説明

携帯電話装置、通信システム及びそれに用いる通信環境表示方法並びにそのプログラム

【課題】 端末に割り当てる周波数帯域が常に変化する通信システムにおいても、正しい通信環境の良/悪の判断を行うことが可能な携帯電話装置を提供する。
【解決手段】 携帯電話装置(1)は、自端末に割り当てられる周波数帯域が動的に変化する通信を行う通信システムに用いられる。携帯電話装置(1)は、自端末に割り当てられる周波数帯域と自端末が在圏する無線ネットワークに対応する事業者が使用可能な全周波数帯域との割合を用いて通信環境の良/悪を判断する制御手段(11)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯電話装置、通信システム及びそれに用いる通信環境表示方法並びにそのプログラムに関し、特に端末に割り当てられる周波数帯域が動的に変化するLTE(Long Term Evolution)のような通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
LTEは、新たな携帯電話の通信規格である。2010年頃から世界中でのサービス開始が見込まれており、標準化団体である3GPP(3rd Generation Partnership Project)にて3GPP Release.8として標準化の作業が進められている。
【0003】
LTE通信中は、ダウンリンク伝送方向における多重アクセス方法であるOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiplexing Access:直交周波数分割多元接続方式)によって、端末に割り当てられる周波数帯域は、利用可能な全ダウンリンク周波数帯域の一部のみである可能性がある。端末に割り当てられる周波数帯域は、LTE基地局(eNodeB)によって1ms毎に動的に割り当てられ、割り当てはLTE通信接続中に常に変化する可能性がある。アップリンク伝送方向においても、同様に割り当てられる周波数帯域は変化する。
【0004】
本発明に関連する3G(W−CDMA:Wideband CodeDivision Multiple Access)システムの携帯電話においては、ユーザが通信環境の良/悪を把握できるような表示として、アンテナバーアイコンを表示する機能がある。
【0005】
しかしながら、これはダウンリンクの受信電力を元に求めたRSCP(Received Signal Code Power)やEc/No(Received energy per chip divided by the power density in the band)を使用することが多い(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“3rd Generation Partnership Project;Technical Specification Group Radio Access Network;Physical layer − Measurement(FDD)(Release 9)”(3GPP TS25.215 V9.1.0 (2009−12))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、LTEのように、通信中に周波数帯域の割り当てが随時変化するような通信システムの場合は、端末に割り当てられている周波数帯域と通信速度とが比例する(その他の条件が同じ場合)ため、例え受信電力が良くても割り当てられている周波数帯域が狭ければ、通信速度は上がらない。
【0008】
すなわち、上記のような通信システムの場合、受信電力だけでは通信環境の指標としてはふさわしくない。そこで、LTEのような通信システムにおける通信環境の良/悪を判断する別の指標が必要となる。
【0009】
また、オペレータ(事業者)毎に使用できる周波数帯域幅は異なっているため、上記の指標は、「端末が在圏する無線ネットワークに対応するオペレータが利用可能な全周波数帯域」に対する「現在、端末に割り当てられている周波数帯域」の割合で判断する必要がある。例えば、20MHzの周波数帯域が利用できるオペレータと、3MHzしか利用できないオペレータとがあった場合、上述したように、端末に割り当てられている周波数が同じ3MHzだったとしても、前者の通信環境は「悪」、後者の通信環境は「良」と判断する必要がある。
【0010】
さらに、これまでは常にダウンリンクの受信電力によって、アンテナバーを表示しているが、LTEのように、アップリンクとダウンリンクとで別々に周波数帯域が割り当てられるシステムの場合、常にダウンリンクの情報を元に通信環境の良/悪を判断するのは問題がある。
【0011】
例えば、WEBページに動画等をアップロードするような場合、アップリンクに流れているデータは多いが、ダウンリンクに流れているデータ量は少なくなる。このような場合、ダウンリンクに割り当てられる周波数帯域はアップリンクに比べ狭くなることが考えられるため、ダウンリンクではなく、アップリンクに割り当てられている周波数帯域を元に通信環境の良/悪を判断しないと、正確な判断ができない。
【0012】
LTEの特徴として、端末に割り当てる周波数帯域が常に変化することが挙げられる。このような通信システムの場合、従来から用いている端末の受信電力のみでは、正しい通信環境の良/悪の判断ができない。
【0013】
そこで、本発明の目的は上記の問題点を解消し、端末に割り当てる周波数帯域が常に変化する通信システムにおいても、正しい通信環境の良/悪の判断を行うことができる携帯電話装置、通信システム及びそれに用いる通信環境表示方法並びにそのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による携帯電話装置は、携帯電話装置に割り当てられる周波数帯域が動的に変化する通信を行う通信システムに用いる携帯電話装置であって、
自端末に割り当てられる周波数帯域と自端末が在圏する無線ネットワークに対応する事業者が使用可能な全周波数帯域との割合を用いて通信環境の良/悪を判断する制御手段を備えている。
【0015】
本発明による通信システムは、上記に記載の携帯電話装置を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明による通信環境表示方法は、携帯電話装置に割り当てられる周波数帯域が動的に変化する通信を行うシステムにおいて前記携帯電話装置に用いる通信環境表示方法であって、
前記携帯電話装置が、前記携帯電話装置に割り当てられる周波数帯域と前記携帯電話装置が在圏する無線ネットワークに対応する事業者が使用可能な全周波数帯域との割合を用いて通信環境の良/悪を判断するステップを実行している。
【0017】
本発明によるプログラムは、携帯電話装置に割り当てられる周波数帯域が動的に変化する通信を行うシステムにおいて前記携帯電話装置内の中央処理装置に実行させるプログラムであって、
前記携帯電話装置に割り当てられる周波数帯域と前記携帯電話装置が在圏する無線ネットワークに対応する事業者が使用可能な全周波数帯域との割合を用いて通信環境の良/悪を判断する処理を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、上記のような構成及び動作とすることで、端末に割り当てる周波数帯域が常に変化する通信システムにおいても、正しい通信環境の良/悪の判断を行うことができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態による携帯電話装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】(1)帯域比と(2)受信電力との組み合わせと、表示すべきアンテナバーの本数との対応を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態による通信環境表示方法の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。まず、本発明による通信システムの概要について説明する。本発明による通信システムは、例えば3.9G[以下、LTE(Long Term Evolution)とする]の携帯電話システム等、端末に割り当てられている(利用可能な)周波数帯域が可変な通信システムであり、端末の使用者が現在の通信環境の良/悪を把握できるような表示を行っている。
【0021】
本発明では、端末に割り当てられる周波数帯域の広い方が、通信速度が上がることに着目し、これを通信環境の良/悪の判断に用いることを特徴としている。
【0022】
ここで、本発明では、通信環境の良/悪を判断する指標として、使用できる全周波数帯域に対する現在端末に割り当てられている帯域の割合を使用することを第一の特徴とする。
【0023】
例えば、あるオペレータ(事業者)の全周波数帯域が3MHzで、端末に割り当てられている帯域が3MHzだった場合、「良」と判断する。また、あるオペレータの全周波数帯域が20MHzで端末に割り当てられている帯域が3MHzだった場合、「悪」と判断する。すなわち、同じ3MHzという周波数帯域が端末に割り当てられていた場合でも、全帯域に対する割合で良/悪を判断することが可能となる。
【0024】
また、本発明では、上記の指標を求める式を下記のように使い分けることを第二の特徴とする。
【0025】
・アップリンク(端末→基地局方向)に現在流れているデータ量>ダウンリンク(基地局→端末方向)に現在流れているデータ量の場合は、
「アップリンク(端末からの送信)に割り当てられている周波数帯域」÷「アップリンクで使用できる全周波数帯域」・・・(A)
という式を使用する。
【0026】
・アップリンク(端末→基地局方向)に現在流れているデータ量<ダウンリンク(基地局→端末方向)に現在流れているデータ量の場合は、
「ダウンリンク(基地局からの送信)に割り当てられている周波数帯域」÷「ダウンリンクで使用できる全周波数帯域」・・・(B)
という式を使用する。
【0027】
・アップリンク(端末→基地局方向)に現在流れているデータ量≒ダウンリンク(基地局→端末方向)に現在流れているデータ量の場合は、上記の(A)式と(B)式との平均を使用する。
【0028】
最終的には、上記で求めた指標と、従来の3G(W−CDMA:Wideband CodeDivision Multiple Access)システムで用いられている受信電力[LTEの場合RSRP(Reference Signal Received Power):3GPP(3rd Generation Partnership Project) TS36.214 V9.0.0(2009−12)(非特許文献2)に記載]との組み合わせにより、通信環境の表示を行う。
【0029】
以下では、LTEのような通信システムの場合の例について記載するが、別のシステムであっても、以下と同様の方法を適用することができる。
【0030】
LTE通信中は、図2に示すように、(1)帯域比と(2)受信電力との組み合わせと、表示すべきアンテナバーの本数とを事前に定義しておき、(1)帯域比と(2)受信電力とから表示するアンテナバーの本数を求めてそれを表示する。例えば、(1)帯域比が50%、(2)受信電力が70dBmだった場合、図2に示す「★」に該当し、表示するアンテナバーの本数は2本となる。
【0031】
(1)帯域比は、下記の処理のようにして求める。尚、下記の処理について後述する。
【0032】
(C)アップリンク帯域比は、
「(1)現在、端末に割り当てられているアップリンクの周波数帯域」÷「(2)端末が在圏する無線ネットワークに対応するオペレータが使用可能な全アップリンク周波数帯域」
という式にて求める。例えば、(1)端末に割り当てられているアップリンクの周波数帯域帯域比が50、(2)端末が在圏する無線ネットワークに対応するオペレータが使用可能な全アップリンク周波数帯域が100とすると、上記の指標は、「50÷100=50%」となる。
【0033】
(D)ダウンリンク帯域比は、
「現在、端末に割り当てられているダウンリンクの周波数帯域」÷「端末が在圏する無線ネットワークに対応するオペレータが使用可能な全ダウンリンク周波数帯域」
という式にて求める。ここで、現在、通信中のアップリンクに流れるデータ量と、ダウンリンクに流れるデータ量とを比較し、下記条件で(C)、(D)、(C)と(D)との平均のどれを表示すべき帯域比とするかを判断する。
【0034】
・アップリンク(端末→基地局方向)に現在流れているデータ量>ダウンリンク(基地局→端末方向)に現在流れているデータ量の場合は、(C)を用いる。
【0035】
・アップリンク(端末→基地局方向)に現在流れているデータ量<ダウンリンク(基地局→端末方向)に現在流れているデータ量の場合は、(D)を用いる。
【0036】
・アップリンク(端末→基地局方向)に現在流れているデータ量≒ダウンリンク(基地局→端末方向)に現在流れているデータ量の場合は、上記の(C)と(D)との平均を用いる。
【0037】
尚、(C)と(D)とを切り替えずにそれぞれ別々に表示することも可能ではあるが、近年、端末の画面上に表示されるアイコンの数が増えており、アイコンを分けずに1つにまとめる方法(例えば、本発明のように切り替えて表示すること)が重要となっている。
【0038】
(2)受信電力は、端末で測定したダウンリンクの受信電力である。例えば、LTEの場合、RSRPを用いる。
【0039】
このように、本発明による通信システムでは、端末に割り当てられる周波数帯域の広い方が、通信速度が上がることに着目し、これを通信環境の良/悪の判断に用いることで、端末に割り当てる周波数帯域が常に変化する通信システムにおいても、正しい通信環境の良/悪の判断を行うことができるという効果が得られる。
【0040】
図1は本発明の第1の実施の形態による携帯電話装置の構成例を示すブロック図である。図1において、本発明の第1の実施の形態による携帯電話装置1は、アンテナ10と、制御部11[例えば、CPU(中央処理装置)]と、無線部12と、受信電力測定部13と、本体表示部14と、本体記憶部15とから構成されている。
【0041】
制御部11は、全周波数帯域演算部111と、端末割り当て周波数帯域演算部112と、使用帯域比決定部113と、表示アイコン決定部114とを備えている。
【0042】
全周波数帯域演算部111は、オペレータ(事業者)が利用可能な全周波数帯域をアップリンク、ダウンリンクそれぞれ求める。端末割り当て周波数帯域演算部112は、無線部12で受信した信号から、現在、端末に割り当てられている周波数帯域をアップリンク、ダウンリンクそれぞれ求める。
【0043】
使用帯域比決定部113は、現在通信中のアップリンクに流れるデータ量と、ダウンリンクに流れるデータ量を比較し、上記の(C)、(D)、(C)と(D)との平均のどれを表示すべき帯域比とするかを判断する。表示アイコン決定部114は、帯域比及び受信電力測定部12で測定した受信電力から、本体表示部14に表示すべきアイコンを決定して表示する。
【0044】
図2は(1)帯域比と(2)受信電力との組み合わせと、表示すべきアンテナバーの本数との対応を示す図である。図2においては、(1)帯域比と(2)受信電力との組み合わせと、表示すべきアンテナバーの本数とを事前に定義して本体記憶部15に記憶している。
【0045】
制御部11は、本体記憶部15に記憶している対応表を参照し、(1)帯域比と(2)受信電力とから表示するアンテナバーの本数を求めてそれを表示する。例えば、(1)帯域比が50%、(2)受信電力が70dBmだった場合、図2に示す「★」に該当し、表示するアンテナバーの本数は2本となる。
【0046】
図3は本発明の第1の実施の形態による通信環境表示方法の処理を示すフローチャートである。これら図1〜図3を参照して本発明の第1の実施の形態による通信環境表示方法について説明する。尚、図3に示す処理動作は、制御部11が本体記憶部15に格納するプログラムを実行することで実現される。
【0047】
携帯電話装置1の制御部11(全周波数帯域演算部111)は、無線部12で受信した信号から、端末が在圏する無線ネットワークに対応するオペレータ(事業者)が利用可能な全周波数帯域をアップリンク、ダウンリンクそれぞれ求め(図3ステップS1)、本体記憶部15に記憶する。
【0048】
アップリンクの全周波数帯域(a)は、例えばLTEの場合、LTE基地局(eNodeB)から報知情報{System Information Block Type2のUl(Uplink)−Bandwidth[3GPP TS36.331 V9.0.0(2009−09) 「6.3.1 System information blocks」(非特許文献3)に記載]}で通知されるRB(Resource Block)の数(6,15,25,50,75,100のいずれか)をオペレータが利用可能なアップリンクの全周波数帯域とする。
【0049】
また、Ul−Bandwidthは、ダウンリンクのメッセージ[RRC(Radio Resource Control) Connection Reconfiguration message等)にも含まれることがあるため、受信した最新のUl−Bandwidthで本体記憶部15の情報を更新する[3GPP TS36.331 V9.0.0(2009−09) 「6.2.2 Message definitions」(非特許文献4)、3GPP TS36.331 V9.0.0(2009−09) 「6.3.4 Mobility control information elements」(非特許文献5)に記載]。
【0050】
さらに、Ul−Bandwidthが受信されない場合、アップリンクの全周波数帯域は、ダウンリンクの全周波数帯域と等しい値とする。ここで、RBは、15KHzのサブチャネルの集合であり、180kHzの帯域を持つ伝送の基本単位である。UplinkのRBについては、3GPP TS36.211 V9.0.0(2009−12) 「5.2.3 Resource blocks」(非特許文献6)に記載され、DownlinkのRBについては、3GPP TS36.211 V9.0.0(2009−12) 「6.2.3 Resource blocks」(非特許文献7)に記載されている。
【0051】
ダウンリンクの全周波数帯域(b)は、例えばLTEの場合、LTE基地局(eNodeB)から報知情報{Master Information Block のDl(Downlink)−Bandwidth[3GPP TS36.331 V9.0.0(2009−09) 「6.2.2 Message definitions」(非特許文献4)に記載]}で通知されるRBの数(6,15,25,50,75,100のいずれか)をオペレータが利用可能なダウンリンクの全周波数帯域とする。
【0052】
また、Dl−Bandwidthは、基地局から端末に送信されるダウンリンクのメッセージ{RRC Connection Reconfiguration message等にも含まれることがあるため、受信した最新のDl−Bandwidthで本体記憶部15の情報を更新する[3GPP TS36.331 V9.0.0(2009−09) 「6.2.2 Message definitions」(非特許文献4)、3GPP TS36.331 V9.0.0(2009−09) 「6.3.4 Mobility control information elements」(非特許文献5)に記載]。
【0053】
携帯電話装置1の制御部11(端末割り当て周波数帯域演算部112)は、無線部12で受信した信号から、現在、端末に割り当てられている周波数帯域をアップリンク、ダウンリンクそれぞれ求め(図3ステップS2)、本体記憶部15に記憶する。
【0054】
現在、端末のアップリンクに割り当てられている周波数帯域(c)は、例えばLTEの場合、LTE基地局(eNodeB)からPDCCH(Physical Downlink Control CHannel)チャネルで通知される端末で使用できるアップリンクのRBの数とする。
【0055】
現在、端末のダウンリンクに割り当てられている周波数帯域(d)は、例えばLTEの場合、LTE基地局(eNodeB)からPDCCHチャネルで通知される端末で使用できるダウンリンクのRBの数とする。
【0056】
LTEの場合、上記の周波数割り当ては1ms周期で更新されるため、例えば3秒程度の長い期間で移動平均値を求め、その値を本体記憶部15に記憶する。
【0057】
携帯電話装置1の制御部11(使用帯域比決定部113)は、上記のステップS1,S2の処理で求めた値から、帯域比をアップリンク、ダウンリンクそれぞれ下記の式で計算し(図3ステップS3)、本体記憶部15に記憶する。
【0058】
アップリンクの帯域比(E)は、
「現在、端末に割り当てられているアップリンクの周波数帯域(c)」÷「端末が在圏する無線ネットワークに対応するオペレータが使用可能な全アップリンク周波数帯域(a)」
という式で計算する。
【0059】
ダウンリンクの帯域比(F)は、
「現在、端末に割り当てられているダウンリンクの周波数帯域(d)」÷「端末が在圏する無線ネットワークに対応するオペレータが使用可能な全ダウンリンク周波数帯域(b)」
という式で計算する。
【0060】
携帯電話装置1の制御部11(使用帯域比決定部113)は、現在、通信中のアップリンクに流れるデータ量と、ダウンリンクに流れるデータ量とを比較し、下記の条件でアップリンクの帯域比(E)、ダウンリンクの帯域比(F)、アップリンクの帯域比(E)とダウンリンクの帯域比(F)との平均のどれを表示すべき帯域比とするかを判断する(図3ステップS4)。
【0061】
・アップリンク(端末→基地局方向)に現在流れているデータ量>ダウンリンク(基地局→端末方向)に現在流れているデータ量の場合は、アップリンクの帯域比(E)を用いる。
【0062】
・アップリンク(端末→基地局方向)に現在流れているデータ量<ダウンリンク(基地局→端末方向)に現在流れているデータ量の場合は、ダウンリンクの帯域比(F)を用いる。
【0063】
・アップリンク(端末→基地局方向)に現在流れているデータ量≒ダウンリンク(基地局→端末方向)に現在流れているデータ量の場合は、アップリンクの帯域比(E)とダウンリンクの帯域比(F)との平均を用いる。すなわち、「[アップリンクの帯域比(E)+ダウンリンクの帯域比(F)]÷2」とする。「≒」とは、例えば両者の差が±10%程度であれば「≒」と判断する。
【0064】
携帯電話装置1の制御部11は、受信電力測定部13にて、無線部12で受信した信号の受信電力を測定し、本体記憶部15に記憶する(図3ステップS5)。受信電力は、例えばLTEの場合、RSRP[3GPP TS36.214 V9.0.0(2009−12)に記載]とする。その求め方は、3GPPで定義される既知の方法を用いれば良く、その求め方についての説明は省略する。
【0065】
この受信電力の値も、例えば3秒等長い期間での移動平均値を求め、その値を本体記憶部15に記憶する。
【0066】
ここで求めた受信電力は、ダウンリンクの受信電力であるが、アップリンクのアイコン表示の判断にも使用する。例えば、ダウンリンクの受信電力が小さい場合、基地局と端末との距離が離れていることが考えられ、この場合、アップリンクの通信環境も悪いと判断できるためである。
【0067】
携帯電話装置1の制御部11(表示アイコン決定部114)は、事前に本体記憶部15に記憶していた図2に示す対応表と、上記のステップS4で求めた帯域比と、上記のステップS5で測定した受信電力とから、本体表示部14に表示すべきアイコンを決定して表示する(図3ステップS6)。
【0068】
例えば、(1)帯域比が50%、(2)受信電力が70dBmだった場合、図2に示す「★」に該当し、表示するアンテナバーの本数は2本となる。
【0069】
本実施の形態では、LTE通信中、上記のステップS1〜S6を繰り返すことで、本体表示部14に表示すべきアイコンの表示を更新する。
【0070】
このように、本実施の形態では、LTE通信中のように、端末(携帯電話装置1)に割り当てられる周波数帯域が常に変化する通信システムであっても、端末に割り当てられた周波数帯域を元に通信環境を判断し、本体表示部14に表示すべきアイコンの表示を行うことができるため、正確な通信環境の状態をユーザに知らせることができる。
【0071】
すなわち、例え受信電力が良くても、割り当てられている周波数帯域が狭ければ通信速度が上がらないといったことが発生するが、従来の技術では、受信電力のみで通信環境の良/悪を判断していたため、このようなケースでは正しい表示ができない。これに対し、本実施の形態では、正しい通信環境の良/悪の判断を行うことができる。
【0072】
上記の指標は、「端末が在圏する無線ネットワークに対応するオペレータが利用可能な全周波数帯域」に対する「現在、端末に割り当てられている周波数帯」の割合で判断するため、オペレータ毎に使用できる周波数帯域幅が異なっていても、正しく通信環境の良/悪の判断が可能である。
【0073】
例えば、20MHzの周波数帯が利用できるオペレータと、3MHzしか利用できないオペレータとがあった場合、端末に割り当てられている周波数が同じ3MHzだったとしても、前者は「悪」、後者は「良」と判断することができる。
【0074】
さらに、本実施の形態では、LTEのように、アップリンクとダウンリンクとで別々に周波数帯域が割り当てられる通信システムの場合でも、アップリンクに流れているデータ量とダウンリンクに流れているデータ量とを比較し、アップリンク、ダウンリンクのどちらの周波数割り当てを通信環境の良/悪の判断に使用するかを切り替えているため、表示するアイコンをアップリンク、ダウンリンクで1つにまとめることができる。
【0075】
上述した本発明の第1の実施の形態では、LTEの携帯電話システムにおける手順について説明しているが、特にLTEに限定するものではない。
【0076】
本発明の第1の実施の形態では、上記のステップS1〜S3の処理でアップリンク、ダウンリンクそれぞれの帯域比を求めているが、先にステップS4の処理を実施し、表示に必要な方だけ帯域比を計算する方法でも良い。例えば、ステップS4の処理でダウンリンクの帯域比を表示するとなった場合、ステップS1〜S3の処理におけるアップリンクの帯域比の計算を省略することができる。
【0077】
本発明の第1の実施の形態では、上記のステップS5の処理において、受信電力RSRPを使用するとしているが、RSRQ(Reference Signal Received Quality)[3GPP TS36.214 V9.0.0(2009−12)に記載]等、3GPPで規定されている他の値を用いても良い。この場合、図2に示す対応表も、RSRPではなく、RSRQで定義しておく。
【0078】
本発明の第1の実施の形態では、上記のステップS5の処理において、アイコンを判断する条件として、帯域比と受信電力との組み合わせとしているが、さらに別の条件を追加しても良い。LTEでは、MIMO(Multiple Input Multiple Output)技術のサポートが標準化されているが、MIMOのアンテナ数を条件に追加しても良い。
【0079】
例えば、2×2のMIMOで通信している場合、図2に示す対応表で求めたアンテナ本数+1とし、4×4のMIMOで通信している場合、図2に示す対応表で求めたアンテナ本数+2とする。
【0080】
本発明の第1の実施の形態では、アイコンを1つにまとめているが、例えば、上記のステップS1〜S3の処理で求めた帯域幅と、ステップS5の処理で求めた受信電力とを別々のアイコンで表示しても良い。また、ステップS4の処理でアップリンク、ダウンリンク、またはその平均の帯域幅を表示の対象として判断しているが、ステップS4の処理を実施せずに、アップリンク、ダウンリンクそれぞれ別々のアイコン表示としても良い。
【0081】
(付記1)携帯電話装置に割り当てられる周波数帯域が動的に変化する通信を行うシステムにおいて前記携帯電話装置に用いる通信環境表示方法であって、
前記携帯電話装置が、前記携帯電話装置に割り当てられる周波数帯域と前記携帯電話装置自端末が在圏する無線ネットワークに対応する事業者が使用可能な全周波数帯域との割合を用いて通信環境の良/悪を判断する第1のステップと、前記携帯電話装置の受信電力を測定する第2のステップと、前記通信環境の良/悪を示すアイコンを表示手段に表示する第3のステップとを実行し、
前記第1のステップにおいて、前記第2のステップで測定された前記受信電力と前記通信環境の良/悪の決定結果とを組み合わせて前記表示手段に表示すべきアイコンを決定することを特徴とする通信環境表示方法。
【0082】
(付記2)前記第1のステップにおいて、前記携帯電話装置におけるアップリンクのデータ量とダウンリンクのデータ量とを比較し、少なくとも前記通信環境の良/悪を判断するための帯域比の指標を前記アップリンクと前記ダウンリンクとのうちいずれを用いて求めるかを決定することを特徴とする付記1に記載の通信環境表示方法。
【0083】
(付記3)前記通信システムは、LTE(Long Term Evolution)のシステムであることを特徴とする付記1または付記2に記載の通信環境表示方法。
【0084】
(付記4)前記第1のステップにおいて、前記アイコンを決定する条件として、MIMO(Multiple Input Multiple Output)のアンテナ数を追加したことを特徴とする付記3に記載の通信環境表示方法。
【符号の説明】
【0085】
1 携帯電話装置
10 アンテナ
11 制御部
12 無線部
13 受信電力測定部
14 本体表示部
15 本体記憶部
111 全周波数帯域演算部
112 端末割り当て周波数帯域演算部
113 使用帯域比決定部
114 表示アイコン決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯電話装置に割り当てられる周波数帯域が動的に変化する通信を行う通信システムに用いる携帯電話装置であって、
自端末に割り当てられる周波数帯域と自端末が在圏する無線ネットワークに対応する事業者が使用可能な全周波数帯域との割合を用いて通信環境の良/悪を判断する制御手段を有することを特徴とする携帯電話装置。
【請求項2】
自端末の受信電力を測定する測定手段と、前記通信環境の良/悪を示すアイコンを表示する表示手段とを含み、
前記制御手段は、前記測定手段で測定された前記受信電力と前記通信環境の良/悪の決定結果とを組み合わせて前記表示手段に表示すべきアイコンを決定することを特徴とする請求項1記載の携帯電話装置。
【請求項3】
前記制御手段は、自端末におけるアップリンクのデータ量とダウンリンクのデータ量とを比較し、少なくとも前記通信環境の良/悪を判断するための帯域比の指標を前記アップリンクと前記ダウンリンクとのうちいずれを用いて求めるかを決定することを特徴とする請求項1または請求項2記載の携帯電話装置。
【請求項4】
前記通信システムは、LTE(Long Term Evolution)のシステムであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか記載の携帯電話装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記アイコンを決定する条件として、MIMO(Multiple Input Multiple Output)のアンテナ数を追加したことを特徴とする請求項4記載の携帯電話装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の携帯電話装置を含むことを特徴とする通信システム。
【請求項7】
携帯電話装置に割り当てられる周波数帯域が動的に変化する通信を行うシステムにおいて前記携帯電話装置に用いる通信環境表示方法であって、
前記携帯電話装置が、前記携帯電話装置に割り当てられる周波数帯域と前記携帯電話装置が在圏する無線ネットワークに対応する事業者が使用可能な全周波数帯域との割合を用いて通信環境の良/悪を判断するステップを実行することを特徴とする通信環境表示方法。
【請求項8】
携帯電話装置に割り当てられる周波数帯域が動的に変化する通信を行うシステムにおいて前記携帯電話装置内の中央処理装置に実行させるプログラムであって、
前記携帯電話装置に割り当てられる周波数帯域と前記携帯電話装置が在圏する無線ネットワークに対応する事業者が使用可能な全周波数帯域との割合を用いて通信環境の良/悪を判断する処理を含むことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−151506(P2011−151506A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9590(P2010−9590)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】