説明

搾乳器

【課題】 乳房内部の乳管洞を強く圧迫し、母乳の搾乳効率を向上させること。
【解決手段】 乳当て部の内側にアダプタ40を配置する。アダプタ40は、内周部に乳首挿入部44を有すると共に、外周部に乳当て部に取り付けるための取付け部42を有し、乳首挿入部44と取付け部42との間にテーパ部41を介在させた弾性材料からなる。アダプタ40のテーパ部41の内面に、負圧発生時に乳房と密着する中実状の突起部43を形成し、アダプタ40を乳房に密着させて形成される空間で負圧の発生と解除とを交互に繰り返して母乳を搾り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、母乳を搾るための搾乳器に関し、より詳しくは、乳当て部の内側に装着されるアダプタを備えた搾乳器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の搾乳器として、例えは図9に示すように、搾乳した母乳を溜める母乳容器10と、母乳容器10の開口部に取付けられる搾乳ヘッド20と、搾乳器内部に負圧を発生させる負圧発生手段30とを主要な構成要素として備える搾乳器本体に、乳房との接触を密にするアタプタ40をオプションとして付加したものがある。
【0003】
搾乳ヘッド20は、硬質樹脂等の剛性体からなり、母乳容器10の開口部11に取付けられる有蓋筒状のヘッド本体21と、ヘッド本体21から斜め上方へ向かって延在する管状のネック22と、ネック22の先端に略円すい状に拡開した乳当て部23とを有する。使用者の乳房形状には個人差があることから、乳当て部23の内面には、乳房との接触を密にするためのアダプタ40を装着することもできる(特許文献1参照)。
【0004】
図示例では、負圧発生手段30として、搾乳ヘッド20にゴムチューブ31を介して中空状のゴム球32を取付けた手動式のものを示している。ゴムチューブ31とゴム球32は、硬質樹脂製のコネクタ33を介して接続してある。負圧発生手段には種々の形式があり、図示例のようなゴム球32を使用するものの他、例えばシリンダを使用するものも知られている。また、これら手動式の負圧発生手段のみならず、ダイヤフラムポンプ等を使用した電動式のものも存在する。
【0005】
中空状のゴム球32を握って圧縮した状態で乳当て部23を乳房で閉塞し、中空状のゴム球32を解放して元の形状に復帰させると、搾乳器本体の内部空間に負圧が発生する。負圧の発生により、乳首及びその周辺部がアダプタ40の小径側開口部からネック22の方向へ吸引される。中空状のゴム球32の圧縮と解放により、搾乳器本体内部にて負圧の発生と解除を交互に繰り返すと、乳腺から分泌された母乳を溜める乳管洞に対して刺激が断続的に付与され、母乳が搾り出される。
【特許文献1】実公昭36−493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたアダプタ40には、図10に示すように、指頭の太さに相当する大きさおよび数の突起部43が設けられている。この突起部43で乳房を押圧し、器体を左右に動揺することにより、乳房が指圧されてもむような作用が得られるため、乳の搾り出し作用が助長される。
【0007】
ところで、負圧発生時のアダプタ40は、吸引力によってネック22側に引き込まれ、全体的に伸張する方向に変形する。特許文献1記載の突起部43は、その外面側を凹ませた中空状に形成されているため、かかるアダプタ40の変形に伴って突起部43もその突出高さを減じるように変形する。そのため、実際の使用状況では、突起部43から乳房に与えられる刺激が不十分となる傾向にある。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑み創案されたものであって、その目的は、母乳の搾乳効率を向上させた搾乳器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本題明に係る搾乳器は、乳当て部を有する搾乳器本体と、乳当て部の内側に配置され、内周部に乳首挿入部を有すると共に、外周部に乳当て部に取り付けるための取付け部を有し、乳首挿入部と取付け部との間にテーパ部を介在させた弾性材料からなるアダプタとを備え、アダプタを乳房に密着させて形成される空間で負圧の発生と解除とを交互に繰り返して母乳を搾り出す搾乳器において、アダプタのテーパ部の内面に、負圧発生時に乳房と密着する中実状の突起部を形成したものである。
【0010】
上記の搾乳器では、負圧発生時の吸引力で乳房がアダプタの内面に密着する。この時、ゴム(エラストマも含む)や樹脂等の弾性材料からなるアダプタは乳房との密着状態を保持して搾乳器本体側に引き込まれるように僅かに変形する。この変形時にもアダプタのテーパ部に設けられた突起部は中実状であり、剛性に富むから、その変形程度は少なく突出高さもほぼ負圧発生前の状態に保持される。従って、負圧発生時には突起部が乳房に強く密着してピンポイントに圧迫力を付与する。この際、突起部はほとんど変形しないので皮膚のほぼ法線方向、つまり乳管洞周辺あるいはその奥部に向けて圧迫力を付与することができる。従って、負圧の発生と解除を交互に繰り返せば、高い搾乳効果が得られる。
【0011】
アダプタに、負圧発生時に搾乳器本体と当接するストッパ部を設けるのが望ましい。これにより、負圧発生時には、ストッパ部が搾乳器本体と当接することで負圧吸引力によるそれ以上のアダプタの変形が抑制される。そのため、負圧の発生時と解除時の突起部の変位が抑制され、突起部の変位による圧迫ポイントや圧迫方向の変動が減少する。従って、搾乳効果をさらに高めることができる。
【0012】
これとは反対に、搾乳器本体に、負圧発生時にアダプタと当接するストッパ部を設けても同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれは、乳房が突起部から受ける圧迫力が適確かつ適正なものとなるので、搾乳効果をさらに高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明を適用した搾乳器の第1実施形態を示す縦断面図である。この搾乳器は、母乳容器10、搾乳ヘッド20、負圧発生手段30、アダプタ40を主要な構成要素として備える。なお、図中の符号50は逆止弁で、母乳容器10及び搾乳ヘッド20の相互間に介在させ、搾乳ヘッド20から母乳容器10への流体移動のみを許容する。また、符号60はスタンドで、母乳容器10を倒れないように立設させるためのものである。母乳容器10及び負圧発生手段30については、従来例と同じものを使用しているので、従来例と同一部位には同一符号を付して、これらの詳しい説明を省略する。
【0016】
搾乳ヘッド20は、母乳容器10の開口部11に螺合するヘッド本体21と、ヘッド本体21から斜め上方へ向かって延在する管状のネック22と、ネック22の先端に略円すい状に拡開して形成された乳当て部23とを一体に有する。この実施形態のヘッド本体21は、上下両端が開口した筒状に形成され、上端開口部がキャップ24によって閉塞されている。キャップ24には、ゴムチューブ31をヘッド本体21の内部と連通可能に接続するための接続部25と、負圧発生手段30によって搾乳ヘッド20内に発生させた負圧を解除する負圧解除手段26とを設けてある。ヘッド本体21とキャップ24との間には、伸縮可能な弾性体からなる仕切り膜27を介在させてある。
【0017】
ヘッド本体21は、下端部に母乳容器10の雄ねじ部12に対して螺合する雌ねじ部21aを有する。搾乳ヘッド20の内部が負圧発生手段30によって加圧されると、搾乳ヘッド20内の母乳および空気が逆止弁50を通って母乳容器10へ送られる。母乳は母乳容器10に溜められ、空気は母乳容器10とヘッド本体21のねじ嵌合部を通って排気される。ヘッド本体21の側壁にはネック22との連通口21bを設けてある。ヘッド本体21の上部外周面には、キャップ24を着脱自在に取付けるための複数の環状溝21cを設けてある。ヘッド本体21の上部環状端面には、仕切り膜27を嵌合させる嵌合溝21dを設けてある。
【0018】
ネック22は、搾乳された母乳が母乳容器10へと自然に流れていくように、ヘッド本体21から斜め上方へ延在させてある。この実施形態のネック22は、先端側に乳首を挿入可能な管状に形成された大径部22aを有し、基端側に大径部22aの上部を切欠いた形状の小径部22bを有する。大径部22aと小径部22bの境界部分には、乳首から飛沫状態で飛散する母乳を受けるための壁部22cが乳首と対向するように形成される。ネック22に小径部22bを設けることで、ヘッド本体21の小型化を図りつつヘッド本体21に外嵌されるキャップ24がネック22に干渉するのを回避している。なお、ヘッド本体21を小型にしない場合やヘッド本体21とキャップ24を一体に成形してある場合は、ネック22を基端部から先端部まで大径部22aと同径の管状に形成し、連通口21bをネック22よりも小径に形成することで、ヘッド本体21の外周面であってネック22内に位置する部分が壁部22cと同じ役割を果たす(例えは図9参照)。
【0019】
乳当て部23は、アダプタ40を装着しなくても標準的な大きさの乳房にフィットする略円すい形状とされる。略円すい形状には、図示のような母線が直線状である円すい形状のみならす、母線が曲線状である形状も含まれる。乳当て部23の大径側端部には、フランジ23aを半径方向外側に向かって設けてある。
【0020】
キャップ24は、ヘッド本体21の上端開口部に仕切り膜27を介して外嵌され、仕切り膜27を着脱自在にするために、ヘッド本体21と別体に構成されている。キャップ24は天板24aを有し、天板24aの下面周縁部とヘッド本体21の嵌合溝21dとの間に弾性体からなる仕切り膜27を扶持する。キャップ24の周壁部24bの内面には、ヘッド本体21の嵌合溝21cに嵌合させる複数の突起部24cを設けてある。天板24aの中央部には、中空状のドーム部24dを上方へ向かって突設してある。ドーム部24dには、接続部25と、連通手段26を構成する筒部26aとを設けてある。
【0021】
接続部25は、キャップ24に穿設された孔の周縁部から突設した円筒状で、ゴムチューブ31の一端に内嵌される。この実施形態では、接続部25を上方に向かって延設してある。
【0022】
連通手段26は、キャップ24に突設した筒部26aにゴム製キャップ26bを被着した構成とされる。筒部26aは、接続部25と同様に、キャップ24に穿設された孔の周縁部から突設した円筒状の突起である。筒部26aの基端部には周溝26cを設けてある。ゴム製キャップ26bは有底筒状に形成され、その内面には周溝26cに係合させる突条26dを設けてある。ゴム製キャップ26bは、その内底部と筒部26aの先端開口部との間に隙間が形成されるように装着される。ゴム製キャップ26bには通気孔26eを設けてある。ゴム製キャップ26bは、その内面が筒部26aの外周面に密着するように装着され、通気孔26eが筒部26aの外周囲によって閉塞される。ゴム製キャップ26bの外底部を筒部26aの先端側へ押圧してゴム製キャップ26bを弾性変形させると、ゴム製キャップ26bの内周囲が筒部26aの外周面から離れて筒部26aの先端開口部と通気孔26eとを連通させる。
【0023】
仕切り膜27は、母乳が接続部25からゴムチューブ31を介してゴム球32に吸い込まれるのを防止するために、搾乳ヘッド20の内部を、乳当て部23から母乳容器10へ母乳を送り込むための第1の空間S1と、接続部25に通じた第2の空間S2とに区画するものである。この仕切り膜27により、搾乳された母乳は全て母乳容器10に供給され、負圧発生手段30側に移動することはないので、搾乳器の衛生性を高めることがきる。
【0024】
仕切り膜27は、ヘッド本体21内に突出するカップ部27aと、カップ部27aの上部から半径方向外側に設けた環状フランジ27bとを有する。環状フランジ27bはヘッド本体21の嵌合溝21dに嵌合するように下向きに凸になっている。図では、環状フランジ27bがヘッド本体21とキャップ24によって扶持圧縮されて、環状フランジ27bの上側端面とヘッド本体21の上部端面がフラットになっている状態を示している。仕切り膜27の環状フランジ27bを弾性圧縮させつつヘッド本体21とキャップ24に密着させることで、第1の空間S1と第2の空間S2の気密性が担保される。仕切り膜27は、伸縮自在の弾性材料、特に母乳に臭いが付着しないように無臭性の弾性材料(例えはシリコンゴムなど)で構成することが好ましい。
【0025】
アダプタ40は、乳当て部23よりも底角の小さい両端開口のテーパ部41と、テーパ部41の大径側端部に形成された取付け部42とを有する。この取付け部42は、乳当て部23のフランジ23aに嵌合するように、テーパ部41の大径側端部を外側に折り返した形状をなす。テーパ部41の略円すい状内面には、複数(例えは4つ)の中実状の突起部43が周方向に等間隔で突設されている。図示例では、テーパ部41の外面は、突起部43の形成領域も含めて凹凸のない平坦面である。突起部43の表面は、テーパ部41から段差を介して立ち上がった部分球面に近似した形状とされ、テーパ部41の小径側開口部の近傍に配置される。乳当て部23との関係では、突起部43を、乳当て部23の小径側開口縁よりも外径側に設けてある。テーパ部41の小径側端部には、ネック22よりも小径の乳首挿入部44が筒状に設けられており、その先端は、乳当て部23とネック22の境界部付近に位置している。第1の空間S1が負圧解除状態(常圧状態)である場合、アダプタ40は、取付け部42を除き、乳当て部23およびネック22に対して非接触状態にある。
【0026】
逆止弁50は、母乳容器10の開口部11と搾乳ヘッド20のヘッド本体21の相互間に介在させる。この実施形態の逆止弁50は、母乳容器10の開口部11に嵌合する弾性体からなるカップ部材51と、カップ部材51の底部に装着される剛性体からなる環状板部材52とを備える。カップ部材51は、母乳容器10の開口部11の内径よりも小径のカップ状に形成され、底部中央に略U宇状に切欠いて形成される舌片53を設けてある。図中の符号53aは舌片53の周回に形成されるU宇状の孔の一部である。舌片53は、環状板部材52の下面側に密着して環状板部材52の中央部に設けた通孔54を閉塞する一方、搾乳ヘッド20側からの加圧により環状板部材52から離れて通孔54を開口させる。また、カップ部材51の上縁部には、半径方向外側に向かって母乳容器10の上部環状面に停止させるフランジ55を設けてある。フランジ55の下面側には半径方向に延びる複数の通気溝56を設けてある。通気溝56は、内径側が母乳容器10内に、外径側が母乳容器10と搾乳ヘッド20の非気密状態のねじ嵌合部に連通している。これにより母乳容器10の内部は、通気溝56、及び母乳容器10と搾乳ヘッド20のネシ嵌合部を介して外部と連通し、大気圧に維持される。フランジ55の上面は搾乳ヘッド20のヘッド本体21に密着させて第1の空間S1の密封性を担保している。
【0027】
本発明の搾乳器は上記の如く構成され、アダプタ40の乳首挿入部44に乳首が入るようにテーパ部41を乳房に押し当てて乳当て部23を閉塞した状態で、ゴム球32を圧縮・解放すると、第1の空間Sに負圧が発生する。詳しくは、ゴム製キャップ26bを押圧して第2の空間S2を外部に連通させた状態で、ゴム球32を握って圧縮させると、ゴム球32内の空気がゴムチューブ31を通って第2の空間S2に流入し、連通手段26から外部へ排出される。ゴム製キャップ26bを解放して通気孔26eを閉塞してからゴム球32を解放し、元の形状に弾性復帰させると、第2の空間S2内の空気がゴム球32に吸い込まれ、仕切り膜27が縮小状態となる(カップ部27aの側面が蛇腹状に変形し、その底部が上昇する)。アタプタ40のテーパ部41を乳房に押し当てて乳当て部23を閉塞するのは、仕切り膜27を縮小させる前でも縮小させた後でもいずれでも構わない。
【0028】
仕切り膜27の縮小に伴い、第1の空間S1の容積が膨張するので、空間S1内に負圧が発生する。この負圧発生と同時に、逆止弁50の舌片53が吸引されて環状板部材52に密着して第1の空間S1が密封される。
【0029】
ゴム球32を軽く握って再度押し潰すと、第2の空間S2が加圧されて仕切り膜27が元の形状に膨らむ。これにより、第2の空間S2を介して第1の空間S1に発生させた負圧が解除されるので、乳房及びテーパ部41は負圧吸引力から解放され、テーパ部41が弾性収縮により元の形状に復帰する。
【0030】
以後、ゴム球32の膨張・収縮操作を繰り返すことにより、第1の空間S1で負圧の発生と解除とが交互に繰り返され、これによるアダプタ40の変形および弾性復帰で乳房がマッサージされる。第1の空間S1での負圧発生時には、乳房と密着したテーパ部41が乳房と共に負圧吸引力でネック22に向けて引き込まれ、これに伴って図2の破線位置から実線位置に変形する。負圧発生時には、テーパ部41と乳房が強く密着するので、図3に示すように、中実状の突起部43が乳房Aの乳首周辺に押し当てられ、この部分で皮膚がその法線方向に圧迫される。これにより乳管洞B、さらにはその奥の乳腺葉にかけての領域に刺激が与えられるため、母乳がスムーズに搾り出される。この際、突起部43は、剛性の高い中実状であるから、負圧発生時の引き込み力によるアダプタ40の変形時にも突起部43の形状が大きく崩れることはなく、従って、突起部43からの刺激により高い搾乳効果を得ることができる。
【0031】
搾り出された母乳が乳首から飛沫状態で飛散しても、この飛沫は乳首挿入部44の内面又はネック22の壁部22cに当って滴下し、ネック22の内底部を流下してヘッド本体21に流入する。万一、母乳が飛沫状態でヘッド本体21に流入しても、搾乳ヘッド20の内部を仕切り膜27によって第1の空間S1と第2の空間S2に区画してあるので、飛沫が負圧発生手段30に吸い込まれることはない。第1の空間S1の負圧を解除した際に、逆止弁50の舌片53が通孔54を開口させるので、母乳は、搾乳ヘッド20から母乳容器10へ流れ落ちる。
【0032】
図4は、本発明を適用した搾乳器の第2実施形態を示す要部拡大縦断面図である。この搾乳器は、アダプタ40を除く他の構成要素が第1実施形態の搾乳器と同じ構成であるため、図4では、これらの構成要素の図示を省略している。以下、第1実施形態の搾乳器との相違点を中心にして第2実施形態の搾乳器を説明する。
【0033】
第2実施形態におけるアダプタ40は、図4に示すように、テーパ部41の略円すい状内面に略球面状をなす複数の突起部43をテーパ部41の周方向に等間隔で突設してある。テーパ部41の外面には、乳当て部23に当接させてテーパ部41の小径側端部の変位を抑制するためのストッパ部45bを設けてある。図示例のストッパ部45bは、乳首挿入部44と平行に延びる棒状をなし、テーパ部41の外面の円周方向一箇所または複数箇所に形成されている。図示のように、負圧解除状態では、ストッパ部45bの先端とテーパ部41との間に微小な隙間を形成するのが望ましい。
【0034】
上述のように、負圧発生時にはアダプタ40がネック22に引き込まれるが、この引き込み力が強い場合、アダプタが過度に変形し、例えばテーパ部41の外面全体が乳当て部23に接触する場合もある。これでは突起部43周辺でのテーパ部41の傾斜角度が水平に近くなるため、突起部43による圧迫力の作用線が乳管洞よりも乳首側(図3において図面左側)に移り、搾乳効果の低下を来たすおそれがある。これに対し、図示のようにストッパ部45bを設ければ、負圧発生時にアダプタ40がネック22側に引き込まれた際にも、図5に示すように、ストッパ部45bが乳当て部23に当接し、それ以上のアダプタ40の変形が抑制される。従って、負圧発生後も突起部43による圧迫力の作用線を乳房の奥部(乳管洞付近)に向けることができ、高い搾乳効果が維持される。
【0035】
ストッパ部45bの形状は任意であり、例えば図示は省略するが突起部43に準じた略球面状に形成することもできる。この他、例えば図6(A)(B)に示すように、ストッパ部45bを円筒状に形成することもできる。この場合、ストッパ部45bが乳当て部23に当接した際、テーパ部41と乳当て部23の間の空間で、かつストッパ部45bよりも大径側の空間が第1の空間S1から遮断されないように、同図(A)のように、ストッパ部45bの先端に切欠き46aを設ける、あるいは同図(B)のように、ストッパ部45bに通気孔46bを設ける等の手段で、通気性を確保するのが望ましい。
【0036】
また、ストッパ部45bの形成位置は突起部43の変形を抑制できる限り任意であり、上記のように突起部43の内径側にストッパ部45bを形成する他、突起部43の外径側にストッパ部45bを形成することもできる。さらには、ストッパ部45bをアダプタ40のテーパ部41に形成する他、図7に示すように、乳首挿入部44に形成することもできる。この場合、ストッパ部45bは、円筒状の乳首挿入部44の半径方向外側に向けて突出させる。
【0037】
以上の説明では、ストッパ部45bをアダプタ40側に設けた場合を例示しているが、図10(A)に示すように、乳当て部23側にストッパ部28bを設けることも可能である。また、同図(B)(C)に示すように、乳当て部23とアダプタ40のそれぞれにストッパ部28b、45bをそれぞれ設けることもできる。このうち、同図(B)は、アダプタ40のテーパ部41とこれに対向する乳当て部23のテーパ状内面にストッパ部28b、45bを設けた例、同図(C)は、ネック22と乳首挿入部44のそれぞれにストッパ部を設けた例である。
【0038】
以上、本発明に係る搾乳器の実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えは上記実施形態では搾乳器の基本的な楕成要素である搾乳ヘッド20に仕切り膜27を設けたり、母乳容器10と搾乳ヘッド20の間に逆心弁50を設けているが、仕切り膜27や逆止弁50を具備しない搾乳器にも適用可能である。また、負圧発生手段30としては、ゴムチューブ31及びゴム球32を備えた手動式のものに限らす、電動式のものを採用することもてきる。さらに、母乳容器10と搾乳ヘッド20を一体成形した搾乳器にも適用可能である。このように本発明は、略円すい状に拡開した乳当て部23を有する搾乳器であれは、如何なるものにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る搾乳器の縦断面図である。
【図2】アダプタおよびその周辺部分の縦断面図である。
【図3】実際の使用状況におけるアダプタの縦断面図である。
【図4】負圧解除状態におけるアダプタを示す縦断面図である。
【図5】負圧発生状態におけるアダプタを示す縦断面図である。
【図6】アダプタの他の実施形態を示す縦断面図である。
【図7】アダプタの他の実施形態を示す縦断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態を示す縦断面図である。
【図9】従来の搾乳器の一例を示す縦断面図である。
【図10】従来の搾乳器におけるアダプタの構成例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 母乳容器
11 開口部
12 雄ねじ部
20 搾乳ヘッド
21 ヘッド本体
22 ネック
22a 大径部
22b 小径部
22c 壁部
23 乳当て部
23a フランジ
24 キャップ
25 接続部
26 連通手段
26b ゴム製キャップ
26e 通気孔
27 仕切り膜
28b ストッパ部
30 負圧発生手段
31 ゴムチューブ
32 ゴム球
33 コネクタ
40 アダプタ
41 テーパ部
42 取付け部
43 突起部
44 乳首挿入部
45b ストッパ部
50 逆止弁
51 カップ部材
52 環状板部材
53 舌片
54 通孔
55 フランジ
56 通気溝
60 スタンド
S1 第1の空間
S2 第2の空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳当て部を有する搾乳ヘッドと、乳当て部の内側に配置され、内周部に乳首挿入部を有すると共に、外周部に乳当て部に取り付けるための取付け部を有し、乳首挿入部と取付け部との間にテーパ部を介在させた弾性材料からなるアダプタとを備え、アダプタを乳房に密着させて形成される空間で負圧の発生と解除とを交互に繰り返して母乳を搾り出す搾乳器において、
アダプタのテーパ部の内面に、負圧発生時に乳房と密着する中実状の突起部を形成したことを特徴とする搾乳器。
【請求項2】
アダプタに、負圧発生時に搾乳ヘッドと当接するストッパ部を設けた請求項1に記載の搾乳器。
【請求項3】
搾乳ヘッドに、負圧発生時にアダプタと当接するストッパ部を設けた請求項1記載の搾乳器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−75293(P2007−75293A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−265799(P2005−265799)
【出願日】平成17年9月13日(2005.9.13)
【出願人】(000107284)ジェクス株式会社 (26)
【Fターム(参考)】