説明

摩擦駆動式台車コンベア

【課題】水平カーブ状経路部における台車駆動装置の必要数を少なくすることができ、摩擦駆動用ローラの揺動ストロークを小さくすることができる摩擦駆動式台車コンベアを得る。
【解決手段】台車1の内側端の前側の垂直支軸11に後端を支持されて台車1の前端部まで前方へ延び、垂直支軸11まわりに内側に揺動可能であるとともに、前ガイドローラ13が前端部下側に設けられた前揺動アーム9と、後側の垂直支軸12に前端を支持されて台車1の後端部まで後方へ延び、垂直支軸12まわりに内側に揺動可能であるとともに、後ガイドローラ14が後端部下側に設けられた後揺動アーム10とを備え、水平カーブ状経路部の走行レールよりも内側に、前ガイドローラ13及び後ガイドローラ14が係合するガイドレール15を設置し、揺動アーム9,10の内側面9a,10aを台車駆動面とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平カーブ状経路を含む搬送経路に沿って台車を搬送する摩擦駆動式台車コンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
摩擦駆動式台車コンベアは、走行レールにより形成された搬送経路に沿って移動可能な非自走式の台車と、台車の搬送方向側面の略全長にわたり形成された台車駆動面に圧接する揺動可能な摩擦駆動ローラを備えた台車駆動装置とを有し、台車に搬送物を載置して搬送するものであり、水平カーブ状経路部(ターン経路部)の内側複数箇所それぞれに、当該箇所における台車駆動面(被摩擦面)の位置に対応させて摩擦駆動ローラを配設し、各摩擦駆動ローラを水平カーブ状経路部の経路中心線に対する遠近方向に移動自在に支持すると共に付勢手段により前記経路中心線側に付勢し、これら各摩擦駆動ローラを台車駆動面に対して順番に作用させることにより、台車を水平カーブ状経路部の全長にわたって連続的に推進させるもの(例えば、特許文献1参照。)、台車の荷台の左右巾方向の中央位置で走行方向と平行に付設された中央棒状体と、この中央棒状体の前後両端にそれぞれ連結手段を介して垂直軸心の周りに左右水平揺動可能に連結された前側棒状体及び後側棒状体とからなる摩擦駆動用棒状組立体を備え、中央棒状体の前後両端下側、前側棒状体の前端下側、及び後側棒状体の後端下側にトロリーを取り付けてトロリーガイドレールに係合させ、水平カーブ状経路部(カーブ走行経路)においては、摩擦駆動用棒状組立体の側面で形成された台車駆動面(副駆動用摩擦面)に副推進用駆動手段の摩擦駆動ローラ(摩擦駆動輪)を圧接させて台車を推進させるもの(例えば、特許文献2参照。)等がある。
【0003】
【特許文献1】特開2005−81951号公報(図4、図6−8)
【特許文献2】特開2002−240707号公報(図1−4、図8−10)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、水平カーブ状経路部を走行中の台車の台車駆動面が水平カーブ状経路部の曲率半径方向の内側に大きく張り出すため、該台車駆動面に圧接される摩擦駆動用ローラの揺動ストロークを大きくする必要があるとともに、水平カーブ状経路部に設ける台車駆動装置の必要数が多くなる。したがって、水平カーブ状経路部に設ける台車駆動装置における摩擦駆動用ローラの揺動機構のコストが増大する。
【0005】
特許文献2の構成では、左右のガイドレール上を走行する前後左右の自在車輪の他に、左右のガイドレールの中間位置に連続して敷設された左右一対のトロリーガイドレールを設け、該トロリーガイドレールに、荷台の下側に設けた、中央棒状体の前後両端下側、前側棒状体の前端下側及び後側棒状体の後端下側に取り付けたトロリーを係合させる構成であり、左右のガイドレールとその間に位置するトロリーガイドレールを搬送経路の全長にわたって設ける必要があること、並びに、荷台の下側の棒状体、連結手段及びトロリー並びにトロリーガイドレール等の構造が複雑になるためコストが増大する。また、荷台の下側の棒状体、連結手段及びトロリーの点検がし難いものである。さらに、水平カーブ状経路部における台車駆動面が荷台の下側にあり、副推進用駆動手段を台車との干渉を避けながら荷台の下側に設置する必要があるため、副推進用駆動手段を設置し難い場合があるとともに、台車を退けないと副推進用駆動手段を点検することが困難である。
【0006】
そこで本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、水平カーブ状経路部において、台車駆動装置の必要数を少なくすることができるとともに、摩擦駆動用ローラの揺動ストロークを小さくすることができ、水平カーブ状経路部の台車駆動面及び摩擦駆動ローラを備えた台車駆動装置の点検が容易であり、コスト低減化を図ることができる摩擦駆動式台車コンベアを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る摩擦駆動式台車コンベアは、前記課題解決のために、摩擦駆動ローラを有する複数の台車駆動装置を搬送経路に沿って配設し、該搬送経路を形成する走行レール上を走行する非自走式台車の搬送方向に延びる側面である台車駆動面に前記摩擦駆動ローラを圧接することにより、前記台車を搬送する摩擦駆動式台車コンベアであって、前記台車の内側端に、前後方向中央よりも前側に位置する垂直支軸に後端を支持されて前記台車の前端部まで前方へ延び、該支軸まわりに内側に揺動可能であるとともに、垂直軸まわりに回転可能な前ガイドローラが前端部下側に設けられた前揺動アームと、前後方向中央よりも後側に位置する垂直支軸に前端を支持されて前記台車の後端部まで後方へ延び、該支軸まわりに内側に揺動可能であるとともに、垂直軸まわりに回転可能な後ガイドローラが後端部下側に設けられた後揺動アームとを備え、水平カーブ状経路部の前記走行レールよりも内側に、前記前ガイドローラ及び後ガイドローラが係合するガイドレールを設置することにより、水平カーブ状経路部を走行する前記台車の内側端から内側に揺動する前記前後の揺動アームの内側面を台車駆動面としてなるものである。
【0008】
ここで、前記台車が直線経路部を走行中に、前記前後の揺動アームを前記台車の内側端に沿って前後方向に延びた状態に保持する保持手段を設けてなると好ましい。
【0009】
また、前記前後の揺動アームが前記台車の内側端に沿って前後方向に延びた状態となるように付勢する弾性付勢手段を設けてなると好ましい。
【0010】
さらに、前記台車の搬送方向に延びる内側側面の上部又は下部に前記前後の揺動アームの内側面を位置させ、前記前後の垂直支軸間の前記内側側面及び前記前後の揺動アームの内側面を前記台車が水平カーブ状経路部を走行する際の台車駆動面とし、前記内側側面の下部又は上部を前記台車が直線経路部を走行する際の台車駆動面としてなると好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る摩擦駆動式台車コンベアによれば、摩擦駆動ローラを有する複数の台車駆動装置を搬送経路に沿って配設し、該搬送経路を形成する走行レール上を走行する非自走式台車の搬送方向に延びる側面である台車駆動面に前記摩擦駆動ローラを圧接することにより、前記台車を搬送する摩擦駆動式台車コンベアであって、前記台車の内側端に、前後方向中央よりも前側に位置する垂直支軸に後端を支持されて前記台車の前端部まで前方へ延び、該支軸まわりに内側に揺動可能であるとともに、垂直軸まわりに回転可能な前ガイドローラが前端部下側に設けられた前揺動アームと、前後方向中央よりも後側に位置する垂直支軸に前端を支持されて前記台車の後端部まで後方へ延び、該支軸まわりに内側に揺動可能であるとともに、垂直軸まわりに回転可能な後ガイドローラが後端部下側に設けられた後揺動アームとを備え、水平カーブ状経路部の前記走行レールよりも内側に、前記前ガイドローラ及び後ガイドローラが係合するガイドレールを設置することにより、水平カーブ状経路部を走行する前記台車の内側端から内側に揺動する前記前後の揺動アームの内側面を台車駆動面としてなるので、水平カーブ状経路部を台車が走行する際に、前後の垂直支軸間における台車の内側側面並びに前揺動アームの内側面及び後揺動アームの内側面が台車駆動面となり、これらの台車駆動面はガイドレールに対して内側に大きく張り出すことがないため、これらの台車駆動面に圧接される摩擦駆動ローラの揺動ストロークを小さくすることができる。よって、摩擦駆動用ローラの揺動機構のコスト低減化を図ることができる。その上、水平カーブ状経路部の前後位置の2箇所に台車駆動装置を配設するのみで台車の駆動を行うことができるため、台車駆動装置の必要数が少なくなるとともに、このような2箇所のみに台車駆動装置を配設する構成では、摩擦駆動用ローラの揺動ストロークをさらに小さくすることができるため、さらにコスト低減化を図ることができる。その上さらに、前後の揺動アームが台車の内側端に位置するとともに、該内側端よりも内側に台車駆動装置が設置されるため、これら台車駆動装置の点検並びに前後の揺動アーム及びガイドローラの点検を容易に行うことができる。
【0012】
また、前記台車が直線経路部を走行中に、前記前後の揺動アームを前記台車の内側端に沿って前後方向に延びた状態に保持する保持手段を設けてなるか、あるいは、前記前後の揺動アームが前記台車の内側端に沿って前後方向に延びた状態となるように付勢する弾性付勢手段を設けてなると、前記効果に加え、ガイドレールを水平カーブ状経路部及びその前後の一定区間のみに設置すればよく、直線経路部の殆どの部分にはガイドレールを設置する必要がなくなるため、さらにコスト低減化を図ることができる。
【0013】
さらに、前記台車の搬送方向に延びる内側側面の上部又は下部に前記前後の揺動アームの内側面を位置させ、前記前後の垂直支軸間の前記内側側面及び前記前後の揺動アームの内側面を前記台車が水平カーブ状経路部を走行する際の台車駆動面とし、前記内側側面の下部又は上部を前記台車が直線経路部を走行する際の台車駆動面としてなると、前記効果に加え、摩擦駆動ローラを台車駆動面に圧接して行う直線経路における台車駆動をより安定して行うことができる。その上、例えば、直線状経路部において多数の台車群を1つの台車駆動装置にて後押し駆動する構成を採用する場合において、該1つの台車駆動装置の摩擦駆動ローラを台車の内側側面の上部及び下部の台車駆動面にわたる厚さとすれば、台車に十分大きな推進力を与えることができるため、より安定かつ確実な駆動を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に本発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲に記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。なお、本明細書では、走行レールにより形成される搬送経路において、台車の搬送方向(図中矢印A参照。)に向かった状態での前後左右を前後左右とする。また、水平カーブ状経路部の曲率半径方向の内側を内側、水平カーブ状経路部の曲率半径方向の外側を外側という。
【0015】
図1〜図4は、本発明の実施の形態に係る摩擦駆動式台車コンベアの構成及び動作を示す概略図であり、図1は台車が水平カーブ状経路部に差し掛かる手前の状態(P1)を示す平面図、図2は同じく背面図、図3(a)はP1から台車がさらに前進して水平カーブ状経路部に差し掛かった状態(P2)を示す平面図、図3(b)はP2から台車がさらに前進した状態(P3)を示す平面図、図4(a)はP3から台車がさらに前進した状態(P4)を示す平面図、図4(b)はP4から台車がさらに前進した状態(P5)を示す平面図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、水平カーブ状経路部を含む搬送経路が、床面FL(図2参照。)上に敷設された内側及び外側の走行レール3,4により形成されており、搬送方向に延びる右側側面(内側側面)1a及び左側側面(外側側面)1bの略全長が台車駆動面とされた非自走式台車1が、台車駆動装置2,…の摩擦駆動ローラ8,…によって駆動され(摩擦駆動ローラ8の回転方向は図1中の矢印B参照。)、該搬送経路に沿って搬送される(搬送方向は図1中の矢印A参照。)。台車駆動装置2,…は、図示しない減速機付きモータ等からなる回転駆動装置により摩擦駆動ローラ8を所定の回転速度で回転させるものであり、該摩擦駆動ローラ8は図示しないばね又はエアシリンダ等による付勢手段により台車駆動面である内側側面1aに向かう方向に付勢されるため、内側側面1aに摩擦駆動ローラ8が当接した状態では、内側側面1aに摩擦駆動ローラ8が圧接される。
【0017】
台車1の下面に取り付けられ、走行レール3,4上を転動する走行車輪5,5,6,6は、走行レール3,4と係合するものであり、台車1が水平カーブ状経路部を走行可能なように、例えば垂直軸まわりに回動可能なキャスター付きの車輪とされる。また、台車1を所定経路に沿って走行させるとともに、台車駆動装置2により台車1に内側から外側に向かう力が作用しても、内側の走行レール3から走行車輪5,5が浮き上がらないように、走行車輪5,5と走行レール3との係合はサイドローラ7,…により保持される。なお、走行レール4を図1のように幅広に形成し、キャスター付きでない走行車輪6,6が該走行レール4と係合せずに、該走行レール4上を転動する構成とすることにより、摩擦駆動式台車コンベアの構成の簡素化を図ることができる。
【0018】
図1及び図2に示すように、台車1の右側端(内側端)には、前後方向中央よりも前側に位置する垂直支軸11に後端を支持されて台車1の前端部まで前方へ延び、垂直支軸11まわりに右側(内側)に揺動可能であるとともに、垂直軸まわりに回転可能な前ガイドローラ13が前端部下側に設けられた前揺動アーム9と、前後方向中央よりも後側に位置する垂直支軸12に前端を支持されて台車1の後端部まで後方へ延び、垂直支軸12まわりに内側に揺動可能であるとともに、垂直軸まわりに回転可能な後ガイドローラ14が後端部下側に設けられた後揺動アーム10が設けられる。なお、前揺動アーム9及び後揺動アーム10の長さは、それぞれ、台車1の前後方向の長さ(内側側面1aの前後方向の長さ)の略1/3とするのが好ましい実施態様である。
【0019】
前後の揺動アーム9,10は、台車1が直線経路部を走行中に、該揺動アーム9,10を台車1の内側端に沿って前後方向に延びた状態に保持する保持手段、又は、該揺動アーム9,10が台車1の内側端に沿って前後方向に延びた状態となるように付勢する弾性付勢手段が設けられる。例えば、前記保持手段としては、永久磁石と鉄片(強磁性体板)とにより吸着させて保持する構成又はばねにより上下に開閉可能な一対のローラ間に係止片を挿入する構成等を採用することができ、前記弾性付勢手段としては、垂直支軸11,12まわりに渦巻きばねを装着する構成等を採用することができる。このような保持手段又は弾性付勢手段を用いれば、後述するガイドレール15を水平カーブ状経路部及びその前後の一定区間のみに設置すればよく、直線経路部の殆どの部分にはガイドレールを設置する必要がなくなるため、コスト低減化を図ることができる。
【0020】
図1に示すように、水平カーブ状経路部の走行レール3,4よりも内側に、前揺動アーム9前端部の前ガイドローラ13及び後揺動アーム10後端部の後ガイドローラ14が係合するガイドレール15が床面FL(図2参照。)上に、水平カーブ状経路部の後側(上流側)の所定位置から、水平カーブ状経路部の前側(下流側)の所定位置まで敷設される。図2に示すように、前後のガイドローラ13,14は、内側ガイドレール15aの垂直立起面と外側ガイドレール15bの垂直立起面との間に位置し、ガイドレール15に沿って移動する。そして、前後の揺動アーム9,10の右側面(内側面)9a,10aは、水平カーブ状経路部及びその前後の所定区間における台車駆動面とされる。すなわち、水平カーブ状経路部及びその前後の所定区間において、前後の揺動アーム9,10の内側面9a,10aには、水平カーブ状経路部の前後の2箇所(入口側及び出口側)に配設された台車駆動装置2,2の摩擦駆動ローラ8,8が圧接される。
【0021】
図1及び図2に示すように、水平カーブ状経路部の入口(上流側端)から上流側へ所定距離L離間した位置からさらに上流側の直線部分、及び、水平カーブ状経路部の出口(下流側端)から下流側へ所定距離L離間した位置からさらに下流側の直線部分におけるガイドレール15の位置は、内側の走行レール3の左右方向中央と、揺動アーム9,10が揺動せずに台車1の内側側面1aと平行に前後方向に延びた状態における該揺動アーム9,10のガイドローラ13,14の垂直軸中心との距離Dだけ内側にオフセットした位置とされる。したがって、直線経路部を走行してきた台車1の前後の揺動アーム9,10のガイドローラ13,14は、カーブ状経路部の入口の上流側でガイドレール15に係合する。また、台車1がカーブ状経路部を通過すると、揺動アーム9,10が揺動せずに台車1の内側側面1aと平行に前後方向に延びた状態となる。
【0022】
図1に示すように、ガイドレール15は、水平カーブ状経路部の入口(上流側端)から上流側へ所定距離L離間した位置と水平カーブ状経路部の出口(下流側端)から下流側へ所定距離L離間した位置との間は、前記距離Dだけ内側にオフセットした位置(二点鎖線E1参照。)よりも、さらに内側に位置している(一点鎖線E2参照)。すなわち、ガイドレール15の円弧部分(一点鎖線E2)は、二点鎖線E1の円弧部分の曲率半径R1(曲率中心C1)よりも大きい曲率半径となっており、その曲率中心C2は曲率中心C1よりも内側にある。したがって、前後の揺動アーム9,10のガイドローラ13,14がガイドレール15の円弧部分(一点鎖線E2)に係合している状態では、揺動アーム9,10は、ガイドレール15を一点鎖線E1の経路とした場合よりも、さらに内側へ揺動する。
【0023】
次に、以上のように構成された摩擦駆動式台車コンベアの水平カーブ状経路部における動作を、図1、図3及び図4により説明する。図1に示す台車1が水平カーブ状経路部に差し掛かる手前の状態(P1)では、前後の揺動アーム9,10は、その内側面9a,10aが台車1の内側側面1aに沿って平面視において重なる状態となっており、前揺動アーム9の内側面9aに水平カーブ状経路部の入口側の台車駆動装置2の摩擦駆動ローラ8が圧接され、該摩擦駆動ローラ8の駆動力により台車1は前進する。
【0024】
この状態(P1)から台車1がさらに前進して図3(a)に示す台車1が水平カーブ状経路部に差し掛かった状態(P2)では、前揺動アーム9の前端部の前ガイドローラ13がガイドレール15に係合しているため、該前ガイドローラ13がガイドレール15に沿って移動するのに伴って、前揺動アーム9が台車1の垂直支軸11まわりに内側へ揺動する。この状態(P2)では、前後の垂直支軸11,12間の内側側面1aに前記入口側の台車駆動装置2の摩擦駆動ローラ8が圧接され、該摩擦駆動ローラ8の駆動力により台車1は前進する。
【0025】
この状態(P2)から台車1がさらに前進した図3(b)に示す状態(P3)では、後揺動アーム10の後端部の後ガイドローラ14がガイドレール15に係合しているため、該後ガイドローラ14がガイドレール15に沿って移動するのに伴って、後揺動アーム10が台車1の垂直支軸12まわりに内側へ揺動する。この状態(P3)では、後揺動アーム10の内側面10aに前記入口側の台車駆動装置2の摩擦駆動ローラ8が圧接され、該摩擦駆動ローラ8の駆動力により台車1は前進する。
【0026】
この状態(P3)から台車1がさらに前進した図4(a)に示す状態(P4)では、前揺動アーム9の内側面9aに水平カーブ状経路部の出口側の台車駆動装置2の摩擦駆動ローラ8が圧接されるとともに、後揺動アーム10の内側面10aに前記入口側の台車駆動装置2の摩擦駆動ローラ8が圧接され、これらの摩擦駆動ローラ8,8の駆動力により台車1は前進する。図4(a)に示す状態(P4)は、台車1の内側側面1aが最も内側に張り出しているが、この状態(P4)において、前記のとおり(図1も参照。)、ガイドレール15の経路は、水平カーブ状経路部の入口から上流側へ所定距離L離間した位置と水平カーブ状経路部の出口から下流側へ所定距離L離間した位置との間において、二点鎖線E1よりも、さらに内側の一点鎖線E2となっており、台車1の内側側面1aがガイドレール15の左右方向の略中央(内側ガイドレール15aの垂直立起面と外側ガイドレール15bの垂直立起面との間)に位置している。
【0027】
よって、水平カーブ状経路部の入口側及び出口側の台車駆動装置2,2の他に、これらの台車駆動装置2,2の中間位置の水平カーブ状経路部に台車駆動装置2を配設する構成とした場合であっても、台車駆動面である前後の垂直支軸11,12間における台車1の内側側面1a並びに前揺動アーム9の内側面9a及び後揺動アーム10の内側面10aが、ガイドレール15に対して内側に大きく張り出すことがないため、該中間位置の台車駆動装置2の摩擦駆動用ローラ8の揺動ストロークを小さくすることができる。
【0028】
前記状態(P4)から台車1がさらに前進した図4(b)に示す状態(P5)では、前揺動アーム9の前ガイドローラ13がガイドレール15に係合しているため、該ガイドローラ13がガイドレール15に沿って移動するのに伴って、前揺動アーム9の内側面9aが台車1の内側側面1aに沿って平面視において重なる状態に復帰しており、後揺動アーム10は台車1の垂直支軸12まわりに内側へ揺動した状態となっている。すなわち、後揺動アーム10のみが内側へ揺動した状態となっている。そして、この状態(P5)では、前後の垂直支軸11,12間の内側側面1aに前記出口側の台車駆動装置2の摩擦駆動ローラ8が圧接され、該摩擦駆動ローラ8の駆動力により台車1は前進する。
【0029】
この状態(P5)から台車1がさらに前進すると、後揺動アーム10の内側面10aに前記出口側の台車駆動装置2の摩擦駆動ローラ8が圧接され、該摩擦駆動ローラ8の駆動力により台車1は前進する。このようにして、水平カーブ状経路部を通過した台車1は、後揺動アーム10の後ガイドローラ14がガイドレール15に係合しているため、該ガイドローラ14がガイドレール15に沿って移動するのに伴って、後揺動アーム10の内側面10aが台車1の内側側面1aに沿って平面視において重なる状態に復帰し、該内側面10aに前記出口側の台車駆動装置2の摩擦駆動ローラ8が圧接され、該摩擦駆動ローラ8の駆動力により台車1は前進する。
【0030】
以上のような構成により、水平カーブ状経路部を台車1が走行する際に、前後の垂直支軸11,12間における台車1の内側側面1a並びに前揺動アーム9の内側面9a及び後揺動アーム10の内側面10aが台車駆動面となり、これらの台車駆動面はガイドレール15に対して内側に大きく張り出すことがないため、これらの台車駆動面に圧接される摩擦駆動ローラ8の揺動ストロークを小さくすることができる。よって、摩擦駆動用ローラ8の揺動機構のコスト低減化を図ることができる。その上、水平カーブ状経路部の前後位置の2箇所に台車駆動装置1,2を配設するのみで台車1の駆動を行うことができるため、台車駆動装置2,…の必要数が少なくなるとともに、このような2箇所のみに台車駆動装置2,2を配設する構成では、摩擦駆動用ローラ8の揺動ストロークをさらに小さくすることができるため、さらにコスト低減化を図ることができる。その上さらに、前後の揺動アーム9,10が台車1の内側端に位置するとともに、該内側端よりも内側に台車駆動装置2,2が設置されるため、これら台車駆動装置2,2の点検並びに台車1の前後の揺動アーム9,10及びガイドローラ13,14の点検を容易に行うことができる。
【0031】
また、図2に示すように、台車1の搬送方向に延びる内側側面1aの下部(上部であってもよい)に前後の揺動アーム9,10の内側面9a,10aを位置させ、前後の垂直支軸11,12(図1参照。)間の内側側面1a及び前後の揺動アーム9,10の内側面9a,10aを台車1が水平カーブ状経路部を走行する際の台車駆動面とし、内側側面1aの上部(下部であってもよい)を台車1が直線経路部を走行する際の台車駆動面としてなると、摩擦駆動ローラ8を台車駆動面に圧接して行う直線経路における台車駆動をより安定して行うことができる。その上、例えば、直線状経路部において多数の台車群を1つの台車駆動装置2にて後押し駆動する構成を採用する場合において、該1つの台車駆動装置2の摩擦駆動ローラ8を台車1の内側側面1aの上部及び下部の台車駆動面にわたる厚さとすれば、台車1に十分大きな推進力を与えることができるため、より安定かつ確実な駆動を行うことができる。
【0032】
以上においては、図2に示すように台車1の内側端部の下側(又は上側)を切り欠き、直線経路部走行時には前記切欠部に前後の揺動アーム9,10を収容して、台車1の内側側面1aと揺動アーム9,10の内側面9a,10aとが面一となる場合について説明したが、台車の厚さが比較的小さい場合等においては、例えば図5(a)又は(b)に示すように、台車1の内側端部に前記切欠部を形成せずに、台車1の内側端部の下面又は上面に揺動アーム9,10を取り付けてもよい。なお、例えばフロアコンベアにおいて、台車上に作業者が乗る場合には、作業者との干渉を避けるために、図2に示すように台車1の内側端部の下側の切欠部に揺動アーム9,10を収容する構成、又は、台車1の下面に揺動アーム9,10を取り付ける構成を採用するのが好ましい。
【0033】
また、本発明に係る摩擦駆動式台車コンベアは、フロアコンベアに限定されるものではなく、例えば図5(b)に示すように、天井CL又は作業者の頭上の支持架構に走行レール及びガイドレール15を敷設してなるオーバーヘッドコンベアであってもよい。さらに、本発明に係る摩擦駆動式台車コンベアにおいて、台車1の内側端部に取り付ける揺動アーム9,10を、図1に示すような左右の一方のみに取り付ける構成ではなく、左右の両方に取り付ける構成とすれば、右カーブと左カーブとが混在する搬送経路にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態に係る摩擦駆動式台車コンベア構成を示す概略平面図であり、台車が水平カーブ状経路部に差し掛かる手前の状態(P1)を示している。
【図2】同じく背面図である。
【図3】同じく概略平面図であり、(a)は台車が水平カーブ状経路部に差し掛かった状態(P2)を、(b)はP2から台車がさらに前進した状態(P3)を示している。
【図4】同じく概略平面図であり、(a)はP3から台車がさらに前進した状態(P
【図5】台車への揺動アームの取付例を示す背面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 非自走式台車
1a 内側側面(台車駆動面)
1b 外側側面(台車駆動面)
2 台車駆動装置
3,4 走行レール
5,6 走行車輪
7 サイドローラ
8 摩擦駆動ローラ
9 前揺動アーム
9a 内側面(台車駆動面)
10 後揺動アーム
10a 外側面(台車駆動面)
11,12 垂直支軸
13 前ガイドローラ
14 後ガイドローラ
15 ガイドレール
15a 内側ガイドレール
15b 外側ガイドレール
A 搬送方向
B 回転方向
C1,C2 曲率中心
R1,R2 曲率半径
FL 床面
CL 天井


【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦駆動ローラを有する複数の台車駆動装置を搬送経路に沿って配設し、該搬送経路を形成する走行レール上を走行する非自走式台車の搬送方向に延びる側面である台車駆動面に前記摩擦駆動ローラを圧接することにより、前記台車を搬送する摩擦駆動式台車コンベアであって、
前記台車の内側端に、前後方向中央よりも前側に位置する垂直支軸に後端を支持されて前記台車の前端部まで前方へ延び、該支軸まわりに内側に揺動可能であるとともに、垂直軸まわりに回転可能な前ガイドローラが前端部下側に設けられた前揺動アームと、前後方向中央よりも後側に位置する垂直支軸に前端を支持されて前記台車の後端部まで後方へ延び、該支軸まわりに内側に揺動可能であるとともに、垂直軸まわりに回転可能な後ガイドローラが後端部下側に設けられた後揺動アームとを備え、
水平カーブ状経路部の前記走行レールよりも内側に、前記前ガイドローラ及び後ガイドローラが係合するガイドレールを設置することにより、水平カーブ状経路部を走行する前記台車の内側端から内側に揺動する前記前後の揺動アームの内側面を台車駆動面としてなることを特徴とする摩擦駆動式台車コンベア
【請求項2】
前記台車が直線経路部を走行中に、前記前後の揺動アームを前記台車の内側端に沿って前後方向に延びた状態に保持する保持手段を設けてなる請求項1記載の摩擦駆動式台車コンベア。
【請求項3】
前記前後の揺動アームが前記台車の内側端に沿って前後方向に延びた状態となるように付勢する弾性付勢手段を設けてなる請求項1記載の摩擦駆動式台車コンベア。
【請求項4】
前記台車の搬送方向に延びる内側側面の上部又は下部に前記前後の揺動アームの内側面を位置させ、前記前後の垂直支軸間の前記内側側面及び前記前後の揺動アームの内側面を前記台車が水平カーブ状経路部を走行する際の台車駆動面とし、前記内側側面の下部又は上部を前記台車が直線経路部を走行する際の台車駆動面としてなる請求項1〜3の何れかに記載の摩擦駆動式台車コンベア。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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