説明

撮像装置

【課題】使用する防振方式を必要に応じて使い分けて良好な出力画像を得ることができ、かつユーザーにとって使い勝手のよい撮像装置を実現する。
【解決手段】撮像素子4を用いて撮影を行う撮像装置であって、順次取得した複数の画像を合成して出力画像を生成する画像合成処理を行う第1のモードおよび画像合成処理を行わずに出力画像を生成する第2のモードとで動作する画像生成手段と、撮影倍率に応じて第1のモードと第2のモードを選択する制御手段101とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像振れ補正により撮影画像の精度を向上させる撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、撮影時の露出決定やピント合わせ等の操作が全て自動化されているため、カメラに関する知識が少なくても撮影を失敗する可能性が低くなっており、また、像振れ補正機能によりさらに良好な撮影画像を得ることができる。以下に、像振れを防止する防振システムについて説明する。
【0003】
撮影時のカメラの振れは、周波数として通常1Hzないし10Hzの振動である。露光時点におけるこのような振れに対して、像振れの無い写真を撮影するための基本的な考えとしては、像振れによるカメラの振動を検出し、この検出結果に応じて補正レンズを光軸直交面内で変位させている。すなわち、カメラに振れが生じても像振れが生じない写真を撮影するためには、第1にカメラの振動を正確に検出し、第2に像振れによる光軸変化を補正することが必要となる。
【0004】
上記像振れ補正は、原理的にはレーザージャイロ等により加速度、角加速度、角速度、角変位等を検出し、この検出結果に対して適宜演算処理する振動検出部をカメラに搭載することによって行うことができる。
【0005】
そして、振動検出部から出力されるカメラ振れの検出情報に基づいて撮影光軸を偏心させる補正光学装置を駆動することにより像振れ補正が行われる。
【0006】
一方、像振れが生じない程度の露光時間で複数回撮影をくり返し、これらの撮影により得られた画像に対して画像のズレを修正しながら合成し、長い露光時間の撮影画像(合成画像)を得る方法が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特許第3110797号公報(段落0030〜0036、図11、13等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一般的に撮影倍率が0.1倍よりも小さい場合は、角度振れ補正(光学的振れ補正)による像振れ補正で対応できるが、撮影倍率が0.1倍よりも大きくなると、シフト振れの影響が大きくなり、さらに撮影倍率が大きくなるとピント方向の振れの影響が大きくなる。このため、光学的振れ補正をマクロレンズのような撮影倍率の高いものに適用しても、十分な像振れ補正効果が得られない。
【0008】
一方、ビデオカメラでの動画撮影において、撮像素子で画面の動きベクトルを検出し、その動きベクトルに合わせて画像の読み出し位置を変更することで振れのない動画を得る電子的振れ補正が提案されている。
【0009】
しかし、この電子的振れ補正はビデオカメラにおける動きベクトルの検出は、1秒に複数の画像を取り出し、この取り出した各画像を比較して動きベクトルを検出しているので、撮影被写体に対して1回の露光しか行わないデジタルカメラでの静止画の撮影では、コマ画像の比較を行って動きベクトルを検出することはできない。このため、ビデオカメラの防振システムをデジタルカメラに適応することができない。
【0010】
また、特許文献1では複数回撮影をくり返し、これらの撮影により得られた画像に対して画像のズレを修正しながら合成して撮影画像を得ている電子的振れ補正が提案されているが、複数回の撮影を繰り返すため、撮影時間が長くなり、被写体ブレなどにより十分な補正効果を得ることができない。
【0011】
さらに、特許文献1では、ユーザーが防振対策の必要性があるか否かを判断しなければならず、撮影シーンにおいて防振対策が必要か否かをユーザー自身が判断することは困難であり、ユーザーにとって操作し難く、また、一回の撮影時に複数の露光が行われるため、ユーザーに違和感を与えてしまう。
【0012】
本発明の例示的な目的の1つは、光学防振と画像合成による電子的振れ補正のうち、使用する防振方式を必要に応じて使い分けて良好な出力画像を得ることができ、かつユーザーにとって使い勝手のよい撮像装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
1つの観点としての本発明の撮像装置は、撮像素子を用いて撮影を行う撮像装置であって、順次取得した複数の画像を合成して出力画像を生成する画像合成処理を行う第1のモードおよび画像合成処理を行わずに出力画像を生成する第2のモードとで動作する画像生成手段と、第1及び第2のモードで光学系の駆動による像振れ補正を行う光学防振を動作させるとともに、第1のモードと第2のモードを選択する制御手段とを有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光学防振のみを行う第2のモードと、光学防振及び画像合成処理を行う第1のモードとを必要に応じて選択するため、像振れ補正が適切に行われ、良好な出力画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0016】
図1は本発明の実施例1の交換式のレンズ装置を備えた撮像装置の断面図であり、本実施例では1眼レフレックスデジタルカメラを1例に説明する。
【0017】
1はカメラ本体、2はカメラ本体1に装着可能な交換式のレンズ装置である。3はレンズ装置2を通過した光線の一部をファインダー光学系に導くミラーであり、撮影動作前は該光線の光軸上に配設され、撮影動作中は光軸より退避している。4はCCDセンサーやCMOSセンサー等の撮像素子で、撮像素子4上に結像した被写体像を光電変換する半導体撮像部である。
【0018】
ファインダー光学系は、ペンタプリズム5、ファインダーレンズ6より構成されており、ペンタプリズム5では入射された光線の一部を位相差方式の焦点検出ユニット7に分光する。焦点検出ユニット7は入射した光線を二つの光束に分割するコンデンサレンズ7aと光線を再結像させる2つのセパレータレンズ7bと、結像された被写体像を光電変換するCCDセンサー等のラインセンサー7cとから構成される。
【0019】
また、レンズ装置2において、11は第1レンズユニット、12はフォーカシング光学系を構成する第2レンズユニット(フォーカスレンズユニット)、13は変倍光学系を構成する第3レンズユニット(ズームレンズユニット)である。14は像振れ補正光学系を構成する第4レンズユニットで、第1から第4のレンズユニットを通過した光線(撮影光)は、絞り15で光量制限される。
【0020】
第2レンズユニット12は、フォーカスレンズ駆動モータ16からの駆動力により光軸上を移動し、所定の合焦位置に停止することで焦点調節を行う。第3レンズユニット13は撮影者からの操作を伝達する不図示の伝達機構により、その操作力が光軸方向への駆動に変換され、変倍動作を行うために光軸方向に駆動する。第4レンズユニット14は、振動ジャイロ等からなる角度振れ検出センサーからの検出結果に基づいて、振れ補正駆動モータ17により光軸に対して垂直方向に移動して角度振れ補正を行なう。
【0021】
図2は本実施例の撮像装置の構成ブロック図である。101はマイクロコンピュータで構成されるカメラCPUで、後述のカメラ本体1内の種々の動作制御を行うとともに、レンズ装置2の装着時にはカメラ接点102を介してレンズCPU201との送信及び受信を行う。このとき送信される情報としては、後述する撮影倍率に関する情報等が含まれる。そして、カメラ接点102はレンズ装置2側に、信号を伝達する信号伝達接点と電源を供給する電源用接点とが設けられている。
【0022】
103は電源スイッチであり、カメラCPU101を起動してカメラシステム内の各アクチュエータやセンサー等への電源供給およびシステムの動作を可能な状態とするためのスイッチである。104は2段ストローク式のレリーズスイッチで、その信号はカメラCPU101に入力される。カメラCPU101はレリーズスイッチ104から入力される信号に従い、第1ストロークスイッチ(SW1)がオンされた場合、測光回路105による測光を行って露光量の決定を行なうとともに、不図示の焦点検出ユニットにより測距エリア内に存在する被写体までの距離を測定し、該被写体に焦点を合わせるために必要な第2レンズユニット12の移動量を焦点検出回路106で算出する。なお、AF予測モードが選択された場合は、過去の複数回のAF情報を基に撮像面と被写体間の変動履歴を求め、露光中の中心で合焦するようにフォーカスレンズの移動量を決定できる。
【0023】
さらに、第2ストロークスイッチ(SW2)がオンされると、レンズCPU201に絞り動作命令を送信するとともに、露光に先立ち、後述するレンズ装置2の防振操作SW203が操作されて振れ補正モードが選択されていた場合には、レンズCPU201からの撮影倍率情報を受信する。そして、限界露光時間演算回路107によりシフト振れが発生しない限界の露光時間を演算して、複数露光が必要かどうかの判別を行う。
【0024】
その後、シャッター駆動回路108に露光開始命令を出力してミラー3の退避動作(アップ)、シャッター109の開放動作を行い、撮像素子4上に結像された被写体像を光電変換する。さらに、A/D変換された画像信号は信号処理回路110においてデジタル変換して画像データを出力する。
【0025】
なお、複数露光が必要な場合は、演算された露光時間で複数回露光を行い、露光時間の合計が測光回路105により演算された適正露光となる露光時間まで繰返され、その画像信号はメモリ111に記憶される。
【0026】
112は画像ズレ検出回路で、記憶された画像内における特徴点を抽出して、この特徴点の撮影画面内における位置座標を割り出し、座標変換回路113により基準画像の特徴点の座標に他の複数回露光した画像の特徴点が重なるように各画像の座標変換を行う。
【0027】
そして、画像合成回路114により複数回露光した画像は座標変換後に合成され、フラッシュメモリ等の半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク等の記録媒体115に該画像信号(画像データ)を記録、保存する。
【0028】
201はレンズCPUで、レンズ装置2内の種々の装置の動作を制御するとともに、カメラ本体1に装着された時にはレンズ接点202を介してカメラCPU101との通信を行う。202はレンズ接点であり、カメラ本体1のカメラ接点102と同様に信号伝達接点及び電源用接点が設けられ、該カメラ接点102と接触してカメラ本体1とレンズ装置2とを電気的に接続している。
【0029】
203は防振操作SWであり、像振れ補正動作(防振動作)を行なわせるかどうかを選択する(ONで防振動作選択)ことが可能であり、その情報はカメラ本体1にも送信される。204は振動検出回路であり、レンズCPU201からの命令に従って撮像装置の縦振れ(ピッチ方向)及び横振れ(ヨー方向)の角速度を検出する振動検出部204aと、該検出部204aの出力信号を電気的あるいは機械的に積分した変位をレンズCPU201に出力する演算部204bとから構成されている。
【0030】
205は振動ジャイロ等からなる角度振れ検出センサーからの検出結果に基づいて、振れ補正駆動モータ17の駆動制御を行う振れ補正制御回路である。振れ補正駆動モータ17は、第4レンズユニット14をピッチ方向に駆動する永久磁石およびコイルからなるピッチ方向駆動部と、ヨー方向に駆動する永久磁石およびコイルからなるヨー方向駆動部とにより構成される。なお、レンズ装置2内には、第4レンズユニット14を、その光軸がレンズ光軸に略一致する位置に保持するためのロック機構が設けられている。振れ補正制御回路205は、レンズCPU201からの指令信号に応じて、防振操作スイッチ203がOFFになったとき(振れ補正停止時)に該ロック機構をロック動作させ、防振操作スイッチ203がONになったとき(振れ補正動作時)に該ロック機構をアンロック動作させる。
【0031】
206はフォーカスレンズ制御回路で、焦点検出回路106で検出結果に基づいて算出された第2レンズユニット12の移動量に従い、フォーカスレンズ駆動モータ16を駆動して、第2レンズユニット12を合焦位置まで駆動する駆動制御を行う。
【0032】
207は絞り制御回路で、カメラCPU101から送信された絞り動作信号(絞り値)に基づいて絞り駆動モータ207aの駆動制御を行って絞り開口面積を調節する。
【0033】
208は撮影倍率検出回路であり、変倍レンズである第3レンズユニット13の位置を検出するズーム検出部208aと、第2レンズユニット12の位置を検出する被写体距離検出部208bと、これらズーム検出部208aおよび被写体距離検出部208bからの位置情報に基づいて撮影倍率を演算する撮影倍率演算部208cにより構成されている。該演算部で演算された撮影倍率の情報は、レンズCPU201を介してカメラCPU101に送信される。
【0034】
なお、本実施例では、第3レンズユニットを光軸方向に駆動して焦点距離を変えることで変倍動作を行う光学ズームと、カメラ本体1において撮像素子4上に結像した被写体像を光電変換して得られた画像データを拡大・縮小することで変倍動作を行う電子ズームの両ズーム機能を有している。このため、この場合の撮影倍率は、撮影倍率演算部208cにより演算された光学的なズーム倍率に、カメラCPUにより演算された電子的なズーム倍率を乗じた撮影倍率となる。
【0035】
次に、本実施例の画像生成手段である画像ズレ検出回路112、座標変換回路113及び画像合成回路114の像振れ補正動作及び処理について詳細に説明する。まず、撮影者がレリーズスイッチ104を半押しすると(SW1がオン)、撮影準備動作(焦点調節動作や測光動作等)が開始される。測光動作により得られた測光結果に基づいてシャッター109のシャッタースピード(露光時間)と絞り15の絞り口径(絞り値)を設定するが、一般的に防振システムを使用するような撮影条件では被写体が暗いので、絞り15は全開としても、適正露光となる露光時間は長秒時露光に設定される。
【0036】
そこで、撮影倍率情報に基づいてシフト振れの発生しない露光時間を演算して、適正となる露光時間を複数の短い露光時間に分割し、この分割した数だけ撮影を繰り返す。このように短い露光時間に分割すると、露光により得られる1枚1枚の画像は露出不足になるが、これらの画像には像振れの影響が少ない画像となる。そして、複数の画像を撮影終了後に各々の画像を合成して1枚の画像にすることで露出を改善する。
【0037】
しかし、複数の画像を撮影するとき、複数の撮影により得られた各画像においては、像振れの影響が生じていなくても、連続撮影中の像振れにより各画像間における構図は微妙にズレている場合がある。ここで、これらの画像をこのまま合成すると、合成された画像は各画像における構図がズレ分だけぶれた画像になる。
【0038】
そこで、本実施例では、連続撮影に応じて撮像素子4から撮影ごとに複数出力される画像信号は、A/D変換によりデジタル信号に変換されてから信号処理部110にて信号処理が施された後、防振操作SW203の操作により防振システムがオンされている場合は、信号処理回路110からの画像データはメモリ111に入力し、記憶媒体115への入力は行わない。
【0039】
そして、画像ズレ検出回路112はメモリ111に記憶された各画像データ内における特徴点を抽出し、この特徴点の撮影画面内における位置座標を求める。例えば、図3に示すように、フレーム121aにおいて花を近接撮影する場合、複数枚撮影するとフレーム121bのように像振れによりフレーム121aに対して構図がずれた画像が撮影される。このとき画像ズレ検出回路112は、画面の中の花のうち輝度の高い点である花弁のエッジ123aをエッジ検出により特徴点として抽出し、この特徴点123aと、フレーム121bにおける特徴点123bと比較することで画像ズレを検出する。そして、この画像ズレ(差分)を座標変換回路113により補正(座標変換)する。図3では、フレーム121bの特徴点123bを矢印124のようにフレーム121aの特徴点123aに重ねるようにして、フレーム121bを座標変換する。
【0040】
その後、図3と同様に基準となる第1の画像における特徴点123aと、第2の画像における特徴点123bと比較し、その差分を補正(座標変換)する。すなわち、座標変換回路113は、第2の画像の特徴点123bを第1の画像の特徴点123aに重ねるように第2の画像を座標変換する。第2の画像群の中で2枚目以降の画像についても各々特徴点123bの座標を求め、その座標が第1の画像で定めた特徴点123aの座標と重なるように座標変換回路113は各画像(第2の画像群)を座標変換する。
【0041】
また、本実施例では画像ごとの特徴点座標を求めているが、第1の画像と第2の画像群のうち1枚目の画像を相関演算し、各々対応する画素の変化を画像ズレ検出回路112が動きベクトルとして求めて特徴点の変化とすることもできる。この場合、第2の画像群の2枚目に対しても画像との相関演算で特徴点の変化を求め、以下同様にして各画像の特徴点の変化を求める。なお、特徴点は1箇所だけ選択するのではなく、複数のポイントを選択しておき、これらのポイントの動きベクトルの平均値、又はスカラーの最小値を特徴点の変化としてもよい。なお、この特徴点の変化として動きベクトルの平均値、又はスカラーの最小値を採用しているのは、画面周辺で選択された特徴点もそれ自身が移動する可能性があるため、もっとも移動しない特徴点を選ぶためである。
【0042】
さらに、本実施例では、第1の画像を基準にしている。これは構図のズレた2枚の写真を合成する場合、図4に示すように2枚の画像が重ならない領域129a、129bが生ずる。そこで、画像合成回路114は領域129a、129bをカットして、2枚の画像が重なった領域のみについて拡散補完処理を行い、もとのフレームの大きさにする。
【0043】
デジタル画像の場合には、1枚の露出不足の写真でもゲインアップすることで露出補正が可能であるが、ゲインを高くするとノイズも多くなり良好な画像を得るはできない。しかし、本実施例のように、多くの画像を合成することで画像全体のゲインをアップさせる場合には、各画像のノイズが平均化されるためにS/N比の大きい画像を得ることができ、結果的にノイズを抑えて露出を適正化することができる。言い換えれば、ノイズを許容して撮像素子4を高感度にして複数枚撮影し、これらを加算平均することで画像に含まれるランダムノイズを減少させている。
【0044】
そして、このように座標変換回路113で座標変換された各画像は、最終的に画像合成回路114に出力されて各画像が1枚の画像に合成され、該合成画像データは、ガンマ補正や圧縮処理が行われ記録媒体115に記録される。
【0045】
図5は本実施例の撮像装置のカメラシステムにおける主要動作を示すフローチャート図である。
【0046】
まず、カメラ本体1の電源SW103をONにし、レンズ装置2に電源供給が開始される(または、新しい電池を入れた場合、カメラ本体1にレンズ装置2を装着した場合などカメラ本体1とレンズ装置2との間で通信が開始される。)(S1001)
【0047】
次に、カメラCPU101は、レリーズSW104のSW1がオンされているか否かを判別し(S1002)、オンされている場合、レンズCPU201は防振操作SW203がON(防振動作選択)になっているかを判別する(S1003)。そして、防振動作選択がなされていればステップ1004へ、選択されていなければステップ1023へ進む。
【0048】
次にカメラCPU101が測光及び焦点検出を行い、レンズCPU201が焦点調節動作、像振れ検出、焦点距離検出、被写体距離検出を行なう(S1004)。
【0049】
その後、所定の時間が経過すると、レンズCPU201は振動検出回路204から像振れを補正するための信号を受け取り、振れ補正制御回路205に出力して像振れ補正を開始する(S1005)。そして、検出された焦点距離、被写体距離から撮影倍率を演算し、マクロ防振(撮影倍率が大きい)領域であるかどうかの判別を行う(S1006)。
【0050】
このステップ1006での判別は、この撮影倍率が所定の閾値以上の場合にマクロ防振領域であると判別して、ステップ1007以降の処理(第1のモード)に進み、閾値よりも撮影倍率が小さい場合は、ステップ1021以降の処理に進む。具体的には、任意に設定される閾値を、例えば撮影倍率が0.1倍と設定し、撮影倍率が0.1倍以上の場合はステップ1005での光学的振れ補正のみでは像振れ補正が十分に行われないと判断して、ステップ1007以降の画像合成処理による電子的振れ補正も合わせて行う。
【0051】
ステップ1006でマクロ防振領域であると判別された場合は、限界露光時間演算回路107にて撮影倍率からシフト振れが許容できる露光時間を演算するとともに、焦点調節動作(AF)は常に撮像面から被写体の距離変化に追従する予測サーボモードに変更される(S1007)。さらに、測光値に基づき設定された撮影光学の明るさ(絞り値)と、撮像素子4の感度から求められる適正露光時間と、シフト振れ限界露光時間とから、撮影を何回の分割に分けて行うかの分割回数を算出する(S1008)。
【0052】
例えば、撮像素子4の感度がISO200に設定されている場合、被写体の明るさを測光し、この測光結果に基づいて適正に露光するためには、絞り15を全開(例えばF.8)にし、シャッター109の閉じタイミング、すなわち露光時間を1/8秒が必要であるとする。
【0053】
そして上記条件において、撮影倍率が0.3倍の場合、露光時間を1/8秒とする撮影では、シフト振れにより像振れが発生する可能性があるので、像振れが生じないように露光時間を1/32秒に設定して4回に分割した撮影を行うように設定する。一方、撮影倍率が0.6倍の場合、シフト振れが生じないように露光時間を1/62秒に設定して8回の撮影を行うように設定する。
【0054】
このように複数枚撮影を行う時の露光時間を撮影倍率に合わせて決定し、さらに何枚撮影するかを撮影倍率に合わせて設定する。これは上記のように撮影倍率に比例してシフト振れが大きくなる(テレ側ほど振れの影響が大きくなる)ためであり、各画像の露光時間変更により、撮影倍率によらず、各画像のシフト振れの影響をほぼ同じレベルに軽減することができる。
【0055】
また、同一被写体を複数枚に分けて撮影するとしても、各撮影の露光条件はなるべく適正露光に近くすることで撮像素子4において正確な情報が撮像でき、暗い被写体の場合や、撮影レンズを絞り込んでいるために暗い場合、及び撮像素子4の感度が低く設定されている場合には、複数撮影であっても各撮影の露光時間はなるべく長くして有効な露光条件にする。但し、あまり露光時間を長くすると、像振れによる画像劣化の影響が像面に表れるため、上述したように撮影倍率に応じてシフト振れが生じないような露光時間に設定している。
【0056】
さらに、上記露光時間では足りない分は、撮影枚数で補完している。すなわち、撮影倍率が大きい場合には、さらに露光時間を短くしないと像振れによる画像劣化が生ずるので、さらに露光時間を短くして、その分、撮影枚数を増やして露出補完を行う。したがって、複数枚の撮影における露光時間は、被写体が暗いほど、撮影レンズが暗いほど、また、撮像素子4の感度が低いほど長くなり、撮影倍率が大きいほど短くなる。
【0057】
そして、複数枚撮影における撮影枚数は、撮影被写体が暗いほど、撮影レンズが暗いほど、また撮像素子の感度が低いほど多くなり、撮影倍率が大きいほど少なくなる。
【0058】
続いて、ステップ1009では、レリースボタンの全押し操作によりSW2がオンになるまでステップ1002からステップ1008を繰り返し行い、SW2がオンされた場合、ステップ1010に進む。
【0059】
ステップ1010では、1枚目の撮影を開始する。なお、ステップ1010から後述するステップ1017までは、短い露光時間の撮影を複数回繰り返し、複数の撮影により得られた画像を合成して、みかけの露出を適正にする合成撮影モードの動作である。
【0060】
また、焦点調節動作は過去の複数回のAF情報をもとに撮像面と被写体距離の変化の動きを推定して、複数回露光する露光時間の中心にて合焦する位置を予測し、フォーカスレンズを露光開始前に駆動してピントのズレを補正している。(各露光に露光時間の中心にて合焦する位置を予測して、フォーカスレンズを各露光応じて駆動してピントのズレを補正しても良い。)
【0061】
ステップ1010で撮影された画像はステップ1011において一旦メモリ111に記憶される。そして、すべての撮影動作(複数枚撮影)が完了するまでステップ1010、1011を繰り返し行う(S1012)。その後、撮影が完了するとステップ1013に進み、画像ズレ検出回路112により画像の中から特徴的な像(特徴点)を抽出し、その像の座標を求める。さらに、座標変換回路113が各画像の座標変換を行う(S1014)。なお、上述のように最初の1枚目の画像は座標の変換は行わず、第1の画像として2枚目以降の座標変換の基準とする。
【0062】
複数枚撮影された全ての画像に対して座標変換処理が終了したならば(S1015)、次に画像合成処理に進む。ステップ1016では、第1の画像と座標変換された第2の画像群(2枚目を含む該2枚目以降の複数枚の画像)の各画像との合成を行う。ここで、画像合成処理は、各画像の対応する座標の信号を加算平均することで行い、画像内のランダムノイズは加算平均することで減少する。そして、ノイズの減少した画像をゲインアップして露出の適正化を図る。
【0063】
ステップ1017ではこの合成された画像に対して、各画像が構図ブレにより重ならなかった領域(図4の領域129)をカットし、元のフレームの大きさになるように画像の拡散補完処理を行う。また、合成画像に対してガンマ補正や圧縮処理を行う(S1018)。このようにして得られて合成画像は不図示の液晶表示ユニットに表示する(S1019)。その後、ステップ1020では、各処理により得られた画像データを記憶媒体115に記録する。
【0064】
一方、ステップ1006において、撮影倍率がマクロ域でないと判別された場合はステップ1021に進み、SW2がオンされているか否かの判別を行う、オンされている場合は、通常の撮影(一回の露光で有効な露光条件を形成する通常撮影モード)を行い(S1022)、ステップ1018へと進んで、ガンマ補正や圧縮処理等を行う。
【0065】
また、ステップ1003において、防振操作SW203がオフ状態である場合は、ステップ1003からステップ1023に進む。ステップ1023では、防振システムを使用しないことで像振れによる画像劣化が生ずる撮影条件であるか否かを判断する。この撮影条件とは、被写体の明るさ、レンズの明るさ、撮像感度、撮影倍率、撮影焦点距離であり、被写体の明るさ、レンズの明るさ、撮像感度に基づいて露光時間を求める。そして、その露光時間が現状の撮影焦点距離において、像振れによる画像劣化の可能性があるか否かを判別する(S1024)。
【0066】
像振れによる画像劣化の可能性がある場合にはステップ1025に進み、撮像装置のファインダー内に設けられた表示部や液晶表示ユニット等に、防振モードに設定することを推奨する表示を行う。したがって、防振操作SW203をオフしている場合においても像振れによる画像劣化が生ずる撮影条件の時には、撮影者に防振システムの活用(合成撮影モード)を促す表示を行って画像劣化を未然に防ぐことができる。
【0067】
その後、SW2がオンになるまでステップ1002からステップ1026を繰り返し行い、SW2がオンされた場合に、通常の撮影(一回の露光で有効な露光条件を形成する通常撮影モード)を行う(S1027)。撮影後はステップ1018からステップ1020を経て次の撮影のため、ステップ1002に戻る。そして、電源SW103がオフされるまで上記一連の動作を繰り返し、オフされるとカメラCPU101とレンズCPU201との通信が終了し、レンズ装置2への電源供給が終了する。
【0068】
このように本実施例では、光学的振れ補正のみの補正(第2のモード)と、光学的振れ補正及び画像合成処理による電子的振れ補正を行う補正(第1のモード)とを選択している。
【0069】
すなわち、光学的振れ補正のみでは像振れ補正がしきれない状況では、光学的振れ補正とともに画像合成処理による電子的振れ補正を行う一方、画像合成処理を行わなくても光学的振れ補正のみで像振れ補正が可能な状況では、光学的振れ補正のみを行うようにしている。
【0070】
このため、像振れ補正が適切に行われ、良好な出力画像を得ることができる。そして、画像合成処理を行う第1のモードと画像合成処理を行わない第2のモードとを撮影倍率に応じて選択して行っているため、ユーザーによる判断及び操作が必要なく、良好な撮影動作を提供できる。
【0071】
さらに、画像合成処理による補正を行なう場合には、撮影される複数の各画像の撮影時間(露光時間)は撮影倍率に応じて変更されるので、マクロ撮影のような撮影倍率が高い場合においても振れ補正の効果を十分発揮できる。
【0072】
また、画像合成処理による像振れ補正が行う場合でも、角度振れ補正を光学的振れ補正により補正している。このため、複数回撮影される露光時間を撮影倍率に応じて設定できるため、最適な撮影回数(撮影倍率に応じて撮影回数を減らすなど)による処理を行うことが可能となる。また、画像のトリミング範囲を大きくできる。
【0073】
以上、実施例において、撮影倍率に応じて画像合成処理を行う第1のモードと画像合成処理を行わない第2のモードと選択しているが、撮影倍率の他に、振れの大きさによって該両モードを選択することも可能である。この場合、振動検出回路204の振動検出部204aから出力される像振れ及び像振れ補正に関する情報(振れ幅や周波数等)に基づいて振れ大きさを求め、上述のように閾値による判別を行って、第1及び第2のモードを選択する。
【0074】
さらに、第1及び第2のモードの選択は、ユーザー自身が判断して操作することにより行ってもよい。例えば、図5に示すステップ1003の防振動作選択において、第1及び第2のモード選択を操作する。その際は、例えば、ステップ1024、1025での防振モードに設定することを推奨する表示に加えて、像振れによる画像劣化の度合いを表示することで、該第1及び第2のモードの選択を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施例1に係る撮像装置の断面図。
【図2】本発明の実施例1に係る撮像装置のブロック図。
【図3】本発明の実施例1に係る画像の座標変換説明図。
【図4】本発明の実施例1に係る画像の合成説明図。
【図5】本発明の実施例1に係るカメラシステムにおける動作フローチャート図。
【符号の説明】
【0076】
1 カメラ本体
2 レンズ装置
101 カメラCPU
112 画像ズレ検出回路
113 座標変換回路
114 画像合成回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子を用いて撮影を行う撮像装置であって、
順次取得した複数の画像を合成して出力画像を生成する画像合成処理を行う第1のモードおよび前記画像合成処理を行わずに出力画像を生成する第2のモードとで動作する画像生成手段と、
前記第1及び第2のモードで光学系の駆動による像振れ補正を行う光学防振を動作させるとともに、前記第1のモードと前記第2のモードを選択する制御手段とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記制御手段は、撮影倍率に応じて前記第1のモードと前記第2のモードを選択することを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記撮影倍率が所定値よりも大きいときに前記第1のモードを選択し、前記所定値よりも小さいときに前記第2のモードを選択することを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記画像合成処理は、前記順次取得した各画像の特徴点を抽出し、基準画像の特徴点に対する他の画像の特徴点の変位量を求め、該変位量に基づいて前記他の画像の座標変換を行い、該座標変換後の画像と前記基準画像とを合成する処理であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の撮像装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第1のモードにおいて、前記撮影倍率に応じて各画像の取得時の露光時間を変更することを特徴とする請求項2から4のいずれか1つに記載の撮像装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記撮影倍率が大きいほど前記露光時間を短くすることを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記露光時間に応じて画像の取得数を変更することを特徴とする請求項5又は6に記載の撮像装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の撮像装置と、
光学系を駆動して像振れ補正を行う光学防振手段を備えた交換レンズ装置とを有することを特徴とするカメラシステム。
【請求項9】
撮像素子を用いて撮影を行う撮像装置であって、
順次取得した複数の画像を合成して出力画像を生成する画像生成手段と、
撮影倍率に応じて前記画像生成手段で取得する各画像の露光時間を変更する制御手段とを有することを特徴とする撮像装置。
【請求項10】
前記画像生成手段は、前記順次取得した各画像の特徴点を抽出し、基準画像の特徴点に対する他の画像の特徴点の変位量を求め、該変位量に基づいて前記他の画像の座標変換を行い、該座標変換後の画像と前記基準画像とを合成することを特徴とする請求項9に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記撮影倍率が大きいほど前記露光時間を短くすることを特徴とする請求項9又は10に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記露光時間に応じて画像の取得数を変更することを特徴とする請求項9から11のいずれか1つに記載の撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate