説明

撮像装置

【課題】撮像装置の内部において昇温部から通気口への対流を生じさせて当該昇温部の放熱効果を向上させることができる撮像装置を提供することを課題とする。
【解決手段】上下一組の通気口(114、116)がグリップ108側の反対側に設けられ、且つ、前記上下一組の通気口のうち上側に配された通気口が、グリップ側の反対側の側面(112)に設けられた筐体(102)と、少なくとも一部が、前記上下一組の通気口を連通する対流路に配され、駆動状態で昇温する昇温部(124、134、142)と、を備えることを特徴とする撮像装置(100)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮像素子の熱を、筐体の内部に設けられたヒートパイプ及びヒートシンクにより、筐体に形成された通気口まで伝えて、通気口から放出させるデジタルカメラが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−91399号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
筐体に収容され駆動状態で昇温する昇温部の放熱効果を向上させることができる撮像装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、上下一組の通気口(114、116)がグリップ108側の反対側に設けられ、且つ、上側の通気口が、グリップ側の反対側の側面(112)に設けられた筐体(102)と、少なくとも一部が、前記上下一組の通気口を連通する対流路に配され、駆動状態で昇温する昇温部(124、134、142)と、を備えることを特徴とする撮像装置(100)を提供する。
【0005】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0007】
図1は、デジタルカメラ100を示す斜視図である。この図に示すように、デジタルカメラ100は、光軸方向について薄型の矩形箱状の筐体102と、筐体102の前面104に配されたレンズ鏡筒106とを備えている。筐体102における被写体側から見て左側には、グリップ108が配されている。また、グリップ108の上部には、レリーズスイッチ110が配されている。さらに、筐体102におけるグリップ108の反対側、即ち、被写体側から見て右側の側面112には、上下一対の通気口114、116が配されている。
【0008】
なお、レリーズスイッチ110が上面に配される状態、即ちデジタルカメラ100が正位置の状態における上下方向、左右方向をそれぞれ「上下方向」「左右方向」として、以下、説明する。また、被写体側を「前側」、撮影者側を「後側」として、以下、説明する。
【0009】
図2は、デジタルカメラ100を示す平面断面図である。この図に示すように、デジタルカメラ100では、レンズ鏡筒106が備えるレンズ118、120の光軸Lが、筐体102における左右方向中央部よりもグリップ108の反対側に寄せて配されている。また、レンズ鏡筒106の奥側には、撮像部122が配されている。撮像部122は、CCD又はCMOS等の撮像素子124と、撮像素子124の前側に配されたローパスフィルタ126と、ローパスフィルタ126の前側に配された防塵フィルタ128とを備えている。この撮像素子124、ローパスフィルタ126、及び防塵フィルタ128は、光軸Lに沿って配されている。
【0010】
撮像素子124とローパスフィルタ126との間には、環状のシール材127が配されており、撮像素子124の前面とローパスフィルタ126の背面とシール材127とにより密閉空間が形成されている。このため、撮像素子124の素子面には、埃が付着することがない。
【0011】
ローパスフィルタ126は、被写体像の高周波成分をカットして低周波成分を通過させると共に、赤外光成分をカットする。また、防塵フィルタ128は、圧電素子等のアクチュエータにより超音波振動される。これにより、防塵フィルタ128に付着した埃が除去される。
【0012】
また、レンズ鏡筒106よりグリップ108側には、回路基板136と、電池及びメモリーカードが装填されるボックス138とが前後に並べて配されている。回路基板136には、撮像素子124、防塵フィルタ128等の駆動回路が設けられており、撮像素子124、防塵フィルタ128等が電気的に接続されている。
【0013】
また、回路基板136には、撮像素子124が接続されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)140が配されている。ASIC140内には、画像処理回路が形成されている。この画像処理回路は、撮像素子から出力されたデジタル画像データのデジタルゲイン調整処理、色補正、ガンマ補正等といった各種の画像処理を実行する。
【0014】
また、筐体102の背面130には、撮影済み画像或いはデジタルカメラ100の設定に関する各種情報等を表示したり、撮像素子124により取り込まれた被写体像を連続的に表示(所謂、スルー画の表示)したりする表示部132が配されている。この表示部132と撮像素子124との間には、撮像素子固定部材134が配されており、この撮像素子固定部材134に撮像素子124が固定されている。撮像素子固定部材134は、金属製の板材であって、筐体102に当接固定されており(筐体102の前面104から延びた不図示のボスと、図3にて後述する撮像素子固定部材134の後述するボス穴134aとの嵌合により固定されている)、撮像素子固定部材134の熱の一部を、その当接固定のために当接された部分を介して、伝導伝熱により放熱させている。
【0015】
撮像素子固定部材134におけるグリップ108側の反対側の端部には、放熱部142が一体で形成されている。この放熱部142と撮像素子固定部材134とは、アルミ、銅等の熱伝導性が高い材料で形成されている。また、放熱部142は、受熱板144と、複数の放熱フィン146とを備えている。
【0016】
また、互いに対向した放熱部142と通気口114との間には、排気ファン148が、通気口114を覆うように配されている。また、通気口114、116は、筐体102の上下方向を長手方向とする複数の開口が、筐体102の前後方向に配列された構成となっている。
【0017】
図3は、撮像素子固定部材134及び放熱部142を示す斜視図である。この図に示すように、受熱板144は、筐体102の上下方向を長手方向とする矩形板状体であり、撮像素子固定部材134におけるグリップ108側の反対側の端部から筐体102の前方側に張り出している。また、複数の放熱フィン146は、筐体102の前後方向に並列されており、各放熱フィン146は、受熱板144から通気口114、116の側に張り出すと共に上下方向に延びている。なお、撮像素子固定部材134は、筐体102に固定されるための3つのボス穴134aを備えている。これは筐体102の前面104から延びた不図示の3本のボスとそれぞれ嵌合し締結されるためのボス穴である。
【0018】
図4は、デジタルカメラ100を示す背面断面図である。この図に示すように、上側の通気口114に面して配された排気ファン148が駆動された場合には、下側の通気口116から筐体102内への給気がなされ、上側の通気口114から筐体102外への排気がなされる。即ち、排気ファン148は、下側の通気口116から上側の通気口114への強制対流を生じさせる。
【0019】
次に、撮像素子124からの放熱作用について説明する。
【0020】
デジタルカメラ100がスルー画を表示させる機能、連射撮影機能等を発揮している状態、即ち、撮像素子124が連続駆動されている状態では、撮像素子124が発熱する。撮像素子124の熱は、撮像素子固定部材134から筐体102及び放熱部142に伝わる。そして、放熱部142に伝わった熱は、受熱板144と放熱フィン146とから、上下一組の通気口114、116を連通する空気流路を流れる空気を介して対流伝熱により放出される。
【0021】
ここで、排気ファン148が駆動されている状態では、上記空気流路に通気口114から通気口116への強制対流が生じていることから、受熱板144と放熱フィン146とから放出された熱が、通気口116から筐体102の外部へ放出される。これにより、撮像素子124の放熱が促進される。
【0022】
一方で、排気ファン148の駆動が停止している状態であっても、上記空気流路において、昇温した筐体102内の空気が上昇する自然対流が生じる。これにより、撮像素子124から上側の通気口114へかけて、撮像素子124を最高点として次第に低下する熱分布が出来上がるので、撮像素子124の放熱を効率よく促進させることができる。従って、撮像素子124の昇温を抑制できるので、撮像素子124における熱ノイズの発生を抑制でき、以って、撮影画質の低下を抑制できる。
【0023】
これにより、昇温した空気が上側の通気口114から外部に流出し、下側の通気口116から上記空気流路へ、筐体102内の空気と比して低温の外気が流入する。このため、当該空気流路の上側と下側との温度差が拡大するので、上記自然対流が促進される。従って、撮像素子124の昇温をより効果的に抑制できるので、撮像素子124における熱ノイズの発生をより効果的に抑制でき、以って、撮影画質の低下をより効果的に抑制できる。
【0024】
なお、排気ファン148は、撮像素子124が駆動されている状態で常に駆動していてもよく、あるいは、撮像素子124あるいは筐体102内の温度が設定値を超えた場合に駆動してもよい。また、撮像素子124等の温度の如何によらず、所定時間おきに所定時間ずつ駆動させてもよい。
【0025】
ところで、撮影者は、グリップ108を右手で把持して、筐体102の底面を左手で支える。ここで、上側の通気口114を、筐体102におけるグリップ108の反対側に位置する側面112に配している。これにより、上側の通気口114が、撮影者の手で塞がれることを防止でき、以って、放熱性能を確保できる。また、下側の通気口116についても側面112に配している。これにより、デジタルカメラ100を雲台の上あるいはテーブルの上に置いた場合でも、下側の通気口116が塞がれることを防止でき、以って、想定した放熱性能を確保できる。
【0026】
また、通気口114を側面112に配して、筐体102の側方へ昇温した空気を排出させている。これにより、筐体102からの排出熱により、レンズ118、120又は表示部132が曇ることを防止できる。
【0027】
また、複数の放熱フィン146が、上記空気流路(即ち、自然対流路、強制対流路)に沿って延びている。これにより、当該空気流路の流路抵抗を低減できるので、放熱効果をより一層促進できる。
【0028】
さらに、デジタルカメラ100では、外部の空気を筐体102内に取り込むが、撮像素子124の素子面が、ローパスフィルタ126の背面とシール材127とにより密閉されているので、撮像素子124の素子面への埃の付着を防止した上で、撮像素子124の放熱性能を確保できる。なお、通気口114、116に防塵フィルタを配することにより、筐体102内への埃の流入を抑制できる。
【0029】
図5は、他の実施形態に係るデジタルカメラ200を示す平面断面図である。この図に示すように、デジタルカメラ200は、着脱自在なレンズユニット202を備えている。ここで、当該レンズユニット202が備えるレンズ204と撮像部122とは、ミラーユニット等を介さずに、光軸Lの方向に対向しており、互いに近接されている。このため、レンズ204には、撮像素子124の熱の影響が及び易い。しかしながら、本実施形態に係るデジタルカメラ200では、上述のデジタルカメラ100と同様に、撮像素子124の放熱効果が高められているので、撮像素子124からレンズ204への伝熱を抑制でき、レンズ204の光学性能の低下を抑制できる。
【0030】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0031】
例えば、上記実施形態では、発熱部を撮像素子124としたが、ASIC140としてもよく、また、撮像素子124とASIC140との両方としてもよい。また、上記実施形態では、撮像素子124を上記空気流路の外に配して撮像素子124から受熱する放熱部142を上記空気流路の中に配したが、撮像素子124或いはASIC140等の発熱部を上記空気流路に配してもよい。さらに、上記実施形態では、下側の通気口116を側面112に配したが、前面104、背面130等に配してもよい。
【0032】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】デジタルカメラ100を示す斜視図である。
【図2】デジタルカメラ100を示す平面断面図である。
【図3】撮像素子固定部材134及び放熱部142を示す斜視図である。
【図4】デジタルカメラ100を示す背面断面図である。
【図5】他の実施形態に係るデジタルカメラ200を示す平面断面図である。
【符号の説明】
【0034】
100 デジタルカメラ、102 筐体、104 前面、106 レンズ鏡筒、108 グリップ、110 レリーズスイッチ、112 側面、114 通気口、116 通気口、118、120 レンズ、122 撮像部、124 撮像素子、126 ローパスフィルタ、127 シール材、128 防塵フィルタ、130 背面、132 表示部、134 撮像素子固定部材、134a ボス穴、136 回路基板、138 ボックス、140 ASIC、142 放熱部、144 受熱板、146 放熱フィン、148 排気ファン、200 デジタルカメラ、202 レンズユニット、204 レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下一組の通気口がグリップ側の反対側に設けられ、且つ、上側の通気口が、グリップ側の反対側の側面に設けられた筐体と、
少なくとも一部が、前記上下一組の通気口を連通する対流路に配され、駆動状態で昇温する昇温部と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記昇温部は、
駆動状態で発熱する発熱部と、
前記対流路に配され、前記発熱部から受熱して前記対流路に放熱する放熱部材と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記発熱部は、撮像素子及び画像処理回路の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記対流路に、下側の通気口から前記上側の通気口への強制対流を生じさせる対流発生部を備えることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
下側の通気口が、前記側面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
撮像素子を密封状態で収容する撮像素子収容部を備えることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記発熱部は、撮像素子であり、
前記撮像素子を密閉状態で収容する撮像素子収容部を備えることを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記筐体に着脱されるレンズユニットを備えることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記放熱部材は、前記対流路に沿って延びる放熱フィンを含むことを特徴とする請求項2に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−130564(P2010−130564A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305407(P2008−305407)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】