説明

摩擦攪拌形成工具で所望の非平面の構成に形成する方法、ならびに工作物を所望の非平面の構成に形成するための方法および装置

【課題】 工作物を所望の非平面の構成に形成するための装置および方法が提供される。
【解決手段】 肩およびピンを有する少なくとも1つの摩擦攪拌形成工具を用いて、工作
物を所望の構成に働きかけて、摩擦攪拌によって工作物を形成する。形成工具は、工作物
をダイの輪郭面または構造部材とは反対側の工具からの肩に対して働きかけることができ
る。したがって、形成工具は工作物の一部を可塑化し、工作物を所望の構成に働きかける
。さらに、摩擦攪拌処理によって工作物の材料特性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1)発明の分野
本発明は、構造部材の形成に関し、より特定的には摩擦攪拌処理を伴う構造部材の形成
に関する。
【背景技術】
【0002】
2)関連技術の説明
構造部材を所望の形状に形成することは、鍛造、スタンピング、曲げ加工、機械加工等
によって達成することができる。たとえば、鋼、アルミニウム、チタン等の金属もしくは
その合金のフラットシートを含むプリホームまたはブランクを、鍛造において加熱し、か
つ槌で叩いて部材の所望の形状にすることができる。代わりに、機械または液圧プレスを
用いて、たとえば部材の所望の輪郭に対応する形成表面を規定する2つの向かい合ったダ
イの間で、構造部材を所望の形状に打ち抜くまたは鍛造することができる。このような形
成方法は、典型的に、溶解材料を所望の形状に鋳造することよりも速く、安価であり、部
材に曲面、角等の複雑な形状を与えることができる。しかしながら、プリホームの特定の
材料に依存して、過度の形成、たとえば鋭角の形成または他の重大な変形から、裂け目ま
たは弱体化部分が生じるかもしれない。したがって、特定の複雑な構造部材の形成には、
多数の例示の部材が形成され、次に溶接または他の接合方法によって接合されることが必
要とされるかもしれない。さらに、後に続く材料処理、たとえば溶体化熱処理、エージン
グおよび急冷等の熱処理が、形成された部材の所望の特性を達成するのに必要とされるか
もしれない。このような追加の動作によって、追加の製造時間および構造部材の費用がか
かる。
【0003】
構造部材は、所望の形状に形成される前に処理することもできる。たとえば、1つの提
案された方法に従うと、プリホームを平面構成において支持し、摩擦攪拌溶接工具をプリ
ホームに挿入して、回転して、プリホームの材料を可塑化する。摩擦攪拌溶接工具を次に
プリホームの表面にわたって連続的に動かして、プリホームの一部が摩擦攪拌処理される
ようにする。次にプリホームを、たとえば鍛造、スタンピング、曲げ加工等によって部材
の所望の形状に形成する。このような摩擦攪拌処理は、プリホームの粒状構造を精製し、
構造部材の材料特性を向上させる。しかしながら、このプロセスも時間がかかり、構造部
材の費用がさらにかかる。
【0004】
したがって、構造部材を形成するための改善された装置および処理が必要である。この
プロセスは、複雑な幾何学的構成を有するものを含む構造部材のさまざまな構成を形成す
ることができなければならない。さらに、プロセスは所望の材料特性を有する構造部材を
もたらすべきである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の簡単な概要
本発明は、少なくとも1つの摩擦攪拌形成工具で工作物を所望の非平面の構成に形成す
るための装置および方法を提供する。形成工具は、工作物の一部を可塑化し、工作物を所
望の構成にすることによって、工作物の粒状構造を精製する。したがって、工作物を複雑
な形状を含むいかなる所望の構成に形成することもできる。さらに、工作物の材料特性を
改善することができる。
【0006】
本発明の一実施例に従うと、装置は、工作物の所望の構成に対応するドーム形状といっ
た輪郭面を規定するダイを含む。ダイは、工作物上に形成される特徴に対応する詳細な特
徴を規定することもできる。肩およびそこから延在する回転可能なピンを含む摩擦攪拌形
成工具は、肩およびピンをダイの輪郭面の方へ働きかけるように構成される。したがって
、肩は、工作物をダイに対してかつ所望の構成に働きかけて、ピンは、工作物を少なくと
も部分的に貫通し、回転して、精製された粒状構造によって規定された摩擦攪拌形状領域
を形成する。装置は、たとえば少なくとも2つの線状の方向において、および少なくとも
2つの回転軸のまわりで、ダイの輪郭面に対応する予め規定された経路に沿って摩擦攪拌
形成工具を調整するためのアクチュエータも含む。このダイを形成工具に対して回転させ
ることもできる。
【0007】
本発明の別の実施例に従うと、この装置は、向かい合った構成における第1のおよび第
2の摩擦攪拌形成工具を含んで、肩が、その間の工作物を受けるように概ね内部に向けら
れるようにする。形成工具は、1つ以上のアクチュエータによって工作物の向かい合った
側に対して内部方向に調整されて、ピンが少なくとも部分的に工作物を貫通するようにす
る。ピンは回転して、工作物に摩擦攪拌形成領域を形成し、アクチュエータは工作物の所
望の非平面の構成に対応する予め規定された経路に沿って、摩擦攪拌形成工具を調整して
、肩が工作物を所望の構成に働きかけるようにする。
【0008】
本発明はさらに、工作物を形成するための方法を提供する。工作物は、ダイに対して少
なくとも部分的に支持され、形成工具の肩は工作物に対して働きかけられる。ピンは少な
くとも部分的に工作物を貫通し、工作物は輪郭面に対して曲げられる。工具のピンは工作
物において回転されて、工作物の一部を可塑化することにより、精製された粒状構造を有
する摩擦攪拌形成領域を形成する。工具は、ダイの輪郭面に対応する予め規定された経路
に調整されて、肩が工作物を所望の非平面の構成に働きかけるようにする。工作物の表面
全体を可塑化することにより、表面にわたる工作物の粒状構造を精製することができる。
さらに、2つ以上の構造部材を与え、接合して、工作物を形成することができる。
【0009】
本発明の別の実施例に従った方法は、向かい合った構成において構成された第1のおよ
び第2の摩擦攪拌形成工具によって工作物を形成するステップを含んで、肩がその間で支
持される工作物の概ね内部の方に向けられるようにする。第1のおよび第2の工具の肩は
、工作物のそれぞれの側に対して働きかけられ、第1のおよび第2の工具のピンはそれぞ
れの側に少なくとも部分的に貫通する。ピンを回転して工作物の向かいあった部分を可塑
化することにより、工作物における規定された粒状構造を有する向かい合った摩擦攪拌形
成領域を形成する。この工具はまた、対応する予め規定された経路において調整されて、
肩が工作物を所望の非平面の構造に働きかけるようにする。
【0010】
このようにして本発明を一般的な用語で説明してきたが、ここで添付の図面を参照する
。これらの図面は必ずしも同じ割合で描かれていない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
発明の詳細な説明
ここで本発明が添付の図面を参照して以下でより完全に説明されるが、本発明のすべて
ではなく一部が示される。実際、本発明は多くの異なる形態で実施することができ、本明
細書で述べられた実施例に限定されるものとして解釈されるべきではなく、これらの実施
例は、この開示が適用可能な法的要件を満たすために与えられている。同じ数字は本明細
書を通して同じ要素を示している。
【0012】
ここで図面、特に図1を参照すると、工作物100を所望の構成に形成するための装置
10が示されている。工作物100は、鋼、アルミニウム、チタン等の金属またはその合
金、重合体、および摩擦攪拌処理に適合する他の材料で形成することができる。工作物1
00を、構造パネル、ブラケット、管、キャップ等を含むがそれらに限定されないさまざ
まな適用例のために用いることができる。たとえば、ドーム形状の工作物100および管
状の工作物110(図3)を形成、接合して、閉じられたまたは部分的に閉じられた容器
を作成することができる。工作物100は、航空宇宙産業、航空産業、水産業および自動
車産業の車両のための、または圧力容器、武器等の他の構造のための構造部材として用い
ることができる。
【0013】
装置10は、工作物100の所望の非平面の構成に対応する輪郭面22を規定するダイ
20を含む。図1に示されたダイ20の輪郭面22はドーム形状であるが、輪郭面22は
代わりに複雑な曲面、角等を含む他の形状を規定することができる。好ましくは、輪郭面
22は非平面である、すなわち表面22は1つ以上の曲面、角または他の非平面の特徴を
規定する。たとえば、非平面の表面は、ある角度で配置された2つ以上の平面部分によっ
て規定することができる。非平面の表面は、平面のダイ上にねじ山、チャネルまたは他の
特徴を配置することによって形成することもできる。ダイ20は、ベース30またはフレ
ームに固定され、このベースまたはフレームはダイ20を回転させるかそうでなければ動
かすように構成することができる。ダイ20は工作物100を部分的に受けて、たとえば
工作物100が輪郭面22の一部と接触するようにする。ボルト24または他の接続道具
を用いて、工作物100をダイ20の輪郭面22に固定することができる。
【0014】
装置10はまた、肩42およびピン44を有する摩擦攪拌形成工具40を含む。アクチ
ュエータ50は、工具40を回転させ、かつ工具40をダイ20および工作物100に対
して調整するように構成される。したがって、アクチュエータ50は、回転工具40を工
作物100の方に進めて、工作物100の第1の側102を少なくとも部分的にピン44
で貫通させることができる。アクチュエータ50はまた、予め定められた経路に沿って工
具40を調整するように構成されて、回転ピン44が工作物100を通って動くようにす
る。たとえば、アクチュエータ50は、アクチュエータ50を支持するおよび/または移
動させるリンク機構またはフレーム52に接続することができる。特に、アクチュエータ
50および/またはフレーム52は、コンピュータ数値制御(CNC)装置とすることが
でき、これは機械ヘッドを制御するために通常用いられるようにプログラムすることがで
きる。
【0015】
回転ピン44が工作物100を通って動くと、ピン44は工作物100の領域を摩擦に
よって加熱し可塑化する。可塑化された領域は次に冷めて固まり、図2に示したような精
製された粒状構造を有する摩擦攪拌形成領域114を形成する。したがって、本発明の摩
擦攪拌処理動作からもたらされる工作物100の材料特性への影響は、トマス(Thomas)
等に付与され、その全体が引用により援用される米国特許第5,460,317号に記載
された摩擦攪拌溶接からもたらされるものと類似しているまたは同じである。一般的に摩
擦攪拌形成からもたらされる工作物100の精製された粒状構造の結果として、工作物1
00の材料特性は、たとえば工作物100の強さおよび耐食性を増大させることによって
向上させることができる。
【0016】
摩擦攪拌形成工具40および/またはダイ20は、工具40を工作物100を通って動
かすように調整することができる。たとえば、図1に示されるように、ダイ20は回転機
器32を介してベース30に接続され、この回転機器は、手動またはアクチュエータ(図
示せず)のいずれかによって、ダイ20および工作物100をベース30に対して回転さ
せるように構成される。さらに、摩擦攪拌形成工具40は、図2に示されるように、ダイ
20の輪郭に対応するアークにわたってアクチュエータ50によって調整されるように構
成される。すなわち、工具40は曲面の経路を進み、ピン44の長手方向に垂直な軸のま
わりで回転して、ピン44が工作物100を進むようにする。したがって、摩擦攪拌形成
工具40およびダイ20は、ピン44が工作物100の表面102全体を進むように調整
することができる。たとえば、摩擦攪拌形成工具40は、ダイ20が回転している間に工
作物100の中心から工作物100の縁部に向かって放射状に外部に調整することにより
、ピン44を工作物100にわたってらせん状の経路を通して調整することができる。
【0017】
他の実施例において、摩擦攪拌形成工具40およびダイ20は、互いに対して他の態様
で動かすことができる。たとえば、形成工具40を工作物100の表面102を通って動
かす一方で、ダイ20を静止して保持することができ、および形成工具40は多数の軸の
まわりで回転することができるため、肩42をダイ20の輪郭面22および/または工作
物100の表面102に実質的に平行に保つことができる。どんな場合でも、ピン44は
肩42に垂直とすることができ、ピン44は肩42から反作用を受けた状態で工作物10
0の表面に実質的に垂直に保たれる。すなわちピン44がピン44と同一線上の点で輪郭
面22に接する平面と垂直である。
【0018】
ピン44は、工作物100の厚さ全体を通して延在するのに十分な長さとすることがで
きる。代わりに、ピン44は工作物100の厚さよりも短い、たとえば工作物100の厚
さの約半分とすることができる。さらに、ピン44は肩42に対して調整することができ
、ピン44は図2に示されるように延長され、図1に示されるように引込めることができ
る。したがって、工具40を用いて異なる厚さの工作物100を処理することができる。
さらに、ピン44は工作物100の処理の際に調整することができ、ピン44は異なる深
さで、工作物100の異なる部分に貫通することができる。たとえば、工作物100の厚
さが均一でない場合、ピン44は工作物100の厚い部分を処理する際に延長すことがで
き、工作物100の薄い部分を処理する際に引込めることができる。ピン44は、各々の
処理動作の開始の際に肩42から工作物100へと延在することができ、および/または
各々の処理動作が終わると肩42から、したがって工作物100から引込めることもでき
る。
【0019】
ピン44が工作物100に沿って進むと、肩42は工作物100に対して働きかけ、
工作物100を輪郭面22の方におよび所望の構成または工作物100に働きかける。し
たがって、工作物100は平坦な構成で始めることができ、図2に示されるように、曲げ
るかまたはそうでなければ所望の形状に形成することができる。さらに、工作物100の
厚さは図2では均一のものとして示されているが、肩42は工作物100の処理された部
分から可塑化された材料に働きかけることによって、不均一な工作物100を形成するか
、または全体を通してより薄い均一な工作物100を形成することができる。予め定めら
れた経路は、工作物100の表面102全体を通過することができる、すなわち実質的に
表面102全体の粒状構造が精製される。代わりに、ピン44は、たとえば徐々に間隔を
あけた位置または工作物100において粒状精製が望まれる特定の部分における工作物1
00の選択部分のみを通過することができる。さらに、溝、ねじ山、開口、ノブ等の詳細
の特徴26を輪郭面22に与えることができ、工作物100がダイ20に対して形成され
ると、対応する詳細が工作物100に形成される。図1および2に示された詳細な特徴2
6は、ダイ20のまわりで円周状に延在する溝であり、これは対応するねじ山が工作物1
00において形成されるようにする。
【0020】
本発明に従った形成装置10aを用いて、工作物100を別の部材110に接合するこ
ともできる。たとえば、図3に示されるように、ダイ20は図1に示されたものと同様の
ドーム状の輪郭を規定する。しかしながら、延長部28がベース30およびダイ20の間
に配置されて、管等の追加の部材110を工作物100の近傍に配置することができる。
管110は支持部材34によって支持されて、工作物100が所望の構成に形成されると
きに管110が工作物100に隣接して位置付けられて、界面112がその間で規定され
るようにする。管110を支持部材34に固定するためにクランプ部材36を設けること
もできる。さらに、管110およびダイ20は回転機器32によって支持され、摩擦攪拌
形成工具40に対して回転することができる。図3に示されるように、摩擦攪拌形成工具
40のピン44は、工作物100および管110の界面112で挿入することができ、工
作物100および管110は回転機器32によって回転することができ、ピン44が界面
112によって規定された円周経路を通して調整される。摩擦攪拌形成工具40は、界面
112で管110および工作物110の材料を摩擦によって加熱し、可塑化することによ
って、界面112で摩擦攪拌溶接継手を形成する。したがって、工作物100が形成され
た後で、工作物100は追加の部材110に接合することができ、接合は形成動作と同じ
装置10aで行なうことができる。
【0021】
図4および図5は、本発明の別の形成装置10bを示しており、工作物100は2つの
向かい合った摩擦攪拌形成工具40a,40bによって形成される。工具40a,40b
の各々は、肩42a,42bおよびそこから延在するピン44a,44bを含む上述の工
具40と同様のものとすることができる。工具40a,40bは、工作物100と反対側
に位置付けられて、肩42a,42bは工作物100の反対側102,104に対して内
部に向けられる。工作物100は、ベースまたはフレーム39に固定された、クランプ部
材38または他の支持装置によって支持される。たとえば、クランプ38は工作物100
を適所に固定する機械または液圧クランプとすることができる。リンク機構またはフレー
ムに接続されたアクチュエータ50a,50bは、工具40a,40bを回転させ、予め
定められた経路に沿って工具40a,40bを調整する。したがって、アクチュエータ5
0a,50bはピン44a,44bを回転させ、工具40a,40bを内部に働きかける
。ピン44a,44bは、工作物100の反対側102,104を少なくとも部分的に貫
通し、アクチュエータ50a,50bは予め定められた経路に沿って工具40a,40b
を動かして、工作物100の領域が可塑化され、工具40a,40bの肩42a,42b
が工作物100を所望の構成に働きかけるようにする。たとえば、アクチュエータ50a
,50bは、肩42a,42bを平行な構成に維持する一方で、工作物100の長さに沿
って移動することができる。アクチュエータ50a,50bは、たとえば図4および図5
に示された位置の間で、ピン44a,44bの長手軸の垂直な軸のまわりで回転すること
ができ、それにより工作物100を曲面の構成に働きかけることもできる。三次元の曲面
の表面を含むより複雑な形状を、たとえば2つ以上の線状の方向においてかつ2つ以上の
回転軸のまわりで摩擦攪拌形成工具40a,40bのうちの1つまたは双方を調整するこ
とによって、この態様で形成することもできる。形成された構成において、工作物100
は精製された粒状構造によって規定される摩擦攪拌形成領域114を規定する。
【0022】
図4に示されるように、摩擦攪拌形成工具40a,40bのピン44a,44bの長さ
は、工作物100の厚さの約半分であるかそれ未満であり、ピン44a,44bが、向か
い合った側から工作物100に働きかけられたときに互いに接触しないようにする。各々
のピン44a,44bはそれぞれの肩42a,42bに対して調整することもでき、ピン
44a,44bは上述のように延長するかまたはそこから引抜くことができる。さらに、
ピン44a,44bはわずかに異なる位置で工作物100に挿入することができ、ピン4
4a,44bのうちの一方が他方のピン44a,44bを予め定められた経路に沿って「
導く」ようにする。いずれの場合にせよ、摩擦攪拌形成領域114は工作物の厚さ全体を
通して延在することができる。工具40a,40bを用いて、工作物100全体または工
作物100の選択部分のみが処理されるまで、工作物100の連続的な部分を可塑化する
ことができる。また、単一の工作物100が図4および5に示されているが、工作物10
0を多数の部材で形成することができ、かつ摩擦攪拌形成工具40a,40bは摩擦攪拌
溶接によって部材を接合することができることが理解される。
【0023】
図6に示されるように、形成装置10cは単一の自己到達摩擦攪拌形成工具40cによ
って規定される2つの向かい合った肩42c,42dを含むことができる。肩42c,4
2dは、工作物100を通して延在するピン44cによって接続されて、第1の肩42c
が工作物100の第1の側102に向けられ、第2の肩42dが工作物100の第2の側
104に向けられるようにする。上述のアクチュエータ50,50a,50bと同様のア
クチュエータ50cを摩擦攪拌形成工具40cに接続し、工具40cを工作物100を通
して調整するように構成する。処理動作の開始において、ピン44cは工作物100の端
部から工作物100へ導入することができる、またピン44cは肩42c,42dのうち
の1つまたは双方から取り外すことができ、ピン44cを示されるように工作物100の
穴を通って配置し、肩42c,42dとともに組立てることができる。アクチュエータ5
0cは次に工具40cを非平面の経路に沿って工作物100を通って調整して、回転ピン
44cが工作物100の一部を可塑化して、肩42c,42dが工作物100を所望の非
平面の構成に働きかけるようにすることができる。
【0024】
先述の処理のいずれかによって形成される摩擦攪拌形成の後で、工作物100およびそ
のいかなる追加の部材110も装置10,10a,10b,10cにおいて他の態様で処
理することができる。たとえば、工作物100は機械ヘッド(図示せず)によって予め定
められた許容誤差まで機械加工することができ、この機械ヘッドはアクチュエータ50,
50a,50b,50c上の摩擦攪拌形成工具40,40a,40b,40cに取って代
わることができ、また別々に設けることもできる。さらに、熱処理は、工作物100を予
め定められたスケジュールに従った1つ以上の予め定められた温度まで加熱、冷却するこ
とによって行なうことができる。工作物100が装置10,10a,10b,10cで固
定される限り熱処理を行なうことができ、または工作物100を装置10,10a,10
b,10cから取り外して、異なる装置で熱処理することができる。
【0025】
本明細書で述べられた本発明の多くの修正および他の実施例が、先述の説明および関連
の図面において提示された教示の恩恵を有する、これらの発明が関係する当業者に思い浮
かぶであろう。たとえば、形成工具40,40a,40b,40cの肩42,42a,4
2b,42c,42dを用いて、工作物100を先述の例における所望の構成に働きかけ
る一方で、工作物100を曲げることができる、すなわち所望の形状に少なくとも部分的
に弾性的に曲げることができ、形成工具40,40a,40b,40cが摩擦攪拌形成に
よって工作物100を処理する間にその形状に抑制して、工作物100が解放された後で
所望の形状を維持することができることも認識される。抑制は、機械もしくは液圧クラン
プまたは他の抑制装置を用いて達成することができる。したがって、本発明は、開示され
た特定の実施例に限定されるのではなく、修正および他の実施例が別掲の特許請求の範囲
内に含まれることが意図されることを理解すべきである。本明細書において特定の用語が
用いられているが、これらは一般的かつ説明的な意味で用いられたにすぎず、制限を目的
としたものではない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例に従った工作物を形成するための装置を示す斜視図である 。
【図2】部分的に形成された工作物とともに示された、図1の装置を示す断面図であ る。
【図3】本発明の別の実施例に従った工作物を形成するための装置を示す断面図であ る。
【図4】本発明のさらに別の実施例に従った工作物を形成するための装置を示す立面 図である。
【図5】部分的に形成された工作物とともに示された、図4の装置を示す立面図であ る。
【図6】本発明のさらに別の実施例に従った工作物を形成するための装置を示す立面 図である。
【符号の説明】
【0027】
10 装置、20 ダイ、30 ベース、40 摩擦攪拌形成工具、42 肩、44
ピン、50 アクチュエータ、100 工作物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肩およびピンを有する摩擦攪拌形成工具で、工作物を所望の非平面の構成に形成する方法であって、
工作物の所望の構成に対応する、非平面の輪郭面を有するダイを準備するステップと、
工作物を少なくとも部分的にダイで支持するステップと、
前記形成工具の肩を工作物に押し付け、当該工具のピンを、工作物の少なくとも異なる部分に、異なる深さに挿入し、工作物内で回転させて、工作物の一部を可塑化するステップと、
前記工具をダイの輪郭面に対応する、予め規定された経路に従って移動させて、工作物が所望の構成となるように、かつ工作物に精製された粒状構造を有する摩擦攪拌形成領域が形成されるステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記工作物が、鋼、アルミニウム、チタンおよびその合金からなるグループの材料のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ダイが、ドーム形状の輪郭面を有し、前記工具をドーム形状の輪郭面に沿って移動させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記工作物の一部を可塑化するステップは、前記ピンが工作物の厚さの約半分を可塑化するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記工作物に摩擦攪拌形成領域が形成されるステップは、工作物の表面全体を可塑化することにより、工作物の全面に粒状構造を精製するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記移動させるステップは、肩を前記ダイの輪郭面に概ね平行に移動させるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ダイの輪郭面に、少なくとも1つの凸部又は凹部を形成して、対応する凸部又は凹部が工作物に形成されるステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記支持するステップは、少なくとも2つの構造部材を工作物として準備するステップを含み、構造部材は前記移動するステップの際に接合される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記移動させるステップとともに工作物を回転させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
ピンの肩に対する位置を調整するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
第1のおよび第2の向かい合った側を有する工作物を所望の非平面の構成に形成する方法であって、
少なくとも1つの摩擦攪拌形成工具を準備するステップを含み、少なくとも1つの工具は、第1のおよび第2の肩を有し、肩は、向かい合った位置に構成され、その間で少なくとも部分的に延在する少なくとも1つのピンとともに概ね内側に向けられ、前記方法はさらに、
工作物を第1のおよび第2の肩の間で支持して、第1の肩が工作物の第1の側に向けられ、かつ第2の肩が工作物の第2の側に向けられるようにするステップと、
第1の肩を工作物の第1の側に対し押し付け、第2の肩を工作物の第2の側に対し押し付けるステップと、
前記押し付けるステップの際に、少なくとも1つのピンを、少なくとも部分的に工作物内で回転させて、工作物の一部を可塑化するステップと、
前記押し付けるステップの際に、少なくとも1つの工具を、少なくとも部分的に予め規定された経路に従って移動して、肩が工作物を所望の非平面の構成に押し付け、かつ少なくとも1つのピンが工作物に精製された粒状構造を有する摩擦攪拌形成領域を形成するステップと、を含む方法。
【請求項12】
前記準備するステップは、第1のおよび第2の摩擦攪拌形成工具を準備するステップを含み、第1の工具は第1の肩を有し、第2の工具は第2の肩を有し、各々の工具は肩から延在する少なくとも1つのピンのうちの1つを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記押し付けるステップは、第1のおよび第2の工具のピンを、工作物の厚さの約半分の深さまで挿入して、工作物の第1の側に形成された摩擦攪拌形成領域が、工作物の第2の側に形成された摩擦攪拌形成領域にまで及ぶようにするステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記準備するステップは、肩の間に延在するピンによって接続された第1のおよび第2の肩を準備するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
鋼、アルミニウム、チタンおよびその合金からなるグループの材料のうちの少なくとも1つで形成される工作物を準備するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記移動するステップは、工具が曲面の経路を移動して、肩が工作物を曲面の構成に押し付けるステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記移動するステップは、工作物の第1のおよび第2の側の全体を連続して可塑化するステップを含み、これにより第1の側および第2の側の全体にわたって工作物の粒状構造を精製する、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記移動するステップは、肩を概ね平行に維持するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記移動するステップは、少なくとも1つのピンを、肩に対して軸方向に移動するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記支持するステップは、少なくとも2つの構造部材を工作物として準備するステップを含み、構造部材は前記移動ステップの際に接合される、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
工作物を所望の非平面の構成に形成するための装置であって、
工作物の所望の非平面の構成に対応する輪郭面を有するダイと、
肩、および肩から延在する回転可能なピンを有する摩擦攪拌形成工具とを含み、工具は、肩およびピンをダイの輪郭面に向けて押し付けるように構成されて、肩は工作物をダイに対して押し付け、かつピンを工作物の少なくとも異なる部分に、異なる深さに挿入し、回転させて、精製された粒状構造を有する摩擦攪拌形成領域を形成し、前記装置はさらに、
摩擦攪拌形成工具を移動させるためのアクチュエータを含み、アクチュエータは工具をダイの輪郭面に対応する予め規定された摩擦経路に従って移動させ、肩が工作物を所望の非平面の構成に押し付けるようにする、装置。
【請求項22】
ダイの輪郭面はドームを構成し、アクチュエータはダイによって構成されたドームに沿って工具を移動するように形成される、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
ピンの長さは工作物の厚さの約半分である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
アクチュエータは、摩擦攪拌形成工具を少なくとも2つの線状の方向に移動および少なくとも2つの回転軸のまわりを回転するように構成される、請求項21に記載の装置。
【請求項25】
ダイの輪郭面は少なくとも1つの凸部又は凹部を有する、請求項21に記載の装置。
【請求項26】
ダイは、摩擦攪拌形成工具に対して回転するように構成される、請求項21に記載の装置。
【請求項27】
工作物を所望の非平面の構成に形成するための装置であって、
少なくとも1つの摩擦攪拌工具を含み、前記摩擦攪拌工具は、第1のおよび第2の向かい合った肩を有し、少なくとも1つのピンは、肩の間に延在し、肩はその間に工作物を受けるように概ね内部に向けられ、前記装置はさらに、
摩擦攪拌形成工具を移動させるための少なくとも1つのアクチュエータを含み、アクチュエータは、肩が、工作物の向かい合った側に対して押し付けられるように、肩が内部の方向に向かうように構成されて、少なくとも一つのピンを、少なくとも部分的に工作物内で回転させて、工作物の一部を可塑化し、工作物に、精製された粒状構造を有する摩擦攪拌形成領域を形成し、
アクチュエータは、摩擦攪拌形成工具を工作物の所望の非平面の構成に対応する、予め規定された経路に従って移動するように構成されて、肩が工作物を所望の非平面の構成に押し付けるようにする、装置。
【請求項28】
ピンは第1の肩から第2の肩の間に延在する、請求項27に記載の装置。
【請求項29】
形成工具は、第1のおよび第2のピンを有し、第1のピンは第1の肩から延在し、第2のピンは第2の肩から延在する、請求項27に記載の装置。
【請求項30】
少なくとも1つのアクチュエータは、摩擦攪拌形成工具を少なくとも2つの線状の方向に移動および少なくとも2つの回転軸のまわりを回転するように構成される、請求項27に記載の装置。
【請求項31】
第1のおよび第2の摩擦攪拌形成機械の肩は、概ね平行に構成される、請求項27に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−10142(P2013−10142A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−199036(P2012−199036)
【出願日】平成24年9月11日(2012.9.11)
【分割の表示】特願2004−234543(P2004−234543)の分割
【原出願日】平成16年8月11日(2004.8.11)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】