説明

撮像装置

【課題】 クリップ後の非線形成分に拘わらず良好な撮影画像を生成できる撮像装置を提供する。
【解決手段】 被写体像を撮像する撮像素子12と、撮像素子の出力に応じたアナログ信号を入力し、該信号の振幅の予め定めたレベル以上の部分をクリップするクリップ部13と、クリップ部から出力されるアナログ信号の振幅の非線形成分を補正する補正部16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラなどの撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像装置は、CCDやCMOSセンサなどの撮像素子を用いて被写体の撮影を行う装置である。撮影画像における高輝度な被写体(例えば太陽)の影響を軽減するため、撮像装置にクリップ回路を設けることが提案されている(例えば特許文献1を参照)。この装置では、撮像素子の出力から得た色信号の大振幅成分をクリップ回路においてクリップし、クリップ回路の出力(色信号)に基づいて撮影画像の生成を行っている。
【特許文献1】特開平5−199534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記の装置では、クリップ回路の出力(色信号)の振幅に非線形成分が含まれていると、この非線形成分に起因して撮影画像の性能(例えば色再現性)が低下することがあった。
本発明の目的は、クリップ後の非線形成分に拘わらず良好な撮影画像を生成できる撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の撮像装置は、被写体像を撮像する撮像素子と、前記撮像素子の出力に応じたアナログ信号を入力し、該信号の振幅の予め定めたレベル以上の部分をクリップするクリップ部と、前記クリップ部から出力されるアナログ信号の振幅の非線形成分を補正する補正部とを備えたものである。
また、上記の撮像装置において、前記クリップ部の後段に配置され、該クリップ部から出力されるアナログ信号の振幅にゲインを掛けるゲイン部を備えることが好ましい。
【0005】
また、上記の撮像装置において、前記ゲインの値を設定すると共に、該ゲインの値に応じて前記クリップ部の前記レベルを設定する設定部を備えることが好ましい。
また、上記の撮像装置において、前記補正部は、前記ゲイン部の後段に配置され、前記ゲインの値に応じたパラメータを用いて前記非線形成分を補正することが好ましい。
また、上記の撮像装置において、前記ゲイン部から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する変換部を備え、前記補正部は、前記デジタル信号を処理して前記非線形成分を補正することが好ましい。
【0006】
また、上記の撮像装置において、前記補正部は、前記撮像装置の内部の温度に応じたパラメータを用いて前記非線形成分を補正することが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、クリップ後の非線形成分に拘わらず良好な撮影画像を生成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を詳細に説明する。
本実施形態の撮像装置10には、図1に示す通り、撮影レンズ11、撮像センサ12、クリップ回路13、アナログ処理部14、AD変換器15、デジタル処理部16、CPU17、および、DA変換器18が設けられる。
撮像装置10は、撮像センサ12を用いて被写体の撮影を行う装置であり、一眼レフタイプまたはコンパクトタイプのデジタルカメラなどである。撮像装置10の全体的な制御はCPU17によって行われる。
【0009】
撮影レンズ11は、被写体からの光を集光して、撮像センサ12の撮像面に被写体像を形成するレンズ群からなる。撮像センサ12は、CCDやCMOSセンサなどの撮像素子であり、撮像面に形成された被写体像を撮像してアナログ信号V0を出力する。
撮像センサ12から出力されるアナログ信号V0の波形例を図2(a)に示す。図2(a)の横軸は時間を表し、縦軸は電圧値を表す。露光前にアナログ信号V0の基準電圧V1が設定され、この基準電圧V1からの低下量(以下「振幅ΔV0」)が撮像センサ12の各画素に対する入射光量に応じて増減する。
【0010】
傾向としては、入射光量が増えるほど振幅ΔV0が大きくなる。ただし、振幅ΔV0には上限値(V1−V2)がある。図2(b)に示す通り、振幅ΔV0は入射光量が大きくなりすぎると飽和し、上限値(V1−V2)に近づく。通常の撮影では、振幅ΔV0が飽和しないように、被写体の明るさに応じて撮影レンズ11の絞り値やシャッタ−秒時などが調整される。
【0011】
クリップ回路13(図1)は、撮像センサ12の出力端(出力直後)に配置され、撮像センサ12から出力されるアナログ信号V0(図2(a))を入力する。そして、概略、アナログ信号V0の振幅ΔV0の予め定めたレベル(V1−VC)以上の部分をクリップし、そのレベル(V1−VC)以下の振幅のアナログ信号VS(図2(c),(d))をアナログ処理部14に出力する。
【0012】
クリップ回路13における上記のレベル(V1−VC)をクリップレベル(V1−VC)という。クリップレベル(V1−VC)は、振幅ΔV0が飽和しない範囲(図2(b))の任意の値に設定される。その設定は、CPU17(図1)からの指示にしたがってDA変換器18が行う。すなわち、DA変換器18からクリップ回路13に印加される制御電圧VCに応じて、クリップレベル(V1−VC)が設定される。
【0013】
ここで、クリップ回路13の具体的な構成例を図3に示す。クリップ回路13は、トランジスタ21,22,23と、抵抗24,25と、コンデンサ26とで構成される。
npn型のトランジスタ22がクリップ用、pnp型のトランジスタ21が温度補償用として機能する。第3のトランジスタ23はインピ−ダンス変換用である。
上記した撮像センサ12からのアナログ信号V0(図2(a))は、トランジスタ23のベースに入力される。さらに、上記したDA変換器18による制御電圧VCは、トランジスタ21のベースに印加される。そして、制御電圧VCに応じたクリップレベル(V1−VC)以下の振幅のアナログ信号VS(図2(c),(d))がコンデンサ26を介して出力される。
【0014】
クリップ回路13の入出力特性は図4に示すようになる。図4の横軸は入力レベル(図2(a)のアナログ信号V0の振幅ΔV0)であり、縦軸は出力レベル(図2(c),(d)のアナログ信号VSの電圧値)である。
図4から分かるように、入力レベル(ΔV0)が条件式(1)を満たす領域[A]において、出力レベル(VS)は式(2)のようになる。つまり、入力レベル(ΔV0)の増加に伴って直線的に出力レベル(VS)が増加する。
【0015】
0≦ΔV0≦Δ1 …(1)
S=ΔV0 …(2)
領域[A]では、入力レベル(ΔV0)がクリップレベル(V1−VC)より小さい。このため、入力レベルの振幅ΔV0は、クリップされずにそのままアナログ信号VSとして出力される。以下、領域[A]を、線形領域[A]という。
【0016】
また、入力レベル(ΔV0)が条件式(1)より増加し、条件式(3)を満たす領域[B]になると、出力レベル(VS)は式(4)のようになる。領域[B]での入力レベル(ΔV0)は、クリップレベル(V1−VC)の近傍である。式(4)のパラメータα(>0)は、入力レベル(ΔV0)の増加に伴って徐々に大きくなる。
Δ1<ΔV0<Δ2 …(3)
S=ΔV0−α …(4)
このため、領域[B]では、入力レベル(ΔV0)の増加に伴って非直線的に出力レベル(VS)が増加する。つまり、振幅ΔV0はパラメータαの分だけクリップされた後、アナログ信号VSとして出力される。以下、領域[B]を、非線形領域[B]という。
【0017】
さらに、入力レベル(ΔV0)が条件式(3)より増加し、条件式(5)を満たす領域[C]になると、出力レベル(VS)は式(6)のようになる。つまり、入力レベルの振幅ΔV0の大きさに拘わらず、出力レベルのアナログ信号VSは常に一定のクリップレベル(V1−VC)を示す。
Δ2≦ΔV0(<V1−V2) …(5)
S=V1−VC …(6)
領域[C]では、入力レベル(ΔV0)がクリップレベル(V1−VC)より大きい。このため、振幅ΔV0はクリップレベル(V1−VC)以上の部分がクリップされた後、アナログ信号VSとして出力される。以下、領域[C]を、安定領域[C]という。
【0018】
このようなクリップ回路13の入出力特性(図4)は、クリップ用のトランジスタ22の動作状態(図5)を反映したものである。図5は、トランジスタ22のベース電流IBを縦軸とし、エミッタ電圧V3を横軸とした。また、図中右側ほどエミッタ電圧V3が小さくなるように示した。
クリップ用のトランジスタ22の動作状態は、エミッタ電圧V3の大小に応じて3つの領域に分けられる。つまり、エミッタ電圧V3が所定の電圧V3(1)以上の非動作領域と、エミッタ電圧V3が電圧V3(1)より小さく所定の電圧V3(2)より大きい非線形領域と、エミッタ電圧V3が電圧V3(2)以下の安定動作領域とに分けられる。
【0019】
そして、クリップ回路13の入出力特性(図4)の線形領域[A]は、トランジスタ22の動作状態(図5)の非動作領域[A']に対応する。また、クリップ回路13の非線形領域[B]は、トランジスタ22の非線形動作領域[B']に対応する。さらに、クリップ回路13の安定領域[C]は、トランジスタ22の安定動作領域[C']に対応する。
なお、トランジスタ22の安定動作時のベース-エミッタ電圧VBE2は、インピ−ダンス変換用トランジスタ21の安定動作時のベース-エミッタ電圧VBE1と等しい(VBE1=VBE2)。また、トランジスタ22が安定動作をしているとき、トランジスタ22のエミッタ電圧V3は、
制御電圧VCと等しくなる(V3=VC)。そして、このエミッタ電圧V3(=制御電圧VC)と上記した基準電圧V1との差が、クリップレベル(V1−VC)となる。
【0020】
このように、本実施形態の撮像装置10(図1)では、撮像センサ12の後段であってアナログ処理部14の前段にクリップ回路13を配置した。そして、クリップ回路13において、撮像センサ12から出力されるアナログ信号V0(図2(a))を入力し、この信号の振幅ΔV0のクリップレベル(V1−VC)以上の部分をクリップした後、クリップレベル(V1−VC)以下の振幅のアナログ信号VS(図2(c),(d))をアナログ処理部14に出力する。
【0021】
このため、撮像センサ12からのアナログ信号V0の振幅ΔV0がアナログ処理部14の安定動作電圧より大きくても、その電圧値をそのままアナログ処理部14が受けることはない。そして、クリップ回路13にて大振幅成分をクリップした後の安全なアナログ信号VSのみをアナログ処理部14に導くことができる。
クリップ後のアナログ信号VSの電圧値(振幅)は、クリップレベル(V1−VC)以下であり、アナログ処理部14の安定動作電圧より小さい。安定動作電圧とは、アナログ処理部14を含むICの駆動電圧に相当する。
【0022】
したがって、アナログ処理部14を含むICに過重電圧が入力されることはなく、そのICの破損を回避できる。つまり、アナログ処理部14を含むICを保護でき、撮像装置10の内部回路の安定動作を維持できる。また、アナログ処理部14における信号の飽和による誤動作も回避でき、他の回路にノイズが重畳することもない。
アナログ処理部14では、クリップ回路13からのアナログ信号VSに対して周知の相関二重サンプリング(CDS)などの処理を行う。また、必要に応じて、所定のゲイン値によりアナログ信号VSを増幅し(PGA)、感度設定を上げる。処理後のアナログ信号VSは、AD変換器15に出力される。
【0023】
このように、クリップ回路13の後段にアナログ処理部14を配置して、クリップ後のアナログ信号VSの振幅にゲインを掛ける(PGA)ので、ゲイン後のアナログ信号VSの大電圧化を回避でき(クリップ前のアナログ信号V0にゲインを掛ける場合と比較して)、アナログ処理部14を含むICの保護を確実に行える。
さらに、アナログ処理部14におけるPGAのゲイン値は、CPU17がユーザ操作に応じて(または自動的に)設定する。そして、CPU17は、PGAのゲイン値に応じて、ゲイン値に適したクリップレベル(V1−VC)を求め、これを実現するために必要な制御電圧(デジタル値)をDA変換器18に出力する。DA変換器18では、CPU17からの制御電圧(デジタル値)をアナログ値の制御電圧に変換し、クリップ回路13に制御電圧VCとして印加する。
【0024】
このように、本実施形態の撮像装置10では、アナログ処理部14のPGAのゲイン値に応じてクリップレベル(V1−VC)の設定を変更する。このため、ゲインアップによる大電圧化を回避でき、IC(アナログ処理部14など)を保護できる。
例えば、アナログ処理部14のPGAのゲイン値を例えば4倍とし、撮像センサ12の出力(アナログ信号V0)の振幅ΔV0が最も高く飽和しているレベル(V1−V2)を例えば1Vとする。通常の振幅ΔV0は、撮影レンズ11の絞り値やシャッタ−秒時などの変更によって飽和しないように調整されている。
【0025】
しかし、太陽などの高輝度部分では、アナログ信号V0の振幅ΔV0が飽和することもある。この状態で(クリップせずに)PGAのゲインを掛けると、ゲイン値が4倍の場合、飽和部分のゲイン後の電圧値は4Vになってしまう。この電圧値は、アナログ処理部14への負荷が大きく、IC破損の可能性がある。
そこで、ゲイン値を大きくする(例えば4倍にする)場合は、ゲイン前にアナログ信号V0の振幅ΔV0をクリップすることで、ゲイン後のアナログ信号VSの電圧値を低減することができる。例えばクリップレベル(V1−VC)を0.5Vとすれば、ゲイン値が4倍の場合、ゲイン後のアナログ信号VSの電圧値は最大でも2Vとなる。したがって、アナログ処理部14への負荷を軽減でき、ICの破損を回避できる。
【0026】
アナログ処理部14の後段に配置されたAD変換器15では、ゲイン後のアナログ信号VSをデジタル信号VS'に変換する。そして、このデジタル信号VS'を後段のデジタル処理部16に出力する。
AD変換器15からのデジタル信号VS'は、クリップ回路13の入出力特性(図4)の非線形領域[B]の影響で、その振幅に非線形成分を含んでいる。つまり、撮像センサ12から出力されるアナログ信号V0(図2(a))の振幅ΔV0が上記の条件式(3)を満たす場合には、クリップ回路13の出力レベル(アナログ信号VS)が理想的な値(図6)よりも非線形的に小さくなり、これと同様に、AD変換器15からのデジタル信号VS'も理想的な値より非線形的に小さくなる。
【0027】
図6は、クリップ回路13における理想的な入出力特性を示したものである。理想的な入出力特性は、入力レベル(ΔV0)がクリップレベル(V1−VC)より小さい領域において、出力レベル(VS)が上記の式(2)のようになる。また、入力レベル(ΔV0)がクリップレベル(V1−VC)以上の領域において、出力レベル(VS)が上記の式(6)のようになる。つまり、式(2),(6)に対応する2本の直線がクリップレベル(V1−VC)で交差したような特性である。
【0028】
AD変換器15からのデジタル信号VS'には、図6に示す理想的な入出力特性と図5に示す現実の入出力特性との差に応じた非線形成分が含まれるため、このデジタル信号VS'に基づいて撮影画像を生成すると、その非線形成分に起因して撮影画像の性能(例えば色再現性)が低下することがあり、好ましくない。
そこで、本実施形態の撮像装置10では、上記の非線形成分に拘わらず良好な撮影画像を生成するために、その非線形成分をデジタル処理部16において補正する。
【0029】
デジタル処理部16は、AD変換器15からデジタル信号VS'を入力すると、予め記憶しているルックアップテーブル(LUT)を参照し、非線形成分の補正処理を行う。このルックアップテーブルには、デジタル信号VS'の大きさごとに非線形補正用のパラメータβ12,…,βN(例えば図7参照)が登録されている。
このため、AD変換器15からのデジタル信号VS'の大きさに応じて、ルックアップテーブルから非線形補正用のパラメータ(β12,…,βNの何れか)を読み出した後、このパラメータ(β12,…,βNの何れか)をデジタル信号VS'に加算することで、補正処理を行う。その結果、あたかも図6に示す理想的な入出力特性でクリップされた場合と等価なデジタル信号VS'を得ることができる。
【0030】
また、クリップ回路13の現実の入出力特性(図4)は、CPU17とDA変換器18とがアナログ処理部14のPGAのゲイン値に応じてクリップレベル(V1−VC)の設定を変更すると、図8のようにシフトする。図8には、制御電圧VC=VC(1),VC(2)のときの各々の入出力特性を重ねて示した。
図6から分かるように、クリップ回路13の入出力特性の非線形領域[B]も、クリップレベル(V1−VC)に応じてシフトする。そして、AD変換器15からのデジタル信号VS'に含まれる非線形成分の大きさも、クリップレベル(V1−VC)に応じてシフトすることになる。
【0031】
このため、デジタル処理部16では、クリップ回路13におけるクリップレベル(V1−VC)の設定ごとに(つまりアナログ処理部14のPGAのゲイン値ごとに)異なるルックアップテーブルを予め記憶して、PGAのゲイン値に応じたルックアップテーブルの非線形補正用のパラメータを用いてデジタル信号VS'の非線形成分の補正処理を行う。
その結果、アナログ処理部14のPGAのゲイン値に応じてクリップレベル(V1−VC)の設定を変更する場合でも、PGAのゲイン値に適した理想的な入出力特性(図6参照)でクリップされた場合と等価なデジタル信号VS'を得ることができる。
【0032】
さらに、クリップ回路13の現実の入出力特性は、撮像装置10の内部の温度が変化すると、図9に示す通り、非線形領域[B]における出力レベル(VS)の大きさが変化する。図9のような変化は、クリップ用のトランジスタ22の温度特性(図10)を反映したものである。また、このような変化により、AD変換器15からのデジタル信号VS'に含まれる非線形成分の大きさも、撮像装置10の内部の温度に応じて変化することになる。
【0033】
このため、デジタル処理部16では、撮像装置10の内部の温度ごとに、異なるルックアップテーブルを予め記憶し、内部の温度に応じたルックアップテーブルの非線形補正用のパラメータを用いてデジタル信号VS'の非線形成分の補正処理を行う。内部温度の情報は、撮像装置10に温度センサを内蔵するなどして取得すればよい。
その結果、撮像装置10の内部の温度が変化する場合でも、その温度に適した理想的な入出力特性(図6参照)でクリップされた場合と等価なデジタル信号VS'を得ることができる。つまり、入力レベル(ΔV0)が一定であれば、撮像装置10の内部の温度に拘わらず、一定の値のデジタル信号VS'を得ることができる。
【0034】
なお、本実施形態の撮像装置10では、クリップ回路13にインピ−ダンス変換用トランジスタ21,22を配置し、npn型のトランジスタ22をクリップ用、pnp型のトランジスタ21を温度補償用として機能させるため、トランジスタ21,22の安定動作領域での温度特性差が相殺される。このため、温度変化に拘わらずクリップ回路13の安定領域[C]の出力レベルを一定に保つことができる。
【0035】
デジタル処理部16は、AD変換器15からのデジタル信号VS'の非線形成分の補正を行った後、各種の画像処理(例えばホワイトバランス処理や階調変換処理など)を行って撮影画像を生成する。そして、この撮影画像は、モニタ画面(不図示)に表示され、適宜、メモリや記憶媒体に書き込まれる。
このように、本実施形態の撮像装置10では、クリップ回路13の後段のデジタル処理部16においてデジタル信号VS'の非線形成分を補正する。すなわち、クリップ回路13から出力されるアナログ信号VSの振幅の非線形成分を補正する。このため、クリップ後の非線形成分による撮影画像の性能(例えば色再現性)の低下を防止でき、その非線形成分に拘わらず良好な撮影画像を生成できる。
【0036】
さらに、本実施形態の撮像装置10では、アナログ処理部14の後段のデジタル処理部16において、アナログ処理部14のPGAのゲイン値ごとに非線形補正用のパラメータを用意し、ゲイン値に応じた適切なパラメータを用いて非線形成分の補正処理を行う。このため、ゲイン値に応じてクリップレベル(V1−VC)の設定を変更する場合でも、良好な撮影画像を生成できる。
【0037】
また、本実施形態の撮像装置10では、同様のデジタル処理部16において、撮像装置10の内部の温度ごとに非線形補正用のパラメータを用意し、内部の温度に応じた適切なパラメータを用いて非線形成分の補正処理を行う。このため、撮像装置10の内部の温度が変化する場合でも、良好な撮影画像を生成できる。
さらに、本実施形態の撮像装置10では、デジタル処理部16で、AD変換器15からのデジタル信号VS'を処理して非線形成分を補正するので、非線形成分の補正処理を簡単に行うことができる。
【0038】
(変形例)
なお、上記した実施形態では、クリップ回路13(図3)にインピ−ダンス変換用2個のトランジスタ21,22を設けたが、本発明はこれに限定されない。温度補償用のトランジスタ21の代わりにダイオードを用いても同様の効果を得ることができる。この場合、ダイオードは、アノードをトランジスタ22のベースに接続して、カソードにDA変換器18からの制御電圧VCを印加すればよい。
【0039】
また、上記した実施形態では、クリップ回路13を撮像センサ12の出力端(アナログ処理部14の前段)に配置したが、本発明はこれに限定されない。アナログ処理部14の後段(AD変換器15の前段)にクリップ回路13を配置し、アナログ処理部14からのアナログ信号(これも上記と同様の撮像センサ12の出力に応じたアナログ信号である)をクリップ回路13に入力してもよい。この場合でも、クリップ後の非線形成分を補正することで、非線形成分に拘わらず良好な撮影画像を生成できる。
【0040】
また、上記した実施形態では、デジタル処理部16でルックアップテーブル(LUT)を用いて非線形成分の補正処理を行ったが、本発明はこれに限定されない。その代わりに補正式(関数)を用いてもよい。
さらに、上記した実施形態では、非線形成分の補正をデジタル処理部16で行ったが、アナログ信号の段階(例えばアナログ処理部14)で行ってもよい。クリップ後であれば、どの段階で非線形成分の補正を行ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態の撮像装置10の全体構成を示すブロック図である。
【図2】撮像センサ12から出力されるアナログ信号V0とクリップ回路13から出力されるアナログ信号VSの波形例を説明する図である。
【図3】クリップ回路13の具体的な構成例を示す図である。
【図4】クリップ回路13の入出力特性を説明する図である。
【図5】トランジスタ22のダイオード特性を説明する図である。
【図6】クリップ回路13の理想的な入出力特性を説明する図である。
【図7】非線形補正用のパラメータβ12,…,βNを説明する図である。
【図8】クリップレベル(V1−VC)に応じた入出力特性の変化を説明する図である。
【図9】撮像装置10の内部の温度に応じた入出力特性の変化を説明する図である。
【図10】クリップ用のトランジスタ22の温度特性を説明する図である。
【符号の説明】
【0042】
10 撮像装置 ; 11 撮影レンズ ; 12 撮像センサ ; 13 クリップ回路 ;
14 アナログ処理部 ; 15 AD変換器 ; 16 デジタル処理部 ; 17 CPU ;
18 DA変換器 ; 21〜23トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体像を撮像する撮像素子と、
前記撮像素子の出力に応じたアナログ信号を入力し、該信号の振幅の予め定めたレベル以上の部分をクリップするクリップ部と、
前記クリップ部から出力されるアナログ信号の振幅の非線形成分を補正する補正部とを備えた
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記クリップ部の後段に配置され、該クリップ部から出力されるアナログ信号の振幅にゲインを掛けるゲイン部を備えた
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項2に記載の撮像装置において、
前記ゲインの値を設定すると共に、該ゲインの値に応じて前記クリップ部の前記レベルを設定する設定部を備えた
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の撮像装置において、
前記補正部は、前記ゲイン部の後段に配置され、前記ゲインの値に応じたパラメータを用いて前記非線形成分を補正する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4の何れか1項に記載の撮像装置において、
前記ゲイン部から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換する変換部を備え、
前記補正部は、前記デジタル信号を処理して前記非線形成分を補正する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の撮像装置において、
前記補正部は、前記撮像装置の内部の温度に応じたパラメータを用いて前記非線形成分を補正する
ことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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