説明

搾乳器

【課題】単に吸引して解放するだけの従来品と比べて高いマッサージ効果を得ることのできる搾乳器を提供する。
【解決手段】乳当て部10の開口部10aには、シリコンゴムやポリプロピレン等の弾性材料からなるパッド15が着脱可能に取り付けられる。パッド15には、他所よりも厚肉に形成され、自然状態で反乳当て面となる外周面15aの側に突出すると共に、乳当て部10内部の負圧発生時に乳当て部10の内周面10bと当接することにより、乳当て面となる内周面15b側に突出する厚肉部17が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、母乳を搾乳するための搾乳器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の搾乳器51は、図6に示すように、搾乳した乳液を溜めるボトル52の上部に、仕切り部材53を介して搾乳ヘッド54をねじ嵌合により取り付け、この搾乳ヘッド54にゴム球55を取り付けたものである(例えば、特許文献1参照)。なお、図4において、56は乳当て部、57は逆止弁をそれぞれ示している。
【0003】
この搾乳器51の動作を説明する。まず、乳房に乳当て部56を押し当てた状態でゴム球55を圧縮すると、ゴム球55から押出された空気が搾乳ヘッド54内に流れ込む。搾乳ヘッド54内に流れ込んだ空気は逆止弁57を押し開き、ボトル52へと流れ込む。このとき、ボトル52に流れ込んだ空気は、ボトル52と搾乳ヘッド54とのねじ嵌合部のわずかなすき間を通過して外部空間へ排出される。その後、ゴム球55の圧縮状態を解放すると、搾乳ヘッド54内の空気はゴム球55に吸引される。この状態では、ボトル52内の空気は、逆止弁57によって搾乳ヘッド54内に流れ込まないので、密閉された搾乳ヘッド54内は負圧となり搾乳が行われる。次にゴム球55を圧縮すると、搾乳された母乳が空気とともに逆止弁57を押し開き、ボトル52に流れ込む。
【特許文献1】実開昭52−15896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、上述の搾乳器では、ゴム球55の圧縮、解放により搾乳ヘッド54内を負圧とし、乳当て部56に押し当てた乳房を吸引、解放するに過ぎない。そのため、かかる構成では、十分なマッサージ効果を得ることは難しい。
【0005】
そこで、本発明は、単に吸引して解放するだけの従来品と比べて高いマッサージ効果を得ることのできる搾乳器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る搾乳器は、内部に負圧を発生可能とした乳当て部と、弾性材料からなり、乳当て部の開口部に装着されたパッドとを有するものにおいて、パッドに、他所よりも厚肉に形成され、自然状態で反乳当て面側に突出すると共に、乳当て部内部の負圧発生時に乳当て部の内周面と当接することにより、乳当て面側に突出する厚肉部を設けたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、自然状態(乳当て部内部が常圧状態)では、パッドに設けられた厚肉部が反乳当て面側に突出するので、使用者が違和感を感じることなく乳房にパッドを装着することができる。また、負圧状態(パッドが乳当て部内部に吸引される状態)では、厚肉部が、乳当て部の内面と当接することで乳当て面側に突出するので、乳房が刺激される。従って、乳当て部内を繰り返し負圧状態と常圧状態とに切換えることにより、非常に高いマッサージ効果が得られる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る搾乳器によれば、単に吸引して解放するだけの従来品と比べて高いマッサージ効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する各実施形態において、同じ作用を奏する部材、部位には同じ符号を付して説明する。
【0010】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る搾乳器1の縦断面図である。この搾乳器1は、台座2により直立させたボトル3と、ボトル3に取り付けられた搾乳ヘッド4と、チューブ5およびチューブ5を介して搾乳ヘッド4に取り付けられたゴム球(中空弾性体)6とで構成される排出装置7と、搾乳ヘッド4内に設けられた仕切り膜8と、を主な要素として構成される。
【0011】
搾乳ヘッド4は、略円筒状の基部9と、基部9の外周から外径側に延びた乳当て部10と、基部9の上開口端9aに取り付けられた上蓋部11とを備えている。基部9は、その下端部内周に形成されたねじ部9bと、ボトル3の上端部外周に形成されたねじ部3aとを、仕切り部材12を介してねじ嵌合させることで、ボトル3に取り付けられる。なお、ボトル3と搾乳ヘッド4との間に介装される仕切り部材12には逆止弁13が設けられ、仕切り部材12の鍔部12a下面には半径方向溝14が形成されている。
【0012】
乳当て部10は、基部9の外径側に向けてラッパ状に拡開した部分を有しており、その内部空間と基部9の内部空間とを連通させた状態で基部9と一体に形成される。乳当て部10の開口部10aには、パッド15が着脱可能に取り付けられている。このパッド15は、例えばシリコンゴムやポリプロピレン等の弾性材料で形成され、パッド15を乳当て部10に取り付けた状態ではパッド15の外周面(反乳当て面)15aと、乳当て部10の内周面10bとの間に隙間16が形成される。このパッド15は、個々人の乳房や乳頭を、その大きさに応じて乳当て部10にフィットさせるためのアダプタとして機能するとともに、乳頭が搾乳ヘッド4内に吸引された状態では、隙間16の分だけパッド15全体を搾乳ヘッド4内に吸引することで、乳頭だけでなく、パッド15に密着した乳房を、広い範囲に亘って搾乳ヘッド4内に吸引することを可能にしたものである。従って、使用者は、パッド15を乳房に装着することにより、痛みを感じることなく搾乳を行うことができる。
【0013】
また、このパッド15には、他所に比べて肉厚となる厚肉部17が設けられており、この厚肉部17は、例えば図5(a)に示すように、乳当て部10の内部空間が常圧の状態では、パッド15の外周面(反乳当て面)15a側に突出している。乳当て部10の内部空間が負圧状態になると、パッド15が搾乳ヘッド4内に吸引され、外周面15aに突出した厚肉部17が乳当て部10の内周面10bに当接する。この状態から、さらに隙間16の分だけパッド15が搾乳ヘッド4内に向けて引張られると、図5(b)に示すように、パッド15の外周面15aと乳当て部10の内周面10bとが密着すると共に、厚肉部17は、パッド15内部に押し込まれてパッド15の内周面(乳当て面)15b側に突出する。このように、パッド15の乳房への装着時にはパッド15の内周面15bが平滑となるので、使用者が違和感を感じることなくパッド15を乳房に装着することができる。また、乳当て部10の内部空間を負圧にした状態では、乳房に密着したパッド15の内周面(乳当て面)15b側に厚肉部17が突出するので乳房が刺激される。従って、乳当て部10内の圧力状態を、常圧と負圧とに交互に切換えることで一種のマッサージ効果が得られ、より効果的に搾乳を行うことができる。なお、厚肉部17は、この実施形態では、パッド15の円周方向に亘って複数箇所設けられているが、特にこれに限られず、例えば、パッド15の全周に亘って厚肉部17を環状に設けることもできる。
【0014】
上蓋部11は、その下端部11aと基部9の上開口端9aとの間に仕切り膜8を挟んだ状態で、下端部11aを上開口端9aに嵌め合わせることで基部9に固定される。上蓋部11の頂部には、反ボトル3側に向けて上開口部19が形成されており、この上開口部19にはチューブ5を介してゴム球6が取り付けられる。なお、上蓋部11は、この実施形態では、頂部を外径側にずらした略ドーム形状を成しているが、例えば、頂部が中心に位置する半球状を成すものでもよく、この他にも種々の形状を採ることができる。
【0015】
仕切り膜8は、この実施形態では図1に示すように、有底円筒形状を成す薄膜状の弾性体であり、この仕切り膜8の材料には、例えば可撓性を有し、かつ無臭性のシリコンゴムあるいはポリプロピレン等が用いられる。仕切り膜8は、仕切り膜8の周縁に形成されたフランジ部18を、基部9の上開口端9aに嵌合させるとともに、チューブ5に連結された上蓋部11と搾乳ヘッド4とで挟持することで搾乳ヘッド4内に固定される。これにより、搾乳ヘッド4内の空間は、乳当て部10の内部空間を含む第1の空間20と、チューブ5を介してゴム球6内の空間とのみ連通する第2の空間21とに分割される。
【0016】
搾乳ヘッド4には、第2の空間21を、外部空間に対して開放あるいは閉鎖する開閉機構22が設けられる。開閉機構22は、この実施形態では、例えば図2に示すように、上蓋部11の外周に、その外径側に向けて形成された側開口部23と、側開口部23に装着され、外部からの操作で弾性変形させることで第2の空間21を外部に開放する弾性体24とで構成される。弾性体24は、例えば有底円筒形状を成し、その側面に貫通孔25aを形成したゴムキャップ25で構成され、第2の空間21と連通する孔26を覆うように側開口部23に取り付けられる。このゴムキャップ25を側開口部23に装着してゴムキャップ25を内径側に向けて押した状態では、ゴムキャップ25の内周と側開口部23の外周との間にすき間が形成される(例えば、図2中1点鎖線の状態)。このすき間に面したゴムキャップ25の貫通孔25aおよび孔26を介して、第2の空間21が外部空間に開放される。そのため、第2の空間21内の気圧が外気圧より小さい場合には、第2の空間21内に外気が流入する。また、開閉機構22は、この実施形態で例示したものの他、例えば図示は省略するが、押しボタンと、ボタンに連動して開閉することで孔26と連通する弁とで構成することもでき、あるいは、孔26を備えた側開口部23に回動自在に取付けられ、回動により外部と孔26との連通状態(空気の出入量)を調整するカバーで構成することもできる。
【0017】
次に、この搾乳器1の動作を説明する。
【0018】
ゴムキャップ25を押圧した状態でゴム球6を圧縮すると、ゴム球6から押し出された空気がチューブ5を介して仕切り膜8と上蓋部11とで囲まれる第2の空間21に流れ込み、さらに孔26からゴムキャップ25の貫通孔25aを介して外部に放出される。この状態では、仕切り膜8は、図1に示すようにニュートラルな位置(図1中実線の位置)にある。この後、ゴムキャップ25の押圧状態を解放して、第2の空間21と外部空間とを閉じた状態にしてからゴム球6の圧縮状態を解除する。これにより、第2の空間21内の空気がゴム球6内の空間に流れ込み、第2の空間21内が負圧状態になるとともに、仕切り膜8が第2の空間21側に移動して(図1中2点鎖線の位置)第2の空間21が収縮する。この結果、第1の空間20が、第2の空間21が収縮した分だけ膨張し、負圧状態に変化するため、予め乳当て部10に押し当てた(乳当て部10に取り付けたパッド15に密着した)乳房が乳頭とともに第1の空間20内に吸引され、母乳が搾乳される。
【0019】
次に、ゴム球6を圧縮すると、ゴム球6から押し出された空気がチューブ5を介して第2の空間21に流れ込み、仕切り膜8を第1の空間20側に移動させる。これにより、圧縮された第1の空間20内の空気が搾乳された母乳とともにボトル3と搾乳ヘッド4との間に介装された仕切り部材12の逆止弁13を押し開き、ボトル3に流れ込む。このようにして、ゴム球6の圧縮と圧縮解除を繰り返すことにより、搾乳された母乳がボトル3内に溜められる。なお、ボトル3に母乳とともに流れ込んだ空気は、仕切り部材12の鍔部12a下面に設けられた半径方向溝14を通過し、さらにボトル3と搾乳ヘッド4とのねじ嵌合部のわずかなすき間を通過して外部空間へ排出される。そのため、ボトル3内は常に常圧に保たれる。また、ボトル3と搾乳ヘッド4とのねじ嵌合部のすき間は、気密性を持たないが、水密性を有する程度に空いている。そのため、ボトル3が横転しても、ボトル3内の母乳が前記ねじ嵌合部を通過して外部に流出することはない。
【0020】
このように、搾乳ヘッド4内に仕切り膜8を設けて、搾乳ヘッド4内の空間を、乳当て部10を含む第1の空間20と、チューブ5を介してゴム球6と連通する第2の空間21とに分割することにより、乳当て部10内の空間とゴム球6内の空間とが分離される。そのため、搾乳された母乳がゴム球6内に流れ込むのを防止することができ、母乳の衛生状態を清潔に保つことができる。また、乳当て部10から第1の空間20を介してボトル3に至る母乳の流入経路(空間)に、ゴム球6から第2の空間21に向けて送り出される空気が流れ込むことがないので、ゴム球6内の空気を、搾乳された母乳に触れさせないようにすることができる。
【0021】
また、ボトル3と搾乳ヘッド4との間に仕切り部材12を介装することにより、ボトル3内と搾乳ヘッド4内とが分断され、負圧を発生させる第1の空間のニュートラル状態における容積が減少する。これにより、第1の空間20の元の容積(第2の空間21と同じ圧力状態における容積)に対する膨張割合を高めて、第1の空間20により大きな負圧を発生させることができる。さらには、第2の空間21を外部空間に対して開放あるいは閉鎖する開閉機構22を搾乳ヘッド4に設けているので、開閉機構22とゴム球6を上述の順に操作することで第2の空間21内を負圧状態にして、第1の空間20の膨張容積を増加させることができる。また、第2の空間21とゴム球6内を負圧状態にすることにより、わずかな力でゴム球6を圧縮することができるので、使用者の肉体的負担を軽減して搾乳を行うことができる。なお、この図示例では、搾乳ヘッド4の上蓋部11に開閉機構22を設けているが、この開閉機構22は、第2の空間21を外部空間に対して開放あるいは閉鎖を可能とする限り、例えばゴム球6とチューブ5との取付け部27など、上蓋部11に限ることなく他の部位にも設けることが可能である。
【0022】
また、ゴム球6を圧縮して第2の空間21内に空気を送り込むことで、仕切り膜8が第1の空間20側に大きく膨らみ、第1の空間20内の空気が仕切り部材12側に押し込まれるとともに乳当て部10側にも押し込まれる。これにより、乳当て部10に押し当てた乳房が、乳当て部10側に押し込まれた空気によって押される。このように、本発明によれば、搾乳中、乳房を吸引するとともに押すなどの刺激を繰り返し与えることができるので、非常に高いマッサージ効果を得ることができ、効率よく搾乳を行うことが可能となる。
【0023】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明に係る搾乳器は上記実施形態に限られるものではなく、例えば図2に示すように、図1に示す仕切り膜8を、蛇腹部を備えた中空状の伸縮体28とすることもできる。この伸縮体28は、蛇腹部に沿った方向に伸縮動作を行うことによって、搾乳ヘッド4内に負圧を発生させるものである。したがって、この伸縮体28の材料、厚さ、内部容積等を、搾乳ヘッド4内に発生させた負圧が伸縮体28の伸縮動作を妨げない程度に適宜定めるのが好ましい。また、排出装置7としては、この他にも、例えば動力源は問わないが、シリンダを構成部品として排出装置7を構成することもでき、その場合には、図示は省略するが、シリンダのピストン面が第2の空間を仕切る一平面を形成する。
【0024】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る搾乳器31の縦断面図である。この実施形態に係る搾乳器31は、第1の実施形態では、チューブ5およびチューブ5を介して第2の空間21に取り付けられたゴム球6とで排出装置7を構成したのに対し、電源32と、電源32からの電力の供給により駆動するモータ33と、モータ33の駆動に伴い拡縮するポンプ空間34とを備えた電動式のポンプ35で排出装置7を構成する点で第1の実施形態と異なる。このうちポンプ空間34は、図示は省略するが(詳細な構造は、例えば特開2004−000486号公報を参照)、モータ33の回転軸に連結されてモータ33の駆動に伴って振動するダイアフラムと、ダイアフラムと対向してポンプ35内に配設されるダイアフラムプレートとの間に形成され、例えばダイアフラムプレートには、ポンプ空間34を膨張させた状態では第2の空間21からポンプ空間34に空気を引き込むための逆止弁と、ポンプ空間34を収縮させた状態ではポンプ空間34内の空気を外部に放出するための逆止弁がそれぞれ設けられている。なお図3中、36は押しボタンを、37は押しボタン36を押すことで第2の空間21を外部に対して開放する開閉機構を、38はモータ33のオン・オフ状態を切換える切換スイッチをそれぞれ示す。
【0025】
次に、この搾乳器31の動作を説明する。
【0026】
切換スイッチ38を操作して電源32とモータ33を電通状態にすることで、モータ33を駆動させる。このモータ33の駆動に伴い、モータ33の回転軸に連結されたダイアフラムが振動し、ダイアフラムとダイアフラムプレートとの間に形成されるポンプ空間34を拡縮させる。ポンプ空間34を膨張させた時にはダイアフラムプレートに設けられた逆止弁により、第2の空間21からポンプ空間34に空気が引き込まれ、収縮させた時には第2の空間21からポンプ空間34に空気を引き込む逆止弁とは別の逆止弁により、ポンプ空間34内の空気が外部に放出される。これにより、第2の空間21内の空気がポンプ空間34を介して連続的に外部に放出され、第2の空間21内が負圧状態になるとともに、仕切り膜8が第2の空間21側に移動して(図3中2点鎖線の位置)第2の空間21が収縮する。この結果、第1の空間20が、第2の空間21が収縮した分だけ膨張し、負圧状態に変化するため、予め乳当て部10に押し当てた(乳当て部10に取り付けたパッド15に密着した)乳房が乳頭とともに第1の空間20内に吸引され、母乳が搾乳される。
【0027】
押しボタン36を押して(開閉機構37を手動で操作して)第2の空間21と外部とを連通させると、常圧の外気が負圧状態の第2の空間21に流れ込み、仕切り膜8を第1の空間20側に移動させる。これにより、圧縮された第1の空間20内の空気が、搾乳された母乳とともにボトル3と搾乳ヘッド4との間に介装された仕切り部材12の逆止弁13を押し開き、ボトル3に流れ込む。このようにして、第2の空間21内を繰り返し負圧状態と常圧状態とに切換えることにより、搾乳された母乳がボトル3内に溜められる。
【0028】
上述のように、電動式のポンプ35を用いた場合には、排気動作を行うのにスイッチング操作で済むため、ゴム球6を圧縮させる等、使用者の肉体的負担を軽減して容易に搾乳を行うことができる。また、第1の実施形態と同様に、乳当て部10内の空間(第1の空間20)と、外部と連通可能なポンプ35内の空間(第2の空間21)とを仕切り膜8を介して分離しているので、搾乳された母乳がポンプ35側に流れ込むのを防止して、あるいはポンプ35内の空気や外気を、搾乳された母乳に触れさせないようにして、より清潔な状態で搾乳を行うことができる。
【0029】
また、この実施形態では、使用者が開閉機構37を操作する(押しボタン36を押す)ことにより第2の空間21を常圧に復帰させるようにしているが、第1の空間20が所定の圧力まで低下すると、自動的に第2の空間21と外部とを連通状態にして第2の空間21の圧力を常圧に復帰させる、あるいは所定の圧力まで上昇させる圧力調整手段39を設けることも可能である。圧力調整手段39は、第1の空間20の圧力状態を検知する検知部40と、この検知部40の検知結果に基づいて第2の空間21と外部との連通状態を切換える開閉機構41とで構成される。検知部40は、例えば搾乳ヘッド4内の仕切り膜8の位置あるいは変位を検出することで、間接的に第1の空間20の圧力状態を検知するものでもよく、この実施形態では例えば図4に示すように、仕切り膜8と接触させることで仕切り膜8の位置あるいは変位を検知する接触式の検知部材42で構成している。この場合には、この検知部材42と搾乳ヘッド4内の所定位置(図4中2点鎖線の位置)まで移動した仕切り膜8との接触時、検知部材42と機械的あるいは電気的にリンクさせた開閉機構41により自動的に第2の空間21と外部とが連通し、検知部材42と仕切り膜8との非接触時、開閉機構41により自動的に第2の空間21と外部とが閉じられる。なお、この図示例では、検知部40を、仕切り膜8の位置を検知する接触式の検知部材42としたが、これに限らず、例えば図示は省略するが、仕切り膜8の位置あるいは変位を非接触で検知する非接触式の検知部(変位センサを含む)とすることもできる。また、第1の空間20内の圧力状態を直接検知する検知部(圧力センサを含む)を用いることで、第1の空間20が所定の圧力値を下回ったことを検知するようにしてもよい。
【0030】
上述のように、圧力調整手段39によれば、第1の空間20の圧力状態を一定のリズムで上下動させるいわゆる「脈動効果」が得られるので、乳房を一定のリズムで効果的にマッサージして母乳を出やすくすることができる。また、第2の空間21内の圧力状態に応じて、第2の空間の外部に対する開放・閉鎖状態が自動的に切換えられるので、手動式の開閉機構37を省略することができ、より容易に搾乳を行うことが可能となる。もちろん、緊急回避手段として、手動式の開閉機構37を圧力調整手段39とは別に設けるようにしても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る搾乳器の縦断面図である。
【図2】第1の実施形態の変形例を示す縦断面図である。
【図3】第2の実施形態に係る搾乳器の縦断面図である。
【図4】第2の実施形態の変形例を示す縦断面図である。
【図5】乳当て部周辺の拡大断面図である。
【図6】従来の搾乳器を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1、31 搾乳器
3 ボトル
4 搾乳ヘッド
7 排出装置
8 仕切り膜
10 乳当て部
13 逆止弁
15 パッド
17 厚肉部
20 第1の空間
21 第2の空間
22 開閉機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に負圧を発生可能とした乳当て部と、弾性材料からなり、乳当て部の開口部に装着されたパッドとを有する搾乳器において、パッドに、他所よりも厚肉に形成され、自然状態で反乳当て面側に突出すると共に、乳当て部内部の負圧発生時に乳当て部の内周面と当接することにより、乳当て面側に突出する厚肉部を設けたことを特徴とする搾乳器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−297163(P2006−297163A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−220215(P2006−220215)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【分割の表示】特願2004−197123(P2004−197123)の分割
【原出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000107284)ジェクス株式会社 (26)
【Fターム(参考)】