撮像装置、音声収音方法
【課題】撮像装置における収音音声としてズーム音等の装置機構音の影響を低減する。
【解決手段】外来音を収音する外来音用マイクロホンで得られる音声信号を第1のマイク入力部で入力し、装置機構音を収音する機構音用マイクロホンで得られる音声信号を第2のマイク入力部で入力する。そして第1のマイク入力部からの音声信号について、第2のマイク入力部からの音声信号から生成した機構音キャンセル信号を用いて機構音成分が低減されたノイズ抑制音声信号を生成する。例えばこのノイズ抑制音声信号を、動画等の撮像画像とともに記録・送信する音声データとする。
【解決手段】外来音を収音する外来音用マイクロホンで得られる音声信号を第1のマイク入力部で入力し、装置機構音を収音する機構音用マイクロホンで得られる音声信号を第2のマイク入力部で入力する。そして第1のマイク入力部からの音声信号について、第2のマイク入力部からの音声信号から生成した機構音キャンセル信号を用いて機構音成分が低減されたノイズ抑制音声信号を生成する。例えばこのノイズ抑制音声信号を、動画等の撮像画像とともに記録・送信する音声データとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、動画や静止画を撮像する撮像装置に関し、特に撮像時に収音する音声信号の処理に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2011−70046号公報
【背景技術】
【0003】
動画や静止画を撮像し、画像データとして記録或いは送信する撮像装置では、マイクロホンにより外部音声を集音し、画像データとともに記録或いは送信することが行われている。
この場合、マイクロホンは本来外部音声、即ち撮像対象たる被写体や周囲の音声を目的として収音し、これを画像と共に記録等するものである。ところが、撮像装置の内部機構音が混入することが避けがたい。
例えば一例として、ユーザが撮像中にズーム操作を行った場合、ズームレンズが駆動されるが、その際の駆動音が発生し、これがマイクロホンによって拾われる。つまり例えば動画と共に記録する音声に、本来混入してほしくないズーム音等が混入してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまで、ズーム機構を持つデジタルカメラ多くが、動画撮影時の録音で、このノイズの抑制に多くの技術提案があったが、多くはメカ的な工夫により機構の静音化を図るものや、または音源分離技術を使って大きな信号処理リソースを消費するものなどであった。しかしこのような技術ではコストアップや信号処理負担の増大など、実用上、広く採用することが難しく、またノイズ混入低減の効果が大きいとは言えなかった。
そこで本開示では、撮像装置において簡易な処理で、収音音声から、例えばズーム駆動音などの装置機構音が低減され、品質の良い収音音声が得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の撮像装置は、撮像素子部、及び被写体からの入射光を上記撮像素子部に結像させるレンズ系を有する撮像部と、上記撮像部の上記撮像素子部で光電変換された信号から撮像画像信号を生成する撮像信号処理部と、外来音を収音する外来音用マイクロホンで得られる音声信号を入力する第1のマイク入力部と、装置機構音を収音する機構音用マイクロホンと、上記機構音用マイクロホンで得られる音声信号を入力する第2のマイク入力部と、上記第1のマイク入力部からの音声信号について、上記第2のマイク入力部からの音声信号から生成した機構音キャンセル信号を用いて機構音成分が低減されたノイズ抑制音声信号を生成するノイズ抑制処理部とを備える。
【0006】
本開示の音声収音方法は、 撮像素子部、及び被写体からの入射光を上記撮像素子部に結像させるレンズ系を有する撮像部と、上記撮像部の上記撮像素子部で光電変換された信号から撮像画像信号を生成する撮像信号処理部とを有する撮像装置の音声収音方法として、外来音を収音する外来音用マイクロホンで得られる音声信号を第1のマイク入力部で入力し、装置機構音を収音する機構音用マイクロホンで得られる音声信号を第2のマイク入力部で入力し、上記第1のマイク入力部からの音声信号について、上記第2のマイク入力部からの音声信号から生成した機構音キャンセル信号を用いて機構音成分が低減されたノイズ抑制音声信号を生成する音声収音方法である。
【0007】
このような本開示の撮像装置では、機構音用マイクロホンを配置し、内部の機構音を収音する。この機構音を収音した音声信号を用いて機構音キャンセル信号を生成する。外来音用マイクロホンにも機構音は混入するが、この外来音用マイクロホンからの音声信号と機構音キャンセル信号を演算することで、ノイズ抑制音声信号、即ち機構音が低減された外来音としての音声信号を得ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、機構音用マイクロホンを撮像装置に設け、機構音用マイクロホンで得られた音声信号から機構音キャンセル信号を生成する。これを用いて外来音用マイクロホンからの音声信号に対してノイズ(機構音)の低減処理を行う。これにより信号処理負担の少ない簡易な処理で機構音低減効果の高いノイズ抑制音声信号を得ることができ、撮像装置における音声収音手法として実用に適している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本開示の実施の形態の概要の説明図である。
【図2】実施の形態の撮像装置のブロック図である。
【図3】実施の形態の音声信号処理部の構成の説明図である。
【図4】実施の形態のエレクトレットマイクロホン配置の説明図である。
【図5】実施の形態のMEMSマイクロホン配置の説明図である。
【図6】実施の形態の伝達関数測定部の動作の説明図である。
【図7】実施の形態のキャリブレーションモードの制御処理のフローチャートである。
【図8】実施の形態のノイズ抑制処理部のブロック図である。
【図9】実施の形態のノイズ抑制処理の説明図である。
【図10】実施の形態のズーム音波形と外部音声波形の説明図である。
【図11】実施の形態の音声信号処理部の他の構成の説明図である。
【図12】実施の形態のキャリブレーションモードへの移行処理のフローチャートである。
【図13】実施の形態のキャリブレーションモードの推奨提示処理のフローチャートである。
【図14】実施の形態のモード制御処理のフローチャートである。
【図15】実施の形態の外来音用マイクロホンの他の例の説明図である。
【図16】実施の形態のマイクロホン配置例の説明図である。
【図17】実施の形態のステレオ対応時のマイクロホン配置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態として、例えば動画撮像を行う撮像装置(ビデオカメラ)の例を挙げ、次の順序で説明する。
<1.実施の形態の撮像装置の概要>
<2.撮像装置の構成>
<3.キャリブレーションモードとノイズ抑制モード>
<4.音声信号処理部の他の構成例>
<5.モード制御例>
<6.各種マイクロホン態様>
<7.変形例>
【0011】
<1.実施の形態の撮像装置の概要>
図1で実施の形態の撮像装置の概要を説明する。
実施の形態の撮像装置1は、ユーザが動画撮像に使用する装置であり、図2で後述するように被写体撮像や、撮像した画像データの記録等、ビデオカメラとしての通常の動作を行う。
【0012】
画像撮像時には、外部音声も収音する。このため撮像装置1には、図1に模式的に示すように外来音用マイクロホン10Aが設けられる。もしくは撮像装置1にはマイク接続端子部が形成され、別体のマイクロホンが接続され、それが外来音用マイクロホン10Aとされてもよい。
【0013】
外来音用マイクロホン10Aは、被写体や周囲の音声を収音する目的で設けられる。このため別体のマイクロホンではなく、撮像装置1に外来音用マイクロホン10Aが内蔵装備される場合は、その外来音用マイクロホン10Aは、振動板が音響的に撮像装置筐体外部の空間と連通された状態で配置される。例えば撮像装置1の筐体22上に表出するように取り付けられたり、筐体22の内部であっても音通孔を介して外部空間に音響的に連通するように取り付けられる。即ち外来音用マイクロホン10Aの振動板が、外来音声に対して適切に反応して振動するように配置される。
なお、「音響的」に連通するとは、振動板が直接外部空間と接しているか、或いは風切り音の防止用のフィルムなどがあったとしても、外来音が妨げられずに振動板へ到来するような状態を言う。
【0014】
一般的なビデオカメラ等では、外来音用マイクロホン10Aは搭載されており、これによって動画撮像時等に音声収音も行う。
本実施の形態の場合、これに加えて、例えば筐体22の内部に機構音用マイクロホン10Bが配置される。機構音用マイクロホン10Bは、例えばズーム機構5aなどの装置機構の駆動音等、装置動作に付随する機構音を収音する。
また後述するが、機構音用マイクロホン10Bは、振動板が音響的に撮像装置1の筐体22の外部空間に対して閉ざされた状態で配置されており、外来音は殆ど収音しないようにされている。
【0015】
一例として図1のように、2つのマイクロホン(外来音用マイクロホン10A、機構音用マイクロホン10B)が、内部の基板21の上下に設置される。
本実施の形態では、この2つのマイクロホン10A,10Bの各出力信号Oa、Obに対して音声信号処理部12でノイズ抑制処理を加えることにより、高S/N(Signal to Noise Ratio)な収音信号を生成する。
この場合のS/Nの「S(信号)」とは、撮像対象の人物の音声や周囲環境音など録音対象成分(P)を意味し、「N(ノイズ)」は、例えばズーム機構5aなどの内部機械振動(源振動をVとする)を起因とする音の収音信号への混入成分である。
つまり図1で言えば、本実施の形態では、P起因の音の成分をなるべく大きく、V起因の音の成分をなるべく小さくした収音信号を生成する。
【0016】
なお、ここでは、振動Vは、筐体22内のメカ部品を伝達し基板21に到達することを前提としている。通常、単独のマイクロホンによる収音でズーム音の混入が大きいのは、この振動V→基板への伝達が多く、結果的に単独のマイクロホンユニット全体に振動が伝わり、慣性の法則により(振動板に対して)マイクロホンユニット全体が動いてしまい、相対的に振動板が動いて電圧が発生するためである。
【0017】
<2.撮像装置の構成>
実施の形態の撮像装置の構成を図2に示す。図2は撮像装置1の内部構成例を概略的に示すブロック図である。
図示するように撮像装置1は、表示部2、表示制御部3、操作入力部4、撮像部5、撮像信号処理部6、CPU(Central Processing Unit)7、メモリ部8、記録部9、外来音用マイクロホン10A、機構音用マイクロホン10B、マイク入力部11A、11B、音声信号処理部12、外部インターフェース13、ネットワーク通信部14、ビデオエンコーダ15、音声出力部16、システムバス20を有する。
【0018】
表示部2は、ユーザ(撮像者等)に対して各種表示を行う表示部であり、例えば撮像装置1の筐体上に形成されるLCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイデバイスにより形成される。またいわゆるビューファインダーとしてLCDや有機ELディスプレイ等で形成されてもよい。
表示制御部3は、この撮像装置1の全体の制御部であるCPU7の制御に基づいて、表示部2に各種表示を実行させる。例えば撮像記録した動画や静止画を再生表示させたり、静止画撮像の際のレリーズ待機中や動作撮像記録開始のスタンバイ中に撮像される各フレームの撮像画像データによる動画としてのスルー画(被写体モニタリング画像)を表示部2に表示させる。また表示制御部3は、各種操作メニュー、アイコン、メッセージ等、即ちGUI(Graphical User Interface)としての表示を表示部2に実行させる。
【0019】
操作入力部4は、ユーザの操作を入力する入力手段として機能し、入力された操作に応じた信号をCPU7等へ送る。
この操作入力部4としては、例えば撮像装置1の筐体22上に設けられる各種操作子や、表示部2に形成されたタッチパネルなどを有する。
筐体22上の操作子としては、例えば電源キー、ズームキー、シャッターボタン(レリーズボタン)、モードキー、メニュー操作キー等が設けられる。
またタッチパネルと表示部2に表示させるアイコンやメニュー等を用いたタッチパネル操作により、各種の操作が可能とされてもよい。
【0020】
撮像部5は、被写体光を受光し電気信号に変換する撮像素子(イメージセンサ)、被写体からの光を撮像素子に集光するためのレンズ系、レンズを移動させてフォーカス合わせやズーミングを行うための駆動機構、絞り機構などを有している。
撮像部5内のこれらの駆動機構は、全体の制御部であるCPU7からの制御信号に応じて駆動される。
撮像素子は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)型、CMOS(Complementary Metal OxideSemiconductor)型などの撮像素子とされる。
【0021】
撮像信号処理部6は、撮像部5の撮像素子で得られた電気信号についてA/D変換、ISOゲイン調整、その他の各種信号処理を行い、撮像画像信号DT−Vとしてビデオエンコーダ15に供給する。
【0022】
外来音用マイクロホン10Aは上述したように主に外来音を収音する。外来音用マイクロホン10Aで得られた音声信号はマイク入力部11Aで入力段増幅やA/D変換が行われてマイク出力信号Oaとして音声信号処理部12に供給される。
機構音用マイクロホン10Bは上述のように主に筐体内部の機構音を収音する。機構音用マイクロホン10Bで得られた音声信号はマイク入力部11Bで入力段増幅やA/D変換が行われてマイク出力信号Obとして音声信号処理部12に供給される。
【0023】
音声信号処理部12は、例えばDSP(Digital Signal Processor)で構成され、CPU7の制御に基づき各種の音声信号処理を行う。例えば音声信号処理部12としてのDSPは図3のように、信号処理機能として、AGC(Automatic Gain Control)処理部12a、レベル調整部12b、音質・音響効果処理部12c、ノイズ抑制処理部12d、伝達関数測定部12eとしての機能が内部プログラムにより実行される。
AGC処理部12aは、収音信号のAGC処理を行い、例えば過大な入力音声等を調整する。
レベル調整部12bは収音信号の入力レベルを調整する。
音質・音響効果処理部12cは、イコライジング処理やエコー、リバーブ処理等を収音信号に対して実行し、所望の音質や音響効果を付与する。
ノイズ抑制処理部12dは、本実施の形態において、図1で述べたように機構音をキャンセルした収音信号を得る処理を行う。詳しくは後述する。
伝達関数測定部12eは、機構音キャンセルに用いる伝達関数情報を得るために、2つのマイクロホン10A,10B間の伝達関数の測定を行う。詳しくは後述する。
【0024】
このような音声信号処理部12では、CPU7からの制御信号Scに基づいて各処理機能(12a〜12e)が実行される。通常の撮像時は、AGC処理部12a、レベル調整部12b、音質・音響効果処理部12cが行われて、撮像画像信号DT−Vと共に記録や送信する音声信号DT−Aが得られる。この音声信号DT−Aはビデオエンコーダ15に供給される。
特に本実施の形態では、後述するノイズ抑制モードが指示される期間は、この音声信号DT−Aは、ノイズ抑制処理部12d部によってノイズ抑制処理が行われた信号となる。
【0025】
ビデオエンコーダ15は、記録や送信出力のためのデータエンコード処理を行う。ビデオエンコーダ15には撮像画像信号DT−Vや音声信号DT−Aが供給され、これらの信号についてエンコード処理を行う。例えばMPEG(Moving Picture Experts Group)方式の圧縮エンコード等を行ってビデオファイル(動画像及び音声)を生成する。
このビデオファイルは、記録部9に記録されたり、ネットワーク通信部14や外部インターフェース13を介して外部に送信出力される。
またビデオエンコーダ15は撮像画像信号DT−Vをスルー画用の信号として表示制御部2に転送して、表示部3でのスルー画表示を可能とする。
【0026】
メモリ部8は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリなど、CPU7が使用、参照する内部メモリを包括的に示している。
例えばRAMは、CPU7の各種データ処理の際の作業領域として、データやプログラム等を一時的に格納する。
ROMやフラッシュメモリ(不揮発性メモリ)には、CPU7が各部を制御するためのOS(Operating System)や、外部通信、ネットワーク通信等に必要なアプリケーション等を記憶する。
フラッシュメモリには、さらに画像ファイル等が記憶される場合もある。また後述する伝達関数情報や、音声信号処理部12で用いるフィルタ係数等の情報がフラッシュメモリに記憶される場合もある。
【0027】
記録部9は、例えば不揮発性メモリ等からなり、ビデオファイル等のコンテンツファイル、その画像ファイルの属性情報及びサムネイル画像等を記憶する記憶領域として機能する。
記録部9の実際の形態は多様に考えられる。例えば記録部9は、撮像装置1に着脱できるメモリカード(例えば可搬型のフラッシュメモリ)と、該メモリカードに対して記録再生アクセスを行うカード記録再生部による形態でもよい。また撮像装置1に内蔵されている形態としてHDD(Hard Disk Drive)などとして実現されることもある。
また後述する伝達関数情報や、音声信号処理部12で用いるフィルタ係数等の情報が記録部9に記憶される場合もある。
【0028】
外部インターフェース13は、パーソナルコンピュータや外部ストレージ機器等との外部デバイスとの間で各種データ通信を行う。撮像装置1は、外部インターフェース13による外部機器との通信で、撮像記録したビデオファイル等を外部機器に転送したり、各種情報を外部機器から入力することが可能である。
ネットワーク通信部14は、例えばインターネット、ホームネットワーク、LAN(Local Area Network)等の各種のネットワークによる通信を行う。
【0029】
音声出力部16は、CPU7の指示に基づいて、メッセージ音声や電子音によりユーザに音声告知を行う。或いはビデオファイルの再生時に、動画等とともに記録されている音声データの再生出力を行う。
【0030】
CPU7は、例えばメモリ部8内に記憶されたプログラムを実行することで、この撮像装置1全体を統括的に制御する。
例えばCPU7は、ユーザの操作に応じた撮像動作や撮像記録した画像ファイルの再生動作、さらに外部機器通信やネットワーク通信としての通信動作等について、必要各部の動作を制御する。
さらに本実施の形態の場合、CPU7は、音声収音に関して、後述するノイズ抑制モードの制御処理や、キャリブレーションモードの制御処理、ノイズ抑制モードとキャリブレーションモードの切換や設定指示などを行う。つまりCPU7は請求項でいうキャリブレーション制御部やモード制御部としても機能する。
【0031】
システムバス20は、CPU7などの各ブロックを相互に接続し、それぞれのブロック間での信号の授受を可能とする。
【0032】
この撮像装置1に搭載される外来音用マイクロホン10A、機構音用マイクロホン10Bについて説明する。
これらのマイクロホン10(10A及び10B)としてはどのようなマイクロホンを用いても良いが、一例としてエレクトレットマイクロホンやMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)マイクロホンが考えられる。
【0033】
図4Aはエレクトレットマイクロホンの例を示している。
マイクロホンユニットは全指向性とすると、通常マイクロホンユニットには音を取り入れる音孔32が1つ開いており、ここから入ってきた音が振動板(振動膜)31に到達し、これを振るわせることで、出力に電圧が発生する。
図示のマイクロホン10は上面側が音孔32とされ、内部の振動板(振動膜)31を空間に音響的に連通させている。
【0034】
このようなマイクロホン10を用いる場合、図4B、図4Cに示すように配置する。基板21とは、撮像装置1内で、図1の構成を実現する電子部品23を配置した基板である。この基板21に対し、外来音用マイクロホン10Aは、音孔32が解放されるように底面側をマウントする。
一方、機構音用マイクロホン10Bは、音孔32が基板21でふさがれるように、音孔32側が基板に接する状態でマウントする。
つまり基板21の上面側、下面側において、音孔の方向を揃えて各マイクロホン10A、10Bを設置する。
これにより外来音用マイクロホン10Aは外部の音を収音しやすいように振動板31が表に出ている一方、機構音用マイクロホン10Bは、基板設置時に音孔32が塞がれる。
なお、このようにマイクロホン10A、10Bを配置するのは基板21に限られない。撮像装置1の筐体内の基板以外の構造物であってもよい。
【0035】
この場合、両マイクロホン10A、10Bは、同一の基板・構造物に設置されているため、ほぼ同じズーム機構5aからの振動を受けているが、録音対象の音に関しては、外来音用マイクロホン10Aは大きく収音できるものの、機構音用マイクロホン10Bは筐体内部であり、かつ音孔が塞がれているため、ほとんど録音目的の音声は入力されない。このことを利用して、後述のように高S/Nの収音信号を信号処理により生成する。
【0036】
以上の図4では小型エレクトレットマイクロホンを示したが、現在ではMEMSマイクの使用も一般化しつつあり、図5のようにこれを使用することもできる。
図5AはMEMSマイクロホンの構造を模式的に示している。MEMSマイクロホンとしては、上面音孔型のものや基板面音孔型のものが存在する。
いずれの型も内部空間に振動板31が形成され、音孔32からの音によって振動する。上面音孔型は、図示のように基板21に装着するランド33とは逆の上面側に音孔32が形成されている。基板面音孔型は基板21に装着するランド33とは同じ面に音孔32が形成されている。これらは音響・電気特性はほぼ同じであるにも関わらず、実装上の都合に応じるために製造されるものである。
本実施の形態においては、このようなMEMSマイクロホンとしての2つのタイプを利用することが好適である。
【0037】
図5B、図5Cに示すように、外来音用マイクロホン10Aは上面音孔型とし、これを基板21に実装する。機構音用マイクロホン10Bは基板面音孔型を用い、これを図示のように基板21の裏側に実装する。
これによって同一基板上に、外来音の収音に好適な外来音用マイクロホン10Aと、外来音が収音されにくい機構音用マイクロホン10Bを実現できる。実装的にも利便性が高い。
【0038】
なお、図4,図5で説明した各マイクロホン10A、10Bは、なるべく近い応答特性(ゲイン、周波数特性)であることが好ましいが、現実的な音響部品製造では、特性のばらつきがでることはやむを得ない。このため、音声信号処理部12では特性誤差を解消して適切なノイズ抑制処理を実現するため、後述のキャリブレーションモードを行うことが好ましい。
【0039】
<3.キャリブレーションモードとノイズ抑制モード>
本実施の形態では、音声信号処理部12において、図3で示したようにノイズ抑制処理部12d、伝達関数測定部12eとしての機能が実装され、これらによりキャリブレーションモードとノイズ抑制モードとしての処理が行われる。
ここで、ノイズ抑制モードとは、ズーム駆動音などの機構音を収音音声からキャンセルする処理を行うモードであり、一方、キャリブレーションモードとは、ノイズ抑制モードが適切に実行されるようにするため、あらかじめ伝達関数情報を得る動作を行うモードである。
以下では、伝達関数情報としては、機構音用マイクロホン10Bから外来音用マイクロホン10Aへの伝達関数の、周波数軸表現または時間軸表現での応答の情報とする例で説明する。なお、伝達関数の応答の情報とは、周波数軸や時間軸上でこれを簡易化・修正した応答の情報も含む。
【0040】
なお、キャリブレーション(伝達関数測定)モード、と、ノイズ抑制モードは、音声信号処理部12として機能するたとえばDSP等の演算部に対してプログラム変更を行うことで実現できる。例えばCPU7が音声信号処理部12に対してノイズ抑制モードを指示することによりノイズ抑制処理部12dとしての動作が実行され、またキャリブレーションモードを指示することにより、伝達関数測定部12eとしての動作が実行される。
【0041】
まずキャリブレーションモードについて説明する。
キャリブレーションモードは、主に、本実施の形態の撮像装置1の生産工場や、サービスセンターで実施される、キャリブレーション(伝達関数測定)専用モードである。
特に、カメラのズーム音は、工場でのメカ的な取り付け方など、ズーム音(ノイズ)自体に個体差があるため、各個体を工場で組み上げた後、実際に、工場内の静かな場所(または専用の測定ボックスなど)などの静音環境で、その特性測定を行う。具体的には、機構音用マイクロホン10Bから外来音用マイクロホン10Aへのズーム音の伝達関数を測定する。
そして、この測定データをシステムに記憶しておくことで、組み上げによるメカの振動の伝達具合やズームモーター部の特性個体差、両マイクロホン10A、10Bの電気音響特性のばらつき等を吸収し、その後のノイズ抑制モードで適切な機構音キャンセルが実行されるようにする。
【0042】
キャリブレーションモードの動作を図6,図7で説明する。
図6Aは伝達関数測定部12eで実行される処理の流れを示している。キャリブレーションモードの実行時には、図6Bに示すように、静音環境においてズーム機構5aをテスト作動させる。このときに各マイクロホン10A、10Bで収音される音声信号が、マイク入力部11A,11Bからの出力信号Oa,Obとして音声信号処理部12に供給されるが、音声信号処理部12の伝達関数測定部12eは、この出力信号Oa,Obを用いて伝達関数測定を行う。
【0043】
図6Aに示すように伝達関数測定部12eは、出力信号Oaについて帯域制限フィルタ処理S1で不要帯域をカットする。すなわちLPF(Low Pass Filter)処理およびHPF(High Pass Filter)処理により、ズーム音に相当する帯域を抽出する。そしてスムーシング処理S3として周波数軸でのスムーシングを行う。
同様に伝達関数測定部12eは出力信号Obについて帯域制限フィルタ処理S2で不要帯域をカットしてズーム音に相当する帯域を抽出し、スムーシング処理S4を行う。
そして除算処理S5としてOa/Obの演算を行って、その結果から伝達関数算出処理S6、時間軸FIR係数算出処理S7を行う。
【0044】
この図6Aの処理は、静音環境下にてズーム機構5aをテスト作動させたときの、両マイクロホンの出力を除算することにより「ズームノイズ」に関わる「機構音用マイクロホン10Bから外来音用マイクロホン10Aへの伝達関数」を測定するものである。
つまり、
(「振動V→外来音用マイクロホン10A」の伝達関数)/(「振動V→機構音用マイクロホン10B」の伝達関数)=(「機構音用マイクロホン10B→外来音用マイクロホン10A」の伝達関数)
を意図したものである。ここでは、この伝達関数をHioとし、これの時間軸のインパルス応答としての表現をhioとしている。
本例では、このキャリブレーションモードの動作で求められた、時間軸インパルス応答hio、又は伝達関数Hioの一方又は両方を、伝達関数情報としてメモリ部8または記録部9に記憶しておき、後のノイズ抑制モード時に用いることができるようにする。
【0045】
なお、図6Aに示したとおり、除算処理S5の前にスムージング処理S3、S4において周波数軸でスムージングを掛けていることにより、除算後のHio特性の複雑化を防ぎ、同時に時間軸hioの応答がなるべく短くおさまるように工夫している。
同様の工夫として、伝達関数やインパルス応答は、計測したそのままの特性ではなく、例えばS/Nの関係から測定信頼性が薄い低域や高域に関して、周波数軸または時間軸でこの帯域をカットした上でHio、hioを設計することは当然に考えられる。また特定帯域の位相情報を時間軸で表現しようとすると、不用意にフィルタのタップ数が長くなったり、実行の結果かえってノイズが増えてしまうような場合には、その帯域のゲインを落としてキャンセルを行わない、などを考慮してHio、hioとすることもできる。
具体的にいえば、伝達関数Hioを周波数軸で簡易化して、記憶する「Hio」としてもよい。また、伝達関数Hioを周波数軸で簡易化してから時間軸変換して「hio」を得てもよいし、伝達関数Hioを時間軸(hio)に変換し、「hio」を簡易化して記憶する「hio」としてもよい。
つまり、キャリブレーションモードで求める伝達関数情報は、伝達関数の周波数軸表現または時間軸表現での応答の情報であるが、その応答の情報とは、後述のノイズ抑制モードでのフィルタ処理の簡易化等を考慮して、周波数軸表現または時間軸表現での応答情報を周波数軸や時間軸上で簡易化・修正した応答の情報でもよい。
【0046】
図7は、このようなキャリブレーションモードを実行させるためのCPU7の制御処理例を示している。
キャリブレーションモードを発動する場合、CPU7はまずステップF1として撮像部5を制御し、ズーム機構5aのテスト駆動を実行させる。これとともにCPU7はステップF2で音声信号処理部12に伝達関数測定を指示する。当該制御に応じて音声信号処理部12では伝達関数測定部12eとしての機能が実行され、上記図6Aに示した伝達関数測定部Hioおよび時間軸インパルス応答hioが算出される。音声信号処理部12はこれらの測定(Hio,hio算出)が完了したら、その旨(もしくは算出値)をCPU7に通知する。
CPU7は、算出完了検知により処理をステップF3からF4に進め、撮像部5におけるズーム機構5aのテスト駆動を終了させる。そしてステップF5でCPU7は、算出された時間軸インパルス応答hio(又は伝達関数Hio、あるいは両方)をメモリ部8におけるフラッシュメモリ、あるいは記録部9に記憶させる。
以上でキャリブレーションモードの動作を終了する。
【0047】
なお、このようなキャリブレーションモードの実行は、工場のような環境では必須であるが、当該の伝達関数に経年変化があった場合でも、ユーザが静音環境で実行することで、対応可能である。このキャリブレーションモード実行タイミングは、システム自体が、ある程度の年月において測定を促すためのアラームをタイマーにて提示しても良いし、残留ノイズがある程度大きくなった、とシステムが判断し、この測定プロセスを促して自動的に実行する場合も考えられる。もちろんユーザが任意タイミングで実行しても良い。これらについては後述する。
【0048】
次に、実際に、このあらかじめ測定され、システムに記憶された時間軸インパルス応答hioを使って運用する、通常の動画録画(録音)時に使用されるノイズ抑制モードについて説明する。
なお、以下の処理では時間軸インパルス応答hioが記憶されているとして説明するが、伝達関数Hioのみが記憶されている場合は、ノイズ抑制モード開始時に、伝達関数Hioから時間軸インパルス応答hio(より具体的には次に説明する伝達関数相当フィルタ42のフィルタ係数)を算出する処理を行うこととすればよい。さらには、伝達関数Hioを時間軸変換した後、さらにそれを簡易化した応答hioを算出するようにしてもよい。
また上述のように簡易化した応答「hio」が記憶されている場合や、簡易化した応答「hio」を算出する場合には、以下の説明でいう「時間軸インパルス応答hio」を、「簡易化した応答hio」に置き換えて考えればよい。
【0049】
図8に音声信号処理部12におけるノイズ抑制処理部12dの構成(処理手順)を示している。ノイズ抑制処理部12dは、外来音用マイクロホン10Aについての出力信号Oaについて、位相・遅延調整フィルタ41で位相および遅延時間調整を行う。
また機構音用マイクロホン10Bについての出力信号Obについて、伝達関数相当フィルタ42でフィルタリングを行う。伝達関数相当フィルタ42は、時間軸インパルス応答hioが係数としてセットされたFIRフィルタである。すなわち上述のキャリブレーションモードで記憶された時間軸インパルス応答hioに基づいて、CPU7は制御信号Scによって、伝達関数相当フィルタ42の係数設定を行う。
【0050】
そして減算器43で、位相・遅延調整フィルタ41の出力から伝達関数相当フィルタ42の出力を減算する。さらにイコライザ44でイコライジングを行って処理後の出力(ノイズ抑制音声信号Sa)とする。このノイズ抑制音声信号Saは、ズーム音等の機構音が低減された収音信号である。
音声信号処理部12では、このノイズ抑制音声信号Saについて、例えばレベル調整部12bや音質・音響効果処理部12cの処理等が行われて音声信号DT−Aが出力される。この音声信号DT−Aが、例えばビデオエンコーダ15で記録用のエンコードされる対象となり、あるいは外部送信される。
【0051】
すなわちこの図8に示す処理は、実際の両マイクロホン10A,10Bの出力のうち、機構音用マイクロホン10Bの出力に時間軸インパルス応答hioをFIRフィルタの係数として掛けて、外来音用マイクロホン10Aの出力から時間軸上で減算することで、ズーム音等のノイズが低減されたノイズ抑制音声信号Saを得るものである。
なお位相・遅延調整フィルタ41は、この場合に、両者の信号間(出力信号Oa,Ob間)のディレイまたは位相を調整するために、外来音用マイクロホン10Aの出力信号Oaに対して遅延処理や移相処理を行って時間軸での調整を行うものである。
またイコライザ44は、減算器43での減算信号の音を整えるためのイコライジングを行うものである。
【0052】
ここで改めて、キャリブレーションモード及びノイズ抑制モードの動作を、式で説明する。
上述の通り、外来音用マイクロホン10A、機構音用マイクロホン10Bの出力をOa,Obとし、さらに図9にも示しているが、以下のように定義する。
Ma,Mb:外来音用マイクロホン10A、機構音用マイクロホン10Bのマイク感度(周波数特性)
Pa,Pb:各マイクロホン10A、10Bの配置位置における録音対象物(つまり外来音)の音圧
Va,Vb:各マイクロホン10A、10Bの配置位置における機構由来振動成分(例えばズーム機構駆動時の振動成分(音圧相当))
【0053】
すると、出力信号Oa,Obについては、
Oa=Ma(Pa+Va)
Ob=Mb(Pb+Vb)
となる。
【0054】
キャリブレーションモードを、無響室のような静かな場所、または、吸音処理を施した無響箱の中で行うことを前提とすると、理想的には、録音対象物である外来音がないためPa=Pb=0となる。
MaとMbの特性・感度の違いを考えて、ここでは、便宜的にα=Ma/Mbとし、αを求めるのを目的とする。
図4又は図5のようなマイクロホン10A、10Bの取り付け構成において、ズーム動作等による振動源Vから、機械振動として基板21へ振動が伝わり、表裏にて各マイクロホン10A、10Bが振動を受けて、音圧相当の電圧を出力するとする。この場合、両マイクロホン10A、10B位置での機械的な振動の伝わり方は同じ、という意味ではVa=Vbである。
この時、
α=Ma/Mb=Oa/Ob
として求めることができる。
周波数特性で、この除算を行うことにより、両者の特性違いを示すαを求めることができる。以上が図6Aの処理の内容ということができる。
【0055】
次に図8の構成によるノイズ抑制モードの処理では、信号処理演算にて、下記計算を求めることによりズーム音に関してノイズを抑制し、録音対象物の音声が強調された信号Saを求めることができる。
ノイズ抑制音声信号Sa=Oa−α・Ob
=Ma・Pa+Ma・Va−(Ma/Mb)Mb・Pb−(Ma/Mb)Mb・Vb =Ma(Pa−Pb)
ここで、機構音用マイクロホン10Bは音孔32がふさがれているため、Pa>>Pbである。
つまり、Sa≒Ma・Paとなり、結果的には目的の音声が効率よく求められることになる。
【0056】
実際にこの両マイクロホン10A、10Bで測定した時間軸波形のデータ例を図10に示す。
図10では、外来音用マイクロホン10Aの出力信号Oaと、機構音用マイクロホン10Bの出力信号Obについて、静音環境下でズーム駆動させた際の音声波形と、通常の外部音声収音時の音声波形を示している。
外来音用マイクロホン10Aで収音した音(出力信号Oa)についてみると、録音対象である音声信号(外来音声)に対しては小さいレベルであるものの、ズーム音が混入して居ることがわかる。これはノイズとして気になるレベルである。
一方、機構音用マイクロホン10Bで収音した音(出力信号Ob)にも、ほぼ同レベルのズーム音が入っている。ところが機構音用マイクロホン10Bで収音した音としては外来音は殆ど入っていない。
したがって、この波形から見てもわかるとおり、ズーム音の特性を両者合わせて、上述の式、Sa=Oa−αObを実行することで、外来音声信号にはあまり影響がなく、ズーム音のみが効率よく抑制できる。
【0057】
結局、αObとは、図8で言えば伝達関数相当フィルタ42の出力であり、つまり出力信号Obについて時間軸インパルス応答hioのフィルタ処理を行った信号である。換言すれば、機構音用マイクロホン10Bで得られるズーム音と同一の音声信号成分が、外来音用マイクロホン10Aにおいて収音されているレベルを示す信号ともいえる。
このαObが機構音キャンセル信号となる。そしてOa−αObとは、減算器43での減算処理に相当する。
【0058】
以上の説明から理解されるように、本実施の形態では、音声信号処理部12(ノイズ抑制処理部12d)は、ノイズ抑制モードの処理として、マイク入力部11Aからの音声信号について、マイク入力部11Bからの音声信号から生成した機構音キャンセル信号(αOb:伝達関数相当フィルタ42の出力)を用いて、ズーム音等の機構音成分が低減されたノイズ抑制音声信号Saを生成する。
機構音キャンセル信号αObは、機構音用マイクロホン10Bから外来音用マイクロホン10Aへの伝達関数に基づくフィルタ処理を、出力信号Obに与えたものである。
具体的にはノイズ抑制処理部12dは、当該フィルタ処理で、インパルス応答hioを出力信号Obに畳み込んで機構音キャンセル信号を生成する。そして該機構音キャンセル信号を出力信号Oaから減算することで、ノイズ抑制音声信号Saを生成する。
このようなノイズ抑制モードの動作によって、録画時等に得られる音声信号DT−Aは、ズーム機構5a等の機構音の混入が著しく低減されたものとなる。従ってユーザは撮像装置1を用いて撮像する際に、動作音に気にせずにズーム操作を行うことができ、またズーム動作が行われても、録音される音声にズーム音が混入せず、品質のよい録音音声を得ることができる。
【0059】
また、ノイズ抑制モードでの伝達関数相当のフィルタ処理のためには、キャリブレーションモードで得られたインパルス応答hioを伝達関数情報として記憶しておくことで、適切に実行できる。
つまりキャリブレーションモードで伝達関数Hio、インパルス応答hioを求めることで、撮像装置1の個体差に応じた伝達関数を把握し、測定値に基づいて、伝達関数相当フィルタ42の係数設定を最適化して実行できる。このためノイズ抑制モードでは撮像装置1の個体状況に応じて得ることができ、ノイズ低減処理が適切に実行されるものとなる。
【0060】
また、CPU7によるモード制御で、音声信号処理部12(例えばDSP)において、ノイズ抑制モードの処理と、キャリブレーションモードの処理が実行されることで、構成上のハードウエア負担を最小限にして本実施の形態の動作を実行可能な撮像装置を提供できる。
【0061】
また機構音用マイクロホン10Bは、振動板31が音響的に撮像装置筐体22の外部の空間に対して閉ざされた状態で配置されていることで、外来音をほとんど収音しないで内部の振動Vによるノイズ音声を適切に収音できる。これにより機構音キャンセル信号は、上述のαOb、つまり出力信号Obにhioフィルタリングを行うものとして求める場合に、適切な機構音キャンセル信号となる。
一方、外来音用マイクロホン10Aは、振動板31が音響的に撮像装置筐体22の外部の空間と連通された状態で配置されていることで、外来音を適切に収音できる。
また機構音用マイクロホン10Bは、基板面音孔型のMEMSマイクロホンとされて基板面側が撮像装置筐体内の基板又は内部構造物に取り付けられること、及び外来音用マイクロホン10Aは、上面音孔型のMEMSマイクロホンとされて下面側が撮像装置筐体内の基板又は内部構造物に取り付けられることで、簡易な構成でマイクロホン10A、10Bを配置できる。
【0062】
<4.音声信号処理部の他の構成例>
音声信号処理部12の他の構成例を図11A,図11Bに示す。
図11Aは、音声信号処理部12にAGC処理部12a、レベル調整部12b、音質・音響効果処理部12c、ノイズ抑制処理部12dが設けられる例である。すなわち先の図3の例と比較して伝達関数測定部12eが設けられていない。
【0063】
例えば撮像装置1におけるズーム機構5a等の機構音、あるいは低減目的とする機構音の周波数特性に個体差が無いような場合、あるいは個体差に厳密に対応する必要が無いような場合は、必ずしも個々に伝達関数測定を行わなくてもよい。
すなわちノイズ抑制モードで用いるインパルス応答hio(伝達関数相当フィルタ42のフィルタ係数)が固定的であってもよい。そのような場合は、あらかじめ設計事項としてノイズ抑制処理部12dでのフィルタ係数を固定設定すればよく、伝達関数測定は不要である。あるいは固定のインパルス応答hio等の伝達関数情報をメモリ部8のフラッシュメモリや記録部9に記憶させておき、ノイズ抑制モード実行時に、記憶されている伝達関数情報に応じてフィルタ係数設定を行えばよい。
このような場合、音声信号処理部12は図11Aのような構成とすればよい。
【0064】
図11Bは、図3の構成に加えてノイズ測定部12fを有する例である。
ノイズ測定部12fは、ノイズ抑制モードの動作時に、ノイズ抑制音声信号Saについてノイズレベル測定を行う処理部である。
このように音声信号処理部12において、ノイズレベル測定を行う機能を備えるようにすることで、後述する図12C、図13Bのようなモード制御処理が可能となる。
【0065】
なお、図3、図11A、図11Bにおいて、AGC処理部12a、レベル調整部12b、音質・音響効果処理部12cは、一般的な音声信号処理として実行される機能を示している。本実施の形態に相当する撮像装置1においては、音声信号処理部12においてこれらの3つの機能が必ずしもすべて搭載される必要があるわけではない。
また、一般的な音声信号処理として、図示及び説明していない処理機能が追加されることも当然に考えられる。
本実施の形態の音声信号処理部12としては、少なくともノイズ抑制処理部12dを備える。また伝達関数測定部12eは備える場合と備えない場合の両方が考えられる。また伝達関数測定部12eは備える場合と備えない場合の両方において、ノイズ測定部12fを備えるようにすることも考えられる。
また、伝達関数測定部12eやノイズ測定部12fは音声信号処理部12(すなわち収音信号から録画用等の音声信号DT−Aを生成するための処理ブロック)の機能として説明したが、例えばCPU7等、音声信号処理部12とは別の演算処理装置において実現してもよい。
【0066】
<5.モード制御例>
続いて、キャリブレーションモードが実行される撮像装置1において、キャリブレーションモードとノイズ抑制モードのモード制御について各種の例を述べる。
【0067】
例えば図2、図3で示した撮像装置1では、工場出荷前の調整行程でキャリブレーションモードが実行されるとしたが、それ以外の機会にキャリブレーションモードが実行されてもよい。図12は、CPU7が音声信号処理部12にキャリブレーションモードを実行させる場合の処理例を示している。
【0068】
図12Aは、ユーザの操作に応じて実行する例である。CPU7はユーザの操作入力部4からの操作によりキャリブレーションモードの実行を指示する操作を行ったことを検知したら、処理をステップF10からF11に進め、キャリブレーションモード処理、すなわち図7で説明した処理を実行する。
【0069】
図12Bは、所定期間経過を実行のトリガとする例である。
CPU7はステップF20で、前回のキャリブレーション実行時からの期間を判定する。
そしてステップF21で所定期間経過していると判定した場合は、ステップF22でキャリブレーションモード処理(図7の処理)を実行する。キャリブレーション実行後は、その後のステップF20の判断のために、ステップF23でキャリブレーション実行日時の情報を記憶する。
この場合、例えばCPU7がステップF21で、前回実行時より「半年経過」「一年経過」などを判断するようにすれば、その半年や一年ごとに定期的にキャリブレーションモードの動作が実行されることになる。
【0070】
図12Cは、ノイズ悪化に応じてキャリブレーションモードを実行する例である。これは図11Bのように音声信号処理部12にノイズ測定部12fが実装されている場合(ノイズ測定が可能な場合)に実行できるモード制御例である。
CPU7は定期的にステップF30のノイズレベルの測定結果の取り込み処理を行い、現時点でのノイズ測定結果を確認する。その結果、S/N悪化と判断した場合は、CPU7はステップF31からF32に進み、キャリブレーションモード処理(図7の処理)を実行する。
【0071】
例えば以上の各例のようにCPU7は、ユーザの操作、キャリブレーションの不実行継続期間に応じて、或いは音声信号品質測定(ノイズレベル測定)結果に応じて、キャリブレーションモード処理を実行し、伝達関数情報(Hio,hio)を更新することで、ノイズ音の経時変化等に対応したノイズ低減処理が可能となる。
【0072】
なお、図12B、図12Cの処理ではユーザの意思に関係なくキャリブレーションモード処理が発動されてしまうため、図13A,図13Bのような処理としてもよい。
図13Aの処理は、CPU7はステップF40で、前回のキャリブレーション実行時からの期間を判定する。
そしてステップF41で所定期間経過していると判定した場合は、ステップF42でキャリブレーションの実行推奨提示をユーザに対して行うための制御を行う。例えば表示部3に「キャリブレーション実行をお勧めします」等の表示を実行するように表示制御部2に指示する。あるいは同様のメッセージ内容の音声、もしくは警告としての電子音等を音声出力部16から出力させる。あるいはその両方の制御を行う。
【0073】
図13Bの処理は、CPU7は定期的にステップF50のノイズレベルの測定結果の取り込み処理を行い、現時点でのノイズ測定結果を確認する。その結果、S/N悪化と判断した場合は、CPU7はステップF51からF52に進み、キャリブレーションの実行推奨提示をユーザに対して行うための制御(表示制御又は音声出力制御又はその両方)を行う。
【0074】
ユーザにとっては、推奨提示を見聞きすることで、キャリブレーションモードを実行した方がよいことを知り、任意の時点で実行指示操作を行う。結局図12Aの処理でキャリブレーションモード処理が実行されることになる。
このように、キャリブレーションの不実行継続期間に応じて、或いは音声信号品質測定結果に応じて、キャリブレーション実行推奨の提示出力制御を行い、その後ユーザ操作に応じてキャリブレーションモード処理が実行されるようにすることで、ユーザの都合に応じてキャリブレーションモード処理が実行できる。
【0075】
続いてキャリブレーションモードとノイズ抑制モードの切換制御について述べる。
図14Aは、基本的には常時ノイズ抑制モードとする例である。
CPU7は通常はステップF62として、音声信号処理部12にノイズ抑制モードを指示しておく。つまりノイズ抑制処理部12dが通常的に作動する状態としておく。
そしてCPU7はステップF60としてキャリブレーションモード実行のトリガを検知したときのみステップF61でキャリブレーションモードとしての処理(図7の処理)を実行する。
ステップF60で検知するトリガとは、例えば図12Aのユーザ操作であったり、図12Bの所定期間経過、あるいは図12Cのノイズ悪化判定等のことである。
【0076】
この場合、ノイズ抑制処理部12dは、キャリブレーションモード処理時以外は常時動作しているが、上述の実施の形態において音質的な問題はない。
例えばズーム音をノイズとして抑制する目的を考えると、ズーム音は常時発生するわけではなく、ズーム操作を行った場合のみである。ところが図10で説明したように機構音用マイクロホン10B側は、外来音はほとんど収音しない。このため、ズーム駆動が行われていない期間(ノイズ未発生期間)であっても、出力信号Obはきわめて低いレベルであり、実質的に減算器43での減算処理を行ったとしても、出力信号Oaに変化は無いためである。その上で、ノイズ発生時(ズーム駆動時)は、適切なノイズ抑制が実現される。
【0077】
一方、例えばノイズ発生時のみにノイズ抑制モードの指示が行われるようにしてもよい。図14Bには、ノイズとしてズーム音を対象とし、ズーム駆動時のみノイズ抑制モードとする例を示している。
CPU7はステップF70ではキャリブレーションモード実行のトリガの有無を判断し、トリガを検知したときのみステップF71でキャリブレーションモードとしてキャリブレーションモード処理(図7の処理)を実行する。
その他の期間では、ステップF72でユーザのズーム操作を監視している。
ユーザがズーム操作を行ったら、CPU7はステップF73で音声信号処理部12に対してノイズ抑制モードを指示する。すなわちノイズ抑制処理部12dの処理を実行させる。そしてCPU7はステップF74でユーザの操作に応じたズーム駆動を、撮像部5に指示し、ズーム機構5aを駆動させる。
ズーム駆動が終了したら、ステップF75からF76に進み、CPU7は音声信号処理部12に対してノイズ抑制モードの解除、つまりノイズ抑制処理部12dの処理の終了を指示する。
【0078】
このような処理によれば、ズーム駆動時のみ、音声信号処理部12でのノイズ抑制処理部12dの処理が実行されるため、常時的に行われる音声信号処理部12の処理量を軽減できる。
なお、ここではズーム音を対象としてズーム駆動時にノイズ抑制モードとする例を挙げたが、抑制対象とする機構音に応じて、その機構音発生時にノイズ抑制モードとする例は各種考えられる。例えばオートフォーカス、オートアイリスなどのレンズや絞りの駆動制御時、あるいは内蔵するHDDの動作音発生時に、ノイズ抑制モードとすることなども考えられる。
【0079】
<6.各種マイクロホン態様>
図1の実施の形態の構成例では、撮像装置1に外来音用マイクロホン10Aと機構音用マイクロホン10Bを備える構成を述べたが、外来音用マイクロホン10Aは、必ず下撮像装置1に内蔵されなくてもよい。
例えば図15Aは、撮像装置1にはマイク接続端子19が設けられ、これに別体の外部マイクロホン10ASが接続される例である。外部マイクロホン10ASで得られる音声信号は、マイク入力部11Aから出力信号Oaとして音声信号処理部12に供給される。
すなわち撮像装置1としては、機構音用マイクロホン10Bは内蔵するが、図1等で説明した外来音用マイクロホン10Aは内蔵されなくて、外付けのマイクロホンが用いられてもよい。
【0080】
また図15Bでは、撮像装置1に外来音用マイクロホン10Aは設けられるが、接続端子19及びスイッチSWも設けられる例を示している。例えば接続端子19に図15Aに示したような外部マイクロホン10ASが接続された場合は、スイッチSWが接続端子側とされ、外部マイクロホン10ASによる収音信号が、マイク入力部11Aから出力信号Oaとして音声信号処理部12に供給されることとなる。外部マイクロホン10ASが接続されていなければスイッチSWは外来音用マイクロホン10A側に接続される。
つまり撮像時の収音用のマイクロホンを、ユーザが内蔵の外来音用マイクロホン10Aとするか、別体の外部マイクロホン10ASとするかを任意に選択できる構成例である。
【0081】
この図15の例のように撮像装置1としては、少なくとも機構音用マイクロホン10B及びそれに対応するマイク入力部11Bを備えるが、外来音用マイクロホン10Aは備えず、マイク入力部11A及び接続端子19を備える構成としてもよい。
【0082】
なお、別体の外部マイクロホン10ASを使用する場合は、接続時にキャリブレーションモード処理が実行されることが好ましい。例えばCPU7は接続端子19に外部マイクロホン10ASが接続されたことを検知したら、それをトリガとしてキャリブレーションモード処理を実行する。そして得られた伝達関数情報によりノイズ抑制処理部12dのフィルタ係数を更新する。これにより外部マイクロホン10ASを用いても適切なノイズ抑制処理が実現できる。
【0083】
続いて図16で、2つのマイクロホン10A、10Bを備える場合の配置例について述べる。
図4,図5では、各マイクロホン10A、10Bを基板21の表裏に配置する例を示したが、例えば図16のような例も想定される。
【0084】
図16Aは、取付部位70の同一面側に各マイクロホン10A、10Bを装着する例である。なお取付部位70とは、基板21や筐体内部構造物として、マイクロホン10A、10Bを取り付ける部位を表している。
この場合、外来音用マイクロホン10Aは音孔32側が開放されるように装着し、機構音用マイクロホン10Bは音孔32側が取付部位70で塞がれるように装着すればよい。
【0085】
図16Bは、各マイクロホン10A、10Bがそれぞれ異なる取付部位70a,70bに装着される例である。
外来音用マイクロホン10Aは取付部位70aとしての基板等に、音孔32側が開放されるように配置される。
機構音用マイクロホン10Bは取付部位70bとしての基板等に、音孔32側が塞がれるように配置される。
【0086】
図16Cは、各マイクロホン10A、10Bを同一の取付部位70の表裏に配置する例であるが、いずれも音孔32側を取付部位70によっては塞がない例である。但し機構音用マイクロホン10Bについては、撮像装置1の筐体22の内部で音響的に密閉された空間CS内が設けられる場合に、その空間CS内として、外来音が収音されにくくなるようにした例である。
図16Dもほぼ同様であるが、外来音用マイクロホン10Aは筐体22内ではあるが外部に連通する空間に位置し、一方、機構音用マイクロホン10Bは、筐体22内であって外部に音響的に連通せず、かつズーム機構5aなどの動作ノイズ発生源となる機構部71側に配置した例である。
【0087】
例えば以上の各例のように、マイクロホン10A、10Bの配置態様は各種考えられる。もちろん図示した例以外にも各種想定される。
なお、基本的には機構音用マイクロホン10Bは、外来音が収音しにくい取付態様とすることが望ましい。
【0088】
ところで、ここまでは外来音用マイクロホン10Aを1つとしてモノラルで録音する場合を例に説明してきたが、これはあくまで説明を簡略化するためであり、ステレオ収音の場合も、当然に上述してきた技術は適用できる。
例えば図17Aに示すように、外来音用マイクロホン10Aとして2つのマイクロホン10AL、10ARを搭載する場合、機構音用マイクロホン10Bとしても2つのマイクロホン10BL、10BRを設け、L、Rチャンネルのそれぞれの組(マイクロホン10ALと10BLの組、及びマイクロホン10ARと10BRの組)で図8のノイズ抑制処理や図6の伝達関数測定処理が行われるようにすればよい。
【0089】
また図17Bのように、ステレオマイクロホンを構成する外来音用マイクロホン10AL、10ARの設置位置があまり離れていない(メカ的な接続機構特性の差が少ない)場合、機構音用マイクロホン10Bを1つとして、合計3個のマイクロホンユニットを備える例も考えられる。
当然この場合、マイクロホン10ALと10Bの組、及びマイクロホン10ARと10Bの組で、図8のノイズ抑制処理や図6の伝達関数測定処理が行われるようにすればよい。
【0090】
<7.変形例>
以上、実施の形態について各種の例を説明してきたが、さらに多様な変形例は各種考えられる。
実施の形態の撮像装置1は、動画撮像を行うビデオカメラとしたが、もちろん静止画撮像のみを行うデジタルスチルカメラであっても、収音音声について音声処理を行う装置であれば同様の技術が適用できる。
また音声信号処理については、マイク入力部11A、11Bでデジタルデータ化された出力信号Oa,Obを対象としたが、ノイズ抑制処理部12dの処理はアナログ信号処理で実行することも可能である。
【0091】
また、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ等として、撮像した動画や静止画を記録部9に記録するものをあげたが、その装置自体では動画や静止画の画像データを記録せずに外部機器に送信する撮像装置であっても、本開示の技術は適用できる。
また本開示で言う撮像装置とは、機器態様に限らず、撮像機能と収音音声信号処理を行う機能を有する機器の総称であり、所謂ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ以外にも、携帯電話機、情報処理装置、ゲーム機等で撮像機能及び収音音声信号処理機能を有する機器が該当する。また撮像機能のない各種電子機器、少なくともマイクロホンで音声収音を行う各種機器において本開示のノイズ抑制処理の技術を応用することも可能である。例えば情報処理装置、ゲーム機、携帯電話機、録音装置などである。
【0092】
実施の形態では主にズーム音をノイズとして抑制対象とする例で述べたが、他の機構音についても同様に適用できる。例えばズーム動作以外のレンズ系駆動音が発生する場合(オートフォーカスによるレンズ駆動音やオートアイリスによる絞り駆動音)でも、本開示の技術は有用である。
さらに記録部9等としてHDDが内蔵される場合のHDD駆動音や、ファンが内蔵される場合のファンモータ音や風切り音などをノイズとして低減させたい場合も、本開示の技術は有用である。
キャリブレーションモード処理を、これらノイズとして抑制対象となる音を発生させた状態で行えば、ノイズ抑制モードとして適切なノイズ低減が可能となる。
【0093】
なお本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)撮像素子部、及び被写体からの入射光を上記撮像素子部に結像させるレンズ系を有する撮像部と、
上記撮像部の上記撮像素子部で光電変換された信号から撮像画像信号を生成する撮像信号処理部と、
外来音を収音する外来音用マイクロホンで得られる音声信号を入力する第1のマイク入力部と、
装置機構音を収音する機構音用マイクロホンと、
上記機構音用マイクロホンで得られる音声信号を入力する第2のマイク入力部と、
上記第1のマイク入力部からの音声信号について、上記第2のマイク入力部からの音声信号から生成した機構音キャンセル信号を用いて機構音成分が低減されたノイズ抑制音声信号を生成するノイズ抑制処理部と、
を備えた撮像装置。
(2)上記機構音用マイクロホンから上記外来音用マイクロホンへの伝達関数情報を記憶する記憶部を備え、
上記ノイズ抑制処理部は、上記第2のマイク入力部からの音声信号について上記伝達関数情報に基づくフィルタ処理で上記機構音キャンセル信号を生成する上記(1)に記載の撮像装置。
(3)上記記憶部には、上記伝達関数情報として、上記機構音用マイクロホンから上記外来音用マイクロホンへの伝達関数の周波数軸表現または時間軸表現での応答の情報が記憶されており、
上記ノイズ抑制処理部は、上記フィルタ処理で、上記応答を上記第2のマイク入力部からの音声信号に畳み込んで上記機構音キャンセル信号を生成し、該機構音キャンセル信号を上記第1のマイク入力部からの音声信号から減算することで、上記ノイズ抑制音声信号を生成する上記(2)に記載の撮像装置。
(4)上記第1のマイク入力部からの音声信号と、上記第2のマイク入力部からの音声信号との除算処理により、上記機構音用マイクロホンから上記外来音用マイクロホンへの伝達関数を計測する伝達関数測定部と、
キャリブレーション動作として、装置機構音を発生させた状態で、上記伝達関数測定部に伝達関数の計測を実行させ、計測に基づいて得られた伝達関数情報を上記記憶部に記憶させるキャリブレーション制御部と、
をさらに備えた上記(2)又は(3)に記載の撮像装置。
(5)上記ノイズ抑制処理部の動作を実行させるノイズ抑制モードと、上記伝達関数測定部の動作の実行させるキャリブレーションモードを指示するモード制御部をさらに備えた上記(4)に記載の撮像装置。
(6)上記モード制御部は、キャリブレーションモードの期間以外は、上記ノイズ抑制モードを指示する上記(5)に記載の撮像装置。
(7)上記モード制御部は、キャリブレーションモードの期間以外において、装置機構音が発生する期間、上記ノイズ抑制モードを指示する上記(5)に記載の撮像装置。
(8)上記モード制御部は、キャリブレーションの不実行継続期間に応じて、或いは音声信号品質測定結果に応じて、キャリブレーション実行推奨の提示出力制御を行う上記(5)乃至(7)に記載の撮像装置。
(9)上記機構音用マイクロホンは、振動板が音響的に撮像装置筐体外部の空間に対して閉ざされた状態で配置されている上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の撮像装置。
(10)外来音を収音する外来音用マイクロホンをさらに備え、
上記外来音用マイクロホンは、振動板が音響的に撮像装置筐体外部の空間と連通された状態で配置されている上記(1)乃至(9)のいずれかに記載の撮像装置。
(11)上記機構音用マイクロホンは、基板面音孔型のMEMSマイクロホンとされて基板面側が撮像装置筐体内の基板又は内部構造物に取り付けられる上記(1)乃至(10)のいずれかに記載の撮像装置。
(12)上記外来音用マイクロホンは、上面音孔型のMEMSマイクロホンとされて下面側が撮像装置筐体内の基板又は内部構造物に取り付けられる上記(1)乃至(11)のいずれかに記載の撮像装置。
(13)上記外来音用マイクロホンはステレオマイクロホンセットが装備され、
上記機構音用マイクロホンは、一つのマイクロホンが装備される上記(1)乃至(12)のいずれかに記載の撮像装置。
(14)上記機構音用マイクロホンは、上記装置機構音として、少なくとも上記撮像部における上記レンズ系のズーム動作音を収音可能に配置されている上記(1)乃至(13)のいずれかに記載の撮像装置。
【符号の説明】
【0094】
1 撮像装置、2 表示部、3 表示制御部、4 操作入力部、5 撮像部、6 撮像信号処理部、7 CPU、8 メモリ部、9 記録部、10A 外来音用マイクロホン、10B 機構音用マイクロホン、11A,11B マイク入力部、12 音声信号処理部、12d ノイズ抑制処理部、12e 伝達関数測定部、12f ノイズ測定部、21 基板、22 筐体、31 振動板、32 音孔
【技術分野】
【0001】
本開示は、動画や静止画を撮像する撮像装置に関し、特に撮像時に収音する音声信号の処理に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2011−70046号公報
【背景技術】
【0003】
動画や静止画を撮像し、画像データとして記録或いは送信する撮像装置では、マイクロホンにより外部音声を集音し、画像データとともに記録或いは送信することが行われている。
この場合、マイクロホンは本来外部音声、即ち撮像対象たる被写体や周囲の音声を目的として収音し、これを画像と共に記録等するものである。ところが、撮像装置の内部機構音が混入することが避けがたい。
例えば一例として、ユーザが撮像中にズーム操作を行った場合、ズームレンズが駆動されるが、その際の駆動音が発生し、これがマイクロホンによって拾われる。つまり例えば動画と共に記録する音声に、本来混入してほしくないズーム音等が混入してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまで、ズーム機構を持つデジタルカメラ多くが、動画撮影時の録音で、このノイズの抑制に多くの技術提案があったが、多くはメカ的な工夫により機構の静音化を図るものや、または音源分離技術を使って大きな信号処理リソースを消費するものなどであった。しかしこのような技術ではコストアップや信号処理負担の増大など、実用上、広く採用することが難しく、またノイズ混入低減の効果が大きいとは言えなかった。
そこで本開示では、撮像装置において簡易な処理で、収音音声から、例えばズーム駆動音などの装置機構音が低減され、品質の良い収音音声が得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の撮像装置は、撮像素子部、及び被写体からの入射光を上記撮像素子部に結像させるレンズ系を有する撮像部と、上記撮像部の上記撮像素子部で光電変換された信号から撮像画像信号を生成する撮像信号処理部と、外来音を収音する外来音用マイクロホンで得られる音声信号を入力する第1のマイク入力部と、装置機構音を収音する機構音用マイクロホンと、上記機構音用マイクロホンで得られる音声信号を入力する第2のマイク入力部と、上記第1のマイク入力部からの音声信号について、上記第2のマイク入力部からの音声信号から生成した機構音キャンセル信号を用いて機構音成分が低減されたノイズ抑制音声信号を生成するノイズ抑制処理部とを備える。
【0006】
本開示の音声収音方法は、 撮像素子部、及び被写体からの入射光を上記撮像素子部に結像させるレンズ系を有する撮像部と、上記撮像部の上記撮像素子部で光電変換された信号から撮像画像信号を生成する撮像信号処理部とを有する撮像装置の音声収音方法として、外来音を収音する外来音用マイクロホンで得られる音声信号を第1のマイク入力部で入力し、装置機構音を収音する機構音用マイクロホンで得られる音声信号を第2のマイク入力部で入力し、上記第1のマイク入力部からの音声信号について、上記第2のマイク入力部からの音声信号から生成した機構音キャンセル信号を用いて機構音成分が低減されたノイズ抑制音声信号を生成する音声収音方法である。
【0007】
このような本開示の撮像装置では、機構音用マイクロホンを配置し、内部の機構音を収音する。この機構音を収音した音声信号を用いて機構音キャンセル信号を生成する。外来音用マイクロホンにも機構音は混入するが、この外来音用マイクロホンからの音声信号と機構音キャンセル信号を演算することで、ノイズ抑制音声信号、即ち機構音が低減された外来音としての音声信号を得ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、機構音用マイクロホンを撮像装置に設け、機構音用マイクロホンで得られた音声信号から機構音キャンセル信号を生成する。これを用いて外来音用マイクロホンからの音声信号に対してノイズ(機構音)の低減処理を行う。これにより信号処理負担の少ない簡易な処理で機構音低減効果の高いノイズ抑制音声信号を得ることができ、撮像装置における音声収音手法として実用に適している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本開示の実施の形態の概要の説明図である。
【図2】実施の形態の撮像装置のブロック図である。
【図3】実施の形態の音声信号処理部の構成の説明図である。
【図4】実施の形態のエレクトレットマイクロホン配置の説明図である。
【図5】実施の形態のMEMSマイクロホン配置の説明図である。
【図6】実施の形態の伝達関数測定部の動作の説明図である。
【図7】実施の形態のキャリブレーションモードの制御処理のフローチャートである。
【図8】実施の形態のノイズ抑制処理部のブロック図である。
【図9】実施の形態のノイズ抑制処理の説明図である。
【図10】実施の形態のズーム音波形と外部音声波形の説明図である。
【図11】実施の形態の音声信号処理部の他の構成の説明図である。
【図12】実施の形態のキャリブレーションモードへの移行処理のフローチャートである。
【図13】実施の形態のキャリブレーションモードの推奨提示処理のフローチャートである。
【図14】実施の形態のモード制御処理のフローチャートである。
【図15】実施の形態の外来音用マイクロホンの他の例の説明図である。
【図16】実施の形態のマイクロホン配置例の説明図である。
【図17】実施の形態のステレオ対応時のマイクロホン配置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態として、例えば動画撮像を行う撮像装置(ビデオカメラ)の例を挙げ、次の順序で説明する。
<1.実施の形態の撮像装置の概要>
<2.撮像装置の構成>
<3.キャリブレーションモードとノイズ抑制モード>
<4.音声信号処理部の他の構成例>
<5.モード制御例>
<6.各種マイクロホン態様>
<7.変形例>
【0011】
<1.実施の形態の撮像装置の概要>
図1で実施の形態の撮像装置の概要を説明する。
実施の形態の撮像装置1は、ユーザが動画撮像に使用する装置であり、図2で後述するように被写体撮像や、撮像した画像データの記録等、ビデオカメラとしての通常の動作を行う。
【0012】
画像撮像時には、外部音声も収音する。このため撮像装置1には、図1に模式的に示すように外来音用マイクロホン10Aが設けられる。もしくは撮像装置1にはマイク接続端子部が形成され、別体のマイクロホンが接続され、それが外来音用マイクロホン10Aとされてもよい。
【0013】
外来音用マイクロホン10Aは、被写体や周囲の音声を収音する目的で設けられる。このため別体のマイクロホンではなく、撮像装置1に外来音用マイクロホン10Aが内蔵装備される場合は、その外来音用マイクロホン10Aは、振動板が音響的に撮像装置筐体外部の空間と連通された状態で配置される。例えば撮像装置1の筐体22上に表出するように取り付けられたり、筐体22の内部であっても音通孔を介して外部空間に音響的に連通するように取り付けられる。即ち外来音用マイクロホン10Aの振動板が、外来音声に対して適切に反応して振動するように配置される。
なお、「音響的」に連通するとは、振動板が直接外部空間と接しているか、或いは風切り音の防止用のフィルムなどがあったとしても、外来音が妨げられずに振動板へ到来するような状態を言う。
【0014】
一般的なビデオカメラ等では、外来音用マイクロホン10Aは搭載されており、これによって動画撮像時等に音声収音も行う。
本実施の形態の場合、これに加えて、例えば筐体22の内部に機構音用マイクロホン10Bが配置される。機構音用マイクロホン10Bは、例えばズーム機構5aなどの装置機構の駆動音等、装置動作に付随する機構音を収音する。
また後述するが、機構音用マイクロホン10Bは、振動板が音響的に撮像装置1の筐体22の外部空間に対して閉ざされた状態で配置されており、外来音は殆ど収音しないようにされている。
【0015】
一例として図1のように、2つのマイクロホン(外来音用マイクロホン10A、機構音用マイクロホン10B)が、内部の基板21の上下に設置される。
本実施の形態では、この2つのマイクロホン10A,10Bの各出力信号Oa、Obに対して音声信号処理部12でノイズ抑制処理を加えることにより、高S/N(Signal to Noise Ratio)な収音信号を生成する。
この場合のS/Nの「S(信号)」とは、撮像対象の人物の音声や周囲環境音など録音対象成分(P)を意味し、「N(ノイズ)」は、例えばズーム機構5aなどの内部機械振動(源振動をVとする)を起因とする音の収音信号への混入成分である。
つまり図1で言えば、本実施の形態では、P起因の音の成分をなるべく大きく、V起因の音の成分をなるべく小さくした収音信号を生成する。
【0016】
なお、ここでは、振動Vは、筐体22内のメカ部品を伝達し基板21に到達することを前提としている。通常、単独のマイクロホンによる収音でズーム音の混入が大きいのは、この振動V→基板への伝達が多く、結果的に単独のマイクロホンユニット全体に振動が伝わり、慣性の法則により(振動板に対して)マイクロホンユニット全体が動いてしまい、相対的に振動板が動いて電圧が発生するためである。
【0017】
<2.撮像装置の構成>
実施の形態の撮像装置の構成を図2に示す。図2は撮像装置1の内部構成例を概略的に示すブロック図である。
図示するように撮像装置1は、表示部2、表示制御部3、操作入力部4、撮像部5、撮像信号処理部6、CPU(Central Processing Unit)7、メモリ部8、記録部9、外来音用マイクロホン10A、機構音用マイクロホン10B、マイク入力部11A、11B、音声信号処理部12、外部インターフェース13、ネットワーク通信部14、ビデオエンコーダ15、音声出力部16、システムバス20を有する。
【0018】
表示部2は、ユーザ(撮像者等)に対して各種表示を行う表示部であり、例えば撮像装置1の筐体上に形成されるLCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイデバイスにより形成される。またいわゆるビューファインダーとしてLCDや有機ELディスプレイ等で形成されてもよい。
表示制御部3は、この撮像装置1の全体の制御部であるCPU7の制御に基づいて、表示部2に各種表示を実行させる。例えば撮像記録した動画や静止画を再生表示させたり、静止画撮像の際のレリーズ待機中や動作撮像記録開始のスタンバイ中に撮像される各フレームの撮像画像データによる動画としてのスルー画(被写体モニタリング画像)を表示部2に表示させる。また表示制御部3は、各種操作メニュー、アイコン、メッセージ等、即ちGUI(Graphical User Interface)としての表示を表示部2に実行させる。
【0019】
操作入力部4は、ユーザの操作を入力する入力手段として機能し、入力された操作に応じた信号をCPU7等へ送る。
この操作入力部4としては、例えば撮像装置1の筐体22上に設けられる各種操作子や、表示部2に形成されたタッチパネルなどを有する。
筐体22上の操作子としては、例えば電源キー、ズームキー、シャッターボタン(レリーズボタン)、モードキー、メニュー操作キー等が設けられる。
またタッチパネルと表示部2に表示させるアイコンやメニュー等を用いたタッチパネル操作により、各種の操作が可能とされてもよい。
【0020】
撮像部5は、被写体光を受光し電気信号に変換する撮像素子(イメージセンサ)、被写体からの光を撮像素子に集光するためのレンズ系、レンズを移動させてフォーカス合わせやズーミングを行うための駆動機構、絞り機構などを有している。
撮像部5内のこれらの駆動機構は、全体の制御部であるCPU7からの制御信号に応じて駆動される。
撮像素子は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)型、CMOS(Complementary Metal OxideSemiconductor)型などの撮像素子とされる。
【0021】
撮像信号処理部6は、撮像部5の撮像素子で得られた電気信号についてA/D変換、ISOゲイン調整、その他の各種信号処理を行い、撮像画像信号DT−Vとしてビデオエンコーダ15に供給する。
【0022】
外来音用マイクロホン10Aは上述したように主に外来音を収音する。外来音用マイクロホン10Aで得られた音声信号はマイク入力部11Aで入力段増幅やA/D変換が行われてマイク出力信号Oaとして音声信号処理部12に供給される。
機構音用マイクロホン10Bは上述のように主に筐体内部の機構音を収音する。機構音用マイクロホン10Bで得られた音声信号はマイク入力部11Bで入力段増幅やA/D変換が行われてマイク出力信号Obとして音声信号処理部12に供給される。
【0023】
音声信号処理部12は、例えばDSP(Digital Signal Processor)で構成され、CPU7の制御に基づき各種の音声信号処理を行う。例えば音声信号処理部12としてのDSPは図3のように、信号処理機能として、AGC(Automatic Gain Control)処理部12a、レベル調整部12b、音質・音響効果処理部12c、ノイズ抑制処理部12d、伝達関数測定部12eとしての機能が内部プログラムにより実行される。
AGC処理部12aは、収音信号のAGC処理を行い、例えば過大な入力音声等を調整する。
レベル調整部12bは収音信号の入力レベルを調整する。
音質・音響効果処理部12cは、イコライジング処理やエコー、リバーブ処理等を収音信号に対して実行し、所望の音質や音響効果を付与する。
ノイズ抑制処理部12dは、本実施の形態において、図1で述べたように機構音をキャンセルした収音信号を得る処理を行う。詳しくは後述する。
伝達関数測定部12eは、機構音キャンセルに用いる伝達関数情報を得るために、2つのマイクロホン10A,10B間の伝達関数の測定を行う。詳しくは後述する。
【0024】
このような音声信号処理部12では、CPU7からの制御信号Scに基づいて各処理機能(12a〜12e)が実行される。通常の撮像時は、AGC処理部12a、レベル調整部12b、音質・音響効果処理部12cが行われて、撮像画像信号DT−Vと共に記録や送信する音声信号DT−Aが得られる。この音声信号DT−Aはビデオエンコーダ15に供給される。
特に本実施の形態では、後述するノイズ抑制モードが指示される期間は、この音声信号DT−Aは、ノイズ抑制処理部12d部によってノイズ抑制処理が行われた信号となる。
【0025】
ビデオエンコーダ15は、記録や送信出力のためのデータエンコード処理を行う。ビデオエンコーダ15には撮像画像信号DT−Vや音声信号DT−Aが供給され、これらの信号についてエンコード処理を行う。例えばMPEG(Moving Picture Experts Group)方式の圧縮エンコード等を行ってビデオファイル(動画像及び音声)を生成する。
このビデオファイルは、記録部9に記録されたり、ネットワーク通信部14や外部インターフェース13を介して外部に送信出力される。
またビデオエンコーダ15は撮像画像信号DT−Vをスルー画用の信号として表示制御部2に転送して、表示部3でのスルー画表示を可能とする。
【0026】
メモリ部8は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリなど、CPU7が使用、参照する内部メモリを包括的に示している。
例えばRAMは、CPU7の各種データ処理の際の作業領域として、データやプログラム等を一時的に格納する。
ROMやフラッシュメモリ(不揮発性メモリ)には、CPU7が各部を制御するためのOS(Operating System)や、外部通信、ネットワーク通信等に必要なアプリケーション等を記憶する。
フラッシュメモリには、さらに画像ファイル等が記憶される場合もある。また後述する伝達関数情報や、音声信号処理部12で用いるフィルタ係数等の情報がフラッシュメモリに記憶される場合もある。
【0027】
記録部9は、例えば不揮発性メモリ等からなり、ビデオファイル等のコンテンツファイル、その画像ファイルの属性情報及びサムネイル画像等を記憶する記憶領域として機能する。
記録部9の実際の形態は多様に考えられる。例えば記録部9は、撮像装置1に着脱できるメモリカード(例えば可搬型のフラッシュメモリ)と、該メモリカードに対して記録再生アクセスを行うカード記録再生部による形態でもよい。また撮像装置1に内蔵されている形態としてHDD(Hard Disk Drive)などとして実現されることもある。
また後述する伝達関数情報や、音声信号処理部12で用いるフィルタ係数等の情報が記録部9に記憶される場合もある。
【0028】
外部インターフェース13は、パーソナルコンピュータや外部ストレージ機器等との外部デバイスとの間で各種データ通信を行う。撮像装置1は、外部インターフェース13による外部機器との通信で、撮像記録したビデオファイル等を外部機器に転送したり、各種情報を外部機器から入力することが可能である。
ネットワーク通信部14は、例えばインターネット、ホームネットワーク、LAN(Local Area Network)等の各種のネットワークによる通信を行う。
【0029】
音声出力部16は、CPU7の指示に基づいて、メッセージ音声や電子音によりユーザに音声告知を行う。或いはビデオファイルの再生時に、動画等とともに記録されている音声データの再生出力を行う。
【0030】
CPU7は、例えばメモリ部8内に記憶されたプログラムを実行することで、この撮像装置1全体を統括的に制御する。
例えばCPU7は、ユーザの操作に応じた撮像動作や撮像記録した画像ファイルの再生動作、さらに外部機器通信やネットワーク通信としての通信動作等について、必要各部の動作を制御する。
さらに本実施の形態の場合、CPU7は、音声収音に関して、後述するノイズ抑制モードの制御処理や、キャリブレーションモードの制御処理、ノイズ抑制モードとキャリブレーションモードの切換や設定指示などを行う。つまりCPU7は請求項でいうキャリブレーション制御部やモード制御部としても機能する。
【0031】
システムバス20は、CPU7などの各ブロックを相互に接続し、それぞれのブロック間での信号の授受を可能とする。
【0032】
この撮像装置1に搭載される外来音用マイクロホン10A、機構音用マイクロホン10Bについて説明する。
これらのマイクロホン10(10A及び10B)としてはどのようなマイクロホンを用いても良いが、一例としてエレクトレットマイクロホンやMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)マイクロホンが考えられる。
【0033】
図4Aはエレクトレットマイクロホンの例を示している。
マイクロホンユニットは全指向性とすると、通常マイクロホンユニットには音を取り入れる音孔32が1つ開いており、ここから入ってきた音が振動板(振動膜)31に到達し、これを振るわせることで、出力に電圧が発生する。
図示のマイクロホン10は上面側が音孔32とされ、内部の振動板(振動膜)31を空間に音響的に連通させている。
【0034】
このようなマイクロホン10を用いる場合、図4B、図4Cに示すように配置する。基板21とは、撮像装置1内で、図1の構成を実現する電子部品23を配置した基板である。この基板21に対し、外来音用マイクロホン10Aは、音孔32が解放されるように底面側をマウントする。
一方、機構音用マイクロホン10Bは、音孔32が基板21でふさがれるように、音孔32側が基板に接する状態でマウントする。
つまり基板21の上面側、下面側において、音孔の方向を揃えて各マイクロホン10A、10Bを設置する。
これにより外来音用マイクロホン10Aは外部の音を収音しやすいように振動板31が表に出ている一方、機構音用マイクロホン10Bは、基板設置時に音孔32が塞がれる。
なお、このようにマイクロホン10A、10Bを配置するのは基板21に限られない。撮像装置1の筐体内の基板以外の構造物であってもよい。
【0035】
この場合、両マイクロホン10A、10Bは、同一の基板・構造物に設置されているため、ほぼ同じズーム機構5aからの振動を受けているが、録音対象の音に関しては、外来音用マイクロホン10Aは大きく収音できるものの、機構音用マイクロホン10Bは筐体内部であり、かつ音孔が塞がれているため、ほとんど録音目的の音声は入力されない。このことを利用して、後述のように高S/Nの収音信号を信号処理により生成する。
【0036】
以上の図4では小型エレクトレットマイクロホンを示したが、現在ではMEMSマイクの使用も一般化しつつあり、図5のようにこれを使用することもできる。
図5AはMEMSマイクロホンの構造を模式的に示している。MEMSマイクロホンとしては、上面音孔型のものや基板面音孔型のものが存在する。
いずれの型も内部空間に振動板31が形成され、音孔32からの音によって振動する。上面音孔型は、図示のように基板21に装着するランド33とは逆の上面側に音孔32が形成されている。基板面音孔型は基板21に装着するランド33とは同じ面に音孔32が形成されている。これらは音響・電気特性はほぼ同じであるにも関わらず、実装上の都合に応じるために製造されるものである。
本実施の形態においては、このようなMEMSマイクロホンとしての2つのタイプを利用することが好適である。
【0037】
図5B、図5Cに示すように、外来音用マイクロホン10Aは上面音孔型とし、これを基板21に実装する。機構音用マイクロホン10Bは基板面音孔型を用い、これを図示のように基板21の裏側に実装する。
これによって同一基板上に、外来音の収音に好適な外来音用マイクロホン10Aと、外来音が収音されにくい機構音用マイクロホン10Bを実現できる。実装的にも利便性が高い。
【0038】
なお、図4,図5で説明した各マイクロホン10A、10Bは、なるべく近い応答特性(ゲイン、周波数特性)であることが好ましいが、現実的な音響部品製造では、特性のばらつきがでることはやむを得ない。このため、音声信号処理部12では特性誤差を解消して適切なノイズ抑制処理を実現するため、後述のキャリブレーションモードを行うことが好ましい。
【0039】
<3.キャリブレーションモードとノイズ抑制モード>
本実施の形態では、音声信号処理部12において、図3で示したようにノイズ抑制処理部12d、伝達関数測定部12eとしての機能が実装され、これらによりキャリブレーションモードとノイズ抑制モードとしての処理が行われる。
ここで、ノイズ抑制モードとは、ズーム駆動音などの機構音を収音音声からキャンセルする処理を行うモードであり、一方、キャリブレーションモードとは、ノイズ抑制モードが適切に実行されるようにするため、あらかじめ伝達関数情報を得る動作を行うモードである。
以下では、伝達関数情報としては、機構音用マイクロホン10Bから外来音用マイクロホン10Aへの伝達関数の、周波数軸表現または時間軸表現での応答の情報とする例で説明する。なお、伝達関数の応答の情報とは、周波数軸や時間軸上でこれを簡易化・修正した応答の情報も含む。
【0040】
なお、キャリブレーション(伝達関数測定)モード、と、ノイズ抑制モードは、音声信号処理部12として機能するたとえばDSP等の演算部に対してプログラム変更を行うことで実現できる。例えばCPU7が音声信号処理部12に対してノイズ抑制モードを指示することによりノイズ抑制処理部12dとしての動作が実行され、またキャリブレーションモードを指示することにより、伝達関数測定部12eとしての動作が実行される。
【0041】
まずキャリブレーションモードについて説明する。
キャリブレーションモードは、主に、本実施の形態の撮像装置1の生産工場や、サービスセンターで実施される、キャリブレーション(伝達関数測定)専用モードである。
特に、カメラのズーム音は、工場でのメカ的な取り付け方など、ズーム音(ノイズ)自体に個体差があるため、各個体を工場で組み上げた後、実際に、工場内の静かな場所(または専用の測定ボックスなど)などの静音環境で、その特性測定を行う。具体的には、機構音用マイクロホン10Bから外来音用マイクロホン10Aへのズーム音の伝達関数を測定する。
そして、この測定データをシステムに記憶しておくことで、組み上げによるメカの振動の伝達具合やズームモーター部の特性個体差、両マイクロホン10A、10Bの電気音響特性のばらつき等を吸収し、その後のノイズ抑制モードで適切な機構音キャンセルが実行されるようにする。
【0042】
キャリブレーションモードの動作を図6,図7で説明する。
図6Aは伝達関数測定部12eで実行される処理の流れを示している。キャリブレーションモードの実行時には、図6Bに示すように、静音環境においてズーム機構5aをテスト作動させる。このときに各マイクロホン10A、10Bで収音される音声信号が、マイク入力部11A,11Bからの出力信号Oa,Obとして音声信号処理部12に供給されるが、音声信号処理部12の伝達関数測定部12eは、この出力信号Oa,Obを用いて伝達関数測定を行う。
【0043】
図6Aに示すように伝達関数測定部12eは、出力信号Oaについて帯域制限フィルタ処理S1で不要帯域をカットする。すなわちLPF(Low Pass Filter)処理およびHPF(High Pass Filter)処理により、ズーム音に相当する帯域を抽出する。そしてスムーシング処理S3として周波数軸でのスムーシングを行う。
同様に伝達関数測定部12eは出力信号Obについて帯域制限フィルタ処理S2で不要帯域をカットしてズーム音に相当する帯域を抽出し、スムーシング処理S4を行う。
そして除算処理S5としてOa/Obの演算を行って、その結果から伝達関数算出処理S6、時間軸FIR係数算出処理S7を行う。
【0044】
この図6Aの処理は、静音環境下にてズーム機構5aをテスト作動させたときの、両マイクロホンの出力を除算することにより「ズームノイズ」に関わる「機構音用マイクロホン10Bから外来音用マイクロホン10Aへの伝達関数」を測定するものである。
つまり、
(「振動V→外来音用マイクロホン10A」の伝達関数)/(「振動V→機構音用マイクロホン10B」の伝達関数)=(「機構音用マイクロホン10B→外来音用マイクロホン10A」の伝達関数)
を意図したものである。ここでは、この伝達関数をHioとし、これの時間軸のインパルス応答としての表現をhioとしている。
本例では、このキャリブレーションモードの動作で求められた、時間軸インパルス応答hio、又は伝達関数Hioの一方又は両方を、伝達関数情報としてメモリ部8または記録部9に記憶しておき、後のノイズ抑制モード時に用いることができるようにする。
【0045】
なお、図6Aに示したとおり、除算処理S5の前にスムージング処理S3、S4において周波数軸でスムージングを掛けていることにより、除算後のHio特性の複雑化を防ぎ、同時に時間軸hioの応答がなるべく短くおさまるように工夫している。
同様の工夫として、伝達関数やインパルス応答は、計測したそのままの特性ではなく、例えばS/Nの関係から測定信頼性が薄い低域や高域に関して、周波数軸または時間軸でこの帯域をカットした上でHio、hioを設計することは当然に考えられる。また特定帯域の位相情報を時間軸で表現しようとすると、不用意にフィルタのタップ数が長くなったり、実行の結果かえってノイズが増えてしまうような場合には、その帯域のゲインを落としてキャンセルを行わない、などを考慮してHio、hioとすることもできる。
具体的にいえば、伝達関数Hioを周波数軸で簡易化して、記憶する「Hio」としてもよい。また、伝達関数Hioを周波数軸で簡易化してから時間軸変換して「hio」を得てもよいし、伝達関数Hioを時間軸(hio)に変換し、「hio」を簡易化して記憶する「hio」としてもよい。
つまり、キャリブレーションモードで求める伝達関数情報は、伝達関数の周波数軸表現または時間軸表現での応答の情報であるが、その応答の情報とは、後述のノイズ抑制モードでのフィルタ処理の簡易化等を考慮して、周波数軸表現または時間軸表現での応答情報を周波数軸や時間軸上で簡易化・修正した応答の情報でもよい。
【0046】
図7は、このようなキャリブレーションモードを実行させるためのCPU7の制御処理例を示している。
キャリブレーションモードを発動する場合、CPU7はまずステップF1として撮像部5を制御し、ズーム機構5aのテスト駆動を実行させる。これとともにCPU7はステップF2で音声信号処理部12に伝達関数測定を指示する。当該制御に応じて音声信号処理部12では伝達関数測定部12eとしての機能が実行され、上記図6Aに示した伝達関数測定部Hioおよび時間軸インパルス応答hioが算出される。音声信号処理部12はこれらの測定(Hio,hio算出)が完了したら、その旨(もしくは算出値)をCPU7に通知する。
CPU7は、算出完了検知により処理をステップF3からF4に進め、撮像部5におけるズーム機構5aのテスト駆動を終了させる。そしてステップF5でCPU7は、算出された時間軸インパルス応答hio(又は伝達関数Hio、あるいは両方)をメモリ部8におけるフラッシュメモリ、あるいは記録部9に記憶させる。
以上でキャリブレーションモードの動作を終了する。
【0047】
なお、このようなキャリブレーションモードの実行は、工場のような環境では必須であるが、当該の伝達関数に経年変化があった場合でも、ユーザが静音環境で実行することで、対応可能である。このキャリブレーションモード実行タイミングは、システム自体が、ある程度の年月において測定を促すためのアラームをタイマーにて提示しても良いし、残留ノイズがある程度大きくなった、とシステムが判断し、この測定プロセスを促して自動的に実行する場合も考えられる。もちろんユーザが任意タイミングで実行しても良い。これらについては後述する。
【0048】
次に、実際に、このあらかじめ測定され、システムに記憶された時間軸インパルス応答hioを使って運用する、通常の動画録画(録音)時に使用されるノイズ抑制モードについて説明する。
なお、以下の処理では時間軸インパルス応答hioが記憶されているとして説明するが、伝達関数Hioのみが記憶されている場合は、ノイズ抑制モード開始時に、伝達関数Hioから時間軸インパルス応答hio(より具体的には次に説明する伝達関数相当フィルタ42のフィルタ係数)を算出する処理を行うこととすればよい。さらには、伝達関数Hioを時間軸変換した後、さらにそれを簡易化した応答hioを算出するようにしてもよい。
また上述のように簡易化した応答「hio」が記憶されている場合や、簡易化した応答「hio」を算出する場合には、以下の説明でいう「時間軸インパルス応答hio」を、「簡易化した応答hio」に置き換えて考えればよい。
【0049】
図8に音声信号処理部12におけるノイズ抑制処理部12dの構成(処理手順)を示している。ノイズ抑制処理部12dは、外来音用マイクロホン10Aについての出力信号Oaについて、位相・遅延調整フィルタ41で位相および遅延時間調整を行う。
また機構音用マイクロホン10Bについての出力信号Obについて、伝達関数相当フィルタ42でフィルタリングを行う。伝達関数相当フィルタ42は、時間軸インパルス応答hioが係数としてセットされたFIRフィルタである。すなわち上述のキャリブレーションモードで記憶された時間軸インパルス応答hioに基づいて、CPU7は制御信号Scによって、伝達関数相当フィルタ42の係数設定を行う。
【0050】
そして減算器43で、位相・遅延調整フィルタ41の出力から伝達関数相当フィルタ42の出力を減算する。さらにイコライザ44でイコライジングを行って処理後の出力(ノイズ抑制音声信号Sa)とする。このノイズ抑制音声信号Saは、ズーム音等の機構音が低減された収音信号である。
音声信号処理部12では、このノイズ抑制音声信号Saについて、例えばレベル調整部12bや音質・音響効果処理部12cの処理等が行われて音声信号DT−Aが出力される。この音声信号DT−Aが、例えばビデオエンコーダ15で記録用のエンコードされる対象となり、あるいは外部送信される。
【0051】
すなわちこの図8に示す処理は、実際の両マイクロホン10A,10Bの出力のうち、機構音用マイクロホン10Bの出力に時間軸インパルス応答hioをFIRフィルタの係数として掛けて、外来音用マイクロホン10Aの出力から時間軸上で減算することで、ズーム音等のノイズが低減されたノイズ抑制音声信号Saを得るものである。
なお位相・遅延調整フィルタ41は、この場合に、両者の信号間(出力信号Oa,Ob間)のディレイまたは位相を調整するために、外来音用マイクロホン10Aの出力信号Oaに対して遅延処理や移相処理を行って時間軸での調整を行うものである。
またイコライザ44は、減算器43での減算信号の音を整えるためのイコライジングを行うものである。
【0052】
ここで改めて、キャリブレーションモード及びノイズ抑制モードの動作を、式で説明する。
上述の通り、外来音用マイクロホン10A、機構音用マイクロホン10Bの出力をOa,Obとし、さらに図9にも示しているが、以下のように定義する。
Ma,Mb:外来音用マイクロホン10A、機構音用マイクロホン10Bのマイク感度(周波数特性)
Pa,Pb:各マイクロホン10A、10Bの配置位置における録音対象物(つまり外来音)の音圧
Va,Vb:各マイクロホン10A、10Bの配置位置における機構由来振動成分(例えばズーム機構駆動時の振動成分(音圧相当))
【0053】
すると、出力信号Oa,Obについては、
Oa=Ma(Pa+Va)
Ob=Mb(Pb+Vb)
となる。
【0054】
キャリブレーションモードを、無響室のような静かな場所、または、吸音処理を施した無響箱の中で行うことを前提とすると、理想的には、録音対象物である外来音がないためPa=Pb=0となる。
MaとMbの特性・感度の違いを考えて、ここでは、便宜的にα=Ma/Mbとし、αを求めるのを目的とする。
図4又は図5のようなマイクロホン10A、10Bの取り付け構成において、ズーム動作等による振動源Vから、機械振動として基板21へ振動が伝わり、表裏にて各マイクロホン10A、10Bが振動を受けて、音圧相当の電圧を出力するとする。この場合、両マイクロホン10A、10B位置での機械的な振動の伝わり方は同じ、という意味ではVa=Vbである。
この時、
α=Ma/Mb=Oa/Ob
として求めることができる。
周波数特性で、この除算を行うことにより、両者の特性違いを示すαを求めることができる。以上が図6Aの処理の内容ということができる。
【0055】
次に図8の構成によるノイズ抑制モードの処理では、信号処理演算にて、下記計算を求めることによりズーム音に関してノイズを抑制し、録音対象物の音声が強調された信号Saを求めることができる。
ノイズ抑制音声信号Sa=Oa−α・Ob
=Ma・Pa+Ma・Va−(Ma/Mb)Mb・Pb−(Ma/Mb)Mb・Vb =Ma(Pa−Pb)
ここで、機構音用マイクロホン10Bは音孔32がふさがれているため、Pa>>Pbである。
つまり、Sa≒Ma・Paとなり、結果的には目的の音声が効率よく求められることになる。
【0056】
実際にこの両マイクロホン10A、10Bで測定した時間軸波形のデータ例を図10に示す。
図10では、外来音用マイクロホン10Aの出力信号Oaと、機構音用マイクロホン10Bの出力信号Obについて、静音環境下でズーム駆動させた際の音声波形と、通常の外部音声収音時の音声波形を示している。
外来音用マイクロホン10Aで収音した音(出力信号Oa)についてみると、録音対象である音声信号(外来音声)に対しては小さいレベルであるものの、ズーム音が混入して居ることがわかる。これはノイズとして気になるレベルである。
一方、機構音用マイクロホン10Bで収音した音(出力信号Ob)にも、ほぼ同レベルのズーム音が入っている。ところが機構音用マイクロホン10Bで収音した音としては外来音は殆ど入っていない。
したがって、この波形から見てもわかるとおり、ズーム音の特性を両者合わせて、上述の式、Sa=Oa−αObを実行することで、外来音声信号にはあまり影響がなく、ズーム音のみが効率よく抑制できる。
【0057】
結局、αObとは、図8で言えば伝達関数相当フィルタ42の出力であり、つまり出力信号Obについて時間軸インパルス応答hioのフィルタ処理を行った信号である。換言すれば、機構音用マイクロホン10Bで得られるズーム音と同一の音声信号成分が、外来音用マイクロホン10Aにおいて収音されているレベルを示す信号ともいえる。
このαObが機構音キャンセル信号となる。そしてOa−αObとは、減算器43での減算処理に相当する。
【0058】
以上の説明から理解されるように、本実施の形態では、音声信号処理部12(ノイズ抑制処理部12d)は、ノイズ抑制モードの処理として、マイク入力部11Aからの音声信号について、マイク入力部11Bからの音声信号から生成した機構音キャンセル信号(αOb:伝達関数相当フィルタ42の出力)を用いて、ズーム音等の機構音成分が低減されたノイズ抑制音声信号Saを生成する。
機構音キャンセル信号αObは、機構音用マイクロホン10Bから外来音用マイクロホン10Aへの伝達関数に基づくフィルタ処理を、出力信号Obに与えたものである。
具体的にはノイズ抑制処理部12dは、当該フィルタ処理で、インパルス応答hioを出力信号Obに畳み込んで機構音キャンセル信号を生成する。そして該機構音キャンセル信号を出力信号Oaから減算することで、ノイズ抑制音声信号Saを生成する。
このようなノイズ抑制モードの動作によって、録画時等に得られる音声信号DT−Aは、ズーム機構5a等の機構音の混入が著しく低減されたものとなる。従ってユーザは撮像装置1を用いて撮像する際に、動作音に気にせずにズーム操作を行うことができ、またズーム動作が行われても、録音される音声にズーム音が混入せず、品質のよい録音音声を得ることができる。
【0059】
また、ノイズ抑制モードでの伝達関数相当のフィルタ処理のためには、キャリブレーションモードで得られたインパルス応答hioを伝達関数情報として記憶しておくことで、適切に実行できる。
つまりキャリブレーションモードで伝達関数Hio、インパルス応答hioを求めることで、撮像装置1の個体差に応じた伝達関数を把握し、測定値に基づいて、伝達関数相当フィルタ42の係数設定を最適化して実行できる。このためノイズ抑制モードでは撮像装置1の個体状況に応じて得ることができ、ノイズ低減処理が適切に実行されるものとなる。
【0060】
また、CPU7によるモード制御で、音声信号処理部12(例えばDSP)において、ノイズ抑制モードの処理と、キャリブレーションモードの処理が実行されることで、構成上のハードウエア負担を最小限にして本実施の形態の動作を実行可能な撮像装置を提供できる。
【0061】
また機構音用マイクロホン10Bは、振動板31が音響的に撮像装置筐体22の外部の空間に対して閉ざされた状態で配置されていることで、外来音をほとんど収音しないで内部の振動Vによるノイズ音声を適切に収音できる。これにより機構音キャンセル信号は、上述のαOb、つまり出力信号Obにhioフィルタリングを行うものとして求める場合に、適切な機構音キャンセル信号となる。
一方、外来音用マイクロホン10Aは、振動板31が音響的に撮像装置筐体22の外部の空間と連通された状態で配置されていることで、外来音を適切に収音できる。
また機構音用マイクロホン10Bは、基板面音孔型のMEMSマイクロホンとされて基板面側が撮像装置筐体内の基板又は内部構造物に取り付けられること、及び外来音用マイクロホン10Aは、上面音孔型のMEMSマイクロホンとされて下面側が撮像装置筐体内の基板又は内部構造物に取り付けられることで、簡易な構成でマイクロホン10A、10Bを配置できる。
【0062】
<4.音声信号処理部の他の構成例>
音声信号処理部12の他の構成例を図11A,図11Bに示す。
図11Aは、音声信号処理部12にAGC処理部12a、レベル調整部12b、音質・音響効果処理部12c、ノイズ抑制処理部12dが設けられる例である。すなわち先の図3の例と比較して伝達関数測定部12eが設けられていない。
【0063】
例えば撮像装置1におけるズーム機構5a等の機構音、あるいは低減目的とする機構音の周波数特性に個体差が無いような場合、あるいは個体差に厳密に対応する必要が無いような場合は、必ずしも個々に伝達関数測定を行わなくてもよい。
すなわちノイズ抑制モードで用いるインパルス応答hio(伝達関数相当フィルタ42のフィルタ係数)が固定的であってもよい。そのような場合は、あらかじめ設計事項としてノイズ抑制処理部12dでのフィルタ係数を固定設定すればよく、伝達関数測定は不要である。あるいは固定のインパルス応答hio等の伝達関数情報をメモリ部8のフラッシュメモリや記録部9に記憶させておき、ノイズ抑制モード実行時に、記憶されている伝達関数情報に応じてフィルタ係数設定を行えばよい。
このような場合、音声信号処理部12は図11Aのような構成とすればよい。
【0064】
図11Bは、図3の構成に加えてノイズ測定部12fを有する例である。
ノイズ測定部12fは、ノイズ抑制モードの動作時に、ノイズ抑制音声信号Saについてノイズレベル測定を行う処理部である。
このように音声信号処理部12において、ノイズレベル測定を行う機能を備えるようにすることで、後述する図12C、図13Bのようなモード制御処理が可能となる。
【0065】
なお、図3、図11A、図11Bにおいて、AGC処理部12a、レベル調整部12b、音質・音響効果処理部12cは、一般的な音声信号処理として実行される機能を示している。本実施の形態に相当する撮像装置1においては、音声信号処理部12においてこれらの3つの機能が必ずしもすべて搭載される必要があるわけではない。
また、一般的な音声信号処理として、図示及び説明していない処理機能が追加されることも当然に考えられる。
本実施の形態の音声信号処理部12としては、少なくともノイズ抑制処理部12dを備える。また伝達関数測定部12eは備える場合と備えない場合の両方が考えられる。また伝達関数測定部12eは備える場合と備えない場合の両方において、ノイズ測定部12fを備えるようにすることも考えられる。
また、伝達関数測定部12eやノイズ測定部12fは音声信号処理部12(すなわち収音信号から録画用等の音声信号DT−Aを生成するための処理ブロック)の機能として説明したが、例えばCPU7等、音声信号処理部12とは別の演算処理装置において実現してもよい。
【0066】
<5.モード制御例>
続いて、キャリブレーションモードが実行される撮像装置1において、キャリブレーションモードとノイズ抑制モードのモード制御について各種の例を述べる。
【0067】
例えば図2、図3で示した撮像装置1では、工場出荷前の調整行程でキャリブレーションモードが実行されるとしたが、それ以外の機会にキャリブレーションモードが実行されてもよい。図12は、CPU7が音声信号処理部12にキャリブレーションモードを実行させる場合の処理例を示している。
【0068】
図12Aは、ユーザの操作に応じて実行する例である。CPU7はユーザの操作入力部4からの操作によりキャリブレーションモードの実行を指示する操作を行ったことを検知したら、処理をステップF10からF11に進め、キャリブレーションモード処理、すなわち図7で説明した処理を実行する。
【0069】
図12Bは、所定期間経過を実行のトリガとする例である。
CPU7はステップF20で、前回のキャリブレーション実行時からの期間を判定する。
そしてステップF21で所定期間経過していると判定した場合は、ステップF22でキャリブレーションモード処理(図7の処理)を実行する。キャリブレーション実行後は、その後のステップF20の判断のために、ステップF23でキャリブレーション実行日時の情報を記憶する。
この場合、例えばCPU7がステップF21で、前回実行時より「半年経過」「一年経過」などを判断するようにすれば、その半年や一年ごとに定期的にキャリブレーションモードの動作が実行されることになる。
【0070】
図12Cは、ノイズ悪化に応じてキャリブレーションモードを実行する例である。これは図11Bのように音声信号処理部12にノイズ測定部12fが実装されている場合(ノイズ測定が可能な場合)に実行できるモード制御例である。
CPU7は定期的にステップF30のノイズレベルの測定結果の取り込み処理を行い、現時点でのノイズ測定結果を確認する。その結果、S/N悪化と判断した場合は、CPU7はステップF31からF32に進み、キャリブレーションモード処理(図7の処理)を実行する。
【0071】
例えば以上の各例のようにCPU7は、ユーザの操作、キャリブレーションの不実行継続期間に応じて、或いは音声信号品質測定(ノイズレベル測定)結果に応じて、キャリブレーションモード処理を実行し、伝達関数情報(Hio,hio)を更新することで、ノイズ音の経時変化等に対応したノイズ低減処理が可能となる。
【0072】
なお、図12B、図12Cの処理ではユーザの意思に関係なくキャリブレーションモード処理が発動されてしまうため、図13A,図13Bのような処理としてもよい。
図13Aの処理は、CPU7はステップF40で、前回のキャリブレーション実行時からの期間を判定する。
そしてステップF41で所定期間経過していると判定した場合は、ステップF42でキャリブレーションの実行推奨提示をユーザに対して行うための制御を行う。例えば表示部3に「キャリブレーション実行をお勧めします」等の表示を実行するように表示制御部2に指示する。あるいは同様のメッセージ内容の音声、もしくは警告としての電子音等を音声出力部16から出力させる。あるいはその両方の制御を行う。
【0073】
図13Bの処理は、CPU7は定期的にステップF50のノイズレベルの測定結果の取り込み処理を行い、現時点でのノイズ測定結果を確認する。その結果、S/N悪化と判断した場合は、CPU7はステップF51からF52に進み、キャリブレーションの実行推奨提示をユーザに対して行うための制御(表示制御又は音声出力制御又はその両方)を行う。
【0074】
ユーザにとっては、推奨提示を見聞きすることで、キャリブレーションモードを実行した方がよいことを知り、任意の時点で実行指示操作を行う。結局図12Aの処理でキャリブレーションモード処理が実行されることになる。
このように、キャリブレーションの不実行継続期間に応じて、或いは音声信号品質測定結果に応じて、キャリブレーション実行推奨の提示出力制御を行い、その後ユーザ操作に応じてキャリブレーションモード処理が実行されるようにすることで、ユーザの都合に応じてキャリブレーションモード処理が実行できる。
【0075】
続いてキャリブレーションモードとノイズ抑制モードの切換制御について述べる。
図14Aは、基本的には常時ノイズ抑制モードとする例である。
CPU7は通常はステップF62として、音声信号処理部12にノイズ抑制モードを指示しておく。つまりノイズ抑制処理部12dが通常的に作動する状態としておく。
そしてCPU7はステップF60としてキャリブレーションモード実行のトリガを検知したときのみステップF61でキャリブレーションモードとしての処理(図7の処理)を実行する。
ステップF60で検知するトリガとは、例えば図12Aのユーザ操作であったり、図12Bの所定期間経過、あるいは図12Cのノイズ悪化判定等のことである。
【0076】
この場合、ノイズ抑制処理部12dは、キャリブレーションモード処理時以外は常時動作しているが、上述の実施の形態において音質的な問題はない。
例えばズーム音をノイズとして抑制する目的を考えると、ズーム音は常時発生するわけではなく、ズーム操作を行った場合のみである。ところが図10で説明したように機構音用マイクロホン10B側は、外来音はほとんど収音しない。このため、ズーム駆動が行われていない期間(ノイズ未発生期間)であっても、出力信号Obはきわめて低いレベルであり、実質的に減算器43での減算処理を行ったとしても、出力信号Oaに変化は無いためである。その上で、ノイズ発生時(ズーム駆動時)は、適切なノイズ抑制が実現される。
【0077】
一方、例えばノイズ発生時のみにノイズ抑制モードの指示が行われるようにしてもよい。図14Bには、ノイズとしてズーム音を対象とし、ズーム駆動時のみノイズ抑制モードとする例を示している。
CPU7はステップF70ではキャリブレーションモード実行のトリガの有無を判断し、トリガを検知したときのみステップF71でキャリブレーションモードとしてキャリブレーションモード処理(図7の処理)を実行する。
その他の期間では、ステップF72でユーザのズーム操作を監視している。
ユーザがズーム操作を行ったら、CPU7はステップF73で音声信号処理部12に対してノイズ抑制モードを指示する。すなわちノイズ抑制処理部12dの処理を実行させる。そしてCPU7はステップF74でユーザの操作に応じたズーム駆動を、撮像部5に指示し、ズーム機構5aを駆動させる。
ズーム駆動が終了したら、ステップF75からF76に進み、CPU7は音声信号処理部12に対してノイズ抑制モードの解除、つまりノイズ抑制処理部12dの処理の終了を指示する。
【0078】
このような処理によれば、ズーム駆動時のみ、音声信号処理部12でのノイズ抑制処理部12dの処理が実行されるため、常時的に行われる音声信号処理部12の処理量を軽減できる。
なお、ここではズーム音を対象としてズーム駆動時にノイズ抑制モードとする例を挙げたが、抑制対象とする機構音に応じて、その機構音発生時にノイズ抑制モードとする例は各種考えられる。例えばオートフォーカス、オートアイリスなどのレンズや絞りの駆動制御時、あるいは内蔵するHDDの動作音発生時に、ノイズ抑制モードとすることなども考えられる。
【0079】
<6.各種マイクロホン態様>
図1の実施の形態の構成例では、撮像装置1に外来音用マイクロホン10Aと機構音用マイクロホン10Bを備える構成を述べたが、外来音用マイクロホン10Aは、必ず下撮像装置1に内蔵されなくてもよい。
例えば図15Aは、撮像装置1にはマイク接続端子19が設けられ、これに別体の外部マイクロホン10ASが接続される例である。外部マイクロホン10ASで得られる音声信号は、マイク入力部11Aから出力信号Oaとして音声信号処理部12に供給される。
すなわち撮像装置1としては、機構音用マイクロホン10Bは内蔵するが、図1等で説明した外来音用マイクロホン10Aは内蔵されなくて、外付けのマイクロホンが用いられてもよい。
【0080】
また図15Bでは、撮像装置1に外来音用マイクロホン10Aは設けられるが、接続端子19及びスイッチSWも設けられる例を示している。例えば接続端子19に図15Aに示したような外部マイクロホン10ASが接続された場合は、スイッチSWが接続端子側とされ、外部マイクロホン10ASによる収音信号が、マイク入力部11Aから出力信号Oaとして音声信号処理部12に供給されることとなる。外部マイクロホン10ASが接続されていなければスイッチSWは外来音用マイクロホン10A側に接続される。
つまり撮像時の収音用のマイクロホンを、ユーザが内蔵の外来音用マイクロホン10Aとするか、別体の外部マイクロホン10ASとするかを任意に選択できる構成例である。
【0081】
この図15の例のように撮像装置1としては、少なくとも機構音用マイクロホン10B及びそれに対応するマイク入力部11Bを備えるが、外来音用マイクロホン10Aは備えず、マイク入力部11A及び接続端子19を備える構成としてもよい。
【0082】
なお、別体の外部マイクロホン10ASを使用する場合は、接続時にキャリブレーションモード処理が実行されることが好ましい。例えばCPU7は接続端子19に外部マイクロホン10ASが接続されたことを検知したら、それをトリガとしてキャリブレーションモード処理を実行する。そして得られた伝達関数情報によりノイズ抑制処理部12dのフィルタ係数を更新する。これにより外部マイクロホン10ASを用いても適切なノイズ抑制処理が実現できる。
【0083】
続いて図16で、2つのマイクロホン10A、10Bを備える場合の配置例について述べる。
図4,図5では、各マイクロホン10A、10Bを基板21の表裏に配置する例を示したが、例えば図16のような例も想定される。
【0084】
図16Aは、取付部位70の同一面側に各マイクロホン10A、10Bを装着する例である。なお取付部位70とは、基板21や筐体内部構造物として、マイクロホン10A、10Bを取り付ける部位を表している。
この場合、外来音用マイクロホン10Aは音孔32側が開放されるように装着し、機構音用マイクロホン10Bは音孔32側が取付部位70で塞がれるように装着すればよい。
【0085】
図16Bは、各マイクロホン10A、10Bがそれぞれ異なる取付部位70a,70bに装着される例である。
外来音用マイクロホン10Aは取付部位70aとしての基板等に、音孔32側が開放されるように配置される。
機構音用マイクロホン10Bは取付部位70bとしての基板等に、音孔32側が塞がれるように配置される。
【0086】
図16Cは、各マイクロホン10A、10Bを同一の取付部位70の表裏に配置する例であるが、いずれも音孔32側を取付部位70によっては塞がない例である。但し機構音用マイクロホン10Bについては、撮像装置1の筐体22の内部で音響的に密閉された空間CS内が設けられる場合に、その空間CS内として、外来音が収音されにくくなるようにした例である。
図16Dもほぼ同様であるが、外来音用マイクロホン10Aは筐体22内ではあるが外部に連通する空間に位置し、一方、機構音用マイクロホン10Bは、筐体22内であって外部に音響的に連通せず、かつズーム機構5aなどの動作ノイズ発生源となる機構部71側に配置した例である。
【0087】
例えば以上の各例のように、マイクロホン10A、10Bの配置態様は各種考えられる。もちろん図示した例以外にも各種想定される。
なお、基本的には機構音用マイクロホン10Bは、外来音が収音しにくい取付態様とすることが望ましい。
【0088】
ところで、ここまでは外来音用マイクロホン10Aを1つとしてモノラルで録音する場合を例に説明してきたが、これはあくまで説明を簡略化するためであり、ステレオ収音の場合も、当然に上述してきた技術は適用できる。
例えば図17Aに示すように、外来音用マイクロホン10Aとして2つのマイクロホン10AL、10ARを搭載する場合、機構音用マイクロホン10Bとしても2つのマイクロホン10BL、10BRを設け、L、Rチャンネルのそれぞれの組(マイクロホン10ALと10BLの組、及びマイクロホン10ARと10BRの組)で図8のノイズ抑制処理や図6の伝達関数測定処理が行われるようにすればよい。
【0089】
また図17Bのように、ステレオマイクロホンを構成する外来音用マイクロホン10AL、10ARの設置位置があまり離れていない(メカ的な接続機構特性の差が少ない)場合、機構音用マイクロホン10Bを1つとして、合計3個のマイクロホンユニットを備える例も考えられる。
当然この場合、マイクロホン10ALと10Bの組、及びマイクロホン10ARと10Bの組で、図8のノイズ抑制処理や図6の伝達関数測定処理が行われるようにすればよい。
【0090】
<7.変形例>
以上、実施の形態について各種の例を説明してきたが、さらに多様な変形例は各種考えられる。
実施の形態の撮像装置1は、動画撮像を行うビデオカメラとしたが、もちろん静止画撮像のみを行うデジタルスチルカメラであっても、収音音声について音声処理を行う装置であれば同様の技術が適用できる。
また音声信号処理については、マイク入力部11A、11Bでデジタルデータ化された出力信号Oa,Obを対象としたが、ノイズ抑制処理部12dの処理はアナログ信号処理で実行することも可能である。
【0091】
また、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ等として、撮像した動画や静止画を記録部9に記録するものをあげたが、その装置自体では動画や静止画の画像データを記録せずに外部機器に送信する撮像装置であっても、本開示の技術は適用できる。
また本開示で言う撮像装置とは、機器態様に限らず、撮像機能と収音音声信号処理を行う機能を有する機器の総称であり、所謂ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ以外にも、携帯電話機、情報処理装置、ゲーム機等で撮像機能及び収音音声信号処理機能を有する機器が該当する。また撮像機能のない各種電子機器、少なくともマイクロホンで音声収音を行う各種機器において本開示のノイズ抑制処理の技術を応用することも可能である。例えば情報処理装置、ゲーム機、携帯電話機、録音装置などである。
【0092】
実施の形態では主にズーム音をノイズとして抑制対象とする例で述べたが、他の機構音についても同様に適用できる。例えばズーム動作以外のレンズ系駆動音が発生する場合(オートフォーカスによるレンズ駆動音やオートアイリスによる絞り駆動音)でも、本開示の技術は有用である。
さらに記録部9等としてHDDが内蔵される場合のHDD駆動音や、ファンが内蔵される場合のファンモータ音や風切り音などをノイズとして低減させたい場合も、本開示の技術は有用である。
キャリブレーションモード処理を、これらノイズとして抑制対象となる音を発生させた状態で行えば、ノイズ抑制モードとして適切なノイズ低減が可能となる。
【0093】
なお本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)撮像素子部、及び被写体からの入射光を上記撮像素子部に結像させるレンズ系を有する撮像部と、
上記撮像部の上記撮像素子部で光電変換された信号から撮像画像信号を生成する撮像信号処理部と、
外来音を収音する外来音用マイクロホンで得られる音声信号を入力する第1のマイク入力部と、
装置機構音を収音する機構音用マイクロホンと、
上記機構音用マイクロホンで得られる音声信号を入力する第2のマイク入力部と、
上記第1のマイク入力部からの音声信号について、上記第2のマイク入力部からの音声信号から生成した機構音キャンセル信号を用いて機構音成分が低減されたノイズ抑制音声信号を生成するノイズ抑制処理部と、
を備えた撮像装置。
(2)上記機構音用マイクロホンから上記外来音用マイクロホンへの伝達関数情報を記憶する記憶部を備え、
上記ノイズ抑制処理部は、上記第2のマイク入力部からの音声信号について上記伝達関数情報に基づくフィルタ処理で上記機構音キャンセル信号を生成する上記(1)に記載の撮像装置。
(3)上記記憶部には、上記伝達関数情報として、上記機構音用マイクロホンから上記外来音用マイクロホンへの伝達関数の周波数軸表現または時間軸表現での応答の情報が記憶されており、
上記ノイズ抑制処理部は、上記フィルタ処理で、上記応答を上記第2のマイク入力部からの音声信号に畳み込んで上記機構音キャンセル信号を生成し、該機構音キャンセル信号を上記第1のマイク入力部からの音声信号から減算することで、上記ノイズ抑制音声信号を生成する上記(2)に記載の撮像装置。
(4)上記第1のマイク入力部からの音声信号と、上記第2のマイク入力部からの音声信号との除算処理により、上記機構音用マイクロホンから上記外来音用マイクロホンへの伝達関数を計測する伝達関数測定部と、
キャリブレーション動作として、装置機構音を発生させた状態で、上記伝達関数測定部に伝達関数の計測を実行させ、計測に基づいて得られた伝達関数情報を上記記憶部に記憶させるキャリブレーション制御部と、
をさらに備えた上記(2)又は(3)に記載の撮像装置。
(5)上記ノイズ抑制処理部の動作を実行させるノイズ抑制モードと、上記伝達関数測定部の動作の実行させるキャリブレーションモードを指示するモード制御部をさらに備えた上記(4)に記載の撮像装置。
(6)上記モード制御部は、キャリブレーションモードの期間以外は、上記ノイズ抑制モードを指示する上記(5)に記載の撮像装置。
(7)上記モード制御部は、キャリブレーションモードの期間以外において、装置機構音が発生する期間、上記ノイズ抑制モードを指示する上記(5)に記載の撮像装置。
(8)上記モード制御部は、キャリブレーションの不実行継続期間に応じて、或いは音声信号品質測定結果に応じて、キャリブレーション実行推奨の提示出力制御を行う上記(5)乃至(7)に記載の撮像装置。
(9)上記機構音用マイクロホンは、振動板が音響的に撮像装置筐体外部の空間に対して閉ざされた状態で配置されている上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の撮像装置。
(10)外来音を収音する外来音用マイクロホンをさらに備え、
上記外来音用マイクロホンは、振動板が音響的に撮像装置筐体外部の空間と連通された状態で配置されている上記(1)乃至(9)のいずれかに記載の撮像装置。
(11)上記機構音用マイクロホンは、基板面音孔型のMEMSマイクロホンとされて基板面側が撮像装置筐体内の基板又は内部構造物に取り付けられる上記(1)乃至(10)のいずれかに記載の撮像装置。
(12)上記外来音用マイクロホンは、上面音孔型のMEMSマイクロホンとされて下面側が撮像装置筐体内の基板又は内部構造物に取り付けられる上記(1)乃至(11)のいずれかに記載の撮像装置。
(13)上記外来音用マイクロホンはステレオマイクロホンセットが装備され、
上記機構音用マイクロホンは、一つのマイクロホンが装備される上記(1)乃至(12)のいずれかに記載の撮像装置。
(14)上記機構音用マイクロホンは、上記装置機構音として、少なくとも上記撮像部における上記レンズ系のズーム動作音を収音可能に配置されている上記(1)乃至(13)のいずれかに記載の撮像装置。
【符号の説明】
【0094】
1 撮像装置、2 表示部、3 表示制御部、4 操作入力部、5 撮像部、6 撮像信号処理部、7 CPU、8 メモリ部、9 記録部、10A 外来音用マイクロホン、10B 機構音用マイクロホン、11A,11B マイク入力部、12 音声信号処理部、12d ノイズ抑制処理部、12e 伝達関数測定部、12f ノイズ測定部、21 基板、22 筐体、31 振動板、32 音孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子部、及び被写体からの入射光を上記撮像素子部に結像させるレンズ系を有する撮像部と、
上記撮像部の上記撮像素子部で光電変換された信号から撮像画像信号を生成する撮像信号処理部と、
外来音を収音する外来音用マイクロホンで得られる音声信号を入力する第1のマイク入力部と、
装置機構音を収音する機構音用マイクロホンと、
上記機構音用マイクロホンで得られる音声信号を入力する第2のマイク入力部と、
上記第1のマイク入力部からの音声信号について、上記第2のマイク入力部からの音声信号から生成した機構音キャンセル信号を用いて機構音成分が低減されたノイズ抑制音声信号を生成するノイズ抑制処理部と、
を備えた撮像装置。
【請求項2】
上記機構音用マイクロホンから上記外来音用マイクロホンへの伝達関数情報を記憶する記憶部を備え、
上記ノイズ抑制処理部は、上記第2のマイク入力部からの音声信号について上記伝達関数情報に基づくフィルタ処理で上記機構音キャンセル信号を生成する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
上記記憶部には、上記伝達関数情報として、上記機構音用マイクロホンから上記外来音用マイクロホンへの伝達関数の周波数軸表現または時間軸表現での応答の情報が記憶されており、
上記ノイズ抑制処理部は、上記フィルタ処理で、上記応答を上記第2のマイク入力部からの音声信号に畳み込んで上記機構音キャンセル信号を生成し、該機構音キャンセル信号を上記第1のマイク入力部からの音声信号から減算することで、上記ノイズ抑制音声信号を生成する請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
上記第1のマイク入力部からの音声信号と、上記第2のマイク入力部からの音声信号との除算処理により、上記機構音用マイクロホンから上記外来音用マイクロホンへの伝達関数を計測する伝達関数測定部と、
キャリブレーション動作として、装置機構音を発生させた状態で、上記伝達関数測定部に伝達関数の計測を実行させ、計測に基づいて得られた伝達関数情報を上記記憶部に記憶させるキャリブレーション制御部と、
をさらに備えた請求項2に記載の撮像装置。
【請求項5】
上記ノイズ抑制処理部の動作を実行させるノイズ抑制モードと、上記伝達関数測定部の動作の実行させるキャリブレーションモードを指示するモード制御部をさらに備えた請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
上記モード制御部は、キャリブレーションモードの期間以外は、上記ノイズ抑制モードを指示する請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
上記モード制御部は、キャリブレーションモードの期間以外において、装置機構音が発生する期間、上記ノイズ抑制モードを指示する請求項5に記載の撮像装置。
【請求項8】
上記モード制御部は、キャリブレーションの不実行継続期間に応じて、或いは音声信号品質測定結果に応じて、キャリブレーション実行推奨の提示出力制御を行う請求項5に記載の撮像装置。
【請求項9】
上記機構音用マイクロホンは、振動板が音響的に撮像装置筐体外部の空間に対して閉ざされた状態で配置されている請求項1に記載の撮像装置。
【請求項10】
外来音を収音する外来音用マイクロホンをさらに備え、
上記外来音用マイクロホンは、振動板が音響的に撮像装置筐体外部の空間と連通された状態で配置されている請求項1に記載の撮像装置。
【請求項11】
上記機構音用マイクロホンは、基板面音孔型のMEMSマイクロホンとされて基板面側が撮像装置筐体内の基板又は内部構造物に取り付けられる請求項9に記載の撮像装置。
【請求項12】
上記外来音用マイクロホンは、上面音孔型のMEMSマイクロホンとされて下面側が撮像装置筐体内の基板又は内部構造物に取り付けられる請求項10に記載の撮像装置。
【請求項13】
上記外来音用マイクロホンはステレオマイクロホンセットが装備され、
上記機構音用マイクロホンは、一つのマイクロホンが装備される請求項1に記載の撮像装置。
【請求項14】
上記機構音用マイクロホンは、上記装置機構音として、少なくとも上記撮像部における上記レンズ系のズーム動作音を収音可能に配置されている請求項1に記載の撮像装置。
【請求項15】
撮像素子部、及び被写体からの入射光を上記撮像素子部に結像させるレンズ系を有する撮像部と、上記撮像部の上記撮像素子部で光電変換された信号から撮像画像信号を生成する撮像信号処理部とを有する撮像装置の音声収音方法として、
外来音を収音する外来音用マイクロホンで得られる音声信号を第1のマイク入力部で入力し、
装置機構音を収音する機構音用マイクロホンで得られる音声信号を第2のマイク入力部で入力し、
上記第1のマイク入力部からの音声信号について、上記第2のマイク入力部からの音声信号から生成した機構音キャンセル信号を用いて機構音成分が低減されたノイズ抑制音声信号を生成する音声収音方法。
【請求項1】
撮像素子部、及び被写体からの入射光を上記撮像素子部に結像させるレンズ系を有する撮像部と、
上記撮像部の上記撮像素子部で光電変換された信号から撮像画像信号を生成する撮像信号処理部と、
外来音を収音する外来音用マイクロホンで得られる音声信号を入力する第1のマイク入力部と、
装置機構音を収音する機構音用マイクロホンと、
上記機構音用マイクロホンで得られる音声信号を入力する第2のマイク入力部と、
上記第1のマイク入力部からの音声信号について、上記第2のマイク入力部からの音声信号から生成した機構音キャンセル信号を用いて機構音成分が低減されたノイズ抑制音声信号を生成するノイズ抑制処理部と、
を備えた撮像装置。
【請求項2】
上記機構音用マイクロホンから上記外来音用マイクロホンへの伝達関数情報を記憶する記憶部を備え、
上記ノイズ抑制処理部は、上記第2のマイク入力部からの音声信号について上記伝達関数情報に基づくフィルタ処理で上記機構音キャンセル信号を生成する請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
上記記憶部には、上記伝達関数情報として、上記機構音用マイクロホンから上記外来音用マイクロホンへの伝達関数の周波数軸表現または時間軸表現での応答の情報が記憶されており、
上記ノイズ抑制処理部は、上記フィルタ処理で、上記応答を上記第2のマイク入力部からの音声信号に畳み込んで上記機構音キャンセル信号を生成し、該機構音キャンセル信号を上記第1のマイク入力部からの音声信号から減算することで、上記ノイズ抑制音声信号を生成する請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
上記第1のマイク入力部からの音声信号と、上記第2のマイク入力部からの音声信号との除算処理により、上記機構音用マイクロホンから上記外来音用マイクロホンへの伝達関数を計測する伝達関数測定部と、
キャリブレーション動作として、装置機構音を発生させた状態で、上記伝達関数測定部に伝達関数の計測を実行させ、計測に基づいて得られた伝達関数情報を上記記憶部に記憶させるキャリブレーション制御部と、
をさらに備えた請求項2に記載の撮像装置。
【請求項5】
上記ノイズ抑制処理部の動作を実行させるノイズ抑制モードと、上記伝達関数測定部の動作の実行させるキャリブレーションモードを指示するモード制御部をさらに備えた請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
上記モード制御部は、キャリブレーションモードの期間以外は、上記ノイズ抑制モードを指示する請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
上記モード制御部は、キャリブレーションモードの期間以外において、装置機構音が発生する期間、上記ノイズ抑制モードを指示する請求項5に記載の撮像装置。
【請求項8】
上記モード制御部は、キャリブレーションの不実行継続期間に応じて、或いは音声信号品質測定結果に応じて、キャリブレーション実行推奨の提示出力制御を行う請求項5に記載の撮像装置。
【請求項9】
上記機構音用マイクロホンは、振動板が音響的に撮像装置筐体外部の空間に対して閉ざされた状態で配置されている請求項1に記載の撮像装置。
【請求項10】
外来音を収音する外来音用マイクロホンをさらに備え、
上記外来音用マイクロホンは、振動板が音響的に撮像装置筐体外部の空間と連通された状態で配置されている請求項1に記載の撮像装置。
【請求項11】
上記機構音用マイクロホンは、基板面音孔型のMEMSマイクロホンとされて基板面側が撮像装置筐体内の基板又は内部構造物に取り付けられる請求項9に記載の撮像装置。
【請求項12】
上記外来音用マイクロホンは、上面音孔型のMEMSマイクロホンとされて下面側が撮像装置筐体内の基板又は内部構造物に取り付けられる請求項10に記載の撮像装置。
【請求項13】
上記外来音用マイクロホンはステレオマイクロホンセットが装備され、
上記機構音用マイクロホンは、一つのマイクロホンが装備される請求項1に記載の撮像装置。
【請求項14】
上記機構音用マイクロホンは、上記装置機構音として、少なくとも上記撮像部における上記レンズ系のズーム動作音を収音可能に配置されている請求項1に記載の撮像装置。
【請求項15】
撮像素子部、及び被写体からの入射光を上記撮像素子部に結像させるレンズ系を有する撮像部と、上記撮像部の上記撮像素子部で光電変換された信号から撮像画像信号を生成する撮像信号処理部とを有する撮像装置の音声収音方法として、
外来音を収音する外来音用マイクロホンで得られる音声信号を第1のマイク入力部で入力し、
装置機構音を収音する機構音用マイクロホンで得られる音声信号を第2のマイク入力部で入力し、
上記第1のマイク入力部からの音声信号について、上記第2のマイク入力部からの音声信号から生成した機構音キャンセル信号を用いて機構音成分が低減されたノイズ抑制音声信号を生成する音声収音方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−110629(P2013−110629A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254850(P2011−254850)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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