説明

撚り戻し装置

【課題】 ツイストペア線の撚りと曲げとを同時に短時間で取ることができ、作業効率を向上させることが可能な捻り戻し装置を提供する。
【解決手段】 一対に撚り合うツイストペア線1aを複数合わせ持つケーブル1の端部に端子を接続するためツイストペア線1aを露出させて撚りを戻す撚り戻し装置であって、所定の回転軸Aを中心として回転する回転基台12と、この回転基台12の回転する表面に回転軸Aから偏心した両側に対に設けられてツイストペア線1aの撚り合う一対の先端を各々把持するチャック部14とを備え、このチャック部14にツイストペア線1aの一対に撚り合う先端を各々把持させた状態で該ツイストペア線1aに張力を加えて回転基台12を回転させるとによって撚りを戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撚り戻し装置に係り、より詳細には、一対に撚り合うツイストペア線を複数合わせ持つケーブルの端部に、端子接続のためにツイストペア線を露出させて撚りを戻す撚り戻し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、撚り戻し装置は、一対に撚り合うツイストペア線を複数合わせ持つ、例えば、UTPケーブル(LANケーブル)などのケーブルの端部に、端子(コネクタ)等を接続するため、この端部でツイストペア線の被服部を剥して露出させて、ウレタン又はシリコンなどのブロック間に挟んで抜き取ることで撚りを戻す(取る)装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平6−22426号公報
【0003】
前述したブロックを用いて撚りを戻す撚り戻し装置の実施形態を、図8を参照して説明する。図8は、このようなブロックを用いた従来の撚り戻し装置の一実施形態を示す外観図である。図8に示すように、従来の撚り戻し装置の一実施形態は、一対に撚り合うツイストペア線1a(以下、ペア線と称す)を複数合わせ持つケーブル1の端部に、端子(コネクタ:図示せず)を接続するため、この端部でペア線1aの被覆部を剥して露出させて撚りを戻す(取る)装置であって、この露出したペア線1aを載置する固定ブロック52と、この固定ブロック52に載置したペア線1aを上部から挟み込む押圧ブロック54とを各々備えている。ここで、固定ブロック52と押圧ブロック54とは、お互い同じ硬度90度近傍のウレタンゴム又は硬度50度近傍のシリコンゴムからなり、複数のペア線1aを設置できるように両側の長手方向に延在して断面が角形をなす四角柱状に形成されている。
【0004】
このような構成からなる従来の撚り戻し装置の一実施形態を用いる場合、図8に示したように、まずケーブル1の端部に複数露出したペア線1aを固定ブロック52に載置し、この上部からペア線1aを挟み込むように押圧ブロック54を降下させる。この際、押圧ブロック54は、固定ブロック52に対して図8に示した所定の角度α(例えば、約15度)だけ傾けて、お互いの各稜部52a、54aによって複数のペア線1aを挟持する。そして、ペア線1aを稜部52a、54aで挟んだ後、この稜部52a、54aに挟持した複数のペア線1aを抜き取るとともに、再び、押圧ブロック54aを昇降させてペア線1aを挟持して抜き取る動作を数回繰り返し行うことでペア線1aの撚りと曲げとを完全に取り、このペア線1aの先端に端子を接続可能な状態にする。
【0005】
このように従来の撚り戻し装置は、弾性を有した固定ブロック52と押圧ブロック54との稜部52a、54aに複数のペア線1aを挟み込んで抜き取ることで、このペア線1aに損傷を与えることなく、ケーブル1端部に複数露出したペア線1aの撚り(及び曲げ)を一括して効率的に取ることができ生産性を向上していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の撚り戻し装置では、ケーブル1の端部に複数露出させたペア線1aの撚りが、全て同じ回数または幅に撚られてないため、ツイストペア線1aの撚りと曲げとを一度に全て戻すことができず、固定ブロック52と押圧ブロック54とに挟んで抜き取る動作を複数回繰り返す必要があり、撚り戻し作業に時間がかかるという不具合があった。そこで、この撚り戻し時には、通常、作業者が時間を短縮するために、複数のツイストペア線1aの間に直接指を挟み込んで引き抜く動作(しごき)により撚りと曲げとを取っていたが、これでは作業者の指が痛くなるという不具合があった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、その目的は、ツイストペア線の撚りと曲げとを同時に短時間で取ることができ、作業効率を向上させることが可能な撚り戻し装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上述した課題を解決するために、一対に撚り合うツイストペア線を複数合わせ持つケーブルの端部に端子を接続するためツイストペア線を露出させて撚りを戻す撚り戻し装置であって、所定の回転軸を中心として回転する回転基台と、この回転基台の回転する表面に回転軸から偏心した両側に対に設けられてツイストペア線の撚り合う一対の先端を各々把持するチャック部とを備え、このチャック部にツイストペア線の一対に撚り合う先端を各々把持させた状態で該ツイストペア線に張力を加えて回転基台を回転させるとによって撚りを戻す。
【0009】
ここで、回転基台は、自動または手動により回転し、ツイストペア線が撚り合う方向によって回転方向を正逆反転可能に設けることが好ましい。また、チャック部は、回転軸から偏心した両側で各々回転可能に設けられ、回転基台が回転してツイストペア線の撚りを戻した後、張力を加えて把持した状態で更に回転して曲げを取ることが好ましい。また、チャック部は、ツイストペア線が撚り合う方向によって回転方向を正逆反転可能に設けることが好ましい。また、回転基台とチャック部とは、作業者が把持可能な携帯型の本体、または据え置き型の本体に収納して設けることが好ましい。また、チャック部は、ツイストペア線の先端を差し込むことで自動的に把持するように設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
以上、本発明による撚り戻し装置によれば、回転基台の回転により撚りを戻すとともに張力を加えることによって曲げを同時に取ることができるため、ツイストペア線の撚りと曲げとを数回繰り返して取る必要がなく、一度で確実に実行でき時間の短縮になるとともに、作業者が容易に実行することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、添付図面を参照して本発明による撚り戻し装置の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明による撚り戻し装置の第1の実施形態を示す外観図である。また、図2は、図1に示したチャック部14の詳細を示す拡大図である。また、図3は、図1に示した撚り戻し装置の動作を示す動作説明図であり、図3(a)はツイストペア線1aを把持した状態を、図3(b)はツイストペア線1aの撚りを戻した状態を、図3(c)はツイストペア線1aの曲げを取った状態を各々示している。また、図4は、図3に示したツイストペア線1aの撚り戻し前後の状態を示す図であり、図4(a)は撚り戻し前の状態を、図4(b)は撚り戻し後の状態を各々示している。また、図5は、本発明による撚り戻し装置の第2の実施形態を示す外観図である。また、図6は、本発明による撚り戻し装置の第3の実施形態を示す外観図である。また、図7は、図3に示したチャック部の他の実施例を示す図である。
【実施例1】
【0012】
図1に示すように、本発明による撚り戻し装置の第1の実施形態は、一対に撚り合うツイストペア線1a(以下、ペア線と称す)を複数合わせ持つケーブル1の端部に、端子(コネクタ:図示せず)を接続するため、このケーブル1端部のペア線1aの被覆部を剥して露出させて撚りを戻す装置であって、作業者が把持可能な携帯型の本体10を設け、この本体10内に収納してベアリング16により所定の回転軸Aを中心として回転可能に支持した回転基台12と、この回転基台12の回転する端部表面に設けてペア線1aの撚り合う一対の先端を各々把持するチャック部14とを備えている。この際、ペア線1aは、ケーブル1の端部で露出する長さを、約3cm程度の長さに設定(図4(a)参照)している。
【0013】
ここで、回転基台12は、図1に示した棒状に長く延在する本体10内から一端側の先端に円形の表面(図3参照)を露出させた状態に配置され、この本体10内で前述したベアリング16により回転可能に枢支されている。この際、回転基台12は、本体10の外側に手動で回転させるローレット部12aを一体に設けて露出させており、このローレット部12aを作業者が手動で回すことで、回転基台12が同時に回転してペア線1aの撚りを戻す構造になっている。この際、回転基台12は、ローレット部12aの回転方向を正逆反転可能に支持されており、ペア線1aが撚り合う方向に応じて適宜、回転方向を変えられるように設けている。
【0014】
また、チャック部14は、回転基台12の回転する表面に中心の回転軸Aから偏心した両側に各々対に設けられ、ペア線1aの撚り合う一対の先端を各々把持するように形成している。より詳しく説明すると、チャック部14は、ペア線1aの先端を挿入して把持する場合、図2に示すように、ドリルチャックなどのチャック式金具のような構造に形成されており、ペア線1aの先端を差し込むと、この挿入した先端が終端の接点(図示せず)に当接して自動的に把持するように形成されている。即ち、本実施の形態では、チャック部14にペア線1aの撚り合う先端を各々把持させた状態で、回転基台12を作業者が手動で回転させて撚りを戻すものであって、この際、ペア線1aに張力を加えることで曲げも同時に取る構造に形成されている。
【0015】
このように形成された本発明による撚り戻し装置の第1実施形態によりペア線1aの撚りを戻す動作を、図3及び4を参照して詳細に説明する。本発明による撚り戻し装置の第1の実施形態は、図3(a)に示すように、まず、ケーブル1の端部に露出する一対に撚り合ったペア線1aの先端を、チャック部14に挿入し、このペア線1aの先端を終端の接点に触れさせることで自動的にチャック部14に把持させる。そして、チャック部14に撚り合う一対のペア線1a先端を各々把持させた後、ケーブル1を引っ張って一対のペア線1aに張力を加える。これによりペア線1aは、図3(b)に示すように、お互い撚り合った状態で引っ張られて、捩れによる曲げを引き延ばした状態にする。その後、ペア線1aを延ばした状態で、作業者がローレット部12a(図1参照)を手動で回すことにより、回転基台12が回転してペア線1aの撚りを戻すことができる。これにより撚り合った一対のペア線1aは、図3(c)に示すように、回転基台12の回転により撚りが戻り、それぞれ離間した状態まで戻すことができる。このような動作を繰り返し行うことで複数のペア線1aは、図4(a)に示すように一対に撚り合って複数露出した状態から、図4(b)に示すように撚りが戻り真っすぐに延びて曲げが取られた状態になり、先端に端子を接続することが可能になる。
【0016】
このように、本発明による撚り戻し装置の第1の実施形態によると、回転基台12の回転により撚りを戻すとともに、張力を加えることによって捩れた曲げを同時に取ることができるため、ペア線1aの撚りと曲げとを数回繰り返して取る必要がなく、一括して確実に実行することができ時間の短縮になるとともに、作業者が容易に実行することができる。また、回転基台12の回転方向及び回転回数を自由に反転できるため、種々のペア線1aの撚りに対応して用いることができる。
【実施例2】
【0017】
次に、図5を参照して、本発明による撚り戻し装置の第2の実施形態を詳細に説明する。図5に示すように、本発明による撚り戻し装置の第2の実施形態は、図1に示した回転基台を手動ではなく自動で回転できるようにしたものであって、作業者が把持可能な携帯型の本体20を設け、この本体20内に電池29を備えて回転するモータ28を有して該モータ28の回転軸Bを中心としてベアリング26により回転可能に支持した回転基台22と、この回転基台22の回転する端部表面に設けられてケーブル1の端部に露出させたペア線1aの撚り合う一対の先端を各々把持するチャック部24とを備えている。ここで、本体20は、モータ28を収納した近傍の外側にスイッチ27を露出させて設けており、このスイッチ27によりモータ28の正逆回転及び停止の操作が可能であり、ペア線1aの撚り合う方向によって適宜、回転方向を正逆反転できるように設けている。
【0018】
このように形成された本発明による撚り戻し装置の第2の実施形態は、ペア線1aの撚りを戻す場合、スイッチ27により自動で回転基台22の回転及び停止を操作する以外、全て図3に示した動作と同じであり、ここでは重複する説明を省略する。
【0019】
このように、本発明による撚り戻し装置の第2の実施形態によると、第1の実施形態とほぼ同じ動作によってペア線1aの撚りを戻せるため、第1の実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、スイッチ27の操作で自動に回転基台22を一定に回転させることができ、作業者が変わっても平均して同じ状態で撚りを戻すことができる。
【実施例3】
【0020】
次に、図6を参照して、本発明による撚り戻し装置の第3の実施形態を詳細に説明する。図6に示すように、本発明による撚り戻し装置の第3の実施形態は、図1及び5に示した携帯型の本体10、20とは異なり、所定の位置に設置する据え置き型の本体に設けたものであって、箱状の本体30を設け、この本体30内に所定の回転軸(図示せず)を中心として回転する回転基台32と、この回転基台32の回転する表面でケーブル1の端部に露出させたペア線1aの撚り合う一対の先端を各々把持するチャック部34とを備えている。
【0021】
このように形成された本発明による撚り戻し装置の第3の実施形態では、図1又は5に示した撚り戻し装置のように手動または自動により回転基台32を回転させることで、図3に示した動作とほぼ同じ手順でペア線1aの撚りを戻すことができる。
【0022】
従って、本発明による撚り戻し装置の第3の実施形態によると、第1又は第2の実施形態とほぼ同じ動作によってペア線1aの撚りを戻せるため、この第1又は第2の実施形態と同様の効果を得ることができるとともに、本体30を据え置き型に設置するため、携帯型に比べて安定して作業することが可能になる。
【0023】
以上、本発明による撚り戻し装置の実施の形態を詳細に説明したが、本発明は前述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、本体を1台だけ設けた実施の形態を説明したが、これに限定されるものではなく、複数台備えて作業効率を向上させても良い。
また、チャック部を回転基台に固定して設けた実施例を詳細に説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、チャック部を回転基台の回転軸から偏心した両側で各々回転可能に設けて、回転基台が回転してツイストペア線の撚りを戻した後、張力を加えて把持した状態(図3(c)参照)で更に回転して曲げを取るように設けてもよい。これはペア線に種々の線種があり、撚りを戻して張力を加えても捩れによる曲げを取ることができない場合があり、このような場合に、図7に示すようにチャック部44を回転可能に設けてペア線1aの曲げを取ることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明による撚り戻し装置の第1の実施形態を示す外観図。(実施例1)
【図2】図1に示したチャック部の詳細を示す拡大図
【図3】図1に示した撚り戻し装置の動作を示す動作説明図。
【図4】図3に示したツイストペア線の撚り戻し前後の状態を示す図。
【図5】本発明による撚り戻し装置の第2の実施形態を示す外観図。(実施例2)
【図6】本発明による撚り戻し装置の第3の実施形態を示す外観図。(実施例3)
【図7】図3に示したチャック部の他の実施例を示す図。
【図8】従来の撚り戻し装置の一実施形態を示す外観図。
【符号の説明】
【0025】
1 ケーブル
1a ツイストペア線
10 本体
12 回転基台
12a ローレット部
14 チャック部
16 ベアリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対に撚り合うツイストペア線を複数合わせ持つケーブルの端部に、端子を接続するため前記ツイストペア線を露出させて撚りを戻す撚り戻し装置において、
所定の回転軸を中心として回転する回転基台と、
前記回転基台の回転する表面に前記回転軸から偏心した両側に対に設けられ、前記ツイストペア線の撚り合う一対の先端を各々把持するチャック部とを備え、
前記チャック部に前記ツイストペア線の一対に撚り合う先端を各々把持させた状態で、該ツイストペア線に張力を加えて前記回転基台を回転させるとによって、撚りを戻すことを特徴とする撚り戻し装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撚り戻し装置において、
前記回転基台は、自動または手動により回転し、前記ツイストペア線が撚り合う方向によって回転方向を正逆反転可能に設けたことを特徴とする撚り戻し装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の撚り戻し装置において、
前記チャック部は、前記回転軸から偏心した両側で各々回転可能に設けられ、前記回転基台が回転して前記ツイストペア線の撚りを戻した後、張力を加えて把持した状態で更に回転して曲げを取ることを特徴とする撚り戻し装置。
【請求項4】
請求項3に記載の撚り戻し装置において、
前記チャック部は、前記ツイストペア線が撚り合う方向によって回転方向を正逆反転可能に設けたことを特徴とする撚り戻し装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の撚り戻し装置において、
前記回転基台とチャック部とは、作業者が把持可能な携帯型の本体、または据え置き型の本体に収納して設けたことを特徴とする撚り戻し装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の撚り戻し装置において、
前記チャック部は、前記ツイストペア線の先端を差し込むことで自動的に把持するように設けたことを特徴とする撚り戻し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−280176(P2006−280176A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−99550(P2005−99550)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(591080678)株式会社中電工 (64)
【Fターム(参考)】