説明

摘出組織回収用器具

【課題】回収袋を容易に展開できる摘出組織回収用器具を提供する。
【解決手段】開閉自在の開口部21を備える回収袋2と、回収袋2を側面視スパイラル状に巻かれた状態で収納するシース部材3とを備える。シース部材3の内側に挿通自在に設けられ、回収袋2をシース部材3から押し出し可能なプランジャー部材4と、回収袋2の側面視スパイラル状に巻かれた状態の中心軸となっている端部22と、シース部材3とを接続し、端部22の移動を規制する規制手段としての糸状体5を備える。糸状体5は、回収袋2の側面視スパイラル状に巻かれた状態の中心軸となっている端部22に設けられた孔部26に接続される。糸状体5は、プランジャー部材4に接続される。プランジャー部材4は、回収袋2に当接する側と反対側に、シース部材3から突出する突出部9を備え、糸状体5は、突出部9に着脱自在に取着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡手術の際に切除された組織を内視鏡下で回収するために用いる摘出組織回収用器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内視鏡手術において、切除した組織を内視鏡下で回収する回収袋と、該回収袋を収納するシース部材とを備える摘出組織回収用器具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
前記従来の摘出組織回収用器具は、側面視スパイラル状に巻かれた回収袋がシース部材に収納されている。該回収袋は、内視鏡下で鉗子等により前記シース部材から引き出されることにより、切除した組織の回収に用いられる。また、他の摘出組織回収用器具として、内視鏡下に体内の組織を回収する回収袋と、該回収袋を収納するシース部材と、該シース部材の内側に摺動自在に設けられたプランジャー部材とからなり、該プランジャー部材により該回収袋が押し出されるものも知られている。(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
前記従来の摘出組織回収用器具において、前記シース部材から引き出され、または押し出された前記回収袋は、一方の端部を鉗子等で引張することにより側面視スパイラル状に巻かれた状態から展開される。そして、切除した組織が前記回収袋に収納され、該回収袋は体外へ取り出される。
【0005】
しかしながら、前記従来の摘出組織回収用器具において、前記回収袋は巻き癖がついているため、展開することが難しいという不都合がある。
【特許文献1】実用新案登録第3063390号公報
【特許文献2】特開2003−47616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、係る不都合を解消して、回収袋を容易に展開できる摘出組織回収用器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明の摘出組織回収用器具は、開閉自在の開口部を備え、内視鏡下に体内の組織を回収する回収袋と、該回収袋を側面視スパイラル状に巻かれた状態で収納するシース部材とを備える摘出組織回収用器具において、該シース部材の内側に挿通自在に設けられ、該回収袋を該シース部材から押し出し可能なプランジャー部材と、該回収袋の側面視スパイラル状に巻かれた状態の中心軸となっている端部と該シース部材とを接続し該端部の移動を規制する規制手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の摘出組織回収用器具によると、前記回収袋は、まず前記プランジャー部材により前記シース部材から押し出される。次に、前記回収袋は開口部側の端部を鉗子等で引張することにより展開されるが、このとき、前記回収袋の側面視スパイラル状に巻かれた状態の中心軸となっている端部は、前記規制手段により移動が規制されている。そこで、前記回収袋の開口部側の端部を引張したときに、該回収袋の側面視スパイラル状に巻かれた状態の中心軸となっている端部は前記規制手段により位置が固定され、移動することがない。従って、本発明の摘出組織回収用器具においては、前記開口部側の端部を引張するだけで、前記回収袋を容易に展開することができる。
【0009】
また、本発明の摘出組織回収用器具において、前記規制手段は、前記回収袋の側面視スパイラル状に巻かれた状態の中心軸となっている端部と、前記シース部材とを接続する糸状体であることが好ましい。前記糸状体が、前記回収袋の側面視スパイラル状に巻かれた状態の中心軸となっている端部と、前記シース部材とに接続されることにより、該端部の移動を規制することができる。
【0010】
ところで、前記回収袋は、前記シース部材から押し出されたときの位置と、切除した組織の位置とが離れている場合や、複数箇所にわたる組織を回収する場合には、一旦展開された後に移動自在であることが望まれる。
【0011】
そこで、本発明の摘出組織回収用器具において、前記糸状体は、前記回収袋の側面視スパイラル状に巻かれた状態の中心軸となっている端部に設けられた孔部に接続されることが好ましい。前記糸状体は、前記回収袋の側面視スパイラル状に巻かれた状態の中心軸となっている端部に設けられた孔部に接続されているので、該糸状体を引張することで、該孔部の周辺部に負荷がかかる。従って、該糸状体を引張し続けると、負荷に耐え切れず前記孔部の周辺部が破断されるか、または該糸状体が他の部材に引っかかっている場合や該孔部の周辺部が前記負荷に耐える強度を備えている場合には、前記糸状体自体が破断する。前記糸状体は、前記回収袋の展開後に、はさみ鉗子等により切断してもよい。この結果、前記回収袋と側面視スパイラル状に巻かれた状態の中心軸となっている端部は前記規制手段による規制が解除され、該回収袋は移動自在となる。
【0012】
また、本発明の摘出組織回収用器具によると、前記糸状体は、シース部材自体に接続されていてもよく、シース部材に設けられているプランジャー部材に接続されていてもよい。前記糸状体が前記プランジャー部材に接続されていることにより、該プランジャー部材の操作に伴い、前記シース部材の先端と前記回収袋との間の距離を任意に調節することができる。
【0013】
さらに、本発明の摘出組織回収用器具によると、前記プランジャー部材は、前記回収袋に当接する側と反対側に、前記シース部材から突出する突出部とを備え、前記糸状体は、該突出部に着脱自在に取着されてもよい。前記糸状体は、前記プランジャー部材の前記突出部に着脱自在に取着されているので、該取着を解除した状態で、内視鏡下に、鉗子等により前記糸状体を腹腔側に引張することにより、または前記突出部側から該糸状体を引張することにより、前記シース部材の先端と前記回収袋との間の距離を任意に調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、添付の図を参照して本実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態における摘出組織回収用器具の説明的断面図であり、図2は、図1に示す摘出組織回収用器具に用いられる回収袋の平面図であり、図3は、図1に示す摘出組織回収用器具による回収袋の展開方法を説明する図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の摘出組織回収用器具1は、回収袋2と、回収袋2を収納するシース部材3と、シース部材3の内側に挿通自在なプランジャー部材4と、回収袋2とシース部材3とを接続し回収袋2の移動を規制する規制手段としての糸状体5とを備えている。
【0017】
本実施形態の摘出組織回収用器具1において、回収袋2は、例えば、軟質ポリエチレン製であり、短辺d側を中心軸として短辺bと平行となる方向に側面視スパイラル状に巻かれてシース部材3に収納されている。
【0018】
次に、回収袋2は、図2に展開された状態として示すように、互いに平行な長辺a,cに対して直交する第1の短辺bと、長辺に対して所定の角度で斜めに交わる第2の短辺dとからなる台形状を備えている。回収袋2は、短辺b側の端部を開口部21とすると共に、短辺d側の端部を、例えば幅2mm〜5mmの範囲の溶着部22により閉塞している。回収袋2は、開口部21に配設した複数の糸通し孔23に、例えば、ポリアミド製の開閉糸24を通して環状とし、開閉糸24はその端部が短辺c側に引き出されている。開閉糸24は、短辺c側に引き出された端部に例えばエラストマー製のストッパー25を備えており、ストッパー25には開閉糸24が挿通されている。また、溶着部22の長辺a側には、孔部26が設けられ、孔部26に糸状体5が挿通されている。
【0019】
尚、回収袋2において、短辺dは、長辺a,cに対して直交していてもよく、外方に膨出する円弧状の曲線となっていてもよい。
【0020】
尚、回収袋2は、長辺a側を中心軸として短辺bと直交する方向に側面視スパイラル状に巻かれた状態でシース部材3に収納されてもよい。
【0021】
次に、図1に示すシース部材3は、例えば、ポリプロピレン製の中空パイプ状体であり、内視鏡下に腹腔内に挿入され、腹腔内に回収袋2を導入する。シース部材3は、腹腔内に挿入される側が尖端部6となっており、尖端部6の後方に回収袋2が収納されている。また、シース部材3は、尖端部6の保護及び術前の汚染を防ぐため、尖端部6に、例えば、ポリエチレン製の保護キャップ7が嵌着されている。また、シース部材3は、腹腔内に挿入される側の反対側に、例えば、エラストマー製のガードリング8を備えている。
【0022】
シース部材3は、回収袋2を収納するために必要な内径を備えると共に、内視鏡手術における患者に対する侵襲性を低くするために、外径が小径のものを用いることが好ましい。そこで、シース部材3の外径は、例えば、5mmとされている。
【0023】
次に、図1に示すプランジャー部材4は、例えば、ポリプロピレン製の中空パイプ状体であり、端部が回収袋2に当接してシース部材3から回収袋2を押出可能な外径を備え、シース部材3の内側に挿通自在に設けられている。プランジャー部材4は、回収袋2と当接する側の反対側の端部が、シース部材3から突出する突出部9となっている。突出部9は、端部に嵌着されたプランジャーキャップ10と、プランジャーキャップ10近傍の側壁に設けられた小孔11とを備える。プランジャー部材4の外径は、回収袋2を押出可能な大きさであればよく、シース部材3の内周側を摺動自在とされていてもよく、シース部材3の内周面に間隔を存して挿通自在とされていてもよい。
【0024】
また、プランジャー部材4は、回収袋2と当接する側に閉塞された端部を備え、該端部を介して回収袋2を押し出し可能とされていてもよい。
【0025】
次に、図1に示す糸状体5は、例えば、ポリアミド製であり、一端が回収袋2の孔部26に接続され、他端がプランジャー部材4の内部を経て、プランジャー部材4の突出部9に設けられた小孔11に接続される。糸状体5は、小孔11からプランジャー部材4の外側に露出する露出部12を備え、露出部12には例えばエラストマー製のストッパー13を備えている。糸状体5の露出部12はストッパー13に挿通されており、ストッパー13が小孔11に係止されることにより、糸状体5がプランジャー部材4に着脱自在に取着される。
【0026】
尚、糸状体5は、回収袋2の孔部26に接続される側と反対側の端部がプランジャー部材4ではなく、シース部材3自体に接続されていてもよい。
【0027】
次に、図3を参照して摘出組織回収用器具1の操作手順について説明する。まず、図3(a)に示すように、摘出組織回収用器具1のシース部材3に嵌着されている保護キャップ7を取り外し、予め刺設されたトロッカー(図示せず)を介し、内視鏡下に摘出組織回収用器具1を腹腔内に挿入する。次に、プランジャー4を操作して突出部9をシース部材3に押し込むことにより、回収袋2がシース部材3の尖端部6から押し出される。
【0028】
次に、図示しない鉗子を用い、図3(b)に示すように、回収袋2を腹腔内に引き出す。そして、前記鉗子により、例えば、開閉糸23が挿通されているストッパー25を把持して、回収袋2の開口部21側をシース部材3の尖端部6から離間する方向に引張する。
【0029】
このとき、回収袋2は、短辺d側を中心軸として短辺bと平行となる方向に側面視スパイラル状に巻かれており、該中心軸となっている短辺d側の端部である溶着部22に設けられた孔部26に糸状体5が接続されている。糸状体5は、孔部26に接続される側と反対側の端部に備えられたストッパー13がプランジャー4の小孔11に係止されている。従って、回収袋2は、側面視スパイラル状に巻かれた状態の中心軸となっている短辺d側の端部である溶着部22が規制手段である糸状体5により固定されて、移動が規制されている。
【0030】
そこで、回収袋2は、前記鉗子により回収袋2の開口部21側をシース部材3の尖端部6から離間する方向に引張するだけで、容易に展開することができる。
【0031】
回収袋2を展開した後、回収袋2の後端部、すなわち溶着部22の孔部26と、シース部材3の尖端部6との距離は、糸状体5のストッパー13と、プランジャー4の小孔11との係止状態を解除したのち、糸状体5をシース部材3内に引き込み、或いは図示しない鉗子により回収袋2を尖端部6から離間させる方向に移動させることにより容易に調節することができる。
【0032】
また、回収袋2は、前記展開後、切除した組織の位置と離れている場合や、複数箇所にわたる組織を回収する場合には、糸状体5により移動が規制されることなく、移動自在であることが望まれる。この場合には、前記鉗子により回収袋2の開口部21側をシース部材3の尖端部6から離間する方向に引張する操作を継続すると、回収袋2の孔部26の周辺部が、糸状体5からの負荷に耐え切れなくなって破断され、回収袋2を移動自在とすることができる。孔部26は溶着部22に設けられているので、孔部26の周辺部が破断しても回収袋2自体の機能には影響がない。
【0033】
また、回収袋2を移動自在とするためには、孔部26の周辺部の破断に代えて、糸状体5自体が破断してもよく、はさみ等を用いて糸状体5を切断してもよい。
【0034】
前述のようにして展開された回収袋2は、内視鏡下、鉗子等により開口部21を拡げることにより、切除された組織が開口部21から回収袋2内に回収される。切除された組織が回収されたならば、開閉糸24に備えられたストッパー25を回収袋2側に移動させて開口部21を絞ることにより、回収袋2が閉じられる。そして、前記切除した組織を収納した回収袋2が、体外に取り出される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施形態における摘出組織回収用器具の説明的断面図。
【図2】図1に示す摘出組織回収用器具に用いられる回収袋の平面図。
【図3】図1に示す摘出組織回収用器具による回収袋の展開方法を説明する図。
【符号の説明】
【0036】
1…摘出組織回収用器具、 2…回収袋、 3…シース部材、 4…プランジャー部材、 5…糸状体(規制手段)、 21…開口部、 26…孔部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉自在の開口部を備え、内視鏡下に体内の組織を回収する回収袋と、該回収袋を側面視スパイラル状に巻かれた状態で収納するシース部材とを備える摘出組織回収用器具において、
該シース部材の内側に挿通自在に設けられ、該回収袋を該シース部材から押し出し可能なプランジャー部材と、
該回収袋の側面視スパイラル状に巻かれた状態の中心軸となっている端部と、該シース部材とを接続し、該端部の移動を規制する規制手段とを備えることを特徴とする摘出組織回収用器具。
【請求項2】
前記規制手段は、前記回収袋の側面視スパイラル状に巻かれた状態の中心軸となっている端部と、前記シース部材とを接続する糸状体であることを特徴とする請求項1記載の摘出組織回収用器具。
【請求項3】
前記糸状体は、前記回収袋の側面視スパイラル状に巻かれた状態の中心軸となっている端部に設けられた孔部に接続されることを特徴とする請求項2記載の摘出組織回収用器具。
【請求項4】
前記糸状体は、前記プランジャー部材に接続されることを特徴とする請求項2または3記載の摘出組織回収用器具。
【請求項5】
前記プランジャー部材は、前記回収袋に当接する側と反対側に、前記シース部材から突出する突出部を備え、前記糸状体は、該突出部に着脱自在に取着されることを特徴とする請求項4記載の摘出組織回収用器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−61228(P2009−61228A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−233961(P2007−233961)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(390029676)株式会社トップ (106)
【Fターム(参考)】