説明

撮像装置

【課題】撮像装置の撮像光学系の外側に、測距装置を、パララックス調整等の位置決め調整を行って高精度で、かつ能率良く組み付けられるようにする。
【解決手段】撮影用のレンズユニット2のハウジングに配置した取り付け座19に、AFセンサーユニット1に一体的に設けられた取り付け部18を、取り付け位置を調整可能な状態で締結部により締結し、取り付け部18を、第1方向調整機構によって、締結部を中心として回転して位置調整し、取り付け部18の自由端部を、第2方向調整機構によって締結部を中心として移動させることにより、位置調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距装置付き撮像装置に係わり、特に、被写体までの距離を測定するAFセンサー等の測距装置を位置調整して取り付けるための、位置調整機構を備えた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、被写体までの距離を測定する測距装置を搭載した撮像装置が、広く用いられている。このような測距装置を搭載した撮像装置では、撮像光学系の外側に測距装置としてのAFセンサーユニットを配置し、撮像装置であるカメラから被写体までの距離を測定する方式のものの開発が進んでいる。
【0003】
このような撮像光学系の外側にAFセンサーユニットを配置したカメラには、2個のレンズと2個の測距用撮像素子を用い、三角測量の原理で測定するパッシブAF方式(パッシブ測距方式)を採用したものがある。
【0004】
従来、パッシブAF方式のAFセンサーユニットを撮像光学系の外側に配置した構成のカメラでは、AFセンサーユニットを、いわゆるパララックス調整を行ってカメラの撮像光学系の外側に固定する必要がある。
【0005】
このパララックス調整では、2個のレンズと2個の測距用撮像素子を用いたAFセンサーユニットにおける2対の光学系の向きを、撮像レンズの光軸方向へ所定角度傾けるように調整する(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
次に、このパララックス調整を行ってAFセンサーユニットを撮像光学系の外側に固定するための具体的な方法を、図4及び図5に示す、ビデオカメラ用パッシブAF方式のAFセンサーユニットに対する固定方法を例に採って説明する。
【0007】
図4は、従来のAFセンサーユニットが撮像光学系の外側に取り付けられた状態の外観を例示する要部斜視図である。
【0008】
図5は、従来のAFセンサーユニットを撮像光学系の外側から取り外した状態の外観を例示する要部斜視図である。
【0009】
このAFセンサーユニット1001は、2対のレンズとAFセンサー(AF用撮像素子)を内蔵する。さらに、AFセンサーユニット1001には、その内部のAFセンサーから電気信号を所定の電気回路に接続するためのフレキシブル基板1009が取り付けられている。
【0010】
このAFセンサーユニット1001は、撮像光学系であるレンズユニット1004の外側に、AFセンサーホルダー1002を介して装着される。
【0011】
このため、レンズユニット1004には、AFセンサーホルダー1002が、AFセンサーホルダー固定ネジ1003により固定されている。このAFセンサーホルダー1002は、中空の直方体の前面と上面とを取り除いた枠体状の内部にAFセンサーユニット1001を収納して保持するよう構成されている。
【0012】
さらに、このAFセンサーホルダー1002の底板部中央には、図5に示すように、AFセンサーユニット1001の底の凹部(図示せず)に勘合し、調整時の突き当て部となる突き当てボス1008が突設されている。
【0013】
また、AFセンサーユニット1001には、2個の設置位置の調整穴1010が設けられている。これら2個の設置位置の調整穴1010には、それぞれ専用調整工具が着脱可能に挿入される。これら専用調整工具には、先端テーパー状の調整工具ピン1005が延出するように取り付けられている。専用調整工具は、各調整工具ピン1005を操作することにより、AFセンサーユニット1001を調整方向(X,Y,θ)1007に対して調整可能なように構成されている。
【0014】
また、このAFセンサーユニット1001は、AFセンサーホルダー1002に対して、2箇所のUV硬化接着剤1006によって貼着することにより、固定して配置される構成となっている。
【0015】
次に、上述のように構成された、AFセンサーホルダー1002を介してAFセンサーユニット1001が取り付けられる構成における、パララックス調整の方法について説明する。
【0016】
図4に示すように、AFセンサーホルダー1002の所定位置にAFセンサーユニット1001を載置した状態で、AFセンサーユニット1001の2個の調整穴1010に調整工具ピン1005が取り付けられている専用調整工具を挿入する。
【0017】
そして、この状態で、AFセンサーユニット1001をAFセンサーホルダー1002に押し付けるための所定の下方向荷重を加えながら、調整工具ピン1005を回動して専用調整工具における所定のつまみを回して位置決め調整作業を行う。
【0018】
この調整工具ピン1005の操作により、AFセンサーユニット1001は、突き当てボス1008を中心にして調整方向(X,Y,θ)1007に回動する。よって、作業者は、この調整工具ピン1005を操作して、AFセンサーユニット1001が所定の角度に向くように位置決め調整する。
【0019】
このとき、AFセンサーユニット1001を所定の角度に向けるよう調整するときの所定角度の測定方法は、例えばレンズから所定距離位置にチャートを置き、AFセンサーの出力波形から測定する一般的な方法を利用することができる。
【0020】
このようにしてAFセンサーユニット1001が所定の角度に向くよう調整した状態で、作業者は、AFセンサーユニット1001とAFセンサーホルダー1002との間の2箇所をUV硬化接着剤1006で貼着して固定する。この貼着工程では、所定2箇所にUV硬化接着剤1006を塗布し、UV光を一定時間照射してUV硬化接着剤1006を固めた後、調整工具ピン1005を抜き取って作業を完了する。
【特許文献1】特開2001−208536号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、前述した従来のAFセンサーユニットを、パララックス調整を行ってカメラの撮像光学系の外側に固定するための具体的な手段では、パララックス調整を行うときに、所定の下方向荷重を加える必要がある。また、AFセンサーユニットを載置したAFセンサーホルダーは、レンズユニット1004の外側にAFセンサーホルダー固定ネジ1003によって片持ち梁状に取り付けられている。
【0022】
このため、AFセンサーホルダーは、AFセンサーホルダー固定ネジ1003と反対側の自由端部に、AFセンサーユニットを押さえるための下方向荷重が加わると、下方向に撓んでしまう。
【0023】
よって、下方向荷重が加わった調整中と下方向荷重の負荷が無い調整後(調整工具ピン1005を離した後)のパララックス測定値に、AFセンサーホルダーの撓みによる誤差が含まれてしまい、高精度の調整を行うことが困難である。
【0024】
また、前述した従来のカメラに係わる具体的な手段では、パララックス調整後、UV硬化接着剤1006で2箇所を貼着して固定する方式のため、接着硬化による応力や経時変化による接着部の位置ずれを生じ易い。このため、前述した従来のカメラに係わる具体的な手段では、AFセンサーユニットを、高精度でAFセンサーホルダーに対して固定することが困難であった。
【0025】
さらに、前述した従来のカメラに係わる具体的な手段では、パララックス調整後、UV硬化接着剤1006で2箇所を固定する手段であるため、UV接着剤に紫外線を当てて硬化させるために長い時間がかかる。このため、UV接着剤の長い硬化時間が調整工程に含まれることとなり、調整工程時間が延びてしまって作業能率を向上させることが困難であった。
【0026】
本発明の目的は、撮像装置の撮像光学系の外側に、測距装置を、パララックス調整等の位置決め調整を行って高精度で組み付けられるようにする。これと共に、パララックス調整等の位置決め調整の作業を容易かつ迅速に実行可能とし、パララックス調整等の位置決め調整を行って測距装置を組み付ける作業にかかる時間を短縮して作業能率を向上できるようにした撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記目的を達成するために、請求項1記載の撮像装置は、撮影用のレンズユニットのハウジングに対し、AFセンサーユニットを位置調整して取り付け可能に構成した撮像装置において、前記撮影用のレンズユニットのハウジングに配置された、取り付け座と、前記AFセンサーユニットに設けられた取り付け部と、前記取り付け部を、前記取り付け座に対して、取り付け位置を調整可能な状態で締結する締結部と、前記取り付け部を、所定の軸を中心として回転して位置調整が可能なように構成した第1方向調整機構と、前記取り付け部の自由端部を、前記締結部を中心として移動させることにより、位置調整が可能なように構成した第2方向調整機構と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、撮像装置の撮像光学系の外側に、測距装置を、パララックス調整等の位置決め調整を行って高精度で組み付けられるという効果がある。これと共に、撮像装置の撮像光学系の外側に測距装置を取り付ける際に、パララックス調整等の位置決め調整の作業を容易かつ迅速に実行可能とする。さらに、パララックス調整等の位置決め調整を行って測距装置を組み付ける作業にかかる時間を短縮して作業能率を向上できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0030】
図1は、本発明の実施の形態に係わる撮像装置に装着される撮影用のレンズユニットの外側に、測距装置を組み付けた状態を取り出して示す要部斜視図である。
【0031】
図2は、本発明の実施の形態に係わる撮像装置に装着される撮影用のレンズユニットの外側に組み付けられる測距装置を分解して示す、要部分解斜視図である。
【0032】
図3は、図1のA−A線で切断した断面を示すAFセンサー取り付け部分の拡大断面図である。
【0033】
上述した図1及び図2において、1はAFセンサーユニット、2は撮影用のレンズユニットである。この撮影用のレンズユニット2は、撮像レンズ鏡筒の一部を構成するための固定筒であって、AFセンサーユニット1が一体的に組み付けられる。
【0034】
このため、撮影用のレンズユニット2のハウジング(内部筐体)には、取り付け座19が一体的に突設されている。また、AFセンサーユニット1には、取り付け部18が一体的に設けられている。そして、取り付け座19に、バネ部材である板バネ6を介して、取り付け部18を締結することによって、AFセンサーユニット1が、撮影用のレンズユニット2に組み付けられる。なお、この撮影用のレンズユニット2は、レンズユニットのハウジングに、図示しない外カバーを取り付けて完成される。
【0035】
この撮影用のレンズユニット2に設けられる取り付け座19は、レンズユニットのハウジングにおける被写体側(前方側)の外周面からラジアル方向に突出するよう一体的に設けられている。
【0036】
この取り付け座19は、矩形厚板状の台座の上面における被写体側に、偏心ピン用ボス13と垂直調整ネジ用ボス14とを、撮影用のレンズユニット2の光軸と直交する方向(ラジアル方向)に並べて配置する。さらに、取り付け座19には、台座の上面における被写体と反対側の幅方向中央部に、固定ネジ用ボス15を突設する。
【0037】
この偏心ピン用ボス13は、厚肉の小円筒状に形成され、その中心軸に沿って挿入孔が穿孔されている。また、垂直調整ネジ用ボス14は、厚肉の小円筒状に形成され、その中心軸に沿ってねじ孔が穿孔されている。
【0038】
また固定ネジ用ボス15は、両側に柱部分を一体に形成したブロック状に形成され、その略中央位置にねじ孔が穿設されている。さらに、固定ネジ用ボス15には、ねじ孔の周囲をパイプ形状に立設して、このパイプ形状の外周面部分に、後述する取り付け部18の嵌合孔20と板バネ6の孔を嵌合して、位置決め保持可能なように構成する。
【0039】
また、このように構成した取り付け座19に取り付けられる取り付け部18は、樹脂又は金属等の弾性材料で構成する。この取り付け部18には、取り付け座19と略同形の矩形厚板状の部分における被写体側に、長穴17と、ネジ通し用穴21とを光軸と直交する方向(ラジアル方向)に並べて穿設する。
【0040】
この長穴17は、取り付け座19に取り付け部18を取り付けた状態で、偏心ピン用ボス13の直上に位置するように対応して配置される。これと共に、長穴17は、長穴17の中心と嵌合孔20の中心とを通る直線方向に長い開口に形成する。そして、この長穴17は、その長穴内で偏心ピン3の中心軸に対して偏心して配置された円形頭部が回転することにより、偏心ピン3の偏心頭部が長穴17内を往復移動可能なように形成する。
【0041】
さらに、ネジ通し用穴21は、垂直調整ネジ用ボス14に位置が対応し、このネジ通し用穴21を貫通するネジの径に対し、十分に隙間の空くいわゆるガタ穴(遊挿孔)に形成する。すなわち、ネジ通し用穴21は、後述する水平方向調整の時に、ネジが貫通した状態でネジ通し用穴21内を移動して位置調整をするときの調整量を十分に確保できる程度の隙間を持つ貫通孔に形成する。
【0042】
また、取り付け部18には、被写体と反対側の固定ネジ用ボス15に対応した位置に、貫通孔である嵌合孔20を穿孔する。
【0043】
この取り付け部18は、AFセンサーユニット1の一部を構成するレンズホルダー10に一体的に設けられている。この取り付け部18は、レンズホルダー10の一方の上側部に取り付け部18の被写体側の一側部を接続することにより、上端面が面一で平面視が略L字状となるよう、一体に形成されている。
【0044】
このAFセンサーユニット1は、レンズホルダー10に対して、各種の構成部品を組み付けて構成する。このため、レンズホルダー10は、樹脂製で、外形が略直方体状の箱型形状に形成され、被写体側の正面部分と、被写体と反対側の背面部分とに、それぞれ組み付け部品を支持するための支持構造を設けて構成する。
【0045】
このレンズホルダー10には、被写体側の正面側の所定位置にメガネレンズ7を接着剤で固定して組み付ける。このときメガネレンズ7とレンズホルダー10は、所定の精度で製作されているので、組み付け時に特別な位置調整が不要である。
【0046】
また、このレンズホルダー10の被写体と反対側の背面側には、順に、ワッシャ9、AFセンサーホルダー8及びAFセンサー11を配置するよう構成する。なお、AFセンサー11は、フレキシブル基板12に実装されている。このフレキシブル基板12は、カメラ本体の回路基板(図指せず)に接続される。
【0047】
このAFセンサーユニット1では、AFセンサーホルダー8に、AFセンサー11を接着固定したものを、ピント調整用のワッシャ9を介してレンズホルダー10に接着固定して組み付ける。この際、メガネレンズ7の光軸とAFセンサー11の中心を合わせるため位置を調整した後、接着してAFセンサーユニット1を完成する。
【0048】
この位置の調整方法は、メガネレンズ7前方にチャートを置き、フレキシブル基板12からAFセンサー11の波形を出力して調整を行うという一般的な位置の調整方法を用いることができる。
【0049】
この位置の調整方法では、予め厚みの異なる数種類のピント調整用のワッシャ9を準備しておき、良好なピントが得られるようにAFセンサー11の波形を確認して、所要の厚みを有するピント調整用のワッシャ9を選定して用いる。なお、この位置の調整方法は、一般的なものであるので、これ以上の詳細な説明を省略する。
【0050】
また、AFセンサーユニット1の取り付け部18と、撮影用のレンズユニット2の取り付け座19との間に配置されるバネ部材である板バネ6は、図2及び図3に示すように金属等の弾性材料製の変形板ばねとして構成する。
【0051】
この板バネ6は、正面略U字状の弾性変形部分における両自由端部から、それぞれ外側に向けて鉤型に延出する支持用の突片6a、6bを設けて構成する。この一方の支持用の突片6aには、固定ネジ用ボス15のパイプ形状の外周面部分に嵌合する、嵌合孔を穿孔する。さらに、他方の支持用の突片6bには、自由端辺に開放するようU字状に切欠して二股の爪部を形成する。
【0052】
次に、上述のように構成した板バネ6を介在させて、AFセンサーユニット1をレンズユニット2へ取り付ける取り付け構造と、取り付け方法について説明する。
【0053】
まず、最初の取り付け工程では、撮影用のレンズユニット2における取り付け座19に板バネ6を取り付ける。このとき、板バネ6は、一方の端片の支持用の突片6aに穿孔された嵌合孔を固定ネジ用ボス15の先端となるパイプ形状の部分に嵌合して取り付ける。これと共に、板バネ6は、他方の端片の支持用の突片6bに形成した二股の爪部を垂直調整ネジ用ボス14に臨ませる状態で取り付ける。
【0054】
次の取り付け工程では、AFセンサーユニット1における取り付け部18の嵌合孔20を、固定ネジ用ボス15の先端となるパイプ形状の部分に、板バネ6の支持用の突片6a上に重ねて嵌合する状態で取り付ける。
【0055】
そして、この状態で、固定ネジ5をレンズユニット2の取り付け座19に設けられた固定ネジ用ボス15先端のパイプ形状の内側に当たる螺子孔に螺合して締結する。これにより、取り付け部18における嵌合孔20近傍の高さ位置(上下方向の位置)が、取り付け座19に対して一定となるように締結される。
【0056】
すなわち、取り付け部18は、取り付け座19の固定ネジ用ボス15に固定ネジ5によって締結された状態で、垂直調整ネジ用ボス14の先端面との間に所定間隔のθ2方向の傾き(上下方向の傾き)の調整用の隙間ができる、片持ち梁状に締結される。これと共に、取り付け部18は、図3に示すように、板バネ6が、常に取り付け部18の垂直調整ネジ用ボス14側の端部(自由端側の端部)を上方向に付勢された状態となっている。
【0057】
次の取り付け工程では、水平調整用偏心ピン3を、AFセンサーユニット1の取り付け部18の長穴17を通して、撮影用のレンズユニット2の取り付け座19に設けられた偏心ピン用ボス13の孔へ回転可能に挿通する。このとき偏心ピン3は、偏心ピン用ボス13の孔に対して軽圧入嵌合の状態となり、一度差し込むと容易に抜けることは無いが軽い力で回転可能な状態で保持される。
【0058】
次の取り付け工程では、垂直調整ネジ4を、取り付け部18のネジ通し用穴21に通して撮影用のレンズユニット2の取り付け座19に設けられた垂直調整ネジ用ボス14のネジ通し用穴21へ遊挿し、所定量ネジ締めを行っておく。ここで、ネジ通し用穴21は、ネジの径に対し、十分に隙間の空くいわゆるガタ穴に形成して、後述する水平方向調整時、調整量を十分満足できる程度の隙間が設けおく。
【0059】
なお、上述したように取り付け座19に板バネ6を介して取り付け部18を取り付けた状態では、パララックス調整が可能な状態となっている。このパララックス調整が可能な状態では、撮影用のレンズユニット2の取り付け座19に対して、取り付け部18と一体のAFセンサーユニット1を、図1のθ1とθ2とのそれぞれの方向へ移動調整可能な状態となっている。
【0060】
次に、上述のパララックス調整可能状態において、パララックス調整を行う方法について、図1、図2及び図3を参照しながら説明する。
【0061】
このパララックス調整を行う場合には、まず、AFセンサーユニット1に対する、XZ平面上でのθ1方向傾き(水平方向傾き)の調整を、偏心ピン3を回すことによって行う。
【0062】
ここで用いる偏心ピン3は、偏心ピン頭部分の中心と、その下の軸部の中心(回転中心軸)とを、所定量ずらした形状に形成されている。このためドライバー等で偏心ピン3を回転させると、偏心ピン3の頭部が、取り付け部18の長穴17の内周面を押して、図1に示すように、AFセンサーユニット1をδ1だけ矢印方向へ移動させる。すなわち、AFセンサーユニット1は、固定ネジ5の中心(座標原点0)を回転中心としてδθ1だけ回転する。
【0063】
このときAFセンサーユニット1は、既に固定ネジ5によって取り付け座19に締め付けられている。しかし、θ1方向の回転中心が固定ネジ5の中心位置と同一のため抵抗が少ないので、偏心ピン3は、比較的軽いトルクで回すことができる。
【0064】
次に、このパララックス調整では、AFセンサーユニット1に対する、XY平面上でのθ2方向の傾き(上下方向の傾き)の調整を、垂直調整ネジ4を回転することにより行う。
【0065】
この調整では、図3に示すように、垂直調整ネジ4を回して調整することにより、取り付け部18が、垂直調整ネジ4の頭部に押されてδ2だけ矢印方向へ僅かに移動調整される。この調整によって、取り付け部18は、図3に示すように、固定ネジ締結部(XY原点0)を支点にしてδθ2だけ点線のごとく僅かに撓み、AFセンサーユニット全体を回転させてθ2方向に傾動調整される。
【0066】
なお、垂直調整ネジ4をはずした状態における取り付け部18の初期形状は、図3に2点鎖線で示した形状、すなわち僅かに自由端部を上向きにする形状になっている。このように取り付け部18の初期形状を構成した場合には、パララックス調整において、上向き方向の調整が可能となる。
【0067】
次に、前述した板バネ6が、図3に示すように、常にAFセンサーユニット1の取り付け部18を上方向に付勢していることの作用に付いて説明する。
【0068】
このパララックス調整を行うための前述した調整機構では、調整量δ2が微小なので、通常の状態で、取り付け部18の弾性のみを利用して調整機構が成り立つ。しかし、取り付け部18の弾性のみを利用して調整機構を構成した場合には、高温で放置されたり、落下・振動が加わった場合に、僅かではあるが取り付け部18にクリープや変形を生じ、AFセンサーの微小な位置ズレを引き起こすことがある。
【0069】
そこで、望遠レンズを有するカメラ等のように、高精度でAFセンサーの位置決めが必要な場合には、前述した板バネ6を設けた構成により、取り付け部18のクリープや変形を吸収するために板バネ6によって、付勢力を付与することが有効となる。
【0070】
なお、本実施の形態の構成では、レンズホルダー10(取り付け部18)やレンズユニット2の部品精度を高精度にすることにより、従来のようなピボット突き当て調整ではないので、前述した図4の従来例におけるθ方向の調整を不用とできる。
【0071】
最後に、このパララックス調整では、水平調整用偏心ピン3、垂直調整ネジ4及び固定ネジ5の頭にネジロック用接着剤を塗布して振動落下による回転ずれを規制し、調整完了とする。なお、前記ネジロック用接着剤塗布に関しては、調整後ネジを回さない限りAFユニット位置は動かないので、接着剤が固まるまで待つ必要が無い分だけ、調整工程の時間を節減できる。
【0072】
次に、上述のように構成した本実施の形態の撮像装置における撮影用のレンズユニット2に、AFセンサーユニット1をパララックス調整可能に取り付けるための構成により得られる効果について説明する。
【0073】
この撮像装置では、撮影用のレンズユニット2(固定筒)に配設した取り付け座19(AFユニット取り付け座)に、AFセンサーユニット(AFユニット)1に配設した弾性体で形成した取り付け部18を組み付ける構成としている。
【0074】
すなわち、この取り付け座19に対して板バネ6を介して取り付け部18を組み付ける部分(接合部)の構成は、パララックス調整を行うための、締結部、水平方向調整機構(第1方向調整機構)及び垂直方向調整機構(第2方向調整機構)を備える。
【0075】
よって、この接合部の構成では、調整時の荷重が、剛性の高い撮影用のレンズユニット2の取り付け座19にかかるため、調整時に撓み変形による誤差を生じることが少ないので、高精度でAFユニットの位置調整が可能となる。
【0076】
さらに、この接合部に装着する水平方向調整機構、垂直方向調整機構は、AFセンサーユニット1の樹脂又は金属製の前記弾性体で構成した取り付け部18の弾性を利用してネジによる送り方向移動を行うように構成する。これにより、この接合部の水平方向調整機構、垂直方向調整機構の構成は、従来のUV接着剤を用いた調整手段と比較して、接着硬化応力を無くせると同時に、温度変化若しくは落下又は振動によるAFセンサーユニット1の位置ずれを少なくできる。これと共に、製造工程における紫外線(UV)を照射して接着剤を硬化させる時間を削減できる。また、この接合部の水平方向調整機構、垂直方向調整機構の構成は、簡素で廉価に構成でき、しかも、迅速に製造できるので大量生産に適する。
【0077】
また、弾性体である取り付け部18をネジ締め付け方向と逆方向へ付勢する付勢手段である板バネ6を設けた場合には、温度変化、落下又は振動による弾性体としての取り付け部18の微小変形による影響を抑制できる。よって、このように構成した場合には、撮影用のレンズユニット2に取り付けられたAFセンサーユニット1の位置ずれを更に抑制してAFセンサーユニット1の位置精度を向上することができる。
【0078】
また、AFセンサーユニット1を水平方向(図1のθ1方向)へ傾動して調整する水平方向調整機構(第1方向調整機構)は、偏心ピン3を利用した調整機構として構成した。また、AFセンサーユニット1の自由端部側を垂直方向(図1のθ2方向)へ移動して調整する垂直方向調整機構(第2方向調整機構)は、取り付け部18を垂直調整ネジ4で押圧して弾性変形させることにより、傾動角度を調整する機構として構成した。
【0079】
よって、接着剤を利用するものでは無いので、接着部が接着硬化応力によって誤差を生じるような影響を受けることを無くせると同時に、温度変化若しくは落下又は振動によるAFセンサーユニット1の位置ずれを少なくできる。これと共に、接着剤を利用するものでは無いので、UV照射により接着するための待ち時間が必要ないので、調整工程の迅速化を図ることができる。
【0080】
また、水平方向調整機構では、取り付け部18を偏心ピン3で移動調整するときの取り付け部18の回転中心を、固定ネジ用ボス15に取り付け部18の嵌合孔20を嵌合して固定ネジ5で締結する構造の部分とした。よって、締結部材である固定ネジ5で締結した後であっても、この締結部分を微少角度だけ回転させるための摩擦を小さくできる。このため、取り付け部18を微少角度だけ回転させるために、偏心ピン3を回転調整するための操作力(トルク)を小さくして容易に行えるようにすることができる。
【0081】
さらに、固定筒である撮影用のレンズユニット2の取り付け座19における固定ネジ用ボス15に取り付け部18の嵌合孔20を嵌めて、固定ネジ5で締結するように構成した。よって、取り付け部18は、取り付け座19に対して垂直方向の位置を正確にかつ確実に保持するように締結できる。
【0082】
さらに、水平方向調整機構は、偏心ピン3を回す操作によって調整する。また、垂直方向調整機構は、垂直調整ネジ4を回す操作によって調整する。よって、いずれもねじ部品を回す操作によって調整するものであるから、ねじを回転軸方向へ押し付ける荷重がわずかとなるので、取り付け座19を撓ませることが少なく、高精度でAFユニットの位置調整を行うことができる。
【0083】
また、AFセンサーユニット1は、取り付け部18を一体的に設けたレンズホルダー10に、AFユニット構成部品を組み付けて一体化した構成である。このため、撮像レンズ鏡筒を構成するための撮影用のレンズユニット2とAFセンサーユニット1との取り付け精度が向上するため、水平方向調整機構、垂直方向調整機構による調整量を少なくできるので、調整工程に掛かる時間をより短縮できる。
【0084】
さらに、この撮像装置では、取り付け座19を、撮影用のレンズユニット2と一体化した。これにより、撮影用のレンズユニット2に対するAFセンサーユニット1の取り付け精度が向上するので、水平方向調整機構、垂直方向調整機構による調整量が少なくて済み、調整工程時間をより短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施の形態に係わる撮像装置に装着される撮影用のレンズユニットの外側に、測距装置を組み付けた状態を取り出して示す要部斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係わる撮像装置に装着される撮影用のレンズユニットの外側に組み付けられる測距装置を分解して示す、要部分解斜視図である。
【図3】図1のA−A線で切断した断面を示すAFセンサー取り付け部分の拡大断面図である。
【図4】従来のAFセンサーユニットが撮像光学系の外側に取り付けられた状態の外観を例示する要部斜視図である。
【図5】従来のAFセンサーユニットを撮像光学系の外側から取り外した状態の外観を例示する要部斜視図である。
【符号の説明】
【0086】
1 AFセンサーユニット
2 撮影用のレンズユニット
3 偏心ピン
4 垂直調整ネジ
5 固定ネジ
6 板バネ
7 メガネレンズ
8 AFセンサーホルダー
9 ワッシャ
10 レンズホルダー
11 AFセンサー
13 偏心ピン用ボス
14 垂直調整ネジ用ボス
15 固定ネジ用ボス
17 長穴
18 取り付け部
19 取り付け座
20 嵌合孔
21 ネジ通し用穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影用のレンズユニットのハウジングに対し、AFセンサーユニットを位置調整して取り付け可能に構成した撮像装置において、
前記撮影用のレンズユニットのハウジングに配置された、取り付け座と、
前記AFセンサーユニットに設けられた取り付け部と、
前記取り付け部を、前記取り付け座に対して、取り付け位置を調整可能な状態で締結する締結部と、
前記取り付け部を、所定の軸を中心として回転して位置調整が可能なように構成した第1方向調整機構と、
前記取り付け部の自由端部を、前記締結部を中心として移動させることにより、位置調整が可能なように構成した第2方向調整機構と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記第1方向調整機構は、前記取り付け座の孔へ軸部を回転可能に挿通した偏心ピンの中心軸に対して偏心して配置された円形頭部を、前記取り付け部に形成した長穴の内部で回転させることにより、前記取り付け部を、前記締結部を中心として回転して位置調整が可能なように構成したことを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第2方向調整機構は、AFセンサーユニットの自由端部側を調整ネジで押圧して移動させることにより、前記取り付け部の自由端部側を、前記締結部を中心として移動させることにより、位置調整が可能なように構成したことを特徴とする請求項1又は2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記AFセンサーユニットの自由端部側を、前記調整ネジにおけるネジ締め付け方向と逆方向へ付勢するバネ部材を設けたことを特徴とする請求項3記載の撮像装置。
【請求項5】
前記取り付け部を前記AFセンサーユニットの構成部品の一部に一体的に形成したものであることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項6】
前記取り付け座は、前記撮影用のレンズユニットと一体的に形成されていることを特徴とする請求項1記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−300933(P2009−300933A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157862(P2008−157862)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】