納されるフラグにおいて選択の基準となるビットのうち「0」の数をカウントした値をkとするとき、k+2がn以下となる場合には、「n+k−1」番目のブートプログラム領域に最新のブートプログラムを書き込み、k+2がnを超える場合には、1番目のブートプログラム領域に最新のブートプログラムを書き込むように構成されてもよい。
【0044】
具体的には、ブートプログラム領域51〜53をそれぞれ1番目〜3番目のブートプログラム領域とし、ブートプログラム領域の総数がn=3である場合を想定する。この場合、フラグ領域54に格納されるフラグの下二桁のビットが「11」であると、k=0となり、上述したように、2番目のブートプログラム領域52が最新のブートプログラムを書き込む領域として選択される。また、フラグ領域54に格納されるフラグの下二桁のビットが「10」であると、k=1となり、上述したように、3番目のブートプログラム領域53が最新のブートプログラムを書き込む領域として選択される。また、フラグ領域54に格納されるフラグの下二桁のビットが「00」であると、k=2となりk+2がnを超えるため、上述したように、1番目のブートプログラム領域51が最新のブートプログラムを書き込む領域として選択される。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る光学的情報読取装置10では、フラッシュメモリ50には、複数のブートプログラムがそれぞれ個別に読み出し可能に記憶されるブートプログラム領域51〜53と、これら複数のブートプログラムのうちの最新のブートプログラムを選択するためのフラグが記憶されるフラグ領域54とが予め設けられている。そして、ブートプログラム領域51〜53のいずれかに最新のブートプログラムが記憶されたことに応じて、このブートプログラムが選択されるようにフラグ領域54のフラグが書き換えられる。そして、フラグ領域54に記憶されるフラグに基づいて、ブートプログラム領域51〜53のいずれかから選択されたブートプログラムを用いて起動に関する処理が、制御回路40により実施される。
【0046】
これにより、ブートプログラムの更新時に、ブートプログラム領域51〜53に最新のブートプログラムを書き込む途中で電源断等して更新が失敗しても、フラグ領域54のフラグが書き換えられない限り、今まで使用していたブートプログラムが選択されるので、装置が起動不能に陥ることもない。特に、最新のブートプログラムをブートプログラム領域51〜53のいずれかに記憶するステップと、フラグ領域54に記憶されるフラグを書き換えるステップとの2つのステップでブートプログラムを更新できるので、少ない処理、すなわち短時間でブートプログラムの更新を実施することができ、ブートプログラムの更新自体の失敗を抑制することができる。
したがって、携帯端末のような電源断しやすい端末でも、ブートプログラムの更新の確実性を向上させ更新が失敗した場合でも起動不能に陥ることをなくすことができる。
【0047】
特に、各ブートプログラム領域51〜53のいずれかに最新のブートプログラムが記憶される際、この記憶の前に、各ブートプログラム領域51〜53に記憶される複数のブートプログラムのうち、最新のブートプログラムを除き最も古いブートプログラムが、ステップS207にて消去される。このように、複数のブートプログラムのうち最も古いブートプログラムを消去することで、最も利用価値の低いブートプログラムを消去して、最新のブートプログラムが記憶される領域をフラッシュメモリ50のブートプログラム領域に確保することができる。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)ステップS207におけるセクタイレーズ処理は、ブートプログラムの更新時に実施されることに限らず、例えば、当該光学的情報読取装置10の通常動作時に実施されることで所定のブートプログラムを消去してもよい。これにより、従来のブートプログラム更新時において最も時間がかかるセクタイレーズ処理が本実施形態におけるブートプログラム更新中には実施されないので、ブートプログラム更新時間の短縮を図ることができる。
【0049】
(2)ステップS207におけるセクタイレーズ処理では、最も古いブートプログラムが消去されることに限らず、各ブートプログラム領域51〜53に記憶される複数のブートプログラムのうち最新のブートプログラムを除く少なくともいずれか1つが消去されてもよい。
【0050】
(3)フラッシュメモリ50には、3つのブートプログラム領域51〜53が予め設けられることに限らず、2つのブートプログラム領域または4つ以上のブートプログラム領域が予め設けられてもよい。特に、ブートプログラム領域を多く確保することで、ブートプログラム更新時において最も時間がかかるセクタイレーズ処理の実施機会が減少するので、ブートプログラム更新時間の短縮を図ることができる。
【0051】
(4)本発明は、上述した光学的情報読取装置10に適用されることに限らず、例えば、携帯型の決済端末等の携帯端末に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10…光学的情報読取装置(携帯端末)
35…メモリ(記憶手段)
40…制御回路(書換手段,制御手段,消去手段)
50…フラッシュメモリ(記憶手段)
51〜53…ブートプログラム領域(第1の記憶領域)
54…フラグ領域(第2の記憶領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブートプログラムが記憶される記憶手段と、
前記記憶手段に記憶される前記ブートプログラムを用いて起動に関する処理を実施する制御手段と、
を備える携帯端末であって、
前記記憶手段には、複数のブートプログラムがそれぞれ個別に読み出し可能に記憶される第1の記憶領域と、これら複数のブートプログラムのうちの最新のブートプログラムを選択するためのフラグが記憶される第2の記憶領域とが設けられ、
前記第1の記憶領域に最新のブートプログラムが記憶されたことに応じてこのブートプログラムが選択されるように前記フラグを書き換える書換手段を備え、
前記制御手段は、前記第2の記憶領域に記憶される前記フラグに基づいて、前記第1の記憶領域から選択されたブートプログラムを用いて起動に関する処理を実施することを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記第1の記憶領域に記憶される複数のブートプログラムのうち最新のブートプログラムを除く少なくともいずれか1つを消去可能な消去手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記消去手段は、前記第1の記憶領域に最新のブートプログラムが記憶される際、この記憶の前に前記第1の記憶領域に記憶される複数のブートプログラムのうち最新のブートプログラムを除く少なくともいずれか1つを消去することを特徴とする請求項2に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記消去手段は、前記第1の記憶領域に記憶される複数のブートプログラムのうち最も古いブートプログラムを消去することを特徴とする請求項2または3に記載の携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−185606(P2012−185606A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47299(P2011−47299)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】