説明

撮像装置及びその制御方法、並びにプログラム

【課題】撮像した画像にぼけやぶれが生じていても、その画像のエッジを的確に検出する。
【解決部】撮像装置100は、撮像素子3により撮像された被写体を示す画像におけるエッジのぼけ、またはぶれの度合を示すエッジ評価値を算出し、算出されたエッジ評価値に示されるぼけ、またはぶれの度合いが大きいほど、広帯域なフィルタ特性を有する帯域制限フィルタを選択し、選択された帯域制限フィルタを用いて、前記画像に対して多重解像度処理を行い、多重解像度処理された画像のエッジ評価値を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置及びその制御方法、並びにプログラムに関し、特に、エッジを検出する撮像装置及びその制御方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像信号からエッジ情報を検出する方法として、異なるスケールのエッジ検出フィルタを使用してエッジの検出を行い、その結果を合成することによってエッジ情報を出力している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このように、異なるスケールのエッジ検出フィルタを使用した結果を合成することにより、小さなスケールサイズでの局所的なエッジ情報と、大きなスケールサイズの大域的なエッジ情報との含まれる割合を調整することができる。これにより、細かいエッジ情報を強調したり、画像の局所的なエッジ情報を強調したりすることができる。
【0004】
また、多重解像度処理によって各階層の画像からエッジ検出を行い、検出結果を合成する手法もある(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1に記載されている手法のように、エッジ検出処理時に多重解像度処理を行うことによって、解像度の違いによるエッジ検出結果の差を利用することで、単独の階層でエッジ検出を行うよりも、ノイズやかすれに強いエッジ検出処理を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−290268号公報
【非特許文献1】高畑知也、熊澤逸夫「画像の多重解像度表現におけるエッジの階層間関連付けと分類」画像の認識・理解シンポジウム(MIRU2004)、2004 年7月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のエッジ検出処理では、撮影された画像のエッジが、手ぶれや動きぶれなどのカメラの撮影状態によって、出力レベルが低下したり広がってしまった場合に、各スケールで所望のエッジ検出結果が得られない。従って、合成したエッジ検出結果の信頼性が低下してしまう。
【0007】
同様に、非特許文献1に記載のエッジ検出処理では、撮影された画像のエッジが、手ぶれや動きぶれなどのカメラの撮影状態によって、出力レベルが低下したり広がってしまった場合に、上位階層に出力されるエッジはさらに鈍ってしまう。従って、所望のエッジ検出結果が得られず、合成したエッジ検出結果の信頼性が低下してしまう。
【0008】
本発明の目的は、撮像した画像にぼけやぶれが生じていても、その画像に対して的確にエッジを検出する撮像装置及びその制御方法、並びにプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1の撮像装置は、被写体を光学系を介して撮像する撮像手段を有する撮像装置であって、前記撮像手段により撮像された被写体を示す画像におけるエッジのぼけ、またはぶれの度合を示すエッジ評価値を算出する算出手段と、前記算出手段により算出されたエッジ評価値に示されるぼけ、またはぶれの度合いが大きいほど、広帯域なフィルタ特性を有する帯域制限フィルタを選択する選択手段と、前記選択手段により選択された帯域制限フィルタを用いて、前記画像に対して多重解像度処理を行う多重解像度処理手段と、前記多重解像度処理手段により多重解像度処理された画像のエッジ評価値を判定するエッジ評価値判定手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、撮像した画像にぼけやぶれが生じていても、その画像のエッジを的確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の発明の実施の形態に係る撮像装置の概略構成を示す図である。
【図2】各評価値を示すグラフである。
【図3】エッジ状態評価値Eとフィルタ特性の関係を示すグラフである。
【図4】図1における多重解像度処理部の構成を示す図である。
【図5】イプシロン関数の特性を示すグラフである。
【図6】エッジ評価値とε値との関係を示すグラフである。
【図7】第2の実施の形態に係る撮像装置の概略構成を示す図である。
【図8】動きベクトル情報と動きベクトル評価値Vとの関係を示すグラフである。
【図9】動きベクトル評価値Vとフィルタ特性の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0013】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係る撮像装置100の概略構成を示す図である。
【0014】
図1において、光学系1はズームレンズ、フォーカスレンズ、絞りを含む。光学系駆動部2は光学系1を駆動する。撮像素子3はCCDまたはCMOSであり、被写体を光学系1を介して撮像する撮像手段に対応する。撮像素子駆動部4は撮像素子3を駆動する。AFE5はCDS部およびA/D変換器を含むアナログフロントエンド部である。システム制御部6は、撮像装置100全体を制御する。
【0015】
フィルタ特性制御部7は、システム制御部6から出力されるレンズ駆動制御情報、シャッタスピード制御情報、及び合焦情報に応じて、多重解像度処理部8で使用する帯域制限フィルタ特性の制御情報を出力する。
【0016】
多重解像度処理部8は、AFE5の出力信号である画像信号と、フィルタ特性制御部7が出力したフィルタ特性制御情報より、多重解像度処理を行い、それぞれの階層から得られたエッジ情報を合成したエッジ評価値を出力する。カメラ信号処理部9は、AFE5が出力した画像信号に、アパーチャ補正、ガンマ補正、ホワイトバランス処理などの撮像系の信号処理を行う。
【0017】
ノイズ抑圧部10は、カメラ信号処理部9が出力した画像信号に、多重解像度処理部8の出力信号であるエッジ評価値によって、ノイズ抑圧処理を行う。
【0018】
上述した構成において、まず光学系1を通して撮像素子3に被写体像が結像される。次いで、撮像素子3は、被写体像を光電変換により電気信号に変換してアナログ画像信号を出力する。そして、撮像素子3から出力されたアナログ画像信号はAFE5内部のA/D変換器によりデジタル画像信号に変換され、出力される。
【0019】
ここで、上述したフィルタ特性制御部7の詳細について説明する。フィルタ特性制御部7では、レンズ駆動制御情報から光学ズーム速度評価値Z及びレンズ位置評価値Lを算出する。また、フィルタ特性制御部7は、シャッタスピード制御情報からシャッタスピード評価値S、合焦情報から合焦評価値Fを算出する。そして、フィルタ特性制御部7は、下記式1によって、エッジ状態評価値Eを算出する。
【0020】
【数1】

【0021】
光学ズーム速度評価値Z、レンズ位置評価値L、シャッタスピード評価値S、合焦評価値Fはそれぞれエッジがぼける状態に近づくほど小さな値を出力する。式1は、これら全ての評価値を乗算し、1つでも値が小さくなった場合には小さいエッジ状態評価値Eを算出するようになっている。
【0022】
また、光学ズーム評価値Z、レンズ位置評価値L、シャッタスピード評価値S、及び合焦評価値Fの各々に対応する重み付け係数の値をそれぞれ調整することにより、特定のカメラ制御情報に対しての優先度を設定しても良い。また、この式1は一例であり、特定の評価値のみを使用しても良い。すなわち、フィルタ特性制御部7は、光学ズーム評価値Z、レンズ位置評価値L、シャッタスピード評価値S、及び合焦評価値Fのうちの少なくとも1つを用いてエッジ状態評価値Eを算出するようにしてもよい。
【0023】
図2は、各評価値を示すグラフである。図2(a)は、光学ズーム速度評価値と光学ズーム速度との関係を示すグラフである。図2(b)は、レンズ位置評価値とレンズ位置との関係を示すグラフである。図2(c)は、シャッタスピード評価値とシャッタスピードとの関係を示すグラフである。図2(d)は、合焦評価値と合焦情報との関係を示すグラフである。
【0024】
まず、図2(a)を用いて、光学ズーム速度評価値について説明する。光学ズーム動作中は、撮影される画像のエッジはぼけて広がる傾向にあり、その広がりは光学ズームの速度が速くなるに従って大きくなる。従って、図2(a)に示されるように光学ズームの速度が速くなるに従い、光学ズーム速度評価値Zを小さくする。
【0025】
図2(b)を用いて、レンズ位置評価値について説明する。レンズ位置は、焦点距離が長くなるほど、カメラのぶれに対する画像のぶれが大きくなる。従って、図2(b)に示されるようにレンズ位置がテレ側に行くに従い、レンズ位置評価値Lを小さくする。
【0026】
図2(c)を用いて、シャッタスピード評価値について説明する。シャッタスピードが遅くなるほど、撮影される画像には手ぶれおよび被写体の動きぶれが大きくなり、このようなぶれが発生した場合、エッジはぼけて広がる。従って、図2(c)に示されるようにシャッタスピードが遅くなるに従い、シャッタスピード評価値Sを小さくする。
【0027】
図2(d)を用いて、合焦評価値について説明する。合焦の状態が非合焦に近づくほど、撮影される画像はぼけているため、エッジもぼけて広がっている。従って、合焦状態が非合焦になるに従い、合焦評価値を小さくする。
【0028】
フィルタ特性制御部7では、上記エッジ状態評価値Eの値に応じて、フィルタ特性制御情報を出力する。このように、フィルタ特性制御部7は、撮像された被写体を示す画像におけるエッジのぼけ、またはぶれの度合を示すエッジ状態評価値(エッジ評価値)を算出する算出手段に対応する。
【0029】
図3は、エッジ状態評価値Eとフィルタ特性の関係を示すグラフである。
【0030】
図3において、エッジ状態評価値Eが1のときは、カメラ制御情報よりエッジのぶれやぼけが発生していない状態と判断できる。従って、帯域制限フィルタの特性は、折り返しの発生しない最も狭帯域な特性を選択する。
【0031】
逆に、エッジ状態評価値Eが0のときは、カメラ制御情報によりエッジのぶれやぼけが発生している状態と判断できる。従って、帯域制限フィルタの特性は、最も広帯域な特性を選択する。
【0032】
帯域制限フィルタを広帯域にした場合は、縮小処理による折り返しが発生する可能性がある。しかし、そのときに撮影される画像はカメラ制御情報よりぶれやぼけが発生している状態と判断できるので、高周波成分が少なく、折り返しによる悪影響は小さい。
【0033】
このように、フィルタ特性制御部7は、エッジ状態評価値Eの値が小さくなるに従って、使用されるフィルタ特性が広帯域となるようにフィルタ特性制御情報を出力する。なお、このフィルタ特性制御情報は、多重解像度処理部8が複数の階層で処理する場合には、その階層ごとに異なるようにしても良い。このように、フィルタ特性制御部7は、算出されたエッジ状態評価値に示されるぼけ、またはぶれの度合いが大きいほど、広帯域なフィルタ特性を有する帯域制限フィルタを選択する選択手段に対応する。
【0034】
図4は、図1における多重解像度処理部8の構成を示す図である。
【0035】
図4において、帯域制限フィルタ部801,802は、入力画像に対して帯域制限フィルタ処理を行う。具体的に、帯域制限フィルタ部801,802は、入力画像に対してフィルタ特性制御部7で出力されたフィルタ特性制御情報に示されるローパスフィルタ処理を行う。
【0036】
間引き処理部803,804は、ローパスフィルタ処理された画像を水平方向及び垂直方向に半分の画像サイズに縮小する。間引き処理部803は、入力画像がAFE5の出力信号にローパスフィルタ処理された画像であるので、AFE5の出力画像サイズに対して1/2の大きさの画像信号を出力する。一方、間引き処理部804は、入力画像が間引き処理部803の出力信号にローパスフィルタ処理された画像であるので、AFE5の出力画像に対しては1/4の大きさの画像信号を出力する。
【0037】
エッジ判定部805,806,807は、入力画像から画素ごとのエッジ評価値を出力する。具体的に、エッジ判定部805,806,807は、入力画像に対して例えばソーベルフィルタのような一次微分フィルタを使用してフィルタ演算を行い、その結果をエッジ評価値として出力する。
【0038】
拡大処理部808,809は、算出されたエッジ評価値をAFE5における入力画像サイズの分解能に拡大処理を行う。具体的に、拡大処理部808,809は、入力されたエッジ評価値を多重解像度処理部8の入力画像に対して1対1の対応が取れるようにする。例えば0挿入補間処理のあとにローパスフィルタ処理を行うような手法で拡大処理を行う。この手法により、拡大処理部808は、多重解像度処理部8の入力画像サイズに対して1/2の大きさになっているので、2倍の拡大処理を行う。拡大処理部809では多重解像度処理部8の入力画像サイズに対して1/4の大きさになっているので、4倍の拡大処理を行う。
【0039】
合成処理部810は、各階層で算出されたエッジ評価値を合成して出力する。具体的に、合成処理部810は、エッジ判定部805、及び拡大処理部808、809が出力した各階層のエッジ評価値を合成して出力する。拡大処理部808、809から出力されるエッジ評価値と、エッジ判定部805から出力されるエッジ評価値は、すべて多重解像度処理部8の入力画像と1対1の対応が取れるようになっている。従って、例えば全階層のエッジ評価値の平均値を求めて、多重解像度処理部8の入力画像に対するエッジ評価値として出力する。
【0040】
なお、上述した多重解像度処理部8では、縮小処理を2段階まで行っているか、この数に限ったことではなく、同様の機構で階層数を変更しても良い。
【0041】
次に、ノイズ抑圧部10の詳細について説明する。ノイズ抑圧部10は、イプシロンフィルタのようなノイズ抑圧処理を行う。イプシロンフィルタ処理の3タップでの処理の例を以下に示す。
【0042】
フィルタ処理の着目画素をa1とし、隣接する画素をそれぞれa0,a2とする。
イプシロン関数をeps(x)と表すと、イプシロン関数の出力a1’は下記式2で表される。
【0043】
【数2】

【0044】
図5は、イプシロン関数の特性を示すグラフである。
【0045】
図5に示している値ε(以下、「ε値」という)は、着目画素ごとに調整することが可能な定数である。
【0046】
イプシロン関数の入力値、すなわち着目画素a1と隣接画素a0またはa2との差分の絶対値が2εよりも大きい場合は、イプシロン関数の出力が0となるので、その画素値はフィルタ処理で無効化される。
【0047】
従って、隣接画素との差分値が大きい場合は、イプシロン関数の出力が0となるので、式2よりフィルタ処理されない画素値がそのまま出力される。
【0048】
イプシロン関数の入力値、すなわち着目画素a1と隣接画素a0またはa2との差分の絶対値がεよりも小さい場合は、イプシロン関数の出力は入力と同じ値となる。
【0049】
従って、隣接画素との差分値が小さい場合は、イプシロン関数によって値の変化が発生しないため、式2より通常のローパスフィルタ処理された画素値が出力される。
【0050】
ノイズ抑圧部10は、多重解像度処理部8から出力されるエッジ評価値に応じて、イプシロンフィルタのε値の制御を行う。
【0051】
図6は、エッジ評価値とε値との関係を示すグラフである。
【0052】
図6において、εは、あるエッジ評価値からは単調減少となる。このように、エッジ評価値が一定値以上となったとき、出力されるε値を小さくすることにより、着目画素との差分が小さい場合でも、イプシロン関数の出力を0にすることができる。その結果、ノイズ抑圧部10は、ノイズ抑圧効果を弱めることが出来る。
【0053】
なお、図6に示されるグラフは一例であり、エッジ評価値に応じてε値の出力が小さくなるような特性を有するグラフであれば良い。このように、エッジ判定部806,807は、多重解像度処理された画像のエッジ評価値を判定するエッジ評価値判定手段に対応する。
【0054】
以上のように、撮像装置100は、システム制御部6から出力されるレンズ駆動制御情報、シャッタスピード制御情報、合焦情報に応じて、多重解像度処理で使用する帯域制限フィルタ部801,802のフィルタ特性を制御する。これにより、多重解像度処理の各階層の出力画像に対するエッジ検出精度を高めることが出来る。その結果、入力画像に対するエッジ検出の精度が向上し、ノイズ抑圧部10によってエッジのぼけを低減することができる。
【0055】
[第2の実施の形態]
図7は、第2の実施の形態に係る撮像装置200の概略構成を示す図である。
【0056】
図7において、図1に示した撮像装置100と同じ構成は省略されている。図7に示されるように、撮像装置100の構成と異なる点は、AFE5からの出力が、新たに設けられた動きベクトル検出部11に出力され点がまず挙げられる。そして、動きベクトル検出部11から出力は、フィルタ特性制御部71に入力される。フィルタ特性制御部71に、レンズ駆動制御情報、シャッタスピード制御情報、及び合焦情報が入力されることは、第1の実施の形態と同じである。また、フィルタ特性制御部71が多重解像度処理部8に出力することも、第1の実施の形態と同じである。
【0057】
第2の実施の形態における入力画像信号は、撮像素子から得られる画像信号でも、記録メディアから再生時に得られる画像信号でも良い。
【0058】
図7において、動きベクトル検出部11は、入力画像信号に対してブロックマッチングなどの手法によって画像内の動き情報である動きベクトル値を算出し、フィルタ特性制御部71に出力する。動きベクトル値は処理ブロックごとに算出され、その後画面全体での動きベクトル値として算出されて、フィルタ特性制御部71に出力される。
【0059】
フィルタ特性制御部71は、動きベクトル検出部11から出力された動きベクトル値に応じて、フィルタ特性制御情報を出力する。
【0060】
図8は、動きベクトル情報と動きベクトル評価値Vとの関係を示すグラフである。
【0061】
図8において、動きベクトル値が大きい場合は、画面内で比較的大きな動きがあるということとなる。従って、画像のエッジはぼけて広がる傾向にあり、その広がりは動きベクトル値が大きくなるに従って大きくなる。
【0062】
よって、図8に示されるように、動きベクトル値が大きくなるに従い、動きベクトル評価値Vを小さくする。フィルタ特性制御部71は、動きベクトル評価値Vに応じたフィルタ特性制御情報を出力する。このように、フィルタ特性制御部71は、被写体を示す画像の動きを示す動き情報を用いて、エッジ状態評価値を算出する算出手段に対応する。
【0063】
図9は、動きベクトル評価値Vとフィルタ特性の関係を示すグラフである。
【0064】
図9において、動きベクトル評価値Vの値が1のときは、動きベクトル値よりエッジのぶれやぼけが発生していない状態と判断できる。従って、帯域制限フィルタの特性は、折り返しの発生しない最も狭帯域な特性を選択する。
【0065】
逆に、動きベクトル評価値Vの値が0のときには、動きベクトル値によりエッジのぶれやぼけが発生している状態と判断できる。従って、帯域制限フィルタの特性は、最も広帯域な特性を選択する。
【0066】
帯域制限フィルタを広帯域にした場合は、縮小処理による折り返しが発生する可能性がある。しかし、そのときの画像は動きぶれやぼけが発生している状態なので、高周波成分が少なく、折り返しによる悪影響は小さい。
【0067】
このように、フィルタ特性制御部71は、動きベクトル情報Vの値が小さくなるに従って、使用されるフィルタ特性が広帯域となるようにフィルタ特性制御情報を出力する。なお、このフィルタ特性制御情報は、多重解像度処理における階層ごとに異なるようにしても良い。
【0068】
以上説明したように、動きベクトル検出部11から出力される動きベクトル値に応じて、多重解像度処理部8で使用する帯域制限フィルタ部801,802のフィルタ特性を制御する。これにより、多重解像度処理の各階層の出力画像に対するエッジ検出精度を高めることが出来る。その結果、入力画像に対するエッジ検出の精度が向上し、ノイズ抑圧部10によってエッジのぼけを低減することができる。
【0069】
第1、第2の実施の形態によれば、まず撮像素子3により撮像された被写体を示す画像におけるエッジのぼけ、またはぶれの度合を示すエッジ評価値を算出する。そして算出されたエッジ評価値に示されるぼけ、またはぶれの度合いが大きいほど、広帯域なフィルタ特性を有する帯域制限フィルタを選択する。
【0070】
次いで、選択された帯域制限フィルタを用いて、前記画像に対して多重解像度処理を行い、多重解像度処理された画像のエッジ評価値を判定するので、撮像した画像にぼけやぶれが生じていても、その画像のエッジを的確に検出することができる。
【0071】
(他の実施の形態)
本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)をネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムコードを読み出して実行する処理である。この場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【符号の説明】
【0072】
100,200 撮像装置
2 光学系駆動部
4 撮像素子駆動部
5 AFE
6 システム制御部
7,71 フィルタ特性制御部
8 多重解像度処理部
9 カメラ信号処理部
10 ノイズ抑圧部
11 動きベクトル検出部
801,802 帯域制限フィルタ部
803,804 間引き処理部
805,806,807 エッジ判定部
808,809 拡大処理部
810 合成処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を光学系を介して撮像する撮像手段を有する撮像装置であって、
前記撮像手段により撮像された被写体を示す画像におけるエッジのぼけ、またはぶれの度合を示すエッジ評価値を算出する算出手段と、
前記算出手段により算出されたエッジ評価値に示されるぼけ、またはぶれの度合いが大きいほど、広帯域なフィルタ特性を有する帯域制限フィルタを選択する選択手段と、
前記選択手段により選択された帯域制限フィルタを用いて、前記画像に対して多重解像度処理を行う多重解像度処理手段と、
前記多重解像度処理手段により多重解像度処理された画像のエッジ評価値を判定するエッジ評価値判定手段と
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記算出手段は、前記光学系における光学ズーム速度、レンズ位置、合焦情報、及び前記撮像手段のシャッタスピードのうちの少なくとも1つを用いて、前記エッジ評価値を算出することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記算出手段は、前記被写体を示す画像の動きを示す動き情報を用いて、前記エッジ評価値を算出することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項4】
被写体を光学系を介して撮像する撮像手段を有する撮像装置の制御方法であって、
前記撮像手段により撮像された被写体を示す画像におけるエッジのぼけ、またはぶれの度合を示すエッジ評価値を算出する算出ステップと、
前記算出ステップにより算出されたエッジ評価値に示されるぼけ、またはぶれの度合いが大きいほど、広帯域なフィルタ特性を有する帯域制限フィルタを選択する選択ステップと、
前記選択ステップにより選択された帯域制限フィルタを用いて、前記画像に対して多重解像度処理を行う多重解像度処理ステップと、
前記多重解像度処理ステップにより多重解像度処理された画像のエッジ評価値を判定するエッジ評価値判定ステップと
を備えたことを特徴とする制御方法。
【請求項5】
被写体を光学系を介して撮像する撮像手段を有する撮像装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記制御方法は、
前記撮像手段により撮像された被写体を示す画像におけるエッジのぼけ、またはぶれの度合を示すエッジ評価値を算出する算出ステップと、
前記算出ステップにより算出されたエッジ評価値に示されるぼけ、またはぶれの度合いが大きいほど、広帯域なフィルタ特性を有する帯域制限フィルタを選択する選択ステップと、
前記選択ステップにより選択された帯域制限フィルタを用いて、前記画像に対して多重解像度処理を行う多重解像度処理ステップと、
前記多重解像度処理ステップにより多重解像度処理された画像のエッジ評価値を判定するエッジ評価値判定ステップと
を備えたことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−5222(P2013−5222A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134300(P2011−134300)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】