摩擦係合要素の制御装置
【課題】ロックアップクラッチ(LC)の摩擦材の温度推定計算において、摩擦材の当たり幅を考慮することで、より正確な温度推定値の算出を可能にする。
【解決手段】摩擦材18が接する部位Mの熱容量HCと、摩擦材18の表面温度とLCの作動油温との温度差と、作動油による冷却率とを用いて熱収支計算を行って、単位時間当たりの摩擦材18の表面温度と作動油温との温度差の上昇率を算出することで摩擦材18の表面温度を算出する際に、予め摩擦材18が接する部位Mを複数の区分Lnに分割して、当該区分Lkに対応する区分熱容量HCkを算出しておき、その上で、LCの締結度合いに関するデータに基づいて、複数の区分Lkのうち摩擦材18が接することで発熱する領域Wに属する区分Lkを決定し、当該区分Lkごとに熱収支計算を行うと共に区分熱容量HCkを用いて表面温度Tkの算出を行う。
【解決手段】摩擦材18が接する部位Mの熱容量HCと、摩擦材18の表面温度とLCの作動油温との温度差と、作動油による冷却率とを用いて熱収支計算を行って、単位時間当たりの摩擦材18の表面温度と作動油温との温度差の上昇率を算出することで摩擦材18の表面温度を算出する際に、予め摩擦材18が接する部位Mを複数の区分Lnに分割して、当該区分Lkに対応する区分熱容量HCkを算出しておき、その上で、LCの締結度合いに関するデータに基づいて、複数の区分Lkのうち摩擦材18が接することで発熱する領域Wに属する区分Lkを決定し、当該区分Lkごとに熱収支計算を行うと共に区分熱容量HCkを用いて表面温度Tkの算出を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクコンバータに付随するロックアップクラッチなどの摩擦係合要素の係合状態を制御する摩擦係合要素の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるトルクコンバータには、インペラとタービンを直結させるロックアップクラッチ(LC)を設けることが多く、ロックアップクラッチの係合で動力伝達効率及び燃費の向上が図られている。近年は、さらなる燃費向上などを目的として、ロックアップクラッチを部分的に係合する制御、すなわちロックアップクラッチのスリップ制御を行うことが多くなっている。しかしながら、スリップ制御を行うと、ロックアップクラッチの摩擦材の発熱量が増大するため、摩擦材やシール部材等の耐久性を確保するための対策が必要となる。このようなことから、スリップに伴う発熱からロックアップクラッチを保護するため、種々の装置、方法が提案されている。
【0003】
これに関して、特許文献1には、ロックアップ機構付きトルクコンバータの制御装置が開示されている。この制御装置は、トルクコンバータ内の作動油温と、ロックアップクラッチの発熱量とに基づいて、ロックアップクラッチにおけるクラッチ摩擦材の表面温度を算出し、算出したクラッチ摩擦材の表面温度と予め定められた許容温度とを比較し、クラッチ摩擦材の表面温度が許容温度以上になったと判断したときに、クラッチ摩擦材の表面温度を低下させる所定の動作を行うものである。これによれば、クラッチ摩擦材の表面温度を把握して、その上昇を抑制できるので、ロックアップクラッチのスリップ制御を行いながら、クラッチ摩擦材の耐久性を確保できる。
【0004】
そして、上記の制御装置では、クラッチ摩擦材の表面温度の推定値を算出するようになっている。この表面温度の算出では、クラッチ摩擦材と摺動する部位の熱容量と、クラッチ摩擦材の表面温度に対するトルクコンバータ内の作動油温の温度差と、トルクコンバータ内の作動油による冷却率とを用いて熱収支計算を行って、単位時間当たりのクラッチ摩擦材の表面温度とトルクコンバータ内の作動油温との温度差変化率を算出し、この温度差変化率からクラッチ摩擦材の表面温度を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3476718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、実際のロックアップクラッチの摩擦材は、相手側のコンバータカバーに対して常に全表面が均一に接する訳ではなく、その面が僅かに傾いた状態で片当たりしている場合が多い。そのため、クラッチ油圧や伝達トルクなどに応じて、摩擦材がコンバータカバーに接触する面積(以下、「当たり幅」ということがある。)が段階的に変化するようになっている。これにより、ロックアップクラッチの発熱量が同じでも、当たり幅が小さいと受熱部の熱容量が小さいため、摩擦材の温度上昇が大きくなる。また、ロックアップクラッチの締結力(伝達トルク)が大きいときは、摩擦材の外周側と内周側の両方が共に当接(全面当たり)し、外周側と内周側とでほぼ同等の温度上昇が得られるが、締結力小さいときは、摩擦材の回転外周側のみが当接(片当たり)することで、摩擦材の外周側の温度が主に上昇する。このことは、摩擦材の温度変化の実測によっても確認されている。
【0007】
そのため、摩擦材の温度推定の精度向上や保護の観点から、摩擦材の片当たりを考慮した温度推定を行うことが望ましい。しかしながら、特許文献1に示すように、ロックアップクラッチ締結時の摩擦材の温度推定自体は既に行われているが、この温度推定では、摩擦材の当たり幅が常に一定であり、温度推定の対象となる受熱部の熱容量が一定であるとの仮定の元で推定計算が行われていた。
【0008】
このように、特許文献1に示す従来技術では、摩擦材の片当たりを考慮していないため、温度推定の精度が必ずしも高くないという問題があった。特に、片当たりの傾向が顕著である低トルク時の温度推定は、精度向上の余地が大きい。すなわち、低トルク時に摩擦材の片当たりで受熱部の熱容量が小さい状態(単位質量あたりの熱収支が大きい状態)では、摩擦材の温度の推定値が実際よりも低い温度になる。そのため、ロックアップクラッチの保護の信頼性、及びロックアップクラッチの耐久性が低下するおそれがある。
【0009】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、ロックアップクラッチなどの摩擦係合要素が有する摩擦材の温度推定において、摩擦材の当たり幅を考慮することで、より正確な温度推定値の算出を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、摩擦係合要素(LC)の係合状態を制御する摩擦係合要素の制御装置(1)であって、摩擦係合要素(LC)が有する摩擦材(18)の表面温度の推定値を算出する表面温度算出手段(8)と、表面温度算出手段(8)で算出した摩擦材(18)の表面温度(T)に応じて、摩擦係合要素(LC)の係合状態を制御する制御手段(8)と、を備え、表面温度算出手段(8)は、摩擦材(18)が接する部位(M)の熱容量(HC)と、摩擦材(18)の表面温度(T)と摩擦係合要素(LC)の作動油温(Tm)との温度差(DT)と、摩擦係合要素(LC)の作動油による冷却率(t)と、を用いて熱収支計算を行って、単位時間当たりの摩擦材(18)の表面温度(T)と摩擦係合要素(LC)の作動油温(Tm)との温度差変化率(ΔT)を算出し、この温度差変化率(ΔT)から摩擦材(18)の表面温度(T)を算出する際に、予め摩擦材(18)が接する部位(M)の全体を複数の区分(Lk)に分割して、当該区分(Lk)に対応する区分熱容量(HCk)を算出しておき、その上で、摩擦係合要素(LC)の締結度合いに関するデータを取得し、当該締結度合いに関するデータに基づいて、複数の区分のうち摩擦材(18)が接することで発熱する領域(W)に属する区分(Lk)を決定し、この発熱する領域(W)に属する各区分(Lk)に対して、該区分(Lk)ごとに熱収支計算を行うと共に区分熱容量(HCk)を用いてその表面温度(Tk)の算出を行うことを特徴とする。
【0011】
本発明にかかる摩擦係合要素の制御装置によれば、摩擦材の表面温度を算出する際に、予め摩擦材が接する部位を複数の区分に分割して、当該区分に対応する区分熱容量を算出しておき、その上で、摩擦係合要素の締結度合いに関するデータを取得し、当該締結度合いに関するデータに基づいて、上記複数の区分のうち摩擦材が接することで発熱する領域に属する区分を決定(摩擦材の当たり幅を決定)し、その領域に属する各区分に対して、該区分ごとに熱収支計算を行うと共に区分熱容量を用いて表面温度の算出を行うようにした。したがって、摩擦材の表面温度の算出において、実際に摩擦材が当たることで発熱する領域を考慮して、当該領域の熱容量を用いて表面温度の計算を行うことができる。これにより、摩擦材の当たり幅に応じた適切な温度推定が行えるようになるので、摩擦係合要素が有する摩擦材の温度をより精度良く推定できる。特に、従来の摩擦材の温度計算では、発熱領域(当たり幅)の大きさに関わらず、摩擦材が接する部位の熱容量が一定であるとの仮定で計算が行われていた。そのため、当たり幅が小さく受熱部の熱容量が小さい状態では、実際の表面温度が推定値よりも高くなってしまい、摩擦材の十分な保護に懸念があった。これに対して、本発明の手法では、摩擦係合要素の締結力が低い(押付力が小さい)状態では、摩擦材の当たり幅が小さいために、発熱領域の熱容量が小さくなる。したがって、実際の温度が上昇し易い状態であれば、推定温度も同様の傾向で上昇するので、摩擦材の表面温度を精度良く推定できる。したがって、摩擦材及び摩擦係合要素に対する保護の信頼性を向上させることができる。
【0012】
また、上記の摩擦係合要素の制御装置では、摩擦係合要素(LC)は、トルクコンバータ(TC)に付随するロックアップクラッチ(LC)であり、上記の締結度合いに関するデータは、トルクコンバータ(TC)の指示油圧、伝達トルク、回転数のデータの少なくともいずれかであってよい。
【0013】
ロックアップクラッチなど摩擦係合要素が有する摩擦材の当たり幅は、摩擦係合要素にかかる押し力の関数となる。そのため、ロックアップクラッチの場合は、トルクコンバータの指示油圧や伝達トルクなどで摩擦材の当たり幅が決まる。また、トルクコンバータの回転数に応じてコンバータカバーの形状などが変化することでも、摩擦材の当たり幅が変化する。したがって、上記のように、摩擦材が接することで発熱する領域に属する区分を決定するための係合強さに関するデータは、トルクコンバータの指示油圧、伝達トルク、回転数のデータの少なくともいずれかであることが望ましい。これによれば、摩擦材の接触に不均一性(いわゆる片当たり)が生じ易いロックアップクラッチにおいて、スリップ制御による摩擦材の温度上昇を効果的に監視でき、ロックアップクラッチの保護の信頼性を向上させることができる。
【0014】
また、上記の摩擦係合要素の制御装置では、表面温度算出手段(8)は、予め上記複数の区分(Ln)に対する摩擦材(18)の押付力に順位を付しておき、発熱する領域(W)に属する各区分(Lk)のうち、摩擦材(18)の押付力が最も強い区分(Lh)に対してのみ熱収支計算を行うと共に区分熱容量(HCh)を用いて表面温度(Th)の算出を行うようにしてよい。また、この場合の表面温度(Th)の算出を行う区分(Lh)は、摩擦材(18)における回転外周側の端辺(19)に対応する位置を含む区分(Lh)であってよい。
【0015】
摩擦材に片当たりが生じている場合は、通常、最も強い力で接する箇所が最大に熱を受けるため、最も高い温度になる。そして、摩擦材の保護や負荷監視の観点においては、最も高い温度になる部位の温度を把握すれば足りる。したがって、上記のように、摩擦材の押付力が最も強い区分に対してのみ表面温度の算出を行うように構成すれば、保護の信頼性を確保しながら、表面温度算出手順を簡素化できるので、制御装置の構成の簡略化などを図ることができる。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態における構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる摩擦係合要素の制御装置によれば、ロックアップクラッチなど摩擦係合要素が有する摩擦材の温度推定計算において、摩擦材の当たり幅を考慮することで、温度推定値の算出精度を高めることができ、摩擦係合要素の保護の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明が適用されるロックアップクラッチ付きトルクコンバータを示す部分概略断面図、及びその制御装置を示すブロック図である。
【図2】ロックアップクラッチの制御装置の制御内容を示すフローチャート(メインフロー)である。
【図3】ロックアップクラッチの負荷計算のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図4】摩擦材が接する部位の表面を模式的に示す図である。
【図5】摩擦材表面温度の演算手順のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図6】摩擦材の当たり幅による発熱領域の変化を示す模式図で、(a)は、ロックアップクラッチの締結力(押付力)が小さい状態、(b)は、ロックアップクラッチの締結力(押付力)が大きい状態を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態における摩擦材の当たり幅による発熱領域の変化を示す模式図で、(a)は、ロックアップクラッチの締結力(押付力)が小さい状態、(b)は、ロックアップクラッチの締結力(押付力)が大きい状態を示す図である。
【図8】摩擦材が接する部位の表面を模式的に示す図である。
【図9】第2実施形態における摩擦材表面温度の演算手順のサブルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明が適用されるロックアップクラッチ付きトルクコンバータを示す部分概略断面図、及びその制御装置を示すブロック図である。同図に示すトルクコンバータTCは、コンバータカバー11aを介してエンジン出力軸(図示せず)と繋がるインペラ11と、インペラ11と対向して配設されるとともにタービンハブ12aを介して変速機入力軸(図示せず)と繋がるタービン12と、固定保持されるステータ13とから構成される。タービン12の背面とコンバータカバー11aの内面とに囲まれた空間内にロックアップピストン15が配設されている。この空間はロックアップピストン15により二分割されており、コンバータカバー11aとロックアップピストン15に囲まれたロックアップ解放室16と、タービン12とロックアップピストン15に囲まれたロックアップ締結室17とに分けられている。なお、このロックアップピストン15はタービンハブ12aに対して軸方向移動可能で、且つタービンハブ12aと一体回転するように取り付けられている。
【0019】
ロックアップクラッチLCの作動は、ロックアップ油入口16aおよびコンバータ油入口17aから供給される作動油圧を制御して、ロックアップ解放室16とロックアップ締結室17内の油圧を制御することにより行われる。例えば、ロックアップ解放室16内の油圧を低下させることによりロックアップ締結室17内の油圧によりロックアップピストン15をコンバータカバー11aの内面に押し付け、ロックアップピストン15の側面に設けられたクラッチ摩擦材(以下、単に「摩擦材」と称す。)18とコンバータカバー11aの内面との摩擦によりロックアップピストン15とコンバータカバー11aとを結合させる。この結果、インペラ11とタービン12が係合されて一体回転するロックアップ作動状態となる。これとは逆に、ロックアップ油入口16aからロックアップ解放室16に作動油を供給してロックアップ解放室16内の油圧をロックアップ締結室17内の油圧より高くすると、ロックアップピストン15はコンバータカバー11aの内面から離れてロックアップ解放状態となり、インペラ11とタービン12とは独立して回転可能となり、トルクコンバータTCが作動する状態となる。
【0020】
このように、ロックアップ油入口16aおよびコンバータ油入口17aから供給される作動油圧を制御することにより、ロックアップピストン15とコンバータカバー11aの内面との接触を制御し、ロックアップを作動させたり、解放させたり、さらには、部分係合させたり(これをロックアップクラッチLCのスリップ制御と称する)することができる。このようなロックアップ制御を行うために、ロックアップ制御装置1が設けられている。
【0021】
ロックアップ制御装置1は、オイルタンク6内の作動油を供給する油圧ポンプ5と、油圧ポンプ5から供給される供給圧を調整する供給圧調整手段4と、供給圧調整手段4により調圧された作動油をロックアップ油入口16aおよびコンバータ油入口17aに供給する制御を行う油圧回路切替手段3と、ロックアップ油入口16aからロックアップ解放室16に供給される作動油圧を制御する締結力調整手段2と、締結力調整手段2の作動を制御する信号圧を供給する信号圧発生手段7と、信号圧発生手段7に指令を与える主制御部8とを備えて構成される。このロックアップ制御装置1では、主制御部8の指令に基づいて、ロックアップ解放室16内の油圧を締結力調整手段2により調圧制御し、ロックアップ締結室17内の油圧を供給圧調整手段4により調圧制御し、且つ、油圧回路切替手段3による供給油圧の切替制御を行うことにより、ロックアップクラッチLCの係合作動制御が行われる。なお、主制御部8は、本発明にかかる摩擦材の表面温度の推定値を算出する表面温度算出手段及び摩擦係合要素の係合状態を制御する制御手段として機能する。
【0022】
このようにしてロックアップクラッチLCの係合作動制御を行う場合(特に、スリップ制御を行う場合)、摩擦材18とコンバータカバー11aの内面との摩擦により発熱が生じ、摩擦材18の耐久性が損なわれるおそれがある。このため、本発明のロックアップ制御装置1においては、主制御部8で摩擦材18の表面温度の演算を行い、当該表面温度が過度に高温となることを防止するための制御を行うようになっている。
【0023】
図2は、上記の制御内容を示すフローチャート(メインフロー)である。この制御では、まず、ロックアップクラッチLCの負荷演算を行う(ステップS1)。ロックアップクラッチLCの負荷演算の具体的な手順については、下記で詳細に説明する。その後、油温センサにてトルクコンバータの作動油温Tmを検出する(ステップS2)。そして、ロックアップクラッチLCの摩擦材18の表面温度Tを演算する(ステップS3)。ここでの摩擦材18の表面温度Tは、後述するように、摩擦材18が接する部位の発熱領域を複数の区分に分割した当該区分ごとの表面温度である。この表面温度演算の具体的な手順については、下記で詳細に説明する。
【0024】
そして、上記で求めた摩擦材18の現在の表面温度Tと、摩擦材18に応じて設定された許容温度T1とを比較する(ステップS4)。その結果、現在の摩擦材18の表面温度Tが許容温度T1未満(NO)のときには、ステップS1に戻って上述の手順を継続する。一方、許容温度T1以上(YES)のときには、摩擦材18の温度を低下させるための制御を行う(ステップS5)。ここでの摩擦材18の温度を低下させるための制御としては、例えば、ロックアップクラッチLCを完全係合させる制御、もしくは完全解放させる制御が行われる。これにより、摩擦材18の表面温度が許容温度T1以上の状態が解消するので、摩擦材18の所期の耐久性を確保することができる。
【0025】
ここで、ロックアップクラッチLCの負荷演算(ステップS1)の手順について説明する。図3は、ロックアップクラッチLCの負荷演算のサブルーチンを示すフローチャートである。この負荷演算では、まず、スロットル開度センサによりエンジンスロットル開度θTHを検出するとともに、車速センサにより車速Vを検出する(ステップS1−1)。これら検出値に基づいて、ロックアップスリップ制御における目標スリップ率を算出し(ステップS1−2)、このような目標スリップ率が得られるようにロックアップクラッチLCの係合制御を行う(ステップS1−3)。このとき、エンジン回転数Ne(すなわち、トルクコンバータ入力回転数)と変速機入力回転数Nm(すなわち、トルクコンバータ出力回転数)とを検出する(ステップS1−4)。
【0026】
さらに、エンジンスロットル開度θTHおよびエンジン回転数Neに基づいて、エンジン出力トルクを推定する(ステップS1−5)。そして、ロックアップクラッチ伝達トルクTLCと、ロックアップクラッチ差回転ΔNを算出する(ステップS1−6)。ロックアップクラッチ伝達トルクTLCと、ロックアップクラッチ差回転ΔNの算出は、以下の手順で行われる。
【0027】
まず、ロックアップクラッチ差回転ΔNは、エンジン回転数Neと、変速機入力回転数Nmとの差である。一方、ロックアップクラッチ伝達トルクTLCについては、ロックアップクラッチLCがスリップ制御を行っているときは、エンジントルクTeはロックアップクラッチ伝達トルクTLCとトルクコンバータの流体伝達トルクTTCの和であり、次式(1)のように表される。ここで、トルクコンバータの流体伝達トルクTTCは、エンジン回転数Neと変速機入力回転数Nm(または、目標すべり率)から求まるトルクコンバータの容量係数τを用いて、次式(2)により求められる。これら式(1)および(2)からロックアップクラッチ伝達トルクTLCが求まる。
【0028】
Te = TLC + TTC ・ ・ ・ (1)
TTC = τ・(Ne/1000)2 ・ ・ ・(2)
【0029】
次に、摩擦材18の表面温度演算(ステップST3)の手順について説明する。本実施形態では、摩擦材18の表面温度演算を行うにあたって、予めコンバータカバー11aにおける摩擦材18が接する部位を複数の区分に分割して、当該区分に対応する区分熱容量を算出しておくようになっている。図4は、このことを説明するための図で、摩擦材18が接する部位Mの表面を模式的に示す図である。同図では、縦軸に摩擦材18が接する部位Mの径方向の分布を取っている。ここでは、摩擦材18が接する部位Mの全体LAを径方向で複数個(ここではn個)の区分L1,L2・・Lnに分割する。そして、当該複数の区分L1,L2・・Lnそれぞれに対応する区分熱容量HC1,HC2・・・HCnを算出しておく。なお、摩擦材18が接する部位Mの全体LAは、摩擦材18の接触で発熱が生じる領域(発熱領域)Wの最大値であり、その熱容量HC=ΣHCk(k=1〜n)は、当該発熱領域Wの最大値に対応する最大の熱容量である。
【0030】
図5は、摩擦材18の表面温度を演算する手順を示すサブルーチンである。この演算では、まず、ロックアップクラッチ伝達トルクTLCとロックアップクラッチ差回転ΔNとを読み込み(ステップS3−1)、ロックアップクラッチLCの発熱量QLCを演算する(ステップS3−2)。ロックアップクラッチLCの発熱量QLCは、次式(3)で求まる。
【0031】
QLC = TLC・(π/30)・ΔN・dt ・ ・ ・ (3)
【0032】
続いて、トルクコンバータTC内の作動油温Tmを読み込む(ステップS3−3)。そして、ロックアップクラッチLCの押付力(締結度合い)に関するデータを取得する(ステップS3−4)。ここでのロックアップクラッチLCの押付力に関するデータは、トルクコンバータの指示油圧、伝達トルク、回転数の少なくともいずれかのデータを用いることができる。これらのデータに基づいて、ロックアップクラッチLCの押付力を把握できる。そして、このロックアップクラッチLCの押付力に基づいて摩擦材18の当たり箇所及び当たり幅の計算を行う(ステップS3−5)。この摩擦材18の当たり箇所及び当たり幅の計算は、具体的には、上記複数の区分L1,L2・・・Lnのうち摩擦材18が接することで発熱する領域(発熱領域)Wに属する区分Lkの数及び位置を決定することで行われる。
【0033】
図6は、摩擦材18の当たり幅による発熱領域Wの変化を示す模式図で、(a)は、ロックアップクラッチLCの締結力(押付力)が小さい状態、(b)は、ロックアップクラッチLCの締結力(押付力)が大きい状態を示す図である。ロックアップクラッチLCの摩擦材18は、既述のように、コンバータカバー11aに対してその全表面が常に均一に接する訳ではなく、ロックアップクラッチLCの押付力に応じて、接触する表面積(当たり幅)が変化する。具体的には、ロックアップクラッチLCの押付力が小さい状態では、外径側の端辺あるいはその近傍の一部のみが当接する状態(片当たり状態)であり、そこから押付力が大きくなるに従って、当接する領域が段階的に拡大してゆくようになっている。そのため、同図(a)に示すように、ロックアップクラッチLCの締結力(押付力)が小さい状態では、発熱領域Wが小さく、それに属する区分Lkの数が少ないが、同図(b)に示すように、ロックアップクラッチLCの締結力(押付力)が大きくなると、発熱領域Wが拡大することで、それに属する区分Lkの数が増加する。したがって、発熱領域Wに属する区分Lkの数及び位置を決定することで、発熱領域Wの熱容量HCkを算出することができる。なお、ロックアップクラッチLCの押付力に対する発熱領域Wの変化は、予め測定した摩擦材18の温度変化の実測値などに基づいて定められている。
【0034】
次に、上記で決定した区分Lkごとに熱収支計算を行う(ステップS3−6)。この熱収支は次式(4)で算出される。
【0035】
ΔQk←(Qk_in−Qk_out)*Ak=(QLC − t・DT)*Ak・ ・ ・ (4)
【0036】
但し、Ak :発熱領域全体の発熱量を各区分に割り当てるための係数
t : 作動油による冷却率補正係数
DT : 摩擦材表面温度Tkと作動油温Tmの温度差
【0037】
上記の係数Akは、現在のロックアップクラッチLCの押付力に応じて決まる摩擦材18の当たり箇所及び当たり幅を考慮して、発熱領域W全体の発熱量を各区分Lnに割り当てるための係数である。この係数Akは、予め測定した摩擦材18の温度変化の実測値に基づいて定められているものである。また、式(4)での計算においては、初期条件として、QLC=0およびTk=Tmと設定される。
【0038】
さらに、算出した熱収支に基づいて、各区分Lkにおける単位時間当たりの摩擦材表面温度Tkと作動油温Tmの温度差変化率ΔTkを算出する(ステップS3−7)。この温度差変化率ΔTkは、次式(5)で算出できる。
【0039】
ΔTk←ΔQk/HCk・・ ・ ・ (5)
(k=1,2,・・・n)
【0040】
次に、算出した各区分Lkの温度差変化率ΔTkと、前回の計算により求められた各区分Lkの表面温度Tkとから、各区分Lkの今回の表面温度Tk′を次式(6)で求める(ステップST3−8)。以下、この計算を繰り返して、刻一刻変化する各区分Lkの摩擦材18の表面温度Tk′を求めることができる。
【0041】
Tk′= Tk+ ΔT・ ・ ・ (6)
(k=1,2,・・・n)
【0042】
そして、図2のステップS4で行われる摩擦材18の現在の表面温度Tと許容温度T1との比較は、各区分の表面温度Tk′(k=1,2・・・)のうち最も高い温度と許容温度T1とを比較することで行われる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態のロックアップクラッチの制御装置では、摩擦材18の表面温度を算出する際に、予め摩擦材18が接する部位Mを複数の区分L1,L2・・・Lnに分割して、当該区分L1,L2・・・それぞれに対応する区分熱容量HC1,HC2・・・HCnを算出しておき、その上で、ロックアップクラッチLCの締結度合いに関するデータを取得し、当該締結度合いに関するデータに基づいて、上記複数の区分L1,L2・・・Lnのうち摩擦材18が接することで発熱する発熱領域Wに属する区分Lkを決定し、該区分Lkに対して、当該区分Lkごとに熱収支計算を行うと共に区分熱容量HCnを用いてその表面温度Tkの算出を行うようにした。したがって、摩擦材18の表面温度の算出において、摩擦材18が接する部位Mに対して、実際に摩擦材18が当たることで発熱する発熱領域Wの大きさを考慮して、当該発熱領域Wに属する区分Lkの熱容量HCkだけを用いて表面温度Tkの計算を行うことができる。これにより、摩擦材18の当たり幅に応じた適切な温度推定が行えるようになるので、ロックアップクラッチLCの摩擦材18の温度を精度良く推定できる。
【0044】
従来の摩擦材の温度計算では、発熱領域(当たり幅)の大きさに関わらず、摩擦材が接する部位の熱容量が一定であるとの仮定で計算が行われていた。そのため、当たり幅が小さく摩擦材が接する部位の熱容量が小さい状態では、実際の表面温度が計算値よりも高くなってしまい、摩擦材18の保護に懸念があった。これに対して、本実施形態の手法によれば、ロックアップクラッチLCの締結力が低い(押付力が小さい)状態では、摩擦材18の当たり幅が小さいために、発熱領域Wに属する区分Lkの熱容量HCkが小さくなる。したがって、実際の温度が上昇し易い状態にあれば、推定値も同様の傾向で上昇するので、摩擦材18の表面温度を従来よりも精度良く推定できる。したがって、摩擦材18の保護の信頼性を向上させることができる。
【0045】
また、ロックアップクラッチLCの摩擦材18の当たり幅は、ロックアップクラッチLCにかかる押付力の関数となる。そのため、ロックアップクラッチLCの指示油圧や伝達トルクなどで摩擦材18の当たり幅が決まる。また、トルクコンバータTCの回転数に応じてコンバータカバー11aの形状などが変化することでも、摩擦材18の当たり幅が変化する。したがって、上記のように、摩擦材18が接することで発熱する発熱領域Wに属する区分Lkを決定するために用いるロックアップクラッチLCの締結度合いに関するデータは、トルクコンバータTCの指示油圧、伝達トルク、回転数のデータの少なくともいずれかであることが望ましい。これにより、摩擦材18の接触に不均一性(いわゆる片当たり)が生じ易いロックアップクラッチLCにおいて、スリップ制御による摩擦材18の温度上昇を適切に監視できるので、ロックアップクラッチLCの保護の信頼性を向上させることができる。
【0046】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の説明及び対応する図面においては、第1実施形態と同一又は相当する構成部分には同一の符号を付し、以下ではその部分の詳細な説明は省略する。また、以下で説明する事項以外の事項については、第1実施形態と同じである。この点は、他の実施形態においても同様である。
【0047】
図7は、第2実施形態における摩擦材18の当たり幅による発熱領域Wの変化を示す模式図で、(a)は、ロックアップクラッチLCの締結力(押付力)が小さい状態、(b)は、ロックアップクラッチLCの締結力(押付力)が大きい状態を示す図である。また、図8は、摩擦材18が接する部位Mの表面を模式的に示す図である。
【0048】
実際のロックアップクラッチLCでは、摩擦材18は、コンバータカバー11aの内面に対して、ロックアップクラッチLCの締結力が小さい状態では、図7(a)に示すように、外周側の端辺19を含む領域(図の斜線領域)のみ片当たりする。そして、ロックアップクラッチLCの締結力(押付力)が大きくなるに従って、同図(b)に示すように、片当たりする外周側の端辺19を含む領域が内周側へ拡大してゆく。この場合、摩擦材18が接する力の強さは、外周側の端辺19に対応する位置が最も強く、そこから内周側になるに連れて次第に弱くなる。したがって、発熱領域Wの表面温度の分布は、外周側の端辺19に対応する位置が最も高い温度となり、内周側になるに連れて次第に低い温度になる。
【0049】
そして、摩擦材18の保護の観点では、最も高い表面温度のみを把握すれば足りる。そこで、本実施形態では、図8に示すように、摩擦材18が当接する力が最も強い外周側の端辺19に対応する位置を含む区分Lhに対してのみ表面温度の算出を行うようにしている。
【0050】
以下、本実施形態での摩擦材18の表面温度の算出手順を具体的に説明する。第1実施形態では、摩擦材18の表面温度演算を行うにあたって、予め摩擦材18が接する部位Mを複数の区分L1,L2・・・Lnに分割して、各区分L1,L2・・・Lnの熱容量HC1,HC2・・・HCnそれぞれを算出していたのに対して、本実施形態では、摩擦材18が接する部位Mのうち、外周側の端辺19に対応する位置を含む一区分Lhの熱容量HChのみを算出しておけばよい。
【0051】
図9は、本実施形態における摩擦材表面温度の演算手順のサブルーチンを示すフローチャートである。図9のフローチャートは、第1実施形態の図5に対応するもので、ステップS33−1〜S33−4は、それぞれ図5に示すフローチャートのステップS3−1〜S3−4と同じであるため、その説明は省略する。
【0052】
そして、本実施形態では、摩擦材18が接する部位Mの発熱領域Wのうち、外周側の端辺19に対応する位置を含む区分Lhのみの熱収支計算を行う(ステップS33−5)。この熱収支は、次式(7)で算出される。
【0053】
ΔQh←(Qh_in−Qh_out)*Ah=(QLC − t・DT)*Ah・ ・ ・ (7)
但し、
Ah :発熱領域全体の発熱量を外周側の端辺19に対応する位置を含む区分Lhに割り当てるための係数
【0054】
上記の係数Akは、現在のロックアップクラッチLCの押付力に応じて、摩擦材18の発熱領域W全体の発熱量を外周側の端辺19に対応する位置を含む区分Lhに割り当てるための係数である。この係数は、予め測定した摩擦材18の温度変化の実測値に基づいて定められた係数である。
【0055】
さらに、上記で算出した熱収支に基づいて、区分Lhにおける単位時間当たりの摩擦材表面温度と作動油温Tmの温度差変化率ΔThを算出する(ステップS33−6)。この温度差変化率ΔTは、次式(8)で算出できる。
【0056】
ΔTh←ΔQh/HCh・・ ・ ・ (8)
【0057】
次に、算出した区分Lhの温度差変化率ΔThと、前回の計算により求められた区分Lhの摩擦材18の表面温度Thとから、今回の区分Lhの表面温度Th′を次式(9)で求める(ステップST33−7)。以下、この計算を繰り返して、刻一刻変化する区分Lhの表面温度Thを求めることができる。
【0058】
Th′← Th+ ΔTh・ ・ ・ (9)
【0059】
このようにして算出した現在の表面温度Th′を許容温度T1と比較する(第1実施形態のステップS4に対応)。
【0060】
摩擦材18に片当たりが生じている場合は、通常、最も強い力で接する箇所が最大に熱を受けるため、最も高い温度になる。そして、摩擦材18の保護や負荷監視の観点においては、摩擦材18の最も高い温度になる箇所の温度を把握しておけば足りる。したがって、上記のように摩擦材18の押付力が最も強い区分Lhのみでその表面温度Thの算出を行うように構成すれば、ロックアップクラッチLCの保護の信頼性を確保しながら、摩擦材18の表面温度の算出手順を簡素化できるので、制御装置1の構成の簡略化などを図ることができる。
【0061】
そして、ロックアップクラッチLCの摩擦材18では、外周側の端辺19に対応する位置を含む区分Lhが最も強い力で接するため、最も高い温度になる。したがって、上記のように外周側の端辺19に対応する位置を含む区分Lhの温度Thを算出すれば、スリップ制御による摩擦材18の温度上昇を効果的に監視できるので、ロックアップクラッチLCの保護の信頼性を確保できる。
【0062】
なお、ここでは、摩擦材18が外周側の端辺19に対応する位置から順に片当たりする態様を考慮して、外周側の端辺19に対応する位置を含む区分Lhの表面温度Thのみを計算する場合を示したが、摩擦材18の片当たりが他の態様で起こる場合には、その表面温度を測定する区分は上記以外の区分としてもよい。すなわち、一般的には、予め摩擦材18が接する部位Mが有する複数の区分L1,L2・・・Lnに対して、摩擦材18の押付力に順位を付しておき、発熱領域Wに属する区分L1,L2・・・Lnのうち、摩擦材18の押付力が最も強い区分に対して表面温度の算出を行うようにすることができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、本発明にかかる制御装置を用いる摩擦係合要素は、上記実施形態に示すトルクコンバータTCに付随するロックアップクラッチLCには限らず、一般的な変速段設定用のクラッチやブレーキなど、他の種類の摩擦係合要素であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 ロックアップ制御装置
8 主制御部(表面温度算出手段、制御手段)
11a コンバータカバー
15 ロックアップピストン
18 摩擦材
HC 熱容量
HC1,HC2・・・HCn 区分熱容量
L1,L2・・・Ln 区分
LA 全表面
LC ロックアップクラッチ
M 摩擦材が接する部位
TC トルクコンバータ
W 発熱領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクコンバータに付随するロックアップクラッチなどの摩擦係合要素の係合状態を制御する摩擦係合要素の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載されるトルクコンバータには、インペラとタービンを直結させるロックアップクラッチ(LC)を設けることが多く、ロックアップクラッチの係合で動力伝達効率及び燃費の向上が図られている。近年は、さらなる燃費向上などを目的として、ロックアップクラッチを部分的に係合する制御、すなわちロックアップクラッチのスリップ制御を行うことが多くなっている。しかしながら、スリップ制御を行うと、ロックアップクラッチの摩擦材の発熱量が増大するため、摩擦材やシール部材等の耐久性を確保するための対策が必要となる。このようなことから、スリップに伴う発熱からロックアップクラッチを保護するため、種々の装置、方法が提案されている。
【0003】
これに関して、特許文献1には、ロックアップ機構付きトルクコンバータの制御装置が開示されている。この制御装置は、トルクコンバータ内の作動油温と、ロックアップクラッチの発熱量とに基づいて、ロックアップクラッチにおけるクラッチ摩擦材の表面温度を算出し、算出したクラッチ摩擦材の表面温度と予め定められた許容温度とを比較し、クラッチ摩擦材の表面温度が許容温度以上になったと判断したときに、クラッチ摩擦材の表面温度を低下させる所定の動作を行うものである。これによれば、クラッチ摩擦材の表面温度を把握して、その上昇を抑制できるので、ロックアップクラッチのスリップ制御を行いながら、クラッチ摩擦材の耐久性を確保できる。
【0004】
そして、上記の制御装置では、クラッチ摩擦材の表面温度の推定値を算出するようになっている。この表面温度の算出では、クラッチ摩擦材と摺動する部位の熱容量と、クラッチ摩擦材の表面温度に対するトルクコンバータ内の作動油温の温度差と、トルクコンバータ内の作動油による冷却率とを用いて熱収支計算を行って、単位時間当たりのクラッチ摩擦材の表面温度とトルクコンバータ内の作動油温との温度差変化率を算出し、この温度差変化率からクラッチ摩擦材の表面温度を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3476718号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、実際のロックアップクラッチの摩擦材は、相手側のコンバータカバーに対して常に全表面が均一に接する訳ではなく、その面が僅かに傾いた状態で片当たりしている場合が多い。そのため、クラッチ油圧や伝達トルクなどに応じて、摩擦材がコンバータカバーに接触する面積(以下、「当たり幅」ということがある。)が段階的に変化するようになっている。これにより、ロックアップクラッチの発熱量が同じでも、当たり幅が小さいと受熱部の熱容量が小さいため、摩擦材の温度上昇が大きくなる。また、ロックアップクラッチの締結力(伝達トルク)が大きいときは、摩擦材の外周側と内周側の両方が共に当接(全面当たり)し、外周側と内周側とでほぼ同等の温度上昇が得られるが、締結力小さいときは、摩擦材の回転外周側のみが当接(片当たり)することで、摩擦材の外周側の温度が主に上昇する。このことは、摩擦材の温度変化の実測によっても確認されている。
【0007】
そのため、摩擦材の温度推定の精度向上や保護の観点から、摩擦材の片当たりを考慮した温度推定を行うことが望ましい。しかしながら、特許文献1に示すように、ロックアップクラッチ締結時の摩擦材の温度推定自体は既に行われているが、この温度推定では、摩擦材の当たり幅が常に一定であり、温度推定の対象となる受熱部の熱容量が一定であるとの仮定の元で推定計算が行われていた。
【0008】
このように、特許文献1に示す従来技術では、摩擦材の片当たりを考慮していないため、温度推定の精度が必ずしも高くないという問題があった。特に、片当たりの傾向が顕著である低トルク時の温度推定は、精度向上の余地が大きい。すなわち、低トルク時に摩擦材の片当たりで受熱部の熱容量が小さい状態(単位質量あたりの熱収支が大きい状態)では、摩擦材の温度の推定値が実際よりも低い温度になる。そのため、ロックアップクラッチの保護の信頼性、及びロックアップクラッチの耐久性が低下するおそれがある。
【0009】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、ロックアップクラッチなどの摩擦係合要素が有する摩擦材の温度推定において、摩擦材の当たり幅を考慮することで、より正確な温度推定値の算出を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、摩擦係合要素(LC)の係合状態を制御する摩擦係合要素の制御装置(1)であって、摩擦係合要素(LC)が有する摩擦材(18)の表面温度の推定値を算出する表面温度算出手段(8)と、表面温度算出手段(8)で算出した摩擦材(18)の表面温度(T)に応じて、摩擦係合要素(LC)の係合状態を制御する制御手段(8)と、を備え、表面温度算出手段(8)は、摩擦材(18)が接する部位(M)の熱容量(HC)と、摩擦材(18)の表面温度(T)と摩擦係合要素(LC)の作動油温(Tm)との温度差(DT)と、摩擦係合要素(LC)の作動油による冷却率(t)と、を用いて熱収支計算を行って、単位時間当たりの摩擦材(18)の表面温度(T)と摩擦係合要素(LC)の作動油温(Tm)との温度差変化率(ΔT)を算出し、この温度差変化率(ΔT)から摩擦材(18)の表面温度(T)を算出する際に、予め摩擦材(18)が接する部位(M)の全体を複数の区分(Lk)に分割して、当該区分(Lk)に対応する区分熱容量(HCk)を算出しておき、その上で、摩擦係合要素(LC)の締結度合いに関するデータを取得し、当該締結度合いに関するデータに基づいて、複数の区分のうち摩擦材(18)が接することで発熱する領域(W)に属する区分(Lk)を決定し、この発熱する領域(W)に属する各区分(Lk)に対して、該区分(Lk)ごとに熱収支計算を行うと共に区分熱容量(HCk)を用いてその表面温度(Tk)の算出を行うことを特徴とする。
【0011】
本発明にかかる摩擦係合要素の制御装置によれば、摩擦材の表面温度を算出する際に、予め摩擦材が接する部位を複数の区分に分割して、当該区分に対応する区分熱容量を算出しておき、その上で、摩擦係合要素の締結度合いに関するデータを取得し、当該締結度合いに関するデータに基づいて、上記複数の区分のうち摩擦材が接することで発熱する領域に属する区分を決定(摩擦材の当たり幅を決定)し、その領域に属する各区分に対して、該区分ごとに熱収支計算を行うと共に区分熱容量を用いて表面温度の算出を行うようにした。したがって、摩擦材の表面温度の算出において、実際に摩擦材が当たることで発熱する領域を考慮して、当該領域の熱容量を用いて表面温度の計算を行うことができる。これにより、摩擦材の当たり幅に応じた適切な温度推定が行えるようになるので、摩擦係合要素が有する摩擦材の温度をより精度良く推定できる。特に、従来の摩擦材の温度計算では、発熱領域(当たり幅)の大きさに関わらず、摩擦材が接する部位の熱容量が一定であるとの仮定で計算が行われていた。そのため、当たり幅が小さく受熱部の熱容量が小さい状態では、実際の表面温度が推定値よりも高くなってしまい、摩擦材の十分な保護に懸念があった。これに対して、本発明の手法では、摩擦係合要素の締結力が低い(押付力が小さい)状態では、摩擦材の当たり幅が小さいために、発熱領域の熱容量が小さくなる。したがって、実際の温度が上昇し易い状態であれば、推定温度も同様の傾向で上昇するので、摩擦材の表面温度を精度良く推定できる。したがって、摩擦材及び摩擦係合要素に対する保護の信頼性を向上させることができる。
【0012】
また、上記の摩擦係合要素の制御装置では、摩擦係合要素(LC)は、トルクコンバータ(TC)に付随するロックアップクラッチ(LC)であり、上記の締結度合いに関するデータは、トルクコンバータ(TC)の指示油圧、伝達トルク、回転数のデータの少なくともいずれかであってよい。
【0013】
ロックアップクラッチなど摩擦係合要素が有する摩擦材の当たり幅は、摩擦係合要素にかかる押し力の関数となる。そのため、ロックアップクラッチの場合は、トルクコンバータの指示油圧や伝達トルクなどで摩擦材の当たり幅が決まる。また、トルクコンバータの回転数に応じてコンバータカバーの形状などが変化することでも、摩擦材の当たり幅が変化する。したがって、上記のように、摩擦材が接することで発熱する領域に属する区分を決定するための係合強さに関するデータは、トルクコンバータの指示油圧、伝達トルク、回転数のデータの少なくともいずれかであることが望ましい。これによれば、摩擦材の接触に不均一性(いわゆる片当たり)が生じ易いロックアップクラッチにおいて、スリップ制御による摩擦材の温度上昇を効果的に監視でき、ロックアップクラッチの保護の信頼性を向上させることができる。
【0014】
また、上記の摩擦係合要素の制御装置では、表面温度算出手段(8)は、予め上記複数の区分(Ln)に対する摩擦材(18)の押付力に順位を付しておき、発熱する領域(W)に属する各区分(Lk)のうち、摩擦材(18)の押付力が最も強い区分(Lh)に対してのみ熱収支計算を行うと共に区分熱容量(HCh)を用いて表面温度(Th)の算出を行うようにしてよい。また、この場合の表面温度(Th)の算出を行う区分(Lh)は、摩擦材(18)における回転外周側の端辺(19)に対応する位置を含む区分(Lh)であってよい。
【0015】
摩擦材に片当たりが生じている場合は、通常、最も強い力で接する箇所が最大に熱を受けるため、最も高い温度になる。そして、摩擦材の保護や負荷監視の観点においては、最も高い温度になる部位の温度を把握すれば足りる。したがって、上記のように、摩擦材の押付力が最も強い区分に対してのみ表面温度の算出を行うように構成すれば、保護の信頼性を確保しながら、表面温度算出手順を簡素化できるので、制御装置の構成の簡略化などを図ることができる。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態における構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる摩擦係合要素の制御装置によれば、ロックアップクラッチなど摩擦係合要素が有する摩擦材の温度推定計算において、摩擦材の当たり幅を考慮することで、温度推定値の算出精度を高めることができ、摩擦係合要素の保護の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明が適用されるロックアップクラッチ付きトルクコンバータを示す部分概略断面図、及びその制御装置を示すブロック図である。
【図2】ロックアップクラッチの制御装置の制御内容を示すフローチャート(メインフロー)である。
【図3】ロックアップクラッチの負荷計算のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図4】摩擦材が接する部位の表面を模式的に示す図である。
【図5】摩擦材表面温度の演算手順のサブルーチンを示すフローチャートである。
【図6】摩擦材の当たり幅による発熱領域の変化を示す模式図で、(a)は、ロックアップクラッチの締結力(押付力)が小さい状態、(b)は、ロックアップクラッチの締結力(押付力)が大きい状態を示す図である。
【図7】本発明の第2実施形態における摩擦材の当たり幅による発熱領域の変化を示す模式図で、(a)は、ロックアップクラッチの締結力(押付力)が小さい状態、(b)は、ロックアップクラッチの締結力(押付力)が大きい状態を示す図である。
【図8】摩擦材が接する部位の表面を模式的に示す図である。
【図9】第2実施形態における摩擦材表面温度の演算手順のサブルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明が適用されるロックアップクラッチ付きトルクコンバータを示す部分概略断面図、及びその制御装置を示すブロック図である。同図に示すトルクコンバータTCは、コンバータカバー11aを介してエンジン出力軸(図示せず)と繋がるインペラ11と、インペラ11と対向して配設されるとともにタービンハブ12aを介して変速機入力軸(図示せず)と繋がるタービン12と、固定保持されるステータ13とから構成される。タービン12の背面とコンバータカバー11aの内面とに囲まれた空間内にロックアップピストン15が配設されている。この空間はロックアップピストン15により二分割されており、コンバータカバー11aとロックアップピストン15に囲まれたロックアップ解放室16と、タービン12とロックアップピストン15に囲まれたロックアップ締結室17とに分けられている。なお、このロックアップピストン15はタービンハブ12aに対して軸方向移動可能で、且つタービンハブ12aと一体回転するように取り付けられている。
【0019】
ロックアップクラッチLCの作動は、ロックアップ油入口16aおよびコンバータ油入口17aから供給される作動油圧を制御して、ロックアップ解放室16とロックアップ締結室17内の油圧を制御することにより行われる。例えば、ロックアップ解放室16内の油圧を低下させることによりロックアップ締結室17内の油圧によりロックアップピストン15をコンバータカバー11aの内面に押し付け、ロックアップピストン15の側面に設けられたクラッチ摩擦材(以下、単に「摩擦材」と称す。)18とコンバータカバー11aの内面との摩擦によりロックアップピストン15とコンバータカバー11aとを結合させる。この結果、インペラ11とタービン12が係合されて一体回転するロックアップ作動状態となる。これとは逆に、ロックアップ油入口16aからロックアップ解放室16に作動油を供給してロックアップ解放室16内の油圧をロックアップ締結室17内の油圧より高くすると、ロックアップピストン15はコンバータカバー11aの内面から離れてロックアップ解放状態となり、インペラ11とタービン12とは独立して回転可能となり、トルクコンバータTCが作動する状態となる。
【0020】
このように、ロックアップ油入口16aおよびコンバータ油入口17aから供給される作動油圧を制御することにより、ロックアップピストン15とコンバータカバー11aの内面との接触を制御し、ロックアップを作動させたり、解放させたり、さらには、部分係合させたり(これをロックアップクラッチLCのスリップ制御と称する)することができる。このようなロックアップ制御を行うために、ロックアップ制御装置1が設けられている。
【0021】
ロックアップ制御装置1は、オイルタンク6内の作動油を供給する油圧ポンプ5と、油圧ポンプ5から供給される供給圧を調整する供給圧調整手段4と、供給圧調整手段4により調圧された作動油をロックアップ油入口16aおよびコンバータ油入口17aに供給する制御を行う油圧回路切替手段3と、ロックアップ油入口16aからロックアップ解放室16に供給される作動油圧を制御する締結力調整手段2と、締結力調整手段2の作動を制御する信号圧を供給する信号圧発生手段7と、信号圧発生手段7に指令を与える主制御部8とを備えて構成される。このロックアップ制御装置1では、主制御部8の指令に基づいて、ロックアップ解放室16内の油圧を締結力調整手段2により調圧制御し、ロックアップ締結室17内の油圧を供給圧調整手段4により調圧制御し、且つ、油圧回路切替手段3による供給油圧の切替制御を行うことにより、ロックアップクラッチLCの係合作動制御が行われる。なお、主制御部8は、本発明にかかる摩擦材の表面温度の推定値を算出する表面温度算出手段及び摩擦係合要素の係合状態を制御する制御手段として機能する。
【0022】
このようにしてロックアップクラッチLCの係合作動制御を行う場合(特に、スリップ制御を行う場合)、摩擦材18とコンバータカバー11aの内面との摩擦により発熱が生じ、摩擦材18の耐久性が損なわれるおそれがある。このため、本発明のロックアップ制御装置1においては、主制御部8で摩擦材18の表面温度の演算を行い、当該表面温度が過度に高温となることを防止するための制御を行うようになっている。
【0023】
図2は、上記の制御内容を示すフローチャート(メインフロー)である。この制御では、まず、ロックアップクラッチLCの負荷演算を行う(ステップS1)。ロックアップクラッチLCの負荷演算の具体的な手順については、下記で詳細に説明する。その後、油温センサにてトルクコンバータの作動油温Tmを検出する(ステップS2)。そして、ロックアップクラッチLCの摩擦材18の表面温度Tを演算する(ステップS3)。ここでの摩擦材18の表面温度Tは、後述するように、摩擦材18が接する部位の発熱領域を複数の区分に分割した当該区分ごとの表面温度である。この表面温度演算の具体的な手順については、下記で詳細に説明する。
【0024】
そして、上記で求めた摩擦材18の現在の表面温度Tと、摩擦材18に応じて設定された許容温度T1とを比較する(ステップS4)。その結果、現在の摩擦材18の表面温度Tが許容温度T1未満(NO)のときには、ステップS1に戻って上述の手順を継続する。一方、許容温度T1以上(YES)のときには、摩擦材18の温度を低下させるための制御を行う(ステップS5)。ここでの摩擦材18の温度を低下させるための制御としては、例えば、ロックアップクラッチLCを完全係合させる制御、もしくは完全解放させる制御が行われる。これにより、摩擦材18の表面温度が許容温度T1以上の状態が解消するので、摩擦材18の所期の耐久性を確保することができる。
【0025】
ここで、ロックアップクラッチLCの負荷演算(ステップS1)の手順について説明する。図3は、ロックアップクラッチLCの負荷演算のサブルーチンを示すフローチャートである。この負荷演算では、まず、スロットル開度センサによりエンジンスロットル開度θTHを検出するとともに、車速センサにより車速Vを検出する(ステップS1−1)。これら検出値に基づいて、ロックアップスリップ制御における目標スリップ率を算出し(ステップS1−2)、このような目標スリップ率が得られるようにロックアップクラッチLCの係合制御を行う(ステップS1−3)。このとき、エンジン回転数Ne(すなわち、トルクコンバータ入力回転数)と変速機入力回転数Nm(すなわち、トルクコンバータ出力回転数)とを検出する(ステップS1−4)。
【0026】
さらに、エンジンスロットル開度θTHおよびエンジン回転数Neに基づいて、エンジン出力トルクを推定する(ステップS1−5)。そして、ロックアップクラッチ伝達トルクTLCと、ロックアップクラッチ差回転ΔNを算出する(ステップS1−6)。ロックアップクラッチ伝達トルクTLCと、ロックアップクラッチ差回転ΔNの算出は、以下の手順で行われる。
【0027】
まず、ロックアップクラッチ差回転ΔNは、エンジン回転数Neと、変速機入力回転数Nmとの差である。一方、ロックアップクラッチ伝達トルクTLCについては、ロックアップクラッチLCがスリップ制御を行っているときは、エンジントルクTeはロックアップクラッチ伝達トルクTLCとトルクコンバータの流体伝達トルクTTCの和であり、次式(1)のように表される。ここで、トルクコンバータの流体伝達トルクTTCは、エンジン回転数Neと変速機入力回転数Nm(または、目標すべり率)から求まるトルクコンバータの容量係数τを用いて、次式(2)により求められる。これら式(1)および(2)からロックアップクラッチ伝達トルクTLCが求まる。
【0028】
Te = TLC + TTC ・ ・ ・ (1)
TTC = τ・(Ne/1000)2 ・ ・ ・(2)
【0029】
次に、摩擦材18の表面温度演算(ステップST3)の手順について説明する。本実施形態では、摩擦材18の表面温度演算を行うにあたって、予めコンバータカバー11aにおける摩擦材18が接する部位を複数の区分に分割して、当該区分に対応する区分熱容量を算出しておくようになっている。図4は、このことを説明するための図で、摩擦材18が接する部位Mの表面を模式的に示す図である。同図では、縦軸に摩擦材18が接する部位Mの径方向の分布を取っている。ここでは、摩擦材18が接する部位Mの全体LAを径方向で複数個(ここではn個)の区分L1,L2・・Lnに分割する。そして、当該複数の区分L1,L2・・Lnそれぞれに対応する区分熱容量HC1,HC2・・・HCnを算出しておく。なお、摩擦材18が接する部位Mの全体LAは、摩擦材18の接触で発熱が生じる領域(発熱領域)Wの最大値であり、その熱容量HC=ΣHCk(k=1〜n)は、当該発熱領域Wの最大値に対応する最大の熱容量である。
【0030】
図5は、摩擦材18の表面温度を演算する手順を示すサブルーチンである。この演算では、まず、ロックアップクラッチ伝達トルクTLCとロックアップクラッチ差回転ΔNとを読み込み(ステップS3−1)、ロックアップクラッチLCの発熱量QLCを演算する(ステップS3−2)。ロックアップクラッチLCの発熱量QLCは、次式(3)で求まる。
【0031】
QLC = TLC・(π/30)・ΔN・dt ・ ・ ・ (3)
【0032】
続いて、トルクコンバータTC内の作動油温Tmを読み込む(ステップS3−3)。そして、ロックアップクラッチLCの押付力(締結度合い)に関するデータを取得する(ステップS3−4)。ここでのロックアップクラッチLCの押付力に関するデータは、トルクコンバータの指示油圧、伝達トルク、回転数の少なくともいずれかのデータを用いることができる。これらのデータに基づいて、ロックアップクラッチLCの押付力を把握できる。そして、このロックアップクラッチLCの押付力に基づいて摩擦材18の当たり箇所及び当たり幅の計算を行う(ステップS3−5)。この摩擦材18の当たり箇所及び当たり幅の計算は、具体的には、上記複数の区分L1,L2・・・Lnのうち摩擦材18が接することで発熱する領域(発熱領域)Wに属する区分Lkの数及び位置を決定することで行われる。
【0033】
図6は、摩擦材18の当たり幅による発熱領域Wの変化を示す模式図で、(a)は、ロックアップクラッチLCの締結力(押付力)が小さい状態、(b)は、ロックアップクラッチLCの締結力(押付力)が大きい状態を示す図である。ロックアップクラッチLCの摩擦材18は、既述のように、コンバータカバー11aに対してその全表面が常に均一に接する訳ではなく、ロックアップクラッチLCの押付力に応じて、接触する表面積(当たり幅)が変化する。具体的には、ロックアップクラッチLCの押付力が小さい状態では、外径側の端辺あるいはその近傍の一部のみが当接する状態(片当たり状態)であり、そこから押付力が大きくなるに従って、当接する領域が段階的に拡大してゆくようになっている。そのため、同図(a)に示すように、ロックアップクラッチLCの締結力(押付力)が小さい状態では、発熱領域Wが小さく、それに属する区分Lkの数が少ないが、同図(b)に示すように、ロックアップクラッチLCの締結力(押付力)が大きくなると、発熱領域Wが拡大することで、それに属する区分Lkの数が増加する。したがって、発熱領域Wに属する区分Lkの数及び位置を決定することで、発熱領域Wの熱容量HCkを算出することができる。なお、ロックアップクラッチLCの押付力に対する発熱領域Wの変化は、予め測定した摩擦材18の温度変化の実測値などに基づいて定められている。
【0034】
次に、上記で決定した区分Lkごとに熱収支計算を行う(ステップS3−6)。この熱収支は次式(4)で算出される。
【0035】
ΔQk←(Qk_in−Qk_out)*Ak=(QLC − t・DT)*Ak・ ・ ・ (4)
【0036】
但し、Ak :発熱領域全体の発熱量を各区分に割り当てるための係数
t : 作動油による冷却率補正係数
DT : 摩擦材表面温度Tkと作動油温Tmの温度差
【0037】
上記の係数Akは、現在のロックアップクラッチLCの押付力に応じて決まる摩擦材18の当たり箇所及び当たり幅を考慮して、発熱領域W全体の発熱量を各区分Lnに割り当てるための係数である。この係数Akは、予め測定した摩擦材18の温度変化の実測値に基づいて定められているものである。また、式(4)での計算においては、初期条件として、QLC=0およびTk=Tmと設定される。
【0038】
さらに、算出した熱収支に基づいて、各区分Lkにおける単位時間当たりの摩擦材表面温度Tkと作動油温Tmの温度差変化率ΔTkを算出する(ステップS3−7)。この温度差変化率ΔTkは、次式(5)で算出できる。
【0039】
ΔTk←ΔQk/HCk・・ ・ ・ (5)
(k=1,2,・・・n)
【0040】
次に、算出した各区分Lkの温度差変化率ΔTkと、前回の計算により求められた各区分Lkの表面温度Tkとから、各区分Lkの今回の表面温度Tk′を次式(6)で求める(ステップST3−8)。以下、この計算を繰り返して、刻一刻変化する各区分Lkの摩擦材18の表面温度Tk′を求めることができる。
【0041】
Tk′= Tk+ ΔT・ ・ ・ (6)
(k=1,2,・・・n)
【0042】
そして、図2のステップS4で行われる摩擦材18の現在の表面温度Tと許容温度T1との比較は、各区分の表面温度Tk′(k=1,2・・・)のうち最も高い温度と許容温度T1とを比較することで行われる。
【0043】
以上説明したように、本実施形態のロックアップクラッチの制御装置では、摩擦材18の表面温度を算出する際に、予め摩擦材18が接する部位Mを複数の区分L1,L2・・・Lnに分割して、当該区分L1,L2・・・それぞれに対応する区分熱容量HC1,HC2・・・HCnを算出しておき、その上で、ロックアップクラッチLCの締結度合いに関するデータを取得し、当該締結度合いに関するデータに基づいて、上記複数の区分L1,L2・・・Lnのうち摩擦材18が接することで発熱する発熱領域Wに属する区分Lkを決定し、該区分Lkに対して、当該区分Lkごとに熱収支計算を行うと共に区分熱容量HCnを用いてその表面温度Tkの算出を行うようにした。したがって、摩擦材18の表面温度の算出において、摩擦材18が接する部位Mに対して、実際に摩擦材18が当たることで発熱する発熱領域Wの大きさを考慮して、当該発熱領域Wに属する区分Lkの熱容量HCkだけを用いて表面温度Tkの計算を行うことができる。これにより、摩擦材18の当たり幅に応じた適切な温度推定が行えるようになるので、ロックアップクラッチLCの摩擦材18の温度を精度良く推定できる。
【0044】
従来の摩擦材の温度計算では、発熱領域(当たり幅)の大きさに関わらず、摩擦材が接する部位の熱容量が一定であるとの仮定で計算が行われていた。そのため、当たり幅が小さく摩擦材が接する部位の熱容量が小さい状態では、実際の表面温度が計算値よりも高くなってしまい、摩擦材18の保護に懸念があった。これに対して、本実施形態の手法によれば、ロックアップクラッチLCの締結力が低い(押付力が小さい)状態では、摩擦材18の当たり幅が小さいために、発熱領域Wに属する区分Lkの熱容量HCkが小さくなる。したがって、実際の温度が上昇し易い状態にあれば、推定値も同様の傾向で上昇するので、摩擦材18の表面温度を従来よりも精度良く推定できる。したがって、摩擦材18の保護の信頼性を向上させることができる。
【0045】
また、ロックアップクラッチLCの摩擦材18の当たり幅は、ロックアップクラッチLCにかかる押付力の関数となる。そのため、ロックアップクラッチLCの指示油圧や伝達トルクなどで摩擦材18の当たり幅が決まる。また、トルクコンバータTCの回転数に応じてコンバータカバー11aの形状などが変化することでも、摩擦材18の当たり幅が変化する。したがって、上記のように、摩擦材18が接することで発熱する発熱領域Wに属する区分Lkを決定するために用いるロックアップクラッチLCの締結度合いに関するデータは、トルクコンバータTCの指示油圧、伝達トルク、回転数のデータの少なくともいずれかであることが望ましい。これにより、摩擦材18の接触に不均一性(いわゆる片当たり)が生じ易いロックアップクラッチLCにおいて、スリップ制御による摩擦材18の温度上昇を適切に監視できるので、ロックアップクラッチLCの保護の信頼性を向上させることができる。
【0046】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の説明及び対応する図面においては、第1実施形態と同一又は相当する構成部分には同一の符号を付し、以下ではその部分の詳細な説明は省略する。また、以下で説明する事項以外の事項については、第1実施形態と同じである。この点は、他の実施形態においても同様である。
【0047】
図7は、第2実施形態における摩擦材18の当たり幅による発熱領域Wの変化を示す模式図で、(a)は、ロックアップクラッチLCの締結力(押付力)が小さい状態、(b)は、ロックアップクラッチLCの締結力(押付力)が大きい状態を示す図である。また、図8は、摩擦材18が接する部位Mの表面を模式的に示す図である。
【0048】
実際のロックアップクラッチLCでは、摩擦材18は、コンバータカバー11aの内面に対して、ロックアップクラッチLCの締結力が小さい状態では、図7(a)に示すように、外周側の端辺19を含む領域(図の斜線領域)のみ片当たりする。そして、ロックアップクラッチLCの締結力(押付力)が大きくなるに従って、同図(b)に示すように、片当たりする外周側の端辺19を含む領域が内周側へ拡大してゆく。この場合、摩擦材18が接する力の強さは、外周側の端辺19に対応する位置が最も強く、そこから内周側になるに連れて次第に弱くなる。したがって、発熱領域Wの表面温度の分布は、外周側の端辺19に対応する位置が最も高い温度となり、内周側になるに連れて次第に低い温度になる。
【0049】
そして、摩擦材18の保護の観点では、最も高い表面温度のみを把握すれば足りる。そこで、本実施形態では、図8に示すように、摩擦材18が当接する力が最も強い外周側の端辺19に対応する位置を含む区分Lhに対してのみ表面温度の算出を行うようにしている。
【0050】
以下、本実施形態での摩擦材18の表面温度の算出手順を具体的に説明する。第1実施形態では、摩擦材18の表面温度演算を行うにあたって、予め摩擦材18が接する部位Mを複数の区分L1,L2・・・Lnに分割して、各区分L1,L2・・・Lnの熱容量HC1,HC2・・・HCnそれぞれを算出していたのに対して、本実施形態では、摩擦材18が接する部位Mのうち、外周側の端辺19に対応する位置を含む一区分Lhの熱容量HChのみを算出しておけばよい。
【0051】
図9は、本実施形態における摩擦材表面温度の演算手順のサブルーチンを示すフローチャートである。図9のフローチャートは、第1実施形態の図5に対応するもので、ステップS33−1〜S33−4は、それぞれ図5に示すフローチャートのステップS3−1〜S3−4と同じであるため、その説明は省略する。
【0052】
そして、本実施形態では、摩擦材18が接する部位Mの発熱領域Wのうち、外周側の端辺19に対応する位置を含む区分Lhのみの熱収支計算を行う(ステップS33−5)。この熱収支は、次式(7)で算出される。
【0053】
ΔQh←(Qh_in−Qh_out)*Ah=(QLC − t・DT)*Ah・ ・ ・ (7)
但し、
Ah :発熱領域全体の発熱量を外周側の端辺19に対応する位置を含む区分Lhに割り当てるための係数
【0054】
上記の係数Akは、現在のロックアップクラッチLCの押付力に応じて、摩擦材18の発熱領域W全体の発熱量を外周側の端辺19に対応する位置を含む区分Lhに割り当てるための係数である。この係数は、予め測定した摩擦材18の温度変化の実測値に基づいて定められた係数である。
【0055】
さらに、上記で算出した熱収支に基づいて、区分Lhにおける単位時間当たりの摩擦材表面温度と作動油温Tmの温度差変化率ΔThを算出する(ステップS33−6)。この温度差変化率ΔTは、次式(8)で算出できる。
【0056】
ΔTh←ΔQh/HCh・・ ・ ・ (8)
【0057】
次に、算出した区分Lhの温度差変化率ΔThと、前回の計算により求められた区分Lhの摩擦材18の表面温度Thとから、今回の区分Lhの表面温度Th′を次式(9)で求める(ステップST33−7)。以下、この計算を繰り返して、刻一刻変化する区分Lhの表面温度Thを求めることができる。
【0058】
Th′← Th+ ΔTh・ ・ ・ (9)
【0059】
このようにして算出した現在の表面温度Th′を許容温度T1と比較する(第1実施形態のステップS4に対応)。
【0060】
摩擦材18に片当たりが生じている場合は、通常、最も強い力で接する箇所が最大に熱を受けるため、最も高い温度になる。そして、摩擦材18の保護や負荷監視の観点においては、摩擦材18の最も高い温度になる箇所の温度を把握しておけば足りる。したがって、上記のように摩擦材18の押付力が最も強い区分Lhのみでその表面温度Thの算出を行うように構成すれば、ロックアップクラッチLCの保護の信頼性を確保しながら、摩擦材18の表面温度の算出手順を簡素化できるので、制御装置1の構成の簡略化などを図ることができる。
【0061】
そして、ロックアップクラッチLCの摩擦材18では、外周側の端辺19に対応する位置を含む区分Lhが最も強い力で接するため、最も高い温度になる。したがって、上記のように外周側の端辺19に対応する位置を含む区分Lhの温度Thを算出すれば、スリップ制御による摩擦材18の温度上昇を効果的に監視できるので、ロックアップクラッチLCの保護の信頼性を確保できる。
【0062】
なお、ここでは、摩擦材18が外周側の端辺19に対応する位置から順に片当たりする態様を考慮して、外周側の端辺19に対応する位置を含む区分Lhの表面温度Thのみを計算する場合を示したが、摩擦材18の片当たりが他の態様で起こる場合には、その表面温度を測定する区分は上記以外の区分としてもよい。すなわち、一般的には、予め摩擦材18が接する部位Mが有する複数の区分L1,L2・・・Lnに対して、摩擦材18の押付力に順位を付しておき、発熱領域Wに属する区分L1,L2・・・Lnのうち、摩擦材18の押付力が最も強い区分に対して表面温度の算出を行うようにすることができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、本発明にかかる制御装置を用いる摩擦係合要素は、上記実施形態に示すトルクコンバータTCに付随するロックアップクラッチLCには限らず、一般的な変速段設定用のクラッチやブレーキなど、他の種類の摩擦係合要素であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 ロックアップ制御装置
8 主制御部(表面温度算出手段、制御手段)
11a コンバータカバー
15 ロックアップピストン
18 摩擦材
HC 熱容量
HC1,HC2・・・HCn 区分熱容量
L1,L2・・・Ln 区分
LA 全表面
LC ロックアップクラッチ
M 摩擦材が接する部位
TC トルクコンバータ
W 発熱領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦係合要素の係合状態を制御する摩擦係合要素の制御装置であって、
前記摩擦係合要素が有する摩擦材の表面温度の推定値を算出する表面温度算出手段と、前記表面温度算出手段で算出した前記摩擦材の表面温度に応じて前記摩擦係合要素の係合状態を制御する制御手段と、を備え、
前記表面温度算出手段は、
前記摩擦材が接する部位の熱容量と、前記摩擦材の表面温度と前記摩擦係合要素の作動油温との温度差と、前記摩擦係合要素の作動油による冷却率と、を用いて熱収支計算を行って、単位時間当たりの前記摩擦材の表面温度と前記摩擦係合要素の作動油温との温度差変化率を算出し、この温度差変化率から前記摩擦材の表面温度を算出する際に、
予め前記摩擦材が接する部位の全体を複数の区分に分割して、当該区分に対応する区分熱容量を算出しておき、
前記摩擦係合要素の締結度合いに関するデータを取得し、当該締結度合いに関するデータに基づいて、前記複数の区分のうち前記摩擦材が接することで発熱する領域に属する区分を決定し、
前記発熱する領域に属する各区分に対して、該区分ごとに前記熱収支計算を行うと共に前記区分熱容量を用いてその表面温度の算出を行う
ことを特徴とする摩擦係合要素の制御装置。
【請求項2】
前記摩擦係合要素は、トルクコンバータに付随するロックアップクラッチであり、
前記締結度合いに関するデータは、前記トルクコンバータの指示油圧、伝達トルク、回転数のデータの少なくともいずれかである
ことを特徴とする請求項1に記載の摩擦係合要素の制御装置。
【請求項3】
前記表面温度算出手段は、
予め前記複数の区分に対する前記摩擦材の押付力に順位を付しておき、
前記発熱する領域に属する各区分のうち、前記摩擦材の押付力が最も強い区分に対してのみ、前記熱収支計算を行うと共に前記区分熱容量を用いてその表面温度の算出を行う
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の摩擦係合要素の制御装置。
【請求項4】
前記表面温度の算出を行う区分は、前記摩擦材における回転外周側の端辺を含む位置に対応する区分である
ことを特徴とする請求項3に記載の摩擦係合要素の制御装置。
【請求項1】
摩擦係合要素の係合状態を制御する摩擦係合要素の制御装置であって、
前記摩擦係合要素が有する摩擦材の表面温度の推定値を算出する表面温度算出手段と、前記表面温度算出手段で算出した前記摩擦材の表面温度に応じて前記摩擦係合要素の係合状態を制御する制御手段と、を備え、
前記表面温度算出手段は、
前記摩擦材が接する部位の熱容量と、前記摩擦材の表面温度と前記摩擦係合要素の作動油温との温度差と、前記摩擦係合要素の作動油による冷却率と、を用いて熱収支計算を行って、単位時間当たりの前記摩擦材の表面温度と前記摩擦係合要素の作動油温との温度差変化率を算出し、この温度差変化率から前記摩擦材の表面温度を算出する際に、
予め前記摩擦材が接する部位の全体を複数の区分に分割して、当該区分に対応する区分熱容量を算出しておき、
前記摩擦係合要素の締結度合いに関するデータを取得し、当該締結度合いに関するデータに基づいて、前記複数の区分のうち前記摩擦材が接することで発熱する領域に属する区分を決定し、
前記発熱する領域に属する各区分に対して、該区分ごとに前記熱収支計算を行うと共に前記区分熱容量を用いてその表面温度の算出を行う
ことを特徴とする摩擦係合要素の制御装置。
【請求項2】
前記摩擦係合要素は、トルクコンバータに付随するロックアップクラッチであり、
前記締結度合いに関するデータは、前記トルクコンバータの指示油圧、伝達トルク、回転数のデータの少なくともいずれかである
ことを特徴とする請求項1に記載の摩擦係合要素の制御装置。
【請求項3】
前記表面温度算出手段は、
予め前記複数の区分に対する前記摩擦材の押付力に順位を付しておき、
前記発熱する領域に属する各区分のうち、前記摩擦材の押付力が最も強い区分に対してのみ、前記熱収支計算を行うと共に前記区分熱容量を用いてその表面温度の算出を行う
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の摩擦係合要素の制御装置。
【請求項4】
前記表面温度の算出を行う区分は、前記摩擦材における回転外周側の端辺を含む位置に対応する区分である
ことを特徴とする請求項3に記載の摩擦係合要素の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−231820(P2011−231820A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100928(P2010−100928)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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