説明

撮像素子の露光制御装置及び方法、並びに画像撮像装置

【課題】撮像素子の露光量制御において、特に露光量が小さいときに、露光量切替時(露光時間切替時)に画面の輝度がなめらかに変化するようにする。
【解決手段】露光制御ユニット130では、フレーム毎に、撮像素子102の出力輝度情報から最適露光量変化分を求め、該最適露光量変化分に、現露光量を撮像素子102が取り得る最大露光量で除した値を乗じて、補正最適露光量変化分を算出し、該補正最適露光量変化分を現露光量に加えて最適露光量を算出し、該最適露光量に応じた露光時間、あるいは露光時間とゲインを決定して、それを撮像素子102に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像撮像装置に係り、詳しくは、その撮像素子の露光制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像撮像装置には、CCDやCMOSセンサなどを含む撮像素子が使用されている。このような画像撮像装置において、撮像素子の露光量を被写体照度に応じて適正露光量になるように制御することは大変重要である。露光量が被写体照度に応じて適正露光量にならなければ、撮像画像上で被写体が白飛び(露光量が大きすぎて、画素値が飽和している状態)または黒潰れ(露光量が小さすぎて、画素値がゼロ付近になっている状態)してしまう。
【0003】
撮像素子の露光量を被写体照度に応じた適正露光量にするために、撮像素子が出力する画像信号の輝度レベルを検出して、該検出した輝度レベルが予め設定した目標値になるように、露光時間やゲイン(アナログゲインあるいはデジタルゲイン)を制御する自動露光制御方法が、従来から知られている。この場合、一般には、撮像素子が出力する画像信号の輝度レベルが目標値と所定の閾値の間に収まるように制御している。すなわち、画像信号の輝度レベルが目標値とある閾値の間に収まれば、そのときの露光量を適正露光量と見做す。これは、そのようなヒステリシスを持たせることで、適正露光量制御の発振を防ぐためである。また、PID制御(P;比例、I;積分、D;微分)による自動露光制御方法も知られており、この場合も係数を工夫することで発振を防ぐことができる。
【0004】
しかし、従来の撮像素子の露光制御方法では、撮像素子が出力する信号の輝度レベルを目標値に正確に近づけられていなという問題があった。以下に問題を説明する。
【0005】
いま、露光量が小さい場合、例えば、露光時間Ts=1*Trowとし、これを状態Aとする。また露光量が大きい場合、例えば、露光時間Tl=10*Trowとし、これを状態Bとする。Trowは撮像素子が水平方向1ラインを走査する時間である。ここでは、露光量は露光時間のみで決まるものとする。
【0006】
状態Aで露光時間をTrow増加すると、変化後のTsは、2*Trowとなり、初めの2倍の露光量になる。一方、状態Bで露光時間をTrow増加すると、変化後のTsは、11*Trowとなり、初めの11/10=1.1倍の露光量になる。このように、同じだけ露光時間を変化させても、露光量の変化は平等でないことがわかる。つまり、従来の露光制御方法では、閾値が現在の露光量と無関係に、且つ光量変化率が最大となるときのみを考慮して設定されているため、露光量が一定以上の場合、自動露光制御における精度が悪化することになる。
【0007】
例えば、特許文献1では、露光時間切替時における露光時間(フィールド数)と、次に変化した場合における露光時間(フィールド数)の比率を、目標値に乗じることにより、閾値を求めることで、上述の問題を解決している。しかし、露光時間を一定間隔で変化させているため、露光量が小さいところ(露光時間が短いところ)では露光量の変化が大きく、逆に、露光量が大きい(露光時間が長い)ところでは露光量の変化が小さくなる。これは、それぞれ上述した状態A、状態Bである。状態Aでは、露光量が大きく変化するため、その切替時に画面の輝度が急激に変化し、なめらかに変化しないという問題がある。また、撮像素子が出力する画像信号の輝度レベルが収まるべき目標値がヒステリシスを持っていたとしても、急激な輝度変化によって、ヒステリシスの範囲を超してしまい、発振する可能性もある。例えば、輝度レベルが暗い閾値より低い部分にあったとして、露光時間を増加方向に変化させることで、輝度レベルは明るい閾値より高い部分に変化する。そうなると、今度は露光時間を減少方向に変化させる制御を行い、画面の輝度が明暗を繰り返すことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、撮像素子の露光制御において、特に露光量が小さい(露光時間が短い)ときに、露光量(露光時間)の切替時に、輝度が急激に変化しないようにすることになる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、撮像素子の出力輝度情報から最適露光量変化分を求める手段と、前記最適露光量変化分に、現露光量を前記撮像素子が取り得る最大露光量で除した値を乗じて、補正最適露光量変化分を求める手段と、前記補正最適露光量変化分を現露光量に加えて最適露光量を求める手段と、前記最適露光量に応じた露光時間を求める手段と、前記露光時間を前記撮像素子に設定する手段とを有することを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、現露光量が小さい(露光時間が短い)とき、露光量の変化は操作前の変化分より小さくなり、露光量が大きい(露光時間が長い)ときの露光量の変化は操作前の変化分とほぼ変わらなくなる。このように、現露光量が小さい(露光時間が短い)とき、露光量の変化は操作前の変化分より小さくなるので、露光量切替時(露光時間切替時)に、画面の輝度を滑らかに変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像撮像装置の全体構成図である。
【図2】1フレームの具体例を示した図である。
【図3】図1の露光制御ユニットの一実施形態の機能ブロック図である。
【図4】輝度総和計算の対象とする画面の範囲の説明図である。
【図5】露光制御ユニットのCPUの一実施形態に係る処理フローチャートである。
【図6】図3の露光時間/ゲイン演算部の詳細フローチャートである。
【図7】図1の露光制御ユニットの別の実施形態の機能ブロック図である。
【図8】図7の輝度ヒストグラム生成回路の具体的構成を示す図である。
【図9】輝度ヒストグラムを用いた明るい画素と暗い画素の線引きの説明図である。
【図10】本画像撮像装置の全体的動作を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像撮像装置の全体構成図である。本画像撮像装置は、撮影部(撮像ユニット)100、エンコーダ110、表示部120及び露光制御装置としての露光制御ユニット130を備えている。
【0014】
撮像部100は光学系101と撮像素子102を有する。光学系101は撮像素子102に被写体光を効率よく集光させる。撮像素子102は光センサ102−1、信号処理回路102−2及び制御回路102−3を有する。光センサ102−1は、CDDセンサやCMOSセンサなどであり、被写体の光学像を、その光強度に応じた強弱の電気信号(アナログ信号)に変換する。信号処理回路102−2は、光センサ102−1から出力されるアナログ信号の画像信号を所定のレベルに調整する自動ゲイン制御回路(Automatic Gain Controller:AGC回路)、その画像信号をデジタル信号の画像データに変換するA/D変換回路、該画像データに対してγ補正を行うγ補正回路、その他の画像処理を行う回路の総称である。ここで、AGC回路は、A/D変換回路の後段に設けられて、デジタル信号の画像データを所定のレベルに調整する構成でもよい。制御回路102−3は、光センサ102−1及び信号処理回路102−2の動作を制御する。後述するように、該制御回路102−3は、露光制御ユニット130からフレーム毎に露光時間及びゲイン情報を受け取ることで、フレーム毎に、光センサ102−1の露光時間(電荷蓄積時間)及び信号処理回路102−2内のAGC回路のゲインを調整する。
【0015】
なお、図1では省略したが、撮像素子102は、さらに垂直/水平同期信号発生回路、画素クロック発生回路、その他のタイミング信号発生回路を備えている。
【0016】
撮像素子102は、垂直/水平同期信号、画素クロックに同期して、画像データ(画素データ)を連続的に出力する。同時に、撮像素子102は、垂直/水平同期信号、画素クロック、その他の必要なタイミング信号も出力する。
【0017】
エンコーダ110は、撮像素子102から垂直/水平同期信号、画素クロックなどと共に出力される画像データ(画素データ)を順次入力して、例えば、NTSC方式の映像信号(アナログ信号)に変換する。この映像信号には垂直/水平同期信号、その他、各種の信号が付加されている。表示部120は、エンコーダ110から出力される映像信号を、水平/垂直同期信号、その他、信号に基づいて表示する。
【0018】
露光制御ユニット130は前処理部131、CPU132及びメモリ133を有する。前処理部131は、撮像素子102から垂直/水平同期信号、画素クロックなどと共に出力される画像データ(画素データ)を順次入力して、該画像データを輝度情報と色差情報に分離し、この分離された輝度情報を1フレーム分ずつ加算してフレーム毎の輝度総和を計算する。CPU132は、前処理部131で計算されたフレーム毎の輝度情報を入力として、撮像素子102から出力される画像データの輝度レベルを予め設定した目標値に近づけるべく、次フレームの最適露光量を計算し、該最適露光量から最適な露光時間とゲインを決定する。そして、CPU132は、決定した最適な露光時間とゲインを撮像素子の102の制御回路102−3に送出する。メモリ133は、揮発性メモリ(RAM等)及び不揮発性メモリ(ROM等)の総称である。該メモリ133は、CPU132における処理途中データや処理結果データ、CPU132の処理で必要とするプログラムやパラメータなどを記憶する。
【0019】
以下、露光制御ユニット130の具体的構成及び動作について詳述する。なお、図2に示すように、1フレームは845カラム×525ローからなり、そのうちの752カラム×480ローが有効画像部とする。これをNTSC方式に準拠するものである。
【0020】
図3に、図1の露光制御ユニット130の一実施形態に係る全体的な機能ブロック図を示す。図3において、前処理部131は変換回路211と輝度加算回路212からなる。また、CPU132の露光制御処理機能は、差分演算部220、最適露光量演算部230、露光時間/ゲイン演算部240及び制御部250からなる。さらに、最適露光量演算部230は、最適露光量変化分算出部231と補正最適露光量変化分算出部232と最適露光量算出部233からなり、露光時間/ゲイン演算部240はゲイン決定部241と露光時間算出部242からなる。
【0021】
前処理部131は、撮像素子102から連続的に出力される画像データについて、垂直/水平同期信号、画素クロックなどに同期して次々に処理する必要がある。そのため、該前処理部131の変換回路211及び輝度加算回路212は、ハードウエアロジックで構成する。一方、差分演算部220、最適露光量演算部230、露光時間/ゲイン演算部240及び制御部250は、CPU132がメモリ133に格納されたプログラムを実行することで実現する。換言すれば、CPU132とプログラムの協働作業で、差分演算部220以降の各部の処理機能が実現される。
【0022】
なお、CPU132が前処理部131の変換回路211と輝度加算回路212の処理機能を兼ねることでもよい。逆に、差分演算部220以降の各部の処理機能も、ハードロッジックで実現することでもよい。
【0023】
初めに、前処理部131の動作について説明する。該前処理部131は、垂直/水平同期信号、画素クロック等に同期して動作するが、必要でない限り垂直/水平同期信号、画素クロック等については説明を省略する。
【0024】
前処理部131の変換回路211は、撮像素子102から出力される画像データ(画素データ)を順次入力して、各画像データを輝度情報Yと色差情報CbCrに変換する。そして、変換回路211は、変換した輝度情報Yと色差情報CbCrのうち、輝度情報Yを出力する。
【0025】
ここで、画像データがRGBのカラー画像データの場合、変換回路211では、例えば次式により画像データを輝度情報Yと色差情報CnCrに変換する。
Y=0.299R+0.587G+0.114B
Cr=0.500R−0.419G−0.081B
Cb=−0.169R−0.332G+0.500B
【0026】
輝度加算回路212は、変換回路211から出力される各画像データの輝度情報Yを順次入力して、該輝度情報を1フレーム分ずつ加算して、フレーム毎の輝度総和Ytotalを計算する。すなわち、Ytotalは現フレームの輝度総和を表わしている。
【0027】
なお、輝度加算回路212において、フレーム中の輝度総和Ytotalを計算する範囲は、外部から指定できるようにしてもよい。
図2に示すフレーム構成の場合、輝度総和Ytotalは、752カラム×480ロー分の全画素の輝度の総和を示す。しかしながら、この752カラム×480ローの全領域が有効な画像(画面)とは限らない。例えば、上方や下方の領域、あるいは周辺の領域は、有効な画像でない場合がある。フレーム中の輝度総和Ytotalを計算する範囲を外部から指定することで、有効でない画像領域を計算から除外することが可能になる。
【0028】
フレーム中の輝度総和Ytotalを計算する範囲の指定は、例えば、座標で行い、水平方向X1〜Xi、垂直方向Y1〜Yjと指定する。輝度加算回路212では、各フレームについて、この指定された範囲内に含まれる画素を対象としてYtotalを計算する。
【0029】
また、フレーム中の輝度総和Ytotalを計算する範囲の指定は、フレームを複数のマスに分割し、対象とするマスを指定してもよい。図4に具体例を示す。これは、図2のフレーム構成において、1マスを94カラム×60ローとして、752カラム×480ローを8×8マスに分割し、そのうちの網掛け部分のマスを、Ytotalを計算する範囲としたものである。なお、図4ではブランキング領域は省略してある。輝度加算回路212では、各フレームについて、図4の網掛け部分のマスに含まれる画素を対象としてYtotalを計算する。
【0030】
前処理部131では、現フレームの輝度総和Ytotalを計算する毎に、CPU132に割込信号を発行して、該輝度総和YtotalをCPU132に送る。CPU132は、前処理部131で計算された現フレームの輝度総和Ytotalをもとに、次フレームの最適露光量を計算し、該最適露光量から最適な露光時間とゲインを決定する。
【0031】
図5に、CPU132で実施する露光時間/ゲインの計算処理の全体処理フローチャートを示す。以下、図5に従ってCPU132の各部(各機能)の動作を説明する。
【0032】
差分演算部220では、前処理部131から輝度総和Ytotalを入力して(ステップ1001)、目標値Ytargetと輝度総和Ytotalの差分errorを計算する(ステップ1002)。計算式を以下に示す。
error=Ytarget−Ytotal (1)
目標値Ytargetは、次式(2)で表わされる。
target=Bmax*Ncolum’*Nrow’*K’ (2)
ここで、Bmaxは画素の取り得る最大画素値(最大明るさ)である。Ncolum’,Nrow’は、図2の例の場合、Ncolum’:752,Nrow’:480である。係数K’は、通常は0.2程度でよいが、周囲の明るさに応じて、例えば0.4,0.6,0.8,1.0などと変えてもよい。
【0033】
差分演算部220で計算された差分error(現フレームの輝度総和と目標値との差分)は、最適露光量演算部230に送られると共に、メモリ133に保持される。本実施形態では、メモリ133には、少なくとも、1フレーム前の輝度総和と目標値との差分(error1とする)、2フレーム前の輝度総和と目標値との差分(error2とする)までが保持されるとする。
【0034】
最適露光量演算部230では、差分演算部220で求まった差分errorをもとに、次フレームの最適露光量を以下のようにして算出する。
【0035】
まず、最適露光量変化分算出部231は、現フレームの輝度総和と目標値との差分errorに加えて、1フレーム前および2フレーム前の輝度総和と目標値との差分error1、error2を用い、PID制御法を適用して、次フレームの最適露光量変化分updataを計算する(ステップ1003)。計算式を以下に示す。
updata=Kp*(error−error1)+Ki*error
+Kd*((error-error1)−(error1−error2)) (3)
ここで、Kp,Ki,KdはPID制御係数で、例えば経験的に決定する。なお、ここではPID制御法を適用するとしたが、PID制御法である必要はない。例えば、PD制御は省略することでもよい。
【0036】
次に、補正最適露光量変化分算出部232は、最適露光量変化分算出部231で求めた最適露光量変化分updataから補正最適露光量変化分updata’を計算する(ステップ1004)。すなわち、updataの値を補正する。計算式(補正式)の一例を以下に示す。
updata’=updata*(exposure/exposuremax) (4)
ここで、exposureは現露光量、exposuremaxは撮像素子102が取り得る最大露光量(光センサが取り得る露光時間を最大にした時の露光量)である。
このexposuremaxは、次式(5)で表わされる。
exposuremax=Ncolum*Nrow (5)
図2の例の場合、Ncolum:845,Nrow:525である。
【0037】
式(4)より、現露光量exposureが小さい(露光時間が短い)とき、露光量の変化(updata’)は操作前のupdataより小さくなり、現露光量exposureが大きい(露光時間が長い)時の露光量の変化(updata’)は操作前のupdataとほぼ変わらなくなる。すなわち、露光時間が短いときは、露光量の変化が画面輝度に及ぼす影響が大きいが、式(4)によって露光量の変化(updata’)が小さくなるので、影響が抑えられる。
【0038】
なお、式(4)は先の目標値Ytargetの値に応じて、次式(4’)のように変更してもよい。
updata’=updata*K*(exposure/exposuremax) (4’)
係数Kと目標値Ytargetの対応関係の一例を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
式(4’)によれば、先の式(4)において、現露光量exposureが極端に小さい時、updataが補正されすぎて、updata’が小さくなりすぎることが改善される。
【0041】
次に、最適露光量算出部233は、補正最適露光量算出部232で求めた補正最適露光量変化分updata’を用いて次フレームの最適露光量exposure’を計算する(ステップ1005)。計算式は以下に示す。
exposure’=exposure+updata’ (6)
【0042】
最適露光量演算部230で求まった次フレームの最適露光量exposure’は露光時間/ゲイン演算部240に送られる。また、この最適露光量exposure’はメモリ133に保持され、次の最適露光量計算では現露光量exposureとなる。
【0043】
露光時間/ゲイン演算部240では、最適露光量演算部230で求まった最適露光量exposure’をもとに、以下のようにして撮像素子102のゲインおよび露光時間を算出する。
【0044】
まず、ゲイン決定部241は、最適露光演算部230から送られた最適露光量exposure’について、その大きさに応じて複数のケースに分類してゲインを決定する(ステップ1006)。ここでは、最適露光量exposure’を、その大きさによってケース0〜5の6段階に分類するとする。以下に、各ケースとゲインの対応関係を示す。
ケース0:exposure’≦exposuremin ゲイン1倍
ケース1:exposuremin<exposure’≦exposuremax ゲイン1倍
ケース2:exposuremax<exposure’≦2*exposuremax ゲイン2倍
ケース3:2*exposuremax<exposure’≦3*exposuremax ゲイン3倍
ケース4:3*exposuremax<exposure’≦4*exposuremax ゲイン4倍
ケース5:exposure’>4*exposuremax ゲイン4倍
ここで、exposureminは、撮像素子102(光センサ102−1)が必要とする最小露光量である。exposuremaxは、先に述べたように、撮像素子102が取り得る最大露光量(光センサが取り得る露光時間を最大にした時の露光量)である。
【0045】
さらに、ゲイン決定部241では、決定したゲイン(gain)を除いた分の露光量exposurewithoutgainを計算する(ステップ1007)。このexposurewithoutgainが露光時間を計算する対象の露光量となる。以下に計算式を示す。
exposurewithoutgain=exposure’−(gain−1)*exposuremax (7)
ただし、ケース0の場合はexposureminをexposurewithoutgainとする。また、ケース5の場合は、exposuremaxをexposurewithoutgainとする。
【0046】
すなわち、最適露光量exposure’が最大露光量exposuremaxを超えない間は、ゲインを1とし、exposure’をそのままexposurewithoutgainとする。ただし、exposure’がexposuremin未満の場合には、exposureminをexposurewithoutgainとして、必要最小限の露光量を確保する。一方、exposure’が最大露光量exposuremaxを超える場合は、その大きさに応じてゲインを2倍、3倍、4倍と上げることで対処し、該ゲインに対応するexposuremax分だけexposure’から差し引いた露光量をexposurewithoutgainとする。ただし、exposure’が4*exposuremaxを超える場合は、ゲインを4倍にとどめ、exposuremaxをexposurewithoutgainとして、露光量が過大になるの防止する。なお、ここではゲインを最大4倍にとどめるとしたが、一般にはN倍(Nは2以上の任意の整数)とすればよい。
【0047】
ゲイン決定部241は、決定したゲインを制御部250に送り、該ゲインを除いた分の露光量exposurewithoutgainを露光時間算出部242におくる。
【0048】
露光時間算出部242は、ゲイン決定部241から送られた露光量exposurewithoutを受け取り、以下のように露光時間を算出する(ステップ1008)。
【0049】
【数1】

ここで、rowexposureは行単位露光時間(露光時間行)、pixelexposureは画素単位露光時間(露光時間列)である。露光量時間算出部242は、算出した露光時間を制御部250に送る。
【0050】
図6に、露光時間/ゲイン演算部240の具体的処理フローチャート(図5のステップ1006〜1008の詳細処理フロー)を示す。なお、図6の処理フローは各フレーム毎に繰り返される。
【0051】
露光時間/ゲイン演算部240のゲイン決定部241は、最適露光演算部230から現フレームの最適露光量exposure’を入力すると(ステップ2001)、該exposure’がケース0〜ケース5のいずれに分類されるか判定する(ステップ2002〜2007)。そして、ケース0に分類されたならば、ゲインを1倍し(ステップ2008)、exposure’の値に関係なく、あらかじめ定めたexposureminをexposurewithoutgainとする(ステップ2009)。また、ケース1,2,3,4のいずれかに分類されたならば、ゲインを1倍、2倍、3倍あるいは4倍とし(ステップ2010,2011,2012,2013)、先の式(7)を用いてexposurewithoutgainを計算する(ステップ2014)。また、ケース5に分類されたならば(ケース0〜4のいずれでもない場合、ケース5とする)、ゲインはケース4と同様に4倍にするが(ステップ2015)、exposuremaxをexposurewithoutgainとする(ステップ2016)。露光時間算出部242は、露光量exposurewithoutgainをもとに、先の式(8)を用いて露光時間を計算する(ステップ2017)。
【0052】
図3に戻り、制御部250では、露光時間/ゲイン演算部240から送られた露光時間とゲインを受け取り、撮像素子102の制御回路102−3に送る(ステップ1009)。これを各フレームについて繰り返す。
【0053】
次に、本発明の別の実施形態について説明する。画像撮像装置の全体構成図は図1と同じであるので省略する。本実施形態は、図1の露光制御ユニット130における前処理部131の構成が異なる。
【0054】
図7に、図1の露光制御ユニット130の本実施形態に係る全体的機能ブロック図を示す。図7と先の図3を比べれば明らかであるように、本実施形態は、前処理部131について、図3の輝度加算回路212に替えて輝度ヒストグラム生成回路214を用いたものである。それ以外の構成は図3と同じであるが、差分演算部220と最適露光量演算部230内の最適露光量変化分算出部231での処理が、先の実施形態の場合と若干異なる。
【0055】
以下、図7の構成中の輝度ヒストグラム生成回路214、差分演算部220、最適露光量変化分算出部231について説明する。
前処理部131の輝度ヒストグラム生成回路214は、変換回路211から出力される各画像データ(画素データ)の輝度情報Yを順次入力して、1フレーム分ずつ所定の輝度レベル毎の画素数をカウントすることで、フレーム毎の輝度ヒストグラムを生成する。本実施形態においても、フレーム中の輝度ヒストグラムを生成する範囲は、有意な画像範囲だけ、外部から指定できるようにしてもよい。
【0056】
図8は、輝度ヒストグラム生成回路214の具体的構成例を示した図である。輝度ヒストグラム生成回路214は複数の比較器(1)〜(n)と複数のカウンタ(1)〜(n)を有している。なお、各比較器及び各カウンタは垂直/水平同期信号、画素クロック等に同期して動作するが、図8では、これらの信号は省略してある。
【0057】
前処理部131の変換回路211から出力された輝度情報Yは、複数の比較器(1)〜(n)にそれぞれ入力される。ここで、閾値をV1,V2,…V(n−1)とする(ただし、V1<V2…<V(n−1))。比較器(1)は、Y≦V1の時、カウンタ(1)を+1する。比較器(2)は、V1<Y≦V2の時、カウンタ(2)を+1する。以下同様に、比較器(n−1)は、V(n−2)<Y≦V(n−1)の時、カウンタ(n−1)を+1し、比較器(n)は、Y>V(n−1)の時、カウンタ(n)を+1する。これを1フレームの間繰返し、1フレーム終了した時点で、カウンタ(1)〜(n)の各カウント値を出力して、カウンタ(1)〜(n)をリセットする。以下、各フレームについて同様の動作を繰り返す。
【0058】
図7に戻り、差分演算部220では、輝度ヒストグラム生成回路214から輝度ヒストグラム情報を受け取り、明るい輝度の画素の個数の総和Nbrightnessと暗い輝度の画素の個数の総和Ndarknessを求め、その差分errorを計算する。計算式を以下に示す。
error=Ndarkness−Nbrightness (9)
ここで、明るい画素と暗い画素の線引きは、外部から決定しても良い。画面をより明るくしたければ、明るい画素と暗い画素の線引きを明るい画素側に移動し、画面をより暗くしたければ、明るい画素と暗い画素の線引きを暗い画素側に移動するようにする。図9に、明るい画素と暗い画素の線引きのイメージを示す。
【0059】
差分演算部220で計算された差分error(現フレームの明るい輝度の画素の個数の総和と暗い輝度の画素の個数の総和の差分)は、最適露光量演算部230に送られると共に、メモリ113に保持される。本実施形態でも、メモリ113には、少なくとも、1フレーム前の明るい輝度の画素の個数の総和と暗い輝度の画素の個数の総和の差分(error1とする)、2フレーム前の明るい輝度の画素の個数の総和と暗い輝度の画素の個数の総和の差分(error2とする)までが保持されるとする。
【0060】
最適露光量演算部220の最適露光量変化分算出部231では、現フレームのerrorに加えて、1フレーム前および2フレーム前のerror1,error2を用い、PID制御法を適用して、次フレームの最適露光量変化分updataを計算する。以下に計算式を示す。
updata=Kp’*(error−error1)+Ki’*error
+Kd*(error-error1)−(error1−error2)) (10)
ここで、Kp’,Ki’,Kd’はPID制御係数で、例えば経験的に決定する。なお、これらは正規化する係数も含めているものとする。
【0061】
最適露光量演算部220のそれ以降の動作、露光時間・ゲイン演算部240および制御部250の動作は、先の実施形態と同じであるので、説明は省略する。
【0062】
図10に、本画像撮像装置の全体的動作を説明するタイミングチャートを示す。図10において、FVは垂直有効期間信号、LVは水平有効期間信号であり、それぞれ垂直同期信号、水平同期信号から生成される。PCLKは画素クロック信号である。
【0063】
撮像素子102は、各フレームについて、FV信号の期間に画像データを出力し、これと並行して次の画像データの露光を実施する。露光時間は行単位露光時間(露光時間行)rowexposureに画素単位露光時間(露光時間列)pixelexposureを加えた時間で表わされる。取り得る最大露光時間は、1フレーム期間(Ncolum*Nrowスキャン時間)である。
【0064】
いま、フレーム1において、撮像素子102は画像データAを出力し、これと並行して、次の画像データBの露光を実施しているとする。
【0065】
撮像素子102から出力された画像データAは、エンコーダ110、表示部120と送出されると同時に、露光制御ユニット130に取り込まれる。露光制御ユニット130の前処理部131は、フレーム1のFVの期間、画像データAの輝度情報を順次加算する。そして、前処理部130は、FV信号の立ち下がりで、CPU132に割込み信号を発行して、画像データAの輝度総和情報をCPU132に送る。なお、図7の実施形態では、前処理部131は、フレーム1のFVの期間、画像データAの輝度ヒストグラムを生成し、FV信号の立ち下りで、割込み信号と共に輝度ヒストグラム情報をCPU132に送ることになる。
【0066】
CPU132は、フレーム1の垂直ブランキング期間を利用して、画像データAの輝度総和情報あるいは輝度ヒストグラム情報をもとに、最適露光量を計算し、該最適露光量から露光時間とゲインを決定する。該決定した露光時間とゲインは、撮像素子102に送られて保持される。
【0067】
次のフレーム2では、撮像素子102は画像データBを出力し、これと並行して、次の画像データCの露光を実施する。この画像データCの露光時間は、画像データAから計算された露光時間で決まる。また、このフレーム2では、露光制御ユニット130は、上記と同様にして、画像データBから次の露光時間とゲインを決定する。
【0068】
次のフレーム3では、撮像素子102は画像データC出力し、これと並行して、次の画像データDの露光を実施する。この時、画像データCのゲインは、画像データAから計算されたゲインで決まり、画像データDの露光時間は、画像データBから計算された露光時間で決まる。
【0069】
同様にして、次のフレーム4では、撮像素子102は画像データDを出力し、これと並行して、次の画像データEの露光を実施する。この時、画像データDのゲインは、画像データBから計算されたゲインで決まり、画像データEの露光時間は、画像データCから計算された露光時間で決まる。
【0070】
なお、図10では、露光時間/ゲインの計算は、各フレームの垂直ブランキング期間で行うとしたが、撮像素子やCPUの動作速度によっては、露光時間/ゲインの計算は次のフレームにまたぐことが考えられる。この場合には、計算した露光時間/ゲインを適用する画像データを1フレーム遅らせればよい、例えば、画像データAによる露光時間/ゲインがフレームをまたいで計算される場合、該露光時間/ゲインを、フレーム3と4の画像データDに反映させるようにする。
【0071】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の露光制御装置(あるいは方法)は図示の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0072】
102 撮像素子
110 エンコーダ
120 表示部
130 露光制御ユニット
131 前処理部
132 CPU
133 メモリ
211 変換回路
212 輝度加算回路
214 輝度ヒストグラム生成回路
220 差分演算部
230 最適露光量演算部
240 露光時間/ゲイン演算部
250 制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】
【特許文献1】特開10−336516号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子の露光量を制御する露光制御装置であって、
前記撮像素子の出力輝度情報から最適露光量変化分を求める手段と、
前記最適露光量変化分に、現露光量を前記撮像素子が取り得る最大露光量で除した値を乗じて、補正最適露光量変化分を求める手段と、
前記補正最適露光量変化分を現露光量に加えて最適露光量を求める手段と、
前記最適露光量に応じた露光時間を求める手段と、
前記露光時間を前記撮像素子に設定する手段と、
を有することを特徴とする露光制御装置。
【請求項2】
前記撮像素子の出力輝度情報を1フレーム分ずつ加算して、フレーム毎の輝度総和を得る手段を更に有し、
前記最適露光量変化分を求める手段は、フレーム毎に、前記輝度総和と予め定めた目標値との差分から前記最適露光量変化分を算出することを特徴とする請求項1記載の露光制御装置。
【請求項3】
前記最適露光量変化分は、次式、
updata=Kp*(error−error1)+Ki*error
+Kd*(error-error1)−(error1−error2))
updata;最適露光量変化分
error;現フレームの輝度総和と目標値との差分
error1;1フレーム前の輝度総和と目標値との差分
error2;2フレーム前の輝度総和と目標値との差分
Kp,Ki,Kd;係数
から算出することを特徴とする請求項2記載の露光制御装置。
【請求項4】
前記撮像素子の出力輝度情報について、フレーム毎の輝度ヒストグラムを生成する手段を更に有し、
前記最適露光量変化分を求める手段は、フレーム毎に、前記輝度ヒストグラムから、明るい輝度の画素の個数の総和と暗い輝度の画素の個数の総和を得、両者の差分から前記最適露光量変化分を算出することを特徴とする請求項1記載の露光制御装置。
【請求項5】
前記最適露光量変化分は、次式、
updata=Kp’*(error−error1)+Ki’*error
+Kd’*(error-error1)−(error1−error2))
updata;最適露光量変化分
error;現フレームの明るい輝度の画素の個数の総和と暗い輝度の画素の個数
の総和の差分
error1;1フレーム前の明るい輝度の画素の個数の総和と暗い輝度の画素の個数
の総和の差分
error2;2フレーム前の明るい輝度の画素の個数の総和と暗い輝度の画素の個数
の総和の差分
Kp’,Ki’,Kd’;係数
から算出することを特徴とする請求項4記載の露光制御装置。
【請求項6】
前記補正最適露光量変化分を求める手段は、前記最適露光量変化分に、現露光量を前記撮像素子が取り得る最大露光量で除した値を乗じ、さらに所定の係数を乗じて補正最適露光量変化分を算出する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の露光制御装置。
【請求項7】
前記最適露光量が前記撮像素子が取り得る最大露光量を超えた場合に、該超えた大きさに応じて増加するように前記撮像素子のゲインを決定すると共に、前記最適露光量から前記ゲインの増加分を除いた露光量を算出する手段を更に有し、
前記最適露光量に応じた露光時間を求める手段では、前記ゲインの増加分を除いた露光量に応じた露光時間を算出し、
前記露光時間を前記撮像素子に設定する手段では、前記ゲインの増加分を除いた露光量に応じた露光時間と、前記決定されたゲインと前記撮像素子に設定する、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の露光制御装置。
【請求項8】
前記ゲインの決定と露光量を算出する手段は、
前記最適露光量が前記撮像素子で必要とする最小露光量以下の場合には、ゲインを1とし、前記露光量を前記最小露光量とし、
前記最適露光量が前記最大露光量のN倍(Nは2以上の整数)を超えた場合には、ゲインをNとし、前記露光量を前記最大露光量とする、
ことを特徴とする請求項7に記載の露光制御装置。
【請求項9】
撮像素子の露光量を制御する露光制御方法であって、
前記撮像素子の出力輝度情報から最適露光量変化分を求めるステップと、
前記最適露光量変化分に、現露光量を前記撮像素子が取り得る最大露光量で除した値を乗じて、補正最適露光量変化分を求めるステップと、
前記補正最適露光量変化分を現露光量に加えて最適露光量を求めるステップと、
前記最適露光量に応じた露光時間を求めるステップと、
前記露光時間を前記撮像素子に設定するステップと、
を有することを特徴とする露光制御方法。
【請求項10】
前記最適露光量が前記撮像素子が取り得る最大露光量を超えた場合に、該超えた大きさに応じて増加するように前記撮像素子のゲインを決定すると共に、前記最適露光量から前記ゲインの増加分を除いた露光量を算出するステップを更に有し、
前記最適露光量に応じた露光時間を求めるステップでは、前記ゲインの増加分を除いた露光量に応じた露光時間を算出し、
前記露光時間を前記撮像素子に設定するステップでは、前記ゲインの増加分を除いた露光量に応じた露光時間と、前記決定されたゲインとを前記撮像素子に設定する、
ことを特徴とする請求項9に記載の露光制御方法。
【請求項11】
被写体の光学像を結像する光学系と、
前記光学系により結像される光学像を撮像する撮像素子と、
前記請求項1乃至8のいずれか1項に記載の露光制御装置と、
を有していることを特徴とする画像撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate