説明

摩擦撹拌接合のツール挿入方法

【課題】接合工程のサイクルタイムを増加させることなくツールのピンの破損を検出することができる摩擦撹拌接合のツール挿入方法を提供する。
【解決手段】摩擦撹拌接合の挿入方法は、ショルダ38とショルダ38から突出するピン40とを有するツール34を回転させた状態で接合対象物20と離れた位置からピン40の突出方向に移動させる移動ステップ(ステップS2)と、そのツール34に生じる負荷を検出する負荷検出ステップと(ステップS3〜S5)、移動ステップで移動したツール34の移動量を測定する測定ステップ(ステップ6)と、負荷検出ステップで検出された負荷と測定ステップで測定された移動量とに基づいてピン40が破損しているか否かを判定する破損判定ステップ(ステップS7及びS12)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合対象物へのツール挿入時にツールのピンの破損を検出する摩擦撹拌接合のツール挿入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
摩擦撹拌接合(FSW:Friction Stir Welding)は、ツールのショルダの挿入量を一定にすることで安定した品質を得ることができる。そのため、ツールを回転させる主軸モータのトルク負荷(または電流値)とツール挿入量が比例することを利用し、トルク負荷が一定になるようにツール位置を移動させて所定の挿入量を得る方法が提案されている(特許文献1参照)。これにより、被接合ワークの高さにバラツキがあった場合においても、既定の挿入量を得ることができる。
【0003】
また、工作機械における加工で使用される工具の異常状態を検出する方法として、加工中の主軸及び送り軸のモータのトルク負荷(または電流値)をモニタリングし、規定の閾値と比較することで工具の異常を検出する方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
このトルク負荷から工具の異常を検出する他の方法として、精度良く工具破損を検出するために、稼働軸以外のトルクを測定し工具破損を検出する方法(特許文献3参照)、加工トルク値を併せて測定し、測定波形の演算処理を行い、工具破損を検出する方法(特許文献4参照)などもある。
【0005】
これら工具の異常検出方法とは別に、非接触式センサを利用して工具長の検出を行い、工具破損を検出する方法も示されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−80380号公報
【特許文献2】特開2001−79734号公報
【特許文献3】特開平8−174383号公報
【特許文献4】特開2003−340686号公報
【特許文献5】特開昭63−237805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示したように、通常の摩擦撹拌接合では、接合中に主軸モータの負荷が一定(例えば、負荷率が68〜71%)になるようにツールの被接合材への挿入量が制御されるので、特許文献2〜4に記載されている工具の異常状態を検出する方法を摩擦撹拌接合に適用することは困難である。また、レーザ等を利用して工具破損を検出する方法を摩擦撹拌接合に適用した場合には、実際の接合工程とは別にツールを測定する工程が必要になる。これにより、サイクルタイムの増加やセンサの追加による設備コストの増加が懸念される。
【0008】
そこで、本発明は、接合工程のサイクルタイムを増加させることなくツールのピンの破損を検出することができる摩擦撹拌接合のツール挿入方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の摩擦撹拌接合のツール挿入方法は、ショルダと前記ショルダから突出するピンとを有するツールを回転させた状態で接合対象物と離れた位置から前記ピンの突出方向に移動させる移動ステップと、前記ツールに生じる負荷を検出する負荷検出ステップと、前記移動ステップで移動した前記ツールの移動量を測定する測定ステップと、前記負荷検出ステップで検出された負荷と前記測定ステップで測定された移動量とに基づいて前記ピンが破損しているか否かを判定する破損判定ステップと、を備えることにより、上述した課題を解決する。
【0010】
接合対象物へのツール挿入開始時において、正常状態(ピンが破損していない状態)のツールと接合対象物との間の距離をX、破損状態のツールと接合対象物との間の距離をYとした場合、距離Yが距離Xよりも大きくなる。正常状態では距離Xだけ移動した時から、破損状態では距離Yだけ移動した時から、ツールに生じる負荷が増加し始める。つまり、破損状態では、距離Xだけ移動した際にツールが接合対象物に未だ接触していないので、ツールに生じる負荷は増加しない。本発明の摩擦撹拌接合のツール挿入方法によれば、ツールに生じる負荷とツールの移動量との間に上述したような関係があることを利用して、ツールに生じる負荷とツールの移動量とに基づいてピンの破損の有無を判定している。よって、接合対象物へのツールの挿入(移動)とピンの破損の判定とを同時に行うことができる。これにより、ピンの破損を判定するための工程を新たに設ける必要が無い。従って、接合工程のサイクルタイムを増加させることなくツールのピンの破損を検出することができる。
【0011】
本発明の挿入方法の一形態において、前記破損判定ステップにおいて、前記ピンが破損していないと判定された場合に、判定された時に位置する前記ピンの端面を基準に前記ツールを前記ピンの突出方向に所定量移動させる挿入ステップをさらに備えてもよい。
【0012】
通常の摩擦撹拌接合では、ツールの挿入工程において、接合対象物へのツールの挿入量はツールに生じる負荷に基づいて調整されている。この形態では、ピンが破損していないと判定された時に位置するピンの挿入量はツールに生じる負荷で知ることができる。これにより、その位置から狙い挿入位置までどの程度の距離だけツールを移動させればよいか容易に知ることができる。よって、ピンの端面を基準にツールをピンの突出方向に所定量移動させるだけで狙い挿入量を得ることができる。従って、ツールの挿入動作の制御を容易に行うことができる。
【0013】
本発明の挿入方法の一形態では、前記破損判定ステップにおいて、前記ピンが破損していると判定された場合に、前記ツールの前記ピンの突出方向の移動を停止する移動停止ステップを備えてもよい。この形態によれば、ピンが破損している場合にツールの移動が停止される。これにより、ピンが破損したツールで接合を行う懸念を排除することができる。よって、次工程への不良品流出を防止することができる。
【0014】
本発明の挿入方法の一形態では、前記破損判定ステップにおいて、前記ピンが破損していると判定された場合に、オペレータに対して所定の破損情報を出力する出力ステップを備えてもよい。この形態によれば、ピンが破損したことをオペレータに知らせることができる。これにより、ツール交換を効率的に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明の摩擦撹拌接合の挿入方法によれば、ツールに生じる負荷とツールの移動量とに基づいてピンの破損の有無を判定している。これにより、接合対象物へのツールの挿入(移動)とピンの破損の判定とを同時に行うことができる。よって、ピンの破損を判定するための工程を新たに設ける必要が無い。従って、接合工程のサイクルタイムを増加させることなくツールのピンの破損を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施の形態に係る挿入方法を適用した摩擦撹拌接合装置の要部を示す図である。
【図2】ツールの判定位置を示すための図である。
【図3】ツールの挿入完了位置を示すための図である。
【図4】第1の実施の形態に係る制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図5】第2の実施の形態に係る制御ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るツール挿入方法を摩擦撹拌接合装置に適用した実施の形態例を図1〜図5を参照しながら説明する。
【0018】
先ず、本実施の形態に係る摩擦撹拌接合装置10(接合装置と記す)は、ショルダとショルダから突出するピンとを有するツールを回転させた状態で接合対象物と離れた位置からピンの突出方向に移動させてツールを接合対象物に挿入し、挿入完了後にツールを接合対象物に押し付けた状態で接合対象物と相対的に移動させることにより、接合対象物を接合することを行う。
【0019】
そして、本形態の接合装置10は、図1に示すように、テーブル12と、装置本体14と、第1駆動モータ15と、制御系16と、表示部18とを有する。
【0020】
テーブル12の上面には接合対象物20が配置される。接合対象物20としては、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、チタニウム、チタニウム合金、銅、銅合金、鉄、鋼等が用いられる。
【0021】
装置本体14は、第1駆動モータ15によってテーブル12に対して平行移動する。装置本体14は、ヘッド部24と、ヘッド移動機構26と、第2駆動モータ28と、負荷検出部30と、測定部32とを備えている。
【0022】
ヘッド部24は、接合対象物20との間に摩擦熱を生じさせることができる。ヘッド部24には、ツール34と、主軸モータ36とが設けられている。ツール34は、主軸モータ36によって回転され、回転した状態で接合対象物20に挿入される。また、ツール34は、円柱状に形成されたショルダ38と、ショルダ38から突出するピン40とを有する。ショルダ38は、その径がピン40の径よりも大きく形成されている。ピン40はショルダ38と同軸に設けられている。但し、ピン40は、その軸線がショルダ38の軸線とオフセットしていてもよい。また、図示していないが、ピン40の外周面には、ツール34の回転方向に対して逆ネジが切り込まれている。これにより、塑性流動を接合対象物20の下方に向けて起こすことができ、接合の品質が向上する。
【0023】
ヘッド移動機構26は、第2駆動モータ28によってピン40の突出方向にヘッド部24を移動する。ヘッド移動機構26としては、例えば、送りネジ機構を用いることができる。
【0024】
負荷検出部30は、主軸モータ36に生じる負荷に対応した信号を出力する。負荷検出部30は、電流センサ42と、変換部44と、A/Dコンバータ46を備えている。電流センサ42は、主軸モータ36に流れるアナログ電流を検出する。変換部44は、電流センサ42で検出されたアナログ電流(検出電流)をアナログ電圧(検出電圧)に変換する。A/Dコンバータ46は、変換部44にて変換された検出電圧をデジタル電圧(検出データ)に変換する。通常、検出データは主軸モータ36に生じる負荷に比例する。そのため、負荷検出部30は、検出データに基づいて主軸モータ36に生じる負荷を推定することができる。
【0025】
測定部32は、第2駆動モータ28によって移動するツール34の移動量を測定する。測定部32としては、ツール34の移動量に対応した信号を出力する測定センサが用いられる。
【0026】
制御系16は、第1制御部48と、第2制御部50と、切替部52とを備えている。第1制御部48は、第2駆動モータ28を制御する。第2制御部50は、主軸モータ36と、第1駆動モータ15と、第2駆動モータ28とを制御する。また、切替部52は、第1制御部48が第2駆動モータ28を制御する第1モードと第2制御部50が第2駆動モータ28を制御する第2モードとを切り替える。
【0027】
第1制御部48には、破損判定部54と、移動制御部56と、出力部58とが設けられている。破損判定部54は、負荷検出部30からの出力信号を参照して取得される負荷(検出負荷)と測定部32からの出力信号を参照して取得される移動量(測定移動量)とに基づいてピン40が破損しているか否かを判定する。また、破損判定部54は、第1記憶部60と、負荷判定部62と、移動距離判定部64とを有している。第1記憶部60には、ピン40の破損を判定するために必要な判定用データが予め定められて記憶されている。判定用データは、移動距離データ、負荷データ等が利用される。移動距離データとしては、ツール34の初期位置(図1のツール34の位置)から判定位置(図2において実線で示されたツール34の位置)までのツール34の移動距離に対応するデータが用いられる。ツール34の初期位置は、接合対象物20から幾らか離れた位置に設定されている。ツール34の判定位置は、ピン40が正常状態(破損していない状態)の場合に、ピン40の一部が接合対象物20に挿入された状態のツール34の位置に設定されている。但し、ピン40の端面が接合対象物20の表面に接触する位置をツール34の判定位置としてもよい。負荷データとしては、ツール34の判定位置の検出負荷に対応するデータが用いられる。負荷判定部62は、検出負荷が負荷データ以上であるか否かを判定する。移動距離判定部64は、測定移動量が移動距離データ以上であるか否かを判定する。移動制御部56は、ツール34の初期位置から判定位置までのツール34の移動を制御する。出力部58は、破損判定部54の判定結果の情報を表示部18に出力する。
【0028】
第2制御部50には、挿入制御部66と、第2記憶部68と、演算部70とが設けられている。挿入制御部66は、判定位置のピン40の端面を基準にツールをピンの突出方向に所定量移動させる。所定量L1は、ピン40が正常状態の場合におけるツール34の判定位置から挿入完了位置(図2において二点鎖線で示されたツール34の位置、又は図3のツール34の位置)までのツール34の移動距離であり、演算部70で算出される(図2参照)。挿入完了位置は、ピン40の全体及びショルダ38の一部が接合対象物20に挿入された時のツール34の位置に設定されている。そのツール34の移動距離は、ツール34の判定位置における接合対象物20へのピン40の挿入量L2とピン40の長さ(ショルダ34からのピン40の突出量)とに基づいて算出される。なお、ピン40の挿入量L2は、検出負荷によって算出される。第2記憶部68は、所定量を求めるために必要なデータと、接合対象物20の材質とツール34の回転数との関係を記述したマップデータとを記憶する。
【0029】
(第1制御ルーチン)
次に、本実施の形態に係る第1の制御ルーチン(第1制御ルーチンと記す)について、図4も参照しながら説明する。
【0030】
先ず、第2制御部50は、例えばオペレータによるツール34の挿入開始の入力に基づいてツール34が回転するように主軸モータ36を制御する(図4のステップS1)。具体的には、第2制御部50は、接合対象物20の材質データに対応するツール34の回転数を第2記憶部68に記憶されているマップデータから取得し、そのツール34の回転数でツール34が回転するように主軸モータ36を制御する。
【0031】
また、移動制御部56は、ツール34が初期位置からピン40の突出方向に移動するように第2駆動モータ28を制御する(ステップS2)。
【0032】
このとき、電流センサ42は、主軸モータ36に流れるアナログ電流を検出する(ステップS3)。そして、検出電流に基づいて検出負荷Vaが求められる。
【0033】
一方、測定部32は、初期位置からのツール34の移動量Laを測定する(ステップS4)。移動量Laは、測定移動量を参照して取得される。
【0034】
負荷判定部62は、検出負荷Vaが負荷データVp以上であるか否かを判定する(ステップS5)。負荷データVpは、第1記憶部60を参照して取得される。具体的には、破損判定部54は、検出負荷Vaが負荷データVp以上であると判定(肯定判定)された場合に、ピン40が正常状態であると判定し、検出負荷Vaが負荷データVpよりも小さいと判定(否定判定)された場合に、ツール34が判定位置にまだ達していないと判定する。第1制御ルーチンは、肯定判定された時にステップS6に、否定判定された時にステップS10にそれぞれ進む。
【0035】
ステップS5において肯定判定された場合、出力部58は、ピン40が正常状態であるという情報を表示部18に出力する(ステップS6)。
【0036】
また、切替部52は、第1モードから第2モードに切り替える(ステップS7)。
【0037】
挿入制御部66は、切替部52の切り替え処理終了に基づいてツール34がピン40の突出方向に所定量移動するように第2駆動モータ28を制御する(ステップS8)。所定量は、演算部70で計算された値を参照して取得される。
【0038】
その後、第2制御部50は、装置本体14がテーブル12の上面に対して平行方向に移動するように第1駆動モータ15を制御する(ステップS9)。この処理終了後、摩擦撹拌接合の通常の接合動作が終了する。
【0039】
ステップS5において否定判定された場合、移動距離判定部64は、移動量Laが移動距離データLp以上であるか否かを判定する(ステップS10)。移動距離データLpは、第1記憶部60を参照して取得される。破損判定部54は、移動量Laが移動距離データLp以上であると判定(肯定判定)された場合に、ピン40が破損していると判定し、移動量Laが移動距離データLpよりも小さいと判定(否定判定)された場合に、ツール34が判定位置にまだ達していないと判定する。この第1制御ルーチンでは、肯定判定された時にステップS11に進み、否定判定された時にステップS5で肯定判定されるかステップS10で肯定判定されるまでステップS3〜S5までの処理を繰り返し実行する。
【0040】
ステップS10において肯定判定された場合、移動制御部56は、ツール34の移動が停止されるように第2駆動モータ28を制御する(ステップS11)。
【0041】
また、出力部58は、ピン40が破損しているという情報を表示部18に出力する(ステップS12)。
【0042】
ステップS9での処理又はステップS12での処理が終了した段階で、第1制御ルーチンは終了する。なお、第1制御ルーチンにおいて、ステップS10の処理からステップS3〜S5の処理までは所定の周期で繰り返し実行されている。
【0043】
以上の形態においては、ステップS2の処理が移動ステップに、ステップS3の処理が負荷検出ステップに、ステップS4の処理が測定ステップに、ステップS5及びステップS10の処理の組み合わせが破損判定ステップに、ステップS8の処理が挿入ステップに、ステップS11の処理が移動停止ステップに、S12の処理が出力ステップにそれぞれ相当する。
【0044】
本形態の第1制御ルーチンでは、ツール34の移動量と検出負荷とに基づいてピン40の破損の有無を判定している。これにより、ピン40の破損を判定するための工程を新たに設ける必要がない。従って、接合工程(第1制御ルーチンのステップS1〜ステップS9までの処理)のサイクルタイムを増加させることなくツール34のピン40の破損を検出することができる。
【0045】
また、第1制御ルーチンでは、ピン40が正常状態である場合に、演算部70で計算された所定量に基づいてツール34をピン40の突出方向に所定量移動させている。これにより、検出負荷に基づいて判定位置から挿入完了位置までツール34を挿入させる場合よりも簡単な制御でツール34の狙い挿入量を得ることができる。さらに、ピン40が破損している場合にツール34の移動を停止するので、ピン40が破損したツール34で接合を行う懸念を排除することができる。これにより、次工程への不良品流出を防止することができる。また、第1制御ルーチンでは、破損情報を表示部18に出力しているので、ピン40が破損したことをオペレータに知らせてツール交換を効率的に行うことができる。
【0046】
(第2制御ルーチン)
次に、本実施の形態に係る第2の制御ルーチン(以下、第2制御ルーチンと記す)について図5を参照しながら説明する。なお、第1制御ルーチンと重複する第2制御ルーチンのステップに係る説明は省略する。また、本形態では、第2制御ルーチンのステップS101〜S112が第1制御ルーチンのステップS1〜S12にそれぞれ対応している。
【0047】
第2制御ルーチンでは、ステップS104とステップS105との間にステップS110が設けられている。そのため、第2制御ルーチンは、ステップS105において否定判定された時にステップS110に進む。これにより、ツール34が判定位置に達するまではステップS105の処理が行われない。つまり、ツール34が判定位置に移動するまで検出負荷と負荷データとを比較する必要がない。従って、ピン40の破損状態の判定をシンプルな制御で行うことができる。
【0048】
本発明は、上記の実施の形態に限定されず、種々の形態で実施することができる。例えば、出力部は、破損判定部にてピンが破損されていると判定された場合のみ表示部に破損情報を出力してもよい。これにより、第1制御ルーチンにおいてはステップS6を、第2制御ルーチンにおいてはステップS106をそれぞれ省略することができる。また、移動制御部は、破損判定部にてピンが破損さていると判定された場合に、ピンの突出方向へのツールの移動を停止しないように設定してもよい。これにより、第1制御ルーチンにおいてはステップS11を第2制御ルーチンにおいてはステップS111を省略することができる。また、これらステップを省略してもツールの破損情報はオペレータに報知される。従って、その報知された破損情報に基づいてオペレータが手動でツールの移動を停止すれば、次工程への不良品流出を防止することもできる。また、上述した実施の形態では、装置本体の平行移動を第1駆動モータで、ヘッド部の移動を第2駆動モータで行っているが、装置本体及びヘッド部を自走式に設定してもよい。
【符号の説明】
【0049】
10…摩擦撹拌接合装置
14…装置本体
18…表示部
20…接合対象物
30…負荷検出部
32…測定部
34…ツール
38…ショルダ
40…ピン
48…第1制御部
50…第2制御部
54…破損判定部
56…移動制御部
58…出力部
66…挿入制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショルダと前記ショルダから突出するピンとを有するツールを回転させた状態で接合対象物と離れた位置から前記ピンの突出方向に移動させる移動ステップと、
前記ツールに生じる負荷を検出する負荷検出ステップと、
前記移動ステップで移動した前記ツールの移動量を測定する測定ステップと、
前記負荷検出ステップで検出された負荷と前記測定ステップで測定された移動量とに基づいて前記ピンが破損しているか否かを判定する破損判定ステップと、を備えることを特徴とする摩擦撹拌接合のツール挿入方法。
【請求項2】
請求項1記載の摩擦撹拌接合のツール挿入方法において、
前記破損判定ステップにおいて、前記ピンが破損していないと判定された場合に、判定された時に位置する前記ピンの端面を基準に前記ツールを前記ピンの突出方向に所定量移動させる挿入ステップをさらに備えることを特徴とする摩擦撹拌接合のツール挿入方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の摩擦撹拌接合のツール挿入方法において、
前記破損判定ステップにおいて、前記ピンが破損していると判定された場合に、前記ツールの前記ピンの突出方向の移動を停止する移動停止ステップを備えることを特徴とする摩擦撹拌接合のツール挿入方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の摩擦撹拌接合のツール挿入方法において、
前記破損判定ステップにおいて、前記ピンが破損していると判定された場合に、オペレータに対して所定の破損情報を出力する出力ステップを備えることを特徴とする摩耗撹拌接合のツール挿入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−188367(P2010−188367A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33785(P2009−33785)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】