説明

撮像装置及びそのオートフォーカス制御方法、並びに制御プログラム

【課題】山登り制御によるAF制御を行う撮像装置において、AF評価値の最大値と最小値との差異は小さいが誤差量がそれ以上に小さい場合など、ピーク検知が可能な場合のAF評価値の信頼性の判定精度を向上させる。
【解決手段】暗いために画像にノイズの多い条件で撮影し、目視によってフォーカスの合っているデフォーカス位置が“15.5”であることが分かっているグラフである。このグラフは誤差量が大きいが最大値と最小値の差がそれ以上に大きい場合に相当する。誤差量が大きいため、従来装置ではピーク検知不能と判定した。本実施形態では、最大値と最小値の差を誤差量で割ったものを信頼性の評価値とすることにより、信頼性を正しく判定し、ピークを検知することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラに代表されるような撮像装置に関し、さら詳しくは、山登り制御によるオートフォーカス機能を有する撮像装置及びそのオートフォーカス制御方法、並びにその撮像方法を実行させるための制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルスチルカメラ等の撮像装置は、一般的に自動的に焦点を合わせるオートフォーカス (以下AF)機能を有している。その方法として、いわゆる山登り制御(コントラスト制御)が広く用いられている。
【0003】
山登り制御は、CCDなどの撮像素子から得られる被写体の画像データから高周波成分または近接画素の輝度差の一定期間(例えば1フィールドや1フレーム)毎の積分値を求め、これを合焦度合いを示すAF評価値とする。合焦状態にあるときは被写体のエッジ部分がはっきりしているためAF評価値が大きくなり、非合焦状態のときはAF評価値が小さくなる。
【0004】
具体的には、フォーカスレンズを無限遠から至近に対応する位置まで微細に駆動し、フォーカスレンズの各位置で輝度信号の高周波成分の積分値をAF評価値として順次取得する。そして、そのAF評価値を「AF評価値−フォーカスレンズ位置」の座標空間上にプロットした場合に極大(ピーク)となるフォーカスレンズ位置を合焦状態となるフォーカスレンズの焦点位置と決定する。
【0005】
また、AF評価値の最大値と最小値との差異が所定の閾値以上の場合、あるいは「AF評価値−フォーカスレンズ位置」特性のグラフの近似曲線に対するAF評価値のプロット位置の誤差量が所定の閾値以下の場合をAF評価値の信頼性が高いと判定して、それらの場合のみAF評価値を有効としてピーク検知を行うことにより、山登り制御の精度を高めることも知られている(特許文献1、2参照)。
【0006】
しかしながら、このようなAF評価値の最大値と最小値との差異や誤差量に基づいてAF評価値の信頼性を判定し、信頼性が高い場合のみAF評価値を有効とする方法では、AF評価値の最大値と最小値との差異や誤差量を別々に扱っているため、AF評価値の最大値と最小値との差異は小さいが誤差量がそれ以上に小さい場合や、誤差量は大きいがAF評価値の最大値と最小値との差異がそれ以上に大きい場合など、ピーク検知が可能な場合でも信頼性が低いと誤認し、ピーク検知不能と判定してしまうことがある。
【特許文献1】特開2004−102130号公報
【特許文献2】特許第2851713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、その目的は、山登り制御によるAF制御を行う撮像装置において、AF評価値の最大値と最小値との差異は小さいが誤差量がそれ以上に小さい場合や、誤差量は大きいがAF評価値の最大値と最小値との差異がそれ以上に大きい場合など、ピーク検知が可能な場合のAF評価値の信頼性の判定精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、山登り制御によるAF機能を有する撮像装置において、山登り制御によるAF機能を有する撮像装置において、焦点位置を変化させながら被写体を撮像して取得した画像データに基づいてAF評価値を取得する手段と、前記AF評価値の平均値を算出する手段と、前記AF評価値又は平均値の最大値と最小値の差異を算出する手段と、前記平均値に対する前記AF評価値の誤差量を算出する手段と、前記算出された差異と前記算出された誤差量との大小関係に基づいて、前記AF評価値の信頼性を判定する手段とを有することを特徴とする撮像装置である。
また、本発明は、山登り制御によるAF機能を有する撮像装置のAF制御方法において、焦点位置を変化させながら被写体を撮像して取得した画像データに基づいてAF評価値を取得する工程と、前記AF評価値の平均値を算出する工程と、前記AF評価値又は平均値の最大値と最小値の差異を算出する工程と、前記平均値に対する前記AF評価値の誤差量を算出する工程と、前記算出された差異と前記算出された誤差量との大小関係に基づいて、前記AF評価値の信頼性を判定する工程と、信頼性の評価値が所定の閾値以上の場合に前記AF評価値または前記移動平均値に基づいて合焦位置を求める工程とを有することを特徴とするAF制御方法である。
【0009】
[作用]
本発明によれば、山登り制御によるAF機能を有する撮像装置において、AF評価値の最大値と最小値との差異と、AF評価値の平均値に対するAF評価値の誤差量との大小関係に基づいてAF評価値の信頼性を判定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、山登り制御によるAF制御を行う撮像装置において、AF評価値の最大値と最小値との差異は小さいが誤差量がそれ以上に小さい場合や、誤差量は大きいがAF評価値の最大値と最小値との差異がそれ以上に大きい場合など、ピーク検知が可能な場合のAF評価値の信頼性の判定精度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態の撮像装置であるデジタルカメラの背面図である。このデジタルカメラの背面には、光学ファインダ6、AF−LED(発光ダイオード)8、ストロボLED9、及び撮影した画像の表示や設定画面の表示を行うLCD(液晶表示装置)からなるLCDモニタ10が配置されている。
【0012】
このデジタルカメラの上面には、レリーズシャッタスイッチSW1、及びモードダイヤルスイッチSW2が配置されている。また、このデジタルカメラの背面には、広角方向ズームスイッチSW3、望遠方向ズームスイッチSW4、セルフタイマの設定及び解除スイッチSW5、メニュースイッチSW6、上移動及びストロボセットスイッチSW7、右移動スイッチSW8、下移動及びマクロスイッチSW9、左移動および画像確認スイッチSW10、ディスプレイスイッチSW11、OKスイッチSW12、及び電源スイッチSW13が配置されている。
【0013】
図2は、このデジタルカメラ内部のシステム構成を示すブロック図である。
鏡胴ユニット7は、被写体の光学画像を取り込むズームレンズ7-1aとズーム駆動モータ7-1bとからなるズーム光学系7-1、フォーカスレンズ7-2aとフォーカス駆動モータ7-2bとからなるフォーカス光学系7-2、絞り7-3aと絞りモータ7-3bとからなる絞りユニット7-3、メカシャッタ7-4aとメカシャッタモータ7-4bとからなるメカシャッタユニット7-4、各モータを駆動するモータドライバ7-5を有する。そして、モータドライバ7-5は、リモコン受光部11の入力や操作キーユニットSW1〜SW13の操作入力に基づく、後述するデジタルスチルカメラプロセッサ104内にあるCPUブロック104-3からの駆動指令により駆動制御される。
【0014】
CCD101は、鏡筒ユニット7内を通った被写体の光学画像を光電変換して画像信号とするための固体撮像素子である。FE(フロントエンド)−IC102は、CCD101から送出された画像信号中のノイズを除去するための相関二重サンプリングを行うCDS回路102-1と、利得調整を行うAGC回路102-2と、デジタル化を行うA/D変換回路102-3と、TG(タイミングジェネレータ)102-4とを有する。TG102-4は、デジタルスチルカメラプロセッサ104内のCCD1信号処理ブロック104-1より、垂直同期信号(以下、VD)、水平同期信号(以下、HD)を供給され、CPUブロック104-3によって制御されるCCD101、及びFE−IC102の駆動タイミング信号を発生する。
【0015】
ROM108には、CPUブロック104-3にて解読可能なコードで記述された、制御プログラムや制御するためのパラメータが格納されている。このデジタルカメラの電源がオン状態になると、前記プログラムは不図示のメインメモリにロードされ、CPUブロック104-3はそのプログラムに従って装置各部の動作を制御するとともに、制御に必要なデータ等を、一時的にRAM107及び後述するデジタルスチルカメラプロセッサ104内のローカルSRAM104-4に保存する。ROM108として書き換え可能なフラッシュROMを使用することで、制御プログラムや制御するためのパラメータを変更することが可能となり、機能のバージョンアップが容易に行える。
【0016】
デジタルスチルカメラプロセッサ104は、FE−IC102の出力データにホワイトバランス設定やガンマ設定を行い、また、前述したように、VD信号、HD信号を供給するCCD1信号処理ブロック104-1、フィルタリング処理により、輝度データ及び色差データへの変換を行うCCD2信号処理ブロック104-2、前述した装置各部の動作を制御するCPUブロック104-3、前述した制御に必要なデータ等を一時的に保存するローカルSRAM104-4、パーソナルコンピュータ(以下、パソコン)などの外部機器とUSB通信を行うUSBブロック104-5、パソコンなどの外部機器とシリアル通信を行うシリアルブロック104-6、JPEG圧縮・伸張を行うJPEGコーデックブロック104-7、画像データのサイズを補間処理により拡大/縮小するリサイズブロック104-8、画像データを液晶モニタやTVなどの外部表示機器に表示するためのビデオ信号に変換するTV信号表示ブロック104-9、撮影された画像データを記録するメモリカードの制御を行うメモリカードコントロールブロック104-10を有する。各ブロックはバスラインにより互いに接続されている。
【0017】
USBブロック104-5、シリアルブロック104-6、TV表示ブロック104-9、メモリカードコントローラブロック104-10は、それぞれUSBコネクタ122、シリアルドライバ回路123-1、LCDドライバ117及びビデオアンプ118、メモリカードスロット121のカード接点に接続されている。また、シリアルドライバ回路123-1にはRS−232Cコネクタ123-2が接続され、LCDドライバ117にはLCDモニタ10が接続され、ビデオアンプ118にはビデオジャック119が接続されている。メモリカードスロット121には、メモリカード、LANカード、無線LANカード、及びBluetooth(登録商標)カードを着脱可能である。
【0018】
USBコネクタ122は、パソコンなどの外部機器とUSB接続を行う為のコネクタである。シリアルドライバ回路123-1は、パソコンなどの外部機器とシリアル通信を行うために、前述したシリアルブロック104-6の出力信号を電圧変換するための回路であり、RS−232Cコネクタ123-2は、パソコンなどの外部機器とシリアル接続を行う為のコネクタである。
【0019】
LCDドライバ117は、LCDモニタ10を駆動するドライブ回路であり、TV信号表示ブロック104-9から出力されたビデオ信号を、LCDモニタ10に表示するための信号に変換する機能も有している。LCDモニタ10は、撮影前に被写体の状態を監視する、撮影した画像を確認する、メモリカードスロット121に装着されているメモリカードや内蔵メモリ120に記録した画像データを表示する、などを行うためのモニタである。
【0020】
ビデオアンプ118は、TV信号表示ブロック104-9から出力されたビデオ信号を75Ωにインピーダンス変換するためのアンプであり、ビデオジャック119は、TVなどの外部表示機器と接続するためのジャックである。
【0021】
デジタルスチルカメラプロセッサ104のバスラインには、前述したROM108の他に、SDRAM103、RAM107、内蔵メモリ120、及びBluetooth(登録商標)回路130が接続されている。
【0022】
SDRAM103は、デジタルスチルカメラプロセッサ104で画像データに各種処理を施す際に、画像データを一時的に保存する。保存される画像データは、例えば、CCD101からFE−IC102経由で取り込んで、CCD1信号処理ブロック104-1でホワイトバランス設定、ガンマ設定が行われた状態の「RAW−RGB画像データ」やCCD2制御ブロック104-2で輝度データ・色差データ変換が行われた状態の「YUV画像データ」、JPEGコーデックブロック104-7でJPEG圧縮された「JPEG画像データ」などである。
【0023】
内蔵メモリ120は、メモリカードスロット121にメモリカードが装着されていない場合でも、撮影した画像データを記憶できるようにするためのメモリである。
【0024】
Bluetooth(登録商標)回路130はBluetooth(登録商標)機器への接続を行うための回路である。Bluetooth(登録商標)回路がない場合は、メモリカードスロット121にBluetooth(登録商標)カードを接続することにより、Bluetooth機器(登録商標)と接続することができる。イーサネット(登録商標)への接続は、イーサネット(登録商標)接続回路もしくは、無線イーサネット(登録商標)接続回路(図示せず)により行う。イーサネット(登録商標)回路がない場合は、メモリカードスロットル121にLANカードもしくは、無線LANカードを接続することにより、イーサネット(登録商標)に接続することができる。
【0025】
サブCPU109は、ROM及びRAMをワンチップに内蔵したCPUであり、操作キーユニットSW1〜SW13やリモコン受光部11の出力信号をユーザの操作情報として、CPUブロック104-3に出力したり、CPUブロック104-3より出力されるカメラの状態を、後述するサブLCD1、AF−LED8、ストロボLED9、ブザー113の制御信号に変換して出力したりする。
【0026】
サブLCD1は、例えば、撮影可能枚数など表示するための表示部であり、LCDドライバ111は、前述したサブCPU109の出力信号より、サブLCD1を駆動するためのドライブ回路である。AF−LED8は、撮影時の合焦状態を表示するためのLEDであり、ストロボLED9は、ストロボ充電状態を表すためのLEDである。尚、このAF−LED8とストロボLED9を、メモリカードアクセス中などの別の表示用途に使用しても良い。
【0027】
操作キーSW1〜13は、図1を参照しながら説明した各スイッチであり、リモコン受光部11は、利用者が操作したリモコン送信機の信号の受信部である。CPUブロック104-3により制御されるストロボ回路114は、ストロボ発光部3から照明光を発光させる。また、CPUブロック104-3により制御される測距ユニット5は被写体までの距離を測定する。
【0028】
音声記録ユニット115は、利用者が音声信号を入力するマイク115-3、入力された音声信号を増幅するマイクアンプ115-2、増幅された音声信号を記録する音声記録回路115-3なる。音声再生ユニット116は、記録された音声信号をスピーカから出力できる信号に変換する音声再生回路116-1、変換された音声信号を増幅し、スピーカを駆動するためのオーディオアンプ116-2、音声信号を出力するスピーカ116-3からなる。
【0029】
以上の構成を有する撮像装置のAF制御動作について説明する。図3はAF制御におけるピーク検知処理のフローチャートであり、図4はそのピーク検知処理により作成されたデータの一例である。図3に示すピーク検知処理は、デジタルスチルカメラプロセッサ104内のCPUブロック104-3がROM108内の制御プログラムに基づいて動作することにより実行される。
【0030】
まずステップS1で、フォーカスを無限遠から至近まで変化させながらAF評価値のデータ(元データ)を取得する。ここでは、図4に示すように、無限遠のデフォーカス位置(図2のフォーカスレンズ7-2aの光軸方向位置)を“1”、至近距離のデフォーカス位置を“31”とした。
【0031】
次にステップS2で、AF評価値のデータを所定数の点(今回は5点とした)ずつ平均化した平均化データを作成する。ただし、端に近い点は平均化の個数が足りないので、使用できるデータ数の範囲で平均化する。今回は、端から2個目は4点の平均、端点は3点の平均とした。即ち図4において、デフォーカスの値がn(nは1から31迄の整数)のときの元データの値をA(n)、5点平均データの値をB(n)とすると、
B(1)={A(1)+A(2)+A(3)}/3
B(2)={A(1)+A(2)+A(3)+A(4)}/4
B(3)={A(1)+A(2)+A(3)+A(4)+A(5)}/5
B(4)={A(2)+A(3)+A(4)+A(5)+A(6)}/5
B(28)={A(26)+A(27)+A(28)+A(29)+A(30)}/5
B(29)={A(27)+A(28)+A(29)+A(30)+A(31)}/5
B(30)={A(28)+A(29)+A(30)+A(31)}/4
B(31)={A(29)+A(30)+A(31)}/3
である。
【0032】
次いでステップS3で、AF評価データと平均化データとの差の2乗の総和をAF評価データ数で割ることにより、誤差量を求める。
【0033】
次にステップS4で、平均化データの最大値と最小値の差を求める。元データ(AF評価データ)の最大値と最小値の差とすることも可能であるが、平均化データを用いた方がノイズの多いときでも性能が安定する。
【0034】
次にステップS5で、最大値と最小値の差を誤差量で割って信頼性の評価値を得る。この部分が先行技術とは大きく異なる部分である。前述のとおり、先行技術では、最大値と最小値の差と誤差量を別々に扱っているため、最大値と最小値の差が小さいが誤差量がそれ以上に小さい場合や、誤差量が大きいが最大値と最小値の差がそれ以上に大きい場合などで、ピーク検知が可能な場合でも信頼性が低いと間違って判断してしまう。しかし、本実施形態では、最大値と最小値の差を誤差量で割ったものを信頼性の評価値とすることにより、上記のような場合でも信頼性を正しく判断できる。
【0035】
次いでステップS6で、信頼性の評価値が閾値(今回は4.0)以上かどうかを調べることで、信頼性の有無を判定する。そして、信頼性があると判定した場合(S6:YES)はステップS7に進み、信頼性がないと判定した場合(S6:NO)はステップS10へ進みピーク検知不可能として処理を終了する。
【0036】
この閾値は調整可能であり、閾値を大きくすると信頼性が高いもののみを出力するようになり、閾値を小さくすると信頼性の基準を緩めて出力することになる。したがって、信頼性の高い結果のみが欲しいときは閾値を大きくし、信頼性が低くてもよいから多くの結果が得たい場合は閾値を下げればよい。
【0037】
ステップS7では、図4の平均化データのグラフにおいて、最大値より左側(無限遠側)の近似曲線で傾きが最大となるものを求める。ここでは、平均化データのグラフの最大値の点から左側に一定数の点(今回は4点とした)を用いて直線近似する。直線近似には最小2乗法等を用いればよい。これらの点を1個ずつ左にずらして同様に近似直線を求めていき、直線の傾きが最大のものを採用する。
【0038】
なお、直線近似に用いる点の数は調整可能である。また、ここでは平均化データのグラフから近似直線を求めているが、元データから近似直線を求めることも可能である。ただし、平均化データを用いた方がノイズの多いときでも性能が安定する。
【0039】
次にステップS8で、平均化データのグラフで最大値より右側の近似直線で傾きが最小(絶対値は最大)となるものを求める。最大値の右側についても左側と同様に近似直線を求める。平均化グラフの最大値の点から右側に一定数の点を用いて直線近似する。これらの点を1個ずつ右にずらして同様に直線を求めて行き、直線の傾きが最小のものを採用する。
【0040】
最後にステップS9で、ステップS7、S8で採用された平均化グラフの最大値の両側の直線の交点をピークの位置として求める。2直線の交点は、それぞれの直線の傾きと切片から連立方程式を解いて求めることができる。
【0041】
図4は、暗いために画像にノイズの多い条件で撮影し、目視によってフォーカスの合っているデフォーカス位置を確認したところ“15.5”が正解であることが分かっているAF評価値のデータのグラフである。これは、誤差量が大きいが最大値と最小値の差がそれ以上に大きい場合に相当する。元データの最大値はデフォーカス位置“19”、平均化データの最大値はデフォーカス位置“13”であるが、本実施形態により2直線の交点から求めたデフォーカス位置は“16”となっており、正解に最も近い値が得られている。
【0042】
図5は、さらに暗いために画像にノイズが非常に多く、AF評価値からはピーク位置を検知できない場合のグラフである。明るくして確認した目視による正解はデフォーカス位置“18”である。単純に元データの最大値を求めるとデフォーカス位置“2”をピークと誤認識してしまうが、本実施形態では信頼性の評価値からピーク検知不可能と判定(S6:NO→S10)できている。
【0043】
このように、本発明の第1の実施形態によれば、AF評価値の最大値と最小値の差を誤差量で割ったものを信頼性の評価値とすることにより、最大値と最小値の差が小さいが誤差量がそれ以上に小さい場合や、誤差量が大きいが最大値と最小値の差がそれ以上に大きい場合など、ピーク検知が可能な場合でも信頼性が低いと間違って判断されることを防止できる。
【0044】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、ステップS7、S8に示すように、近似直線を多数求めて傾きが最大(右側は最小)のものを選択している。しかし、ハードウェアの計算能力によっては、より処理量が少ない方法が好ましいこともある。そこで、第2の実施形態では、近似直線を求める回数を2回だけにして処理量を減らしている。
【0045】
本実施形態の撮像装置であるデジタルカメラの背面図、及び内部のシステム構成を示すブロック図はいずれも第1の実施形態(図1、図2)と同じであるから、説明は省略する。
【0046】
図6は、本実施形態の撮像装置のAF制御におけるピーク検知処理のフローチャートである。この図において、図3(第1の実施形態)と同じ処理には図3と同じステップ番号を付した。
【0047】
本実施形態では、信頼性の評価値が閾値以上の場合(S6:YES)、ステップS11に進んで、平均化データのグラフで最大値より指定数個分左側の近似直線を求める。即ち平均化グラフの最大値の点から左側に所定数(今回は2点とした)ずらした点から所定数(今回は4点とした)の点を用いて直線近似する。第1の実施形態とは異なり、近似直線を求めるのは1回だけである。なお、最大値から左にずらす数と直線近似に用いる点の数は調整可能である。
【0048】
次にステップS12で、平均化データのグラフの最大値の右側についても左側と同様、平均化データのグラフで最大値より指定数個分右側の近似直線を求める。即ち平均化グラフの最大値の点から右側に一定数(今回は2点とした)ずらした点から一定数の点を用いて直線近似する。
【0049】
最後にステップS9で、ステップS11、S12で求められた平均化グラフの最大値の両側の直線の交点をピークの位置として求める。2直線の交点は、それぞれの直線の傾きと切片から連立方程式を解いて求めることができる。
【0050】
本実施形態では、求めるピーク検出の精度は第1の実施形態に劣るが、処理量は少なくできる。また、最大値から何個分ずらしたところから直線近似をすればよいか分かっているようなデータの場合にも有効である。即ち例えば図4のような山形のグラフにおいて、測定対象の性質が十分に分かっていて、山の頂上部の平らな部分の長さがどの位になるのかが事前に分かっているようなデータの場合、最大値から事前に分かっている個数分だけずらしたところから直線近似を行えば、頂上部の平らな部分を避けて山形の肩の部分の直線近似を行うことができる。
【0051】
[第3の実施形態]
ハードウェアの計算能力によっては、第2の実施形態よりもさらに処理量を減らしたい場合もある。そこで、本発明の第3の実施形態では、直線近似を行わないことで処理量のさらなる低減を実現した。
【0052】
本実施形態の撮像装置であるデジタルカメラの背面図、及び内部のシステム構成を示すブロック図はいずれも第1の実施形態(図1、図2)と同じであるから、説明は省略する。
【0053】
図7は、本実施形態の撮像装置のAF制御におけるピーク検知処理のフローチャートである。この図において、図3(第1の実施形態)と同じ処理には図3と同じステップ番号を付した。
【0054】
本実施形態では、信頼性の評価値が閾値以上の場合(S6:YES)、ステップS14に進んで、平均化データの最大値の位置をピーク位置として出力する。即ち第2の実施形態よりもさらに処理量を削減するため、直線近似を行わずに単に平均化グラフの最大値をピーク位置として出力する。これにより、ピーク検出の精度が劣る可能性はあるが、処理量を大幅に削減することができ、計算能力が低い安価なハードウェアに実装することができる。
【0055】
[第4の実施形態]
第1〜第3の実施形態では、フォーカスを無限遠から至近まで変化させながらAF評価値のデータを取得した後に処理を行っている。本実施形態では、レスポンスを上げるためにAF評価値データを取得しながらピーク判定を行い、ピークを検出したら途中で中断して結果を出す手順を採用した。
【0056】
即ちフォーカスを無限遠から至近まで変化させながらAF評価値のデータを取得し、さらに平均化データを同時に作成していく。そして、平均化データの値が増加から減少に転じた点をピーク候補と判断し、その時点までの最小値と最大値の差と誤差量を比較して信頼性の評価を行い、信頼性が閾値以上ならその点をピーク位置としてフォーカスの変化を中断して結果を出力する。信頼性が閾値以下ならフォーカス変化を続行する。
【0057】
これにより、ピーク検出の精度が劣る可能性はあるが、フォーカスの変化を途中で打ち切ることができるため、レスポンスを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施形態の撮像装置の背面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の撮像装置内部のシステム構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の撮像装置のAF制御におけるピーク検知処理のフローチャートである。
【図4】誤差量が大きいが最大値と最小値の差がそれ以上に大きい場合に、図3の処理を実行することでピーク位置を正確に検知できた場合のグラフである。
【図5】画像にノイズが非常に多く、図3の処理を実行したときに、AF評価値からはピーク位置を検知できない場合のグラフである。
【図6】本発明の第2の実施形態の撮像装置のAF制御におけるピーク検知処理のフローチャートである。
【図7】本発明の第3の実施形態の撮像装置のAF制御におけるピーク検知処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
7-2・・・フォーカス光学系、101・・・CCD、102・・・FE−IC、104・・・デジタルスチルカメラプロセッサ、104-3・・・CPUブロック、104-4・・・ローカルSRAM、108・・・ROM。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
山登り制御によるオートフォーカス機能を有する撮像装置において、
焦点位置を変化させながら被写体を撮像して取得した画像データに基づいてオートフォーカス評価値を取得する手段と、
前記オートフォーカス評価値の平均値を算出する手段と、
前記オートフォーカス評価値又は平均値の最大値と最小値の差異を算出する手段と、
前記平均値に対する前記オートフォーカス評価値の誤差量を算出する手段と、
前記算出された差異と前記算出された誤差量との大小関係に基づいて、前記オートフォーカス評価値の信頼性を判定する手段と
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載された撮像装置において、
前記判定する手段は、前記算出された誤差量に対する前記算出された差異の比が所定の閾値以上の場合に信頼性が高いと判定することを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項1に記載された撮像装置において、
前記焦点位置に対する前記オートフォーカス評価値又はその移動平均値の特性グラフの最大値の両側の近似直線を作成する手段と、
前記特性グラフの最大値の両側の近似曲線の交点の焦点位置を合焦位置として決定する手段とを有し、
前記近似直線を求める手段は、前記特性グラフの最大値の両側で、所定数のオートフォーカス評価値を選択して近似曲線を求める動作を、選択するオートフォーカス評価値を1個ずつずらしながら繰り返すことにより、特性グラフの最大値の両側に複数本ずつ近似直線を作成し、
前記合焦位置として決定する手段は、前記特性グラフの最大値の両側の複数本の近似曲線のうち、それぞれの側で傾きの絶対値が最大の近似直線同士の交点の焦点位置を合焦位置として決定する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項1に記載された撮像装置において、
前記焦点位置に対する前記オートフォーカス評価値又はその平均値の特性グラフの最大値の両側の近似直線を作成する手段と、
前記特性グラフの最大値の両側の近似曲線の交点の焦点位置を合焦位置として決定する手段とを有し、
前記近似直線を求める手段は、前記特性グラフの最大値の両側で、前記最大値から所定数離れた所定数のオートフォーカス評価値を選択して、特性グラフの最大値の両側に1本ずつ近似直線を作成する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
請求項1に記載された撮像装置において、
前記平均値が最大となる位置を合焦位置として決定する手段を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
請求項1に記載された撮像装置において、
前記平均値が増加から減少に転じた位置を合焦位置として決定する手段を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
山登り制御によるオートフォーカス機能を有する撮像装置のオートフォーカス制御方法において、
焦点位置を変化させながら被写体を撮像して取得した画像データに基づいてオートフォーカス評価値を取得する工程と、
前記オートフォーカス評価値の平均値を算出する工程と、
前記オートフォーカス評価値又は平均値の最大値と最小値の差異を算出する工程と、
前記平均値に対する前記オートフォーカス評価値の誤差量を算出する工程と、
前記算出された差異と前記算出された誤差量との大小関係に基づいて、前記オートフォーカス評価値の信頼性を判定する工程と、
信頼性の評価値が所定の閾値以上の場合に前記オートフォーカス評価値または前記移動平均値に基づいて合焦位置を求める工程と
を有することを特徴とするオートフォーカス制御方法。
【請求項8】
山登り制御によるオートフォーカス機能を有する撮像装置に、請求項7に記載されたオートフォーカス制御方法の各工程を実行させるための制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−122515(P2010−122515A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296987(P2008−296987)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】