説明

撮像システムおよび撮像方法

【課題】非破壊試験に関し、特に超音波イメージングに関する。トランスデューサ素子からなるアレイを有する携帯型の超音波撮像システムを動作させる、適応型のビーム形成の撮像方法が開示される。
【解決手段】この方法は、アレイ20における異なるサブアパーチャ1-3を用いて、それぞれの送信に伴う複数のビーム形成の超音波信号を送信するステップと、反射超音波信号を受信して、それぞれの個別のサブアパーチャの送信のもとでのDASのビーム形成をもたらすステップとを含む。それぞれのサブアパーチャの送信からの、受信され時間遅延した信号におけるコヒーレントエネルギーの割合に基づいてコヒーレンス係数が計算される。定められたサブアパーチャの送信のもとでのすべてのビーム形成のイメージングは、適応可能なコヒーレンスで重み付けされ、最終的なビーム形成の出力に合成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して非破壊試験に関し、詳細には超音波イメージングに関する。
【背景技術】
【0002】
非破壊試験デバイスは、試験対象物を検査して、その試験対象物の不具合および欠陥を特定および分析するために用いることができる。オペレータは、試験対象物の表面、または、その表面の近くにプローブを動かし、その試験対象物の表面と、その表面の下にある構造体との両方の試験を行うことができる。非破壊試験は、周囲の構造物から試験対象物を取り外すことなくその対象物の試験が行われる必要があり、また目視検査では特定できない隠れた欠陥がある可能性のある、航空宇宙、発電、原油およびガスの採取ならびに精製などの一部の産業において特に有用であり得る。
【0003】
非破壊試験の一例は、超音波試験である。超音波試験を行う場合、プローブから超音波パルスを放射し、その超音波パルスを、試験対象物の特定の材料における固有の音速で、その試験対象物を通して送ることができる。所与の材料における音速は、主に材料の弾性係数、温度、および密度に依存する。試験対象物への超音波パルスの印加によって、超音波パルスと、試験対象物の構造体との間の相互作用が引き起こされ、音波は反射してプローブに戻る。プローブによって受信される信号に対する評価、すなわち、これらの信号の振幅および伝搬時間(time of flight)によって、試験対象物を破壊することなく、亀裂または腐食などの試験対象物における内部品質に関する判定を行うことが可能となる。
【0004】
一般に、超音波試験システムは、試験対象物に信号を送信し、また試験対象物から信号を受信するためのプローブと、プローブを超音波試験ユニットに接続するプローブケーブルと、試験結果を見るためのスクリーンまたはモニタとを含む。超音波試験ユニットは、電源コンポーネント、信号生成回路、信号増幅回路、および、信号処理回路、ならびに、非破壊試験デバイスを動作させるために用いられるデバイス制御部を含む。一部の超音波試験ユニットは、システム動作と、試験結果の処理とを制御し、表示を行うコンピュータに接続することができる。電気パルスは、送信器によって生成することができ、それらの電気パルスが超音波トランスデューサによって超音波パルスに変換され得るプローブに送ることができる。
【0005】
従来の超音波撮像システムは、集束した超音波ビームを対象物に向けて送信することによってその対象物を走査するために、超音波トランスデューサ素子のアレイを有する。反射した音響波は、受信され、ビーム形成され、表示用に処理される。
【0006】
従来のビーム形成方法では、リニアアレイ構造体によってビームパターンプロファイル(beam pattern profile)が決められる。素子間隔は、グレーティングローブを避けるために動作周波数の半波長未満に設定されていた。アレイ構造体の素子が少ない場合、そのアレイ構造体は、広いメインローブと、予測可能な角度における高レベルのサイドローブを有するという固有の問題を被る。これは、広いメインビームに起因する集束の弱い応答によって引き起こされる解像度の低さと、高レベルの不用なサイドローブに起因する著しい干渉を受ける実際の反射波どうしの間の低コントラストとを伴う、低品質のイメージングをもたらす。サイドローブのレベルは、様々なシェーディングウィンドウ(shading window)を用いることによって抑圧することができるが、これは、トレードオフの代償としてメインローブを広げ、それによりイメージングの解像度はさらに低下する。最小分散法などの、サイドローブの影響を効果的に低減するための他の方法が考えられているが、これらの方法は、一般に相当なレベルの計算を必要とし、コストの増加とスピードの低下をもたらす。
【0007】
大規模なアレイ構造体を用いることによってサイドローブのレベルを下げることができるが、これは、このようなあらゆるシステムのコスト、サイズ、および複雑さを増やす。
【発明の概要】
【0008】
大きすぎず、複雑すぎず、また高価すぎることなく、高いコントラストと、許容可能な良好な解像度とを有する良好な品質の出力画像をもたらす携帯型の撮像システム、および、対応する方法を有することが望ましい。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、トランスデューサ素子のアレイを有する超音波撮像システムを動作させる方法が提供され、この方法は、複数の超音波信号を送信するステップであって、それぞれの送信に、上記アレイにおける異なるサブアパーチャが用いられる、ステップと、アレイ全体、または、アレイにおけるサブアパーチャを用いてそれぞれのサブアパーチャの送信に対応する反射超音波信号を受信するステップと、それぞれのサブアパーチャの送信からの受信信号におけるコヒーレントエネルギーの割合に相当するコヒーレンス係数を計算し、計算されたコヒーレンス係数によって、対応する出力信号に重み付けするステップと、異なるすべてのサブアパーチャの送信のもとでの、コヒーレンス係数で重み付けされたすべての出力信号を合成して、イメージングによって変換された最終的なピクセル強度を生成するステップとを含む。
【0010】
アレイにおける異なるサブアパーチャを用いて複数の超音波信号を送信するステップは、多数の送信チャネルを有することなく、欠陥に対する強化された受信感度を提供する。コヒーレンス係数を用いることによって、サイドローブの抑圧が強化され、それにより、鮮明度、コントラスト、および解像度における向上した品質でイメージングを提供するためのビーム形成の性能が強化される。
【0011】
それぞれのサブアパーチャでは、アレイにおけるトランスデューサ素子の任意の分割が用いられてもよい。サブアパーチャは、互いにオーバーラップしていてもしていなくてもよく、向上したサードローブの抑圧と、強化された画像コントラストとをもたらす。トランスデューサ素子からなるアレイのすべてが、反射超音波信号を受信し、それぞれの受信フォーカシング信号を生成するために用いられることが好ましい。コヒーレンス係数は、受信されたそれぞれのトランスデューサ信号の非コヒーレントエネルギー全体におけるコヒーレントエネルギーの割合に相当することが好ましい。
【0012】
受信信号は、ビーム形成されることなどによってフォーカシングされてもよい。
【0013】
コヒーレンス係数は、0と1を含む0から1の範囲であることが好ましい。高い値は、収集された信号エネルギー全体に含まれるコヒーレントエネルギーの高い割合、すなわち、良好なフォーカシング品質における高い信頼度を示す。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、超音波撮像システムが提供され、このシステムは、アレイにおける異なるサブアパーチャを用いて複数の超音波信号を送信し、サブアパーチャの送信ごとに試験片からの反射超音波信号を受信するように構成されたトランスデューサ素子のアレイと、それぞれのサブアパーチャの送信からの受信信号におけるコヒーレントエネルギーの割合に相当するコヒーレンス係数を計算し、計算されたコヒーレンス係数によって受信信号を重み付けするように構成され、異なるサブアパーチャの送信からの重み付けされたすべての出力を合成するコントローラと、試験片の構造を示す画像を表示するために、提供される出力信号をディスプレイに提供するための出力部とを備える。
【0015】
次に添付図面を参照して、本発明の例を例示のみによって説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】典型的な超音波試験システムの例である。
【図2】本発明を例示する超音波試験システムの例である。
【図3】本発明の例における非オーバーラップのサブアパーチャ送信部のより詳細な例である。
【図4】ビーム形成ステアリング走査イメージングの図である。
【図5】本発明の例である図3における3つのサブアパーチャ送信に関係する受信部のより詳細な例である。
【図6a】動的受信フォーカシングを伴う合成固定送信フォーカシング(STF−DRF)だけを用いたシステムによって生成されたイメージングの例である。
【図6b】本発明の例によって生成された、適応型の合成STF−DRTイメージングの例である。
【図7】図6aおよび図6bに示されている画像に対する、様々な深さにおいて検出された欠陥のピクセル強度を示す図である。
【図8a】合成サブアパーチャの、動的受信フォーカシングを伴う合成固定送信フォーカシング(STF−DRF)法によるイメージングと、本発明の例によるイメージングとのさらなる比較例である。
【図8b】合成サブアパーチャの、動的受信フォーカシングを伴う合成固定送信フォーカシング(STF−DRF)法によるイメージングと、本発明の例によるイメージングとのさらなる比較例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、超音波試験システム1の例を示す。このシステムは、試験対象物3に信号を送信し、また試験対象物3から信号を受信するためのプローブ2を含む。この例では、プローブ2は、信号を送信し、試験対象物3から反射した超音波信号を受信するように構成されている。しかし他の例では、プローブは、代替的に、試験対象物3を貫通して送信された超音波信号を受信するように構成されていてもよい。試験対象物3は、周囲の構造物から試験対象物3を取り外すことを必要とせずに試験を行うことができる、例えば飛行機または船などの乗り物のパネル、パイプラインの部分、または、工場の一部などの、不具合または欠陥を求めて分析される任意の好適な対象物でもよい。使用時には、プローブ2は、試験対象物3の構造を分析するために、試験対象物3の表面の上を動かされる。プローブ2は、トランスデューサ素子のアレイを有する。プローブケーブル4は、プローブ2を超音波試験ユニット5に接続する。この超音波試験ユニットは、例えばプローブ2に送られることになる電気パルスを生成するために、信号生成回路、信号増幅回路、および、信号処理回路などのための制御プロセッサを有し、プローブ2では、電気パルスが超音波トランスデューサによって超音波パルスに変換される。また、超音波試験ユニット5は、プローブ2によってもたらされる反射信号を受信することができる。超音波試験ユニット5は、電気出力部を有しており、ユーザーが試験対象物3の構造を分析し、また、その試験対象物における可能性のある任意の不具合または欠陥を特定することを可能とするために、その出力部に基づく結果をユーザーに表示するためのスクリーンもしくはモニタ6を含んでいてもよく、または、スクリーンもしくはモニタ6に接続されていてもよい。携帯型の試験システムの場合には、超音波試験ユニット5は、単一ユニットとしてスクリーンまたはモニタ6と組み合わせられることになる。スクリーンまたはモニタ6は、超音波試験ユニット5に接続することができ、また超音波試験ユニット5の機能の一部を提供することが可能なコンピュータによって提供されてもよい。
【0018】
図2は、本発明による撮像システム10の実施形態を示す。この実施形態は、適応型の合成送信フォーカシングおよび動的受信フォーカシング(適応型のSTF−DRF)のビーム形成方法である。プローブ2は、アレイ20’の中に複数のトランスデューサ素子20を含む。この例では、図2は、16個のトランスデューサ素子20からなるリニアアレイ20’を有するプローブ2を示す。上側部分2’は、送信時のプローブを概略的に示す。理解されるように、プローブ2は、異なるサブアパーチャまたはサブアレイを用いて複数の超音波信号を送信するように構成されている。図2の例では、サブアレイ1またはサブアパーチャ1は、アレイ20’の左側における8つのトランスデューサ素子20を用いて送信することを含み、サブアレイ2またはサブアパーチャ2は、アレイ20’の中央における8つのトランスデューサ素子20を用いて送信することを含み、また、サブアレイ3またはサブアパーチャ3は、アレイ構造20’の右手側における8つのトランスデューサ素子20を用いて送信することを含み、これらのサブアパーチャは順に並んでいる。オーバーラップしていてもしていなくてもよい任意の所望数のトランスデューサ素子20を用いた、アレイ20’におけるサブアパーチャの任意の好適な構成を用いることができる。図2に示されているプローブ2の下側部分2’’は、試験対象物3からのエコーを受信するための、トランスデューサアレイの使い方を示す。この例では、反射信号を受信するために、アレイ20’におけるすべてのトランスデューサ素子20が用いられている。この例では、それぞれのトランスデューサ素子20によって生成され、受信された超音波信号に該当する信号は、遅延ユニット21において適切なビーム形成の遅延を受け、遅延した受信信号は、合計ユニット22において合計される。次に、それぞれのサブアパーチャ送信からの受信されたビーム形成出力は、それぞれの受信信号におけるコヒーレントエネルギーの割合に相当するコヒーレンス係数CF1(t)、CF2(t)、CF3(t)、・・・によって重み付け(23)される。この重み付け(23)は、コヒーレンス係数による乗算を含むことができる。この例では、それぞれのサブアパーチャ送信からの受信されたそれぞれの信号の非コヒーレントエネルギー全体におけるコヒーレントエネルギーの割合に相当するコヒーレンス係数は、コヒーレンス係数ユニット24で求められる。
【0019】
次に、それぞれのサブアパーチャ送信からの、コヒーレンス係数で重み付けされた受信出力は、どのような不具合または欠陥も容易に特定され得るように、より鮮明な最終画像を提供するために合成ユニット25によって合計される。
【0020】
実際には、遅延(21)、DASビーム形成(22)、重み付け(23)、適応可能なコヒーレンス係数の決定(24)、および合成(25)のすべては、コンピュータ、マイクロプロセッサなどの制御プロセッサ、または、ハードワイヤードの電子回路によって行われる。
【0021】
図2は、単一のプローブ2を示しており、第1のサブアレイ1または第1のサブアパーチャ1によってトランスデューサ素子20がまず発射モードで用いられ、次に、第2のサブアレイ2または第2のサブアパーチャ2によってトランスデューサ素子20が第2の発射モードで用いられ、次に、第3のサブアレイ3または第3のサブアパーチャ3によってトランスデューサ素子20が第3の発射モードで用いられる。発射モードにおけるそれぞれのサブアパーチャの下には、受信器モードで機能するアレイ20’におけるトランスデューサ素子20と、受信されたそれぞれのビーム形成出力をコヒーレンス係数(24)によって重み付けすること(23)と、それぞれのサブアパーチャ送信からの、コヒーレンス係数で重み付けされた受信されたビーム形成出力のすべてを合成すること(25)とのすべてが示されている。
【0022】
図3は、プローブ2が3つのサブアパーチャ(Fire−1、Fire−2、および、Fire−3)によって制御される別の例を示す。この例では、サブアパーチャはオーバーラップしない。しかし、本発明は、2つ以上の任意の好適な数のサブアパーチャに関し、それぞれのサブアパーチャは、2つ以上の任意数のトランスデューサ素子を含むことができる。この例では、トランスデューサ素子20からなるアレイ20’における、異なるサブアパーチャにおける連続的な発射を例示するために、ロータリスイッチ51を含む超音波試験ユニット5が概略的に示されている。図3の例は、必要な走査のステアリング角とフォーカシング深度で試験対象物3に入る、ビーム形成され、ステアリングされ、フォーカシングされた送信ビーム28を生成するために、それぞれのトランスデューサ素子からの信号26が遅延する(27)ことを示す。サブアパーチャは、状況に応じてユニット27で遅延を調節することによって、固定フォーカシングまたは動的フォーカシングなどの任意である所望のフォーカシング方法をとることができる。対応する遅延は、受信部21で用いられる。
【0023】
エコーを収集するためにアレイ2’’全体におけるすべての素子(N個の素子20)がアクティブになる一方で、パルスを試験対象物3に発射するためにサブアパーチャを用いることによって、感度と、侵入度と、往復のデータ処理(round−trip of data processing)ごとの信号対雑音比とのうちの1つまたは複数が増す。非オーバーラップの合成の送信の場合、定義されたそれぞれの単一サブアレイにM個の素子が含まれているとすると、すべての合成送信処理に対してL個(L=N/M)のサブアレイが用いられていることになる(ここで、k=1:L)。また、サブアレイは、オーバーラップによって定義することもできる。この手段によって、サブアレイの数は増え、オーバーラップ素子を重み付けすることによってアレイ全体にアポディゼーションが導入される。
【0024】
本発明におけるSTF−DRFのビーム形成の段階では、sub−aperture(k)として示されるk番目のグループは、複数のM個の送信素子からなる。それぞれの発射の段階では、それぞれの発射プロセスに対してパルスを試験対象物3に入射するためにM個の素子がアクティブとなり、エコーの段階では、収集のためにアレイ全体におけるすべての素子(N個の素子)がアクティブとなる。受信のためにアレイ全体を用いる、組み合わされたサブアレイ送信に対するL回の往復によって、データ記憶量(data storage)はL*NのRFラインに減少する。
【0025】
アレイの位相中心は、STF−DRF法によってあらかじめ決められていてもよく、サブアレイの位相中心は、それぞれの関係するサブアレイの幾何学的な中心点に定められてもよい。位相中心は、k番目のsub−aperture(k)の場合、(XSub(k)_PhaseCenter,Zsub(k)_PhaseCenter=0)として示される横方向X、および深さZの次元に調整される。サブアレイの位相中心は、アレイ全体の位相中心からXSub(k)_PhaseCenterだけ右または左に平行移動している。
【0026】
図4は、ビーム形成ステアリング走査イメージングを示す。sub−array(k)のステアリングの角度αの送信におけるビームラインに沿う撮像ピクセル(x,z)の強度を計算するために、角度αによって対応する固定の送信の焦点
【0027】
【数1】

を計算することができ、固定の送信の焦点は、横方向のXSub(k)_PhaseCenterにおける関連するサブアレイの位相中心によって回転とシフトをしており、
【0028】
【数2】

が得られ、上式で、Rは、k番目のサブアレイに対する固定の送信範囲であり、パルスは、i番目の送信素子から音の移動速度CSoundで焦点に、
【0029】
【数3】

のように遅延をもって伝わる。一方、動的フォーカシングに関係するエコー時間遅延は、k番目のサブアレイの発射のもとでのj番目の受信素子に対して、
【0030】
【数4】

として説明することができる。
【0031】
動的受信フォーカシングを伴う合成送信フォーカシング(STF−DRF)のビーム形成方法は、ステアリングの角度αの方向から取り出されるエコーを、
【0032】
【数5】

として与える。
【0033】
第1の和(kによる添え字)は、L個のサブアパーチャの合成仮想アレイの送信のためのものであり、第2の和(iによる添え字)は、送信のビーム形成の和のためのものであり、第3の和(jによる添え字)は、受信のビーム形成のためのものである。
【0034】
図5は、試験対象物3から反射した超音波信号を受信するプローブ2および超音波試験ユニットのより詳細な図を示す。この例では、それぞれのサブアパーチャの送信の後に試験対象物3からの反射エコーを収集するために、プローブ2におけるすべてのトランスデューサ素子20が用いられている。次に、トランスデューサ素子20からの信号29は、必要なフォーカシング遅延に相当する量だけ遅延する(21)。次に、アレイにおける受信中のトランスデューサ素子20のすべてからの遅延した信号30は、コヒーレンス係数によって重み付けされる前に合計される(22)。
【0035】
次に、コヒーレンス係数を求めるための方法の例を説明する。
【0036】
トランスデューサアレイ20’が、NumRecとして与えられる複数の受信中のトランスデューサ素子20を有し、サブアパーチャのビームを形成する送信するサブアレイの数がNumSubである場合、ビームステアリング走査領域におけるそれぞれの受信ピクセル(x,z)の撮像強度は、
【0037】
【数6】

として説明することができ、上式で、Xsub,j(t−τj(x,z))は、Sub番目のサブアパーチャの固定フォーカシングの発射のもとでの受信フェーズアレイにおけるi番目の受信素子20の、時間調整された受信信号である。
【0038】
受信アレイ素子20を通じて収集されたそれぞれの受信エコー信号は、ブロック21によって示されているように、対応する時間遅延τj(x,z)を加えることによって時間調整され、焦点(x,z)に位置合わせされることになる。次に、すべての位置合わせ信号は、ブロック22によって示されているように合計され、撮像された画像におけるフォーカシング強度ピクセル(x,z)として定められる。
【0039】
図5に示されているように、受信エコー信号を処理する間、位置合わせ信号が最終的にユニット25で撮像ピクセルに合成される前に、ステアリング走査撮像ピクセルごとにフォーカシング品質が常に評価される。コヒーレンス係数が導入され、以下の式5によって
【0040】
【数7】

として定義される。
【0041】
サブアパーチャの送信ごとのコヒーレンス係数CFSub(x,z,t)は、空間的なコヒーレンスの信頼度の割合と解釈することができ、アレイ20’におけるすべてのトランスデューサ素子からの位置合わせフォーカシング受信信号によって収集されたすべての非コヒーレントエネルギーにおけるコヒーレントエネルギーの割合またはパーセンテージとして計算される。この例では、コヒーレント係数の値は、0から1であり、0と1を含む。この値は、高いほど、収集されたすべての信号エネルギーに含まれるコヒーレントエネルギーの高い割合に相当し、この高い割合は、良好なフォーカシング品質における高い信頼度、または、正確に位置合わせされ、フォーカシングされた受信信号における高い信頼度を示す。また、コヒーレンス係数の値は、低いほど不十分なフォーカシング品質を示す。
【0042】
適応可能なコヒーレンス測定値の重み付けを加えることによって、位相が合っている信号が強調され、適応可能なコヒーレンスの信頼度の割合が増す一方、位相が合っていない信号は著しく抑圧され、干渉の著しい低減によって実際の反射波どうしの間のコントラストが強調され、結果として得られる高品質の画像がもたらされることがわかっている。
【0043】
サブアパーチャの送信アレイの数がNumSubであると共に、NumRecとして数えられる受信トランスデューサ素子20に対してコヒーレンス係数で乗算される場合、ビームステアリング走査領域のピクセル(x,z)における、結果として得られる適応可能なSTF−DRFの撮像強度は、
【0044】
【数8】

として定義される。
【0045】
上記で説明されているように、これは、干渉がはるかに少ない実際の反射波どうしの間の高いコントラストを有する、結果として得られる高品質の画像をもたらす。
【0046】
次に、複数のサブアパーチャ送信のそれぞれからの、コヒーレンス係数で重み付けされた受信信号31は、最終的な画像を提供するためにユニット25で合成される。
【0047】
異なる材料で作られているなどの様々な属性を有する試験対象物と共にこの試験システムが用いられる場合、式におけるいくつかのパラメータは、状況に応じて調整されてもよい。
【0048】
図6aは、STF−DRFの超音波イメージングの段階のみによって得られた画像を示し、図6bは、本発明の例を用いた、同じ試験対象物に対するイメージングの結果を示す。結果として得られるこれらの画像の比較よりわかるように、本発明の例によってもたらされた図6bにおけるイメージングの結果は、極めて良好なコントラストと、極めて低い干渉とを有し、それによってオペレータは、はるかに容易にこれらを解釈することができ、大きさなどの、検出された構造に関する情報を得ることができ、救済措置をとるかどうかを、より自信をもって判断することができる。
【0049】
図7は、図6aに示されている方法と、図6bに示されている本発明の例における方法とに対する、様々な深さにおいて検出された欠陥のピクセル強度における比較である。図7では、図6aに示されている方法に対する信号の振幅はaで示されており、図6bの、本発明の例によって得られた信号の振幅は、bで示されている。理解されるように、試験対象物3におけるそれぞれの欠陥について、本発明の例によってもたらされた信号は、「広がり」が少なく、はるかに正確であり、試験片における欠陥に関するはるかに正確で正しい表示をオペレータにもたらしている。
【0050】
図8aは、コヒーレンス係数を用いない撮像方法によってもたらされた、欠陥を有する試験対象物の画像における別の例を示し、図8bは、本発明の例を用いた、同じ試験片からの結果を示す。明確に理解されるように、これらの欠陥は、干渉の少ない本発明の例を用いてはるかに容易に特定可能であり、それによって、オペレータが、試験片における欠陥をはるかに確実に特定し、また、いかに深刻であるかなどの、欠陥に関する情報を提供することが可能となる。
【0051】
本発明の範囲から逸脱することなく、上記の例に対して多くの変更を行うことができる。例えば、アレイ20’における任意数のサブアパーチャが用いられてもよく、それらのサブアパーチャのそれぞれは、任意の所望数のトランスデューサ素子20を有してもよい。本発明の例は、3Dのビーム形成のイメージングを提供するために用いられてもよい。1次元アレイまたは2次元アレイなどの任意の種類のアレイが用いられてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 超音波試験システム
2 プローブ
3 試験対象物
5 超音波試験ユニット
10 撮像システム
20 トランスデューサ素子
20’ アレイ
21 遅延ユニット
22 合計ユニット
23 重み付け
24 コヒーレンス係数ユニット
25 合成ユニット
26 信号
27 遅延ユニット
28 ステアリングされ、フォーカシングされた送信ビーム
29 信号
30 遅延信号
31 コヒーレンス係数で重み付けされた受信信号
51 ロータリスイッチ
CF1(t) コヒーレンス係数
CF2(t) コヒーレンス係数
CF3(t) コヒーレンス係数
L サブアレイの数
M サブアレイにおける素子の数
N 素子全体の数
R 固定の送信範囲
α 角度
τ 時間遅延

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスデューサ素子のアレイを有する超音波撮像システムを動作させる方法であって、
複数の超音波信号を送信するステップであって、それぞれの送信に、前記アレイにおける異なるサブアパーチャが用いられる、ステップと、
それぞれのサブアパーチャの送信に対応する受信アレイによって複数の反射超音波信号を受信するステップと、
それぞれのサブアパーチャの送信からの受信信号におけるコヒーレントエネルギーの割合に相当するコヒーレンス係数を計算し、計算された前記コヒーレンス係数によって前記受信出力に重み付けするステップと、
異なるすべてのサブアパーチャの送信のもとでの、すべての重み付けされた出力を合成するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記複数のサブアパーチャの送信のそれぞれからの、前記コヒーレンス係数で重み付けされたビーム形成出力が合成される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記コヒーレンス係数が、時間調整された受信トランスデューサ信号の非コヒーレントエネルギー全体におけるコヒーレントエネルギーの割合に相当する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
サブアパーチャの送信のビーム形成、または、受信のビーム形成、または、両方のいずれかに対して遅延和の原理が用いられる、請求項1乃至3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
送信のビーム形成が、固定フォーカス送信、複数の固定フォーカス送信のゾーン、または、十分な動的送信フォーカスの形態で用いられる、請求項1乃至4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
動的フォーカシングが、受信フォーカシングのビーム形成で用いられる、請求項1乃至5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記コヒーレンス係数が、時間調整された受信信号のエネルギー、振幅、または符号のいずれかにおけるそれぞれの異なるコヒーレンス測定値によって定義される、請求項1乃至6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記コヒーレンス係数が、0と1を含む0から1の範囲に正規化され、高い値が、トランスデューサによって収集された信号全体に含まれるコヒーレント信号の高い割合を示す、請求項1乃至7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
それぞれのピクセル(x,z,t)における撮像強度が、
【数9】

によって求められ、上式で、BeamFsubが、添え字subのサブアパーチャの送信のもとでのビーム形成出力である、請求項1乃至8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記ビーム形成出力BeamFsubが、従来のDAS法、または、最小分散法(MVM)などの高度な方法のいずれかによって得られる、請求項9記載の方法。
【請求項11】
従来のDASのビーム形成が
【数10】

によって求められ、それによって、式が、
【数11】

となり、上式で、NumRecが、受信中のトランスデューサ素子の数であり、
【数12】

が、Sub番目の送信のサブアパーチャの発射のもとでの受信フェーズアレイにおけるj番目の受信素子(20)の、時間調整された受信信号であり、tが、信号が受信される時間であり、
【数13】

が、加えられる時間遅延であり、CFsub(x,z,t)が、サブアパーチャのコヒーレンス係数である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
トランスデューサ素子からなるアレイ全体、またはサブアパーチャが、それぞれのサブアパーチャの送信からの反射超音波信号に相当する信号を受信するために用いられる、請求項1乃至11のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記アレイにおけるサブアパーチャを、オーバーラップするように、または、非オーバーラップのサブアパーチャとして分割するように用いることができる、請求項1乃至12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
3Dのビーム形成イメージングに用いられる、請求項1乃至13のいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
2Dアレイを用いる、請求項1乃至14のいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
非破壊試験に用いられる、請求項1乃至15のいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
アレイにおける異なるサブアパーチャを用いて複数の超音波信号を送信し、前記サブアパーチャの送信ごとに試験片からの反射超音波信号を受信するように構成されたトランスデューサ素子のアレイと、
それぞれのサブアパーチャの送信からの受信信号におけるコヒーレントエネルギーの割合に相当するコヒーレンス係数を計算して、前記計算されたコヒーレンス係数によって前記受信信号を重み付けするように構成されたコントローラと、
前記試験片の構造を示す画像を表示するために、ディスプレイに提供される出力信号を提供するための出力部と
を備え、
前記コントローラが、前記複数のサブアパーチャの送信のそれぞれからの、前記コヒーレンス係数で重み付けされた受信信号を合成するように構成されている、超音波撮像システム。
【請求項18】
前記サブアパーチャのコヒーレンス係数が、それぞれのトランスデューサによって受信された非コヒーレントエネルギー全体におけるコヒーレントエネルギーの割合に相当する、請求項17記載の超音波撮像システム。
【請求項19】
以下の式
【数14】

を用いてそれぞれのピクセル(x,z,t)における撮像強度を求めるように構成されており、上式で、NumRecが、受信中のトランスデューサ素子の数であり、
【数15】

が、Sub番目の送信のサブアパーチャの発射のもとでの受信フェーズアレイにおけるj番目の受信素子の、時間調整された受信信号であり、tが、信号が受信される時間であり、
【数16】

が、加えられる時間遅延であり、CFsub(x,z, t )が、サブアパーチャのコヒーレンス係数である、請求項17または18記載のシステム。
【請求項20】
前記アレイにおけるトランスデューサ素子のすべてが、反射超音波信号を受信するために用いられる、請求項17乃至19のいずれか1項記載の超音波撮像システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【公開番号】特開2013−79949(P2013−79949A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−206427(P2012−206427)
【出願日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【出願人】(512163266)ジーイー・インスペクション・テクノロジーズ・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】