説明

撮像システム

【課題】広い領域を高速に移動する被写体を撮影する。
【解決手段】撮像システムであって、予め定められた特定領域内に設置され、特定領域内において、無線通信可能な小領域をそれぞれ有する複数の無線通信部と、特定領域内の複数の被写体のそれぞれに取り付けられて複数の被写体を識別する識別情報を発信する複数の発信機と、複数の被写体のうち撮像装置を用いて撮像すべき被写体の識別情報を受信した無線通信部の小領域を内包する被写界深度を設定して撮像装置へ出力する被写界設定部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
被写体である競技者に位置検出部を取り付け、競技者の位置を自動的に捕捉する撮影装置が提案されている(特許文献1参照)。
[特許文献1] 特開2002−314851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、競技者の位置捕捉と、当該位置における被写体の撮影条件設定とにそれぞれ時間を要するので、高速に移動する被写体を確実に撮影することが難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様として、予め定められた特定領域内に設置され、特定領域内において、無線通信可能な小領域をそれぞれ有する複数の無線通信部と、特定領域内の複数の被写体のそれぞれに取り付けられて複数の被写体を識別する識別情報を発信する複数の発信機と、被写体が存在する領域にフォーカスを合わせるフォーカシング部と、複数の被写体のうち撮像装置を用いて撮像すべき被写体の識別情報を受信した無線通信部の小領域を内包する被写界深度を設定して撮像装置へ出力する被写界設定部とを備える撮像システムが提供される。
【0005】
上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。これらの特徴群のサブコンビネーションも発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】撮像システム100の外観を示す模式的斜視図である。
【図2】撮像システム100のブロック図である。
【図3】RFIDタグ140のブロック図である。
【図4】検出アンテナ130の配置を示す模式的斜視図である。
【図5】検出アンテナ130の検出領域を示す模式的平面図である。
【図6】被写界設定部120のブロック図である。
【図7】撮像装置110に設定される被写界を説明する概念図である。
【図8】被写界設定部120のテーブルを例示する図である。
【図9】撮像システム100の制御手順を示す流れ図である。
【図10】撮像システム101の模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1は、ハンドボールコート210を例にして撮像システム100の外観を示す模式的斜視図である。ハンドボールコート210においては、撮像システム100の一部が外観に現れる。
【0009】
ハンドボールコート210は、長さ20mのゴールライン212と、長さ40mのサイドライン216とに包囲された矩形の特定領域を有する。ハンドボールコート210上では、一人のゴールキーパ222と6人のコートプレーヤ224からなる7人のチームどうしが、1個のボール230を相手方のゴール214に投げ込むことを競う。
【0010】
このような競技を撮影する撮像システム100の一部として、撮像装置110が、ハンドボールコート210の外側に配される。撮像装置110には、望遠レンズ114が装着され、三脚116により固定される。
【0011】
撮像装置110は、通信アンテナ112を備え、外部から受信した無線信号により、合焦距離および絞り値を設定する機能を有する。このような機能は、撮像装置110に予め設けられてもよいし、付加的な周辺機器により実現してもよい。
【0012】
また、撮像装置110は、サイドライン216から離して配置される。これにより、競技中にサイドライン216からラインアウトしたコートプレーヤ224およびボール230との接触が防止される。
【0013】
撮像システム100は、ゴール214の背後に配され、通信アンテナ122を有する被写界設定部120も含む。ゴール214の背後は、コートプレーヤ224およびボール230に接触する可能性が低い。被写界設定部120の構造および機能については他の図を参照して説明する。
【0014】
競技中のハンドボールコート210では、2人のゴールキーパ222、12人のコートプレーヤ224、レフェリ226およびボール230が交錯しつつ目紛るしく移動する。このため、画角の狭い望遠レンズ114の被写界に特定の被写体が入り込んだ場合に、マニュアル操作でタイミングよく撮影することは難しい。
【0015】
図2は、撮像システム100のブロック図である。撮像システム100は、撮像装置110および被写界設定部120の他に、検出アンテナ130およびRFID(Radio_Frequency_IDentification)タグ140を含む。
【0016】
RFIDタグ140は、ゴールキーパ222(P)、コートプレーヤ224(P〜P)、ラインジャッジを含むレフェリ226(R〜R)およびボール230(B)等、ハンドボールコート210上で移動する全ての要素に個別に取り付けられる。また、RFIDタグ140は、図示したものの他に、控えの選手、コーチ、監督等、撮像装置110の画角に入り込む可能性がある他の要素にも取り付けてよい。
【0017】
更に、競技の種類に応じて、グラウンドキーパ等、競技者以外の要素にもRFIDタグ140を個別に取り付けてもよい。このように、RFIDタグ140は、ハンドボールコート210に関連するあらゆる移動体に個別に取付られる。
【0018】
検出アンテナ130は、ハンドボールコート210上の複数箇所に配される。複数の検出アンテナ130のそれぞれは、いずれも被写界設定部120に接続される。
【0019】
被写界設定部120は、通信アンテナ122を介して、撮像装置110と通信する。これにより、被写界設定部120は、撮像装置110に設定値を通知する。また、被写界設定部120は、撮像装置110を含む他の機器から、仕様、設定等の値を取得できる。
【0020】
図3は、パッシブ型RFIDタグ140のブロック図である。RFIDタグ140は、被検出アンテナ142およびRFRFIDチップ144を備える。被検出アンテナ142は、RFIDのリーダライタに接続された検出アンテナ130との間で無線信号を送受信する。無線信号は、電磁誘導方式、電波方式のいずれもがあり得る。
【0021】
RFIDチップ144は、整流部141、処理部143および識別情報格納部145を含み、電源を搭載することなく動作する。即ち、RFIDチップ144は、被検出アンテナ142を通じて検出アンテナ130から送信された無変調キャリアであるプレアンブル信号を受信する。
【0022】
整流部141は、受信した無変調キャリアを整流して直流電流とし、当該直流電流を電力源として処理部143を起動する。処理部143は、プレアンブルに続いて検出アンテナ130から送信されたコマンドを復調し、当該コマンドに従って動作する。
【0023】
識別情報格納部145は、それぞれのRFIDチップ144に与えられた固有の識別情報を格納する。コマンドを受けた処理部143は、識別情報格納部145に格納された識別情報を読み出して、無変調キャリアの反射波に乗せて検出アンテナ130に識別情報を返す。こうして、検出アンテナ130は、検出領域に浸入したRFIDタグ140の識別情報を獲得する。
【0024】
RFIDチップ144は、数ミリ程度の大きさで、重量も数グラム程度である。また、被検出アンテナ142は、パターニングされた金属箔等により形成される。よって、RFIDタグ140は小型軽量で、ゴールキーパ222、コートプレーヤ224、レフェリ226の衣類、シューズ等に組み込むことができる他、ボール230等にも簡単に取り付けることができる。なお、乾電池等の電源を併せて取り付けることができる場合は、自発的に識別信号を発信するアクティブ型またはセミアクティブ型のRFIDタグ140を用いてもよい。
【0025】
図4は、検出アンテナ130の配置を示す模式的斜視図である。検出アンテナ130は、ハンドボールコート210において、撮像装置110の撮影範囲に間隔をおいて複数配される。
【0026】
図示の例では、撮像装置110の前方に、ゴールライン212と平行に3列に配された検出アンテナ130(A〜A21)と、ゴール214内に配された検出アンテナ130(A22)とが敷設されている。検出アンテナ130のそれぞれは地中浅くに埋設され、ハンドボールコート210の表面からは見えない。
【0027】
検出アンテナ130としては、オムニタイプのコイルアンテナを好ましく用いることができる。これにより、検出アンテナ130の周囲に略円形の検出領域を形成できる。また、ハンドボールコート210の地下に埋設することを考慮すると、検出アンテナ130としては、平板型の外形と高い強度を有することが好ましい。
【0028】
図5は、検出アンテナ130の機能を示す模式的平面図である。他の図と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0029】
検出アンテナ130(A〜A22)のそれぞれは、それ自体を中心とする円形を小領域内である検出領域R〜R22を有する。検出領域R〜R22の内側では、検出アンテナ130(A〜A22)は、RFIDチップ144に無変調キャリア信号を到達させて識別情報を受信できる。例えば、900MHz帯で動作するパッシブ型のRFIDタグ140を用いた場合、検出アンテナ130(A〜A22)の周囲には、直径数メートル程度の略円形の検出領域R〜R22が形成される。
【0030】
撮像システム100においては、ハンドボールコート210のある領域に直径数メートルの検出領域R〜R22を敷きつめることができる。これにより、図中右側のゴール214の近傍であって、ハンドボールコート210の約1/4の領域にRFIDタグ140が入り込んだ場合、そのRFIDタグ140はいずれかの検出アンテナ130(A〜A22)に検出される。
【0031】
なお、個々の検出領域R〜R22は、隣接する検出領域R〜R22と一部が重複している。よって、この重複した領域にRFIDタグ140が入り込んだ場合は、ひとつのRFIDタグ140が複数の検出アンテナ130(A〜A22)により検出される。このため、検出アンテナ130の配置間隔よりも更に細かい間隔でRFIDタグ140の位置を特定できる。
【0032】
図3を参照して説明したように、検出アンテナ130(A〜A22)が検出領域(R〜R22)内のRFIDタグ140を検出した場合は、当該RFIDタグ140の識別情報が読み出される。これにより、被写界設定部120は、特定の識別情報を有するRFIDタグ140が、特定の検出アンテナ130(A〜A22)に対応した検出領域R〜R22に入り込んだことを検知する。
【0033】
図6は、被写界設定部120のブロック図である。被写界設定部120は、通信アンテナ122、無線通信部124、処理部126、多チャンネルリーダライタ127および設定値テーブル128を有する。
【0034】
多チャンネルリーダライタ127は、全ての検出アンテナ130に結合されて、いずれかの検出アンテナ130の検出領域にRFIDタグ140が入り込んだ場合に、当該RFIDタグ140を検出する。また、多チャンネルリーダライタ127は、検出したRFIDタグ140から、そのRFIDタグ140に格納された識別情報を取得する。
【0035】
処理部126は、RFIDタグ140を検出した検出アンテナ130の位置に応じて、撮像装置110に設定すべき設定値を生成する。設定値の生成は、その都度算出してもよいし、設定値テーブル128に格納された値から撮像装置に設定すべき設定値を抽出してもよい。設定値は、例えば、撮像装置110に装着された望遠レンズ114に設定される合焦距離および絞り値を含む。
【0036】
通信アンテナ122は、撮像装置110の通信アンテナ112との間で無線信号を送受信して、処理部126は、撮像装置110との間に無線通信を確立する。これにより、処理部126が設定値を算出する場合は、無線通信部124を通じて撮像装置110から望遠レンズ114の焦点距離等の情報を取得する。また、生成した設定値を撮像装置110に設定する場合は、無線通信部124を通じて設定値を撮像装置110に指示する。
【0037】
図7は、設定値テーブル128に格納される設定値を説明する図である。ここでは、一例として、ひとつの検出アンテナ130(A11)について説明するが、他の検出アンテナ(A〜A10、A12〜A22)についても、それぞれ対応する設定値が設定値テーブル128に格納される。
【0038】
図7に示すように、撮像装置110の光軸X上に位置する検出アンテナA11の検出領域R11は、撮像面Sからの距離で表した場合に、距離Dから距離Dまでの間に位置する。そこで、設定値テーブル128には、撮像装置110の被写界深度に検出領域R11が内包されるように、撮像装置110に設定する合焦距離および絞り値が、設定値として格納される。
【0039】
即ち、撮像装置110の被写界深度は、望遠レンズ114の焦点距離、絞り値および許容錯乱円径に依存する。よって、設定値は、例えば、次のようにして決定できる。
【0040】
まず、検出アンテナ130(A11)を配置した時点で判明している検出領域A11の中央位置までの距離を望遠レンズ114の合焦距離Fとして、設定値のひとつに決定する。次いで、合焦位置Fの前後において距離Dから距離Dまでが被写界深度に内包されるような絞り値を、もうひとつの設定値に決定する。
【0041】
こうして決定された合焦距離Fおよび絞り値を撮像装置110に設定することにより、検出アンテナ130(A11)の検出領域R11は、撮像装置110の被写界深度に内包され、撮像装置110は、検出領域R11内の被写体を鮮明に撮影できる状態になる。よって、設定値テーブル128には、検出アンテナ130(A11)に対応するこれらの合焦距離および絞り値が設定値として格納される。
【0042】
なお、望遠レンズ114の被写界深度は一般に、合焦位置に対して手前側が狭く、奥側が広い。このため、検出領域A11の中央に合焦させた状態で検出領域A11を被写界深度に内包させた場合、図中に示す距離dからdまでに形成される被写界深度は、検出領域A11の奥側で検出領域A11よりも広くなる。
【0043】
一方、移動する被写体を撮影する場合、撮像装置110のシャッタ速度はより早いことが好ましい。このため、撮像装置110で撮影する場合は、絞りをより開くことが好ましい。そこで、被写界設定部120は、検出領域A〜A22の各々に対して被写界深度が略一致する合焦距離および絞り値の組み合わせを予め算出して、設定値テーブル128に格納してもよい。これにより、決定値を設定された撮像装置110は、絞りを開いてより高いシャッタ速度で撮影を実行できる。
【0044】
図8は、設定値テーブル128の内容の一部を例示する図である。設定値テーブル128は、図中に注記したように、焦点距離300mmの望遠レンズについて、許容錯乱円径を0.0333mmとした場合に、3m刻みの被写界深度が得られる設定値(設定合焦距離および設定絞り値)を格納している。
【0045】
なお、撮像装置110は、ハンドボールコート210のサイドライン216から10m離れた位置に固定されているものとする。また、上記設定値が撮像装置110に設定された場合の被写界深度の位置(d〜d)も図8に併せて示す。
【0046】
設定値テーブル128の図示の部分には、望遠レンズ114の光軸X上に位置する検出アンテナ130(A〜A14)毎に、検出領域R〜R14が撮像装置110の被写界深度に内包される場合の設定値が格納されている。よって、処理部126は、RFIDタグ140を検出した検出アンテナ130が特定された場合に、計算処理の負荷無しに設定値を即座に決定できる。
【0047】
上記の例では、検出アンテナ130の間隔に合わせて3m刻みの検出領域R〜R14に対応した設定値を格納している。しかしながら、隣接する複数の検出アンテナ130に同時にひとつのRFIDタグ140が検出された場合は、それら検出アンテナ130の中間にRFIDタグ140が位置することが判る。よって、1.5m刻みの領域に対応した設定値を設定値テーブル128に格納して、設定値の精度を高くしてもよい。
【0048】
次に、図7および図8を併せて参照しつつ具体的に説明する。ひとつの検出アンテナ130(A11)が、被写体として予め指定されているコートプレーヤ224(P)の識別情報を有するRFIDタグ140を検出した場合、被写界設定部120は、撮像装置110の被写界深度が、検出アンテナ130(A11)の検出領域R11を包含するように設定値を設定する。
【0049】
即ち、検出アンテナ130(A11)がRFIDタグ140を検出した場合、被写界設定部120の処理部126は、設定値テーブル128のA11の行から、撮像装置110に設定すべき設定値としての合焦距離Fが20.39mであり、絞り値が9.7であることを検索する。これらの設定値を撮像装置110に設定した場合、撮像面Sから1899.04cm〜2200.17cmの間が被写界深度となり、19mから22mまでに位置する検出領域R11が被写界深度に内包される。
【0050】
処理部126は、こうして決定した設定値を、無線通信部124を通じて撮像装置110に指示する。これにより、撮像装置110は、検出領域R11内に位置するコートプレーヤ224(P)を、測距および合焦を実行することなく、撮像素子を露光することにり鮮明に撮影できる状態になる。
【0051】
また、検出アンテナ130(A)による検出から撮影までのタイムラグにコートプレーヤ224が移動したとしても、移動後のコートプレーヤ224の位置が検出アンテナ130(A)の検出領域内であれば、当該コートプレーヤ224を依然として鮮明に撮影できる。
【0052】
なお、この状態で撮影を実行するか否かは、撮像装置110を操作する撮影者の判断に委ねてもよいし、撮像装置110が自動的に撮影を実行してもよい。また、撮影できる状態になったことを通知する通知音を撮像装置110が発生して、撮影者に撮影を促してもよい。
【0053】
このように、被写界設定部120により設定値を設定された撮像装置110で撮影する場合、撮像装置110自体のオートフォーカス機能は動作しない。また、撮像装置110の自動露出機能も、被写界設定部120により設定された絞り値を前提として、絞り優先モードでシャッタ速度、ISO感度等を含む露出条件を算出する。よって、撮像装置110のレリーズボタンが押されてから撮影を完了するまでのタイムラグも小さい。
【0054】
図9は、撮像システム100の制御手順の一例を示す流れ図である。撮像システム100の制御は、主に被写界設定部120により実行される。
【0055】
この例では、被写界設定部120は、検出アンテナ130のいずれかの検出領域内で、コートプレーヤ224のRFIDタグ140が検出されるまで待機する(ステップS101:NO)。検出アンテナ130のいずれかによりコートプレーヤ224のRFIDタグ140が検出された場合(ステップS101:YES)、被写界設定部120は、検出した識別情報が、予め指定した被写体に取り付けたRFIDタグ140の識別情報であるか否かを調べる(ステップS102)。
【0056】
検出された識別情報が指定したものではない場合(ステップS102:NO)、被写界設定部120は再び待機状態となり、次にコートプレーヤ224の識別情報を有するRFIDタグ140が検出されるまで待機する。検出された識別情報が指定されたコートプレーヤ224を特定する識別情報である場合(ステップS102:YES)、被写界設定部120は、当該識別情報を有するRFIDタグ140が検出された検出領域において、更に、ボール230の識別情報を有するRFIDタグ140が検出されるか否かを調べる(ステップS103)。
【0057】
その検出領域においてボール230の識別情報が検出されなかった場合(ステップS103:NO)、被写界設定部120は再び待機状態となり、次にコートプレーヤ224の識別情報を有するRFIDタグ140が検出されるまで待機する。指定されたコートプレーヤ224の識別情報と、ボール230の識別情報とが同一の検出領域において検出された場合(ステップS103:YES)、被写界設定部120は、RFIDタグ140が検出された検出領域を内包する被写界深度を撮像装置110に設定すべく、設定値テーブル128を参照して設定値を抽出する(ステップS104)。
【0058】
次に、被写界設定部120は、抽出した設定値を撮像装置110に設定する(ステップS105)。これにより、撮像装置110は、当該検出領域内に位置する被写体を鮮明に撮影できる状態になる。続いて、被写界設定部120は、撮影のタイミングを指示するレリーズボタンが撮像装置110において押し下げられたか否かを監視する(ステップS106)。
【0059】
また、被写界設定部120は、撮像装置110のレリーズボタンが押し下げられるまでの間、当初検出したRFIDタグ140が依然として検出領域内で検出されているか否かを調べる(ステップS107)。当該RFIDタグ140が検出領域内にとどまっている場合(ステップS107:YES)、被写界設定部120は、撮像装置110においてレリーズボタンが押し下げられるか否かの監視を継続する。
【0060】
ステップS107において、RFIDタグ140が当初の検出領域から検出されなくなった場合(ステップS107:NO)、被写界設定部120は、再び、コートプレーヤ224のRFIDタグ140が検出されるまで待機する(ステップS101:NO)。
【0061】
一方、ステップS106において、撮像装置110のレリーズボタンが押し下げられたことを検出した場合(ステップS106:YES)、被写界設定部120は、撮像装置110による撮影実行を確認した後、再び、コートプレーヤ224のRFIDタグ140が検出されるまで待機する(ステップS101:NO)。以下、撮像システム100が撮影モードを継続する間は、上記のような一連の制御を繰り返し実行する。
【0062】
なお、上記の制御手順において、コートプレーヤ224の識別情報を検出することを制御開始のトリガとすること(ステップS101)、特定の識別情報が指定されていること(ステップS102)、同一の検出領域にボール230が検出されることを条件とすること(ステップS103)は、いずれも必須の条件ではない。
【0063】
即ち、これらの条件は、被写界設定部120の制御手順として、ユーザにより予め設定される。よって、例えば、コートプレーヤ224の個体は特定せず、コートプレーヤ224とボール230がひとつの検出領域で同時に検出されたことを条件としてもよい。また、ひとつの検出領域で検出されたコートプレーヤ224の人数が多すぎる場合は、撮影を見合わせる条件を設定してもよい。更に、特定のコートプレーヤ224を複数の検出領域で連続的に検出して、次に移動する検出領域を予測してもよい。
【0064】
また更に、これらの条件は一例に過ぎず、他の条件を設定または設定解除してもよいし、複数の条件を同時に加えてもよい。このように、被写界設定部120に設定する条件は、競技の種類、撮影の目的等に応じて多様に変更することができる。しかしながら、いずれの条件を設定した場合も、撮像装置110は、被写界設定部120により設定された被写界深度で撮影を実行する。
【0065】
上記のような被写界設定部120への設定は、撮像装置110の操作部を使用してもよい。即ち、撮像装置110と被写界設定部120は双方向に通信するので、撮像装置110の操作部および表示部をユーザインターフェースとして、被写界設定部120にユーザの指示を入力することもできる。また、被写界設定部120に、パーソナルコンピュータ等の他の電子機器を接続して、被写界設定部120の設定を入力してもよい。
【0066】
また、撮像システム100を稼働させる前に、撮像装置110および被写界設定部120の動作を較正してもよい。即ち、検出アンテナ130のうちのいくつかを予め指定して、当該検出アンテナ130の検出領域にRFIDタグ140を置いて検出することにより、被写界設定部120による検出精度を検証し、補正することができる。これにより、撮像システム100をより高精度に稼働させることができる。
【0067】
図10は、他の撮像システム101の模式的斜視図である。撮像システム100と共通の要素には同じ参照番号を付して重複する説明を省く。
【0068】
撮像システム101においては、ゴールライン212およびサイドライン216に包囲されたハンドボールコート210全体に検出アンテナ130が配される。また、ハンドボールコート210の外側にも、ゴールライン212およびサイドライン216に沿って検出アンテナ130が配される。
【0069】
更に、撮像システム101においては、ハンドボールコート210の周囲を移動する複数の撮像装置111、113が配される。複数の撮像装置111、113の各々には、撮像装置111、113自体の識別情報を有するRFIDタグ140が個々に取り付けられる。また、撮像装置111、113はジャイロセンサを備え、どの方向を向いているかを検出して被写界設定部120に通知する。
【0070】
上記のような撮像システム101においては、被写体となるコートプレーヤ224、ボール230等の位置と共に、撮像装置111、113の位置も検出アンテナ130およびRFIDタグ140により検出される。よって、被写界設定部120は、撮像装置111、113の位置および方向と、被写体の位置とを併せて検出した上で、被写体を含む領域に被写界を設定する設定値を算出する。算出した設定値は、撮像装置111、113にそれぞれ送信して設定される。
【0071】
これにより、撮像システム101では、撮像装置111、113がハンドボールコート210の周囲を自由に移動することができる。また、撮像装置111、113の撮影範囲内の検出アンテナ130でRFIDタグ140が検出された場合、当該検出アンテナ130の検出領域を内包する被写体深度が撮像装置111、113に設定されるように設定値が生成される。生成された設定値を設定された撮像装置111、113は、検出されたRFIDタグ140が取り付けられた被写体を少ないタイムラグで鮮明に撮影できる。
【0072】
上記の例ではハンドボールコート210を例にあげて説明したが、撮像システム100、101の用途がハンドボール競技の撮影に限られないことはもちろんである。他の球技はいうまでもなく、更に、陸上競技、ウインタースポーツ、モータスポーツ等の撮影にも適用できる。また、スポーツ撮影に限らず、被写体にRFIDタグ140を取り付けでき、移動する被写体の移動経路を予測して検出アンテナ130を設置できる場合に広く適用できる。よって、例えば鉄道、飛行機等の撮影にも使用できる。
【0073】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0074】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0075】
100、101 撮像システム、110、111、113 撮像装置、112、122 通信アンテナ、114 望遠レンズ、116 三脚、120 被写界設定部、124 無線通信部、126、143 処理部、127 多チャンネルリーダライタ、128 設定値テーブル、130 検出アンテナ、140 RFIDタグ、141 整流部、142 被検出アンテナ、144 RFIDチップ、145 識別情報格納部、210 ハンドボールコート、212 ゴールライン、214 ゴール、216 サイドライン、222 ゴールキーパ、224 コートプレーヤ、226 レフェリ、230 ボール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた特定領域内に設置され、前記特定領域内において、無線通信可能な小領域をそれぞれ有する複数の無線通信部と、
前記特定領域内の複数の被写体それぞれに取り付けられて前記複数の被写体を識別する識別情報を発信する複数の発信機と、
前記複数の被写体のうち撮像装置を用いて撮像したい被写体の識別情報を受信した無線通信部の小領域を内包する被写界深度を設定して前記撮像装置へ出力する被写界設定部と
を備える撮像システム。
【請求項2】
前記撮像装置は、前記複数の発信機のひとつを含み、
前記被写界設定部は、前記撮像装置の位置を勘案して被写界深度を設定する
請求項1に記載の撮像システム。
【請求項3】
前記被写界設定部は、前記撮像装置から前記小領域までの実測値を参照して較正される請求項1または請求項2に記載の撮像システム。
【請求項4】
前記被写界設定部は、前記小領域を内包する被写界深度の情報前記撮像装置の光学系の焦点距離と、前記小領域の位置に関連付けて被写界深度情報前記撮像装置から前記被写体までの距離とに関連付けて格納されたから前記小領域までの実測値を参照して較正される請求項1または請求項2に記載の撮像システム。
【請求項5】
前記複数の無線通信部のうちの少なくとも2つが前記識別情報を受信した場合に、前記被写界設定部は、当該2つの無線通信部に対応する2つの小領域を等しく含む被写界を設定する請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の撮像システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−26883(P2013−26883A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160747(P2011−160747)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】