摩擦帯電装置および静電選別装置
【課題】簡素な装置構成で、必要な帯電時間を確保しつつ帯電時間のバラツキを小さくすることができる摩擦帯電装置および静電選別装置を提供する。
【解決手段】摩擦帯電装置10は、2種以上のプラスチックの混合物1を帯電させるための摩擦帯電装置10であって、一端に2種以上のプラスチックの混合物1を受入れるための受入口2aと他端に2種以上のプラスチックの混合物1を排出するための排出口2bとを有する筒状の帯電容器2と、帯電容器2の内周面に固定され、帯電容器2の内部空間ISを仕切り、かつ中央に開口穴3aを有する環形状の仕切板3とを備えている。
【解決手段】摩擦帯電装置10は、2種以上のプラスチックの混合物1を帯電させるための摩擦帯電装置10であって、一端に2種以上のプラスチックの混合物1を受入れるための受入口2aと他端に2種以上のプラスチックの混合物1を排出するための排出口2bとを有する筒状の帯電容器2と、帯電容器2の内周面に固定され、帯電容器2の内部空間ISを仕切り、かつ中央に開口穴3aを有する環形状の仕切板3とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦帯電装置および静電選別装置に関し、特に、2種以上のプラスチックの混合物を帯電させるための摩擦帯電装置およびそれを備えた静電選別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
使用済みの家電製品などの再資源化(リサイクル)においては一般に、まず手作業で、回収および再生の容易な単一素材よりなる大形部材が選別回収される。この大形部材は、金属、ガラス、プラスチックなどよりなっている。大形部材が選別回収された後に残る部分は、複数の素材よりなる複合部材が多いため、単純なプロセスではリサイクルが難しい。
【0003】
更に回収が進められる場合には、まずシュレッダーで複合部材が破砕される。これにより複合部材が素材単位に分解されて破砕混合物が形成される。次に、比重、磁力、渦電流などの差を用いる既存の選別技術が活用されて、金属、ガラス類などが破砕混合物から取り出される。破砕混合物の残りの部分は、多種類のプラスチックの混合物である破砕残渣(混合破砕プラスチック、以下混合プラスチックという)である。混合プラスチックを素材として再利用するためには、混合プラスチックから樹脂種類毎にプラスチックを分別回収する必要があるが、商業的なプロセスが未だ確立されておらず、埋立てなどの廃棄物処理や燃焼による熱回収処理などが行われる場合が多い。
【0004】
しかしながら近年では、混合プラスチックを分別回収する技術として、たとえば静電選別という技術が開発されている。静電選別は、摩擦帯電序列を利用して混合プラスチックをプラスチックの樹脂種類毎に分別回収する技術である。摩擦帯電序列とは、異種材料同士を摩擦したときに正に帯電しやすい物質を上位に、負に帯電しやすいものを下位に並べた序列である。
【0005】
静電選別では、摩擦帯電序列の異なる複数種類のプラスチックの混合体が、まず摩擦帯電される。次に帯電した各種類のプラスチックが静電場を通過する。この際、正負の帯電の差および帯電量の大小差などの静電気力に起因して、各種類のプラスチックの静電場を通過する軌跡が異なる。この軌跡の差異により各種類のプラスチックが樹脂種類毎に分別回収される。
【0006】
この選別手法において、摩擦帯電装置は代表的には、たとえば円筒状、角柱状などの帯電容器であり、内部に攪拌羽根を備えている。この帯電容器に所定量の混合プラスチックが投入されて所定時間攪拌されることで混合プラスチックが摩擦帯電される。この帯電工程は選別工程と並ぶ重要な工程であり、高精度な静電選別を行うには樹脂種に応じて所定の帯電量をバラツキなく付与する必要がある。
【0007】
帯電現象には、帯電時間に伴い帯電量が増加し、ある時間以降は一定の飽和量に至るという性質がある。したがって再現性良く安定に帯電する一つの方法は、混合プラスチックをバッチ式の帯電装置で飽和に十分な時間確実に帯電することである。このようなバッチ式の帯電装置を用いて連続操業可能な静電選別装置を構成した事例が、たとえば特開2001−321694号公報(特許文献1)に提案されている。
【0008】
この静電選別装置は、複数のバッチ式の帯電装置を3台組み合わせて切り替え運転を行い、全体として混合プラスチックの連続的な供給排出を実現している。しかしながらこの方式は、一つの選別ラインに3個の帯電装置を必要とし、更には3系統から供給されるプラスチックを統合するバッファタンク、それらをつなぐ搬送機構、切替機構、制御機構などの追加設備を必要とする。そのため帯電装置、選別装置を各1個単純に組み合わせた静電選別装置と比べると、コストおよびスペースが約3倍必要となるため実用化が難しいという課題がある。なお、静電選別装置では選別部に比べ帯電部が相対的に大きく、容積割合では帯電部が主たる部分を占める。
【0009】
ところで、1個の帯電装置で混合プラスチックの連続的な供給排出が可能な技術は、別途複数提案されている。たとえば特開2004−136207号公報(特許文献2)に記載された帯電装置では、筒状の帯電容器が横置きされ、帯電容器の軸心がやや傾斜して設置されている。帯電容器が回転した際、帯電容器の内周面にプラスチック片を攪拌するように攪拌羽根が設けられている。傾斜上方側の帯電容器端部の投入口から投入されたプラスチック片は、攪拌羽根の効果で摩擦帯電され、同時に傾斜により帯電容器内面の下半分を樋を流れる水のように滑落し、傾斜下方側の帯電容器端部の排出口から連続的に排出される。
【0010】
この帯電装置では、プラスチック片の滑落速度が相対的に大きく、たとえば実用的な寸法に近い1m程度の長さの帯電筒であってもプラスチック片の帯電容器滞留時間(帯電時間)が1〜2分程度にしかならないという課題がある。さらに滑落速度が一定せず滞留時間が不安定でプラスチック片毎の滞留時間のバラツキが大きいという課題がある。
【0011】
傾斜面におけるプラスチック片の滑りの状態(すべり速度)はたとえば傾斜角度などの設計要因にも依存するが、それ以外に混合プラスチックに含まれる微小な破砕片の量、破砕片の形状、樹脂の種類などの制御不能な要因にも依存するため、得られる滞留時間が不安定である。飽和に至る帯電を得るにはたとえば10分程度以上の滞留時間が必要であり、この帯電容器では望ましい平均帯電時間およびバラツキの小さな帯電時間(滞留時間)の分布が得られないという欠点がある。
【0012】
帯電時間を長くし得る摩擦帯電装置がたとえば特開2001−276658号公報(特許文献3)に記載されている。この摩擦帯電装置では、傾斜設置された帯電容器内に複数の仕切板が挿入されており、仕切板の一部がプラスチックの通過穴として切り欠かれている。そして、隣接する仕切板ではこの切欠き部の位置が約180°ずらされている。プラスチック片は帯電容器の内周面の下半分に沿って傾斜の上方側から下方側に滑落する。
【0013】
その際、切欠き部は隣接する上方側の仕切板と下方側の仕切板とで角度が180°ずれているため、プラスチック片は上方側の切欠き部を通過した後、下方の仕切板で一旦停止され、帯電容器が半回転するのを待って下方側の仕切板の切欠き部を通過する。以降、順次同じ動作が繰り返される。その結果、仕切板が無い場合に比べてプラスチック片の滞留時間、即ち帯電時間が長くなる効果がある。
【0014】
しかしながら、この摩擦帯電装置により増加する帯電時間の増分は、0.2分程度であり、必要な10分程度以上の帯電時間を得るに十分ではない。この帯電時間の増分は次のように試算された。帯電時間の増分=0.5回転×6回待ち÷帯電容器の回転速度=0.2分。この試算の条件としては、帯電容器の回転速度は15回転/分とし、帯電容器の長さは1mとし、帯電容器内の仕切板の枚数は6枚とし、切欠き部の位置のずれた角度は180°とした。さらにはこの摩擦帯電装置においても、滞留時間の主要な部分は帯電容器の内周面の滑落時間であるため、帯電時間が不安定でバラツキが大きい点に変わりはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2001−321694号公報
【特許文献2】特開2004−136207号公報
【特許文献3】特開2001−276658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記のように従来の摩擦帯電装置では、簡素な装置構成で、混合プラスチックを連続して供給および排出しながら必要な帯電時間を確保し帯電時間のバラツキを小さくすることは困難である。本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、簡素な装置構成で、必要な帯電時間を確保しつつ帯電時間のバラツキを小さくすることができる摩擦帯電装置および静電選別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の摩擦帯電装置は、2種以上のプラスチックの混合物を帯電させるための摩擦帯電装置であって、一端に2種以上のプラスチックの混合物を受入れるための受入口と他端に2種以上のプラスチックの混合物を排出するための排出口とを有する筒状の帯電容器と、帯電容器の内周面に固定され、帯電容器の内部空間を仕切り、かつ中央に開口穴を有する環形状の仕切板とを備えている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の摩擦帯電装置によれば、帯電容器の内周面に固定され、帯電容器の内部空間を仕切り、かつ中央に開口穴を有する環形状の仕切板とを備えているため、仕切板の開口穴を通してプラスチックの混合物が排出口側へ送られる。そのため帯電容器の内周面と仕切板との間からプラスチックの混合物が排出口側へ送られることを防止できる。また仕切板でプラスチックの混合物を帯電容器に留めることで帯電時間を長くすることができる。これにより必要な帯電時間を得ることができる。さらに帯電容器の内周面と仕切板との間からプラスチックの混合物が排出口側へ送られることを防止できるため、プラスチックの混合物を帯電容器内に精度良く保持することができる。このため帯電時間のバラツキを小さくすることができる。そのため、仕切板を備えた簡素な装置構成で、必要な帯電時間を確保しつつ帯電時間のバラツキを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1における静電選別装置の概略斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1における摩擦帯電装置の概略斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1における帯電時間と開口率との関係を示す図である。
【図4】面積の帯電量と帯電時間との関係を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1における排出流量/供給流量と帯電開始後の経過時間との関係を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1における供給配管部材が受入口に挿入された状態を示す概略断面図である。
【図7】本発明の実施の形態1における取り出し配管部材が排出口に挿入された状態を示す概略断面図である。
【図8】本発明の実施の形態2における摩擦帯電装置の概略斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態2における摩擦帯電装置内での羽根部材の状態を示す概略斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態3における仕切板の構成を示す平面図である。
【図11】本発明の実施の形態3における多量プラスチックの帯電量と原料中の少量プラスチックの混合割合との関係を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態4における電界調整リングが取り付けられた仕切板を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
最初に本発明の実施の形態1の静電選別装置の構成について説明する。
【0021】
図1を参照して、静電選別装置100は、帯電した2種以上のプラスチックの混合物(混合プラスチック)1を選別するための装置である。プラスチックの混合物1は、プラスチックの破砕物、粒状物などからなっている。プラスチックの混合物1は、プラスに帯電するプラスチック1aとマイナスに帯電するプラスチック1bとを含んでいる。静電選別装置100は、摩擦帯電装置10と、供給装置20と、搬送機30と、選別装置40と、回収容器50とを主に有している。
【0022】
図2を参照して、摩擦帯電装置10は、2種以上のプラスチックの混合物1を帯電させるための装置である。摩擦帯電装置10は、帯電容器2と、仕切板3とを主に有している。
【0023】
帯電容器2は、筒状に形成されている。帯電容器2は、円筒状、多角柱形状などに形成されていてもよい。帯電容器2は、軸心AXを中心に矢印R1方向に回転可能に構成されている。帯電容器2は、上下方向に所定角度傾斜されていてもよい。帯電容器2は、一端に2種以上のプラスチックの混合物1を受入れるための受入口2aを有している。帯電容器2は、他端に2種以上のプラスチックの混合物1を排出するための排出口2bとを有している。
【0024】
仕切板3は環形状に形成されている。仕切板3は、帯電容器2の内周面に固定されている。仕切板3は、帯電容器2の内周面に隙間無く設けられている。仕切板3は、帯電容器2の内部空間ISを仕切るように設けられている。仕切板3は複数設けられていてもよい。1つの仕切板3によって内部空間ISは、たとえば第1の内部空間IS1と第2の内部空間IS2に仕切られている。仕切板3は中央に開口穴3aを有している。開口穴3aによって第1の内部空間IS1と第2の内部空間IS2とは連続して通じている。
【0025】
摩擦帯電装置10は、羽根部材4を有していてもよい。羽根部材4は、仕切板3で仕切られた内部空間IS内で帯電容器2の内周面に固定されている。羽根部材4は、帯電容器2の軸心AXに向かって延びるように設けられている。羽根部材4は、搬送用羽根4aと、攪拌用羽根4bとを有していてもよい。搬送用羽根4aは帯電容器2の径方向の長さが攪拌用羽根4bの径方向の長さよりも長くなるように形成されている。搬送用羽根4aは帯電容器2の径方向の長さが開口穴3aに届かないように形成されている。搬送用羽根4aは、開口穴3aに対してたとえば5cm程度以上離れるように形成されている。
【0026】
摩擦帯電装置10は、回転装置11を有していてもよい。回転装置11は、帯電容器2を軸心AXを中心に矢印R1方向に回転可能に構成されている。
【0027】
供給装置20は、2種以上のプラスチックの混合物1を摩擦帯電装置10に供給するための装置である。搬送機30は、たとえば加振による振動搬送フィーダが用いられ得る。搬送機30は、供給装置20から供給されたプラスチックの混合物1を摩擦帯電装置10に搬送するための第1の搬送機30aと、摩擦帯電装置10から排出されたプラスチックの混合物1を選別装置40に供給するための第2の搬送機30bとを有している。
【0028】
選別装置40は、摩擦帯電装置10において帯電した2種以上のプラスチックの混合物1の帯電状態により2種以上のプラスチックの混合物1を選別するように構成されている。選別装置40は、第1の電極部材40aと第2の電極部材40bとを有している。第1の電極部材40aと第2の電極部材40bとはたとえば直流電源によって異なる電圧が印加されるように構成されている。第1の電極部材40aは、たとえばプラスの電圧が印加されるように構成されている。第2の電極部材40bは、たとえばマイナスの電圧が印加されるように構成されている。第1の電極部材40aと第2の電極部材40bとは、帯電したプラスチックの混合物1が落下する領域に向かい合うように配置されている。
【0029】
回収容器50は、選別装置40の下方に配置されている。回収容器50は、第1の回収容器50aと第2の回収容器50bとを有している。第1の回収容器50aはプラスに帯電したプラスチック1aを回収するための容器である。第2の回収容器50bはマイナスに帯電したプラスチック1bを回収するための容器である。第1の回収容器50aは、第2の電極部材40bの下方に配置されている。第2の回収容器50bは、第1の電極部材40aの下方に配置されている。
【0030】
次に本実施の形態の静電選別方法について説明する。
図1を参照して、選別の原料であるプラスチックの混合物1は、供給装置20から第1の搬送機30aを経由して摩擦帯電装置10に搬送される。搬送されたプラスチックの混合物1は、帯電容器2の受入口2aから帯電容器2の内部空間ISに連続的に投入される。投入されたプラスチックの混合物1は帯電容器2内において、所定時間帯電処理がなされる。その結果、プラスチックの帯電列に従い、プラスに帯電する樹脂種類のプラスチック1aはプラスに帯電し、マイナスに帯電する樹脂種類のプラスチック1bはマイナスに帯電する。
【0031】
帯電容器2の排出口2bより連続的に取り出された帯電したプラスチックの混合物1は、第2の搬送機30bで選別装置40により形成される静電場に導かれる。第2の搬送機30bから静電場中に放出された帯電したプラスチックの混合物1は、静電気力の差に起因する落下軌跡の差異で、第1の回収容器50aと第2の回収容器50bとに分かれて回収される。
【0032】
続いて摩擦帯電装置による摩擦帯電についてさらに詳しく説明する。
図2を参照して、2成分のプラスチック1a,1bよりなる混合プラスチック1は、受入口2aから帯電容器2の第1の内部空間IS1に連続的に供給される。本実施の形態では、帯電容器2は上下方向に傾斜して保持されており、帯電容器2は傾斜した状態で軸心AXの周りを回転装置11により所定回転数で回転する。
【0033】
第1の内部空間IS1内のプラスチック片は、回転する搬送用羽根4aおよび攪拌用羽根4bの働きにより一旦持ち上げられ、次いで空中に放出され落下し、同様の運動を繰り返す。その際、プラスチック片同士、プラスチック片と搬送用羽根4aおよび攪拌用羽根4b、プラスチック片と帯電容器2内面が接触し摩擦帯電する。また、摩擦帯電と共に、上記持ち上げ−放出・落下過程の中で、攪拌用羽根4bも帯電容器2と同様に傾斜しているので、プラスチック片は排出口2bの方向に位置をややシフトして落下する。その結果プラスチック片は回転により帯電しつつ且つ開口穴3aの方向に少しずつ移動し、最終的に搬送用羽根4aにより持ち上げられ、空中に放出され、落下するようになる。
【0034】
本実施の形態では、搬送用羽根4aは、羽根の径方向の長さが攪拌用羽根4bよりも長く、且つ開口穴3aに届かないように例えば5cm程度以上控えて設定されている。径方向の長さが攪拌用羽根4bよりも長い搬送用羽根4aにより開口穴3a近傍まで遠くに、たとえば5cm以上飛ばされたプラスチック片は、一部は開口穴3aを通過することで隣の第2の内部空間IS2に移り、残りのプラスチック片は開口穴3aを通らず第1の内部空間IS1に留まる。
【0035】
第1の内部空間IS1内に滞留するプラスチック片の量は運転当初は増大し、それに伴い放出・落下量も増大する。これにより開口穴3aを通過するプラスチック片の量も当初は増大する。そして、プラスチック片が所定量溜まると第1の内部空間IS1を出入りするプラスチック片の量がバランスし、定常状態に至る。
【0036】
すなわち、運転開始当初は帯電容器2内は空であるため、第1の内部空間IS1にまずプラスチック片が所定量溜まる必要がある。具体的には各内部空間IS1,IS2などにおいて立上げ当初、下流側に排出されるプラスチック量が定格時に比べて少なく、上流側から供給されるプラスチック量と差が生じ、各内部空間IS1,IS2などにプラスチック片が充填される。定常状態に至る頃には、各内部空間IS1,IS2などにプラスチック片が所定量溜まり各内部空間IS1,IS2などから排出されるプラスチック量が順次増大することで、上流側から供給されるプラスチック量とバランスし定常状態に至る。
【0037】
プラスチック片の滞留時間は帯電容器2内全体のプラスチック片の滞留量を供給量(供給速度)で除したものである。この滞留時間が帯電時間に相当する。図3を参照して、帯電時間は仕切板3の開口率(仕切板3の面積に対する開口穴3aの面積の割合)に大きく依存する。
【0038】
帯電量と帯電時間の関係は帯電条件(たとえば、帯電容器2内の充填量、帯電時の温度・湿度、混合プラスチック1中の不純物量など)に依存する。図4は、従来のバッチ式の帯電容器について、多様な試験条件での帯電量のデータを帯電時間に関し整理したものである。この試験条件について詳述する。内容積約9Lの円筒状の帯電容器2に、プラスチック成形品を破砕して得られた2種類のプラスチック破砕片(ABS樹脂、ポリスチレン樹脂)混合物を0.6−2.0kg充填し、所定の時間帯電した。帯電後、帯電容器2からプラスチック破砕片を取り出し、各破砕片の帯電量、重量を測定した。プラスチック片は破砕片であり不定形状であるため、重量より球状を仮定した表面積を算出し、面積あたりの帯電量として整理した。
【0039】
図4に示す「面積の帯電量」は、ABS樹脂破砕片の面積当たりの帯電量(+に帯電)からポリスチレン樹脂の面積当たりの帯電量(−に帯電)を差し引いた数値である。この数値は静電選別の容易さを示す数値である。摩擦帯電は、プラスチック破砕片同士の衝突形態、含水量、破砕片中あるいは表面に付着する不純物量等により影響を受ける。ただし帯電時間が10分程度を越えると、帯電条件が一定の範囲内にあれば、図4に示すようにほぼ一定の帯電量に収斂する。つまり、帯電時間として10分程度を越えれば帯電が飽和に至り安定する。
【0040】
再び図3を参照して、帯電時間として10分程度を達成可能な開口率は、供給量3kg/分では、開口率40%程度以下である。より大きな原料供給量(たとえば8kg/分前後)において、帯電時間として10分程度を達成するには開口率として17−18%程度が必要である。
【0041】
これにより類似の仕切板3を有する帯電容器2でありながら、帯電可能なプラスチック片の供給量を2.6倍に拡大できる。すなわち、帯電時間10分とするためには、3kg/分では開口率40%であり、8kg/分では開口率17−18%である。そして、3kg/分と8kg/分とを比較すると約2.6倍となる。そのため、開口率を17−18%にすることで供給量を約2.6倍に拡大できる。
【0042】
但し仕切板3がたとえばプラスチックで構成される場合、開口率が10%未満と小さくなると、仕切板3自身も帯電し仕切板3の帯電荷がプラスチック片の開口穴3aの通過に対して大きな影響を及ぼすようになる。たとえば、仕切板3と同極性に帯電したプラスチック片の開口穴3aの通過を、静電気力(反発)が顕著に抑制するようになる。
【0043】
その結果、帯電容器2内の混合プラスチック1の混合割合が、原料の混合プラスチック1の混合割合からズレてくる。混合割合のズレは後述するように、帯電量の面でよい結果を生む場合がある反面、極度に混合割合がズレると帯電したプラスチック片を電界場で分離する選別工程において、悪影響が出る場合がある。つまり選別純度が低下する場合がある。
【0044】
その場合、以下の対応が有効である。仕切板3の開口率が大き目に設定される。たとえば開口率は40%程度に設定される。帯電序列が2種類のプラスチック片の中間位にある材料で仕切板3が構成される。後述するように仕切板3による静電気力の影響を打ち消す電界調整リング15(図12参照)が開口穴3aに隣接して設けられる。
【0045】
なお、仕切板3を設けない従来例は開口率100%に相当するが、供給量を3kg/分にしても帯電時間が5分弱であり、安定した静電選別性能を得るには不十分である。
【0046】
次に仕切板3の堰としての効果を十分に発揮する方法について述べる。
プラスチック粒子毎の帯電を均一に行うには、上述のように平均的な滞留(帯電)時間として10分程度以上を確保する必要があるが、それと共に滞留時間の分布を小さく抑える必要がある。
【0047】
図5は、本実施の形態において帯電開始後(帯電容器2へ混合プラスチック1を供給開始後)の経過時間と排出口2bにおける排出流量との関係を示したものである。図5の縦軸は排出流量を供給流量で除した値である。本実施の形態では仕切板3と帯電容器2内面との間に隙間を生じないよう仕切板3が固定されている。これにより、仕切板3と帯電容器2内面との間を通過する仕切板3を短絡するプラスチック片の流れが抑制される。
【0048】
その結果、帯電時間10分未満で排出される粒子の割合が10%程度以下であり、シャープな滞留時間分布を得ることができる。このシャープな滞留時間分布について説明する。図5に示すように平均帯電時間である11.5分の約0.5分前から流量が立ち上がり、平均帯電時間の約0.5分後に入口側供給量の約8割まで立ち上がる。大多数のプラスチックの滞留時間が滞留時間平均値(11.5分)の±0.5分の間に収まることを、シャープな滞留時間分布と称している。
【0049】
図5に示すように、本実施の形態では、必要な帯電時間を実現しつつ、プラスチックの混合物1を帯電容器2内に精度良く保持することで帯電時間のバラツキを小さくすることができる。
【0050】
ところで、本実施の形態では、帯電容器2が回転することで、受入口2aおよび排出口2bも回転する。そのため、混合プラスチック1の供給配管系と受入口2aとの接続および混合プラスチック1の取り出し配管系と排出口2bとの接続が難しい。
【0051】
図6を参照して、摩擦帯電装置10は、2種以上のプラスチックの混合物1を内部空間IS内に供給可能な供給配管部材12を有していてもよい。供給配管部材12は、受入口2aに挿入された状態で2種以上のプラスチックの混合物1を内部空間IS内に供給するように構成されている。帯電容器2の回転を許容するため受け入れ側の帯電容器2端部が回転軸受13で支持されている。回転軸受13の回転軸部に受入口2aが貫通して設けられている。受入口2aに供給配管部材12の供給口が挿入されている。これにより、簡易な配管接続の構造のまま、プラスチック片を周囲に飛散および落下させること無く連続的にコンパクトに供給することが可能である。
【0052】
図7を参照して、排出口2b側についても、受入口2a側と同様の構造が適用可能である。すなわち、2種以上のプラスチックの混合物1を内部空間IS内から取り出し可能な取り出し配管部材14を有していてもよい。取り出し配管部材14は、排出口2bに挿入された状態で2種以上のプラスチックの混合物1を内部空間IS内から取り出すように構成されている。帯電容器2の回転を許容するため排出側の帯電容器2端部が回転軸受13で支持されている。回転軸受13の回転軸部に排出口2bが貫通して設けられている。排出口2bに供給配管部材12の取り出し口が挿入されている。これにより、簡易な配管接続の構造のまま、プラスチック片を周囲に飛散および落下させること無く連続的にコンパクトに排出することが可能である。
【0053】
また、排出口2bは帯電したプラスチック片を取り出すだけでよいので、回転軸受13の回転軸部以外の箇所、たとえば円筒状または多角柱状の帯電容器2の排出口2b側端部の外周面に排出口を設け、遠心力などを利用して周方向に取り出してもよい。その場合プラスチック片は周辺に飛散するが、外部カバーを取り付けるなどにより回収可能である。
【0054】
次に本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態の摩擦帯電装置10によれば、帯電容器2の内周面に固定され、帯電容器2の内部空間ISを仕切り、かつ中央に開口穴3aを有する環形状の仕切板3とを備えているため、仕切板3の開口穴3aを通してプラスチックの混合物1が排出口2b側へ送られる。そのため帯電容器2の内周面と仕切板3との間からプラスチックの混合物1が排出口2b側へ送られることを防止できる。また仕切板3でプラスチックの混合物1を帯電容器2に留めることで帯電時間を長くすることができる。これにより必要な帯電時間を得ることができる。さらに帯電容器2の内周面と仕切板3との間からプラスチックの混合物1が排出口2b側へ送られることを防止できるため、プラスチックの混合物1を帯電容器2内に精度良く保持することができる。このため帯電時間のバラツキを小さくすることができる。そのため、仕切板3を備えた簡素な装置構成で、必要な帯電時間を確保しつつ帯電時間のバラツキ小さくすることができる。
【0055】
また、本実施の形態の摩擦帯電装置10によれば、仕切板3で仕切られた内部空間IS内で帯電容器2の内周面に固定され、帯電容器2の軸心AXに向かって延びるように設けられた羽根部材4を有しているため、羽根部材4がプラスチックの混合物1を持ち上げ、空中に放出する。これにより、プラスチックの混合物1を開口穴3aに効率的に通過させることができる。
【0056】
また、本実施の形態の摩擦帯電装置10によれば、仕切板3の面積に対する開口穴3aの面積の割合が10%以上40%以下である。これにより、必要な帯電時間を得ることができる。また、選別純度の低下を抑制できる。
【0057】
また、本実施の形態の摩擦帯電装置10によれば、供給配管部材12は、受入口2aに挿入された状態で2種以上のプラスチックの混合物1を内部空間IS内に供給するように構成されている。これにより、簡易な配管接続の構造のまま、プラスチック片を周囲に飛散および落下させること無く連続的にコンパクトに供給することができる。
【0058】
また、本実施の形態の摩擦帯電装置10によれば、取り出し配管部材14は、排出口2bに挿入された状態で2種以上のプラスチックの混合物1を内部空間IS内から取り出すように構成されている。これにより、簡易な配管接続の構造のまま、プラスチック片を周囲に飛散および落下させること無く連続的にコンパクトに排出することができる。
【0059】
本実施の形態の静電選別装置は、上記の摩擦帯電装置10において帯電した2種以上のプラスチックの混合物1の帯電状態により2種以上のプラスチックの混合物1を選別するため、必要な帯電時間をバラツキ小さく実現することができる。これにより、2種以上のプラスチックの混合物1を正確に選別することができる。
【0060】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2は、実施の形態1と比較して、摩擦帯電装置10の構成が主に異なっている。
【0061】
図8を参照して、本実施の形態の摩擦帯電装置10では、帯電容器2は略水平に配置されている。帯電容器2は略水平な軸心AXの周りを矢印R2方向に回転するように構成されている。
【0062】
羽根部材4は、プラスチック片を排出口2bの方向に搬送するよう傾斜して帯電容器2の内壁に設けられている。羽根部材4は、実施の形態1の搬送用羽根4aと攪拌用羽根4bとを兼用するように構成されている。すなわち、羽根部材4は、実施の形態1の搬送用羽根4aと攪拌用羽根4bとの2つの役割を共に有している。
【0063】
搬送用羽根4aは羽根部材4近傍のプラスチック片を帯電容器2の回転と共に下から上に持ち上げ、放出する際には少なくともその一部が排出口2bに届くようにプラスチック片を跳ね上げる必要がある。したがって攪拌用羽根4bよりも大きい力でプラスチック片を放出する必要がある。一方、攪拌用羽根4bはそのような機能は不要であるが、攪拌が強すぎると帯電処理の際プラスチック片が破砕または磨耗し、発生したプラスチック微粉が帯電を阻害するケースも生ずる。したがって搬送に必要な最小限の力で羽根を動作させることが望ましい。そのような羽根部材4の条件は、羽根部材4の長さおよび帯電容器2の回転数で調整することができる。
【0064】
図9を参照して、羽根部材4の受入口側端部41が羽根部材4の排出口側端部42より帯電容器2の回転方向R2の上流側Yに位置している。
【0065】
本実施の形態の摩擦帯電装置10の動作について説明する。
図8および図9を参照して、本実施の形態の摩擦帯電装置10において、帯電容器2は略水平な軸心AXの周りを矢印R2方向に所定回転数で回転する。帯電容器2の内周面にとりつけられた羽根部材4は、羽根部材4近傍のプラスチック片を帯電容器2の回転と共に下から上に持ち上げ(左回りの回転の場合、たとえば時計の針で6時→5時→4時のように順次回転する)、更に回転が進み羽根部材4の方向が水平方向を越えると(たとえば時計の針で3時→2時→1時のように回転が進む)プラスチック片が羽根部材4の上を滑り、最終的に羽根部材4から放出され落下する。
【0066】
羽根部材4の受入口側端部41が羽根部材4の排出口側端部42より帯電容器2の回転方向R2の上流側Yに位置するように羽根部材4が傾斜して設置されているため、羽根部材4上をプラスチック片が滑る際および羽根部材4から放出され落下する際、排出口2bの方向(以下、適宜進行方向と呼ぶ)にプラスチック片は位置をややシフトする。すなわち、第1の内部空間IS1内のプラスチック片は帯電しながら進行方向に移動する。
【0067】
そして進行方向側にある仕切板3近傍に到着したプラスチック片は、進行方向にやや角度を振って羽根部材4から開口穴3aの方向に放出され、その一部が開口穴3aを通過して進行方向に隣接する第2の内部空間IS2に移る。上記動作が順次繰り返されることで、プラスチック片が受入口2a側の第1の内部空間IS1から排出口2b側の第2の内部空間IS2に移動する。このようにして、プラスチック片の連続的な供給排出が可能となる。
【0068】
なお、本実施の形態のこれ以外の構成および動作は上述した実施の形態1と同様であるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0069】
本実施の形態の摩擦帯電装置10によれば、羽根部材4の受入口側端部41が羽根部材4の排出口側端部42より帯電容器2の回転方向R2の上流側Yに位置しているため、羽根部材4によって、プラスチックの混合物1を排出口2bの方向へ移動させることができる。これにより、これにより、プラスチックの混合物1を開口穴3aにさらに効率的に通過させることができる。
【0070】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3は、実施の形態1と比較して、仕切板の構成10が主に異なっている。
【0071】
図10を参照して、本実施の形態の仕切板3の表面部分3sは、2種以上のプラスチックの混合物1と接触することで仕切板3が摩擦帯電する材料から構成されている。仕切板3の表面部分3sは、2種以上のプラスチックの混合物1のうち混合割合の小さなプラスチックと同じ材料から構成されている。
【0072】
なお、本実施の形態のこれ以外の構成および動作は上述した実施の形態1と同様であるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0073】
本実施の形態の摩擦帯電装置10によれば、仕切板3の表面部分3sは、2種以上のプラスチックの混合物1と接触することで仕切板3が摩擦帯電する材料から構成されているため、仕切板3を摩擦帯電させることができる。そのため、仕切板3の静電気力によりプラスチックの混合物1が開口穴3aを通過する量を調整することができる。
【0074】
また、本実施の形態の摩擦帯電装置10によれば、仕切板3の表面部分3sは、2種以上のプラスチックの混合物1のうち混合割合の小さなプラスチックと同じ材料から構成されているため、仕切板3が少量プラスチック片と同極性に摩擦帯電する。これにより少量成分のプラスチック片の帯電荷と同極性の電圧が開口穴3aに印加される。
【0075】
その結果、仕切板3が混合プラスチック1の少量成分が開口穴3aを通過するのを静電気力(反発力)で妨害するため、帯電容器2内部の少量プラスチック片の混合割合が増大する。帯電容器2内のプラスチック片の混合割合が変化すると、一般的には帯電量が変化する。
【0076】
図11を参照して、従来例(バッチ式の帯電容器)では、少量プラスチック片の混合割合がたとえば10%程度以下になると少量プラスチック片と多量プラスチック片との間の衝突頻度が減り、多量プラスチック片の帯電量(絶対値)の平均値が減少する。その状態で選別すると、多量プラスチック片の一部が少量プラスチック片の回収容器側に誤選別され、回収された少量プラスチック片の純度低下が生じる。さらに回収された多量プラスチック片の回収率が低下する。
【0077】
一方、本実施の形態の本発明例(開口率41%)では、原料中の少量プラスチック片の混合割合が減少しても、仕切板3による静電気力で帯電容器2内部の少量プラスチック片の混合割合が高く維持される。そのため、原料中の少量プラスチック片の混合割合が10%程度においても、多量プラスチック片の帯電量は混合割合が20〜30%の場合とほぼ同じとなる。したがって、本発明例では、従来例に比べて大きな帯電量を得ることができる。すなわち、少量成分の混合割合が10%程度、あるいはそれ以下に小さいケースであっても、格別の措置を講ずること無く安定な静電選別を行うことができる。
【0078】
上記とは別途の帯電試験により、2種類の開口率の仕切板3を用いて、帯電しつつ帯電容器内の少量プラスチックと多量プラスチックとの混合割合を分析した。この帯電試験では、仕切板の開口率は41%と13%とした。この帯電試験の結果、仕切板の開口率が41%の場合、原料中の少量プラスチック片の混合割合が8%、帯電容器2内の少量プラスチック片の混合割合が18%であった。
【0079】
一方、仕切板3の開口率が13%の場合、原料中の少量プラスチック片の混合割合が9%、帯電容器2内の少量プラスチック片の混合割合が36%であった。この場合には、帯電容器2内の少量プラスチック片の混合割合が更に大きくなり、今後は組成の面で逆に、多量プラスチック片の回収側に少量プラスチック片が混入する弊害が生じる。したがって、片側のプラスチック片の混合割合が少量であり、少量プラスチック片と同じプラスチック材料で仕切板3を構成する場合、帯電量の安定化と選別純度の維持という観点から最適な開口率が存在する。本実施の形態の仕切板3では開口率40%程度が特に望ましい。
【0080】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4は、実施の形態3と比較して、摩擦帯電装置が電界調整リングを備えている点で主に異なっている。実施の形態3では、仕切板として特定の素材を選定して摩擦帯電により所定の極性の電圧を開口穴に印加する例を示した。その他の方法として、開口穴の外周に高電圧を印加した電界調整リングを開口穴に隣接して設けることで、開口穴に電位をかけることができる。
【0081】
図12を参照して、電界調整リング15は、電圧が印加されることで電界を調整可能に構成されている。電界調整リング15は、たとえば導電性素材を絶縁性素材で被覆した導電性ケーブルなどより構成されている。電界調整リング15は仕切板3の開口穴3aの周囲を囲むように配置されている。たとえば直流電源よりなる電圧印加機構16により電界調整リング15に所定の高電圧が印荷されるように電界調整リング15は構成されている。
【0082】
なお、本実施の形態のこれ以外の構成および動作は上述した実施の形態3と同様であるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0083】
実施の形態3のプラスチック素材による仕切板3の場合、表面には摩擦帯電によって、たとえば1−10kV程度の電位がかかっている。一方、本実施の形態では電界調整リング15が仕切板3の開口穴3aの周囲を囲むように配置されているため、同程度の電圧を電界調整リング15に印加し、開口穴3aに実施の形態3と同様の電界をかけることができる。その結果、実施の形態3と同様の効果が得られる。
【0084】
さらには本実施の形態では、印荷電圧を容易に調節可能であるため、以下のような付加機能も有する。実施の形態3において仕切板3がプラスチック素材よりなり帯電する場合開口率を過度に小さく(たとえば10%未満)すると、混合割合の行き過ぎた変化が生じて選別工程に却って悪影響を及ぼすことがある。したがって開口率を40%程度にしたため、帯電容器2の処理量の増大という視点では不十分となることがある。本実施の形態においては、電界調整リング15に仕切板3の電荷とは逆の極性の適当な電圧を印加することで、開口穴3aにかかる電位を任意に調整できる。したがって、帯電に最適な混合割合を維持すると共に、同時に帯電容器2の処理量を最大化(開口率を10%にする)することが可能になる。
【0085】
上記の各実施の形態は適宜組み合わせられ得る。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0086】
1 プラスチックの混合物(混合プラスチック)、2 帯電容器、2a 受入口、2b 排出口、3 仕切板、3a 開口穴、3s 表面部分、4 羽根部材、4a 搬送用羽根、4b 攪拌用羽根、10 摩擦帯電装置、11 回転装置、12 供給配管部材、13 回転軸受、14 取り出し配管部材、15 電界調整リング、16 電圧印加機構、20 供給装置、30 搬送機、30a 第1の搬送機、30b 第2の搬送機、40 選別装置、40a 第1の電極部材、40b 第2の電極部材、41 受入口側端部、42 排出口側端部、50 回収容器、50a 第1の回収容器、50b 第2の回収容器、100 静電選別装置、AX 軸心、IS 内部空間、IS1 第1の内部空間、IS2 第2の内部空間。
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦帯電装置および静電選別装置に関し、特に、2種以上のプラスチックの混合物を帯電させるための摩擦帯電装置およびそれを備えた静電選別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
使用済みの家電製品などの再資源化(リサイクル)においては一般に、まず手作業で、回収および再生の容易な単一素材よりなる大形部材が選別回収される。この大形部材は、金属、ガラス、プラスチックなどよりなっている。大形部材が選別回収された後に残る部分は、複数の素材よりなる複合部材が多いため、単純なプロセスではリサイクルが難しい。
【0003】
更に回収が進められる場合には、まずシュレッダーで複合部材が破砕される。これにより複合部材が素材単位に分解されて破砕混合物が形成される。次に、比重、磁力、渦電流などの差を用いる既存の選別技術が活用されて、金属、ガラス類などが破砕混合物から取り出される。破砕混合物の残りの部分は、多種類のプラスチックの混合物である破砕残渣(混合破砕プラスチック、以下混合プラスチックという)である。混合プラスチックを素材として再利用するためには、混合プラスチックから樹脂種類毎にプラスチックを分別回収する必要があるが、商業的なプロセスが未だ確立されておらず、埋立てなどの廃棄物処理や燃焼による熱回収処理などが行われる場合が多い。
【0004】
しかしながら近年では、混合プラスチックを分別回収する技術として、たとえば静電選別という技術が開発されている。静電選別は、摩擦帯電序列を利用して混合プラスチックをプラスチックの樹脂種類毎に分別回収する技術である。摩擦帯電序列とは、異種材料同士を摩擦したときに正に帯電しやすい物質を上位に、負に帯電しやすいものを下位に並べた序列である。
【0005】
静電選別では、摩擦帯電序列の異なる複数種類のプラスチックの混合体が、まず摩擦帯電される。次に帯電した各種類のプラスチックが静電場を通過する。この際、正負の帯電の差および帯電量の大小差などの静電気力に起因して、各種類のプラスチックの静電場を通過する軌跡が異なる。この軌跡の差異により各種類のプラスチックが樹脂種類毎に分別回収される。
【0006】
この選別手法において、摩擦帯電装置は代表的には、たとえば円筒状、角柱状などの帯電容器であり、内部に攪拌羽根を備えている。この帯電容器に所定量の混合プラスチックが投入されて所定時間攪拌されることで混合プラスチックが摩擦帯電される。この帯電工程は選別工程と並ぶ重要な工程であり、高精度な静電選別を行うには樹脂種に応じて所定の帯電量をバラツキなく付与する必要がある。
【0007】
帯電現象には、帯電時間に伴い帯電量が増加し、ある時間以降は一定の飽和量に至るという性質がある。したがって再現性良く安定に帯電する一つの方法は、混合プラスチックをバッチ式の帯電装置で飽和に十分な時間確実に帯電することである。このようなバッチ式の帯電装置を用いて連続操業可能な静電選別装置を構成した事例が、たとえば特開2001−321694号公報(特許文献1)に提案されている。
【0008】
この静電選別装置は、複数のバッチ式の帯電装置を3台組み合わせて切り替え運転を行い、全体として混合プラスチックの連続的な供給排出を実現している。しかしながらこの方式は、一つの選別ラインに3個の帯電装置を必要とし、更には3系統から供給されるプラスチックを統合するバッファタンク、それらをつなぐ搬送機構、切替機構、制御機構などの追加設備を必要とする。そのため帯電装置、選別装置を各1個単純に組み合わせた静電選別装置と比べると、コストおよびスペースが約3倍必要となるため実用化が難しいという課題がある。なお、静電選別装置では選別部に比べ帯電部が相対的に大きく、容積割合では帯電部が主たる部分を占める。
【0009】
ところで、1個の帯電装置で混合プラスチックの連続的な供給排出が可能な技術は、別途複数提案されている。たとえば特開2004−136207号公報(特許文献2)に記載された帯電装置では、筒状の帯電容器が横置きされ、帯電容器の軸心がやや傾斜して設置されている。帯電容器が回転した際、帯電容器の内周面にプラスチック片を攪拌するように攪拌羽根が設けられている。傾斜上方側の帯電容器端部の投入口から投入されたプラスチック片は、攪拌羽根の効果で摩擦帯電され、同時に傾斜により帯電容器内面の下半分を樋を流れる水のように滑落し、傾斜下方側の帯電容器端部の排出口から連続的に排出される。
【0010】
この帯電装置では、プラスチック片の滑落速度が相対的に大きく、たとえば実用的な寸法に近い1m程度の長さの帯電筒であってもプラスチック片の帯電容器滞留時間(帯電時間)が1〜2分程度にしかならないという課題がある。さらに滑落速度が一定せず滞留時間が不安定でプラスチック片毎の滞留時間のバラツキが大きいという課題がある。
【0011】
傾斜面におけるプラスチック片の滑りの状態(すべり速度)はたとえば傾斜角度などの設計要因にも依存するが、それ以外に混合プラスチックに含まれる微小な破砕片の量、破砕片の形状、樹脂の種類などの制御不能な要因にも依存するため、得られる滞留時間が不安定である。飽和に至る帯電を得るにはたとえば10分程度以上の滞留時間が必要であり、この帯電容器では望ましい平均帯電時間およびバラツキの小さな帯電時間(滞留時間)の分布が得られないという欠点がある。
【0012】
帯電時間を長くし得る摩擦帯電装置がたとえば特開2001−276658号公報(特許文献3)に記載されている。この摩擦帯電装置では、傾斜設置された帯電容器内に複数の仕切板が挿入されており、仕切板の一部がプラスチックの通過穴として切り欠かれている。そして、隣接する仕切板ではこの切欠き部の位置が約180°ずらされている。プラスチック片は帯電容器の内周面の下半分に沿って傾斜の上方側から下方側に滑落する。
【0013】
その際、切欠き部は隣接する上方側の仕切板と下方側の仕切板とで角度が180°ずれているため、プラスチック片は上方側の切欠き部を通過した後、下方の仕切板で一旦停止され、帯電容器が半回転するのを待って下方側の仕切板の切欠き部を通過する。以降、順次同じ動作が繰り返される。その結果、仕切板が無い場合に比べてプラスチック片の滞留時間、即ち帯電時間が長くなる効果がある。
【0014】
しかしながら、この摩擦帯電装置により増加する帯電時間の増分は、0.2分程度であり、必要な10分程度以上の帯電時間を得るに十分ではない。この帯電時間の増分は次のように試算された。帯電時間の増分=0.5回転×6回待ち÷帯電容器の回転速度=0.2分。この試算の条件としては、帯電容器の回転速度は15回転/分とし、帯電容器の長さは1mとし、帯電容器内の仕切板の枚数は6枚とし、切欠き部の位置のずれた角度は180°とした。さらにはこの摩擦帯電装置においても、滞留時間の主要な部分は帯電容器の内周面の滑落時間であるため、帯電時間が不安定でバラツキが大きい点に変わりはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2001−321694号公報
【特許文献2】特開2004−136207号公報
【特許文献3】特開2001−276658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記のように従来の摩擦帯電装置では、簡素な装置構成で、混合プラスチックを連続して供給および排出しながら必要な帯電時間を確保し帯電時間のバラツキを小さくすることは困難である。本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、簡素な装置構成で、必要な帯電時間を確保しつつ帯電時間のバラツキを小さくすることができる摩擦帯電装置および静電選別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の摩擦帯電装置は、2種以上のプラスチックの混合物を帯電させるための摩擦帯電装置であって、一端に2種以上のプラスチックの混合物を受入れるための受入口と他端に2種以上のプラスチックの混合物を排出するための排出口とを有する筒状の帯電容器と、帯電容器の内周面に固定され、帯電容器の内部空間を仕切り、かつ中央に開口穴を有する環形状の仕切板とを備えている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の摩擦帯電装置によれば、帯電容器の内周面に固定され、帯電容器の内部空間を仕切り、かつ中央に開口穴を有する環形状の仕切板とを備えているため、仕切板の開口穴を通してプラスチックの混合物が排出口側へ送られる。そのため帯電容器の内周面と仕切板との間からプラスチックの混合物が排出口側へ送られることを防止できる。また仕切板でプラスチックの混合物を帯電容器に留めることで帯電時間を長くすることができる。これにより必要な帯電時間を得ることができる。さらに帯電容器の内周面と仕切板との間からプラスチックの混合物が排出口側へ送られることを防止できるため、プラスチックの混合物を帯電容器内に精度良く保持することができる。このため帯電時間のバラツキを小さくすることができる。そのため、仕切板を備えた簡素な装置構成で、必要な帯電時間を確保しつつ帯電時間のバラツキを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1における静電選別装置の概略斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1における摩擦帯電装置の概略斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1における帯電時間と開口率との関係を示す図である。
【図4】面積の帯電量と帯電時間との関係を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1における排出流量/供給流量と帯電開始後の経過時間との関係を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1における供給配管部材が受入口に挿入された状態を示す概略断面図である。
【図7】本発明の実施の形態1における取り出し配管部材が排出口に挿入された状態を示す概略断面図である。
【図8】本発明の実施の形態2における摩擦帯電装置の概略斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態2における摩擦帯電装置内での羽根部材の状態を示す概略斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態3における仕切板の構成を示す平面図である。
【図11】本発明の実施の形態3における多量プラスチックの帯電量と原料中の少量プラスチックの混合割合との関係を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態4における電界調整リングが取り付けられた仕切板を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
最初に本発明の実施の形態1の静電選別装置の構成について説明する。
【0021】
図1を参照して、静電選別装置100は、帯電した2種以上のプラスチックの混合物(混合プラスチック)1を選別するための装置である。プラスチックの混合物1は、プラスチックの破砕物、粒状物などからなっている。プラスチックの混合物1は、プラスに帯電するプラスチック1aとマイナスに帯電するプラスチック1bとを含んでいる。静電選別装置100は、摩擦帯電装置10と、供給装置20と、搬送機30と、選別装置40と、回収容器50とを主に有している。
【0022】
図2を参照して、摩擦帯電装置10は、2種以上のプラスチックの混合物1を帯電させるための装置である。摩擦帯電装置10は、帯電容器2と、仕切板3とを主に有している。
【0023】
帯電容器2は、筒状に形成されている。帯電容器2は、円筒状、多角柱形状などに形成されていてもよい。帯電容器2は、軸心AXを中心に矢印R1方向に回転可能に構成されている。帯電容器2は、上下方向に所定角度傾斜されていてもよい。帯電容器2は、一端に2種以上のプラスチックの混合物1を受入れるための受入口2aを有している。帯電容器2は、他端に2種以上のプラスチックの混合物1を排出するための排出口2bとを有している。
【0024】
仕切板3は環形状に形成されている。仕切板3は、帯電容器2の内周面に固定されている。仕切板3は、帯電容器2の内周面に隙間無く設けられている。仕切板3は、帯電容器2の内部空間ISを仕切るように設けられている。仕切板3は複数設けられていてもよい。1つの仕切板3によって内部空間ISは、たとえば第1の内部空間IS1と第2の内部空間IS2に仕切られている。仕切板3は中央に開口穴3aを有している。開口穴3aによって第1の内部空間IS1と第2の内部空間IS2とは連続して通じている。
【0025】
摩擦帯電装置10は、羽根部材4を有していてもよい。羽根部材4は、仕切板3で仕切られた内部空間IS内で帯電容器2の内周面に固定されている。羽根部材4は、帯電容器2の軸心AXに向かって延びるように設けられている。羽根部材4は、搬送用羽根4aと、攪拌用羽根4bとを有していてもよい。搬送用羽根4aは帯電容器2の径方向の長さが攪拌用羽根4bの径方向の長さよりも長くなるように形成されている。搬送用羽根4aは帯電容器2の径方向の長さが開口穴3aに届かないように形成されている。搬送用羽根4aは、開口穴3aに対してたとえば5cm程度以上離れるように形成されている。
【0026】
摩擦帯電装置10は、回転装置11を有していてもよい。回転装置11は、帯電容器2を軸心AXを中心に矢印R1方向に回転可能に構成されている。
【0027】
供給装置20は、2種以上のプラスチックの混合物1を摩擦帯電装置10に供給するための装置である。搬送機30は、たとえば加振による振動搬送フィーダが用いられ得る。搬送機30は、供給装置20から供給されたプラスチックの混合物1を摩擦帯電装置10に搬送するための第1の搬送機30aと、摩擦帯電装置10から排出されたプラスチックの混合物1を選別装置40に供給するための第2の搬送機30bとを有している。
【0028】
選別装置40は、摩擦帯電装置10において帯電した2種以上のプラスチックの混合物1の帯電状態により2種以上のプラスチックの混合物1を選別するように構成されている。選別装置40は、第1の電極部材40aと第2の電極部材40bとを有している。第1の電極部材40aと第2の電極部材40bとはたとえば直流電源によって異なる電圧が印加されるように構成されている。第1の電極部材40aは、たとえばプラスの電圧が印加されるように構成されている。第2の電極部材40bは、たとえばマイナスの電圧が印加されるように構成されている。第1の電極部材40aと第2の電極部材40bとは、帯電したプラスチックの混合物1が落下する領域に向かい合うように配置されている。
【0029】
回収容器50は、選別装置40の下方に配置されている。回収容器50は、第1の回収容器50aと第2の回収容器50bとを有している。第1の回収容器50aはプラスに帯電したプラスチック1aを回収するための容器である。第2の回収容器50bはマイナスに帯電したプラスチック1bを回収するための容器である。第1の回収容器50aは、第2の電極部材40bの下方に配置されている。第2の回収容器50bは、第1の電極部材40aの下方に配置されている。
【0030】
次に本実施の形態の静電選別方法について説明する。
図1を参照して、選別の原料であるプラスチックの混合物1は、供給装置20から第1の搬送機30aを経由して摩擦帯電装置10に搬送される。搬送されたプラスチックの混合物1は、帯電容器2の受入口2aから帯電容器2の内部空間ISに連続的に投入される。投入されたプラスチックの混合物1は帯電容器2内において、所定時間帯電処理がなされる。その結果、プラスチックの帯電列に従い、プラスに帯電する樹脂種類のプラスチック1aはプラスに帯電し、マイナスに帯電する樹脂種類のプラスチック1bはマイナスに帯電する。
【0031】
帯電容器2の排出口2bより連続的に取り出された帯電したプラスチックの混合物1は、第2の搬送機30bで選別装置40により形成される静電場に導かれる。第2の搬送機30bから静電場中に放出された帯電したプラスチックの混合物1は、静電気力の差に起因する落下軌跡の差異で、第1の回収容器50aと第2の回収容器50bとに分かれて回収される。
【0032】
続いて摩擦帯電装置による摩擦帯電についてさらに詳しく説明する。
図2を参照して、2成分のプラスチック1a,1bよりなる混合プラスチック1は、受入口2aから帯電容器2の第1の内部空間IS1に連続的に供給される。本実施の形態では、帯電容器2は上下方向に傾斜して保持されており、帯電容器2は傾斜した状態で軸心AXの周りを回転装置11により所定回転数で回転する。
【0033】
第1の内部空間IS1内のプラスチック片は、回転する搬送用羽根4aおよび攪拌用羽根4bの働きにより一旦持ち上げられ、次いで空中に放出され落下し、同様の運動を繰り返す。その際、プラスチック片同士、プラスチック片と搬送用羽根4aおよび攪拌用羽根4b、プラスチック片と帯電容器2内面が接触し摩擦帯電する。また、摩擦帯電と共に、上記持ち上げ−放出・落下過程の中で、攪拌用羽根4bも帯電容器2と同様に傾斜しているので、プラスチック片は排出口2bの方向に位置をややシフトして落下する。その結果プラスチック片は回転により帯電しつつ且つ開口穴3aの方向に少しずつ移動し、最終的に搬送用羽根4aにより持ち上げられ、空中に放出され、落下するようになる。
【0034】
本実施の形態では、搬送用羽根4aは、羽根の径方向の長さが攪拌用羽根4bよりも長く、且つ開口穴3aに届かないように例えば5cm程度以上控えて設定されている。径方向の長さが攪拌用羽根4bよりも長い搬送用羽根4aにより開口穴3a近傍まで遠くに、たとえば5cm以上飛ばされたプラスチック片は、一部は開口穴3aを通過することで隣の第2の内部空間IS2に移り、残りのプラスチック片は開口穴3aを通らず第1の内部空間IS1に留まる。
【0035】
第1の内部空間IS1内に滞留するプラスチック片の量は運転当初は増大し、それに伴い放出・落下量も増大する。これにより開口穴3aを通過するプラスチック片の量も当初は増大する。そして、プラスチック片が所定量溜まると第1の内部空間IS1を出入りするプラスチック片の量がバランスし、定常状態に至る。
【0036】
すなわち、運転開始当初は帯電容器2内は空であるため、第1の内部空間IS1にまずプラスチック片が所定量溜まる必要がある。具体的には各内部空間IS1,IS2などにおいて立上げ当初、下流側に排出されるプラスチック量が定格時に比べて少なく、上流側から供給されるプラスチック量と差が生じ、各内部空間IS1,IS2などにプラスチック片が充填される。定常状態に至る頃には、各内部空間IS1,IS2などにプラスチック片が所定量溜まり各内部空間IS1,IS2などから排出されるプラスチック量が順次増大することで、上流側から供給されるプラスチック量とバランスし定常状態に至る。
【0037】
プラスチック片の滞留時間は帯電容器2内全体のプラスチック片の滞留量を供給量(供給速度)で除したものである。この滞留時間が帯電時間に相当する。図3を参照して、帯電時間は仕切板3の開口率(仕切板3の面積に対する開口穴3aの面積の割合)に大きく依存する。
【0038】
帯電量と帯電時間の関係は帯電条件(たとえば、帯電容器2内の充填量、帯電時の温度・湿度、混合プラスチック1中の不純物量など)に依存する。図4は、従来のバッチ式の帯電容器について、多様な試験条件での帯電量のデータを帯電時間に関し整理したものである。この試験条件について詳述する。内容積約9Lの円筒状の帯電容器2に、プラスチック成形品を破砕して得られた2種類のプラスチック破砕片(ABS樹脂、ポリスチレン樹脂)混合物を0.6−2.0kg充填し、所定の時間帯電した。帯電後、帯電容器2からプラスチック破砕片を取り出し、各破砕片の帯電量、重量を測定した。プラスチック片は破砕片であり不定形状であるため、重量より球状を仮定した表面積を算出し、面積あたりの帯電量として整理した。
【0039】
図4に示す「面積の帯電量」は、ABS樹脂破砕片の面積当たりの帯電量(+に帯電)からポリスチレン樹脂の面積当たりの帯電量(−に帯電)を差し引いた数値である。この数値は静電選別の容易さを示す数値である。摩擦帯電は、プラスチック破砕片同士の衝突形態、含水量、破砕片中あるいは表面に付着する不純物量等により影響を受ける。ただし帯電時間が10分程度を越えると、帯電条件が一定の範囲内にあれば、図4に示すようにほぼ一定の帯電量に収斂する。つまり、帯電時間として10分程度を越えれば帯電が飽和に至り安定する。
【0040】
再び図3を参照して、帯電時間として10分程度を達成可能な開口率は、供給量3kg/分では、開口率40%程度以下である。より大きな原料供給量(たとえば8kg/分前後)において、帯電時間として10分程度を達成するには開口率として17−18%程度が必要である。
【0041】
これにより類似の仕切板3を有する帯電容器2でありながら、帯電可能なプラスチック片の供給量を2.6倍に拡大できる。すなわち、帯電時間10分とするためには、3kg/分では開口率40%であり、8kg/分では開口率17−18%である。そして、3kg/分と8kg/分とを比較すると約2.6倍となる。そのため、開口率を17−18%にすることで供給量を約2.6倍に拡大できる。
【0042】
但し仕切板3がたとえばプラスチックで構成される場合、開口率が10%未満と小さくなると、仕切板3自身も帯電し仕切板3の帯電荷がプラスチック片の開口穴3aの通過に対して大きな影響を及ぼすようになる。たとえば、仕切板3と同極性に帯電したプラスチック片の開口穴3aの通過を、静電気力(反発)が顕著に抑制するようになる。
【0043】
その結果、帯電容器2内の混合プラスチック1の混合割合が、原料の混合プラスチック1の混合割合からズレてくる。混合割合のズレは後述するように、帯電量の面でよい結果を生む場合がある反面、極度に混合割合がズレると帯電したプラスチック片を電界場で分離する選別工程において、悪影響が出る場合がある。つまり選別純度が低下する場合がある。
【0044】
その場合、以下の対応が有効である。仕切板3の開口率が大き目に設定される。たとえば開口率は40%程度に設定される。帯電序列が2種類のプラスチック片の中間位にある材料で仕切板3が構成される。後述するように仕切板3による静電気力の影響を打ち消す電界調整リング15(図12参照)が開口穴3aに隣接して設けられる。
【0045】
なお、仕切板3を設けない従来例は開口率100%に相当するが、供給量を3kg/分にしても帯電時間が5分弱であり、安定した静電選別性能を得るには不十分である。
【0046】
次に仕切板3の堰としての効果を十分に発揮する方法について述べる。
プラスチック粒子毎の帯電を均一に行うには、上述のように平均的な滞留(帯電)時間として10分程度以上を確保する必要があるが、それと共に滞留時間の分布を小さく抑える必要がある。
【0047】
図5は、本実施の形態において帯電開始後(帯電容器2へ混合プラスチック1を供給開始後)の経過時間と排出口2bにおける排出流量との関係を示したものである。図5の縦軸は排出流量を供給流量で除した値である。本実施の形態では仕切板3と帯電容器2内面との間に隙間を生じないよう仕切板3が固定されている。これにより、仕切板3と帯電容器2内面との間を通過する仕切板3を短絡するプラスチック片の流れが抑制される。
【0048】
その結果、帯電時間10分未満で排出される粒子の割合が10%程度以下であり、シャープな滞留時間分布を得ることができる。このシャープな滞留時間分布について説明する。図5に示すように平均帯電時間である11.5分の約0.5分前から流量が立ち上がり、平均帯電時間の約0.5分後に入口側供給量の約8割まで立ち上がる。大多数のプラスチックの滞留時間が滞留時間平均値(11.5分)の±0.5分の間に収まることを、シャープな滞留時間分布と称している。
【0049】
図5に示すように、本実施の形態では、必要な帯電時間を実現しつつ、プラスチックの混合物1を帯電容器2内に精度良く保持することで帯電時間のバラツキを小さくすることができる。
【0050】
ところで、本実施の形態では、帯電容器2が回転することで、受入口2aおよび排出口2bも回転する。そのため、混合プラスチック1の供給配管系と受入口2aとの接続および混合プラスチック1の取り出し配管系と排出口2bとの接続が難しい。
【0051】
図6を参照して、摩擦帯電装置10は、2種以上のプラスチックの混合物1を内部空間IS内に供給可能な供給配管部材12を有していてもよい。供給配管部材12は、受入口2aに挿入された状態で2種以上のプラスチックの混合物1を内部空間IS内に供給するように構成されている。帯電容器2の回転を許容するため受け入れ側の帯電容器2端部が回転軸受13で支持されている。回転軸受13の回転軸部に受入口2aが貫通して設けられている。受入口2aに供給配管部材12の供給口が挿入されている。これにより、簡易な配管接続の構造のまま、プラスチック片を周囲に飛散および落下させること無く連続的にコンパクトに供給することが可能である。
【0052】
図7を参照して、排出口2b側についても、受入口2a側と同様の構造が適用可能である。すなわち、2種以上のプラスチックの混合物1を内部空間IS内から取り出し可能な取り出し配管部材14を有していてもよい。取り出し配管部材14は、排出口2bに挿入された状態で2種以上のプラスチックの混合物1を内部空間IS内から取り出すように構成されている。帯電容器2の回転を許容するため排出側の帯電容器2端部が回転軸受13で支持されている。回転軸受13の回転軸部に排出口2bが貫通して設けられている。排出口2bに供給配管部材12の取り出し口が挿入されている。これにより、簡易な配管接続の構造のまま、プラスチック片を周囲に飛散および落下させること無く連続的にコンパクトに排出することが可能である。
【0053】
また、排出口2bは帯電したプラスチック片を取り出すだけでよいので、回転軸受13の回転軸部以外の箇所、たとえば円筒状または多角柱状の帯電容器2の排出口2b側端部の外周面に排出口を設け、遠心力などを利用して周方向に取り出してもよい。その場合プラスチック片は周辺に飛散するが、外部カバーを取り付けるなどにより回収可能である。
【0054】
次に本実施の形態の作用効果について説明する。
本実施の形態の摩擦帯電装置10によれば、帯電容器2の内周面に固定され、帯電容器2の内部空間ISを仕切り、かつ中央に開口穴3aを有する環形状の仕切板3とを備えているため、仕切板3の開口穴3aを通してプラスチックの混合物1が排出口2b側へ送られる。そのため帯電容器2の内周面と仕切板3との間からプラスチックの混合物1が排出口2b側へ送られることを防止できる。また仕切板3でプラスチックの混合物1を帯電容器2に留めることで帯電時間を長くすることができる。これにより必要な帯電時間を得ることができる。さらに帯電容器2の内周面と仕切板3との間からプラスチックの混合物1が排出口2b側へ送られることを防止できるため、プラスチックの混合物1を帯電容器2内に精度良く保持することができる。このため帯電時間のバラツキを小さくすることができる。そのため、仕切板3を備えた簡素な装置構成で、必要な帯電時間を確保しつつ帯電時間のバラツキ小さくすることができる。
【0055】
また、本実施の形態の摩擦帯電装置10によれば、仕切板3で仕切られた内部空間IS内で帯電容器2の内周面に固定され、帯電容器2の軸心AXに向かって延びるように設けられた羽根部材4を有しているため、羽根部材4がプラスチックの混合物1を持ち上げ、空中に放出する。これにより、プラスチックの混合物1を開口穴3aに効率的に通過させることができる。
【0056】
また、本実施の形態の摩擦帯電装置10によれば、仕切板3の面積に対する開口穴3aの面積の割合が10%以上40%以下である。これにより、必要な帯電時間を得ることができる。また、選別純度の低下を抑制できる。
【0057】
また、本実施の形態の摩擦帯電装置10によれば、供給配管部材12は、受入口2aに挿入された状態で2種以上のプラスチックの混合物1を内部空間IS内に供給するように構成されている。これにより、簡易な配管接続の構造のまま、プラスチック片を周囲に飛散および落下させること無く連続的にコンパクトに供給することができる。
【0058】
また、本実施の形態の摩擦帯電装置10によれば、取り出し配管部材14は、排出口2bに挿入された状態で2種以上のプラスチックの混合物1を内部空間IS内から取り出すように構成されている。これにより、簡易な配管接続の構造のまま、プラスチック片を周囲に飛散および落下させること無く連続的にコンパクトに排出することができる。
【0059】
本実施の形態の静電選別装置は、上記の摩擦帯電装置10において帯電した2種以上のプラスチックの混合物1の帯電状態により2種以上のプラスチックの混合物1を選別するため、必要な帯電時間をバラツキ小さく実現することができる。これにより、2種以上のプラスチックの混合物1を正確に選別することができる。
【0060】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2は、実施の形態1と比較して、摩擦帯電装置10の構成が主に異なっている。
【0061】
図8を参照して、本実施の形態の摩擦帯電装置10では、帯電容器2は略水平に配置されている。帯電容器2は略水平な軸心AXの周りを矢印R2方向に回転するように構成されている。
【0062】
羽根部材4は、プラスチック片を排出口2bの方向に搬送するよう傾斜して帯電容器2の内壁に設けられている。羽根部材4は、実施の形態1の搬送用羽根4aと攪拌用羽根4bとを兼用するように構成されている。すなわち、羽根部材4は、実施の形態1の搬送用羽根4aと攪拌用羽根4bとの2つの役割を共に有している。
【0063】
搬送用羽根4aは羽根部材4近傍のプラスチック片を帯電容器2の回転と共に下から上に持ち上げ、放出する際には少なくともその一部が排出口2bに届くようにプラスチック片を跳ね上げる必要がある。したがって攪拌用羽根4bよりも大きい力でプラスチック片を放出する必要がある。一方、攪拌用羽根4bはそのような機能は不要であるが、攪拌が強すぎると帯電処理の際プラスチック片が破砕または磨耗し、発生したプラスチック微粉が帯電を阻害するケースも生ずる。したがって搬送に必要な最小限の力で羽根を動作させることが望ましい。そのような羽根部材4の条件は、羽根部材4の長さおよび帯電容器2の回転数で調整することができる。
【0064】
図9を参照して、羽根部材4の受入口側端部41が羽根部材4の排出口側端部42より帯電容器2の回転方向R2の上流側Yに位置している。
【0065】
本実施の形態の摩擦帯電装置10の動作について説明する。
図8および図9を参照して、本実施の形態の摩擦帯電装置10において、帯電容器2は略水平な軸心AXの周りを矢印R2方向に所定回転数で回転する。帯電容器2の内周面にとりつけられた羽根部材4は、羽根部材4近傍のプラスチック片を帯電容器2の回転と共に下から上に持ち上げ(左回りの回転の場合、たとえば時計の針で6時→5時→4時のように順次回転する)、更に回転が進み羽根部材4の方向が水平方向を越えると(たとえば時計の針で3時→2時→1時のように回転が進む)プラスチック片が羽根部材4の上を滑り、最終的に羽根部材4から放出され落下する。
【0066】
羽根部材4の受入口側端部41が羽根部材4の排出口側端部42より帯電容器2の回転方向R2の上流側Yに位置するように羽根部材4が傾斜して設置されているため、羽根部材4上をプラスチック片が滑る際および羽根部材4から放出され落下する際、排出口2bの方向(以下、適宜進行方向と呼ぶ)にプラスチック片は位置をややシフトする。すなわち、第1の内部空間IS1内のプラスチック片は帯電しながら進行方向に移動する。
【0067】
そして進行方向側にある仕切板3近傍に到着したプラスチック片は、進行方向にやや角度を振って羽根部材4から開口穴3aの方向に放出され、その一部が開口穴3aを通過して進行方向に隣接する第2の内部空間IS2に移る。上記動作が順次繰り返されることで、プラスチック片が受入口2a側の第1の内部空間IS1から排出口2b側の第2の内部空間IS2に移動する。このようにして、プラスチック片の連続的な供給排出が可能となる。
【0068】
なお、本実施の形態のこれ以外の構成および動作は上述した実施の形態1と同様であるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0069】
本実施の形態の摩擦帯電装置10によれば、羽根部材4の受入口側端部41が羽根部材4の排出口側端部42より帯電容器2の回転方向R2の上流側Yに位置しているため、羽根部材4によって、プラスチックの混合物1を排出口2bの方向へ移動させることができる。これにより、これにより、プラスチックの混合物1を開口穴3aにさらに効率的に通過させることができる。
【0070】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3は、実施の形態1と比較して、仕切板の構成10が主に異なっている。
【0071】
図10を参照して、本実施の形態の仕切板3の表面部分3sは、2種以上のプラスチックの混合物1と接触することで仕切板3が摩擦帯電する材料から構成されている。仕切板3の表面部分3sは、2種以上のプラスチックの混合物1のうち混合割合の小さなプラスチックと同じ材料から構成されている。
【0072】
なお、本実施の形態のこれ以外の構成および動作は上述した実施の形態1と同様であるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0073】
本実施の形態の摩擦帯電装置10によれば、仕切板3の表面部分3sは、2種以上のプラスチックの混合物1と接触することで仕切板3が摩擦帯電する材料から構成されているため、仕切板3を摩擦帯電させることができる。そのため、仕切板3の静電気力によりプラスチックの混合物1が開口穴3aを通過する量を調整することができる。
【0074】
また、本実施の形態の摩擦帯電装置10によれば、仕切板3の表面部分3sは、2種以上のプラスチックの混合物1のうち混合割合の小さなプラスチックと同じ材料から構成されているため、仕切板3が少量プラスチック片と同極性に摩擦帯電する。これにより少量成分のプラスチック片の帯電荷と同極性の電圧が開口穴3aに印加される。
【0075】
その結果、仕切板3が混合プラスチック1の少量成分が開口穴3aを通過するのを静電気力(反発力)で妨害するため、帯電容器2内部の少量プラスチック片の混合割合が増大する。帯電容器2内のプラスチック片の混合割合が変化すると、一般的には帯電量が変化する。
【0076】
図11を参照して、従来例(バッチ式の帯電容器)では、少量プラスチック片の混合割合がたとえば10%程度以下になると少量プラスチック片と多量プラスチック片との間の衝突頻度が減り、多量プラスチック片の帯電量(絶対値)の平均値が減少する。その状態で選別すると、多量プラスチック片の一部が少量プラスチック片の回収容器側に誤選別され、回収された少量プラスチック片の純度低下が生じる。さらに回収された多量プラスチック片の回収率が低下する。
【0077】
一方、本実施の形態の本発明例(開口率41%)では、原料中の少量プラスチック片の混合割合が減少しても、仕切板3による静電気力で帯電容器2内部の少量プラスチック片の混合割合が高く維持される。そのため、原料中の少量プラスチック片の混合割合が10%程度においても、多量プラスチック片の帯電量は混合割合が20〜30%の場合とほぼ同じとなる。したがって、本発明例では、従来例に比べて大きな帯電量を得ることができる。すなわち、少量成分の混合割合が10%程度、あるいはそれ以下に小さいケースであっても、格別の措置を講ずること無く安定な静電選別を行うことができる。
【0078】
上記とは別途の帯電試験により、2種類の開口率の仕切板3を用いて、帯電しつつ帯電容器内の少量プラスチックと多量プラスチックとの混合割合を分析した。この帯電試験では、仕切板の開口率は41%と13%とした。この帯電試験の結果、仕切板の開口率が41%の場合、原料中の少量プラスチック片の混合割合が8%、帯電容器2内の少量プラスチック片の混合割合が18%であった。
【0079】
一方、仕切板3の開口率が13%の場合、原料中の少量プラスチック片の混合割合が9%、帯電容器2内の少量プラスチック片の混合割合が36%であった。この場合には、帯電容器2内の少量プラスチック片の混合割合が更に大きくなり、今後は組成の面で逆に、多量プラスチック片の回収側に少量プラスチック片が混入する弊害が生じる。したがって、片側のプラスチック片の混合割合が少量であり、少量プラスチック片と同じプラスチック材料で仕切板3を構成する場合、帯電量の安定化と選別純度の維持という観点から最適な開口率が存在する。本実施の形態の仕切板3では開口率40%程度が特に望ましい。
【0080】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4は、実施の形態3と比較して、摩擦帯電装置が電界調整リングを備えている点で主に異なっている。実施の形態3では、仕切板として特定の素材を選定して摩擦帯電により所定の極性の電圧を開口穴に印加する例を示した。その他の方法として、開口穴の外周に高電圧を印加した電界調整リングを開口穴に隣接して設けることで、開口穴に電位をかけることができる。
【0081】
図12を参照して、電界調整リング15は、電圧が印加されることで電界を調整可能に構成されている。電界調整リング15は、たとえば導電性素材を絶縁性素材で被覆した導電性ケーブルなどより構成されている。電界調整リング15は仕切板3の開口穴3aの周囲を囲むように配置されている。たとえば直流電源よりなる電圧印加機構16により電界調整リング15に所定の高電圧が印荷されるように電界調整リング15は構成されている。
【0082】
なお、本実施の形態のこれ以外の構成および動作は上述した実施の形態3と同様であるため、同一の要素については同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0083】
実施の形態3のプラスチック素材による仕切板3の場合、表面には摩擦帯電によって、たとえば1−10kV程度の電位がかかっている。一方、本実施の形態では電界調整リング15が仕切板3の開口穴3aの周囲を囲むように配置されているため、同程度の電圧を電界調整リング15に印加し、開口穴3aに実施の形態3と同様の電界をかけることができる。その結果、実施の形態3と同様の効果が得られる。
【0084】
さらには本実施の形態では、印荷電圧を容易に調節可能であるため、以下のような付加機能も有する。実施の形態3において仕切板3がプラスチック素材よりなり帯電する場合開口率を過度に小さく(たとえば10%未満)すると、混合割合の行き過ぎた変化が生じて選別工程に却って悪影響を及ぼすことがある。したがって開口率を40%程度にしたため、帯電容器2の処理量の増大という視点では不十分となることがある。本実施の形態においては、電界調整リング15に仕切板3の電荷とは逆の極性の適当な電圧を印加することで、開口穴3aにかかる電位を任意に調整できる。したがって、帯電に最適な混合割合を維持すると共に、同時に帯電容器2の処理量を最大化(開口率を10%にする)することが可能になる。
【0085】
上記の各実施の形態は適宜組み合わせられ得る。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0086】
1 プラスチックの混合物(混合プラスチック)、2 帯電容器、2a 受入口、2b 排出口、3 仕切板、3a 開口穴、3s 表面部分、4 羽根部材、4a 搬送用羽根、4b 攪拌用羽根、10 摩擦帯電装置、11 回転装置、12 供給配管部材、13 回転軸受、14 取り出し配管部材、15 電界調整リング、16 電圧印加機構、20 供給装置、30 搬送機、30a 第1の搬送機、30b 第2の搬送機、40 選別装置、40a 第1の電極部材、40b 第2の電極部材、41 受入口側端部、42 排出口側端部、50 回収容器、50a 第1の回収容器、50b 第2の回収容器、100 静電選別装置、AX 軸心、IS 内部空間、IS1 第1の内部空間、IS2 第2の内部空間。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種以上のプラスチックの混合物を帯電させるための摩擦帯電装置であって、
一端に前記2種以上のプラスチックの混合物を受入れるための受入口と他端に前記2種以上のプラスチックの混合物を排出するための排出口とを有する筒状の帯電容器と、
前記帯電容器の内周面に固定され、前記帯電容器の内部空間を仕切り、かつ中央に開口穴を有する環形状の仕切板とを備えた、摩擦帯電装置。
【請求項2】
前記仕切板で仕切られた前記内部空間内で前記帯電容器の内周面に固定され、前記帯電容器の軸心に向かって延びるように設けられた羽根部材をさらに備えた、請求項1に記載の摩擦帯電装置。
【請求項3】
前記羽根部材の前記受入口側端部が前記羽根部材の前記排出口側端部より前記帯電容器の回転方向の上流側に位置している、請求項2に記載の摩擦帯電装置。
【請求項4】
前記仕切板の表面部分は、前記2種以上のプラスチックの混合物と接触することで前記仕切板が摩擦帯電する材料から構成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の摩擦帯電装置。
【請求項5】
前記仕切板の表面部分は、前記2種以上のプラスチックの混合物のうち混合割合の小さなプラスチックと同じ材料から構成されている、請求項4に記載の摩擦帯電装置。
【請求項6】
電圧が印加されることで電界を調整可能な電界調整リングをさらに備え、
前記電界調整リングが前記仕切板の前記開口穴の周囲を囲むように配置されている、請求項1〜5のいずれかに記載の摩擦帯電装置。
【請求項7】
前記仕切板の面積に対する前記開口穴の面積の割合が10%以上40%以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の摩擦帯電装置。
【請求項8】
前記2種以上のプラスチックの混合物を前記内部空間内に供給可能な供給配管部材をさらに備え、
前記供給配管部材は、前記受入口に挿入された状態で前記2種以上のプラスチックの混合物を前記内部空間内に供給するように構成されている、請求項1〜7のいずれかに記載の摩擦帯電装置。
【請求項9】
前記2種以上のプラスチックの混合物を前記内部空間内から取り出し可能な取り出し配管部材をさらに備え、
前記取り出し配管部材は、前記排出口に挿入された状態で前記2種以上のプラスチックの混合物を前記内部空間内から取り出すように構成されている、請求項1〜8のいずれかに記載の摩擦帯電装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の摩擦帯電装置と、
前記摩擦帯電装置において帯電した前記2種以上のプラスチックの混合物の帯電状態により前記2種以上のプラスチックの混合物を選別するように構成された選別装置とを備えた、静電選別装置。
【請求項1】
2種以上のプラスチックの混合物を帯電させるための摩擦帯電装置であって、
一端に前記2種以上のプラスチックの混合物を受入れるための受入口と他端に前記2種以上のプラスチックの混合物を排出するための排出口とを有する筒状の帯電容器と、
前記帯電容器の内周面に固定され、前記帯電容器の内部空間を仕切り、かつ中央に開口穴を有する環形状の仕切板とを備えた、摩擦帯電装置。
【請求項2】
前記仕切板で仕切られた前記内部空間内で前記帯電容器の内周面に固定され、前記帯電容器の軸心に向かって延びるように設けられた羽根部材をさらに備えた、請求項1に記載の摩擦帯電装置。
【請求項3】
前記羽根部材の前記受入口側端部が前記羽根部材の前記排出口側端部より前記帯電容器の回転方向の上流側に位置している、請求項2に記載の摩擦帯電装置。
【請求項4】
前記仕切板の表面部分は、前記2種以上のプラスチックの混合物と接触することで前記仕切板が摩擦帯電する材料から構成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の摩擦帯電装置。
【請求項5】
前記仕切板の表面部分は、前記2種以上のプラスチックの混合物のうち混合割合の小さなプラスチックと同じ材料から構成されている、請求項4に記載の摩擦帯電装置。
【請求項6】
電圧が印加されることで電界を調整可能な電界調整リングをさらに備え、
前記電界調整リングが前記仕切板の前記開口穴の周囲を囲むように配置されている、請求項1〜5のいずれかに記載の摩擦帯電装置。
【請求項7】
前記仕切板の面積に対する前記開口穴の面積の割合が10%以上40%以下である、請求項1〜6のいずれかに記載の摩擦帯電装置。
【請求項8】
前記2種以上のプラスチックの混合物を前記内部空間内に供給可能な供給配管部材をさらに備え、
前記供給配管部材は、前記受入口に挿入された状態で前記2種以上のプラスチックの混合物を前記内部空間内に供給するように構成されている、請求項1〜7のいずれかに記載の摩擦帯電装置。
【請求項9】
前記2種以上のプラスチックの混合物を前記内部空間内から取り出し可能な取り出し配管部材をさらに備え、
前記取り出し配管部材は、前記排出口に挿入された状態で前記2種以上のプラスチックの混合物を前記内部空間内から取り出すように構成されている、請求項1〜8のいずれかに記載の摩擦帯電装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の摩擦帯電装置と、
前記摩擦帯電装置において帯電した前記2種以上のプラスチックの混合物の帯電状態により前記2種以上のプラスチックの混合物を選別するように構成された選別装置とを備えた、静電選別装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−240030(P2012−240030A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115833(P2011−115833)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]