説明

撮像装置、画像歪み補正方法及びプログラム

【課題】MOS歪みの影響を減らして手ぶれ補正の精度向上を図ることができる撮像装置、画像歪み補正方法及びプログラムを提供すること。
【解決手段】撮像装置100は、ライン毎の画素読出しを行う撮像部101、複数回撮影した画像データを記憶する画像記憶部102、分割数を指定する分割数指定部103、画素読出しライン方向に画像を分割し、各部を制御する画像分割制御部104、分割された画像のそれぞれにおいて、複数の画像データから画像間の移動量を算出する動き検出部105、分割された画像のそれぞれの画像間の移動量を基に画像を合成する画像合成部106、及び合成結果を保存する画像保存部107を備え、画像を読出しライン方向に分割し、分割箇所毎にそれぞれ独立に手ぶれ量(移動量)を求め、アフィン変換を用いて画像合成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子スチルカメラやビデオカメラ等に搭載され、手ぶれに起因する画像歪みを補正する撮像装置、画像歪み補正方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子スチルカメラやビデオカメラ等の撮像装置の撮像素子には、CCD(Charge Coupled Device)センサが利用されてきた。近時、低消費電力等の理由からMOS系の撮像素子が搭載されるようになってきた。CCDセンサは、全画素の電荷蓄積タイミングが同じ撮像素子であり、静止画像に対する手ぶれの影響は小さい。全画素同時読出しのCCDセンサに対して、ライン毎の画素読出しを行うMOS系のセンサでは、読出し時間差に起因する画像の歪み、いわゆるMOS歪みが発生してしまう。MOS歪みは、撮像面の最初の走査ラインと最後の走査ラインとで電荷蓄積タイミングが1画像走査期間近くずれ、手ぶれによって図形歪みが生じる現象であり、静止画像の場合は直線が曲がって映り、動画像の場合は直線がゆらゆらしなって写ったり被写体像の寸法が伸び縮みしたりする。
【0003】
MOS系の撮像素子でも全ラインの読出し完了が速い、フレームレートが高い素子はMOS歪みが発生しづらい。一方で、高画素化によりライン数が増える傾向にある。ライン数が増えると高フレームレート化は難しく、MOS歪みが発生しやすくなってしまう。
【0004】
静止画電子手ぶれ補正を行う方法として例えば、特許文献1に記載されたものがある。
【0005】
図16は、特許文献1記載の撮像装置の構成を示すブロック図である。また、図17は、図16の撮像装置の電子手ぶれ補正を説明する図であり、図17(a)は通常の撮影時、図17(b)は電子手ぶれ補正時を示す。
【0006】
図16において、撮像装置10は、撮像部11、画像記憶部12、動き検出部13、画像合成部14、及び画像保存部15を備えて構成される。
【0007】
手ぶれとは、露光期間中の手の動きによって像がぼやける現象である。図17(a)に示すように、露光開始から露光終了までに手ぶれにより露光面がぶれると、手ぶれにより像がぼやける。
【0008】
撮像部11では、露光時間を短くした画像を複数撮影し、この複数撮影した画像を画像記憶部12に記憶する。画像合成部14では、動き検出部13により検出された動き検出結果を基に各画像間の移動量(手ぶれ量)を換算して合成することで、ブレがなくS/Nの高い画像を画像保存部15に格納する。特許文献1記載の手ぶれ補正方法では、図17(b)に示すように、露光時間を短くして連写し、1枚目からの移動量を求め、この移動量を換算して得られた画像の位置ずれを補正した後画像を合成する。
【0009】
また、特許文献2には、3つの角速度センサから3次元的に手ぶれ量を求め、アフィン変換により回転ぶれにも対応して複数枚の画像合成を行うカメラシステムが開示されている。
【0010】
また、特許文献3には、現在のラインと1つ前のラインとの相関が高い水平位置を求め、その位置に現在のラインを書き込むことで水平方向のCMOS歪みを補正し、垂直方向は角速度センサを利用して補正する撮像装置が開示されている。
【特許文献1】特開2001−045359号公報
【特許文献2】特開2000−224461号公報
【特許文献3】特開2004−363869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、このような従来の撮像装置にあっては、以下のような課題があった。
【0012】
(1)MOS系のセンサでは、手ぶれに応じた歪みが発生し、画像合成時その影響が顕著に現れる。
【0013】
(2)歪みの影響を減らすためにはフレーム間隔の短いカメラを使用する必要がある。
【0014】
(3)アフィン変換などの線形変換を単純に適応しただけでは、非線形に発生した歪みを補正できない。
【0015】
上記課題をより詳細に説明する。
【0016】
特許文献1記載の手ぶれ補正方法は、CCDセンサのような歪みのない画像を利用することを前提としている。
【0017】
図18及び図19は、MOS歪みによって画像の合成が正しく行われないことを説明する図であり、図18は、CCDセンサによる手ぶれ補正を、図19は、MOS系センサによる手ぶれ補正を示す。
【0018】
図18及び図19では、簡単のため水平方向(X軸方向)のみの手ぶれを仮定し、時刻t=0に出力される画像を位置の基準とする。図18(a)及び図19(a)には、連写n枚目とn+1枚目(n,n+1フレーム目)の画像に発生した手ぶれ量と、手ぶれ補正時に求まる画像間の移動量x,xn+1が示されている。図18(b)及び図19(b)は、連写n枚目とn+1枚目の画像を示し、画像は元の位置(t=0)に対して手ぶれ後の位置がずれている。
【0019】
図18に示すCCDセンサは、全画素同時読出しのため、各フレームの開始時刻の手ぶれ量が画像全体の移動量となる。一方、図19に示すMOS系のセンサは、1ライン毎の読出しのため、その時刻毎の手ぶれ量が画像に反映される。図19の例では、n,n+1フレーム目の手ぶれ補正基準(x,xn+1)に対して、手ぶれ量は1ライン毎の読出しであるため、1ライン毎に変動し、手ぶれ補正がうまくできない。図19(a)のハッチング部が手ぶれ補正不可部分を示している。しかも非線形要素を含むため、図19(b)に示すように補正後の画像の直線が曲がって合成される。
【0020】
このように、MOS系のセンサの場合は、手ぶれ補正を用いて画像間の移動量x,xn+1を求めただけでは、画像の一部分しか正しく合成されない。
【0021】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、MOS歪みの影響を減らして手ぶれ補正の精度向上を図ることができる撮像装置、画像歪み補正方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の撮像装置は、ライン毎の画素読出しを行う撮像素子と、前記撮像素子により複数回撮影した画像データを記憶する画像記憶手段と、前記撮像素子の画素読出しライン方向に画像を分割する画像分割手段と、分割された画像のそれぞれにおいて、前記画像記憶手段に記憶された複数の画像データから画像間の移動量を算出する動き検出手段と、前記動き検出手段から得られる、分割された画像のそれぞれの画像間の移動量を基に画像を合成する画像合成手段と備える構成を採る。
【0023】
本発明の画像歪み補正方法は、ライン毎の画素読出しを行う撮像素子により複数回撮影するステップと、複数回撮影した画像データを記憶するステップと、前記撮像素子の画素読出しライン方向に画像を分割するステップと、分割された画像のそれぞれにおいて、前記画像記憶手段に記憶された複数の画像データから画像間の移動量を算出するステップと、分割された画像のそれぞれの画像間の移動量を基に画像を合成するステップとを有する。
【0024】
他の観点から、本発明は、上記画像歪み補正方法のステップをコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、MOS歪みの影響を減らして手ぶれ補正の精度向上を図ることができ、MOS歪みによる画像合成の失敗を未然に防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。
【0028】
図1において、撮像装置100は、撮像部101、画像記憶部102、分割数指定部103、画像分割制御部104、動き検出部105、画像合成部106、及び画像保存部107を備えて構成される。
【0029】
撮像部101は、ライン毎の画素読出しを行うMOS系のセンサである。画像記憶部102は、複数回撮影した画像データを記憶する。
【0030】
分割数指定部103は、MOS系のセンサのフレームレートに基づく規定値、又はユーザ設定値により画像をスキャン方向に分割する分割数を指定する。
【0031】
画像分割制御部104は、分割数指定部103により指定された分割数に基づき、画像記憶部102の複数の画像データに対するデータの読出し開始位置・終了位置を変更して動き検出部105及び画像合成部106に通知するとともに、合成画像の切取り開始位置・終了位置を画像合成部106に通知し、さらに画像保存部107での出力画像データ書込み開始位置・終了位置を画像合成部106に通知する。
【0032】
動き検出部105は、画像記憶部102に記憶された複数の画像データから画像間の移動量を算出する。画像合成部106は、動き検出部105から得た画像間の移動量を基に画像を合成する。画像保存部107は、画像合成部106の合成結果を保存する。
【0033】
以下、上述のように構成された撮像装置100の動作について説明する。
【0034】
まず、本発明の基本的な考え方について説明する。
【0035】
図2は、本発明の基本的な考え方を説明する図である。
【0036】
図2(a)に示すように、従来例では、MOS系のセンサは、1ライン毎の読出しのため、1枚目の画像と2枚目の画像で手ぶれ応じた歪みが発生し、2枚合成後の画像に歪みの影響が顕著に現れていた。
【0037】
そこで、本発明は、画像の読出しライン方向に沿って連写画像それぞれを分割し、分割箇所毎に移動量計算と画面合成を行う。図2(b)は、画像をスキャン方向に複数(2つ)分割して、分割箇所毎に手ぶれ量を求め、その分割箇所毎に合成処理を行う例を示している。その後、分割して合成した画像を1つにつなぎ合わせる。これにより、MOS歪みによる画像合成の失敗がなくなる。
【0038】
画像合成の際、アフィン変換を利用して画像合成を行うとさらに画像合成の精度を高めることができる。あるいは、より少ない分割数で高い補正精度を得ることができる。
【0039】
図3は、アフィン変換の原理を説明する図である。アフィン変換とは、次式(1)に示す行列式を用いた座標変換である。行列パラメータを変えることによって画像の移動、回転、変形などを実現する。
【数1】

【0040】
図4は、アフィン変換による手ぶれ補正を説明する図であり、図19の手ぶれ補正説明図に対応している。
【0041】
nフレーム目,n+1フレーム目の手ぶれ補正基準xn(Ln),xn+1(Ln+1)は、次式(2)で示される。
n(Ln)=a*L+b
n+1(Ln+1)=an+1*Ln+1+bn+1 …(2)
【0042】
アフィン変換による線形変換で、手ぶれ補正基準(xn(Ln),xn+1(Ln+1))を手ぶれ補正量の傾きに近づけることにより、手ぶれ補正不可部分を減らすことができる。但し、アフィン変換は、線形変換であるため、非線形に発生した歪みは補正できない。
【0043】
次に、撮像装置100の全体動作について説明する。
【0044】
まず、分割数指定部103では、MOS系のセンサのフレームレート、又はユーザ設定値により画像をスキャン方向に分割する分割数があらかじめ指定されている。撮像部101は、ライン毎の画素読出しを行うMOS系のセンサであり、このMOS系のセンサのフレームレートに応じて、例えば分割数「3」がデェフォルトで指定する。分割数を増やすと演算量は増加するものの補正精度は上がる。ユーザが分割数を指定することも可能である。ユーザが、例えば「画質優先モード」を指定すると分割数を大きく設定する。
【0045】
図5は、分割数に対する総処理時間の変化を示す図である。図6は、分割数に対する合成精度の変化を示す図である。
【0046】
分割数を増やすと補正精度を上げることができるものの処理量も増加してしまう。
【0047】
図5に示すように、分割数がn倍に増えると、動き検出に要する処理量がn倍に増えるが、画像合成に要する処理量は処理する総ピクセル数が変わらないため変化なし(マージンをとらない場合)である。つまり、分割数を2倍にしても総処理量は2倍未満で収まる。
【0048】
最適な分割数を決定する方法としては、次式(3)に示す値を見ればよい。式(3)に示す値は、分割実施時の擬似的なフレームレートを表す。
(センサのフレームレート)×(分割数) …(3)
【0049】
図6に示すように、上記値を大きくしてもある飽和点から効果が飽和することが分かる。本発明者らは、通常の手ぶれに対しては、上記値が「15」程度となるように分割数を設定すればよいことを見出した。但し、光学系やカメラ本体の重量、形状等により大きなぶれが発生しやすい場合には、より大きな値を設定する必要がある。
【0050】
図1に戻って、撮像部101により画像が複数回撮影され、複数回撮影した画像データは、画像記憶部102に記憶される。
【0051】
画像分割制御部104では、(1)分割数指定部103により指定された分割数に基づいて画像記憶部102の複数の画像データに対するデータの読出し開始位置・終了位置を変更する。(2)また、分割数指定部103により指定された分割数に基づいて合成画像の切取り開始位置・終了位置を変更する。(3)さらに、分割数指定部103により指定された分割数に基づいて画像保存部107での出力画像データ書込み開始位置・終了位置を変更する。分割数に基づいて変更されたデータの読出し開始位置・終了位置、合成画像の切取り開始位置・終了位置、及び出力画像データ書込み開始位置・終了位置は、それぞれ動き検出部105及び画像合成部106に通知される。画像分割制御部104の動作の詳細については、図7により後述する。
【0052】
動き検出部105は、画像記憶部102に記憶された複数の画像データから画像間の移動量を算出して画像合成部106に出力する。
【0053】
画像合成部106では、動き検出部105から得た画像間の移動量を基に画像を合成して画像保存部107に出力し、画像保存部107は、画像合成部106の合成結果を保存する。画像合成部106の動作の詳細については、図8により後述する。
【0054】
図7は、画像分割制御部104の動作を示すフローチャートである。本フローは、撮像装置100全体を制御する制御部のCPUにより実行される。図中Sは、フローの各ステップを示す。
【0055】
画像分割制御部104の動作がスタートすると、ステップS11で画像記憶部102の複数枚の画像に対し、それぞれの読出し開始・終了位置を入力する。連写した画像データは、画像記憶部102のどのアドレスから読出しを開始してどのアドレスで終了するのかを入力する。次いで、ステップS12で分割数指定部103で決定された画像の分割数nを入力する。
【0056】
ステップS13では、全入力画像に対し、分割i番目の画像記憶部102での読出し開始・終了位置を決定して出力する。すなわち、n分割中i番目の箇所が画像記憶部102のどのアドレスから始まり、どのアドレスで終了するのかを画像合成部106に出力する。次いで、ステップS14で全入力画像に対し、分割i番目の合成画像の切取り開始・終了位置を決定して出力する。すなわち、n分割中i番目の箇所の合成終了後にどの範囲で合成画像を切取るかを画像合成部106に出力する。
【0057】
ステップS15では、全入力画像に対し、分割i番目の画像保存部107での書込み開始・終了位置を決定して出力する。すなわち、n分割中i番目の箇所の切取り終了後に画像保存部107のどのアドレスから書込みを開始し、どのアドレスで終了するのかを決定して画像合成部106に出力する。
【0058】
次いで、ステップS16でn分割したn個の領域すべてにおいて処理が終了したか否かを判別し、処理が未完了の場合はステップS17でiをインクリメント(i=i+1)して上記ステップS13に戻り、次の分割箇所の処理に移る。n回分の処理が完了すると本フローを終了する。
【0059】
図8は、画像合成部106の動作を示すフローチャートである。本フローは、撮像装置100全体を制御する制御部のCPUにより実行される。
【0060】
画像合成部106の動作がスタートすると、ステップS21で複数枚の入力画像に対し、画像記憶部102での読出し開始・終了位置を入力する。画像データを画像記憶部102のどのアドレスから読出しを開始してどのアドレスで終了するのかを入力する。次いで、ステップS22で複数枚の入力画像に対し、合成画像の切取り開始・終了位置を入力して、合成画像をどの範囲で切取るかを指定する。
【0061】
ステップS23では、複数枚の入力画像に対し、画像保存部107での書込み開始・終了位置を入力する。切取り終了後に画像保存部107のどのアドレスから書込みを開始してどのアドレスで終了するのかを入力する。
【0062】
次いで、ステップS24で動き検出部105で求めた1枚目に対するn枚目画像の移動量を入力し、ステップS25で移動量だけずらして画像を合成する。次いで、ステップS26で指定された切取り位置で合成画像を切取り、ステップS27で指定された画像保存部107の書込み位置(アドレス)に切り取った画像を出力して本フローを終了する。
【0063】
図9は、撮像装置100の画像分割動作によるMOS歪み低減効果を説明する図であり、画像を読出しライン方向に3分割した例である。
【0064】
簡単のため、手ぶれを水平方向(X軸方向)に限定している。この場合、n枚目の画像に対して3つの移動量xn,1,xn,2,xn,3が、またn+1枚目の画像に対して3つの移動量xn+1,1,xn+1,2,xn+1,3が求まる。このように、画像の読出しライン方向に画像を3分割し、3分割箇所毎に手ぶれ量(移動量)を計算しているので、前記図19(a)と比較して判るように、歪みによって補正しきれない領域(図9ハッチング部参照)を減少させることができる。したがって、MOS系のセンサの歪みによる影響を減らして手ぶれ補正を行うことができる。
【0065】
図9では、画像を読出しライン方向に3分割した例であるが、さらに分割数を増やすことで、処理量は増加するものの補正精度を上げることができる。
【0066】
上述したように、画像を読出しライン方向に分割し、分割箇所毎に手ぶれ量(移動量)を求めることで、MOS系のセンサの歪みによる影響を減らすことができた。
【0067】
本方法に、図3及び図4で前述したアフィン変換を適用すると、より一層の手ぶれ補正効果が得られる。これは、アフィン変換そのものによる補正効果に加え、本方法が画像の読出しライン方向分割を採ったことにより、各分割箇所にアフィン変換を適用することが可能になり、非線形に発生した歪みも補正できることによる。
【0068】
以下、本方法に、画像合成の際、アフィン変換を利用して画像合成を行う効果について説明する。
【0069】
図10は、アフィン変換による手ぶれ補正の限界を説明する図である。
【0070】
nフレーム目,n+1フレーム目の手ぶれ補正基準xn(Ln),xn+1(Ln+1)は、前記式(2)で示される。図10に示すように、非線形に発生した手ぶれ量(歪み量)が大きいと、アフィン変換を単純に適用しただけでは発生した歪みを補正しきることはできない。従来例は、これがアフィン変換等の線形変換の限界であった。
【0071】
図11は、本方法による画像の分割とアフィン変換による手ぶれ補正を説明する図であり、MOS歪みは図10に対応する図である。画像を読出しライン方向に2分割した例である。
【0072】
画像を読出しライン方向に2分割し、2分割箇所毎にアフィン変換するため、nフレーム目及びn+1フレーム目は、それぞれ2つの手ぶれ補正基準xn,1(Ln),xn,2(Ln)とxn+1,1(Ln+1),xn+1,2(Ln+1)を持つ。nフレーム目の手ぶれ補正基準xn,1(Ln),xn,2(Ln)は、次式(4)で示され、n+1フレーム目の手ぶれ補正基準xn+1,1(Ln+1),xn+1,2(Ln+1)は、次式(5)で示される。
n,1(Ln)=an,1*Ln,1+bn,1
n,2(Ln)=an,2*Ln,2+bn,2 …(4)
n+1,1(Ln+1)=an,1*Ln,1+bn,1
n+1,2(Ln+1)=an+1,2*Ln+1,2+bn+1,2 …(5)
【0073】
図11に示すように、アフィン変換そのものは線形変換であるものの、非線形に発生した歪みに対して、非線形の大きい歪み部分について2つのアフィン変換を用いることで、手ぶれ補正不可部分(図11ハッチング部参照)を大幅に減らすことができる。図10と比較すると、その効果は明らかである。
【0074】
このように、手ぶれが非線形に発生した場合でも、画像を読出しライン方向に分割し、分割箇所毎にアフィン変換を用いれば、高精度な補正が可能となる。
【0075】
以上のように、本実施の形態によれば、撮像装置100は、ライン毎の画素読出しを行う撮像部101、複数回撮影した画像データを記憶する画像記憶部102、分割数を指定する分割数指定部103、画素読出しライン方向に画像を分割し、各部を制御する画像分割制御部104、分割された画像のそれぞれにおいて、複数の画像データから画像間の移動量を算出する動き検出部105、分割された画像のそれぞれの画像間の移動量を基に画像を合成する画像合成部106、及び合成結果を保存する画像保存部107を備え、画像を読出しライン方向に分割し、分割箇所毎にそれぞれ独立に手ぶれ量(移動量)を求め、アフィン変換を用いて画像合成しているので、MOS歪みの影響を減らして手ぶれ補正の精度向上を図ることができ、MOS歪みによる画像合成の失敗を未然に防ぐことができる。
【0076】
かかる優れた特長を有する本発明を、デジタルカメラなどの電子スチルカメラ、手ぶれ補正機能を有するビデオカメラにおける撮像装置、カメラ付き携帯電話機等に適用して好適である。
【0077】
(実施の形態2)
図12は、本発明の実施の形態2に係る撮像装置の構成を示すブロック図である。図1と同一構成部分には同一符号を付して重複箇所の説明を省略する。
【0078】
図12において、撮像装置200は、さらに検出精度判定部210を備えて構成される。また、検出精度判定部210による判定出力は、分割数指定部103に入力される。
【0079】
検出精度判定部210は、動き検出部105により算出された移動量の精度が所定の閾値以下であることを判定する。
【0080】
以下、上述のように構成された撮像装置200の動作について説明する。
【0081】
撮影時に小さなぶれしか発生せず、歪みが小さい場合がある。この場合、分割数が少ない方がより少ない処理量で済む。逆に、大きなぶれが発生した場合は、分割数を多くすることが好ましい。
【0082】
そこで本実施の形態では、検出精度判定部210は、動き検出部105が求めた移動量の精度が所定の閾値以下であるか否かを判定し、判定結果を分割数指定部103に出力する。分割数指定部103では、判定結果を基に分割数を指定する。分割数の指定には、以下の2つの応用が可能である。
【0083】
(1)ある分割数で処理を実行し、どの程度正確に画像が合成されるか動き検出の精度を判定し、動き検出部105が求めた移動量の精度が基準値以下であれば、分割数を増やして再度合成処理を行う。この場合、動き検出の精度の前記基準値からの差分に応じて、該差分が大きければ分割数をより増やすようにしてもよい。
【0084】
(2)ある分割数で処理を実行し、ユーザが結果を画面で確認して、このまま画像を保存するか、分割数を増やして再度合成処理を行うかを選択する。
【0085】
以上のように、本実施の形態によれば、手ぶれ量計算時に求まる補正精度が基準値以下の場合は分割数を増やして再度合成処理を行うことにより、より少ない処理量で補正精度を向上させることができる。
【0086】
ユーザが、上記基準値を前以て設定する、あるいはユーザが結果を画面で確認するようにすれば、ユーザの意向に合った合成処理を実現することができる。
【0087】
(実施の形態3)
上記実施の形態1,2によれば、画像の読出しライン方向に分割し、分割箇所毎に移動量計算と画面合成を行うことでMOS歪みのない画像合成が可能になった。本実施の形態
は、分割画像を合成したときの合成跡をなくす例について説明する。
【0088】
図13及び図14は、合成跡への対処方法を説明する図である。図13に示すように、画像2枚をアフィン変換を用いて合成した場合、2枚目の枠301が合成時に現れ、合成跡となる。この場合、中央のエリア302で切り取って出力すれば、合成時の枠301を除去することができる。しかし、上記実施の形態1,2では、画像を分割し画面合成しているため、図14に示すように、例えば2分割で2枚の画像を合成したとすると、たとえ中央のエリアで切り取ったとしても、合成時の枠310が合成跡として中央に残ってしまう。
【0089】
図15は、分割画像を合成したときの合成跡の除去について説明する図である。2分割の場合を例に採る。
【0090】
本実施の形態では、各分割画像に合成跡を残さないようにするため、分割領域にマージンを持たせる。
【0091】
図15(a)(b)において、撮影画像400に対して上半分の分割領域401aと下半分の分割領域401bとを、マージンを取って分割する。出力領域402は、上半分の出力領域402aと下半分の出力領域402bとで均等である。
【0092】
図15(a)(b)に示すように、画像を2分割する場合、単純に均等に2分割するのではなく、上半分の分割領域401aと下半分の分割領域401bとは、中央部が重なるようにマージンを取って分割し、出力時に中央のエリアの出力領域402を切り取って出力する。図15(c)は、中央のエリアの出力領域402を切り取って出力された出力画像を示している。これにより、合成時の枠が中央に残る不具合が解消される。
【0093】
図15において、上半分と下半分の切取り位置をBB’で共通にすれば、分割境界で不連続な画像となることを防ぐことができる。また、出力画像402を入力画像と別のメモリ領域に保存するようにすれば、上半分の合成結果が下半分に影響を及ぼすことはない。
【0094】
以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されることはない。
【0095】
また、撮像装置及び画像歪み補正方法を有する電子機器であればどのような装置にも適用できる。例えば、電子スチルカメラ及びビデオカメラは勿論のこと、カメラ付き携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistants)等の携帯情報端末、撮像装置を備えるパソコン等の情報処理装置にも適用可能である。
【0096】
また、ライン毎の画素読出しを行う撮像素子であれば、CMOSセンサなどどのような撮像素子であってもよい。なお、全画素の電荷蓄積タイミングが同じCCDセンサでは、
MOS歪みの影響はないものの、手ぶれ補正の精度向上のため応用は可能である。
【0097】
また、上記各実施の形態では、撮像装置及び画像歪み補正方法という名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、カメラシステム、手ぶれ補正方法等でもよいことは勿論である。
【0098】
また、上記撮像装置を構成する各回路部の種類、数及び接続方法などは前述した実施の形態に限られない。
【0099】
また、以上説明した撮像装置及び画像歪み補正方法は、この撮像装置及び画像歪み補正方法を機能させるためのプログラムでも実現される。このプログラムはコンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納されている。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明に係る撮像装置及び画像歪み補正方法は、手ぶれに起因する画像歪みを補正する撮像装置を備える電子スチルカメラやビデオカメラ等に実装される撮像装置及び画像歪み補正方法として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の実施の形態1に係る撮像装置の構成を示すブロック図
【図2】本発明の基本的な考え方を説明する図
【図3】アフィン変換の原理を説明する図
【図4】上記実施の形態1に係る撮像装置のアフィン変換による手ぶれ補正を説明する図
【図5】上記実施の形態1に係る撮像装置の分割数に対する総処理時間の変化を示す図
【図6】上記実施の形態1に係る撮像装置の分割数に対する合成精度の変化を示す図
【図7】上記実施の形態1に係る撮像装置の画像分割制御部の動作を示すフロー図
【図8】上記実施の形態1に係る撮像装置の画像合成部の動作を示すフロー図
【図9】上記実施の形態1に係る撮像装置の画像分割動作によるMOS歪み低減効果を説明する図
【図10】上記実施の形態1に係る撮像装置のアフィン変換による手ぶれ補正の限界を説明する図
【図11】上記実施の形態1に係る撮像装置の画像の分割とアフィン変換による手ぶれ補正を説明する図
【図12】本発明の実施の形態2に係る撮像装置の構成を示すブロック図
【図13】上記実施の形態2に係る撮像装置の合成跡への対処方法を説明する図
【図14】上記実施の形態2に係る撮像装置の合成跡への対処方法を説明する図
【図15】上記実施の形態2に係る撮像装置の分割画像を合成したときの合成跡の除去について説明する図
【図16】従来の撮像装置の構成を示すブロック図
【図17】従来の撮像装置の電子手ぶれ補正を説明する図
【図18】CCDセンサによる手ぶれ補正を説明する図
【図19】MOS系センサによる手ぶれ補正を説明する図
【符号の説明】
【0102】
100,200 撮像装置
101 撮像部
102 画像記憶部
103 分割数指定部
104 画像分割制御部
105 動き検出部
106 画像合成部
107 画像保存部
210 検出精度判定部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライン毎の画素読出しを行う撮像素子と、
前記撮像素子により複数回撮影した画像データを記憶する画像記憶手段と、
前記撮像素子の画素読出しライン方向に画像を分割する画像分割手段と、
分割された画像のそれぞれにおいて、前記画像記憶手段に記憶された複数の画像データから画像間の移動量を算出する動き検出手段と、
前記動き検出手段から得られる、分割された画像のそれぞれの画像間の移動量を基に画像を合成する画像合成手段と
備える撮像装置。
【請求項2】
前記画像分割手段は、分割された画像が所定領域重なるようにマージンを持たせて分割する請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記画像合成手段は、アフィン変換を用いた画像合成を行う請求項1記載の撮像装置。
【請求項4】
さらに、画像を画素読出しライン方向に分割する分割数を指定する分割数指定手段を備える請求項1記載の撮像装置。
【請求項5】
前記分割数指定手段は、前記撮像素子のフレームレートに基づく規定値、又はユーザ設定値により分割数を指定する請求項3記載の撮像装置。
【請求項6】
さらに、前記画像間の移動量を基に画像合成の精度を判定する画像合成精度判定手段を備える請求項1記載の撮像装置。
【請求項7】
前記画像分割手段は、前記画像合成精度判定手段による判定精度を基に前記分割数を決定する請求項6記載の撮像装置。
【請求項8】
前記画像分割手段は、前記画像合成精度判定手段による判定精度が所定の基準値以下のときは前記分割数を増やす請求項6記載の撮像装置。
【請求項9】
ライン毎の画素読出しを行う撮像素子により複数回撮影するステップと、
複数回撮影した画像データを記憶するステップと、
前記撮像素子の画素読出しライン方向に画像を分割するステップと、
分割された画像のそれぞれにおいて、前記画像記憶手段に記憶された複数の画像データから画像間の移動量を算出するステップと、
分割された画像のそれぞれの画像間の移動量を基に画像を合成するステップと
を有する画像歪み補正方法。
【請求項10】
前記分割ステップでは、分割された画像が所定領域重なるようにマージンを持たせて分割する請求項9記載の画像歪み補正方法。
【請求項11】
前記画像合成ステップでは、アフィン変換を用いた画像合成を行う請求項9記載の撮像装置の画像歪み補正方法。
【請求項12】
さらに、画像間の移動量を基に画像合成の精度を判定するステップを有し、
前記分割ステップでは、判定精度が所定の基準値以下のときは前記分割数を増やす請求項9記載の画像歪み補正方法。
【請求項13】
請求項9乃至請求項12に記載のステップをコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2008−78808(P2008−78808A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−253328(P2006−253328)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】