説明

撮像装置および画像処理制御プログラム

【課題】フリッカが生じる撮影環境下で撮影した場合に生じる、画像における輝度ムラおよび色被りを低減すること。
【解決手段】撮像装置は、順次に露光される複数の画素ラインを有する撮像素子と、撮像素子で複数回露光して生成された複数の画像を重ね合わせて、重ね合わせ画像を生成する画像処理部とを備え、画像処理部は、複数の画素ラインに平行な複数の帯状の画像領域毎にホワイトバランス補正を施した重ね合わせ画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置および画像処理制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
撮像素子の予め設定された領域から読み出した電気信号を用いてフリッカ周波数を判定する撮像装置が知られている(例えば特許文献1)。また、固体撮像素子の各画素における露光時間を照明のフリッカ周期の半分だけずれたタイミングで別々に読み出して、得られた2系統の信号を同時化して足し合わせる固体撮像素子が知られている(例えば特許文献2)。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1]特開2009−77065号公報
[特許文献2]特開2003−32551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
照明光の光強度が周期的に変化するだけでなく照明光の色温度も時間的に変化する場合、輝度ムラが生じるだけでなく色被りが画像領域毎に変わってしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様における撮像装置は、順次に露光される複数の画素ラインを有する撮像素子と、撮像素子で複数回露光して生成された複数の画像を重ね合わせて、重ね合わせ画像を生成する画像処理部とを備え、画像処理部は、複数の画素ラインに平行な複数の帯状の画像領域毎にホワイトバランス補正を施した重ね合わせ画像を生成する。
【0005】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】実施形態によるカメラ100のシステム構成図である。
【図2】静止画撮影モードでの処理の一例を模式的に示す図である。
【図3】画像データ210の色成分を説明する図である。
【図4】ホワイトバランス補正された重ね合わせ画像400の一例である。
【図5】ホワイトバランス補正を部分領域で行う処理例を模式的に示す図である。
【図6】静止画撮影モードでの処理フロー図である。
【図7】動画撮影モードでの処理の一例を模式的に示す図である。
【図8】動画撮影モードでの処理フロー図を示す図である。
【図9】撮影およびフレーム生成の処理を実行するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0008】
図1は、本実施形態に係るカメラ100のシステム構成図を示す。カメラ100は光学系101を備える。光学系101は、ズームレンズ、フォーカスレンズ等により構成される。被写体光は光軸に沿って光学系101に入射し、撮像素子103の前面に配置されたフォーカルプレーンシャッタ102を通過して撮像素子103の受光面に被写体像として結像する。
【0009】
撮像素子103は、被写体像である光学像を光電変換する素子であり、例えば、CCD、CMOSセンサが用いられる。撮像素子103で光電変換された被写体像は、電荷として読み出されてアンプ部104でゲイン調整等がなされる。アンプ部104で増幅された信号は、アナログ信号としてA/D変換器105へ転送され、A/D変換器105でデジタル信号に変換される。撮像素子103の電荷読み出し、フォーカルプレーンシャッタ102の駆動等の制御は、システム制御部114の同期制御を受けたタイミング発生部112が供給するクロック信号により制御される。
【0010】
デジタル信号に変換された被写体像は、画像データとして順次処理される。A/D変換器105によりデジタル信号に変換された画像データは、画像処理部107へ引き渡されて処理される。具体的には、A/D変換器105によりデジタル信号に変換された画像データは、メモリ制御部106の制御により、内部メモリ108に一旦記憶される。内部メモリ108は、高速で読み書きのできるランダムアクセスメモリであり、例えばDRAM、SRAMなどが用いられる。内部メモリ108は、連写撮影、動画撮影において高速に連続して画像データが生成される場合に、画像処理の順番を待つバッファメモリとしての役割を担う。また、画像処理部107が行う画像処理、圧縮処理において、ワークメモリとしての役割も担う。したがって、内部メモリ108は、これらの役割を担うに相当する十分なメモリ容量を備える。メモリ制御部106は、いかなる作業にどれくらいのメモリ容量を割り当てるかを制御する。
【0011】
画像処理部107は、設定されている撮影モード、ユーザからの指示に従って、画像データを規格化された画像フォーマットの画像データに変換する。例えば、カメラ100の撮影モードの一部として静止画撮影モードおよび動画撮影モードを有しており、静止画撮影モードで静止画像としてJPEGファイルを生成する場合、画像処理部107は、色変換処理、ガンマ処理、ホワイトバランス補正等の画像処理を行った後に適応離散コサイン変換等を施して圧縮処理を行う。また、例えば動画撮影モードで動画像としてのMPEGファイルを生成する場合、画像処理部107は、生成された連続する静止画としてのフレーム画像に対して、フレーム内符号化、フレーム間符号化、量子化、エントロピー符号化等を施して圧縮処理を行う。
【0012】
変換された画像データは再び内部メモリ108に保管される。画像処理部107によって処理された静止画像データ、動画像データは、システム制御部114の制御により、内部メモリ108から記録媒体IF111を介して、不揮発性メモリである記録媒体122に記録される。記録媒体122は、フラッシュメモリ等により構成される。記録媒体122は、カメラ100の本体に対して着脱可能な不揮発性メモリであってよい。
【0013】
画像処理部107は、記録用に処理される画像データに並行して、表示用の画像データを生成する。生成された表示用の画像データは、表示制御部109の制御に従って、液晶パネル等で構成される表示部110に表示される。また、表示制御部109は、画像の表示と共に、もしくは画像を表示することなく、カメラ100の各種設定に関する様々なメニュー項目を、表示部110に表示することができる。
【0014】
カメラ100は、上記の画像処理における各々の要素も含めて、システム制御部114により直接的または間接的に制御される。システム制御部114は、電気的に消去・記録可能な不揮発性メモリであるシステムメモリを有する。システムメモリは、EEPROM(登録商標)等により構成される。システム制御部114が有するシステムメモリは、カメラ100の動作時に必要な定数、変数、プログラム等を、カメラ100の非動作時にも失われないよう記録している。システム制御部114は、定数、変数、プログラム等を適宜内部メモリ108に展開して、カメラ100の制御に利用する。カメラ100の動作時に必要な変数として、後述する照明光の明滅周波数を示す変数を含んでよい。
【0015】
カメラ100は、ユーザからの操作を受け付ける操作部材120を備えている。システム制御部114は、操作部材120が操作されたことを検知する。システム制御部114は、検出された操作に応じた動作を実行する。例えば、操作部材120としてのレリーズスイッチが操作されたことを検知したときには、システム制御部114は、被写体像を光電変換して画像データを生成する一連の撮影動作を実行する。また、カメラ100の撮影モードの一部として、後述するように、少なくとも色被りを低減する撮影モードであるフリッカ低減モードを含むことができる。本実施形態において、フリッカ低減モードは、輝度ムラおよび色被りを低減する撮影モードとする。システム制御部114は、フリッカ低減モードのON/OFFを指示する操作を、操作部材120を通じてユーザから受け付けることができる。
【0016】
また、システム制御部114は、照明光の明滅周波数に関する情報を、操作部材120を通じてユーザから受け付けてよい。例えば、システム制御部114は、カメラ100の使用地域を指示する操作を、照明光の明滅周波数に関する情報として操作部材120を通じて受け付ける。システム制御部114は、指示された使用地域で用いられる交流電源の周波数に基づいて、照明光の明滅周波数を決定してよい。例えば、システム制御部114は、50Hzの交流電源が用いられる使用地域が指示された場合、照明光の明滅周波数を示す変数に100Hzを示す値を設定する。一方、システム制御部114は、60Hzの交流電源が用いられる使用地域が指示された場合、照明光の明滅周波数を示す変数に120Hzを示す値を設定する。明滅周期は、明滅周波数の逆数によって算出され得る。なお、ユーザからの操作の他、システム制御部114は、GPS情報に基づきカメラ100の現在位置を検出して、現在位置に基づき照明光の明滅周波数を特定してよい。この場合、カメラ100は、GPS衛星からの信号を受信するGPSモジュールを備えてもよい。
【0017】
光学系101は、レンズ制御部113によって制御される。レンズ制御部113は、例えば、ユーザの指示に応じてズームレンズを駆動し、被写体像の画角を変更する。また、レンズ制御部113は、AF情報に基づいてフォーカスレンズを駆動し、被写体像を撮像素子103の受光面上で合焦させる。レンズ制御部113は、操作部材120等を通じてユーザによって指定された被写体に対して、オートフォーカスの制御を実行してよい。また、レンズ制御部113は、画像処理部107が処理した画像データまたは測光センサの出力を解析して露出値を算出する。レンズ制御部113は、算出した露出値に従って、光学系101が有する絞りの制御信号を出力する。
【0018】
図2は、カメラ100における静止画撮影モード時の処理の一例を、照明光の明滅パターンとともに模式的に示す。ここでは、照明光の明滅パターンとして、交流電源で駆動される蛍光灯の点滅により生じる明滅パターン200を例示する。蛍光灯は、電源周波数の倍の周波数で点滅を繰り返す。例えば、50Hzの交流電源で駆動される蛍光灯は、100Hzで点滅を繰り返す。
【0019】
システム制御部114は、レリーズスイッチが操作されて静止画撮影が指示されると、露光時間T1の露光を2度実行するよう、カメラ100の各部を制御する。具体的には、カメラ100のフォーカルプレーンシャッタ102は、撮像素子103の前面を、時間長さT1をかけてシャッタ幕を2度走行させることにより、撮像素子103で2度露光する。本例では、フォーカルプレーンシャッタ102は、時刻t1から時刻t2にかけて撮像素子103の前面を走行して1回目の露光をした後に、時刻t3から時刻t4にかけて撮像素子103の前面を走行して2回目の露光を行う。第1回目の露光後に撮像素子103から読み出された画像データ210は、内部メモリ108に記憶される。また、2回目の露光後に撮像素子103から読み出された画像データ220も内部メモリ108に記憶される。
【0020】
静止画撮影時には、撮像素子103が有する複数の画素ラインは、フォーカルプレーンシャッタ102によって順次に露光されるので、画像データ210および画像データ220には、照明光の明滅によって生じた輝度ムラが現れる。本図の画像データ210および画像データ220では、輝度ムラを分かり易く説明するために、照明光による輝度成分のみを示している。輝度ムラは、フォーカルプレーンシャッタ102の走行方向に生じる。本例では、フォーカルプレーンシャッタ102の走行方向は画像上のY方向に対応し、X方向に延びる画素ラインの個々は略同時に露光されるとする。したがって、画像データ210および画像データ220には、X方向に延びる複数の帯の間で、輝度ムラが現れる。
【0021】
本例のように、露光時間T1が明滅周期よりも短く、明滅周期の半周期よりも長い場合、画像データ210上には帯状の明部および帯状の暗部の少なくとも一方が1つ現れる。本例のように照明光の輝度が極小となる時刻t1から露光を開始した場合、暗部の帯は、画像データ210のY方向の最上部に現れる。そして、照明光の輝度が極大となる時刻に対応するY方向の位置に、明部の帯が現れる。
【0022】
本例において、1回目の露光と2回目の露光とは、明滅周期の2.5周期分ずれて行われる。すなわち、2回目の露光は、時刻t1から、明滅周期の2.5周期分だけ後の時刻t3から開始される。2回目の露光は、照明光の輝度が極大となる時刻t3から開始されるので、画像データ220のY方向の輝度分布は、画像データ210のY方向の輝度分布と位相が逆転する。具体的には、画像データ220において暗部の帯が現れる位置は、画像データ210において明部が現れる位置と一致する。そして、画像データ220において明部の帯が現れる位置は、画像データ210において暗部が現れる位置と一致する。
【0023】
画像処理部107は、画像データ210と画像データ220とを重ね合わせて平均化することにより、重ね合わせ画像データ230を生成する。輝度変化が互いに逆相となる画像データを重ね合わせることで重ね合わせ画像データ230が生成されるので、画像データ230に現れる輝度ムラは、画像データ210および画像データ220に現れる輝度ムラと比較して、著しく低減される。
【0024】
図3は、画像データ210を色成分毎に模式的に示す。白色照明用の蛍光灯には、白色に近い照明光を発光するために、発光スペクトルが異なる複数の蛍光物質が用いられる。これらの蛍光体が互いに異なる発光特性を有する場合、照明光のスペクトルも時間的に変化する。例えば、蛍光灯に通常用いられる蛍光体によれば、R成分およびG成分と比較して、B成分の輝度が早く減衰する。また、R成分の輝度は、G成分と比較してゆっくりと減衰する場合がある。このため、画像データ210および画像データ220には、それぞれ色被りが生じる。
【0025】
蛍光灯照明下ではB成分の輝度が比較的に早く減衰するので、図示されるように、B成分の画像データ210cには、R成分の画像データ210aおよびG成分の画像データ210bと比較して、幅広な暗部が現れる。また、R成分の画像データ210aには、G成分の画像データ210bと比較して、狭幅の暗部が現れる。したがって、画像データ210上の暗部領域は、B成分の輝度の強い落ち込みに対応して、黄色成分が強い帯状の領域となる。
【0026】
画像データ220も、各色成分のY方向の輝度分布が逆相となる点を除いて、画像データ210と同様である。このような画像データ210と画像データ220とを重ね合わせた場合に、画像データ230上では色被りが残ってしまう場合がある。例えば、画像データ210の略白色な明部と、画像データ220の黄色の暗部を重ね合わせることで、画像データ230には黄色寄りの色を持つ帯が現れる。
【0027】
一方で、例えば時刻t1から明滅周期の1/4周期分ずれた時刻では、照明光のB成分は他の色成分と比較して大きくは落ち込んでいないとすると、対応する画像データ210の帯は略白色となる。時刻t3から1/4周期分ずれた時刻に対応する画像データ220上の帯も同様に、略白色となる。したがって、重ね合わせ画像データ230上の対応する帯は略白色となる。この場合、重ね合わせ画像データ230には、黄色寄りの色を持つ帯と、略白色な帯とが少なくとも含まれる。このように、画像データ230には、照明光の色温度の変化に応じて、色温度が異なる帯状の領域が複数現れる。
【0028】
図4は、ホワイトバランス補正された重ね合わせ画像400の一例を示す。画像処理部107は、画像データ210と画像データ220とを重ね合わせた画像データに、Y方向の位置が異なる複数の帯領域410−1〜6を設定する。そして、画像処理部107は、帯領域410−1〜6毎に、ホワイトバランス補正を施す。具体的には、画像処理部107は、帯領域410のそれぞれにおける色差信号(R−Y、B−Y)に基づいてホワイトバランスのゲインを帯領域410のそれぞれについて決定して、帯領域410のそれぞれについて決定したゲインに基づいて色信号の処理をする。また、画像処理部107は、帯領域410−1〜6毎に、輝度補正を施してもよい。画像処理部107が帯領域410−1〜6毎にホワイトバランス補正を施すことで、画像データ230の全領域に対してホワイトバランス補正をした場合と比較して、画像データ230に含まれる色被りを著しく低減することができる。
【0029】
ここで、帯領域410のそれぞれのY方向の幅は、予め定められた固定値であってよい。また、分割する帯領域410の数も、予め定められた固定値であってよい。一方、画像処理部107は、帯領域410の幅および分割する帯領域410の数の少なくとも一方を、可変制御してもよい。
【0030】
例えば、画像処理部107は、画像領域毎に異なる幅の帯領域410を設定してよい。上述したように、照明光の点滅が滅状態になるタイミングでB成分が強く落ち込む。したがって、画像データ230における当該暗部に対応する領域において、色温度が大きく変化する。このため、画像処理部107は、画像データ230における暗部に対応する領域において、他の領域よりも帯領域410の幅を小さく設定してよい。
【0031】
ここで、画像処理部107は、画像データ210および画像データ220の少なくとも一方に基づいて、帯領域410の幅を小さくすべき領域を設定してよい。具体的には、画像処理部107は、画像データ210および画像データ220の少なくとも一方のY方向の輝度分布に基づいて暗部となる帯領域を特定して、特定した暗部となる領域を、帯領域410の幅を小さくすべき領域として設定してよい。
【0032】
その他にも、画像処理部107は、画像データ210と画像データ220との比較結果に基づいて、帯領域410の幅を小さくすべき領域を特定してよい。例えば、画像処理部107は、画像データ210と画像データ220との間で輝度値の差が予め定められた値よりも大きい領域を、帯領域410の幅を小さくすべき領域として設定してよい。図2で例示したように露光タイミングが明滅周期の半周期分ずれている場合、画像間の輝度値の差が最大となる領域が、暗部の領域に対応する。このため、画像データ間の輝度値の差に基づいて、色温度が大きく変化する領域を適切に特定できる場合がある。露光タイミングのずれが明滅周期の半周期分に一致していない場合や、照明光の照度分布が不均一である場合は、輝度値の差が最大となる領域と暗部領域とが完全に一致しない場合がある。しかしながら、輝度値の差が大きい領域は、照明光の明滅の影響を大きく受けている領域であるといえるので、当該領域で色温度が大きく変化している蓋然性が高い。したがって、当該領域で帯領域410の幅を小さくすることで、色温度が大きく変化する蓋然性が高い領域について、色温度をきめ細やかに補正することができる。
【0033】
また、画像処理部107は、フォーカルプレーンシャッタ102のシャッタ幕速が遅いほど、より多くの帯領域410に分割してホワイトバランス補正をしてよい。図2で説明したように、露光期間T1で露光すると、画像データ210および画像データ220には、明部および暗部の少なくとも一方を1つ含まれる。シャッタ幕速を低くして、露光期間を点滅周期よりも長くすると、明部または暗部の少なくとも一方が複数現れる。つまり、シャッタ幕速を低くするほど、画像データ上での輝度の変化率が大きくなる。したがって、照明光の色温度の変化率も大きくなる。帯領域410の幅を固定値とすると、1つの帯領域410内における色温度の変化率が大きくなるので、ホワイトバランス補正によって正しく色温度を補正することができない場合がある。画像処理部107が、シャッタ幕速が遅いほどより多くの帯領域410に分割してホワイトバランス補正を施すことで、照明光の色温度をきめ細やかに補正することができる。
【0034】
図5は、重ね合わせおよびホワイトバランス補正を特定の部分領域で行う場合の処理例を模式的に示す。画像データ510および画像データ520は、それぞれ画像データ210および画像データ520に対応する、被写体像を含む画像データである。
【0035】
蛍光灯の点滅による影響は、蛍光灯の近くの被写体に対して大きく現れる。また、環境光よりも蛍光灯の光が強く当たる被写体ほど、照明光のフリッカの影響をより大きく受ける。例示した画像データ510および画像データ520では、フリッカの影響は、部分領域515および部分領域525に大きく現れる。一方、他の画像領域には、環境光が主として当たる被写体が写り込んでいるので、フリッカの影響は比較的に小さい。
【0036】
画像処理部107は、画像データ510の部分領域515に、画像データ520の部分領域525の画像を重ね合わせる。このとき、画像処理部107は、画像データ510と画像データ520との間のブレを補正して、重ね合わせ処理を行うことが好ましい。例えば、画像処理部107は、画像データ510と画像データ520との間の移動ベクトルを算出して、算出した移動ベクトルに基づいて部分領域525をずらして重ね合わせる。
【0037】
画像処理部107は、得られた画像データ530内の部分領域515に対応する領域に対して、1以上の帯領域540を設定する。本例では、複数の帯領域540−1および帯領域540−2を設定する。そして、画像処理部107は、各帯領域540に対してホワイトバランス補正を施す。このため、照明光のフリッカによる色被りを低減することができる。また、画像処理部107は、画像データ530における部分領域515以外の領域に対して、ホワイトバランス補正を施す。
【0038】
画像データ530において部分領域515以外の領域は、フリッカの影響を大きく受けていないので、色被りは実質的に環境光によるものだけである。このため、部分領域515以外の領域全体でホワイトバランス補正を施すことで、環境光の色温度をきちんと補正することができる。また、本例の画像処理によれば、部分領域515以外の領域では画像データ520を重ね合わせないので、その領域でブレのない画像を提供することができる。
【0039】
画像処理部107は、画像データ210に基づいて、部分領域515を特定してよい。例えば、画像処理部107は、輝度が帯状に変化している部分領域を、フリッカの影響が生じている部分領域として特定してよい。例えば、画像処理部107は、帯状の領域毎に算出された輝度の平均値に基づいて、輝度が帯状に変化している部分領域を特定してよい。また、画像処理部107は、例えば帯状の領域毎に算出された輝度の平均値に基づき、予め定められた値より大きい輝度の変化成分が検出された部分領域を、フリッカの影響が生じている部分領域として特定してよい。また、画像処理部107は、画像データ210と画像データ220との比較結果に基づいて、部分領域515を特定してよい。例えば、画像処理部107は、画像データ210と画像データ220との間で輝度値の差が予め定められた値よりも大きい部分領域を、フリッカの影響が生じている部分領域として特定してよい。
【0040】
図6は、静止画撮影時の処理フロー図を示す。処理フローは、静止画撮影のレリーズスイッチが操作されたことを検知したときに、開始される。また、本フロー図においては、特に断わらない限りシステム制御部114が主体となって動作する。
【0041】
処理フローが開始されると、ステップS602で、1枚目の静止画である第1静止画が撮影される。具体的には、フォーカルプレーンシャッタ102を走行させて露光することで、第1静止画が撮影される。メモリ制御部106は、第1静止画の画像データを、内部メモリ108に記憶する。また、タイミング発生部112は、2枚目の静止画を撮影すべき撮影タイミングでフォーカルプレーンシャッタ102を駆動するクロックを発生するよう、設定される。具体的には、タイミング発生部112は、1枚目の静止画を撮影したときのフォーカルプレーンシャッタ102の先幕の走行開始タイミングから、照明光の明滅周期の(N+1/2)倍だけ後のタイミングで当該クロックを発生するよう、設定される。ここでNは0以上の整数とする。
【0042】
ステップS604で、フリッカ低減モードがONに設定されているか否かを判断する。フリッカ低減モードがONに設定されている場合、画像処理部107は、第1静止画の画像データに基づいて、フリッカの影響が生じているか否かを判断する(ステップS606)。フリッカの影響が生じている場合、画像処理部107は、第1静止画内でフリッカの影響が生じている領域であるフリッカ領域を検出する(ステップS608)。フリッカの影響が生じている領域は、図5に関連して説明した方法で特定することができる。
【0043】
ステップS610で、明滅周期の半周期分ずれた位相で、2枚目の静止画である第2静止画を撮影する。このとき、フォーカルプレーンシャッタ102の先幕は、タイミング発生部112から供給されたクロックに同期して走行を開始する。メモリ制御部106は、第2静止画の画像データを、内部メモリ108に記憶する。ステップS612で、画像処理部107は、第1静止画の画像データと第2静止画の画像データとを比較して、ブレ量を検出する。
【0044】
ステップS614で、画像処理部107は、第1静止画のフリッカ領域に、第2静止画のフリッカ領域の画像を加算する。このとき、画像処理部107は、ステップS612で検出したブレ量に基づいて、第2静止画のフリッカ領域の画像に対してブレ補正を施して、ブレ補正された画像を、第1静止画のフリッカ領域に加算する。
【0045】
ステップS616で、画像処理部107は、フリッカ領域内で帯状の画像領域を設定して、帯状の画像領域毎にホワイトバランス補正を施す。このとき、画像領域毎の色温度のバラツキが低減するよう、帯状の画像領域毎にホワイトバランス補正を施すことが望ましい。例えば、複数の画像領域のうち最大輝度に対応する領域をホワイトバランスの基準として、帯状の画像領域毎にホワイトバランス補正を施すことが望ましい。ステップS618で、画像処理部107は、フリッカ領域以外の画像領域に対してホワイトバランス補正を施す。画像処理部107によってホワイトバランス補正が施された出力用の静止画データは、内部メモリ108内に保管される。内部メモリ108内に保管された出力用の静止画データは、表示制御部109の制御により表示部110に表示されてよい。出力用の静止画データを記録媒体122に記録する場合、後述するステップS620に進む。
【0046】
ステップS604で、フリッカ低減モードがONに設定されていなければ、ステップS630へ進む。また、ステップS606で、フリッカの影響が生じていなければ、ステップS630へ進む。ステップS630では、画像処理部107は、第1静止画の画像データ全体に対して、ホワイトバランス補正を施す。画像処理部107によりホワイトバランス補正が施された出力用の静止画データは、内部メモリ108内に保管される。内部メモリ108内に保管された出力用の静止画データは、表示制御部109の制御により表示部110に表示されてよい。出力用の静止画データを記録媒体122に記録する場合、ステップS620に進む。
【0047】
ステップS620で、画像処理部107は出力用の静止画データを符号化する。そして、符号化された出力用の静止画データが記録媒体IF111を通じて記録媒体122に記録される。ステップS620における記録媒体122への記録が完了すると、一連の静止画撮影動作を終了する。
【0048】
図7は、カメラ100における動画撮影モードでの処理の一例を、照明光の明滅パターン700とともに模式的に示す。
【0049】
システム制御部114は、操作部材120が操作されて動画撮影が指示されると、CMOSセンサとしての撮像素子103をローリング読み出しするよう、カメラ100の各部を制御する。具体的には、システム制御部114がフォーカルプレーンシャッタ102を開放状態として、撮像素子103が有する画素ラインに対するリセット動作、光電荷の蓄積動作および読み出し動作等の駆動動作を、複数の画素ラインに対して一定の時間差で順次に行わせる。具体的には、タイミング発生部112は、垂直同期信号を時間間隔T2で発生して撮像素子103に供給する。したがって、時間間隔T2毎に撮影が行われる。ここで、時間間隔T2は、照明光の明滅周期の1/2に設定されているとする。
【0050】
図2等に関連して説明した静止画撮影と同様に、本例のローリング読み出しによっても複数の画素ラインが順次に露光されるので、複数の画素ラインで電荷蓄積の同時性がない。このため、各画像データには、静止画撮影で説明した輝度ムラと同様の輝度ムラが生じる。本図においても、輝度ムラを分かり易く説明するために、画像データ710および画像データ720として照明光による輝度成分のみを示している。輝度ムラは、略同時に露光される画素ラインに垂直な方向に生じる。1つの画素ラインが行方向に形成されている場合、輝度ムラは列方向に生じる。
【0051】
本例のように照明光の輝度が極小となる時刻t10で垂直同期信号が発生している場合、暗部の帯は、画像データ710のY方向の最上部に現れる。そして、照明光の輝度が極大となる時刻t11に対応して、明部の帯がY方向の最下部に現れる。また、時刻t11で生成された垂直同期信号に同期して撮影された画像データ720では、明部の帯がY方向の最上部に現れ、照明光の輝度が極小となる時刻t12に対応して、暗部の帯がY方向の最下部に現れる。
【0052】
画像データ720のY方向の輝度分布は、画像データ710のY方向の輝度分布と位相が逆転する。画像処理部107は、画像データ710と画像データ720とを重ね合わせて平均化することにより、動画を構成するフレームとしての重ね合わせ画像データ730を生成する。輝度変化が互いに逆相となる画像データを重ね合わせることで重ね合わせ画像データ730が生成されるので、画像データ730に現れる輝度ムラは、画像データ710および画像データ720に現れる輝度ムラと比較して、著しく低減される。
【0053】
照明光の明滅の次の周期であるt12〜t14についても同様に、2つの画像データを重ね合わせることで、1つのフレームを生成する。システム制御部114は、本動作が繰り返されるようカメラ100の各部を制御することで、動画を構成する複数のフレームを生成する。
【0054】
本例では、動画撮影時の処理を分かり易く説明することを目的として、輝度ムラについて説明して、色被りについては特に言及しなかった。しかし、静止画撮影と同様に、重ね合わせて得られた画像データに色被りが残る場合がある。画像処理部107は、静止画撮影に関連して上述したように、動画フレームとしての各重ね合わせ画像に対して、複数の帯領域毎にホワイトバランス補正をする。これにより、各動画フレームの色被りを低減することができる。
【0055】
図8は、動画撮影時の処理フロー図を示す。処理フローは、操作部材120に対して動画撮影指示操作がなされたことを検知したときに、開始される。また、本フロー図においては、特に断わらない限りシステム制御部114が主体となって動作する。
【0056】
処理フローが開始されると、ステップS802で、フリッカ低減モードがONに設定されているか否かを判断する。フリッカ低減モードがONに設定されている場合、フレームレートをフリッカに合わせて設定する(ステップS804)。例えば、内部メモリ108に展開された照明光の明滅周波数を示す変数に基づき、タイミング発生部112は、照明光の明滅周期の(N+1/2)倍の時間間隔で、垂直同期信号を発生するよう設定される。ここでNは0以上の整数とする。また、タイミング発生部112は、各画素ラインを駆動するタイミングを示すクロックを発生するよう設定される。
【0057】
ステップS806で、撮像素子103に対するローリング読み出しを開始する。ステップS808で、撮影およびフレーム生成の処理を実行する。具体的なシーケンスについては後述する。撮影およびフレーム生成の処理が完了すると、ステップS810で、ローリング読み出しを停止する。生成された複数のフレームを記録媒体122に記録する場合、ステップS808で生成された複数のフレームが画像処理部107によって動画として符号化処理され、記録媒体IF111を通じて記録媒体122に動画として記録される(ステップS812)。ステップS812における記録媒体122への記録が完了すると、一連の動画撮影動作を終了する。
【0058】
本フローのステップS804において、フレームレートをフリッカに合わせて設定するとして説明した。例えば、100Hzの明滅に対応すべく図7に例示したフレームレートで撮影する場合、出力用の動画として100fpsの動画が得られる。一方、30fpsの動画を生成するよう要求されている場合、100fpsの動画を30fpsの動画に変換する必要がある。例えば、ステップS812において、画像処理部107は、100fpsの動画を30fpsの動画に変換して、記録媒体に記録してよい。フレームレートを変換する処理が介在するが、低フレームレートの動画への変換処理であるので、画質は実質的に劣化しない。
【0059】
ところで、図7に例示したフレームレートは、ステップS804に関連して説明したN=0の場合に該当する。N=1とすると、出力用の動画のフレームレートは33.3fpsとなり、要求された30fpsよりも高い。したがって、当該動画のフレームレートを要求された30fpsに変換しても、画質が著しく劣化することはない。しかし、N=2の場合、出力用の動画のフレームレートは20fpsとなり、要求された30fpsよりも低くなる。このため、この動画を要求された30fpsに変換したとすると、N=0またはN=1の場合と比較して、画質の劣化は大きくなる。そこで、ステップS804では、明滅の周期および要求されたフレームレートに基づき、要求されたフレームレートよりも出力用の動画のフレームレートが高くなるよう、撮影のフレームレートを設定することが望ましい。
【0060】
具体的には、明滅周期をTとした場合に、ステップS804において、要求されたフレームレートの逆数よりも2×(N+1/2)×Tが小さくなるという条件を満たすNを算出する。そして、算出したNを用いて、撮影のフレームレート(N+1/2)×Tを設定することが望ましい。このとき、当該条件を満たす最も大きいNを用いて、撮影のフレームレートを設定してよい。
【0061】
図9は、撮影およびフレーム生成の処理を実行するフロー図である。すなわち、図8のステップS808の詳細フロー図である。
【0062】
ステップS902で第1フレームの読み出しが完了すると、ステップS904でメモリ制御部106が第1フレームの画像データを、内部メモリ108に記憶する。ステップS906で第2フレームの読み出しが完了すると、ステップS906でメモリ制御部106が第2フレームの画像データを、内部メモリ108に記憶する。
【0063】
ステップS910で、フリッカ低減モードがONに設定されているか否かを判断する。フリッカ低減モードがONに設定されている場合、画像処理部107は、第1フレームおよび第1フレームの少なくとも一方に基づいて、フリッカの影響が生じているか否かを判断する(ステップS912)。フリッカの影響が生じている場合、画像処理部107は、第1フレーム内でフリッカの影響が生じている領域であるフリッカ領域を検出する(ステップS914)。フリッカの影響が生じている領域は、図5に関連して説明した方法と同様の方法を適用して検出することができる。ステップS916で、画像処理部107は、第1フレームと第2フレームとを比較して、ブレ量を検出する。
【0064】
ステップS918で、画像処理部107は、第1フレームのフリッカ領域に、第2フレームのフリッカ領域の画像を加算する。このとき、画像処理部107は、ステップS916で検出したブレ量に基づいて、第2フレームのフリッカ領域の画像に対してブレ補正を施して、ブレ補正された画像を、第1フレームのフリッカ領域に加算する。
【0065】
ステップS920で、画像処理部107は、フリッカ領域内で帯状の画像領域を設定して、帯状の画像領域毎にホワイトバランス補正を施す。ステップS922で、フリッカ領域以外の画像領域に対してホワイトバランス補正を施す。画像処理部107によってホワイトバランス補正が施された出力用のフレームは、内部メモリ108内に保管される。内部メモリ108内に保管された出力用のフレームは、表示制御部109の制御により表示部110に表示されてよい。本ステップの後、ステップS924に進む。
【0066】
ステップS910で、フリッカ低減モードがONに設定されていなければ、ステップS930へ進む。また、ステップS912で、フリッカの影響が生じていなければ、ステップS930へ進む。ステップS930では、画像処理部107は、第1フレームの画像データ全体に対してホワイトバランス補正を施す。また、画像処理部107は、第2フレームの画像データ全体に対してホワイトバランス補正を施す。画像処理部107がホワイトバランス補正を施すことにより生成された2つのフレームは、出力用のフレームとして内部メモリ108内に保管される。内部メモリ108内に保管された出力用のフレームは、表示制御部109の制御により表示部110に表示されてよい。本ステップの後、ステップS924に進む。
【0067】
ステップS924で、動画撮影の終了が、操作部材120を通じて指示されたか否かを判断する。動画撮影の終了が指示されていない場合、ステップS902に進み、動画撮影の終了が指示されるまで、出力用のフレームが生成され続ける。動画撮影の終了が指示されている場合、撮影およびフレーム生成の処理に関する一連の処理を終了して、図8のフローに戻る。
【0068】
本実施形態で説明したとおり、静止撮影モードにおいてフォーカルプレーンシャッタ102を駆動することで、撮像素子103が有する複数の画素ラインが順次に露光される。また、動画撮影モードにおいてCMOSセンサとしての撮像素子103をローリング読み出しすることで、撮像素子103が有する複数の画素ラインが順次に露光される。
【0069】
上記においては、2つの画像を重ね合わせて重ね合わせ画像を生成するとして説明した。しかし、画像処理部107は、3以上の複数の画像を重ね合わせて重ね合わせ画像を生成してもよい。すなわち、画像処理部107は、撮像素子103で複数回露光して生成された複数の画像を重ね合わせて、重ね合わせ画像を生成する。そして、画像処理部107は、重ね合わせ画像に対して、複数の画素ラインに平行な複数の帯状の画像領域毎にホワイトバランス補正を施す。複数の画像の重ね合わせにより、輝度ムラを低減した静止画、動画フレームを生成することができる。また、帯状の画像領域毎にホワイトバランス補正を施すことにより、色被りを低減した静止画、動画フレームを生成することができる。すなわち、カメラ100によれば、照明光のフリッカの影響を低減した静止画、動画フレームを生成することができる。
【0070】
上記においては、複数の画像を重ね合わせた後にホワイトバランス補正を施すとして説明した。しかし、画像処理部107は、複数の画像のそれぞれに対して、帯状の画像領域毎にホワイトバランス補正を施してから重ね合わせることにより、ホワイトバランス補正が施された重ね合わせ画像を生成してもよい。すなわち、重ね合わせ処理とホワイトバランス処理を適用する順番にかかわらず、画像処理部107は、複数の画素ラインに平行な複数の帯状の画像領域毎にホワイトバランス補正を施した重ね合わせ画像を生成することができる。また、画像処理部107は、複数の画像を重ね合わせるとき、少なくとも一部の領域で重ね合わせ処理をしてよい。また、画像処理部107は、少なくとも一部の領域でホワイトバランス補正を施してよい。上述したように、画像処理部107は、撮像素子103が生成する画像内のフリッカの影響が生じる部分領域に対して、複数の帯状の画像領域毎にホワイトバランス補正を施してよい。このように、画像処理部107は、フリッカの影響が生じる部分領域に対して、複数の画像を重ね合わせて、複数の帯状の画像領域毎にホワイトバランス補正を施してよい。
【0071】
上記においては主として、静止画撮影モードでは、照明光の明滅周期よりも短く、明滅周期の半周期よりも長い露光時間T1で露光するとして説明した。また、動画撮影モードにおいて、明滅周期の半分の時間間隔T2でフレームを撮影するとして説明した。すなわち、画像処理部107が、フリッカの周期に対して半周期ずれた位相で撮像素子103で露光して生成された2つの画像を重ね合わせるとして説明した。しかし、静止画撮影における露光時間、動画撮影におけるフレーム間隔は、上記に限られない。上記の重ね合わせおよびホワイトバランス補正処理は、フリッカの影響を受ける露光時間およびフレーム間隔であれば、どのような場合でも適用することができる。フリッカの影響を受ける露光時間およびフレーム間隔としては、露光時間やフレーム間隔が明滅周期の同程度である場合を例示することができる。一方、1の画素ラインが露光される時間長さが明滅周期と同程度以上である場合、フリッカの影響を受けないとみなすことができる。また、静止画撮影において、シャッタ幕速が極めて高速な場合、例えば、露光時間が明滅周期と比較して十分に短い場合も、フリッカの影響を受けないとみなすことができる。
【0072】
したがって、フリッカの影響を受ける露光時間またはフレーム間隔である場合、上記の重ね合わせおよびホワイトバランス補正処理を適用し、フリッカの影響を受けない露光時間またはフレーム間隔である場合、上記の重ね合わせおよびホワイトバランス補正処理を適用しないようにしてよい。上記においては、フリッカ低減モードのON/OFFを判断して処理を切り替えるとして説明した。しかし、フリッカ低減モードのON/OFFの判断を、フリッカの影響を受ける露光時間またはフレーム間隔であるか否かの判断に替えることができる。
【0073】
上記においては主として、照明光の明滅に対して、明滅周期の半周期分ずれた位相で次の露光が開始されるとして説明した。しかし、次の露光が明滅周期に対してきっちり半周期分ずれている必要はない。次の露光が明滅周期の半周期分ずれた位相で開始されることが最も好ましいが、次の露光開始までの時間長さが明滅周期の整数倍と一致していなければ、次の露光開始までの時間長さはどのような値であってもよい。次の露光開始までの時間長さが明滅周期の整数倍と一致している場合を除き、フリッカの影響を低減する一定の効果を期待することができる。
【0074】
上記において、照明光として蛍光灯による照明光を例示した。しかし、照明光として、水銀灯等の、色温度が時間的に変化する他の光源による照明光を例示することができる。商用の交流電源で駆動され、電源周波数に応じて明滅する光源が、照明光の光源として用いられている環境下で撮影する場合に、上記の処理、例えば上記の重ね合わせおよびホワイトバランス補正処理を適用することができる。例えば50Hzの系統電源で駆動される光源であれば、例えば100Hzで明滅することが期待される。60Hzの系統電源で駆動される光源であれば、例えば120Hzで明滅することが期待される。したがって、系統電源に応じた周波数、例えば100Hz〜120Hzの明滅周期に基づいて、上記のフリッカの影響を受けるか否かを判断してもよい。また、上記のように、次の露光を開始するまでの時間長さは、例えば100Hz〜120Hzの明滅周波数に基づいて設定されてよい。例えば、次の露光を開始するまでの時間長さを、1/100の整数倍でなく、かつ、1/120の整数倍でもない値に設定してよい。また、明滅周期の半周期分ずれた位相で次の露光が開始されるべく、次の露光を開始するまでの時間長さを、当該明滅周波数に基づいて設定してよい。例えば、次の露光を開始するまでの時間長さを、カメラ100が現在位置する地域で使用される系統電源の周波数に基づいて設定してよい。カメラ100の現在位置は、GPS情報等に基づいて特定してよい。
【0075】
上記において説明したように、画像処理部107は、撮像素子103が生成する画像にフリッカの影響が生じる場合に、複数の帯状の画像領域毎にホワイトバランス補正を施す。フリッカの影響が生じない場合は、画像処理部107は、画像全体でホワイトバランス補正をすればよい。また、上記のように、画像処理部107は、帯状の輝度分布が生じている場合に、フリッカの影響が生じた旨を判断することができる。具体的には、画像処理部107は、撮像素子103が生成した画像が、複数の画素ラインに垂直な方向に輝度の周期性を有する場合に、フリッカの影響が生じた旨を判断する。その他にも、カメラ100に周囲光を検出するセンサを設けて、当該センサ出力に基づいて、撮像素子103が生成する画像にフリッカの影響が生じるか否かを判断してよい。センサ出力としては、明るさの時間変化情報、周囲光のスペクトル情報等を例示することができる。例えば、明るさが周期的に変化している場合、フリッカの影響が生じるとして判断してよい。また、周囲光のスペクトルが、蛍光灯からの発光スペクトル、水銀灯からの発光スペクトル等の、予め定められたスペクトルと、予め定められた値を超える一致度で一致する場合に、フリッカの影響が生じるとして判断してよい。その他にも、上記のように、フリッカの影響を受ける露光時間またはフレーム間隔である場合に、撮像素子103が生成する画像にフリッカの影響が生じると判断してよい。このように、フリッカの影響が実際に生じているか否かの判断を要することなく、フリッカの影響を受ける可能性のある撮影条件で撮影する場合に、撮像素子103が生成する画像にフリッカの影響が生じると判断してよい。
【0076】
上記においては、例えば図5に関連して説明したように、画像処理部107は、部分領域を重ね合わせる場合に、ブレを補正して部分領域を重ね合わせるとして説明した。しかし、画像処理部107は、画像の全体を重ね合わせる場合にも、ブレを補正して重ね合わせてよい。すなわち、画像処理部107は、部分領域を重ね合わせるか画像全体を重ね合わせるかにかかわらず、複数の画像間のブレを補正して重ね合わせてよい。本処理によれば、手ぶれ等の影響も低減された画像を提供することができる。また、以上に説明したカメラ100によれば、内部メモリ108に画像データとして記憶してから画像処理を施すので、画像データに基づいて、フリッカに関する情報や手ぶれ量等の、種々の情報を得ることができる。
【0077】
上記においては、カメラ100がフォーカルプレーンシャッタ102を備え、静止画撮影モードではフォーカルプレーンシャッタ102を用いて撮影し、動画画撮影モードではローリング読み出しにより撮影するとした。カメラ100は、フォーカルプレーンシャッタ102を備えずともよく、静止画撮影モードにおいてもローリング読み出しをしてよい。また、動画撮影モードにおいても、フォーカルプレーンシャッタ102を駆動して動画を撮影してもよい。また、カメラ100のシャッタ機能は、電子先幕シャッタと、メカ後幕シャッタとの組み合わで実装されてよく、撮像素子103は、電子先幕シャッタとメカ後幕シャッタとによって画素ラインが順次に露光されてよい。
【0078】
上記実施形態で説明したカメラ100は、レンズ交換式一眼レフカメラ、コンパクトデジタルカメラ、ミラーレス一眼カメラおよびビデオカメラはもちろん、カメラ機能付きの携帯電話等として適用できる。上記の画像処理部107における画像処理を、パーソナルコンピュータなどの電子情報処理装置が実行することができる。電子情報処理装置は、当該画像処理の実行を制御する制御プログラムをロードして、読み込んだ制御プログラムに従って動作することにより、当該画像処理を実行してよい。電子情報処理装置は、制御プログラムを記憶しているコンピュータ読取可能な記録媒体を読み込むことによって、制御プログラムをロードすることができる。
【0079】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0080】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0081】
100 カメラ、101 光学系、102 フォーカルプレーンシャッタ、103 撮像素子、104 アンプ部、105 A/D変換器、106 メモリ制御部、107 画像処理部、108 内部メモリ、109 表示制御部、110 表示部、111 記録媒体IF、112 タイミング発生部、113 レンズ制御部、114 システム制御部、120 操作部材、122 記録媒体、200 明滅パターン、210、220、230、510、520、530、710、720、730 画像データ、400 重ね合わせ画像、410、540、540 帯領域、515、525 部分領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次に露光される複数の画素ラインを有する撮像素子と、
前記撮像素子で複数回露光して生成された複数の画像を重ね合わせて、重ね合わせ画像を生成する画像処理部と
を備え、
前記画像処理部は、前記複数の画素ラインに平行な複数の帯状の画像領域毎にホワイトバランス補正を施した前記重ね合わせ画像を生成する
撮像装置。
【請求項2】
前記画像処理部は、前記撮像素子が生成する画像にフリッカの影響が生じる場合に、前記複数の帯状の画像領域毎にホワイトバランス補正を施す
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、前記撮像素子が生成する画像内の前記フリッカの影響が生じる部分領域に対して、前記複数の帯状の画像領域毎にホワイトバランス補正を施す
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、前記フリッカの影響が生じる部分領域に対して、前記複数の画像を重ね合わせて、前記複数の帯状の画像領域毎にホワイトバランス補正を施す
請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記画像処理部は、前記フリッカの周期に対して半周期ずれた位相で前記撮像素子で露光して生成された2つの画像を重ね合わせる
請求項2から4のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記画像処理部は、前記撮像素子が生成した画像が、前記複数の画素ラインに垂直な方向に輝度の周期性を有する場合に、前記フリッカの影響が生じた旨を判断する
請求項2から5のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記画像処理部は、前記複数の画像間のブレを補正して重ね合わせる
請求項1から6のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記撮像素子に対してローリング読み出しをする読み出し部
をさらに備える請求項1から7のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記複数の画素ラインを順次に露光するフォーカルプレーンシャッタ
をさらに備える請求項1から7のいずれか一項に記載の撮像装置。
【請求項10】
画像処理制御プログラムであって、コンピュータに、
順次に露光される複数の画素ラインを有する撮像素子で複数回露光して生成された複数の画像を重ね合わせて、重ね合わせ画像を生成する画像処理ステップ
を実行させ、
前記画像処理ステップは、前記複数の画素ラインに平行な複数の帯状の画像領域毎にホワイトバランス補正を施した前記重ね合わせ画像を生成する
画像処理制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−142853(P2012−142853A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−664(P2011−664)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】