説明

摩擦接合方法

【課題】 板部材側の穴部を加工工数の小さい簡単な方法で加工でき、かつ、板部材の穴部に軸状部材の先端部を良好に摩擦接合できる方法を提供する。
【解決手段】 板部材2に設ける穴部としてストレートの貫通穴2aを形成しておき、また、軸状部材1を板部材2よりも硬度の高い金属材料により構成するとともに、軸状部材1の先端部にテーパ状部1aを形成しておき、軸状部材1のテーパ状部1aを板部材2の貫通穴2aに嵌合し圧接させた状態にて、軸状部材1と板部材2とを相対的に回転させて、テーパ状部1aを貫通穴2aの内周壁に一体に摩擦接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穴付き部材の穴部に軸状部材の先端部を摩擦接合する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1においては、第1の軸状部材と第2の軸状部材とを互いに同一軸心線上で相対回転させるとともに、この軸心線方向へ加圧力を加えて、両軸状部材間を摩擦接合する摩擦接合方法が提案されている。
【0003】
この従来方法では、第1の軸状部材の接合端面にテーパ状内周面を有する凹部を形成し、第2の軸状部材の接合端面にテーパ状外周面を有する凸部を形成し、この凹部のテーパ状内周面に凸部のテーパ状外周面を摩擦圧接させて、第1、第2の軸状部材間を摩擦接合している。
【特許文献1】特開2000−343246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来方法では、テーパ状の凹部とテーパ状の凸部とを摩擦圧接させて摩擦接合しているので、第1の軸状部材側のテーパ状の凹部をバイトによる切削加工にて形成する必要があり、加工工数がどうしても増大する。従って、従来方法はコスト的に難点がある。
【0005】
本発明は、上記点に鑑み、穴付き部材側の穴部を加工工数の小さい簡単な方法で加工でき、かつ、穴付き部材の穴部に軸状部材の先端部を良好に摩擦接合できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、穴付き部材(2)に設ける穴部としてストレートの貫通穴(2a)を形成しておき、
また、軸状部材(1)を穴付き部材(2)よりも硬度の高い金属材料により構成するとともに、軸状部材(1)の先端部にテーパ状部(1a)を形成しておき、
軸状部材(1)のテーパ状部(1a)を穴付き部材(2)の貫通穴(2a)に嵌合し圧接させた状態にて、軸状部材(1)と穴付き部材(2)とを相対的に回転させて発熱させ、テーパ状部(1a)を貫通穴(2a)の内周壁に一体に摩擦接合する摩擦接合方法を特徴としている。
【0007】
本発明においてストレートの貫通穴(2a)とは、穴の基本形状が内径一定のストレート穴であることを意味している。従って、請求項2のように貫通穴端部に内径を徐々に拡大する口拡部(2b)を形成する形態も穴の基本形状が内径一定のストレート穴である限り、ストレートの貫通穴(2a)の範囲内に包含される。
【0008】
本発明によると、このように穴付き部材(2)に設ける穴部をストレートの貫通穴(2a)により形成するから、貫通穴(2a)をプレス打ち抜き加工やドリル穴開け加工にて簡単に形成でき、従来技術のテーパ状凹部のようにバイトによる切削加工を必要とせず、貫通穴(2a)の加工工数を大幅に低減でき、コスト的に極めて有利である。
【0009】
しかも、軸状部材(1)を穴付き部材(2)よりも硬度の高い金属材料により構成しているから、軸状部材(1)のテーパ状部(1a)を穴付き部材(2)の貫通穴(2a)に嵌合し摩擦圧接する過程において、摩擦熱の影響で軸状部材(1)より穴付き部材(2)の方が先に軟化し、軸状部材(1)は相対的に硬度の高い状態を維持する。
【0010】
このため、テーパ状部(1a)の外周面が貫通穴(2a)の内周壁に食い込むとともに、貫通穴(2a)の内周壁がテーパ状部(1a)の外周面に倣うように熱変形する。従って、軸状部材(1)がその軸方向の加圧力で座屈することなく、穴付き部材(2)の貫通穴(2a)部に軸状部材の先端部を良好に摩擦接合できる。
【0011】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の摩擦接合方法において、貫通穴(2a)のうち、テーパ状部(1a)の挿入側端部に貫通穴(2a)の内径を徐々に拡大する口拡部(2b)を形成することを特徴とする。
【0012】
これによると、テーパ状部(1a)の先端部外径が貫通穴(2a)の内径と同等の大きさであっても、口拡部(2b)によりテーパ状部(1a)の先端部を貫通穴(2a)の内側にスムースに案内できるので、貫通穴(2a)の周縁部にバリ等が発生することを抑制できる。
【0013】
なお、口拡部(2b)は具体的には後述するように面取り形状および円弧形状のいずれでもよい。
【0014】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の摩擦接合方法において、穴付き部材(2)を固定し、一方、軸状部材(1)を回転しながら穴付き部材(2)に向かって前進させることにより、テーパ状部(1a)と貫通穴(2a)の内周壁とを回転摩擦圧接させることを特徴とする。
【0015】
これによると、軸状部材(1)に回転力および軸方向の加圧力を加えることにより、摩擦接合を実施できるので、穴付き部材(2)は固定したままでよい。ここで、軸状部材(1)の径寸法は穴付き部材(2)の外径寸法あるいは外形寸法よりも小さいから、軸状部材(1)の方が回転操作しやすいという利点がある。なお、外形寸法は穴付き部材(2)が矩形状とか多角形である場合の外形状の最大寸法である。
【0016】
請求項4に記載の発明のように、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の摩擦接合方法において、穴付き部材(2)は磁性体金属であり、電磁機構の可動磁極部材を構成するようにしてよい。
【0017】
請求項5に記載の発明のように、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の摩擦接合方法において、穴付き部材は板部材(2)で構成するようにしてよい。ここで、板部材(2)とは板厚寸法(t)よりも外径寸法(D3)あるいは外形寸法が大きい部材である。
【0018】
請求項6に記載の発明のように、請求項5に記載の摩擦接合方法において、テーパ状部(1a)の軸方向長さ(L)を板部材(2)の板厚(t)よりも大きくして、テーパ状部(1a)を貫通穴(2a)の内周壁に摩擦接合した状態にてテーパ状部(1a)の先端部が板部材(2)の面より外側へ突き出るようにしてよい。
【0019】
請求項7に記載の発明のように、請求項5に記載の摩擦接合方法において、テーパ状部(1a)の軸方向長さ(L)を板部材(2)の板厚(t)と同等とし、テーパ状部(1a)を貫通穴(2a)の内周壁に摩擦接合した状態にてテーパ状部(1a)の先端部が板部材(2)の面と同一面上に位置するようにしてもよい。
【0020】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1実施形態)
図1〜図3は、本発明の第1実施形態を示すもので、図1は軸状部材1と、穴付き部材をなす板部材2との摩擦接合前の状態を示し、図2は第1実施形態における両部材1、2の具体的設計例を示し、図3は第1実施形態による摩擦接合方法を工程順に示す。
【0022】
軸状部材1は板部材2よりも硬度の高い金属材料により構成している。具体的には、本例では、板部材2を磁性体金属である珪素鋼焼結材料により構成し、そして、軸状部材1はこの珪素鋼焼結材料よりも硬度が高く、非磁性体であるステンレス材で構成している。
【0023】
ここで、第1実施形態の具体的用途として、板部材2は電磁弁(電磁機構)の可動磁極部材を構成し、軸状部材1は板部材2と一体に軸方向に変位して、流体通路の開口部を開閉する弁体を構成する。なお、この弁体部分は、軸状部材1のうち、テーパ状部1aとは反対側の端部1b側に構成される。その際、弁体部分を構成する端部1bを軸状部材1よりも外径を小さくした小径軸形状とすることにより、微小流体通路の開閉に適用できる。
【0024】
軸状部材1は、その接合端部となる一端部にテーパ状部1aを切削加工、鍛造加工等にて形成している。一方、板部材2の全体形状は、その中心部に貫通穴2aを形成したリング状のワッシャー形状に形成されている。ここで、貫通穴2aは、その内径が板部材2の板厚方向に対して一定になっている円形のストレート穴であり、ポンチによるプレス打ち抜き加工またはドリルによる穴開け加工にて形成される。
【0025】
そして、貫通穴2aのうち、テーパ状部1aの挿入側端部(図1の上側端部)に貫通穴2aの内径を徐々に拡大する口拡部2bを形成している。この口拡部2bは、図示の例では、貫通穴2aの内径をテーパ状(直線的)に拡大する面取り形状で形成されているが、この面取り部の代わりに、貫通穴2aの内径を円弧状の形状で徐々に拡大する円弧形状を形成してもよい。この口拡部2bはテーパ状部1aの先端部を貫通穴2aの内側にスムースに案内するためのものである。
【0026】
次に、軸状部材1および板部材2の具体的設計例をについて説明すると、軸状部材1の外径、すなわち、テーパ状部1aの最大径D1は7mmで、テーパ状部1a先端の最小径D2は6.3mm、軸方向長さLは14mmである。従って、テーパ比S=(D1−D2)/L=1/20であり、テーパ状部1aはモールステーパを構成している。
【0027】
一方、板部材2の板厚tは4mmであり、貫通穴2aの内径dは、本例では、テーパ状部1aの最小径D2と同じ6.3mmに設計している。貫通穴2aの口拡部2bの面取り形状はC=0.5mmにしている。従って、口拡部2bの最大内径は、0.5mm×2+6.3mm=7.3mmである。
【0028】
なお、板部材2の外径D3は、18mmで、軸状部材1の全長寸法L0は50mmである。
【0029】
次に、本実施形態による軸状部材1と板部材2の摩擦接合方法を図1および図3に基づいて具体的に説明する。
【0030】
(1)軸状部材1および板部材2のセット工程
図1に示すように軸状部材1のうち、テーパ状部1aと反対側の端部1bを摩擦接合機の回転側主軸3のチャック機構により保持する。図1の例では、回転側主軸5にて軸状部材1を鉛直方向に保持している。
【0031】
一方、摩擦接合機の固定側チャック機構4は回転側主軸3の下方側に配置され、この固定側チャック機構4により板部材2を保持固定する。より具体的には、板部材2の中心部の貫通穴2aが軸状部材1の中心線の下方延長上に位置するとともに板部材2の板面が軸状部材1の軸方向と垂直な方向(水平方向)に向くようにして、板部材2を摩擦接合機の固定側チャック機構4により保持固定する。
【0032】
なお、固定側チャック機構4には、軸状部材1のテーパ状部1aとの干渉を回避する凹部4aが板部材2の貫通穴2aの下方部に形成されている。
【0033】
(2)軸状部材1のテーパ状部1aの貫通穴2a内への挿入工程
摩擦接合機の回転側主軸3を図示しない回転駆動装置により所定回転数、例えば、7000rpmで回転させ、軸状部材1を図3(a)に示すようにこの所定回転数で回転させながら板部材2の中心部の貫通穴2aに向かって前進(下降)させる。
【0034】
ここで、軸状部材1のテーパ状部1a先端の最小径D2を貫通穴2aの内径dと同じ6.3mm設計してあるが、貫通穴2aのうち、テーパ状部1aの挿入側端部(図示の上側端部)に貫通穴2aの内径を徐々に拡大する口拡部2bが形成してあるので、この口拡部2bによりテーパ状部1aの最小径先端部を貫通穴2aの内側にスムースに案内できる(図3(b)参照)。
【0035】
(3)軸状部材1と板部材2の摩擦接合工程
テーパ状部1aの先端最小径部を板部材2の貫通穴2a内に挿入すると、テーパ状部1aの外周面が貫通穴2aの内周壁に圧接する。ここで、軸状部材1に加える初期の加圧力P1は摩擦熱発生のための比較的低めの値であって、例えば、400kgfである。
【0036】
テーパ状部1aの外周面がこの初期の加圧力P1でもって貫通穴2aの内周壁に圧接しながら、軸状部材1が板部材2に対して相対的に回転するので、テーパ状部1aの外周面と貫通穴2aの内周壁との間の圧接部で摩擦熱が発生し、圧接部が高温となる。
【0037】
この際、板部材2の硬度(融点)が軸状部材1より低いので、この摩擦熱による圧接部の温度上昇過程において板部材2の貫通穴2aの内周壁周辺部がテーパ状部1aよりも先に軟化する。このため、テーパ状部1aの外周面が貫通穴2aの内周壁周辺部に食い込むとともに、貫通穴2aの内周壁周辺部がテーパ状部1aの外周面に倣うように熱変形する。
【0038】
そして、図3(c)に示すように、テーパ状部1aの先端最小径部が板部材2の貫通穴2a内に所定距離挿入されると、摩擦接合機の図示しない制御装置が軸状部材1の前進移動量を判定して、軸状部材1の回転を停止すると同時に、軸状部材1に加える加圧力を初期加圧力P1よりも所定値大きい接合用加圧力P2(例えば、800kgf)に自動的に切り替える。
【0039】
これにより、板部材2の貫通穴2aに圧接するテーパ状部1aの外径が増大しても軸状部材1の前進を続行でき、テーパ状部1aの外周面が貫通穴2aの内周壁周辺部により一層強く食い込み、テーパ状部1aと貫通穴2aの内周壁との間の摩擦接合の強度を高める。また、軸状部材1の強度(融点)が板部材2より高いので、摩擦接合工程中に軸状部材1の座屈が発生する心配もない。
【0040】
軸状部材1の前進が進行して、図3(d)に示すようにテーパ状部1aの付け根部(すなわち、最大径部)が貫通穴2aの上端部と一致する位置に到達すると、摩擦接合機の図示しない制御装置が軸状部材1の前進移動量を判定して、軸状部材1の前進を自動的に停止し、摩擦接合を完了する。
【0041】
なお、軸状部材1と板部材2との摩擦接合は、この両部材1、2の接合界面温度を低融点部材である板部材2の融点よりも若干量低い温度域となるように接合条件を設定して、接合界面で材料(主に板部材2側の材料)を塑性流動させる固相接合である。
【0042】
また、内径一定のストレート穴からなる貫通穴2a内に軸状部材1のテーパ状部1aを押し込んでいくから、特許文献1の従来技術のようにテーパ状の凹部とテーパ状の凸部とが一度に全面当たりするということがなく、テーパ状部1aと貫通穴2aの内周壁との圧接面積が徐々に増加するから、比較的小トルクにて軸状部材1を回転できる。
【0043】
第1実施形態では、テーパ状部1aの軸方向長さLを板部材2の板厚tの3倍以上の長さとし、テーパ状部1aの最大径側部位を板部材2の貫通穴2aの内周壁に摩擦接合しているので、摩擦接合の完了状態では図3(d)に示すようにテーパ状部1aの先端最小径側部位が板部材2の板面から外側へ突出する形態となる。
【0044】
第1実施形態では、板部材2の板厚t=4mmの場合に、テーパ状部1aのテーパ比S=1/20(モールステーパ)にしているが、板部材2の板厚tが4mmより小さくなる場合は、接合強度の確保のためにテーパ状部1aのテーパ比Sを1/10とか1/5のように順次大きくして、テーパ傾斜角を大きくした方がよい。
【0045】
(第2実施形態)
第2実施形態は図4に示すように、テーパ状部1aの先端最小径側部位を板部材2の貫通穴2aの内周壁に摩擦接合する。このため、第2実施形態では貫通穴2aの内径dを第1実施形態の内径(6.3mm)よりも小さい5.9mmに設定している。他の寸法設定はすべて第1実施形態と同じであり、第1実施形態と同様の接合工程にてテーパ状部1aと板部材2の貫通穴2aの内周壁との間の摩擦接合を行うことができる。
【0046】
第2実施形態によると、摩擦接合の完了状態でテーパ状部1aの先端部が板部材2の板面と同一面上に位置するから、テーパ状部1aの先端部が板部材2の板面から外側へ突出しない形態となる。
【0047】
(第3実施形態)
第1、第2実施形態では、テーパ状部1aの軸方向長さLを板部材2の板厚tの3倍以上の長さとしているが、第3実施形態では、図5(a)に示すように、テーパ状部1aの軸方向長さLを板部材2の板厚tと同じ値(4mm)としている。テーパ状部1aのテーパ比Sは第1、第2実施形態と同じ1/20(モールステーパ)であり、また、テーパ状部1aの最大径D1も第1、第2実施形態と同じ7mmにしている。
【0048】
従って、第3実施形態ではテーパ状部1aの最小径D2は6.8mmとなる。これに伴って、板部材2の貫通穴2aの内径dをテーパ状部1aの最小径D2より僅少量小さい6.6mmにしている。なお、口拡部2bの最大内径は、6.6mm+0.5mm×2=7.6mmとなる。
【0049】
図5(b)は第3実施形態による摩擦接合の完了状態を示す。第3実施形態によると、テーパ状部1aの外周面の軸方向全長を用いて貫通穴2aの内周壁に摩擦接合するとともに、摩擦接合の完了状態でテーパ状部1aの先端部が板部材2の板面と同一面上に位置するから、テーパ状部1aの先端部が板部材2の板面から外側へ突出しない形態となる。
【0050】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、以下のごとく種々変形可能である。
【0051】
(1)上述の実施形態では、板部材2を固定し、一方、軸状部材1を回転しながら板部材2に向かって前進させることにより、板部材2の貫通穴2aの内周壁面と軸状部材1のテーパ状部1aとを回転摩擦圧接させているが、これとは逆に、軸状部材1を固定し、板部材2を回転しながら軸状部材1に向かって前進させることにより、板部材2の貫通穴2aの内周壁面と軸状部材1のテーパ状部1aとを回転摩擦圧接させてもよい。
【0052】
更に、別の変形例として、軸状部材1を一定位置で回転のみさせ、板部材2を軸状部材1に向かって前進させるようにしたり、あるいは、回転しない軸状部材1を板部材2に向かって前進させ、板部材2を一定位置で回転のみさせるようにしてもよい。
【0053】
(2)上述の実施形態では、軸状部材1を構成する硬度の高い材料としてステンレス材を用い、板部材2を構成する硬度の低い材料として珪素鋼焼結材料を用いているが、軸状部材1を構成する硬度の高い材料として鉄系金属、例えば機械構造用炭素鋼S45C等を用い、板部材2を構成する硬度の低い材料として非鉄金属、例えばアルミニュウム合金(例えばA1050)等を用いてもよい。軸状部材1を構成する硬度の高い材料と板部材2を構成する硬度の低い材料との組み合わせは製品用途に応じて種々選択できる。
【0054】
(3)上述の実施形態では、板部材2をリング状のワッシャ形状に形成しているが、板部材2を矩形状とか多角形等の外形状を有するように形成してもよい。
【0055】
(4)上述の実施形態では、板厚tよりも外径寸法D3の方が十分大きい板部材2に貫通穴2aを設ける例について説明したが、このような板部材に限らず、外径寸法D3あるいは矩形状等の外形寸法よりも板厚tの方が大きいブロック状の部材に貫通穴2aを設ける場合にも本発明方法を適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施形態による軸状部材と板部材の接合前の状態を示す断面図である。
【図2】図1に示す軸状部材と板部材の具体的寸法の設定例を示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による摩擦接合方法の工程順の断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態による軸状部材と板部材の接合完了状態を示す断面図である。
【図5】(a)は本発明の第3実施形態による軸状部材と板部材の具体的寸法の設定例を示す断面図、(b)は第3実施形態による軸状部材と板部材の接合完了状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1…軸状部材、1a…テーパ状部、2…板部材(穴付き部材)、2a…貫通穴、
2b…口拡部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴付き部材(2)の穴部に軸状部材(1)の先端部を嵌合して摩擦接合する摩擦接合方法であって、
前記穴付き部材(2)には前記穴部としてストレートの貫通穴(2a)を形成しておき、
また、前記軸状部材(1)を前記穴付き部材(2)よりも硬度の高い金属材料により構成するとともに、前記軸状部材(1)の先端部にテーパ状部(1a)を形成しておき、
前記軸状部材(1)の前記テーパ状部(1a)を前記穴付き部材(2)の前記貫通穴(2a)に嵌合し圧接させた状態にて、前記軸状部材(1)と前記穴付き部材(2)とを相対的に回転させて発熱させ、前記テーパ状部(1a)を前記貫通穴(2a)の内周壁に一体に摩擦接合することを特徴とする摩擦接合方法。
【請求項2】
前記貫通穴(2a)のうち、前記テーパ状部(1a)の挿入側端部に前記貫通穴(2a)の内径を徐々に拡大する口拡部(2b)を形成することを特徴とする請求項1に記載の摩擦接合方法。
【請求項3】
前記穴付き部材(2)を固定し、一方、前記軸状部材(1)を回転しながら前記穴付き部材(2)に向かって前進させることにより、前記テーパ状部(1a)と前記貫通穴(2a)の内周壁とを回転摩擦圧接させることを特徴とする請求項1または2に記載の摩擦接合方法。
【請求項4】
前記穴付き部材(2)は磁性体金属であり、電磁機構の可動磁極部材を構成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の摩擦接合方法。
【請求項5】
前記穴付き部材は板部材(2)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の摩擦接合方法。
【請求項6】
前記テーパ状部(1a)の軸方向長さ(L)を前記板部材(2)の板厚(t)よりも大きくして、前記テーパ状部(1a)を前記貫通穴(2a)の内周壁に摩擦接合した状態にて前記テーパ状部(1a)の先端部が前記板部材(2)の面より外側へ突き出ていることを特徴とする請求項5に記載の摩擦接合方法。
【請求項7】
前記テーパ状部(1a)の軸方向長さ(L)を前記板部材(2)の板厚(t)と同等とし、前記テーパ状部(1a)を前記貫通穴(2a)の内周壁に摩擦接合した状態にて前記テーパ状部(1a)の先端部が前記板部材(2)の面と同一面上に位置することを特徴とする請求項5に記載の摩擦接合方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−35306(P2006−35306A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223523(P2004−223523)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】