説明

撮像ユニット

【課題】消費電力を抑制しつつ撮影光学系や撮像素子への押圧力の発生を防止することのできる手ぶれ補正機構を備えた撮像ユニットを提供する。
【解決手段】X−Y平面に沿って移動可能な可動ステージ52を備え、撮影光学系12の収納状態と撮影待機状態との移行が可能な撮像ユニット13である。各光学部材を収容する複数の光学収容部材と、各光学収容部材を駆動する収容部材駆動部(23)と、可動ステージ52へと移動規制箇所72を押し当てることにより可動ステージ52の移動を規制する移動規制部材71と、「押す力F1」を移動規制部材71に付与する第1弾性部材(73)と、「押す力F2」を移動規制部材71に付与する第2弾性部材(75)と、を備え、可動光学収容部材49の1つが被写体側の沈胴位置とされると、可動光学収容部材49の移行に伴う「押す力F3」で第2弾性部材が移動規制部材71を押している状態を解除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影時の手ぶれを補正する手ぶれ補正機能を備える撮像ユニット、およびそれが搭載されるデジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラ(以下、「デジタルカメラ」という)等の撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置では、撮影レンズ系(撮影光学系)を通して被写体像を撮像素子(CCD等)に受光させ、撮像素子からの画像信号に基づいて被写体像に対応したデジタル画像を生成するデジタルカメラがある。このようなデジタルカメラでは、近年、撮影時の手ぶれを補正する手ぶれ補正機構を備えた撮像ユニットを搭載する、いわゆる手ぶれ補正機能付きデジタルカメラが実用化されている。
【0003】
このような手ぶれ補正機構としては、例えば、撮影光軸をZ軸方向としてこれに垂直なX‐Y平面に沿う所定の範囲内で移動可能な可動ステージに撮像素子(CCD等)を設け、その可動ステージを磁石で形成する磁界中に配置したコイルに適宜通電することにより駆動力を生成するボイスコイルモータを用いて移動させる構造が採用されているものがある。この手ぶれ補正機構を用いる従来の撮像ユニットでは、例えば、手ぶれ検出センサを用いてY軸方向とX軸方向との傾きを検出し、この検出出力に基づいて、コイルへの通電電流を変化させることにより、手ぶれによる被写体の像の移動に撮像素子を追従移動させる制御を行って手ぶれを補正する。
【0004】
この従来の撮像ユニットでは、手ぶれ補正が行われていないとき、消費電力の低減の観点から、コイルへの電流の印加を停止することが望ましい。ところが、可動ステージは、コイルへの電流の印加が停止されて可動ステージの位置制御(以下、電気的保持という)が停止されると、所定の範囲内で移動可能に設けられていることから、当該所定の範囲内で自由に移動してしまい、移動可能な範囲の端部との接触により衝突音や衝撃が生じてしまう虞がある。
【0005】
そこで、撮像ユニット(手ぶれ補正機能付きカメラ)では、可動ステージ(撮像素子)を機械的に固定保持するロック機構を設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。このものでは、第5レンズ群を撮影光軸方向に変位させるためにZ軸方向へ移動される雌ねじ部材によりZ軸方向に移動可能な係止部材を設けるとともに、その係止部材に設けた針状部を可動ステージに設けた貫通穴に通して嵌めることにより、電気的保持を行っていない状態であっても可動ステージの移動を防止することができるので、消費電力を抑制することができ、かつ可動ステージの不測の移動に伴う衝突音や衝撃の発生を防止することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の撮像ユニット(手ぶれ補正機能付きカメラ)では、係止部材の針状部と可動ステージの貫通穴とが嵌まることによりX‐Y方向への可動ステージの移動を規制するものであることから、X‐Y方向で見た針状部と貫通穴との間の隙間を極力小さくする必要がある。このため、針状部と貫通穴とをX‐Y平面で見た互いの中心位置を極めて高い精度で一致させないと、可動ステージの移動規制状態への移行の際に針状部の周面と貫通穴の内周壁面とが干渉することとなり、針状部が設けられた係止部材を介して当該係止部材と共に支持された第5レンズ群保持枠にX‐Y方向への押圧力を作用させたり、可動ステージにZ軸方向への押圧力を作用させたりする虞がある。この第5レンズ群保持枠へのX‐Y方向の押圧力は、そこに保持される第5レンズ群の撮影光軸に直交する方向での位置をずらすように作用し、また、可動ステージへのZ軸方向の押圧力は、そこに保持される撮像素子の撮影光軸方向での位置をずらすように作用することから、撮影光学系と撮像素子との光学的な位置関係の変化を招く虞があるので、このような押圧力が発生する虞をなくすことが望ましい。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、消費電力を抑制しつつ撮影光学系や撮像素子への押圧力の発生を防止することのできる手ぶれ補正機構を備えた撮像ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の撮像ユニットは、撮影光学系により被写体像を取得する撮像素子を撮影光軸に直交する平面内で移動させるべく該平面に沿って移動可能な可動ステージを備え、前記撮影光学系の複数の光学部材の少なくとも一部を沈胴させて該各光学部材を収納する収納状態と、該収納状態から前記各光学部材の少なくとも一部を被写体側に移動した撮影待機状態と、の移行が可能な撮像ユニットであって、前記各光学部材を収容する複数の光学収容部材と、該各光学収容部材を駆動する収容部材駆動部と、前記可動ステージへと移動規制箇所を押し当てることにより前記可動ステージの移動を規制する移動規制部材と、前記移動規制箇所を前記可動ステージへ押し当てる移動規制方向へと前記移動規制部材を押す力を該移動規制部材に付与する第1弾性部材と、該第1弾性部材による前記移動規制部材への押す力に抗する解除方向へと前記移動規制部材を押す力を該移動規制部材に付与する第2弾性部材と、を備え、前記各光学収容部材のうち前記収納状態と前記撮影待機状態との移行に伴い撮影光軸方向に移動される可動光学収容部材の1つが被写体側の沈胴位置とされると、該可動光学収容部材の移行に伴う押す力で前記第2弾性部材が前記移動規制部材を押している状態を解除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の撮像ユニットでは、消費電力を抑制しつつ撮影光学系や撮像素子への押圧力の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る撮像装置の一例としてのデジタルカメラ10を示す正面図である。
【図2】デジタルカメラ10における制御ブロックを示す説明図である。
【図3】本発明に係る一例としての撮像ユニット13を示す模式的な断面図であり、上半分が撮影待機状態を示し、下半分が収納状態を示している。
【図4】撮影待機状態における撮像ユニット13を模式的に示す斜視図である。
【図5】収納状態における撮像ユニット13を模式的に示す斜視図である。
【図6】撮像ユニット13の各構成を分解して示す模式的な斜視図である。
【図7】撮像ユニット13の後端部およびそこに設けられた手ぶれ補正機構50を示す斜視図である。
【図8】手ぶれ補正機構50を模式的に示す説明図であり、(a)は、撮像ユニット13の後端部に設けられた手ぶれ補正機構50を分解して示し、(b)は手ぶれ補正機構50における可動のための構成箇所を部分的に拡大して示している。
【図9】保持機構70の構成の概要を説明するための説明図であり、撮像ユニット13の後端側から見た様子を模式的に示す。
【図10】保持機構70(移動規制部材71)における作用の概要を説明するために図9を軸線Ad方向で見た様子を示す説明図であり、(a)は移動規制部材71(移動規制箇所72)を可動ステージ52に押し当てた状態を示し、(b)は移動規制部材71(移動規制箇所72)を可動ステージ52に押し当てていない状態を示している。
【図11】移動規制部材71の構成を説明するための説明図であり、(a)は斜視図で示し、(b)は(a)に示す矢印A1から見た平面図で示し、(c)は(a)に示す矢印A2から見た平面図で示す。
【図12】移動規制部材71への第1トーションスプリング73の取り付けの構成を説明するための説明図であり、(a)は図11(a)と同様の斜視図で示し、(b)は図11(c)と同様の平面図で示す。
【図13】押さえ軸74を示す斜視図である。
【図14】第1トーションスプリング73が取り付けられた移動規制部材71への押さえ軸74および第2トーションスプリング75の取り付けの構成を説明するための説明図であり、(a)は斜視図で示し、(b)は(a)とは異なる方向から見た斜視図で示す。
【図15】第1トーションスプリング73および第2トーションスプリング75が移動規制部材71に付与する「押す力」の関係を説明するための説明図である。
【図16】押さえ軸74および第2トーションスプリング75のベース板48への取り付けの構成を説明するための説明図である。
【図17】移動規制部材71および第1トーションスプリング73のベース板48への取り付けの構成を説明するための説明図であり、(a)は押さえ板77が取り付けられていない状態を示し、(b)は押さえ板77が取り付けられた状態を示す。
【図18】保持機構70(移動規制部材71)による機械的保持の状態を説明するために部分的に破断した斜視図で示す説明図である。
【図19】保持機構70(移動規制部材71)における作用を説明するために図18を軸線Ad方向で見た様子を示す説明図であり、(a)は移動規制部材71による機械的保持の状態を示し、(b)は移動規制部材71による機械的保持がなされていない状態を示している。
【図20】保持機構70における機械的保持を解除した状態(その可動ステージ52を含む保持機構70と第1のライナー43(その後端面)との位置関係)を説明するための説明図であり、(a)は撮影光軸OAに沿って撮像ユニット13の後端側から見た様子を示し、(b)は撮像ユニット13の後端側から斜めに見た様子を示す。
【図21】保持機構70における機械的保持の状態(その可動ステージ52を含む保持機構70と第1のライナー43(その後端面)との位置関係)を説明するための説明図であり、(a)は図20(a)と同様の方向から見た様子を示し、(b)は図20(b)と同様の方向から見た様子を示す。
【図22】デジタルカメラ10の動作を統括的に制御する制御部21における撮影待機状態(繰出位置)への移行動作の制御処理の内容の一例を示すフローチャートである。
【図23】デジタルカメラ10の動作を統括的に制御する制御部21における撮影待機状態(繰出位置)から収納状態(沈胴位置)への移行動作の制御処理の内容の一例を示すフローチャートである。
【図24】実施例2の保持機構70Bにおける特徴部分である強制固定機構90を説明するための説明図であり、(a)は強制固定機構90が移動規制部材71の状態に関与していない様子を示し、(b)は強制固定機構90が移動規制部材71を機械的保持状態とした様子を示し、(c)は(b)の状態における強制固定機構90の作用を説明すべく(b)とは異なる角度で見た様子を示している。
【図25】強制固定機構90における固定操作部91が筐体11に設けられている様子を説明するための説明図である。
【図26】強制固定機構90における変換伝達部92が筐体11に設けられている様子を説明するための説明図である。
【図27】押さえ軸74Bを示す斜視図である。
【図28】デジタルカメラ10Bにおける制御ブロックを示す説明図である。
【図29】強制固定機構90で機械的保持状態とした状態を説明するための説明図であり、(a)は撮像ユニット13Bにおける強制固定機構90の様子を示し、(b)はその強制固定機構90が移動規制部材71を機械的保持状態とした様子を示している。
【図30】強制固定機構90で機械的保持状態としていない状態を説明するための説明図であり、(a)は撮像ユニット13Bにおける強制固定機構90の様子を示し、(b)はその強制固定機構90が移動規制部材71の状態に関与していない様子を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本願発明に係る撮像ユニット、およびその撮像ユニットが搭載された撮像装置の各実施例について図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0012】
本発明に係る撮像ユニットの一実施例としての撮像ユニット13およびそれが設けられる撮像装置の一実施例としてのデジタルカメラ10の概略的な構成を、図1から図6を用いて説明する。なお、図6では、理解容易のために、撮像素子22、第1レンズ群31、第2レンズ群32、第3レンズ群33、第4レンズ群34、シャッタ/絞りユニット35、第1レンズ保持枠36、第2レンズ保持枠37、カム筒46を省略して示している。以下の説明では、デジタルカメラ10を基準として、後述する撮影光学系12の光軸(図3から図6の矢印OA参照)方向をZ軸方向(被写体側を正側)とし、デジタルカメラ10を正面視した高さ方向をY軸方向とし(上方を正側)、Z軸およびY軸に直交する方向をX軸方向(デジタルカメラ10を正面視して右手を正側)とする。
【0013】
まず、撮像ユニット13が設けられる撮像装置の一例としてのデジタルカメラ10を、図1および図2を用いて説明する。実施例1のデジタルカメラ10は、撮像素子(22)を撮影光軸(OA)方向に垂直な面内で移動させて手ぶれを補正する手ぶれ補正機能(50)を有している。これについては後に説明する。デジタルカメラ10は、図1に示すように、筐体11の前面(図1を正面視して手前側の面)側に撮影光学系12を有する撮像ユニット13が設けられている。この撮影光学系12は、後述するように複数の光学部材を備える。撮像ユニット13は、後述するように、撮影光学系12の撮影光軸(OA)に沿って、収納状態(所定の沈胴位置(図4参照))と撮影待機状態(所定の繰出位置(図5参照))との間で移行可能とされている。なお、この明細書では、撮影光学系12における光学的な軸線、すなわち撮影待機状態とされた各光学部材の中心軸位置となる回転対称軸を、撮影光学系12すなわちデジタルカメラ10の撮影光軸OAとしている。
【0014】
このデジタルカメラ10は、図2に示すように、制御部21を有する。この制御部21は、図示を略す操作部に為された操作に基づく駆動処理や、撮像素子22からの信号に基づく画像データの生成処理や、レンズ鏡胴駆動ユニット23、表示部24および手ぶれ補正機構50の駆動等の制御を、記憶部21aに格納されたプログラムにより統括的に行う。制御部21は、撮影光学系12(図1参照)を経て撮像素子22で画像を取得し、その画像を筐体11の後面側に設けられた表示部24に適宜表示させる。撮像素子22は、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の固体撮像素子で構成されており、撮影光学系12を通して受光面(図示せず)上に結像された被写体像を電気信号(画像データ)に変換して出力する。その出力された電気信号(画像データ)は、制御部21へと伝送される。また、制御部21には、位置検出素子25やぶれ検出素子26から検出信号が入力される。
【0015】
位置検出素子25は、後述する可動ステージ52の位置を検出するものであり、実施例1では、ホール素子や磁気抵抗素子などの磁気センサで構成されて、可動ステージ52に設けられている。ぶれ検出素子26は、デジタルカメラ10自体(その筐体11)に生じた手ぶれを検出するものであり、実施例1では、ジャイロセンサで構成されて、筐体11に設けられている。なお、このぶれ検出素子26は、加速度センサを用いて構成することもできる。レンズ鏡胴駆動ユニット23は、撮像ユニット13を収納状態(図4参照)と撮影待機状態(図5参照)との間で移行させるべく、撮影光学系12(図1参照)の各光学部材(図示せず)を各々保持するとともに収容する複数の光学収容部材(光学収容枠)を移動させる収容部材駆動部である。
(撮像ユニット13の構成)
次に、撮像ユニット13の構成を、図3から図6を用いて説明する。撮像ユニット13は、図3に示すように、第1レンズ群31、第2レンズ群32、第3レンズ群33、第4レンズ群34、シャッタ/絞りユニット35、撮像素子22、第1レンズ保持枠36、第2レンズ保持枠37、第3レンズ保持枠38、第4レンズ保持枠39、固定枠41、第1の回転筒42、第1のライナー43、第2の回転筒44、第2のライナー45、カム筒46、直進筒47、ベース板48を具備している。
【0016】
この撮像ユニット13では、撮影待機状態(図3の上半分および図4等参照)について説明すると、物体側から、第1レンズ群31、第2レンズ群32、第3レンズ群33および第4レンズ群34が順次配列されるとともに、第2レンズ群32と第3レンズ群33との間にシャッタ/絞りユニット35が挿入配置されて撮影光学系12が構成されている。その第4レンズ群34の像面側に、撮像素子22が配置される。これら第1レンズ群31から第4レンズ群34(シャッタ/絞りユニット35を含む)は、焦点距離可変のズームレンズを構成する。
【0017】
第1レンズ群31は、1枚以上のレンズからなる。この第1レンズ群31は、それらを一体的に保持する第1レンズ保持枠36を介して直進筒47に固定保持されている。
【0018】
第2レンズ群32は、1枚以上のレンズからなる。この第2レンズ群32は、それらを一体的に保持する第2レンズ保持枠37に設けられたカムフォロワ(図示せず)がカム筒46の第2レンズ群用のカム溝(図示せず)に通されて第2のライナー45の直進溝45a(図6参照)に干渉可能に挿入され、これらカム筒46および第2のライナー45により支持されている。
【0019】
第3レンズ群33は、1枚以上のレンズからなる。この第3レンズ群33は、第3レンズ保持枠38により一体的に保持されており、収納状態で撮影光軸OA(撮影光路)上から退避されるとともに、撮影待機状態で撮影光軸OA(撮影光路)上に配置される。
【0020】
第4レンズ群34は、1枚以上のレンズからなる。この第4レンズ群34は、第4レンズ保持枠39により一体的に保持されており、収納状態で撮影光軸OA(撮影光路)上から退避されるとともに、撮影待機状態で撮影光軸OA(撮影光路)上に配置される。この第4レンズ群34は、本実施例では、ピント合わせ、つまり合焦を行うフォーカスレンズとして用いられる。
【0021】
シャッタ/絞りユニット35は、シャッタおよび開口絞りを含むものである。このシャッタ/絞りユニット35は、そこに一体的に形成されたカムフォロワ(図示せず)がカム筒46のシャッタ/絞りユニット用のカム溝(図示せず)に通されて第2のライナー45の直進溝45a(図6参照)に干渉可能に挿入され、これらカム筒46および第2のライナー45により支持されている。
【0022】
固定枠41は、箱状を呈し、筐体11に取り付けられるベース板48に固定されている。その固定枠41は、内方に円筒形状の固定筒部41a(図6等参照)を有する。この固定筒部41aの内周面には、図6に示すように、軸方向に沿う直進溝41b、およびカム溝41cが形成されている。その直進溝41bには、第1のライナー43の後述するキー部43aが干渉可能に挿入され、カム溝41cには、第1の回転筒42の後述するカムフォロワ42aが干渉可能に挿入される。この固定筒部41aの内方に第1の回転筒42が設けられる。
【0023】
その第1の回転筒42は、固定筒部41aの内方に挿入可能な筒状を呈する。第1の回転筒42の基端部外周面には、ヘリコイド状のカムフォロワ42aと、ギア部42bと、が形成されている。その第1の回転筒42の内周面には、案内溝42cと直進溝42dとが設けられている。案内溝42cは、撮影光軸OAに直交する面に沿って設けられ、環状を呈する。この案内溝42cは、後述するように、第1のライナー43のフォロワ43bが干渉可能に挿入されることにより、回転しつつ直進する第1の回転筒42の直進移動力のみを第1のライナー43に作用させる直進案内部材として機能する回転溝である。直進溝42dは、撮影光軸OA(撮影光路)に沿う案内溝である。
【0024】
第1の回転筒42は、カムフォロワ42aがカム溝41cに干渉可能に挿入されて固定筒部41a内に設けられる。この第1の回転筒42は、固定筒部41aすなわちベース板48に対して、撮影光軸OAを軸線として回転可能(以下では、撮影光軸OA回りに回転ともいう)とされており、その回転に伴って、カムフォロワ42aとカム溝41cとの案内作用により、撮影光軸OA(撮影光路)方向へと移動する。この第1の回転筒42の内方に第1のライナー43が設けられる。
【0025】
その第1のライナー43は、第1の回転筒42の内方に挿入可能な筒状を呈する。第1のライナー43の外周面には、キー部43aとフォロワ43bとが設けられている。キー部43aは、基端部から外方に突出して形成され、固定筒部41aの直進溝41bに干渉可能に挿入される。フォロワ43bは、撮影光軸OAに直交する面に沿って、回転中心から放射方向へ向けて(以下、径方向ともいう)突出して設けられており、第1の回転筒42における撮影光軸OA(撮影光路)に沿う挿入溝42eを経て環状の案内溝42cに干渉可能に挿入される。このような構成により、第1の回転筒42と第1のライナー43とは、固定筒部41aに対して、撮影光軸OA(撮影光路)方向に一体的に移動するとともに、撮影光軸OA回りに相対的な回転(回転移動)が可能とされている。このため、第1のライナー43は、回転筒である第1の回転筒42の内方において、固定筒部41aに対する回転が防止されつつ第1の回転筒42と一体的に固定筒部41aに対して撮影光軸OA方向へと移動可能に、固定筒部41aに保持される直進筒(直進ガイド筒)として機能する。
【0026】
この第1のライナー43の内面には、図6に示すように、直進溝43cとヘリコイド43dとが設けられている。直進溝43cは、撮影光軸OA(撮影光路)方向に伸びて形成されている。この直進溝43cには、第2のライナー45の後述する基端部外周に設けられたキー部45bが干渉可能に挿入される。ヘリコイド43dは、第2の回転筒44の後述する基端部の外周面に形成されたヘリコイド44aに噛み合わされる。
【0027】
また、第1のライナー43には、逃げ溝43eが形成されている。逃げ溝43eは、後述する第2の回転筒44のカムフォロワ44bを通すために、第1のライナー43としての周壁部を貫通して設けられており、ヘリコイド43dに等しい螺旋状に形成されている。この逃げ溝43eは、通されるカムフォロワ44bの動きの阻害を防止する観点から当該カムフォロワ44bとの間に隙間が生じるように、互いの大きさ寸法が設定されている。
【0028】
ついで、第1のライナー43の外周面には、フランジ部43fが形成されている。このフランジ部43fは、外周面の基端部において、径方向に所定の幅寸法で突出されて外周面の周方向に伸びて形成されており、その外周方向で見た一部分がキー部43aの突出基部分と重なっている。この第1のライナー43の内方に、第2の回転筒44が設けられる。
【0029】
その第2の回転筒44は、第1のライナー43の内方に挿入可能な筒状を呈する。第2の回転筒44の基端部の外周面には、ヘリコイド44aが形成されている。このヘリコイド44aは、第1のライナー43の内周に設けられたヘリコイド43dに噛み合わされている。また、第2の回転筒44の基端部近傍の外周面には、カムフォロワ44bが突出して設けられている。このカムフォロワ44bは、第1のライナー43の逃げ溝43eを通して第1の回転筒42の内周に設けられた直進溝42dに干渉可能に挿入される。
【0030】
このような構成により、第1の回転筒42が光軸の周りに回転すると、第2の回転筒44のカムフォロワ44bが第1の回転筒42の直進溝42dに押されて、第2の回転筒44が光軸の周りに回転する。このとき、上述したように、第1のライナー43は、キー部43aが固定筒部41aの直進溝41bと干渉することにより回転することが防止されているので、そのヘリコイド43dとヘリコイド44aとの案内作用により、第2の回転筒44が第1のライナー43に対して撮影光軸OA方向に移動する。
【0031】
その第2の回転筒44の内周面には、案内溝44cとカム溝44dとが形成されている。案内溝44cは、撮影光軸OA(撮影光路)に直交する面に沿って設けられており、後述する第2のライナー45のフォロワ(またはキー)45cが干渉可能に挿入される。このような構成により、第2のライナー45と第2の回転筒44とは、撮影光軸OA(撮影光路)方向に一体的に移動するとともに、撮影光軸OA回りに相対的な回転(回転移動)が可能とされている。カム溝44dは、直進筒47の移動のためのカム溝である。この第2の回転筒44の内方に、第2のライナー45が設けられる。
【0032】
その第2のライナー45は、第2の回転筒44の内方に挿入可能な筒状を呈する。第2のライナー45には、基端部外周面に、キー部45bと、フォロワ(またはキー)45cと、直進溝45dと、が形成されている。キー部45bは、第2のライナー45の後端から径方向外側へ向けて鍵状に突出されている。このキー部45bは、第2の回転筒44の後端面に接するとともに、先端部分が第1のライナー43の直進溝43cに干渉可能に挿入される。また、フォロワ(またはキー)45cは、第2のライナー45の外周面から径方向外側へ向けて突出されている。このフォロワ(またはキー)45cは、第2の回転筒44の案内溝44cに干渉可能に挿入されることにより、回転しつつ直進する第2の回転筒44の直進移動力のみを第2のライナー45に作用させる直進案内部材である。直進溝45dは、第2のライナー45の外周面において、軸方向に沿って設けられている。このため、第2のライナー45は、第1のライナー43に対して、第2の回転筒44と撮影光軸OA(撮影光路)方向に一体的に移動するとともに、撮影光軸OA回りの回転が防止されている。
【0033】
第2のライナー45の内周面には、撮影光軸OA(撮影光路)方向に沿って設けられた直進溝45aと、撮影光軸OA(撮影光路)に直交する面に沿う案内溝45eと、が形成されている。この直進溝45aには、図示は略すが、上述したように、第2レンズ群用のカム溝に通された第2レンズ保持枠37のカムフォロワと、シャッタ/絞りユニット用のカム溝に通されたシャッタ/絞りユニット35のカムフォロワと、が干渉可能に挿入される。また、案内溝45eには、図示は略すが、カム筒46の外周面(前側)に突出して設けられた直進案内部材であるフォロワ(またはキー)が干渉可能に挿入される。このカム筒46は、筒状を呈し、第2のライナー45の内周に嵌め入れられている。カム筒46は、基端部外周に突出して設けられた突起(図示せず)が第2の回転筒44の基端部に嵌め込まれて、第2の回転筒44と一体的に回転動作するようになっている。このような構成により、カム筒46と第2のライナー45とは、撮影光軸OA(撮影光路)方向に一体的に移動するとともに、撮影光軸OA回りに相対的な回転(回転移動)が可能とされている。
【0034】
その第2のライナー45と第2の回転筒44との間には、直進筒47の基端部側が挿入されている(図3参照)。この直進筒47は、第2の回転筒44の内方に挿入可能な筒状を呈する。直進筒47の基端部近傍の外周面には、カムフォロワ47aが突接されている。そのカムフォロワ47aは、第2の回転筒44の内周面に形成されたカム溝44dに干渉可能に挿入されている。また、直進筒47の内周面には、図示は略すが、キー部が形成され、当該キー部は第2のライナー45の外周面の直進溝45dに干渉可能に挿入されている。このため、直進筒47は、第2のライナー45に対して、撮影光軸OA(撮影光路)方向への移動(直進移動)が可能とされているとともに、撮影光軸OA回りの回転が防止されている。
【0035】
次に、上述した撮像ユニット13の動作を説明する。図4は、撮影待機状態において繰出位置とされた撮像ユニット13を示し、図5は、収納状態の撮像ユニット13を示している。
【0036】
撮像ユニット13では、第1の回転筒42が、そのギア部42bに噛み合わされたギア(図示せず)を介して、レンズ鏡胴駆動ユニット23(図2参照)の駆動モータ(図示せず)の駆動力が適宜ギア伝達されて回動される。第1の回転筒42は、固定筒部41aに収納された収納状態(沈胴位置(図5参照))において回転駆動されると、カムフォロワ42aとカム溝41cとの案内作用により、固定筒部41aに対して撮影光軸OA方向で物体(被写体)側(Z軸方向正側)へ向かって進出移動する。また、第1の回転筒42が回転駆動されると、その直進溝42dが第2の回転筒44のカムフォロワ44bを押圧して、第2の回転筒44が第1のライナー43に対して光軸の周りに回転し、回転が防止された第1のライナー43のヘリコイド43dとヘリコイド44aとの案内作用により、第2の回転筒44が第1のライナー43に対して撮影光軸OA方向(Z軸方向)に移動する。これにより、第1の回転筒42、第1のライナー43、第2の回転筒44が、繰り出し可能な最大限の位置、例えば望遠端まで繰り出された状態となる(図4参照)。このとき、撮像ユニット13では、上述したように、第1の回転筒42、第1のライナー43および第2の回転筒44の動作に伴って、第2のライナー45、カム筒46および直進筒47が適宜回転および進退移動されることにより、第1レンズ保持枠36に保持された第1レンズ群31、第2レンズ保持枠37に保持された第2レンズ群32およびシャッタ/絞りユニット35が、所定のごとくズーミング動作する。また、第3レンズ保持枠38により一体的に保持された第3レンズ群33は、撮影光軸OA(撮影光路)上に配置されるとともに、所定のごとくズーミング動作する(図3の上半分参照)。さらに、第4レンズ保持枠39により一体的に保持された第4レンズ群34は、撮影光軸OA(撮影光路)上に配置されるとともに(図3の上半分参照)、所定のごとく合焦動作する。
【0037】
このため、撮像ユニット13では、第1レンズ保持枠36、第2レンズ保持枠37、第3レンズ保持枠38、第4レンズ保持枠39、固定筒部41a(固定枠41)、第1の回転筒42、第1のライナー43、第2の回転筒44、第2のライナー45、カム筒46および直進筒47が、撮影光学系12を構成する光学部材としての第1レンズ群31、第2レンズ群32、第3レンズ群33、第4レンズ群34およびシャッタ/絞りユニット35を収容する光学収容部材として機能する。また、第1レンズ保持枠36、第2レンズ保持枠37、第3レンズ保持枠38、第4レンズ保持枠39、第1の回転筒42、第1のライナー43、第2の回転筒44、第2のライナー45、カム筒46および直進筒47が、第1レンズ群31、第2レンズ群32、第3レンズ群33および第4レンズ群34の収納状態と撮影待機状態との移行のためのレンズ駆動機構として機能するとともに、固定筒部41a(固定枠41)に対して撮影光軸OA方向に沈胴位置と繰出位置との間で移動する可動光学収容部材(以下では、符号49を付して示す(図10等参照))として機能する。
【0038】
これら第1の回転筒42等の位置は、一般的なDC(直流)モータを用いて駆動モータ(図示せず)を構成することで、その出力軸に直接固定されたエンコーダ形状を備えたピニオンギヤと、この近傍に設置された例えばフォトインタラプタからなるズームカウント検出器によって発生される駆動パルスのカウントを用いて制御することができる。なお、第1の回転筒42を移動させるための駆動源は、実施例1ではDCモータとして、エンコーダとフォトインタラプタによる検出器により駆動位置検出を達成するようにしているが、これら全体をパルスモータに置き換えても同様の機能を達成可能である。このため、駆動モータは、スプラインギア等とともにレンズ駆動機構を駆動させるレンズ駆動機構用駆動源(可動レンズ鏡筒を撮影光軸OA方向へと進退させる可動レンズ鏡筒用駆動源)として機能し、可動レンズ鏡筒を介して可動レンズ保持枠を駆動するレンズ保持枠駆動手段として機能する。
(手ぶれ補正機構50の構成)
手ぶれ補正機構50は、図7に示すように、撮像ユニット13の後端部に設けられており、撮像素子22を撮影光軸OA方向(Z軸方向)に直交する面(X−Y平面)内で移動させて手ぶれを補正するものである。以下では、この手ぶれ補正機構50の構成を、主に図8を用いて説明する。図7は、撮像ユニット13の後端部およびそこに設けられた手ぶれ補正機構50を示す斜視図である。図8は、手ぶれ補正機構50を模式的に示す説明図であり、(a)は、撮像ユニット13の後端部に設けられた手ぶれ補正機構50を分解して示し、(b)は手ぶれ補正機構50における可動のための構成箇所を部分的に拡大して示している。
【0039】
手ぶれ補正機構50では、実施例1では、撮像素子22がフレキシブルプリント基板51(以下では、「FPC51」ともいう)に実装されており(図8参照)、そのFPC51が固定された可動ステージ52(図8(b)参照)を移動可能に支持する構成とされている。この可動ステージ52は、図8(b)に示すように、各第1ガイド軸53を介してスライド枠54に設けられている。この各第1ガイド軸53は、撮影光軸OA方向(Z軸方向)に直交する第1方向(実施例1ではY軸方向)に伸びる棒状を呈し、スライド枠54に固定されている。可動ステージ52は、各第1ガイド軸53にスライド移動可能に支持されており、スライド枠54に対する第1方向への移動が可能とされている。
【0040】
そのスライド枠54は、各第2ガイド軸55を介して取付枠56に設けられている。この各第2ガイド軸55は、撮影光軸OA方向(Z軸方向)に直交する第2方向(実施例1ではX軸方向)に伸びる棒状を呈し、取付枠56に固定されている。この取付枠56は、筐体11に取り付けられるベース板48(固定枠41)に固定される(図8(a)参照)。スライド枠54は、各第2ガイド軸55にスライド移動可能に支持されており、取付枠56に対する第2方向への移動が可能とされている。これにより、可動ステージ52すなわちそこに固定された撮像素子22(FPC51)は、取付枠56すなわちベース板48(撮影光学系12)に対して、所定の範囲内で第1方向および第2方向を含む面すなわちX−Y平面(撮影光軸OA方向に直交する面)に沿って移動可能とされている。また、このような構成により、可動ステージ52(撮像素子22(FPC51))は、ベース板48(取付枠56)に対して、撮影光軸OA方向への移動は制限されている。
【0041】
そのFPC51(可動ステージ52)には、図8(a)に示すように、第1駆動コイル57と第2駆動コイル58とが設けられている。この第1駆動コイル57は第1駆動マグネット61と、また第2駆動コイル58は第2駆動マグネット62と、撮影光軸OA方向(Z軸方向)で対向して設けられている。その第1駆動マグネット61と第2駆動マグネット62とは、明確な図示は略すがベース板48に固定されている。この第1駆動コイル57と第1駆動マグネット61とは、撮影光軸OA(Z軸)に対して第1方向に存在されており、第2駆動コイル58と第2駆動マグネット62とは、撮影光軸OA(Z軸)に対して第2方向に存在されている。
【0042】
手ぶれ補正機構50では、制御部21(図2参照)の制御下で、第1駆動コイル57および第2駆動コイル58に磁力を適宜発生させて、それぞれが撮影光軸OA方向で対向された第1駆動マグネット61および第2駆動マグネット62との間で、双方の磁力による吸引反発力を適宜作用させることにより、可動ステージ52を第1方向に、スライド枠54を第2方向にそれぞれ移動させることができる。手ぶれ補正機構50では、可動ステージ52の位置を検出するための位置検出素子25(図2参照)が設けられている。
【0043】
この位置検出素子25として、実施例1では、FPC51(可動ステージ52)に第1位置検出センサ63と第2位置検出センサ64とが設けられ、明確な図示は略すがベース板48に第1位置検出マグネット65と第2位置検出マグネット66とが設けられている。第1位置検出センサ63および第2位置検出センサ64には、実施例1では、ホール素子や磁気抵抗素子等の磁気センサが用いられている。第1位置検出センサ63および第2位置検出センサ64は、第1位置検出マグネット65および第2位置検出マグネット66が形成する磁界の変化を検知することにより、それらが設けられたベース板48に対するFPC51(可動ステージ52)の位置すなわち撮像素子22の位置を検出することができる。
【0044】
そのFPC51では、撮像素子22が実装された箇所から伸びる帯状の連結部51aが設けられている。この連結部51aは、図示は略すが上述した制御部21やぶれ検出素子26(図2参照)が設けられるコントロール基板に接続されている。
【0045】
この手ぶれ補正機構50では、制御部21(図2参照)の制御下で、ぶれ検出素子26(図2参照)で検出したぶれ検出情報に基づいて、第1駆動コイル57および第2駆動コイル58への印加電流を制御する。この制御により、第1駆動コイル57および第2駆動コイル58と第1駆動マグネット61および第2駆動マグネット62との間に磁力による吸引反発力を適宜作用させる。この吸引反発力によって、可動ステージ52を第1方向に、スライド枠54を第2方向にそれぞれ手ぶれを打ち消すように移動させる。ここで、手ぶれ補正機構50では、この移動が磁力による吸引反発力を利用するものであることから、設定した移動目標位置へと適切に移動するように、位置検出素子25(図2参照)からの位置情報に基づいてサーボ制御を行う。撮像素子22が目標位置に追従するようフィードバック制御が行われる。
【0046】
このとき、手ぶれ補正機構50(制御部21)では、可動ステージ52の移動範囲におけるX−Y平面内での原点位置が設定されている。また、手ぶれ補正機構50(制御部21)では、ぶれ検出素子26(図2参照)からのぶれ検出情報に基づいて、移動目標位置を設定するとともに、原点位置から移動目標位置への移動方向および移動量を算出し、その移動方向へと移動量だけ可動ステージ52を移動させる。なお、このように磁力による吸引反発力によりX−Y平面内での可動ステージ52の位置が制御されている状態、すなわち第1駆動コイル57および第2駆動コイル58への印加電流の制御により可動ステージ52がX−Y平面内での任意の位置とされている状態を、以下では電気的保持という。
【0047】
手ぶれ補正機構50では、X−Y平面上での移動方向に拘らず可動ステージ52を等しく移動することができるように、上記した電気的保持における原点位置が、スライド枠54と取付枠56とによりX−Y平面上での移動自在とされた範囲における中心位置と一致されている。これは、手ぶれがX−Y平面上のいずれの方向に生じるかはわからないものであることから、ベース板48に対して可動ステージ52すなわち撮像素子22をX−Y平面上でのあらゆる方向に移動することを可能とすることが望ましいことによる。また、手ぶれ補正機構50では、撮影光学系12における収差の影響等に伴う画像の劣化を抑制するために、上記した原点位置を撮影光軸OA(Z軸)上に位置させている。
【0048】
このため、手ぶれ補正機構50では、電気的保持の状態において、可動ステージ52すなわち撮像素子22を、撮影光軸OA上の原点位置を基準として手ぶれを打ち消すようにX−Y平面上で移動することにより、手ぶれ補正を行う。この原点位置は、制御部21に設けられた記憶部21a(図2参照)に格納され、その制御部21により適宜取得可能とされている。このため、デジタルカメラ10すなわち手ぶれ補正機構50では、記憶部21a(図2参照)に格納された原点位置のデータに基づいて、制御部21が第1駆動コイル57および第2駆動コイル58への印加電流を制御することにより、電気的保持の状態において、可動ステージ52すなわち撮像素子22を撮影光軸OA上に設定された原点位置へと移動させることができるとともに当該原点位置に在ることを維持することができる。
【0049】
次に、本願発明の撮像ユニット13の特徴部分について説明する。撮像ユニット13では、保持機構70が設けられている。この保持機構70について、図7に加えて、図9から図21を用いて説明する。なお、図9では、理解容易のために、手ぶれ補正機構50における可動のための構成箇所を省略して示している。また、図16では、理解容易のために、移動規制部材71および第1トーションスプリング73を省略して示している。さらに、図17では、理解容易のために、押さえ軸74および第2トーションスプリング75を省略して示している。図20および図21では、理解容易のために、第1のライナー43、可動ステージ52、移動規制部材71、第1トーションスプリング73、押さえ軸74および第2トーションスプリング75以外の部材を省略して示している。加えて、図20および図21では、理解容易のために、第1のライナー43を簡略化しつつドットを付して示すとともに、可動ステージ52は保持機構70の周辺のみを部分的に示している。
【0050】
この保持機構70は、ベース板48(取付枠56)に対してX−Y平面(撮影光軸OA方向に直交する面)に沿って移動可能とされた可動ステージ52(撮像素子22(FPC51))を、第1駆動コイル57および第2駆動コイル58(図8参照)へと電流を印加することなくX−Y平面内での任意の位置で固定するものである。保持機構70は、基本的に、図9および図10に示すように、ベース板48に設けた移動規制部材71の移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てることにより、ベース板48と可動ステージ52とを移動規制部材71で掛け渡すことで相対的な移動を防止する。
【0051】
保持機構70では、図10に示すように、移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てる方向へと「押す力F1」を、図示を略す第1弾性部材で移動規制部材71に付与する。また、保持機構70では、図10(b)に示すように、「押す力F1」とは反対方向であって当該「押す力F1」よりも大きな「押す力F2」を、図示を略す第2弾性部材で移動規制部材71に付与する。このため、保持機構70は、実質的に「押す力F1」が移動規制部材71を押している状態が解除され、「押す力F2」から「押す力F1」を差し引いた力で移動規制部材71を押すことにより、移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てていない状態となる。これにより、可動ステージ52は、ベース板48の内方において移動可能とされる。
【0052】
加えて、保持機構70では、図10(a)に示すように、可動光学収容部材49が繰出位置(撮影待機状態)から沈胴位置(収納状態)へ向けて移動することに伴う「押す力F3」、すなわち固定筒部41a(固定枠41)に対してZ軸方向負側(撮影光軸OA方向の像面側)に移動する可動光学収容部材49が「押す力F3」を、「押す力F2」に抗する方向へと作用させる構成とするとともに、その「押す力F2」を「押す力F3」よりも小さく設定する。このため、保持機構70では、可動光学収容部材49が沈胴位置とされると、その可動光学収容部材49からの「押す力F3」で「押す力F2」を打ち消して、実質的に「押す力F2」が移動規制箇所72を押している状態を解除し、「押す力F1」で移動規制部材71を押すことにより、移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てる状態となる。これにより、可動ステージ52は、ベース板48の内方において固定されている。このように、保持機構70では、移動規制部材71に対する「押す力F1」、「押す力F2」および「押す力F3」の作用方向を上述した設定とするとともに、それらの力の大きさを次式(1)の関係となるように設定する。
【0053】
|F1|<|F2|<|F3| ・・・・(1)
この保持機構70における可動光学収容部材49の位置に対する、図示を略す第1弾性部材(後述する第1トーションスプリング73)、図示を略す第2弾性部材(後述する第2トーションスプリング75)、移動規制部材71および可動ステージ52の状態の関係性を以下の表に示す。
【表1】

【0054】
このように、保持機構70では、移動規制部材71の移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てた状態と、移動規制部材71の移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てていない状態と、を、固定筒部41a(固定枠41)に対する可動光学収容部材49の位置に応じて切り替える。この保持機構70では、第1弾性部材(図示せず)からの「押す力F1」により移動規制部材71の移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てる構成とし、その「押す力F1」による移動規制箇所72の可動ステージ52への押し当てを第2弾性部材(図示せず)からの「押す力F2」で解除する構成とし、その「押す力F2」を可動光学収容部材49の移動に伴う「押す力F3」を利用して解除する構成としている。
【0055】
保持機構70は、実施例1では、図10に示すように、移動規制部材71の移動規制箇所72を、撮影光軸OA方向で見た後側(前側が被写体側とする)から可動ステージ52に押し当てる(Z軸方向正側へ向けて押し当てる)構成としている。このため、保持機構70では、移動規制部材71を撮影光軸OA方向に直交する軸線Ad回りに回転可能な構成とするとともに、「押す力F1」の作用方向を移動規制箇所72が撮影光軸OA方向正側へと進行する向きに移動規制部材71を軸線Ad回りに回転させる構成としている。これを移動規制部材71における正転方向とする。また、保持機構70では、「押す力F2」の作用方向を、軸線Adとそこに撮影光軸OA方向で直交する直線とを含む面に関して、移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てる側とは反対側で、移動規制部材71を撮影光軸OA方向正側へと押す構成としている。これにより、保持機構70では、「押す力F1」と「押す力F2」とを互いに抗する方向に作用させるとともに、その「押す力F2」と可動光学収容部材49が撮影光軸OA方向負側へと移動することにより生じる「押す力F3」とを互いに抗する方向に作用させている。このため、実施例1では、移動規制部材71における正転方向が移動規制方向となり、移動規制部材71における反転方向が解除方向となる。
【0056】
このような構成の1つの具体例である実施例1について、以下で説明する。保持機構70は、図7に示すように、移動規制部材71に加えて、第1トーションスプリング73と、押さえ軸74と、第2トーションスプリング75と、を備える。その移動規制部材71は、ベース板48に設けられており、そこの内方で相対的に移動可能とされた可動ステージ52への掛け渡しが可能とされている。
【0057】
その移動規制部材71は、図11に示すように、回転基部81と、一対の回転軸部82と、規制腕部83と、第1回転力受部84と、突出部85と、第2回転力受部86と、を有する。回転基部81は、全体に円柱状を呈する。この回転基部81の軸線が、移動規制部材71の軸線Adを規定する。この移動規制部材71は、実施例1では、後述するように軸線AdをX軸方向に沿わせてベース板48に設けられることから、以下の説明では、軸線AdをX軸方向としてXYZ座標を用いる。
【0058】
一対の回転軸部82は、回転基部81の両端からX軸(軸線Ad)方向へと突出して設けられている。両回転軸部82は、全体に回転基部81よりも小さな外径寸法の円柱状を呈する。両回転軸部82のうちのX軸方向正側の回転軸部82aは、X軸方向で見た中間位置で外径寸法が変化されており、回転基部81に連続する箇所の外径寸法の方が大きく設定されている。この回転軸部82aにおける大径箇所は、後述するように第1トーションスプリング73が取り付けられる第1取付箇所87となる。両回転軸部82のうちのX軸方向負側の回転軸部82bには、Z軸方向負側へと突出する直方体形状の回転規制箇所82cが設けられている。
【0059】
規制腕部83は、回転基部81の側面から、X−Y平面に沿う方向であってY軸方向およびX軸方向の負側へと突出して設けられている。この規制腕部83は、全体に平板状を呈し、先端部に移動規制箇所72が設けられている。その移動規制箇所72は、規制腕部83の先端部の平面からZ軸方向正側へと突出されて形成されている。移動規制箇所72は、実施例1では、突出端部が球状とされている。
【0060】
第1回転力受部84は、回転基部81の側面からY軸方向正側へと突出されて形成されている。この第1回転力受部84では、突出端部にX軸方向正側へと突出されて直方体形状の引掛片84aが設けられており、その引掛片84aに引掛溝84bが形成されている。この引掛溝84bは、Z軸方向正側の端面からZ軸方向負側の中間位置へ向けて引掛片84aを切り欠いて形成されており、その引掛片84aをY軸方向に貫通している。
【0061】
突出部85は、回転基部81における回転軸部82a側の端部の側面からZ軸方向正側へと突出されて形成されている。この突出部85は、直方体形状を呈し、X軸方向負側に位置決め面85a(図11(c)参照)を形成している。この位置決め面85aは、Z軸方向を含みつつY軸方向の正側から負側へと向かうに連れてX軸方向負側へと変位する平坦面とされている(図11(c)参照)。
【0062】
第2回転力受部86は、回転基部81の側面において、突出部85の位置決め面85aからX軸方向負側へ向けて所定の間隔を置いた位置に設けられている。この第2回転力受部86は、側面の当該位置からZ軸方向正側へと突出する突出基部分86aと、その突出端部からY軸方向正側へと突出する突出腕部分86bと、その突出端部に設けられた引掛箇所86cと、そのY軸方向正側の端部に設けられた脱落防止片86dと、を有する。第2回転力受部86では、引掛箇所86cにおけるZ軸方向負側の面が略X−Y平面に沿って形成されているとともに、その面から直交しつつX−Z平面に沿って立ち上がって脱落防止片86dにおけるY軸方向負側の面が形成されている。また、第2回転力受部86の突出基部分86aは、直方体形状を呈し、X軸方向正側に位置決め面86e(図11(a)および(c)参照)を形成している。この位置決め面86eは、Y−Z平面に沿う平坦面とされている(図11(c)参照)。このため、位置決め面86eは、X軸方向で見て突出部85の位置決め面85aと対向している。なお、上記した所定の間隔は、後述するように、その位置決め面85aと位置決め面86eとに押さえ軸74の脚部74d(図12(b)および図13等参照)を当てることを可能とする寸法に設定されている。
【0063】
この移動規制部材71には、図12に示すように、第1トーションスプリング73が取り付けられる。この第1トーションスプリング73は、螺旋状部73aから一端部73bと他端部73cとが突出された単一の線材で形成されており、螺旋状部73aの軸線回り方向で見て一端部73bと他端部73cとを接近させる動作に抗する弾性力を発揮する。第1トーションスプリング73は、螺旋状部73aで回転軸部82aの第1取付箇所87(大径箇所)を取り巻きつつ、一端部73bが第1回転力受部84の引掛片84aの引掛溝84bに挿入されて、移動規制部材71に取り付けられる。
【0064】
また、移動規制部材71には、図14および図15等に示すように、押さえ軸74が設けられる。この押さえ軸74は、第2トーションスプリング75からの押す力(「押す力F2」)を移動規制部材71に作用させるべく当該第2トーションスプリング75の取り付けのために設けられる。押さえ軸74は、図13に示すように、全体に円柱の棒状を呈し、Y軸方向に伸びる軸線を有し、Y軸方向正側から、頭部74aと首部74bと胴部74cと脚部74dと有する。その頭部74aは、円板状を呈する。首部74bは、頭部74aよりも小さな外径寸法の円柱状を呈する。胴部74cは、首部74bよりも大きく、かつ頭部74aよりも小さな外径寸法の円柱状を呈する。このため、押さえ軸74では、首部74bにより環状の凹所が形成されている。脚部74dは、胴部74cよりも小さな外径寸法の円柱状を呈する。この脚部74dは、移動規制部材71における突出部85の位置決め面85aと、第2回転力受部86の突出基部分86aの位置決め面86eと、の間に、Y軸方向の正側から負側へ向けて通すことが可能であって、その位置決め面85a(その先端箇所)と位置決め面86eとにX軸方向で接することが可能な外径寸法に設定されている(図12(b)等参照)。図12(b)、図14および図15等に示すように、この押さえ軸74に第2トーションスプリング75が取り付けられる。
【0065】
その第2トーションスプリング75は、螺旋状部75aから一端部75bと他端部75cとが突出された単一の線材で形成されており、螺旋状部75aの軸線回り方向で見て一端部75bと他端部75cとを接近させる動作に抗する弾性力を発揮する。この第2トーションスプリング75における弾性力は、第1トーションスプリング73における弾性力よりも大きく設定されているとともに、可動光学収容部材49(第1のライナー43)がZ軸方向負側へと移動される力よりも小さく設定されている。第2トーションスプリング75は、螺旋状部75aで押さえ軸74の胴部74cを取り巻きつつ、一端部75bを第2回転力受部86の引掛箇所86cに宛がわせて、押さえ軸74に取り付けられ移動規制部材71に関連付けて設けられる。このとき、一端部75bは、その先端箇所75dが宛がわれた引掛箇所86cを超えて進出する長さ寸法とされている。その移動規制部材71がベース板48に設けられる。
【0066】
そのベース板48には、移動規制部材71の取り付けのための設置部48aが設けられる(図17参照)。この設置部48aは、図16および図17に示すように、ベース板48におけるZ軸方向負側の面をZ軸方向正側へと凹ませて形成されている。設置部48aには、X軸方向に貫通しZ軸方向負側が開放されたU字状を呈する第1軸受48bと、明確な図示は略すがX軸方向正側が開放された断面円形の孔形状を呈する第2軸受48cと、が設けられている。この第1軸受48bと第2軸受48cとは、X軸方向に伸びる同一線上に設けられており、第1軸受48bが正側に存在されている。また、設置部48aには、ベース板48におけるY軸方向正側の壁部を貫通する第3軸受48dと、Y軸方向正側が開放された断面円形の孔形状を呈する第4軸受48e(図16参照)と、が設けられている。この第3軸受48dと第4軸受48eとは、Y軸方向に伸びる同一線上に設けられており、第3軸受48dが正側に存在されている。
【0067】
可動ステージ52には、上述した原点位置とされた状態において、移動規制箇所72が押し当てられる箇所、すなわち移動規制箇所72とZ軸方向で対向する箇所に受入凹所76が設けられている。この受入凹所76は、可動ステージ52におけるZ軸方向負側の面において、FPC51が設けられていない箇所をZ軸方向正側へと凹ませて形成されており、移動規制箇所72を受け入れることが可能な大きさ寸法とされている。受入凹所76は、実施例1では、Z軸方向で負側から正側へと向かうに連れて断面積を漸減させる円錐形状とされており、Z軸方向負側の開放端の開口面積が、移動規制箇所72の外径寸法よりも大きく設定されている(図18および図19参照)。このため、移動規制箇所72は、可動ステージ52に押し当てられると、受入凹所76内へと進入して、X−Y平面に沿う方向で見た全周に渡って受入凹所76を規定する傾斜壁面に接触する。
【0068】
次に、この保持機構70のベース板48への取り付け状態について説明する。上述したように移動規制部材71に関連付けて第2トーションスプリング75が取り付けられた押さえ軸74(図14および図15等参照)は、図16に示すように、ベース板48に設けられた設置部48aに取り付けられる。この押さえ軸74は、首部74bが第3軸受48dに挿入され、脚部74dが第4軸受48eに挿入されて、設置部48aに設けられる。ここで、第3軸受48dと第4軸受48eとは、Y軸方向に伸びる同一線上に設けられていることから、押さえ軸74は、設置部48aにおいて、Y軸方向を軸線として回転可能(以下では、Y軸方向周りに回転ともいう)とされている。また、押さえ軸74は、首部74bが第3軸受48dに嵌め込まれているとともに、脚部74dが第4軸受48eに挿入されていることから、設置部48aからの脱落が防止されている。このため、押さえ軸74は、設置部48aにY軸方向周りに回転可能に固定されている。この押さえ軸74に取り付けられた第2トーションスプリング75の他端部75cは、ベース板48に固定される。
【0069】
また、上述したように第2トーションスプリング75が関連付けられ第1トーションスプリング73が取り付けられた移動規制部材71(図12参照)は、図17に示すように、ベース板48に設けられた設置部48aに取り付けられる。この移動規制部材71は、回転軸部82bが第1軸受48bに挿入され、明確な図示は略すが回転軸部82aが第2軸受48cに挿入されて、設置部48aに設けられる。ここで、第1軸受48bと第2軸受48cとがX軸方向に伸びる同一線上に設けられていることから、移動規制部材71は、軸線Ad(図11等参照)をX軸方向に沿わせて設置部48a(ベース板48)に設けられる。このため、移動規制部材71は、設置部48aにおいて、X軸方向を軸線として回転可能(以下では、X軸方向周りに回転ともいう)とされている(図17(a)参照)。この移動規制部材71に取り付けられた第1トーションスプリング73の他端部73cは、明確な図示は略すがベース板48に固定される。
【0070】
このとき、上述したように設置部48aに回転可能に固定された押さえ軸74の脚部74dは、移動規制部材71の突出部85の位置決め面85aと、第2回転力受部86の突出基部分86aの位置決め面86eと、の間に通されている。また、その押さえ軸74に設けられた第2トーションスプリング75の一端部75bは、移動規制部材71の第2回転力受部86の引掛箇所86cに宛がわれている(図7、図15、図18および図19等参照)。
【0071】
その後、ベース板48には、押さえ板77が取り付けられる(図17(b)参照)。この押さえ板77は、薄板状を呈し、少なくとも第1軸受48bのZ軸方向負側の開放端を覆うことが可能とされている(図17(b)参照)。このため、移動規制部材71は、X軸方向周りに回転可能とされるとともに設置部48aからの脱落が防止されて、ベース板48に取り付けられる。すなわち、移動規制部材71は、設置部48aにX軸方向周りに回転可能に固定される。この移動規制部材71では、第1軸受48bに挿入される回転軸部82bに回転規制箇所82cが設けられていることから、X軸方向周りの回転可能な範囲が制限されている。その回転可能な範囲は、少なくとも移動規制部材71の移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てることが可能である姿勢(図19(a)参照)と、その移動規制箇所72を可動ステージ52から離間させることが可能である姿勢(図19(b)参照)と、を含むものとされている。また、移動規制部材71では、上述したように設置部48aに固定された押さえ軸74の脚部74dが、移動規制部材71の突出部85の位置決め面85aと、第2回転力受部86の突出基部分86aの位置決め面86eと、に当てられていることから、設置部48a内でのX軸方向への移動が防止されている。
【0072】
この状態において、第2トーションスプリング75では、上述したように、引掛箇所86cに宛がわれた一端部75bの先端箇所75dが、当該引掛箇所86cを超えて進出されている(図14および図15等参照)。その先端箇所75dは、図20(a)および図21(a)に示すように、Z軸方向の負側からみると、可動光学収容部材49としての第1のライナー43と重なる位置関係とされている。また、先端箇所75dは、図21(b)に示すように、Z軸方向で見て、沈胴位置(収納状態)とされた第1のライナー43(その後端面)と干渉する位置関係とされているとともに、図20(b)に示すように、その第1のライナー43が繰り出されると干渉が解消される位置関係とされている。さらに、第2トーションスプリング75では、沈胴位置(収納状態)とされた第1のライナー43(その後端面)に先端箇所75dを干渉させた状態では、当該先端箇所75dのZ軸方向負側への変位に伴って、一端部75bが引掛箇所86cからZ軸方向負側へと離間する位置関係とされている(図19(a)、図21(b)等参照)。
【0073】
保持機構70では、可動光学収容部材49としての第1のライナー43の位置に拘らず、第1トーションスプリング73が、螺旋状部73aで移動規制部材71の回転軸部82aの第1取付箇所87を取り巻きつつ、一端部73bが第1回転力受部84の引掛片84aの引掛溝84bに挿入され、他端部73cがベース板48に固定されていることから、他端部73cを基点にして一端部73bが取り付けられた引掛片84a(引掛溝84b)をZ軸方向負側へと押す(図19(a)に示す符号F1´参照)。このため、移動規制部材71には、図18および図19に示すように、設置部48a内において、第1トーションスプリング73から、X軸方向周りであって移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てる方向への「押す力F1」が付与されている。このため、第1トーションスプリング73は、移動規制部材71に対して、移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てる側へと軸線Ad回り(正転方向)に「押す力F1」を付与する第1弾性部材として機能する。
【0074】
また、保持機構70では、可動光学収容部材49としての第1のライナー43が繰出位置(撮影待機状態)とされると、第2トーションスプリング75が、螺旋状部75aで押さえ軸74の胴部74cを取り巻きつつ、一端部75bが第2回転力受部86の引掛箇所86cに宛がわれ、他端部75cがベース板48に固定されていることから、その他端部75cを基点にして一端部75bが宛がわれた引掛箇所86cをZ軸方向正側へと押す(図19(b)に示す符号F2´参照)。このため、移動規制部材71には、図18および図19(b)に示すように、設置部48a内において、第2トーションスプリング75から、X軸方向周りであって「押す力F1」に抗する方向への「押す力F2」が付与されている。ここで、第2トーションスプリング75における弾性力が、第1トーションスプリング73における弾性力よりも大きく設定されていることから、保持機構70では、「押す力F2」から「押す力F1」を差し引いた力で移動規制部材71を押す(回転させる)ことにより、移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てていない状態となる。このように、保持機構70では、実質的に「押す力F1」が移動規制部材71を押している(回転させている)状態が解除される。このため、第2トーションスプリング75は、移動規制部材71に対して、移動規制箇所72を可動ステージ52から離間させる側(「押す力F1」に抗する方向)へと軸線Ad回り(反転方向)に「押す力F2」を付与する第2弾性部材として機能する。なお、移動規制部材71では、引掛箇所86cが第2トーションスプリング75(その一端部75b)からZ軸方向正側へと押されて(図19(b)に示す符号F2´参照)X軸方向回り(軸線Ad回り)に回転することにより、引掛箇所86cが傾斜するが、その引掛箇所86cには脱落防止片86dが設けられていることから、一端部75bが引掛箇所86cから脱落することが防止されている(図19(b)参照)。
【0075】
さらに、保持機構70では、図19(a)および図21(b)に示すように、可動光学収容部材49としての第1のライナー43が沈胴位置へ向けてZ軸方向負側へと移動されると、その後端面に第2トーションスプリング75の一端部75bの先端箇所75dが干渉するものとされている。ここで、この第2トーションスプリング75では、弾性力が可動光学収容部材49(第1のライナー43)のZ軸方向負側への移動力よりも小さく設定されているとともに、上述したように設置部48aに取り付けられていることから、先端箇所75dがZ軸方向負側へと移動する第1のライナー43(その後端面)に押されて、先端箇所75dすなわち一端部75bがZ軸方向負側へと変位する。すると、第2トーションスプリング75では、沈胴位置とされた第1のライナー43(その後端面)に先端箇所75dを干渉させた状態では、当該先端箇所75dのZ軸方向負側への変位に伴って、一端部75bがZ軸方向負側へと移動して引掛箇所86cから離間するので、第2トーションスプリング75から移動規制部材71へと「押す力F2」を付与することがなくなる。このように、保持機構70では、実質的に「押す力F2」が移動規制部材71を押している(回転させている)状態が解除される。このため、保持機構70では、「押す力F1」で移動規制部材71を押す(回転させる)ことにより、移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てている状態となる。このことから、可動光学収容部材49としての第1のライナー43が、沈胴位置(収納状態)へのZ軸方向負側へ向けて移動するときに先端箇所75d(第2トーションスプリング75(その一端部75b))をZ軸方向負側へ向けて押す力が、可動光学収容部材49からの「押す力F3」として機能する。また、第2トーションスプリング75の一端部75b(先端箇所75dを含む)は、解除方向へと移動規制部材71を回転させる力を付与すべく移動規制部材71に押し当てるとともに、沈胴位置へと移動した可動光学収容部材49(第1のライナー43)に干渉すると引掛箇所86c(移動規制部材71)から離間される押当箇所として機能する。
【0076】
このように、保持機構70では、可動光学収容部材49が繰出位置(撮影待機状態)の場合、その第1のライナー43(その後端面)と先端箇所75dとが干渉することがないので、移動規制部材71を正転方向へと回転させる第1トーションスプリング73からの「押す力F1」よりも大きな第2トーションスプリング75からの「押す力F2」で、実質的に移動規制部材71を反転方向へと回転させることにより、移動規制部材71の移動規制箇所72を可動ステージ52の受入凹所76から外して、可動ステージ52を移動可能な状態とする。
【0077】
また、保持機構70では、可動光学収容部材49が沈胴位置(収納状態)の場合、その第1のライナー43(その後端面)と先端箇所75dとを干渉させて、第2トーションスプリング75が移動規制部材71を反転方向へと回転させる「押す力F2」よりも大きな第1のライナー43からの「押す力F3」で、第2トーションスプリング75の先端箇所75d(一端部75b)のZ軸方向負側へと変位させ、その一端部75bからの「押す力F2」が引掛箇所86cに作用しないものとして、第1トーションスプリング73からの「押す力F1」で移動規制部材71を正転方向へと回転させることにより、移動規制部材71の移動規制箇所72を可動ステージ52の受入凹所76へと進入させて、可動ステージ52を固定した状態とする。
【0078】
次に、撮像ユニット13の動作に伴う保持機構70の作用について説明する。撮像ユニット13(デジタルカメラ10(図1参照))では、撮影待機状態(繰出位置(図5参照))とされている場合、固定筒部41a内において、第1のライナー43(可動光学収容部材49)が、ベース板48とは反対側(被写体側)へと突出(変位)された位置とされている。このとき、保持機構70では、上述したように、実質的に「押す力F1」が移動規制部材71を押している(回転させている)状態が解除されて、「押す力F2」から「押す力F1」を差し引いた力で移動規制部材71を押す(回転させる)ことにより、移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てていない状態となる(図19(b)および図20参照)。このとき、可動ステージ52(撮像素子22)は、X−Y平面に沿って移動可能であり、手ぶれ補正機構50は、作動可能な状態となる。以下では、これを非保持状態という。
【0079】
撮像ユニット13(デジタルカメラ10(図1参照))では、撮影待機状態(繰出位置(図5参照))から収納状態(沈胴位置(図4参照))への移行の要求があると、レンズ鏡胴駆動ユニット23(図2参照)(そのモータ)の駆動力が適宜ギア伝達されて、上述したように、第1のライナー43を含む可動光学収容部材49が固定枠41(その固定筒部41a)内に収容される。これにより、撮像ユニット13では、撮影光学系12(図1参照)の各光学部材が所定のごとく移動し、収納状態(図4参照)へと移行する。すると、保持機構70では、上述したように、第2トーションスプリング75の一端部75bの先端箇所75dが第1のライナー43(その後端面)に干渉して「押す力F3」でZ軸方向負側へと変位されることにより、実質的に「押す力F2」が移動規制部材71を押している(回転させている)状態が解除され、「押す力F1」で移動規制部材71を押す(回転させる)ことにより、移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てている状態となる(図19(a)および図21参照)。このとき、可動ステージ52は、上述した原点位置とされていると、移動規制箇所72が受入凹所76内へと進入して押し当てられることにより、ベース板48に対する移動が規制される(図18および図19(a)参照)。以下では、これを保持状態といい、この移動規制部材71の移動規制箇所72が受入凹所76内に押し当てられることにより保持状態とされることを機械的保持という。すなわち、デジタルカメラ10では、収容部材駆動部(レンズ鏡胴駆動ユニット23)により、可動光学収容部材49(撮影光学系12)が繰出位置(撮影待機状態(図5参照))から沈胴位置(収納状態(図4参照))とされると、保持機構70の移動規制部材71がベース板48と可動ステージ52とを掛け渡すことにより、可動ステージ52の撮影光軸OA(Z軸)と垂直方向に対する移動(X−Y平面に沿う移動)が機械的に規制される。
(撮影待機状態(繰出位置)への移行動作)
次に、実施例1のデジタルカメラ10における撮影待機状態(繰出位置)への移行動作について説明する。図22は、デジタルカメラ10の動作を統括的に制御する制御部21における撮影待機状態(繰出位置)への移行動作の制御処理の内容の一例を示すフローチャートである。以下、この撮影待機状態への移行動作の際の制御部21における制御処理の一例である図22のフローチャートの各ステップについて説明する。
【0080】
ステップS1では、図示を略すデジタルカメラ10の電源スイッチ(図示せず)がON状態とされると、撮影待機状態とすべくすなわち収納状態(沈胴位置)から撮影待機状態(繰出位置)へと移行すべく、ステップS2へ進む。
【0081】
ステップS2では、ステップS1で電源スイッチ(図示せず)がON状態とされたことから、撮影光学系12を撮影可能な状態とすべく可動光学収容部材49を繰出位置とする制御を開始し、ステップS3へ進む。このステップS2では、レンズ鏡胴駆動ユニット23(図2参照)を駆動制御することにより、可動光学収容部材49を、沈胴位置(図4参照)から前方側(物体側)の繰出位置(図5参照)へと移動させる。これにより、撮像ユニット13の第1のライナー43も、可動ステージ52に対して撮影光軸OA方向の物体側(Z軸方向正側)へと移動され(図20参照)、撮像ユニット13(撮影光学系12)が撮影待機状態(図5参照)となる。これにより、保持機構70では、上述したように、実質的に「押す力F1」が移動規制部材71を押している(回転させている)状態が解除されて、「押す力F2」から「押す力F1」を差し引いた力で移動規制部材71を押す(回転させる)ことにより、移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てていない非保持状態となる(図19(b)および図20参照)。
【0082】
ステップS3では、ステップS2での可動光学収容部材49を繰出位置とする制御を開始することに続き、可動ステージ52を原点位置で電気的に保持する制御を開始し、このフローチャートを終了する。このステップS3では、手ぶれ補正機構50による電気的保持の状態において、可動ステージ52(撮像素子22)を光軸上に設定された原点位置へと移動させるとともに当該原点位置に在ることを維持する制御を開始する。すなわち、ステップS3では、記憶部21aに格納された原点位置のデータに基づいて、第1駆動コイル57および第2駆動コイル58への印加電流を制御することにより、可動ステージ52を電気的に原点位置で保持する。なお、実施例1では、ステップS2において可動光学収容部材49(第1のライナー43)を繰出位置(撮影待機状態)とする際、その動作の過程において機械的保持が解除される前に、ステップS3の可動ステージ52を電気的保持による原点位置とする動作を実行する。これは、可動ステージ52に対して、機械的保持と電気的保持との双方が解除された状態が生じることを防止するためである。
【0083】
この撮影待機状態への移行動作により、デジタルカメラ10では、撮影可能な状態となり、可動ステージ52(撮像素子22)が機械的保持の状態から、手ぶれ補正機構50による電気的保持の状態へと移行する。このとき、デジタルカメラ10では、表示部24(図2参照)に制御部21の制御下で取得した画像が表示されて、ライブビュー状態(モニタリング状態)となり、手ぶれ補正機構50による手ぶれ補正を実行する。なお、デジタルカメラ10では、図示は略すが、手ぶれ補正の実行の有無を選択する手ぶれ補正スイッチを設けて、上述したライブビュー状態において、当該手ぶれ補正スイッチがOFFの場合には手ぶれ補正機構50による手ぶれ補正を実行せず、当該手ぶれ補正スイッチがONとされると直ちに手ぶれ補正機構50による手ぶれ補正を実行する構成としてもよい。
(収納状態(沈胴位置)への移行動作)
次に、実施例1のデジタルカメラ10における撮影待機状態(繰出位置)から収納状態(沈胴位置)への移行動作について説明する。図23は、デジタルカメラ10の動作を統括的に制御する制御部21における撮影待機状態(繰出位置)から収納状態(沈胴位置)への移行動作の制御処理の内容の一例を示すフローチャートである。以下、この撮影待機状態(繰出位置)から収納状態(沈胴位置)への移行動作の際の制御部21における制御処理の一例である図23のフローチャートの各ステップについて説明する。
【0084】
ステップS11では、図示を略すデジタルカメラ10の電源スイッチ(図示せず)がOFF状態とされると、収納状態とすべくすなわち撮影待機状態(繰出位置)から収納状態(沈胴位置)へと移行すべく、ステップS12へ進む。
【0085】
ステップS12では、ステップS11で電源スイッチ(図示せず)がOFF状態とされたことから、可動ステージ52を原点位置で電気的に保持する制御を開始し、ステップS13へ進む。このステップS12では、ステップS3と同様に、手ぶれ補正機構50による電気的保持の状態において、可動ステージ52(撮像素子22)を光軸上に設定された原点位置へと移動させるとともに当該原点位置に在ることを維持する制御を開始する。
【0086】
ステップS13では、ステップS12での可動ステージ52を原点位置で電気的に保持する制御を開始することに続き、可動光学収容部材49を沈胴位置とする制御を開始し、ステップS14へ進む。このステップS13では、レンズ鏡胴駆動ユニット23(図2参照)を駆動制御することにより、可動光学収容部材49(第1のライナー43)を、繰出位置(図5参照)から後方側(撮像素子22側)の沈胴位置(図4参照)へと移動させる。これにより、撮像ユニット13(撮影光学系12)が収納状態(図4参照)となり、第1のライナー43も沈胴位置(図19(a)および図21参照)となる。このため、保持機構70では、上述したように、第1のライナー43(その後端面)が「押す力F3」で先端箇所75dがZ軸方向負側に変位されて、実質的に「押す力F2」が移動規制部材71を押している(回転させている)状態が解除され、「押す力F1」で移動規制部材71を押す(回転させる)ことにより、移動規制箇所72を可動ステージ52の受入凹所76内に押し当てた機械的保持状態となる(図18、図19(a)および図21参照)。
【0087】
ステップS14では、ステップS13での可動光学収容部材49を沈胴位置とする制御を開始することに続き、可動ステージ52の電気的保持を停止し、このフローチャートを終了する。このステップS14では、手ぶれ補正機構50による電気的保持を停止、すなわち第1駆動コイル57および第2駆動コイル58への電流の印加を停止する。このとき、ステップS13において第1のライナー43が沈胴位置とされていることから、保持機構70が機械的保持状態であるので、可動ステージ52が意図せずに移動することはない。
【0088】
この撮影待機状態(繰出位置)から収納状態(沈胴位置)への移行動作により、デジタルカメラ10では、撮影光学系12が収納状態とされる。このとき、表示部24の画像表示も停止される。
【0089】
実施例1の撮像ユニット13では、撮影光学系12が収納状態となると、保持機構70が、撮影光学系12の可動光学収容部材49としての第1のライナー43(その後端面)の繰出位置から沈胴位置(Z軸方向負側)への移動に伴う「押す力F3」により「押す力F2」を解除するものであり、かつその「押す力F2」を第2トーションスプリング75(第2弾性部材)により移動規制部材71へと付与するものであることから、可動ステージ52の機械的保持への移行もしくは機械的保持状態において第1のライナー43(可動光学収容部材49)にX‐Y方向への押圧力が作用することを防止することができるとともに、第1のライナー43(可動光学収容部材49)へのZ軸方向に押す力を低減することができる。
【0090】
また、実施例1の撮像ユニット13では、保持機構70が、移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てる「押す力F1」を第1トーションスプリング73(第1弾性部材)により移動規制部材71へと付与するものであることから、可動ステージ52の機械的保持への移行もしくは機械的保持状態において、可動ステージ52へのZ軸方向へと押す力を低減することができ、その第1トーションスプリング73の弾性力を適切なものとすることにより、可動ステージ52で保持した撮像素子22と撮影光学系12との光学的な位置関係の変化を防止することができる。
【0091】
さらに、実施例1の撮像ユニット13では、保持機構70が、可動光学収容部材49(実施例1では第1のライナー43)のZ軸方向負側への移動に伴う「押す力F3」で「押す力F2」を解除し、その「押す力F2」を解除することで実質的に「押す力F1」が移動規制部材71を押している(回転させている)状態とすることで、可動ステージ52を固定(機械的保持)するものであることから、可動光学収容部材49のZ軸方向負側への移動に伴う「押す力F3」が直接可動ステージ52に作用することはないので、可動光学収容部材49と可動ステージ52との双方に過度の力が作用することを防止することができる。
【0092】
実施例1の撮像ユニット13では、保持機構70が、第1トーションスプリング73(第1弾性部材)から移動規制部材71に付与した「押す力F1」で移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てることにより、可動ステージ52すなわち撮像素子22を固定するものであることから、電力を消費することなく可動ステージ52の不測の移動に伴う衝突音や衝撃の発生を防止することができる。
【0093】
実施例1の撮像ユニット13では、保持機構70が、可動光学収容部材49(実施例1では第1のライナー43)が沈胴位置となると、第1トーションスプリング73(第1弾性部材)から移動規制部材71に付与した「押す力F1」で移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てることにより、可動ステージ52すなわち撮像素子22を固定するものであることから、駆動が停止された場合(デジタルカメラ10の電源スイッチ(図示せず)がOFF状態とされる)であっても、可動ステージ52の不測の移動に伴う衝突音や衝撃の発生を防止することができる。
【0094】
実施例1の撮像ユニット13では、撮影光学系12が収納状態となると、保持機構70が、沈動位置と繰出位置とをZ軸方向(撮影光軸OA方向)へと移動されることでベース板48に接近したり当該ベース板48から離間したりする可動光学収容部材49としての第1のライナー43のZ軸方向負側への移動に伴う「押す力F3」を利用して非保持状態と機械的保持状態とを移行するものであることから、機械的保持のためだけに新たな駆動機構を用いる必要がないので、消費電力の増加を防止することができるとともに光軸方向の厚さを薄くすることができ、小型化および薄型化等によって高密度実装が施されたデジタルカメラにおいても、周囲の部品や配線等と干渉することなく機械的保持のための構造を設けることができる。
【0095】
実施例1の撮像ユニット13では、基本的にベース板48に移動規制部材71と第1トーションスプリング73と押さえ軸74と第2トーションスプリング75とをベース板48に設けるだけで保持機構70を構成することができるので、簡易な構成とすることができる。
【0096】
実施例1の撮像ユニット13では、保持機構70が、移動規制部材71の移動規制箇所72を、撮影光軸OA方向で見た後側(Z軸方向負側)から可動ステージ52に押し当てる構成としていることから、撮像素子22による画像の取得への影響を防止しつつ可動ステージ52を固定することができる。
【0097】
実施例1の撮像ユニット13では、保持機構70が、移動規制部材71の移動規制箇所72を、撮影光軸OA方向(Z軸方向)で可動ステージ52の受入凹所76に押し当てるものであることから、一組の移動規制箇所72および受入凹所76でX−Y平面に沿う方向への可動ステージ52の移動を確実に防止することができる。
【0098】
実施例1の撮像ユニット13では、保持機構70の可動ステージ52の受入凹所76がZ軸方向で負側から正側へと向かうに連れて断面積を漸減させる円錐形状とされていることから、X−Y平面に沿う方向で見た全周に渡って受入凹所76を規定する傾斜壁面に接触させることができるので、X−Y平面に沿って移動可能とされた可動ステージ52をより安定して機械的に保持することができ、X−Y平面に沿う方向への可動ステージ52の移動をより確実に防止することができる。
【0099】
実施例1の撮像ユニット13では、保持機構70の可動ステージ52の受入凹所76のZ軸方向負側の開放端の開口面積が、移動規制箇所72の外径寸法よりも大きく設定されていることから、ベース板48に対する可動ステージ52の位置が所定の位置(実施例1では原点位置)からずれていても、移動規制箇所72を受入凹所76内に進入させることができるので、より簡易な構成とすることができる。
【0100】
実施例1の撮像ユニット13では、保持機構70が、移動規制部材71の軸線Adとそこに撮影光軸OA方向で直交する直線とを含む面に関して、移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てる側とは反対側で、「押す力F2」で移動規制部材71をZ軸方向(撮影光軸OA方向)正側へと押すものであることから、簡易な構成で、撮影光軸OA方向で見た後側(Z軸方向負側)から移動規制部材71の移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てることを可能としつつ可動光学収容部材49としての第1のライナー43のZ軸方向負側への移動に伴う「押す力F3」を利用した非保持状態と機械的保持状態とでの移行を可能とすることができる。
【0101】
実施例1の撮像ユニット13では、保持機構70が、第2トーションスプリング75の弾性力(「押す力F2」)を、可動光学収容部材49(第1のライナー43)がZ軸方向負側へと移動する力(「押す力F3」)よりも小さく設定していることから、第1トーションスプリング73(第1弾性部材)が移動規制部材71に付与する「押す力F1」に関係なく「押す力F3」で「押す力F2」を打ち消すことができるので、可動光学収容部材49が沈胴位置(図4参照)と繰出位置(図5参照)との間で移動することへの影響を小さなものとすることができる。
【0102】
実施例1の撮像ユニット13では、保持機構70が、移動規制部材71に「押す力F2」を付与すべく引掛箇所86cに宛がう第2トーションスプリング75の一端部75bを、先端箇所75dが当該引掛箇所86cを超えて進出する長さ寸法とするとともに、その先端箇所75dを可動光学収容部材49(実施例1では第1のライナー43)に干渉させることにより、その可動光学収容部材49(第1のライナー43)からの「押す力F3」で「押す力F2」を打ち消す構成であることから、可動光学収容部材49(第1のライナー43)に対する先端箇所75dの位置関係に高い位置精度を必要とすることがなく、非保持状態と機械的保持状態とでの移行を可能とすることができるので、簡易な構成とすることができる。
【0103】
実施例1の撮像ユニット13では、保持機構70が、設置部48aに固定された押さえ軸74の脚部74dに、移動規制部材71における突出部85の位置決め面85aと第2回転力受部86の突出基部分86aの位置決め面86eと、をX軸方向で当てていることから、設置部48aにおいて、移動規制部材71のX軸方向回りの回転を許容しつつ移動規制部材71のX軸方向への移動を防止することができる。
【0104】
実施例1の撮像ユニット13では、保持機構70が、移動規制部材71を撮影光軸OA方向に直交する軸線Ad回りに回転可能とするとともに、「押す力F2」の作用方向を軸線Adとそこに撮影光軸OA方向で直交する直線とを含む面に関して移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てる側とは反対側で移動規制部材71をZ軸方向正側へと押す構成としていることから、簡易な構成で、Z軸方向負側へと移動する可動光学収容部材49(第1のライナー43)による「押す力F2」の解除を可能としつつ、「押す力F2」に抗する「押す力F1」により撮影光軸OA方向で見た後側から移動規制部材71の移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てることができる。
【0105】
実施例1の撮像ユニット13が設けられたデジタルカメラ10では、電力消費を抑制することができるとともに、可動ステージ52の不測の移動に伴う衝突音や衝撃の発生を防止することができ、良好な画像を取得することができる。
【0106】
実施例1の撮像ユニット13が設けられたデジタルカメラ10では、撮像ユニット13(撮影光学系12)を撮影待機状態とする際(可動光学収容部材49(第1のライナー43を繰出位置とする(ステップS2参照)))、その動作の過程において保持機構70が非保持状態となるすなわち機械的保持が解除される前に、可動ステージ52を電気的保持による原点位置とする動作を実行する(ステップS3参照)ので、可動ステージ52に対して、機械的保持と電気的保持との双方が解除された状態が生じることを防止することができる。
【0107】
実施例1の撮像ユニット13が設けられたデジタルカメラ10では、機械的保持における可動ステージ52の位置および電気的保持における原点位置が、当該可動ステージ52のX−Y平面上での移動自在とされた範囲における中心位置と一致されていることから、デジタルカメラ10(撮像ユニット13(撮影光学系12))が撮影待機状態とされると、直ちに手ぶれ補正機構50による適切な手ぶれ補正を実行することができ、かつX−Y平面に沿うあらゆる方向の手ぶれに対しても適切な手ぶれ補正を実行することができ、しかも画像の劣化を招くことを防止することができる。
【0108】
したがって、実施例1の撮像ユニット13では、消費電力を抑制しつつ撮影光学系12や撮像素子22への押圧力の発生を防止することができる。
【実施例2】
【0109】
次に、実施例2の撮像ユニット13B(デジタルカメラ10B)について、図24から図30を用いて説明する。この実施例2は、撮像ユニット13Bの保持機構70Bの構成が上記した実施例の撮像ユニット13(デジタルカメラ10)とは異なる例である。この実施例2の撮像ユニット13B(デジタルカメラ10B)は、基本的な構成は上記した実施例1の撮像ユニット13(デジタルカメラ10)と同様であることから、等しい構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。図24は、保持機構70Bにおける特徴部分である強制固定機構90を説明するための説明図であり、(a)は強制固定機構90が移動規制部材71の状態に関与していない様子を示し、(b)は強制固定機構90が移動規制部材71を機械的保持状態とした様子を示し、(c)は(b)の状態における強制固定機構90の作用を説明すべく(b)とは異なる角度で見た様子を示している。図25は、強制固定機構90における固定操作部91が筐体11に設けられている様子を説明するための説明図である。図26は、強制固定機構90における変換伝達部92が筐体11に設けられている様子を説明するための説明図である。図27は、押さえ軸74Bを示す斜視図である。図28は、デジタルカメラ10Bにおける制御ブロックを示す説明図である。図29は、強制固定機構90で機械的保持状態とした状態を説明するための説明図であり、(a)は撮像ユニット13Bにおける強制固定機構90の様子を示し、(b)はその強制固定機構90が移動規制部材71を機械的保持状態とした様子を示している。図30は、強制固定機構90で機械的保持状態としていない状態を説明するための説明図であり、(a)は撮像ユニット13Bにおける強制固定機構90の様子を示し、(b)はその強制固定機構90が移動規制部材71の状態に関与していない様子を示している。
【0110】
実施例2の撮像ユニット13Bの保持機構70Bでは、強制固定機構90が設けられている(図29および図30参照)。この強制固定機構90は、可動光学収容部材49(第1のライナー43)が沈胴位置とされていなくても、移動規制部材71を機械的保持状態とすることを可能とする。詳細には、強制固定機構90は、可動光学収容部材49(第1のライナー43)が沈胴位置とされていなくても、第2トーションスプリング75(その一端部75b)による「押す力F2」を打ち消すことにより、実質的に「押す力F2」が移動規制部材71を押している(回転させている)状態を解除して、「押す力F1」で移動規制部材71を押す(回転させる)ことにより、移動規制箇所72を可動ステージ52の受入凹所76内に押し当てた機械的保持状態とする。
【0111】
この強制固定機構90は、図24に示すように、固定操作部91と変換伝達部92とを備える。強制固定機構90では、固定操作部91に為された操作に伴う力(以下、操作力という)を、変換伝達部92を介して「押す力F2」を打ち消す力に変換する。この固定操作部91は、図25に示すように、筐体11の外方からの操作を可能とすべく当該筐体11に設けられる。固定操作部91は、実施例2では、筐体11の前面に設けられた操作開口11aから露見されて当該筐体11に設けられており、その操作開口11a内でX軸方向に沿って移動可能とされている。このため、固定操作部91は、撮像ユニット13Bにおいて、固定枠41の外方からの操作が可能とされている(図29および図30参照)。この固定操作部91は、変換伝達部92に連結されている(図24および図26参照)。
【0112】
その変換伝達部92は、図24および図26に示すように、実施例2では、長尺な板状の部材で形成されており、一端92aが固定操作部91に連結され、他端92bが押さえ軸74Bの頭部74Baに連結され、長尺方向で見て中間位置における他端92bの近傍に回転軸92cが設けられている。その回転軸92cは、変換伝達部92からY軸方向正側へと突出されて設けられており、円柱形状を呈する。回転軸92cは、明確な図示は略すが、筐体11にY軸方向を軸線として回転可能に(以下では、Y軸方向回りに回転可能ともいう)設けられている(図26参照)。換言すると、回転軸92cは、筐体11に対する位置を変更させることなく、変換伝達部92をY軸方向回りに回転可能とすることができる。この回転軸92cは、一端92aに連結された固定操作部91のX軸方向への操作を容易なものとする観点で、変換伝達部92における長尺方向で見た位置、すなわち一端92aまでの長さ寸法と他端92bまでの長さ寸法との比が設定されている。このX軸方向への操作を容易なものとする観点とは、後述するように、変換伝達部92が回転軸92cを中心としてY軸回りに回転されると、第2トーションスプリング75(その一端部75b)による「押す力F2」を打ち消すべく他端92bが押さえ軸74Bを回転させるものであることから、他端92bにおいて「押す力F2」に抗して押さえ軸74BをY軸方向回りに回転させる力を作用させることをいう。
【0113】
その変換伝達部92の一端92aは、明確な図示は略すが、固定操作部91がX軸方向に沿って移動すると、変換伝達部92が回転軸92cを中心としてY軸方向回りに回転することを可能とすべく固定操作部91に連結されている(図24参照)。換言すると、固定操作部91は、回転軸92cを中心として変換伝達部92がY軸方向回りに回転する際の一端92aにおけるZ軸方向への変位を許容して当該一端92aに連結されている。
【0114】
その変換伝達部92の他端92bには、図26に示すように、連結突起92dが設けられている。この連結突起92dは、変換伝達部92からY軸方向負側へと突出されて設けられており、円柱形状を呈する。連結突起92dは、後述するように、押さえ軸74Bの頭部74Baに設けられた連結穴74Be(図27参照)に挿入されることにより、他端92bと頭部74Baとを後述するように連結することを可能としている。
【0115】
その押さえ軸74Bは、図27に示すように、頭部74Baに連結穴74Beが設けられている。この連結穴74Beは、変換伝達部92が回転軸92cを中心としてY軸方向回りに回転すると、押さえ軸74BがY軸方向に沿う自らの軸線回りであって図24の矢印A3、A4方向へと回転することを可能とすべく、変換伝達部92の他端92bの連結突起92dに連結することが可能とされている。換言すると、連結穴74Beは、回転軸92cを中心として変換伝達部92がY軸方向回りに回転する際の他端92bにおけるZ軸方向への変位を許容しつつ矢印A3、A4方向へと回転する力として伝達するように、当該他端92bに連結されている。
【0116】
また、押さえ軸74Bでは、胴部74cの側面に操作力伝達部74Bfが設けられている。この操作力伝達部74Bfは、側面からY軸方向に直交する方向へと突出して設けられており、その突出端部に伝達箇所74Bgが設けられている。その伝達箇所74Bgは、操作力伝達部74BfからY軸方向正側へと突出されている。この押さえ軸74Bでは、実施例1と同様に胴部74cに螺旋状部75aを取り巻かせて第2トーションスプリング75が設けられた状態において、当該第2トーションスプリング75との相対的な回転により、その一端部75bにY軸方向に直交する方向で伝達箇所74Bgを押し当てることが可能とされている(図24(c)参照)。
【0117】
このように構成された強制固定機構90では、図24(a)に示すように、固定操作部91が操作開口11a内でX軸方向負側端部へと変位された状態では、押さえ軸74Bが矢印A4方向へと回転されて、当該押さえ軸74Bの伝達箇所74Bgが第2トーションスプリング75の一端部75bとは干渉しない回転姿勢とされている。また、強制固定機構90では、図24(b)、(c)に示すように、固定操作部91が操作開口11a内でX軸方向正側端部へと変位されると、変換伝達部92が回転軸92cを中心としてY軸方向回りでA5方向に回転され、その他端92bに連結された押さえ軸74BがY軸方向回りで矢印A3方向に回転される。すると、図24(c)に示すように、押さえ軸74Bの伝達箇所74Bgは、第2トーションスプリング75の一端部75bに干渉し、その一端部75bを矢印A3方向に押す。この矢印A3方向は、第2トーションスプリング75の弾性力に抗するものに設定されている。このため、第2トーションスプリング75では、一端部75bがZ軸方向負側へと変位される(矢印A6参照)。このとき、強制固定機構90では、伝達箇所74BgがZ軸方向負側へと引掛箇所86cから離間する位置まで一端部75bを押すように、押さえ軸74Bの回転姿勢が設定されている。このため、固定操作部91が操作開口11a内でX軸方向正側端部へと変位されると、一端部75bが引掛箇所86cからZ軸方向負側へと離間され、第2トーションスプリング75から移動規制部材71へと「押す力F2」が付与されることがなくなり、実質的に「押す力F2」が移動規制部材71を押している(回転させている)状態が解除される(図29参照)。このため、強制固定機構90は、保持機構70Bを「押す力F1」で移動規制部材71を押して(回転させて)、移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てている状態とすることができる。このため、変換伝達部92は、押さえ軸74Bとの協働により、固定操作部91に為された操作力を、第2トーションスプリング75の一端部75b(押当箇所)を、引掛箇所86c(移動規制部材71)から離間させる力に変換することができる。
【0118】
実施例2のデジタルカメラ10Bでは、図28に示すように、強制固定機構90を設けることに伴って、操作位置検出センサ27が設けられている。この操作位置検出センサ27は、操作開口11a内において、固定操作部91がX軸方向負側端部から移動されたことと、固定操作部91がX軸方向正側端部に存在していることと、を検出することが可能とされている。操作位置検出センサ27は、検出信号を適宜制御部21に出力する。
【0119】
このデジタルカメラ10Bでは、固定操作部91がX軸方向負側端部に存在されている場合は、上述したように強制固定機構90が押さえ軸74Bを回転させることはなく、図29に示すように、保持機構70Bは実施例1の保持機構70と同様に動作する。このため、デジタルカメラ10Bでは、固定操作部91がX軸方向負側端部に存在されている場合、実施例1のデジタルカメラ10と同様に動作する。このことから、撮像ユニット13Bにおいて撮影光学系12が収納状態、すなわち可動光学収容部材49(第1のライナー43)が沈胴位置となると、実施例1のデジタルカメラ10(撮像ユニット13)と同様に、保持機構70Bが機械的保持状態となり、可動ステージ52を固定する。また、撮像ユニット13Bにおいて撮影光学系12が撮影待機状態、すなわち可動光学収容部材49(第1のライナー43)が繰出位置となると、実施例1のデジタルカメラ10(撮像ユニット13)と同様に、保持機構70Bが非保持状態となり、可動ステージ52が移動可能な状態となる。
【0120】
このデジタルカメラ10Bでは、撮影光学系12が撮影待機状態(可動光学収容部材49(第1のライナー43)が繰出位置)とされ、かつ固定操作部91がX軸方向負側端部に存在されている際、その固定操作部91を操作すると、実施例1のデジタルカメラ10とは異なる動作を行うことができる。詳細には、固定操作部91がX軸方向正側へと変位し始めると、その旨の出力信号が操作位置検出センサ27から制御部21に出力される(図28参照)。すると、制御部21が手ぶれ補正機構50を制御することにより、手ぶれ補正機構50が可動ステージ52を原点位置で電気的に保持する制御を開始する。その後、固定操作部91がX軸方向正側端部に到達すると、その旨の出力信号が操作位置検出センサ27から制御部21に出力される。すると、制御部21が手ぶれ補正機構50を制御することにより、手ぶれ補正機構50が第1駆動コイル57および第2駆動コイル58への電流の印加を停止して可動ステージ52の電気的保持を停止する。このとき、強制固定機構90では、上述したように、固定操作部91がX軸方向正側端部に存在すると、第2トーションスプリング75の一端部75bを引掛箇所86cからZ軸方向負側へと離間させて、第2トーションスプリング75から移動規制部材71へと「押す力F2」を付与しないものとして、実質的に「押す力F2」が移動規制部材71を押している(回転させている)状態を解除する(図29等参照)。このため、保持機構70Bでは、「押す力F1」で移動規制部材71を押して(回転させて)、移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てている機械的保持状態となる。このことから、可動ステージ52が意図せずに移動することはない。また、固定操作部91がX軸方向負側へと変位すると、その旨の出力信号が操作位置検出センサ27から制御部21に出力され、制御部21が手ぶれ補正機構50を制御することにより、手ぶれ補正機構50が第1駆動コイル57および第2駆動コイル58へと電流を適宜印加して可動ステージ52の電気的保持(手ぶれ補正の制御)を開始する。このとき、強制固定機構90では、上述したように、固定操作部91がX軸方向負側端部に存在すると、移動規制部材71の状態に関与しなくなって(押さえ軸74Bの伝達箇所74Bgが第2トーションスプリング75の一端部75bとは干渉しなくなる(図24(a)参照))、保持機構70Bが非保持状態となり(図30参照)、可動ステージ52が移動可能な状態となる。このことから、保持機構70Bが手ぶれ補正機構50による可動ステージ52の電気的保持(手ぶれ補正の制御)を阻害することはない。
【0121】
実施例2の撮像ユニット13B(デジタルカメラ10B)では、基本的に実施例1の撮像ユニット13(デジタルカメラ10)と同様の構成であることから、基本的に実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0122】
それに加えて、実施例2の撮像ユニット13Bでは、可動光学収容部材49(第1のライナー43)が繰出位置とされている際、強制固定機構90の固定操作部91を適宜操作することにより保持機構70Bを機械的保持状態とすることができるので、使い勝手を向上させることができる。このため、必要なときだけ手ぶれ補正機構50による手ぶれ補正を実行させることができるとともに、それが不必要な場合での電力消費を抑制することができる。このことは、例えば、図示は略すがデジタルカメラ10Bを三脚に固定させて長時間露光させる場面では、デジタルカメラ10Bに手ぶれが生じないことから効果的である。
【0123】
したがって、実施例2の撮像ユニット13Bでは、消費電力を抑制しつつ撮影光学系12や撮像素子22への押圧力の発生を防止することができる。
【0124】
なお、上記した各実施例では、本発明に係る撮像ユニットの一例としての撮像ユニット13、13Bについて説明したが、撮影光学系により被写体像を取得する撮像素子を撮影光軸に直交する平面内で移動させるべく該平面に沿って移動可能な可動ステージを備え、前記撮影光学系の複数の光学部材の少なくとも一部を沈胴させて該各光学部材を収納する収納状態と、該収納状態から前記各光学部材の少なくとも一部を被写体側に移動した撮影待機状態と、の移行が可能な撮像ユニットであって、前記各光学部材を収容する複数の光学収容部材と、該各光学収容部材を駆動する収容部材駆動部と、前記可動ステージへと移動規制箇所を押し当てることにより前記可動ステージの移動を規制する移動規制部材と、前記移動規制箇所を前記可動ステージへ押し当てる移動規制方向へと前記移動規制部材を「押す力」を該移動規制部材に付与する第1弾性部材と、該第1弾性部材による前記移動規制部材への「押す力」に抗する解除方向へと前記移動規制部材を「押す力」を該移動規制部材に付与する第2弾性部材と、を備え、前記各光学収容部材のうち前記収納状態と前記撮影待機状態との移行に伴い撮影光軸方向に移動される可動光学収容部材の1つが被写体側の沈胴位置とされると、該可動光学収容部材の移行に伴う「押す力」で前記第2弾性部材が前記移動規制部材を押している状態を解除する撮像ユニットであればよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
【0125】
また、上記した各実施例では、保持機構70、70Bにおいて、第2トーションスプリング75の一端部75bの先端箇所75dを沈胴位置とされた第1のライナー43(その後端面)に干渉させるものとされていたが、固定筒部41a(固定枠41)に対して撮影光軸OA方向に沈胴位置と繰出位置との間で移動する光学収容部材(可動光学収容部材49)であって沈胴位置とされた際に干渉させることより、実質的に第2弾性部材による「押す力F2」が移動規制部材71を押している(回転させている)状態を解除することができればよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
【0126】
さらに、上記した各実施例では、保持機構70、70Bにおいて、移動規制部材71の移動規制箇所72を撮影光軸OA方向で見た後側から可動ステージ52に押し当てる構成としていたが、第1弾性部材からの「押す力F1」で移動規制部材71が押されることにより移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てて当該可動ステージ52を固定するものであれば、他の方向で移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てるものであってもよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
【0127】
上記した各実施例では、保持機構70、70Bを、移動規制箇所72を移動規制部材71と第1トーションスプリング73と押さえ軸74(74B)と第2トーションスプリング75とで構成していたが、第1弾性部材からの「押す力F1」により移動規制部材71の移動規制箇所72を可動ステージ52に押し当てる構成とし、その「押す力F1」による移動規制箇所72の可動ステージ52への押し当てを第2弾性部材からの「押す力F2」で解除する構成とし、その「押す力F2」を可動光学収容部材49の移動に伴う「押す力F3」を利用して解除する構成としていればよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
【0128】
上記した各実施例では、保持機構70、70Bの可動ステージ52の受入凹所76が、Z軸方向で負側から正側へと向かうに連れて断面積を漸減させる円錐形状とされていたが、移動規制部材71の移動規制箇所72を受け入れることにより可動ステージ52のX−Y平面に沿う方向への移動を防止することができる、すなわちX−Y平面に沿う方向で受け入れた移動規制箇所72と干渉するものであれば、例えば、Z軸方向で負側から正側へと向かうに連れて断面積を漸減させる角錐形状を呈していても、直方体形状を呈していてもよく、上記した各実施例に限定されるものではない。
【0129】
上記した各実施例では、保持機構70、70Bの可動ステージ52の受入凹所76が、可動ステージ52が原点位置の近傍位置とされると移動規制部材71の移動規制箇所72を受け入れることを可能とすべく、Z軸方向負側の開放端の開口面積が移動規制箇所72の外径寸法よりも大きく設定されていたが、移動規制部材71の移動規制箇所72を受け入れることにより可動ステージ52のX−Y平面に沿う方向への移動を防止することができるものであれば、例えば、移動規制箇所72の外径寸法と略等しい開口面積としてもよく、移動可能な範囲内での可動ステージ52の位置に拘らず移動規制箇所72を受け入れることを可能とする大きさ寸法の開口面積としてもよく、上記した各実施例に限定されるものではない。ここで、受入凹所76の開口面積を、可動ステージ52が移動範囲の中心位置から最も離間した位置へと移動した状態において、Z軸方向負側へと変位した移動規制箇所72の先端面が受入凹所76を規定する傾斜壁面に接触することを可能とする大きさ寸法とすることにより、移動可能な範囲内での可動ステージ52の位置に拘らず移動規制箇所72を受け入れることを可能とすることができる。このような構成とした場合、可動ステージ52がいずれの位置であっても移動規制箇所72を受入凹所76へと進入させることができるので、収納状態(沈胴位置)への移行動作(図23に示すフローチャート)におけるステップS12の動作(可動ステージ52を原点位置で電気的に保持する制御)を行う必要はない。同様に、実施例2のように強制固定機構90を設けた際、操作開口11a内でX軸方向負側端部にある固定操作部91がX軸方向正側へと変位されても、可動ステージ52を原点位置で電気的に保持する制御を行う必要はない。
【0130】
上記した各実施例では、デジタルカメラ10に撮像ユニット13、30Bが設けられていたが、カメラ機能を組み込んだPDA(personal data assistant)や携帯電話機等の携帯型情報端末装置に搭載されていてもよく、上記した各実施例に限定されるものではない。これは、このような携帯型情報端末装置も外観は若干異にするもののデジタルカメラ10と実質的に全く同様の機能および構成を含んでいるものが多いことによる。同様に、本発明に係る撮像ユニット(13、13B)を画像入力装置に採用してもよい。
【0131】
以上、本発明の撮像ユニット、およびその撮像ユニットが搭載された撮像装置を各実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成については各実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【符号の説明】
【0132】
10、10B (撮像装置の一例としての)デジタルカメラ
11 筐体
12 撮影光学系
13、13B 撮像ユニット
22 撮像素子
23 (収容部材駆動部の一例としての)レンズ鏡胴駆動ユニット
36 (可動光学収容部材の一例としての)第1レンズ保持枠
37 (可動光学収容部材の一例としての)第2レンズ保持枠
38 (可動光学収容部材の一例としての)第3レンズ保持枠
39 (可動光学収容部材の一例としての)第4レンズ保持枠
41 固定枠
41a (可動光学収容部材の一例としての)固定筒部
42 (可動光学収容部材の一例としての)第1の回転筒
43 (可動光学収容部材の一例としての)第1のライナー
44 (可動光学収容部材の一例としての)第2の回転筒
45 (可動光学収容部材の一例としての)第2のライナー
46 (可動光学収容部材の一例としての)カム筒
47 (可動光学収容部材の一例としての)直進筒
49 可動光学収容部材
52 可動ステージ
71 移動規制部材
72 移動規制箇所
73 (第1弾性部材の一例としての)第1トーションスプリング
75 (第2弾性部材の一例としての)第2トーションスプリング
75b (押当箇所の一例としての)一端部
76 受入凹所
82 回転軸部
90 強制固定機構
91 固定操作部
92 変換伝達部
Ad 軸線
F1 押す力
F2 押す力
F3 押す力
OA 撮影光軸
【先行技術文献】
【特許文献】
【0133】
【特許文献1】特開2010−8658号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光学系により被写体像を取得する撮像素子を撮影光軸に直交する平面内で移動させるべく該平面に沿って移動可能な可動ステージを備え、前記撮影光学系の複数の光学部材の少なくとも一部を沈胴させて該各光学部材を収納する収納状態と、該収納状態から前記各光学部材の少なくとも一部を被写体側に移動した撮影待機状態と、の移行が可能な撮像ユニットであって、
前記各光学部材を収容する複数の光学収容部材と、
該各光学収容部材を駆動する収容部材駆動部と、
前記可動ステージへと移動規制箇所を押し当てることにより前記可動ステージの移動を規制する移動規制部材と、
前記移動規制箇所を前記可動ステージへ押し当てる移動規制方向へと前記移動規制部材を押す力を該移動規制部材に付与する第1弾性部材と、
該第1弾性部材による前記移動規制部材への押す力に抗する解除方向へと前記移動規制部材を押す力を該移動規制部材に付与する第2弾性部材と、を備え、
前記各光学収容部材のうち前記収納状態と前記撮影待機状態との移行に伴い撮影光軸方向に移動される可動光学収容部材の1つが被写体側の沈胴位置とされると、該可動光学収容部材の移行に伴う押す力で前記第2弾性部材が前記移動規制部材を押している状態を解除することを特徴とする撮像ユニット。
【請求項2】
前記第1弾性部材は、前記移動規制部材に対して押す力を常に付与しており、
前記第2弾性部材による前記移動規制部材を押す力は、前記第1弾性部材による前記移動規制部材を押す力よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像ユニット。
【請求項3】
前記移動規制部材は、撮影光軸に直交する方向に伸びる回転軸部を有し、
前記移動規制部材では、前記回転軸部を中心とする正転方向を前記移動規制方向とし、かつ前記回転軸部を中心とする反転方向を前記解除方向として、前記移動規制箇所が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像ユニット。
【請求項4】
前記第2弾性部材は、前記解除方向へと前記移動規制部材を回転させる力を付与すべく該移動規制部材に押し当てる押当箇所を有し、
該押当箇所は、前記沈胴位置へと移動した前記可動光学収容部材と干渉すると、前記移動規制部材から離間されることを特徴とする請求項3に記載の撮像ユニット。
【請求項5】
前記移動規制部材は、前記第2弾性部材の前記押当箇所が押し当てられる被押当箇所を有し、
前記移動規制部材では、撮影光軸方向と前記回転軸部の軸線方向とを含む面に関して、一方の側に前記移動規制箇所が設けられ、かつ他方の側に前記被押当箇所が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の撮像ユニット。
【請求項6】
前記移動規制部材は、前記可動ステージにおける前記撮像素子が取り付けられた面とは反対側から、撮影光軸方向に沿って前記移動規制箇所を前記可動ステージに押し当てることを特徴とする請求項5に記載の撮像ユニット。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれか1項に記載の撮像ユニットであって、
さらに、前記沈胴位置とすべく前記可動光学収容部材を沈胴させる固定枠と、強制固定機構と、備え、
前記強制固定機構は、前記固定枠の外方からの操作を可能とすべく該固定枠に設けられた固定操作部と、該固定操作部に為された操作力を前記移動規制部材から前記押当箇所を離間させる力に変換して伝達する変換伝達部と、を有することを特徴とする撮像ユニット。
【請求項8】
前記可動ステージには、前記移動規制箇所の前記移動規制方向への挿入を許す受入凹所が設けられ、
該受入凹所は、底部へ向かうに連れて前記移動規制方向に直交する断面積が漸減することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の撮像ユニット。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の撮像ユニットを搭載していることを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
請求項7に記載の撮像ユニットを、外形を規定する筐体内に搭載する撮像装置であって、
前記強制固定機構の前記固定操作部は、前記筐体の外方からの操作を可能とすべく該筐体に設けられていることを特徴とする撮像装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2013−88450(P2013−88450A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225618(P2011−225618)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】