説明

摩擦肉盛方法

【課題】肉盛部材の過度な突出を抑えて該肉盛部材の撓みを抑制しつつ、続けて多量の肉盛加工を行うことができる摩擦肉盛方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る摩擦肉盛方法は、略円柱状の肉盛部材bの外周面を把持手段21により把持し、この把持手段21を肉盛部材bの軸芯周りに回転させながら該肉盛部材bの軸方向の一端を母材W表面に押圧し、摩擦熱により肉盛部材bを軟化させて母材W上に肉盛加工を行う摩擦肉盛方法であって、把持手段21から突出する肉盛部材bの寸法Lが所定の範囲に収まるように、肉盛部材bを断続的に押し出しながら肉盛加工を行うものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、母材表面に肉盛部材の肉盛溶接を行う摩擦肉盛方法に係り、特に、摩擦肉盛装置の把持手段から突出する肉盛部材の寸法が所定の寸法範囲となるように、肉盛部材を断続的に押し出しながら肉盛加工を行うものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、摩擦肉盛装置を用いて母材表面に肉盛部材を肉盛加工する摩擦肉盛方法にあっては、例えば、略円柱状の肉盛部材の端部をチャック等の把持手段により把持し、この把持手段を肉盛部材の軸芯周りに回転させながら該肉盛部材の軸方向の一端を母材表面に押圧し、摩擦熱により肉盛部材を軟化させて母材上に肉盛加工を行うものであった(例えば、特許文献1の段落番号[0032]、[0049]、図2の符号7、図3の符号14参照)。
【0003】
また、近年、摩擦攪拌接合(例えば、非特許文献1参照)は軽金属の接合に対して適用され注目されているが、鋼のような高融点材料の適用に対しては、摩擦攪拌接合のツールと称される回転工具の耐熱性の問題があり、多くの材料開発が行われている。もし、高融点材料に対して摩擦肉盛方法が適用できるならば、被接合部材に等価あるいは類似の特性の肉盛材を回転工具として用い、この材料を消耗、肉盛りするのでツール材料の開発を行う必要がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−62564号公報
【0005】
【非特許文献1】『摩擦攪拌技術(FSW)とは』、[2009年2月23日閲覧]、インターネットURL<http//www.m−osaka.com/fswproject/fsw/index.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような摩擦肉盛方法にあっては、肉盛部材の端部定位置を摩擦肉盛装置のチャック(把持手段)に常時把持して固定しながら行うものであり、把持した肉盛部材を単に母材方向に向かって一方的に押圧するもので、肉盛部材の把持手段からの突出寸法が短いと該肉盛部材の撓みは抑制されて大きな押圧力を掛けて迅速な肉盛加工ができるものの、突出寸法が短い分、肉盛部材を早く使い切ってしまい、頻繁に肉盛部材の交換をしなければならず手間がかかり、しかも、肉盛部材の交換の際に肉盛り作業を一旦中断するため、形成された肉盛り部が不連続となって母材との接合強度が低下したり、段差が生じてしまう。
【0007】
一方、肉盛部材の突出寸法を大きくすると、該肉盛部材は回転に伴う遠心力の影響ですりこぎ運動を行うようになり、十分な摩擦熱を発生できないばかりか、甚だしい場合には肉盛部材が把持部の先端で破壊され、肉盛りができないという問題点があった。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、略円柱状の肉盛部材の外周面を把持手段により把持し、この把持手段を前記肉盛部材の軸芯周りに回転させながら該肉盛部材の軸方向の一端を母材表面に押圧し、摩擦熱により前記肉盛部材を軟化させて前記母材上に肉盛加工を行う摩擦肉盛方法であって、前記把持手段から突出する前記肉盛部材の寸法が所定の範囲に収まるように、前記肉盛部材を断続的に押し出しながら肉盛加工を行う摩擦肉盛方法である。
【0010】
請求項2に係る発明は、略円柱状の第1の肉盛部材の外周面を把持手段により把持し、この把持手段を前記第1の肉盛部材の軸芯周りに回転させながら該第1の肉盛部材の軸方向の一端を母材表面に押圧し、摩擦熱により前記第1の肉盛部材を軟化させて前記母材上に肉盛加工を行う摩擦肉盛方法であって、前記把持手段から突出する前記第1の肉盛部材の寸法が所定の範囲に収まるように、前記第1の肉盛部材を断続的に押し出しながら肉盛加工を行い、前記第1の肉盛部材の前記母材表面に押圧している一端と反対側の他端に、前記第1の肉盛部材と同一の外径を有する略円柱状の第2の肉盛部材の軸方向の一端を、前記第1の肉盛部材と前記第2の肉盛部材との軸芯が一致するように、順次連結しながら継ぎ足す摩擦肉盛方法である。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項2記載の摩擦肉盛方法において、第1の肉盛部材と第2の肉盛部材との連結は、前記第1の肉盛部材の母材表面に押圧する一端と反対側の他端において、前記第1の肉盛部材の軸方向に沿って形成した第1のネジと、前記第2の肉盛部材の前記第1の肉盛部材に連結する部位において、前記第2の肉盛部材の軸方向に沿って形成した第2のネジとの螺合により行うものである。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項3記載の摩擦肉盛方法において、第1のネジと第2のネジとの螺合は、第1の肉盛部材の回転速度と第2の肉盛部材の回転速度とを異ならせた状態で行うものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の摩擦肉盛方法によれば、把持手段から突出する肉盛部材の寸法が所定の範囲に収まるように、前記肉盛部材を断続的に押し出しながら肉盛加工を行うため、肉盛部材の過度な突出を抑えて該肉盛部材の撓みを抑制しつつ、断続的に押し出す分、続けて多量の肉盛加工を行うことができ、たとえば、製鋼圧延ロール、製紙ロールなどの円柱物体への加工を行うことができる。
【0014】
請求項2に記載の摩擦肉盛方法によれば、第1の肉盛部材の母材表面に押圧している一端と反対側の他端に、前記第1の肉盛部材と同一の外径を有する略円柱状の第2の肉盛部材の軸方向の一端を、前記第1の肉盛部材と前記第2の肉盛部材との軸芯が一致するように、順次連結しながら継ぎ足すため、第1の肉盛部材による肉盛り部と第2の肉盛部材による肉盛り部との間に継ぎ目ができるのを防止し、両肉盛り部が不連続となって母材との接合強度が低下したり、段差が生じるのを抑制することができ、しかも、肉盛部材の交換がない分、迅速かつ連続的に肉盛加工を行うことができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、請求項2記載の摩擦肉盛方法の効果に加え、第1の肉盛部材と第2の肉盛部材との連結は、前記第1の肉盛部材の母材表面に押圧する一端と反対側の他端において、前記第1の肉盛部材の軸方向に沿って形成した第1のネジと、前記第2の肉盛部材の前記第1の肉盛部材に連結する部位において、前記第2の肉盛部材の軸方向に沿って形成した第2のネジとの螺合により行うため、肉盛部材同士を簡易な方法で確実に連結することができ、しかも、連結する際、各肉盛部材の連結部に熱を加えない分、第1および第2の肉盛部材表面の酸化等による変質を防ぐことができ、この変質に伴う肉盛り部と母材との接合強度の低下を防止することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3記載の摩擦肉盛方法の効果に加え、第1のネジと第2のネジとの螺合は、第1の肉盛部材の回転速度と第2の肉盛部材の回転速度とを異ならせた状態で行うため、第1の肉盛部材の肉盛加工中であっても、この第1の肉盛部材の回転を止めることなく該第1の肉盛部材と第2の肉盛部材とを簡易かつ迅速に連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る摩擦肉盛方法を実施するための摩擦肉盛装置の一例を示した概略的正面図である。
【図2】図1の一部を省略して示した概略的側面図である。
【図3】図1の概略的平面図である。
【図4】図1のスピンドルの概略図であり、図4(a)は縦断面図を、図4(b)は底面図をそれぞれ示している。
【図5】本発明の摩擦肉盛方法の第1の実施例を説明するための摩擦肉盛装置の要部を拡大して示した概略図であり、図5(a)は肉盛加工前の側面図を、図5(b)は肉盛加工中の側面図を、図5(c)は肉盛加工中の斜視図を、図5(d)は肉盛部材押し出し前の側面図を、図5(e)は肉盛部材押し出し後の側面図をそれぞれ示している。
【図6】本発明の摩擦肉盛方法の第2の実施例を説明するための摩擦肉盛装置の概略的正面図であり、肉盛加工を行う前のものである。
【図7】図6の肉盛加工中の概略的正面図である。
【図8】図6の第2の肉盛部材の移送初期の概略的正面図である。
【図9】図6の第2の肉盛部材の移送途中の概略的正面図である。
【図10】図6の第1の肉盛部材と第2の肉盛部材とを連結している状態を示した概略的正面図である。
【図11】図10のK部(連結部)を拡大して示した一部破断概略的正面図である。
【図12】図10の変形例を示した一部破断概略的正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明に係る摩擦肉盛方法を実施するための摩擦肉盛装置について、図1〜図4を参照して説明する。図1〜図4において、Aは摩擦肉盛装置であり、摩擦肉盛装置Aは、略円柱状の肉盛部材b(例えば、φ25mmのアルミニウムあるいは鋼、ステライトなど高合金材料等の金属部材など)の外周面を把持手段21により把持し、この把持手段21を肉盛部材bの軸芯周りに回転させながら該肉盛部材bの軸方向の一端を母材W表面に押圧し、摩擦熱により肉盛部材bを軟化させて母材W上に肉盛加工を行うもので、概略的に、機体1と、スピンドル2と、回転手段23と、昇降手段3とにより構成されている。
【0019】
スピンドル2は、肉盛部材bを把持して回転させながら母材W表面に押圧させるものであり、肉盛部材bを把持する把持手段21を有しているもので、図4(a)、(b)に示したように、この把持手段21は、例えば、肉盛部材bを挿通するクランプ孔21a(図4(b)参照)を中心に、放射状に分割配置された複数のクランプ部材21b、21b、・・を具備しており、これら各クランプ部材21bを、例えば、油圧等により肉盛部材bの半径方向に進退させて該肉盛部材bを把持できるように構成されている。
【0020】
また、これらのクランプ部材21b、21b、・・は、クランプケース21cに収納され、ベアリング13、13、・・を介してスピンドルケース12に回転自在に支持されているもので、クランプケース21cの上端部外周にはプーリ22が一体的に設けられており、このプーリ22と回転手段23とが回転ベルト24により接続されている(図3参照)。回転手段23は、例えば、高出力のスピンドルモータなどである。なお、把持手段21は、肉盛部材bを回転自在に固定できればよく、他の公知の把持手段を用いてもよい。
【0021】
図1〜図3において、3は昇降手段であり、この昇降手段3は、機体1においてスピンドル2を上下方向に昇降移動させるものであり、機体1の前面側に、垂直方向に平行に2本のレール30、30を配設し、このレール30、30に取付部材31を介してスピンドル2が摺動自在に取り付けられている。
【0022】
そして、この取付部材31には雌ネジ体32が一体的に取り付けられており、この雌ネジ体32を、機体1において垂直方向に軸着されたボールネジ33に螺合させ、このボールネジ33を回動させてスピンドル2(取付部材31)を昇降させるものである。ボールネジ33は、該ボールネジ33の上端部に接続された減速機のプーリ34および回転ベルト35を介して回転制御可能な昇降モータ36に接続されているもので、この昇降モータ36を所定の速度で回動させることによりスピンドル2の昇降速度や肉盛部材bの押圧力を自在に制御することができる。
【0023】
なお、昇降手段3には、ボールネジ33および雌ネジ体32にかかる荷重を軽減し、スピンドル2の昇降をスムーズに行えるように、例えば、図2、図3に示したようにバランスウェイト37を取り付けることができるもので、本図においてバランスウェイト37は機体1の背面側に設けられており、このバランスウェイト37と取付部材31とは、機体1の上部に設けられたプーリ38、38を介してワイヤ39、39により連結されバランスがとられている。
【0024】
ここでは、把持手段21と昇降手段3を1組の機構で説明したが、複数の把持手段21と昇降手段3の機構を持たせてもよい。これにより肉盛加工を中断無しで行うことができ、肉盛り部nを連続形成できる。
【0025】
また、図1、図2において、4は肉盛部材bをスピンドル2に供給するローダであり、ローダ4は、後記する肉盛部材供給手段6から肉盛部材bを移送してスピンドル2に装着するもので、チャック41aにより肉盛部材bを着脱自在に掴む移送手段41と、この移送手段41を水平方向に摺動させるレール体42と、このレール体42を昇降させるエアシリンダ43とを備えている。このローダ4には、レール体42の昇降をスムーズに行うことができるように、例えば、図3に示したように、機体1の背面側にバランスウェイト44を設けることができ、このバランスウェイト44とレール体42とをプーリ45を介してワイヤ46により連結するようにしてもよい。
【0026】
また、図1、図3において、6は肉盛部材供給手段であり、肉盛部材供給手段6は、差込部材61に穿設した差込孔61a、61a、・・のそれぞれに、あらかじめ肉盛部材bを垂直に差し込んで収納しておくもので、前述の移送手段41により1本づつ肉盛部材bを抜き取ってスピンドル2に供給する。なお、差込部材61は、下方に設けられたモータ62に接続され、肉盛部材bが抜き取られる度に、順次回転しながら新たな肉盛部材bを移送手段41のチャック位置(図6の仮想線で示した肉盛部材供給手段6内の位置)まで送り出す。
【0027】
また、図1、図2において、51は、上面側に母材Wを載置するステージであり、52はこのステージ51を駆動させるためのモータで、このモータ52の駆動により該モータ52に接続されたボールネジ53を回動させてステージ51を正面視、左右方向に移動させることができる。なお、図示していないが、このステージ51はモータにより正面視、前後方向および/または上下方向にも駆動させることができる。
【0028】
次に、上述のように構成された摩擦肉盛装置Aを用いて行う摩擦肉盛方法について、図5〜図12を参照して説明する。図5は肉盛加工を説明する図であり、図5(a)は肉盛加工前の状態を、図5(b)、(c)は肉盛加工中の状態をそれぞれ示している。
【0029】
摩擦肉盛加工は、図5(b)に示したように、肉盛部材bを回転(数十〜数千rpm)させると共に母材W表面に押圧(〜数トン/cm2)し、肉盛部材bと母材Wとの摩擦熱により該肉盛部材bを軟化させて母材Wの表面に肉盛加工を行うものであり、図5(c)に示したように、母材Wを徐々に移動させながら肉盛り部nを形成していくもので、肉盛部材bと母材Wとの当接部以外の肉盛り部nにあっては肉盛材(肉盛部材bの材料)が冷めて固化し、該肉盛材と母材Wとが一体化する。
【0030】
そして、本発明の摩擦肉盛方法に係る第1の実施例にあっては、把持手段21から突出する肉盛部材bの寸法L(図5(b)参照)が所定の範囲に収まるように、肉盛部材bを断続的に押し出しながら肉盛加工を行うもので、具体的には、肉盛部材bの消耗により寸法LがL1よりも短くなったとき(L<L1)(図5(d)参照)、把持手段21のクランプ部材21b、21b、・・を緩めて肉盛部材bの把持を一旦開放し、昇降手段3によりスピンドル2を上昇させ、把持手段21から突出する肉盛部材bの寸法Lが所定の寸法L2になったとき(L=L2)(図5(e)参照)、再度クランプ部材21bを締付て肉盛部材bを把持し直し、昇降手段3を徐々に下降させて肉盛加工を再開する。
【0031】
なお、上述したクランプ部材21bの開放から再度の締付までは迅速に行われるものであり、その間、肉盛加工はごく短時間中断するが、肉盛り部nの形成に影響を与えることはない。
【0032】
次に、本発明の摩擦肉盛方法に係る第2の実施例について、図6〜図12を参照して説明する。なお、肉盛加工中の肉盛部材b(以下、「第1の肉盛部材b1」という)の押し出し方法にあっては、上述した第1の実施例と同じであるため、その詳細な説明は省略する。
【0033】
まず、図6は第1の肉盛部材b1をスピンドル2に装着する前の図を、図7は第1の肉盛部材b1により肉盛加工を行っている図を示したものであり、肉盛加工中にあっては、第1の肉盛部材b1の押し出しに伴い、該第1の肉盛部材b1が徐々に短くなっていく。
【0034】
そして、図8に示したように、第1の肉盛部材b1がある程度短くなったとき、ローダ4を操作し、エアシリンダ43を下降させて移送手段41のチャック41aにより肉盛部材供給手段6に収納された肉盛部材bを1本掴んで抜き取る(この肉盛部材bを、以下、「第2の肉盛部材b2」という)。ここで、第2の肉盛部材b2は、第1の肉盛部材b1と同一の外径を有する略円柱状の肉盛部材である。そして、エアシリンダ43を上昇させた後(図8の矢印d1参照)、移送手段41をレール体42上において移動させ(図8の矢印d2参照)、移送手段41がスピンドル2の真上に来たときにローダ4を下降させるもので(図9の矢印d3参照)、移送手段41に掴まれた第2の肉盛部材b2はクランプ孔(図4(a)参照)に挿入される。
【0035】
そして、第1の肉盛部材b1の母材W表面に押圧している一端と反対側の他端に、第2の肉盛部材b2の軸方向の一端を、第1の肉盛部材b1と第2の肉盛部材b2との軸芯が一致するように継ぎ足すもので、以下、第1の肉盛部材b1が短くなる度に、この操作を繰り返し行い、第2の肉盛部材b2を順次連結しながら継ぎ足すようにする。
【0036】
ところで、上述した第1の肉盛部材b1と第2の肉盛部材b2との連結にあっては、具体的には、例えば、図10のK部を拡大した図11(a)〜(d)に示したように、第1の肉盛部材b1の母材W表面に押圧する一端と反対側の他端において、第1の肉盛部材b1の軸方向に沿って形成した第1のネジb1’と、第2の肉盛部材b2の第1の肉盛部材b1に連結する部位において、第2の肉盛部材b2の軸方向に沿って形成した第2のネジb2’との螺合により行われる。
【0037】
すなわち、まず、第1の肉盛部材b1と第2の肉盛部材b2とが離間した状態から(図11(a)参照)、第2の肉盛部材b2を第1の肉盛部材b1に押し当てて同じ回転方向に共回りをさせる(図11(b)の矢印r1、r2参照)(このとき、チャック41aは回転自在にしておく)。そして、回転手段23の反転により第1の肉盛部材b1を瞬間的に逆回転させると、図11(c)に示したように、第2の肉盛部材b2は慣性によりr2方向に回転を継続するものの、第1の肉盛部材b1はr1’方向(r2と反対方向)に回転するため、第1のネジb1’と第2のネジb2’とは螺合し始め、緊締となった状態で、図11(d)に示したように、第1の肉盛部材b1の回転をもとの方向(r1方向)に戻せば第1の肉盛部材b1と第2の肉盛部材b2とが連結される。
【0038】
ところで、第1のネジb1’と第2のネジb2’との螺合は、上述したように第1の肉盛部材b1を逆回転させるのではなく、第1の肉盛部材b1の回転速度と第2の肉盛部材b2の回転速度とを異ならせた状態、例えば、第1の肉盛部材b1の回転速度を瞬間的に遅くしたり、図12(a)〜(d)に示したように、図示していないモータにより第2の肉盛部材b2の回転速度を瞬間的に速くするような状態で行うようにしてもよい。
【0039】
この連結方法によれば、連結の際、各肉盛部材b1、b2の連結部に熱を加えない分、第1および第2の肉盛部材b1、b2表面の酸化等による変質を防ぐことができ、この変質に伴う肉盛り部nと母材Wとの接合強度の低下を防止することができると共に、肉盛部材bの交換がない分、迅速かつ連続的に肉盛加工を行うことができる。
【符号の説明】
【0040】
A 摩擦肉盛装置
1 機体
2 スピンドル
23 回転手段
3 昇降手段
4 ローダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円柱状の肉盛部材の外周面を把持手段により把持し、この把持手段を前記肉盛部材の軸芯周りに回転させながら該肉盛部材の軸方向の一端を母材表面に押圧し、摩擦熱により前記肉盛部材を軟化させて前記母材上に肉盛加工を行う摩擦肉盛方法であって、
前記把持手段から突出する前記肉盛部材の寸法が所定の範囲に収まるように、前記肉盛部材を断続的に押し出しながら肉盛加工を行うことを特徴とする摩擦肉盛方法。
【請求項2】
略円柱状の第1の肉盛部材の外周面を把持手段により把持し、この把持手段を前記第1の肉盛部材の軸芯周りに回転させながら該第1の肉盛部材の軸方向の一端を母材表面に押圧し、摩擦熱により前記第1の肉盛部材を軟化させて前記母材上に肉盛加工を行う摩擦肉盛方法であって、
前記把持手段から突出する前記第1の肉盛部材の寸法が所定の範囲に収まるように、前記第1の肉盛部材を断続的に押し出しながら肉盛加工を行い、
前記第1の肉盛部材の前記母材表面に押圧している一端と反対側の他端に、前記第1の肉盛部材と同一の外径を有する略円柱状の第2の肉盛部材の軸方向の一端を、前記第1の肉盛部材と前記第2の肉盛部材との軸芯が一致するように、順次連結しながら継ぎ足すことを特徴とする摩擦肉盛方法。
【請求項3】
第1の肉盛部材と第2の肉盛部材との連結は、前記第1の肉盛部材の母材表面に押圧する一端と反対側の他端において、前記第1の肉盛部材の軸方向に沿って形成した第1のネジと、前記第2の肉盛部材の前記第1の肉盛部材に連結する部位において、前記第2の肉盛部材の軸方向に沿って形成した第2のネジとの螺合により行うことを特徴とする請求項2記載の摩擦肉盛方法。
【請求項4】
第1のネジと第2のネジとの螺合は、第1の肉盛部材の回転速度と第2の肉盛部材の回転速度とを異ならせた状態で行うことを特徴とする請求項3記載の摩擦肉盛方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−227967(P2010−227967A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−78341(P2009−78341)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(591026001)東海テクノ株式会社 (1)
【Fターム(参考)】