説明

撮像装置および撮像方法

【課題】解像性能ピーク位置を容易に検出可能で、光学系を簡単化でき、コスト低減を図ることができ、しかもノイズの影響が小さい復元画像を得ることが可能な撮像装置および撮像方法を提供する。
【解決手段】結像レンズによる撮像素子120の受光面への結像の波面を変形させる機能を有し光波面変調機能の発現、非発現が外部に依存する外部依存型光波面変調素子114を備えた光学系110と、撮像素子120と、被写体分散画像信号より分散のない画像信号を生成する画像処理装置140とを有し、外部依存型光波面変調素子114は、変調機能制御部200により光波面変調機能が非発現状態に制御されているときは1焦点状態となって光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するような結像性能を有し、発現状態に制御されているときは複数焦点状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子を用い、光学系を備えたデジタルスチルカメラや携帯電話搭載カメラ、携帯情報端末搭載カメラ、画像検査装置、自動制御用産業カメラ等の撮像装置および撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年急峻に発展を遂げている情報のデジタル化に相俟って映像分野においてもその対応が著しい。
特に、デジタルカメラに象徴されるように撮像面は従来のフィルムに変わって固体撮像素子であるCCD(Charge Coupled Device),CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサが使用されているのが大半である。
【0003】
このように、撮像素子にCCDやCMOSセンサを使った撮像レンズ装置は、被写体の映像を光学系により光学的に取り込んで、撮像素子により電気信号として抽出するものであり、デジタルスチルカメラの他、ビデオカメラ、デジタルビデオユニット、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、携帯情報端末(PDA:Personal DigitalAssistant)、画像検査装置、自動制御用産業カメラ等に用いられている。
【0004】
図27は、一般的な撮像レンズ装置の構成および光束状態を模式的に示す図である。
この撮像レンズ装置1は、光学系2とCCDやCMOSセンサ等の撮像素子3とを有する。
光学系は、物体側レンズ21,22、絞り23、および結像レンズ24を物体側(OBJS)から撮像素子3側に向かって順に配置されている。
【0005】
撮像レンズ装置1においては、図27に示すように、ベストフォーカス面を撮像素子面上に合致させている。
図28(A)〜(C)は、撮像レンズ装置1の撮像素子3の受光面でのスポット像を示している。
【0006】
また、位相板(Wavefront Coding optical element)により光束を規則的に分散し、デジタル処理により復元させ被写界深度の深い画像撮影を可能にする等の撮像装置が提案されている(たとえば非特許文献1,2、特許文献1〜5参照)。
また、伝達関数を用いたフィルタ処理を行うデジタルカメラの自動露出制御システムが提案されている(たとえば特許文献6参照)。
【非特許文献1】“Wavefront Coding;jointly optimized optical and digital imaging systems”,Edward R.Dowski,Jr.,Robert H.Cormack,Scott D.Sarama.
【非特許文献2】“Wavefront Coding;A modern method of achieving high performance and/or low cost imaging systems”,Edward R.Dowski,Jr.,Gregory E.Johnson.
【特許文献1】USP6,021,005
【特許文献2】USP6,642,504
【特許文献3】USP6,525,302
【特許文献4】USP6,069,738
【特許文献5】特開2003−235794号公報
【特許文献6】特開2004−153497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した各文献にて提案された撮像装置においては、その全ては通常光学系に上述の位相板を挿入した場合のPSF(Point−Spread−Function)が一定になっていることが前提であり、PSFが変化した場合は、その後のカーネルを用いたコンボリューションにより、被写界深度の深い画像を実現することは極めて難しい。
したがって、単焦点でのレンズではともかく、ズーム系やAF系などのレンズでは、その光学設計の精度の高さやそれに伴うコストアップが原因となり採用するには大きな問題を抱えている。
換言すれば、従来の撮像装置においては、適正なコンボリューション演算を行うことができず、ワイド(Wide)時やテレ(Tele)時のスポット(SPOT)像のズレを引き起こす非点収差、コマ収差、ズーム色収差等の各収差を無くす光学設計が要求される。
しかしながら、これらの収差を無くす光学設計は光学設計の難易度を増し、設計工数の増大、コスト増大、レンズの大型化の問題を引き起こす。
【0008】
また、上述した各文献に開示された装置においては、たとえば暗所における撮影で、信号処理によって画像を復元する際、ノイズも同時に増幅してしまう。
したがって、たとえば上述した位相板等の光波面変調素子とその後の信号処理を用いるような、光学系と信号処理を含めた光学システムでは、暗所での撮影を行う場合、ノイズが増幅してしまい、復元画像に影響を与えてしまうという不利益がある。
【0009】
また、深度拡張技術は、深い被写界深度内で像性能の変化量が少ないために、ディフォーカスに対する光学性能ピーク位置の検出が困難であり、適切な評価が行い難いため、製造工程に負担をかけ、また、歩留りの面でも不利であるという欠点を持つ。
位相変調を行った深度拡張光学系においては、システム名が意味するように像性能の変化量が小さいために、解像性能の変化を尺度としてバックフォーカス調整するのは、変化量を見るために広い範囲をディフォーカスしてピークらしきところを算出する事になる。この場合は、広い範囲をディフォーカスするための手間がかかるか、粗くサーチするために、その精度が落ちるといったように、製造工程に負荷がかかるか、製品の性能が劣化してしまう。
特に、復元を前提とした深度拡張光学系では、保証される深度内では、性能の変化が極端に抑えられているため、解像ピークの算出は極めて困難である。
そこで、深度拡張光学系において、解像性能ピーク位置を容易に検出可能とすることが
課題となる。
【0010】
さらに、深度拡張光学系では、その名が示すとおり被写体の奥行き感によるボケを減少、あるいは喪失させている。一般的な写真撮影において、意図的に背景にボケを生じさせる事で被写体のクローズアップを図る手法もあり、こういった用途には、深度拡張光学系は向かない。
複数のカメラを持つことなく、用途に応じて深度の異なる撮影を行いたい場合、F値の明暗によって従来は行ってきたが、F値を暗くした光学系は、シャッター速度の低下やノイズの増加などにつながり、望ましくない。
【0011】
本発明の目的は、解像性能ピーク位置を容易に検出可能で、光学系を簡単化でき、コスト低減を図ることができ、しかもノイズの影響が小さい復元画像を得ることが可能な撮像装置および撮像方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の観点の撮像装置は、光波面変調機能の発現、非発現が外部に依存する外部依存型光波面変調素子を含む光学系と、前記光学系を通過した被写体像を撮像する撮像素子と、前記外部依存型光波面変調素子の光波面変調機能の発現、非発現を制御する変調機能制御部と、前記撮像素子からの被写体の画像信号に対して所定の処理を施す画像処理部と、を有し、前記光学系は、前記外部依存型光波面変調素子が、前記変調機能制御部により光波面変調機能が非発現状態に制御されているときは、1焦点状態となり、発現状態に制御されているときは複数焦点状態となる。
【0013】
本発明の第2の観点は、光波面変調素子を含む光学系と、前記光学系の光路に配置され、前記光波面変調素子の光波面変調機能を相殺する逆光波面変調機能の発現、非発現が外部に依存する外部依存型逆光波面変調素子と、前記光学系を通過した被写体像を撮像する撮像素子と、前記外部依存型逆光波面変調素子の光波面変調機能の発現、非発現を制御する変調機能制御部と、前記撮像素子からの被写体の画像信号に対して所定の処理を施す画像処理部と、を有し、前記光学系は、前記外部依存型逆光波面変調素子が、前記変調機能制御部により逆光波面変調機能が発現状態に制御されているときは、1焦点状態となり、非発現状態に制御されているときは複数焦点状態となる。
【0014】
好適には、前記画像処理部は、所定の情報に応じて光学的伝達関数(OTF)に対してフィルタ処理を行う機能を有し、前記変調機能制御部の変調機能の発現、非発現の切り替えが、前記画像処理部に作用するフィルタの切り替えとリンクしている。
【0015】
好適には、前記画像処理部の画像処理後の画像をカラーまたは白黒で表示可能なモニタを有し、前記変調機能制御部の変調機能の発現、非発現の切り替えが、前記モニタ出力のカラー出力と白黒出力の切り替えとリンクしている。
【0016】
好適には、前記画像処理部は、所定の情報に応じて光学的伝達関数(OTF)に対するフィルタ処理による色収差補正機能を有し、前記変調機能制御部の変調機能の発現、非発現の切り替えが、前記画像処理部の色収差補正機能の切り替えとリンクしている。
【0017】
好適には、前記画像処理部は、複数種類の復元フィルタを用いて前記画像の復元処理を行う。
【0018】
好適には、前記画像処理部は、フィルタの演算係数を格納するメモリ手段を有する。
【0019】
好適には、前記メモリ手段には、露出情報に応じたノイズ低減処理のための演算係数が格納される。
【0020】
好適には、前記メモリ手段には、露出情報に応じた光学的伝達関数(OTF)復元のための演算係数が格納される。
【0021】
好適には、前記撮像装置は、被写体までの距離に相当する情報を生成する被写体距離情報生成手段と、を備え、前記変換手段は、前記被写体距離情報生成手段により生成される情報に基づいて前記分散画像信号より分散のない画像信号を生成する。
【0022】
好適には、前記撮像装置は、被写体までの距離に相当する情報を生成する被写体距離情報生成手段と、前記被写体距離情報生成手段により生成された情報に基づき変換係数を演算する変換係数演算手段と、を備え、前記変換手段は、前記変換係数演算手段から得られた変換係数によって、画像信号の変換を行い分散のない画像信号を生成する。
【0023】
好適には、前記撮像装置は、撮影する被写体の撮影モードを設定する撮影モード設定手段と、を備え、前記変換手段は、前記撮影モード設定手段により設定された撮影モードに応じて異なる変換処理を行う。
【0024】
本発明の第3の観点は、光波面変調機能の発現、非発現が外部に依存する外部依存型光波面変調素子を含む光学系を通過した被写体像を撮像素子で撮像し、前記撮像素子からの被写体の画像信号に対して所定の処理を施す撮像方法であって、前記外部依存型光波面変調素子を、光波面変調機能が非発現状態に制御して前記光学系を1焦点状態として光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するように形成した後、発現状態に制御して複数焦点状態を形成する。
【0025】
本発明の第4の観点は、光波面変調素子を含む光学系を通過した被写体像を撮像素子で撮像し、前記撮像素子からの被写体の画像信号に対して所定の処理を施す撮像方法であって、前記光学系の光路に配置され、前記光波面変調素子の光波面変調機能を相殺する逆光波面変調機能の発現、非発現が外部に依存する外部依存型逆光波面変調素子を配置し、前記外部依存型逆光波面変調素子を、逆光波面変調機能が発現状態に制御して前記光学系を1焦点状態として光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するように形成した後、非発現状態に制御して前記光学系を複数焦点状態とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、解像性能ピーク位置を容易に検出可能で、光学系を簡単化でき、コスト低減を図ることができ、しかもノイズの影響が小さい復元画像を得ることができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を添付図面に関連付けて説明する。
【0028】
図1は、本発明に係る撮像装置の一実施形態を示すブロック構成図である。
【0029】
本実施形態に係る撮像装置100は、光学系110、撮像素子120、アナログフロントエンド部(AFE)130、画像処理装置140、カメラ信号処理部150、画像表示メモリ160、画像モニタリング装置170、操作部180、露出制御装置190、および変調機能制御部200を有している。
【0030】
光学系110は、被写体物体OBJを撮影した像を撮像素子120に供給する。
光学系110は、たとえば物体側OBJSから順に配置された第1レンズ111と、第2レンズ112、絞り113、外部依存型光波面変調素子114、第3レンズ115、および第4レンズ116を有する。
第3レンズ115および第4レンズ116は接合され、撮像素子120に結像させるための結像レンズとして機能する。
外部依存型光波面変調素子114は、結像レンズによる撮像素子120の受光面への結像の波面を変形させる機能を有する光波面変調機能の発現、非発現が外部に依存する。
外部依存型光波面変調素子114は、変調機能制御部200により光波面変調機能が非発現状態に制御されているときは、光学系110が1焦点状態となって光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するような良好な結像性能を有し、発現状態に制御されているときは光学系110が複数焦点状態となる。
【0031】
図2(A)および(B)は、本実施形態に係る外部依存型光波面変調素子の構成例および機能を説明するための図である。
【0032】
外部依存型光波面変調素子114は、図2(A),(B)に示すように、たとえば液晶素子114aにより構成することが可能である。
この液晶素子114aは、素子に与える電圧を切り替えることで、光線の集光状態を変化させることができる。
たとえば、変調機能制御部200により電圧を印加されると、図2(A)に示すように、液晶素子114aは光波面変調機能が発現状態に制御され、光学系110が複数焦点状態となる。
一方、変調機能制御部200により電圧印加が停止(あるいは発現状態より低レベルに設定)されると、図2(B)に示すように、液晶素子114aは光波面変調機能が非発現状態に制御され、光学系110が1焦点状態となる。
【0033】
また、光学系110Aは、図3に示すように、たとえば第2レンズ112aとして、結像レンズによる撮像素子120の受光面への結像の波面を変形させる、たとえば3次元的曲面を有する位相板(Cubic Phase Plate)からなる光波面変調素子(波面形成用光学素子:Wavefront Coding Optical Element)により形成し、かつ、外部依存型光波面変調素子の代わりに、光波面変調素子112aの光波面変調機能を相殺する逆光波面変調機能の発現、非発現が外部に依存する外部依存型逆光波面変調素子117を配置するように構成することも可能である。
この場合、光学系110Aは、外部依存型逆光波面変調素子117が、変調機能制御部200により逆光波面変調機能が発現状態に制御されているときは、1焦点状態となって光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するような良好な結像性能を有し、非発現状態に制御されているときは複数焦点状態となる。
【0034】
図4(A)および(B)は、本実施形態に係る外部依存型逆光波面変調素子の構成例および機能を説明するための図である。
【0035】
外部依存型逆光波面変調素子117も、図4(A),(B)に示すように、たとえば液晶素子117aにより構成することが可能である。
この液晶素子117aは、素子に与える電圧を切り替えることで、光線の集光状態を変化させることができる。
たとえば、変調機能制御部200により電圧を印加されると、図4(A)に示すように、液晶素子117aは逆光波面変調機能が非発現状態に制御され、光学系110Aは複数焦点状態となる。
一方、変調機能制御部200により電圧印加が停止(あるいは発現状態より低レベルに設定)されると、図4(B)に示すように、液晶素子117aは逆光波面変調機能が非発現状態に制御され、光学系110Aは1焦点状態となる。
【0036】
撮像装置120は、光学系110で取り込んだ像が結像され、結像1次画像情報を電気信号の1次画像信号FIMとして、アナログフロントエンド部130を介して画像処理装置140に出力するCCDやCMOSセンサからなる。
図1においては、撮像素子120を一例としてCCDとして記載している。
【0037】
アナログフロントエンド部130は、タイミングジェネレータ131、アナログ/デジタル(A/D)コンバータ132と、を有する。
タイミングジェネレータ131では、撮像素子120のCCDの駆動タイミングを生成しており、A/Dコンバータ132は、CCDから入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換し、画像処理装置140に出力する。
【0038】
画像処理部の一部を構成する画像処理装置(二次元コンボリューション手段)140は、前段のAFE130からくる撮像画像のデジタル信号を入力し、二次元のコンボリューション処理を施し、後段のカメラ信号処理部(DSP)150に渡す。
画像処理装置140は、たとえば露出制御装置190の露出情報に応じて、光学的伝達関数(OTF)に対してフィルタ処理を行うと共に、色収差補正を行って色収差を改善する画像劣化の復元処理を行う。なお、露出情報として絞り情報を含む。
画像処理装置140は、撮像素子120からの被写体分散画像信号より分散のない画像信号を生成する機能を有する。また、画像処理部は、最初のステップでノイズ低減フィルタリングを施す機能を有する。
画像処理装置140の処理については後でさらに詳述する。
【0039】
カメラ信号処理部(DSP)150は、カラー補間、ホワイトバランス、YCbCr変換処理、圧縮、ファイリング等の処理を行い、メモリ160への格納や画像モニタリング装置170への画像表示等を行う。画像モニタリング装置170は、カメラ信号処理部150の制御の下、カラー出力あるいは白黒出力が可能である。
【0040】
カメラ信号処理部150は、露出制御装置190と変調機能制御部200との協働により、変調機能制御部200による光波面変調機能(逆光波面変調機能)の発現、非発現とフィルタ(カーネル)の適用の切り替えとのリンク、カラー出力あるいは白黒出力の切り替えとのリンク、色収差補正機能の切り替えとのリンク制御等を行う。
【0041】
露出制御装置190は、露出制御を行うとともに、操作部180などの操作入力を持ち、それらの入力に応じて、システム全体の動作を決定し、AFE130、画像処理装置140、DSP150等を制御し、システム全体の調停制御を司るものである。
【0042】
変調機能制御部200は、カメラ信号処理部150の指示に応じて外部依存型光波面変調素子114(または逆光波面変調素子117)の光波面変調機能(または逆光波面変調素子)の発現、非発現を電圧により制御する。
【0043】
以下、本実施形態の光学系、画像処理装置の構成および機能について具体的に説明する。
【0044】
なお、本実施形態においては、外部依存型の光波面変調素子または逆光波面変調素子を用いた場合について説明したが、本発明の光波面変調素子または逆光波面変調素子としては、波面を変形させるものであればどのようなものでもよく、厚みが変化する光学素子(たとえば、上述の3次の位相板)、屈折率が変化する光学素子(たとえば屈折率分布型波面変調レンズ)、レンズ表面へのコーディングにより厚み、屈折率が変化する光学素子(たとえば、波面変調ハイブリッドレンズ)、光の位相分布を変調可能な液晶素子(たとえば、液晶空間位相変調素子)等の光波面変調素子であればよい。
また、図3の例においては、光波面変調素子である位相板を用いて規則的に分散した画像を形成する場合について説明したが、通常の光学系として用いるレンズで光波面変調素子と同様に規則的に分散した画像を形成できるものを選択した場合には、光波面変調素子を用いずに光学系のみで実現することができる。この際は、後述する位相板に起因する分散に対応するのではなく、光学系に起因する分散に対応することとなる。
位相板は、光学系により収束される光束を規則正しく分散する光学レンズである。この位相板を挿入することにより、撮像素子120上ではピントのどこにも合わない画像を実現する。
換言すれば、光波面変調素子によって深度の深い光束(像形成の中心的役割を成す)とフレアー(ボケ部分)を形成している。
【0045】
この規則的に分散した画像をデジタル処理により、光学系110や110Aを移動させずにピントの合った画像に復元する手段を波面収差制御光学系システム、あるいは深度拡張光学系システム(DEOS:Depth Expantion Optical system)といい、この処理を画像処理装置140において行う。
【0046】
ここで、DEOSの基本原理について説明する。
図5に示すように、被写体の画像fがDEOS光学系Hに入ることにより、g画像が生成される。
これは、次のような式で表される。
【0047】
(数1)
g=H*f
ただし、*はコンボリューションを表す。
【0048】
生成された画像から被写体を求めるためには、次の処理を要する。
【0049】
(数2)
f=H−1*g
【0050】
ここで、Hに関するカーネルサイズと演算係数について説明する。
ズームポジションをZPn,ZPn−1・・・とする。また、それぞれのH関数をHn,Hn−1、・・・・とする。
各々のスポット像が異なるため、各々のH関数は、次のようになる。
【0051】
【数3】

【0052】
この行列の行数および/または列数の違いをカーネルサイズ、各々の数字を演算係数とする。
ここで、各々のH関数はメモリに格納しておいても構わないし、PSFを物体距離の関数としておき、物体距離によって計算し、H関数を算出することによって任意の物体距離に対して最適なフィルタを作るように設定できるようにしても構わない。また、H関数を物体距離の関数として、物体距離によってH関数を直接求めても構わない。
【0053】
本実施形態においては、図1や図3に示すように、光学系110や110Aからの像を撮像素子120で受像して、画像処理装置140に入力させ、光学系に応じた変換係数を取得して、取得した変換係数をもって撮像素子120からの分散画像信号より分散のない画像信号を生成するように構成している。
【0054】
なお、本実施形態において、分散とは、上述したように、光波面変調素子114や112aを挿入することにより、撮像素子120上ではピントのどこにも合わない画像を形成し、位相板113によって深度の深い光束(像形成の中心的役割を成す)とフレアー(ボケ部分)を形成する現象をいい、像が分散してボケ部分を形成する振る舞いから収差と同様の意味合いが含まれる。したがって、本実施形態においては、収差として説明する場合もある。
【0055】
ところで、DEOS(深度拡張光学系)では、深い被写界深度内で像性能の変化量が少ないために、ディフォーカスに対する光学性能ピーク位置の検出が困難である傾向にある。適切な評価が行い難いため、製造工程に負担をかけ、また、歩留りの面でも不利な面がある。
さらに、DEOSでは、そのシステムの特性上、被写体の奥行き感が喪失、あるいは減少するため、意図的に背景をぼかした撮影などには向かない。
そこで、本実施形態においては、図1〜図4に関連付けて説明したようなDEOS(深度拡張光学系)における解像性能ピーク位置の検出方法、および、容易に検出可能な光学系システムでありながら、用途に応じ深度拡張機能を失くす光学系システムを実現している。
前述したように、本実施形態においては、DEOS(深度拡張光学系)において、光波面変調素子を液晶素子としている。
この液晶素子は、素子に与える電圧の切り替えにより光波面(位相)変調を行えることを特徴とする。
光波面(位相)変調作用を含まない光学系の場合、もしくは位相変調作用を光学系として相殺している場合、一般的な光学系同様な光学系となり、良好な光学性能を有することが可能となる。これは、通常の撮像光学系と同様に性能だしを行うことが可能であることをも意味する。
そこに、液晶素子の位相変調作用を切り替えることで、深度拡張を生じさせることで、簡便に光学性能を調整可能な製造工程を構築することが可能となる。
【0056】
図1に示す光学系110においては、結像レンズによる撮像素子120の受光面への結像の波面を変形させる機能を有する光波面変調機能の発現、非発現が外部に依存する外部依存型光波面変調素子114を設けている。
外部依存型光波面変調素子114は、変調機能制御部200により光波面変調機能が非発現状態に制御されているときは、光学系110が1焦点状態となって光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するような良好な結像性能を有し、発現状態に制御されているときは光学系110が複数焦点状態となる。
【0057】
この場合、光学系110は、光波面変調素子を含まない光学系が、光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するような良好な結像性能を有することとしている。これは、通常の撮像光学系と同様に性能だしを行うことが可能であることを意味する。この光学系110に対し、パワーの無い状態の光波面変調素子を付加しても、結像性能は変化しない。F値の明るい光学系を採用することで、奥行き感のあるボケ味を伴った写真撮影が可能になる。
また、この状態で、光学性能の調整を行うことは多種ある既存の評価手法に則っている。
そこで、本実施形態においては、液晶素子114aへの電圧を変化させ、光波面(たとえば)位相変調作用を生じさせる。このとき、液晶素子114aは複数焦点状態とする。この複数焦点状態画像を復元することで、深度拡張作用を生じさせることを実現できる。
【0058】
このように、図1の光学系110を有する撮像装置100は、液晶素子114aにかかる電圧の切り替えにより光波面変調機能の有無を変化させている。このとき、光波面(位相)変調と画像復元の有無(フィルタ(カーネル)の適用の切り替え)とをリンクするように制御する。
【0059】
図6(A)および(B)は、液晶素子にかかる電圧の切り替えと同時に、フィルタ(カーネル)の機能をも切り替える例を示す図である。
【0060】
図6(A)に示すように、液晶素子114aが光波面変調機能(作用)を発現(有している)場合は、フィルタを機能させ、画像を復元させる。それにより、深度拡張された復元画像が得られる。
一方、図6(B)に示すように、液晶素子114aが位相変調機能(作用)を発現していない(有していない場合)は、フィルタを機能させない。それにより、一般撮影が可能な良好な結像状態の光学系となる。
このような構成により、液晶素子114aが光波面変調機能を発現していない状態で光学系110の焦点調整を行って光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するように形成した後で、光波面変調機能を発現状態に維持することで深度拡張作用を生じさせることを実現できる。これにより、光波面変調素子を配置した際の製造時に焦点調整を行いにくいという課題を解決することができるようにすることも出来る。
なお、図6乃至9における光学系110や110Aは、構成を一部省略しているが、図1や図3の光学系110や110Aと同様の構成であるものとする。
【0061】
また、図1の光学系110を有する撮像装置100は、液晶素子114aにかかる電圧の切り替えにより光波面変調機能の有無を変化させているが、このとき、光波面変調機能が生じると同時に、色収差にも変化が生じる。
したがって、一般撮影時は良好な色収差補正状態を実現した上でモニタにカラー出力を行い、一方でDEOSシステム時は、モニタに白黒出力とする。
【0062】
図7(A)および(B)は、液晶素子にかかる電圧の切り替えと同時に、モニタへの出力を切り替える例を示す図である。
【0063】
図7(A)に示すように、液晶素子114aが光波面変調機能(作用)を発現(有している)場合は、白黒出力をする。
一方、図7(B)に示すように、液晶素子114aが位相変調機能(作用)を発現していない(有していない場合)は、色収差の補正を光学系で行い、モニタにはカラー出力をする。
【0064】
また、図1の光学系110を有する撮像装置100は、液晶素子114aにかかる電圧の切り替えにより光波面変調機能の有無を変化させているが、このとき、光波面変調機能が生じると同時に、色収差にも変化が生じる。したがって、液晶にかかる電圧の切り替えと、画像処理部の色収差補正機能の有無をリンクさせる。
【0065】
図8(A)および(B)は、液晶素子にかかる電圧の切り替えと同時に、画像処理部内の色収差補正機能を切り替える例を示す図である。
【0066】
図8(A)に示すように、液晶素子114aが光波面変調機能(作用)を発現(有している)場合は、色収差の影響を受けるため、画像処理部内の色収差補正機能を使い、良好な画像を得る。
一方、図8(B)に示すように、液晶素子114aが位相変調機能(作用)を発現していない(有していない場合)は、色収差の影響を受けないため、色収差補正機能は作動させない。
【0067】
また、図3に示す光学系110Aにおいては、光波面変調機能を持つ光波面変調素子112aを有する構成において、外部依存型光波面変調素子の代わりに、光波面変調素子112aの光波面変調機能を相殺する逆光波面変調機能の発現、非発現が外部に依存する外部依存型逆光波面変調素子117を配置するように構成している。
光学系110Aは、外部依存型逆光波面変調素子117が、変調機能制御部200により逆光波面変調機能が発現状態に制御されているときは、1焦点状態となって光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するような良好な結像性能を有し、非発現状態に制御されているときは複数焦点状態となる。
【0068】
この場合、光波面変調素子112aを含まない光学系が位相変調作用を有しているとする。この光学系に対し、パワーの無い状態の光波面変調素子を付加しても、結像状態は変化しない。このとき得られる画像を復元することで深度拡張作用を実現している。
そこで、液晶素子117aへの電圧を変化させ、逆光波面変調を生じさせる。光波面変調素子112aと液晶素子117aとの相殺作用により、光学系110Aが光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するような良好な結像性能を持つ。
この状態で、光学性能の調整を行うことは多種ある既存の評価手法に則っている。また、F値の明るい光学系を採用することで、奥行き感のあるボケ味を伴った写真撮影が可能になる。
【0069】
このように、図3の光学系110Aを有する撮像装置100Aは、液晶素子117aにかかる電圧の切り替えにより逆光波面変調機能の有無を変化させている。このとき、光波面(位相)変調と画像復元の有無(フィルタ(カーネル)の適用の切り替え)とをリンクするように制御する。
【0070】
図9(A)および(B)は、逆光波面変調機能を発現する液晶素子にかかる電圧の切り替えと同時に、フィルタ(カーネル)の機能をも切り替える例を示す図である。
【0071】
図9(A)に示すように、光波面変調機能(作用)を有している光学系110Aに対し、液晶素子117aが逆光波面変調機能(作用)を発現していない(有していない場合)は、フィルタを機能させ、画像を復元させる。それにより、深度拡張された復元画像が得られる。
一方、図9(B)に示すように、光波面変調機能(作用)を有している光学系110Aに対し、液晶素子117aが逆光波面変調機能(作用)を発現させて光学系の光波面変調作用を相殺する場合は、フィルタを機能させない。それにより、一般撮影が可能な良好な結像状態の光学系となる。
このような構成により、液晶素子117aが逆光波面変調機能の発現状態で光学系110Aの焦点調整を行って良好な結像状態を形成した後で、逆光波面変調機能を発現していない状態に維持することで深度拡張作用を生じさせることを実現できる。これにより、光波面変調素子112aを配置した際の製造時に焦点調整を行いにくいという課題を解決することができるようにすることもできる。また、撮像素子120以降の構成を図7と図8と同様にすることもできる。
【0072】
また、本実施形態においては、DEOSにおける解像性能ピーク位置の検出方法、および、容易に検出可能な鏡枠構造(光学系保持部の構造)を実現している。
以下のその一例を示す。
【0073】
ここで示す鏡枠構造部200は、基本的に、図10に示すように、レンズ保持部210と撮像素子保持部220とが別個に構成され、これらのレンズ保持部210と撮像素子保持部220は中間部材230によって介して固定されており、レンズ保持部210と撮像素子保持部220の線膨張係数が異なる。
さらにこの線膨張係数による影響はレンズ保持部210の係数が撮像素子保持部220の係数に比べて大きく、この係数を制御することによりバックフォーカス位置ズレを緩和し使用環境が低温から高温にまで及んだとしても十分な性能を確保することができるように構成することができる。さらにDEOS(深度拡張光学系)において、被写界深度の温度変化も緩和することができるように構成されている。
【0074】
レンズ保持部210は、たとえば円筒状に形成され、物体側から順に、第1レンズ111を保持する第1保持部211、第2レンズ112(112a)を保持する第2保持部212、液晶素子114a(117a)を保持する第3保持部213、第3レンズ115を保持する第4保持部214、第4レンズ116を保持する第4保持部215が形成されている。
そして、レンズ保持部210の外側部の軸方向の中央より物体側が中間部材230の一端部と、たとえば接着剤240により固定されている。
レンズ保持部210は、たとえば樹脂により形成される。
【0075】
撮像素子保持部220は、レンズ保持部210の外径より大きい外径を有する円筒状に形成され、中央部が軸方向に開口され、底面側(第1面側)221に撮像素子120が固定されている。
また、撮像素子保持部220の上面側(物体側面)222には中間部材230の一端部231が接着剤等により固定されている。
撮像素子保持部220は、たとえば樹脂により形成される。
【0076】
中間部材2330は、レンズ保持部210の外径より大きな内径を有する円筒状に形成され、その内壁231の一端部には円周上に、レンズ保持部210を固定する際に注入される接着剤240の溜り部232が形成されている。
また、中間部材230の他端部は、内側に延びるように鍔部233が形成されており、この鍔部233の外側面(底面)が撮像素子保持部220の上面側222と当接するようにして固定されている。
この中間部材230は、線膨張係数が小さい金属材料、たとえばアルミニウム(Al)により形成される。
【0077】
このように、本鏡枠構造部200においては、撮像素子保持部220とレンズ保持部210は固定し光学系は固定焦点となっており、レンズ保持部210の材質と撮像素子保持部220の材質の線膨張係数を異ならせることで駆動機構を持たずに温度変化によるバックフォーカスの位置変動を緩和できる機構をもつようになる。
【0078】
中間部材230の線膨張係数をレンズ保持部210および撮像素子保持部220の線膨張係数に比べて小さくすることで、たとえば温度によるレンズ系のバックフォーカス位置変動が小さく、バックフォーカスが十分に長い光学系に対し、鏡枠構造部200の各レンズの相対的な位置変動量を抑えることができる。
【0079】
また、本実施形態においては、光学系110(110A)に含まれる樹脂レンズ(たとえば第2レンズ112)のパワーの合算が負であるとき、最終レンズである第4レンズ116の撮像素子120側の面と撮像素子120の間隔が常温より高温で短くなり、低温で長くなるように構成される。
【0080】
また、本実施形態においては、光学系110に含まれる樹脂レンズのパワーの合算が正であるとき、最終レンズである第4レンズ116の撮像素子120側の面と撮像素子の間隔が常温より高温で長くなり、低温で短くなるように構成される。
【0081】
また、中間部材230とレンズ保持部210は、レンズ保持部210の軸方向における中央部より物体側で固定されている。
【0082】
このように、本実施形態においては、レンズ設計の時点で樹脂レンズのパワーを抑えることで温度による樹脂レンズの変動を抑え、さらにレンズ保持部210と撮像素子保持部220が別である構成を有し、両部材の線膨張係数を変えることで温度によるバックフォーカス変動の性能劣化を抑えるように構成される。
【0083】
次に、画像処理装置140の構成および処理について説明する。
【0084】
画像処理装置140は、図1に示すように、生(RAW)バッファメモリ141、コンボリューション演算器142、記憶手段としてのカーネルデータ格納ROM143、およびコンボリューション制御部144を有する。
【0085】
コンボリューション制御部144は、コンボリューション処理のオンオフ、画面サイズ、カーネルデータの入れ替え等の制御を行い、露出制御装置190により制御される。
【0086】
また、カーネルデータ格納ROM143には、図11に示すように予め用意されたそれぞれの光学系のPSFにより算出されたコンボリューション用のカーネルデータが格納されており、露出制御装置190によって露出設定時に決まる露出情報を取得し、コンボリューション制御部144を通じてカーネルデータを選択制御する。
なお、露出情報には、絞り情報が含まれる。
【0087】
また、図11の例では、カーネルデータAは絞り情報としてのFナンバ(2.8)、カーネルデータBはFナンバ(4)、カーネルデータCはFナンバ(5.6)に対応したデータとなっている。
【0088】
図11の例のように、絞り情報に応じたフィルタ処理を行うのは以下の理由による。
絞りを絞って撮影を行う場合、絞りによって光波面変調素子が覆われてしまい、位相が変化してしまうため、適切な画像を復元することが困難となる。
そこで、本実施形態においては、本例のように、露出情報中の絞り情報に応じたフィルタ処理を行うことによって適切な画像復元を実現している。
【0089】
図12は、露出制御装置190の露出情報(絞り情報を含む)により切り替え処理のフローチャートである。
まず、露出情報(RP)が検出されコンボリューション制御部144に供給される(ST101)。
コンボリューション制御部144においては、露出情報RPから、カーネルサイズ、数値演係数がレジスタにセットされる(ST102)。
そして、撮像素子120で撮像され、AFE130を介して二次元コンボリューション演算部142に入力された画像データに対して、レジスタに格納されたデータに基づいてコンボリューション演算が行われ、演算され変換されたデータがカメラ信号処理部150に転送される(ST103)。
【0090】
コンボリューション演算は下記の式で表される。
【0091】
【数4】

【0092】
ただし、fはフィルタ(filter)カーネルを示している(ここでは計算を容易にするために180度回転済みのものを使用している)。
また、Aは元画像、Bはフィルタリングされた画像(ボケ復元画像)を示している。
この式から分かる通り、fを画像に重ねて各タップ同士の積和した結果をその重ねた中心座標の値とすることである。
【0093】
上述したように、コンボリューション処理は画像処理装置140で行われる。撮像素子120からの画素データは式4に従いコンボリュージョン処理される。
【0094】
画像処理装置140は、はじめに位相変調素子によるボケを位相変調素子によるボケ復元フィルタを用いて、換言すれば、カーネルデータ格納ROM143から位相変調素子によるボケ復元用のフィルタ係数を読み込み、このフィルタ係数により復元処理を行う。
すると処理後は位相変調素子によるボケは改善される。
【0095】
以下に画像処理装置140の信号処理部とカーネルデータ格納ROMについてさらに具体的な例について説明する。
【0096】
図13は、信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第1の構成例を示す図である。なお、簡単化のためにAFE等は省略している。
図13の例は露出情報に応じたフィルタカーネルを予め用意した場合のブロック図である。
【0097】
露出設定時に決まる露出情報を取得し、コンボリューション制御部144を通じてカーネルデータを選択制御する。2次元コンボリューション演算部142においては、カーネルデータを用いてコンボリューション処理を施す。
【0098】
図14は、信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第2の構成例を示す図である。なお、簡単化のためにAFE等は省略している。
図14の例は、信号処理部の最初にノイズ低減フィルタ処理のステップを有し、フィルタカーネルデータとして露出情報に応じたノイズ低減フィルタ処理ST1を予め用意した場合のブロック図である。
【0099】
露出設定時に決まる露出情報を取得し、コンボリューション制御部144を通じてカーネルデータを選択制御する。
2次元コンボリューション演算部142においては、前記ノイズ低減フィルタST1を施した後、カラーコンバージョン処理ST2によって色空間を変換、その後カーネルデータを用いてコンボリューション処理ST3を施す。
再度ノイズ処理ST4を行い、カラーコンバージョン処理ST5によって元の色空間に戻す。カラーコンバージョン処理は、たとえばYCbCr変換が挙げられるが、他の変換でも構わない。
なお、再度のノイズ処理ST4は省略することも可能である。
【0100】
図15は、信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第3の構成例を示す図である。なお、簡単化のためにAFE等は省略している。
図15の例は、露出情報に応じたOTF復元フィルタを予め用意した場合のブロック図である。
【0101】
露出設定時に決まる露出情報を取得し、コンボリューション制御部144を通じてカーネルデータを選択制御する。
2次元コンボリューション演算部142は、ノイズ低減処理ST11、カラーコンバージョン処理ST12の後に、前記OTF復元フィルタを用いてコンボリューション処理ST13を施す。
再度ノイズ処理ST14を行い、カラーコンバージョン処理ST15によって元の色空間に戻す。カラーコンバージョン処理は、たとえばYCbCr変換が挙げられるが、他の変換でも構わない。
なお、ノイズ低減処理ST11、ST14は、いずれか一方のみでもよい。
【0102】
図16は、信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第4の構成例を示す図である。なお、簡単化のためにAFE等は省略している。
図16の例は、ノイズ低減フィルタ処理のステップを有し、フィルタカーネルデータとして露出情報に応じたノイズ低減フィルタを予め用意した場合のブロック図である。
なお、再度のノイズ処理ST4は省略することも可能である。
露出設定時に決まる露出情報を取得し、コンボリューション制御部144を通じてカーネルデータを選択制御する。
2次元コンボリューション演算部142においては、ノイズ低減フィルタ処理ST21を施した後、カラーコンバージョン処理ST22によって色空間を変換、その後カーネルデータを用いてコンボリューション処理ST23を施す。
再度、露出情報に応じたノイズ処理ST24を行い、カラーコンバージョン処理ST25によって元の色空間に戻す。カラーコンバージョン処理は、たとえばYCbCr変換が挙げられるが、他の変換でも構わない。
なお、ノイズ低減処理ST21は省略することも可能である。
【0103】
以上は露出情報のみに応じて2次元コンボリューション演算部142においてフィルタ処理を行う例を説明したが、たとえば被写体距離情報、ズーム情報、あるいは撮影モード情報と露出情報とを組み合わせることにより適した演算係数の抽出、あるいは演算を行うことが可能となる。
【0104】
図17は、被写体距離情報と露出情報とを組み合わせる画像処理装置の構成例を示す図である。
図12は、撮像素子120からの被写体分散画像信号より分散のない画像信号を生成するが画像処理装置300の構成例を示している。
【0105】
画像処理装置300は、図17に示すように、コンボリューション装置301、カーネル・数値演算係数格納レジスタ302、および画像処理演算プロセッサ303を有する。
【0106】
この画像処理装置300においては、物体概略距離情報検出装置400から読み出した被写体の物体距離の概略距離に関する情報および露出情報を得た画像処理演算プロセッサ303では、その物体離位置に対して適正な演算で用いる、カーネルサイズやその演算係数をカーネル、数値算係数格納レジスタ302に格納し、その値を用いて演算するコンボリューション装置301にて適正な演算を行い、画像を復元する。
【0107】
上述のように、光波面変調機能を備えた撮像装置の場合、所定の焦点距離範囲内であればその範囲内に関し画像処理によって適正な収差のない画像信号を生成できるが、所定の焦点距離範囲外の場合には、画像処理の補正に限度があるため、前記範囲外の被写体のみ収差のある画像信号となってしまう。
また一方、所定の狭い範囲内に収差が生じない画像処理を施すことにより、所定の狭い範囲外の画像にぼけ味を出すことも可能になる。
本例においては、主被写体までの距離を、距離検出センサを含む物体概略距離情報検出装置400により検出し、検出した距離に応じて異なる画像補正の処理を行うことにように構成されている。
【0108】
上記の画像処理はコンボリューション演算により行うが、これを実現するには、たとえばコンボリューション演算の演算係数を共通で1種類記憶しておき、焦点距離に応じて補正係数を予め記憶しておき、この補正係数を用いて演算係数を補正し、補正した演算係数で適性なコンボリューション演算を行う構成をとることができる。
この構成の他にも、以下の構成を採用することが可能である。
【0109】
焦点距離に応じて、カーネルサイズやコンボリューションの演算係数自体を予め記憶しておき、これら記憶したカーネルサイズや演算係数でコンボリューション演算を行う構成、焦点距離に応じた演算係数を関数として予め記憶しておき、焦点距離によりこの関数より演算係数を求め、計算した演算係数でコンボリューション演算を行う構成等、を採用することが可能である。
【0110】
図17の構成に対応付けると次のような構成をとることができる。
【0111】
変換係数記憶手段としてのレジスタ302に被写体距離に応じて少なくとも位相板113に起因する収差に対応した変換係数を少なくとも2以上予め記憶する。画像処理演算プロセッサ303が、被写体距離情報生成手段としての物体概略距離情報検出装置400により生成された情報に基づき、レジスタ302から被写体までの距離に応じた変換係数を選択する係数選択手段として機能する。
そして、変換手段としてのコンボリューション装置301が、係数選択手段としての画像処理演算プロセッサ303で選択された変換係数によって、画像信号の変換を行う。
【0112】
または、前述したように、変換係数演算手段としての画像処理演算プロセッサ303が、被写体距離情報生成手段としての物体概略距離情報検出装置400により生成された情報に基づき変換係数を演算し、レジスタ302に格納する。
そして、変換手段としてのコンボリューション装置301が、変換係数演算手段としての画像処理演算プロセッサ303で得られレジスタ302に格納された変換係数によって、画像信号の変換を行う。
【0113】
または、補正値記憶手段としてのレジスタ302にズーム光学系110のズーム位置またはズーム量に応じた少なくとも1以上の補正値を予め記憶する。この補正値には、被写体収差像のカーネルサイズを含まれる。
第2変換係数記憶手段としても機能するレジスタ302に、位相板113に起因する収差に対応した変換係数を予め記憶する。
そして、被写体距離情報生成手段としての物体概略距離情報検出装置400により生成された距離情報に基づき、補正値選択手段としての画像処理演算プロセッサ303が、補正値記憶手段としてのレジスタ302から被写体までの距離に応じた補正値を選択する。
変換手段としてのコンボリューション装置301が、第2変換係数記憶手段としてのレジスタ302から得られた変換係数と、補正値選択手段としての画像処理演算プロセッサ303により選択された補正値とに基づいて画像信号の変換を行う。
【0114】
図18に、露出情報と、物体距離情報と、撮影モードとを用いた場合のフィルタの構成例を示す。
この例では、物体距離情報と撮影モード情報で2次元的な情報を形成し、露出情報が奥行きのような情報を形成している。
【0115】
図19は、撮影モード情報と露出情報とを組み合わせる画像処理装置の構成例を示す図である。
図19は、撮像素子120からの被写体分散画像信号より分散のない画像信号を生成する画像処理装置300Bの構成例を示している。
【0116】
画像処理装置300Bは、図17と同様に、コンボリューション装置301、記憶手段としてのカーネル・数値演算係数格納レジスタ302、および画像処理演算プロセッサ303を有する。
【0117】
この画像処理装置300Bにおいては、物体概略距離情報検出装置500から読み出した被写体の物体距離の概略距離に関する情報および露出情報を得た画像処理演算プロセッサ303では、その物体離位置に対して適正な演算で用いる、カーネルサイズやその演算係数をカーネル、数値算係数格納レジスタ302に格納し、その値を用いて演算するコンボリューション装置301にて適正な演算を行い、画像を復元する。
【0118】
この場合も上述のように、光波面変調機能を備えた撮像装置の場合、所定の焦点距離範囲内であればその範囲内に関し画像処理によって適正な収差のない画像信号を生成できるが、所定の焦点距離範囲外の場合には、画像処理の補正に限度があるため、前記範囲外の被写体のみ収差のある画像信号となってしまう。
また一方、所定の狭い範囲内に収差が生じない画像処理を施すことにより、所定の狭い範囲外の画像にぼけ味を出すことも可能になる。
本例においては、主被写体までの距離を、距離検出センサを含む物体概略距離情報検出装置500により検出し、検出した距離に応じて異なる画像補正の処理を行うように構成されている。
【0119】
上記の画像処理はコンボリューション演算により行うが、これを実現するには、コンボリューション演算の演算係数を共通で1種類記憶しておき、物体距離に応じて補正係数を予め記憶しておき、この補正係数を用いて演算係数を補正し、補正した演算係数で適性なコンボリューション演算を行う構成、物体距離に応じた演算係数を関数として予め記憶しておき、焦点距離によりこの関数より演算係数を求め、計算した演算係数でコンボリューション演算を行う構成、物体距離に応じて、カーネルサイズやコンボリューションの演算係数自体を予め記憶しておき、これら記憶したカーネルサイズや演算係数でコンボリューション演算を行う構成等、を採用することが可能である。
【0120】
本実施形態においては、上述したように、DSCのモード設定(ポートレイト、無限遠(風景)、マクロ)に応じて画像処理を変更する。
【0121】
図19の構成に対応付けると次のような構成をとることができる。
【0122】
前述したように、変換係数演算手段としての画像処理演算プロセッサ303を通して操作部180の撮影モード設定部600により設定される各撮影モードに応じて異なる変換係数を変換係数記憶手段としてのレジスタ302に格納する。
画像処理演算プロセッサ303が、撮影モード設定部600の操作スイッチ601により設定された撮影モードに応じて、被写体距離情報生成手段としての物体概略距離情報検出装置500により生成された情報に基づき、変換係数記憶手段としてのレジスタ302から変換係数を抽出する。このとき、たとえば画像処理演算プロセッサ303が変換係数抽出手段として機能する。
そして、変換手段としてのコンボリューション装置301が、レジスタ302に格納された変換係数によって、画像信号の撮影モードに応じた変換処理を行う。
【0123】
また、図1のカーネルデータ格納ROMに関しても、光学倍率、Fナンバやそれぞれのカーネルのサイズ、値に対して用いられるものとは限らない。また用意するカーネルデータの数についても3個とは限らない。
図18のように3次元、さらには4次元以上とすることで格納量が多くなるが、種々の条件を考慮してより適したものを選択することができるようになる。情報としては、上述した露出情報、物体距離情報、撮像モード情報等であればよい。
【0124】
なお、上述のように、光波面変調素子を有する撮像装置の場合、所定の焦点距離範囲内であればその範囲内に関し画像処理によって適正な収差のない画像信号を生成できるが、所定の焦点距離範囲外の場合には、画像処理の補正に限度があるため、前記範囲外の被写体のみ収差のある画像信号となってしまう。
また一方、所定の狭い範囲内に収差が生じない画像処理を施すことにより、所定の狭い範囲外の画像にぼけ味を出すことも可能になる。
【0125】
本実施形態においては、DEOSを採用し、高精細な画質を得ることが可能で、しかも、光学系を簡単化でき、コスト低減を図ることが可能となっている。
以下、この特徴について説明する。
【0126】
図20(A)〜(C)は、撮像素子120の受光面でのスポット像を示している。
図20(A)は焦点が0.2mmずれた場合(Defocus=0.2mm)、図20(B)が合焦点の場合(Best focus)、図20(C)が焦点が−0.2mmずれた場合(Defocus=−0.2mm)の各スポット像を示している。
図20(A)〜(C)からもわかるように、本実施形態に係る撮像装置100においては、光波面変調機能によって深度の深い光束(像形成の中心的役割を成す)とフレアー(ボケ部分)が形成される。
【0127】
このように、本実施形態の撮像装置100において形成された1次画像FIMは、深度が非常に深い光束条件にしている。
【0128】
図21(A),(B)は、本実施形態に係る撮像レンズ装置により形成される1次画像の変調伝達関数(MTF:Modulation Transfer Function)について説明するための図であって、図21(A)は撮像レンズ装置の撮像素子の受光面でのスポット像を示す図で、図21(B)が空間周波数に対するMTF特性を示している。
本実施形態においては、高精細な最終画像は後段の、たとえばデジタルシグナルプロセッサ(Digital Signal Processor)からなる画像処理装置140の補正処理に任せるため、図21(A),(B)に示すように、1次画像のMTFは本質的に低い値になっている。
【0129】
画像処理装置140は、上述したように、撮像素子120による1次画像FIMを受けて、1次画像の空間周波数におけるMTFをいわゆる持ち上げる所定の補正処理等を施して高精細な最終画像FNLIMを形成する。
【0130】
画像処理装置140のMTF補正処理は、たとえば図22の曲線Aで示すように、本質的に低い値になっている1次画像のMTFを、空間周波数をパラメータとしてエッジ強調、クロマ強調等の後処理にて、図22中曲線Bで示す特性に近づく(達する)ような補正を行う。
図22中曲線Bで示す特性は、たとえば本実施形態のように、光波面変調機能を発現させずに波面を変形させない場合に得られる特性である。
なお、本実施形態における全ての補正は、空間周波数のパラメータによる。
【0131】
本実施形態においては、図22に示すように、光学的に得られる空間周波数に対するMTF特性曲線Aに対して、最終的に実現したいMTF特性曲線Bを達成するためには、それぞれの空間周波数に対し、エッジ強調等の強弱を付け、元の画像(1次画像)に対して補正をかける。
たとえば、図22のMTF特性の場合、空間周波数に対するエッジ強調の曲線は、図23に示すようになる。
【0132】
すなわち、空間周波数の所定帯域内における低周波数側および高周波数側でエッジ強調を弱くし、中間周波数領域においてエッジ強調を強くして補正を行うことにより、所望のMTF特性曲線Bを仮想的に実現する。
【0133】
このように、実施形態に係る撮像装置100は、基本的に、1次画像を形成する光学系110および撮像素子120と、1次画像を高精細な最終画像に形成する画像処理装置140からなり、光学系システムの中に、光波面変調機能の発現、非発現を切り替え可能な光学素子を新たに設けるか、光波面変調機能を有する光学系に光波面変調機能を相殺可能な逆光波面変調素子を設けることにより、結像の波面を変形(変調)し、そのような波面をCCDやCMOSセンサからなる撮像素子120の撮像面(受光面)に結像させ、その結像1次画像を、画像処理装置140を通して高精細画像を得る画像形成システムである。
本実施形態では、撮像素子120による1次画像は深度が非常に深い光束条件にしている。そのために、1次画像のMTFは本質的に低い値になっており、そのMTFの補正を画像処理装置140で行う。
【0134】
ここで、本実施形態における撮像装置100における結像のプロセスを、波動光学的に考察する。
物点の1点から発散された球面波は結像光学系を通過後、収斂波となる。そのとき、結像光学系が理想光学系でなければ収差が発生する。波面は球面でなく複雑な形状となる。幾何光学と波動光学の間を取り持つのが波面光学であり、波面の現象を取り扱う場合に便利である。
結像面における波動光学的MTFを扱うとき、結像光学系の射出瞳位置における波面情報が重要となる。
MTFの計算は結像点における波動光学的強度分布のフーリエ変換で求まる。その波動光学的強度分布は波動光学的振幅分布を2乗して得られるが、その波動光学的振幅分布は射出瞳における瞳関数のフーリエ変換から求まる。
さらにその瞳関数はまさに射出瞳位置における波面情報(波面収差)そのものからであることから、その光学系110を通して波面収差が厳密に数値計算できればMTFが計算できることになる。
【0135】
したがって、所定の手法によって射出瞳位置での波面情報に手を加えれば、任意に結像面におけるMTF値は変更可能である。
本実施形態においても、波面の形状変化を波面形成用光学素子で行うのが主であるが、まさにphase(位相、光線に沿った光路長)に増減を設けて目的の波面形成を行っている。
そして、目的の波面形成を行えば、射出瞳からの射出光束は、図20(A)〜(C)に示す幾何光学的なスポット像からわかるように、光線の密な部分と疎の部分から形成される。
この光束状態のMTFは空間周波数の低いところでは低い値を示し、空間周波数の高いところまでは何とか解像力は維持している特徴を示している。
すなわち、この低いMTF値(または、幾何光学的にはこのようなスポット像の状態)であれば、エリアジングの現象を発生させないことになる。
つまり、ローパスフィルタが必要ないのである。
そして、後段のDSP等からなる画像処理装置140でMTF値を低くしている原因のフレアー的画像を除去すれば良いのである。それによってMTF値は著しく向上する。
【0136】
次に、本実施形態および従来光学系のMTFのレスポンスについて考察する。
【0137】
図24は、一般的な光学系の場合において物体が焦点位置にあるときと焦点位置から外れたときのMTFのレスポンス(応答)を示す図である。
図25は、光波面変調素子を有する本実施形態の光学系の場合において物体が焦点位置にあるときと焦点位置から外れたときのMTFのレスポンスを示す図である。
また、図26は、本実施形態に係る撮像装置のデータ復元後のMTFのレスポンスを示す図である。
【0138】
図からもわかるように、光波面変調素子を有する光学系の場合、物体が焦点位置から外れた場合でもMTFのレスポンスの変化が光波面変調素子を挿入してない光学径よりも少なくなる。
この光学系によって結像された画像を、コンボリューションフィルタによる処理によって、MTFのレスポンスが向上する。
【0139】
以上説明したように、本実施形態によれば、結像レンズによる撮像素子120の受光面への結像の波面を変形させる機能を有する光波面変調機能の発現、非発現が外部に依存する外部依存型光波面変調素子114を備えた光学系110と、光学系110を通過した被写体像を撮像する撮像素子120と、撮像素子120からの被写体の画像信号に対して所定の処理を施す画像処理装置140と、を有し、光学系110は外部依存型光波面変調素子114が、変調機能制御部200により光波面変調機能が非発現状態に制御されているときは、1焦点状態となり、発現状態に制御されているときは複数焦点状態となる。
また、本実施形態によれば光波面変調機能を含む光学系110Aと、光学系110Aを通過した被写体像を撮像する撮像素子120と、撮像素子120からの被写体の画像信号に対して所定の処理を施す画像処理装置140と、を有し、光学系110Aに、光波面変調素子112aの光波面変調機能を相殺する逆光波面変調機能の発現、非発現が外部に依存する外部依存型逆光波面変調素子117を配置し、光学系110Aは、外部依存型逆光波面変調素子117が、変調機能制御部200により逆光波面変調機能が発現状態に制御されているときは、1焦点状態となり、非発現状態に制御されているときは複数焦点状態となる。
したがって、以下の効果を得ることができる。
【0140】
解像性能ピーク位置を容易に検出可能で、また、容易に検出可能な光学システムでありながら、用途に応じ深度拡張機能をなくすこともできる利点がある。
また、フォーカス調整はDEOS技術を用いることから画像全体にピントの合った復元画像を提供できる。特に監視カメラのような電子画像機器システムには最適な光学システムと言える。
【0141】
また、画像処理装置140において、露出制御装置190からの露出情報に応じて光学的伝達関数(OTF)に対してフィルタ処理を行うことから、光学系を簡単化でき、コスト低減を図ることができ、しかもノイズの影響が小さい復元画像を得ることができる利点がある。
また、コンボリューション演算時に用いるカーネルサイズやその数値演算で用いられる係数を可変とし、操作部180等の入力により知り、適性となるカーネルサイズや上述した係数を対応させることにより、倍率やディフォーカス範囲を気にすることなくレンズ設計ができ、かつ精度の高いコンボリュ−ションによる画像復元が可能となる利点がある。
また、難度が高く、高価でかつ大型化した光学レンズを必要とせずに、かつ、レンズを駆動させること無く、撮影したい物体に対してピントが合い、背景はぼかすといった、いわゆる自然な画像を得ることができる利点がある。
そして、本実施形態に係る撮像装置100は、デジタルカメラやカムコーダー等の民生機器の小型、軽量、コストを考慮されたズームレンズのDEOSに使用することが可能である。
【0142】
また、本実施形態においては、結像レンズ112による撮像素子120の受光面への結像の波面を変形させる波面形成用光学素子を有する撮像レンズ系と、撮像素子120による1次画像FIMを受けて、1次画像の空間周波数におけるMTFをいわゆる持ち上げる所定の補正処理等を施して高精細な最終画像FNLIMを形成する画像処理装置140とを有することから、高精細な画質を得ることが可能となるという利点がある。
また、光学系110の構成を簡単化でき、製造が容易となり、コスト低減を図ることができる。
【0143】
ところで、CCDやCMOSセンサを撮像素子として用いた場合、画素ピッチから決まる解像力限界が存在し、光学系の解像力がその限界解像力以上であるとエリアジングのような現象が発生し、最終画像に悪影響を及ぼすことは周知の事実である。
画質向上のため、可能な限りコントラストを上げることが望ましいが、そのことは高性能なレンズ系を必要とする。
【0144】
しかし、上述したように、CCDやCMOSセンサを撮像素子として用いた場合、エリアジングが発生する。
現在、エリアジングの発生を避けるため、撮像レンズ装置では、一軸結晶系からなるローパスフィルタを併用し、エリアジングの現象の発生を避けている。
このようにローパスフィルタを併用することは、原理的に正しいが、ローパスフィルタそのものが結晶でできているため、高価であり、管理が大変である。また、光学系に使用することは光学系をより複雑にしているという不利益がある。
【0145】
以上のように、時代の趨勢でますます高精細の画質が求められているにもかかわらず、高精細な画像を形成するためには、従来の撮像レンズ装置では光学系を複雑にしなければならない。複雑にすれば、製造が困難になったりし、また高価なローパスフィルタを利用したりするとコストアップにつながる。
しかし、本実施形態によれば、ローパスフィルタを用いなくとも、エリアジングの現象の発生を避けることができ、高精細な画質を得ることができる。
【0146】
なお、本実施形態において、光学系の波面形成用光学素子を絞りより物体側レンズよりに配置した例を示したが、絞りと同一あるいは絞りより結像レンズ側に配置しても前記と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】本発明に係る撮像装置の一実施形態を示すブロック構成図である。
【図2】本実施形態に係る外部依存型光波面変調素子の構成例および機能を説明するための図である。
【図3】本実施形態に係る光学系の他の構成例を説明するための図である。
【図4】本実施形態に係る外部依存型逆光波面変調素子の構成例および機能を説明するための図である。
【図5】DEOSの原理を説明するための図である。
【図6】液晶素子にかかる電圧の切り替えと同時に、フィルタ(カーネル)の機能をも切り替える例を示す図である。
【図7】液晶素子にかかる電圧の切り替えと同時に、モニタへの出力を切り替える例を示す図である。
【図8】液晶素子にかかる電圧の切り替えと同時に、画像処理部内の色収差補正機能を切り替える例を示す図である。
【図9】逆光波面変調機能を発現する液晶素子にかかる電圧の切り替えと同時に、フィルタ(カーネル)の機能をも切り替える例を示す図である。
【図10】本実施形態に係る鏡枠構造の一例を示す図である。
【図11】カーネルデータROMの格納データの他例(Fナンバ)を示す図である。
【図12】露出制御装置の光学系設定処理の概要を示すフローチャートである。
【図13】信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第1の構成例を示す図である。
【図14】信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第2の構成例を示す図である。
【図15】信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第3の構成例を示す図である。
【図16】信号処理部とカーネルデータ格納ROMについての第4の構成例を示す図である。
【図17】被写体距離情報と露出情報とを組み合わせる画像処理装置の構成例を示す図である。
【図18】露出情報と、物体距離情報と、ズーム情報とを用いた場合のフィルタの構成例を示す図である。
【図19】撮影モード情報と露出情報とを組み合わせる画像処理装置の構成例を示す図である。
【図20】本実施形態に係る撮像素子の受光面でのスポット像を示す図であって、(A)は焦点が0.2mmずれた場合(Defocus=0.2mm)、(B)は合焦点の場合(Best focus)、(C)は焦点が−0.2mmずれた場合(Defocus=−0.2mm)の各スポット像を示す図である。
【図21】本実施形態に係る撮像素子により形成される1次画像のMTFについて説明するための図であって、(A)は撮像レンズ装置の撮像素子の受光面でのスポット像を示す図で、(B)が空間周波数に対するMTF特性を示す図である。
【図22】本実施形態に係る画像処理装置におけるMTF補正処理を説明するための図である。
【図23】本実施形態に係る画像処理装置におけるMTF補正処理を具体的に説明するための図である。
【図24】一般的な光学系の場合において物体が焦点位置にあるときと焦点位置から外れたときのMTFのレスポンス(応答)を示す図である。
【図25】光波面変調素子を有する本実施形態の光学系の場合において物体が焦点位置にあるときと焦点位置から外れたときのMTFのレスポンスを示す図である。
【図26】本実施形態に係る撮像装置のデータ復元後のMTFのレスポンスを示す図である。
【図27】一般的な撮像レンズ装置の構成および光束状態を模式的に示す図である。
【図28】図27の撮像レンズ装置の撮像素子の受光面でのスポット像を示す図であって、(A)は焦点が0.2mmずれた場合(Defocus=0.2mm)、(B)が合焦点の場合(Best focus)、(C)が焦点が−0.2mmずれた場合(Defocus=−0.2mm)の各スポット像を示す図である。
【符号の説明】
【0148】
100,100A・・・撮像装置、110,110A・・・光学系、120・・・撮像素子、130・・・アナログフロントエンド部(AFE)、140・・・画像処理装置、150・・・カメラ信号処理部、180・・・操作部、190・・・露出制御装置、200・・・変調機能制御部、111・・・第1レンズ、112・・・第2レンズ、112a・・・光波面変調素子、113・・・絞り、114・・・外部依存型光波面変調素子、114a・・・光波面変調機能を発現可能な液晶素子、115・・・第3レンズ、116・・・第4レンズ、117・・・外部依存型逆光波面変調素子、117a・・・逆光波面変調機能を発現可能な液晶素子、142・・・コンボリューション演算器、143・・・カーネルデータROM、144・・・コンボリューション制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光波面変調機能の発現、非発現が外部に依存する外部依存型光波面変調素子を含む光学系と、
前記光学系を通過した被写体像を撮像する撮像素子と、
前記外部依存型光波面変調素子の光波面変調機能の発現、非発現を制御する変調機能制御部と、
前記撮像素子からの被写体の画像信号に対して所定の処理を施す画像処理部と、を有し、
前記光学系は、
前記外部依存型光波面変調素子が、前記変調機能制御部により光波面変調機能が非発現状態に制御されているときは、1焦点状態となり、発現状態に制御されているときは複数焦点状態となる
撮像装置。
【請求項2】
光波面変調素子を含む光学系と、
前記光学系の光路に配置され、前記光波面変調素子の光波面変調機能を相殺する逆光波面変調機能の発現、非発現が外部に依存する外部依存型逆光波面変調素子と、
前記光学系を通過した被写体像を撮像する撮像素子と、
前記外部依存型逆光波面変調素子の光波面変調機能の発現、非発現を制御する変調機能制御部と、
前記撮像素子からの被写体の画像信号に対して所定の処理を施す画像処理部と、を有し、
前記光学系は、
前記外部依存型逆光波面変調素子が、前記変調機能制御部により逆光波面変調機能が発現状態に制御されているときは、1焦点状態となり、非発現状態に制御されているときは複数焦点状態となる
撮像装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、
所定の情報に応じて光学的伝達関数(OTF)に対してフィルタ処理を行う機能を有し、
前記変調機能制御部の変調機能の発現、非発現の切り替えが、前記画像処理部に作用するフィルタの切り替えとリンクしている
請求項1または2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記画像処理部の画像処理後の画像をカラーまたは白黒で表示可能なモニタを有し、
前記変調機能制御部の変調機能の発現、非発現の切り替えが、前記モニタ出力のカラー出力と白黒出力の切り替えとリンクしている
請求項1から3のいずれか一に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記画像処理部は、
所定の情報に応じて光学的伝達関数(OTF)に対するフィルタ処理による色収差補正機能を有し、
前記変調機能制御部の変調機能の発現、非発現の切り替えが、前記画像処理部の色収差補正機能の切り替えとリンクしている
請求項1から4のいずれか一に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記画像処理部は、複数種類の復元フィルタを用いて前記画像の復元処理を行う
請求項1から5のいずれか一に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記画像処理部は、フィルタの演算係数を格納するメモリ手段を有する
請求項1から6のいずれか一に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記メモリ手段には、露出情報に応じたノイズ低減処理のための演算係数が格納される
請求項7記載の撮像装置。
【請求項9】
前記メモリ手段には、露出情報に応じた光学的伝達関数(OTF)復元のための演算係数が格納される
請求項7記載の撮像装置。
【請求項10】
前記撮像装置は、
被写体までの距離に相当する情報を生成する被写体距離情報生成手段と、を備え、
前記変換手段は、前記被写体距離情報生成手段により生成される情報に基づいて前記分散画像信号より分散のない画像信号を生成する
請求項1から9のいずれか一に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記撮像装置は、
被写体までの距離に相当する情報を生成する被写体距離情報生成手段と、
前記被写体距離情報生成手段により生成された情報に基づき変換係数を演算する変換係数演算手段と、を備え、
前記変換手段は、前記変換係数演算手段から得られた変換係数によって、画像信号の変換を行い分散のない画像信号を生成する
請求項1から9のいずれか一に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記撮像装置は、
撮影する被写体の撮影モードを設定する撮影モード設定手段と、を備え、
前記変換手段は、前記撮影モード設定手段により設定された撮影モードに応じて異なる変換処理を行う
請求項1から9のいずれか一に記載の撮像装置。
【請求項13】
光波面変調機能の発現、非発現が外部に依存する外部依存型光波面変調素子を含む光学系を通過した被写体像を撮像素子で撮像し、前記撮像素子からの被写体の画像信号に対して所定の処理を施す撮像方法であって、
前記外部依存型光波面変調素子を、
光波面変調機能が非発現状態に制御して前記光学系を1焦点状態として光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するように形成した後、
発現状態に制御して複数焦点状態を形成する
撮像方法。
【請求項14】
光波面変調素子を含む光学系を通過した被写体像を撮像素子で撮像し、前記撮像素子からの被写体の画像信号に対して所定の処理を施す撮像方法であって、
前記光学系の光路に配置され、前記光波面変調素子の光波面変調機能を相殺する逆光波面変調機能の発現、非発現が外部に依存する外部依存型逆光波面変調素子を配置し、
前記外部依存型逆光波面変調素子を、
逆光波面変調機能が発現状態に制御して前記光学系を1焦点状態として光学系を通過する光が光源の距離によって光軸方向で異なる位置に結像するように形成した後、
非発現状態に制御して前記光学系を複数焦点状態とする
撮像方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate


【公開番号】特開2008−245266(P2008−245266A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44580(P2008−44580)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】