説明

撮像装置

【課題】ミラーの回転動作時に発生したゴミがミラーより像面側の空間に飛散するのを防止して撮像面やシャッタ幕等にゴミが付着するのを防止する撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置は、回転動作により、ファインダ観察時に撮影光路に進入し、撮影時に撮影光路から退避するミラー100と、ミラー100を保持する保持板102と、保持板102に固定され、ミラー100を回転可能に支持する回転軸110と、ミラー100に駆動力を伝達する駆動部120と、駆動部120と保持板102との間に配置され、駆動部120を支持する支持部材と、支持部材に形成した穴から駆動部120側に突出した状態で保持板102に固定され、駆動部120から駆動力が伝達される駆動軸114と、ミラー100より像面側の空間と回転軸110との間の空間を遮蔽するように回転軸110を覆うカバー部材107と、支持部材と駆動部120との間で前記穴を塞ぐように駆動軸114に外挿されるカバー部材108と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば一眼レフカメラ等の撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ等の撮像装置では、撮像素子の撮像面に塵埃等のゴミが付着すると、その付着部分が黒い点となって撮像画像に映り込み、画像の見栄えが低下する。
【0003】
特にレンズ交換可能な一眼レフカメラでは、シャッタやミラー等の機械的な駆動部が撮像面の近傍に配置されており、駆動部で発生した摩耗粉やグリスを含む粘着性の高いゴミが撮像面やシャッタ幕などに付着するおそれがある。
【0004】
撮像面にパトローネ形状の保護部材を備えることで、撮像面やシャッタ幕にゴミが付着することを防ぐ技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−198916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1では、ミラーの駆動時には、保護部材が撮像面から退避している必要があるため、ミラーの駆動時にミラーの回転軸やミラーの駆動部から飛散するゴミが撮像面やシャッタ幕に付着するのを防ぐことができない。
【0007】
そこで、本発明は、ミラーの回転動作時に発生したゴミがミラーより像面側の空間に飛散するのを防止して撮像面やシャッタ幕等にゴミが付着するのを防止することができる撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の撮像装置は、回転動作により、ファインダ観察時に撮影光路に進入し、撮影時に撮影光路から退避するミラーと、前記ミラーを保持する保持部材と、前記保持部材に固定され、前記保持部材を介して前記ミラーを回転可能に支持する回転軸と、前記ミラーに駆動力を伝達する駆動手段と、前記駆動手段と前記保持部材との間に配置され、前記駆動手段を支持する支持部材と、前記支持部材に形成された穴から前記駆動手段の側に突出した状態で前記保持部材に固定され、前記駆動手段から駆動力が伝達される駆動軸と、前記ミラーより像面側の空間と前記回転軸との間の空間を遮蔽するように前記回転軸を覆う第1のカバー部材と、前記支持部材と前記駆動手段との間で前記穴を塞ぐように前記駆動軸に外挿される第2のカバー部材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ミラーの回転動作時に発生したゴミがミラーより像面側の空間に飛散するのを防止することができるので、撮像面やシャッタ幕等にゴミが付着するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の撮像装置の第1の実施形態であるデジタル一眼レフカメラの概略断面図である。
【図2】ミラーユニットの駆動部を図1のX方向から見た図である。
【図3】(a)はミラーユニットが撮影光路に進入したミラーダウン状態を示す図、(b)はミラーユニットが撮影光路から退避したミラーアップ状態を示す図、(c)は、(b)の状態で撮影動作後、再度、ミラーユニットが撮影光路に進入した状態を示す図である。
【図4】(a)はミラーユニット、回転軸、カバー部材、及び駆動部支持部材の分解斜視図、(b)はカバー部材の拡大斜視図である。
【図5】(a)は回転軸に外挿されたカバー部材とシャッタ地板との位置関係を説明するための断面図、(b)はシャッタ地板を背面側から見た図である。
【図6】駆動軸のカバー部材を説明するための分解斜視図である。
【図7】穴の幅Lとカバー部材の直径Dとの関係を説明する図である。
【図8】本発明の撮像装置の第2の実施形態であるデジタル一眼レフカメラにおいて、ミラーユニット、回転軸、カバー部材、及び駆動部支持部材の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の撮像装置の第1の実施形態であるデジタル一眼レフカメラの概略断面図である。なお、本実施形態では、説明の便宜上、図1の左方向をZ方向、上方向をY方向、紙面奥方向をX方向として説明する。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のデジタル一眼レフカメラは、カメラ本体1にレンズ鏡筒1aが着脱可能に装着される。また、カメラ本体1には、ミラーユニット10が不図示のミラーボックスに対して回転可能に支持されている。ミラーユニット10は、ハーフミラーからなるメインミラー100と、メインミラー100に対して回転可能に支持されるサブミラー200とを有する。そして、ミラーユニット10は、回転動作により、ファインダ観察時に、撮影光路内に進入(ミラーダウン)し、撮影時に、撮影光路から退避(ミラーアップ)する。
【0014】
ミラーユニット10のミラーダウン状態では、レンズ鏡筒1aを通って撮影光路に進入した被写体の光束は、メインミラー100で上方に反射する光束とメインミラー100を透過する光束とに分かれる。
【0015】
メインミラー100で上方に反射した光束は、ペンタダハプリズム14等を介して接眼レンズ16及び測光装置15に導かれ、メインミラー100を透過した光束は、サブミラー200で反射して下方に配置された焦点検出装置11に導かれる。測光装置15の出力信号に基づき、露光時の露出制御が行われ、焦点検出装置11の出力音号に基づき、レンズ鏡筒1aの駆動が制御される。
【0016】
一方、ミラーユニット10のミラーアップ状態では、レンズ鏡筒1aを通過して撮影光路に進入した被写体の光束は、シャッタ地板500、及びシャッタ幕12を通過して撮像素子13に結像する。撮像素子13に結像した画像は、カメラ本体1の背面に設けられた不図示の表示装置に表示されるとともに、不図示の記録媒体に画像データとして記録される。
【0017】
次に、図2を参照して、ミラーユニット10の駆動部120について説明する。図2は、ミラーユニット10の駆動部120を図1のX方向から見た図である。
【0018】
図2に示すように、駆動部120は、ミラーユニット10を撮影光路から退避させるアップレバー301、ミラーユニット10を撮影光路に進入させるダウンレバー302、及び、ダウンレバー302に係合するフックレバー303を備える。アップレバー301及びダウンレバー302は、ねじ300によりミラーボックスに対して同軸上で回転可能に支持されている。アップレバー301には、フックレバー303が回転可能に支持され、アップレバー301は、ばね部材304により図の反時計回り方向に付勢されている。
【0019】
図3はミラーユニット10と駆動部120との関係を示す図であり、図3(a)はミラーユニット10が撮影光路に進入したミラーダウン状態を示す図、図3(b)はミラーユニット10が撮影光路から退避したミラーアップ状態を示す図である。図3(c)は、図3(b)の状態で撮影動作後、再度、ミラーユニット10が撮影光路に進入した状態を示す図である。なお、図3においては、保持板102と駆動部120との間に配置される後述する駆動部支持部材113の図示は、省略している。
【0020】
図3(a)に示すように、メインミラー100は、ホルダ101に保持され、ホルダ101のX方向の両側には、それぞれ保持板102が固定されている。また、ホルダ101は、ばね部材305により図の反時計回り方向に付勢されている。ここで、保持板102は、本発明の保持部材の一例に相当する。
【0021】
保持板102には、メインミラー100の回転中心となる回転軸110が嵌合固定されると共に、駆動部120から駆動力が伝達される駆動軸114が回転軸110と平行に配置されるように固定されている。
【0022】
サブミラー200は、ホルダ201に保持され、ホルダ201は、保持板102に設けられた回転軸104を中心にメインミラー100に対して回転可能とされている。また、ホルダ201は、ばね部材205により、図の反時計回り方向に付勢されている。
【0023】
そして、図3(a)の状態では、アップレバー301は、不図示の駆動源によりばね部材304の付勢力に抗して時計回り方向に回転してばね部材304をチャージし、不図示の係止レバーがアップレバー301の曲げ部301aに係止して停止している。
【0024】
図3(b)の状態では、撮影信号に基づき、係止レバーによるアップレバー301の曲げ部301aの係止が解除され、アップレバー301がばね部材304の付勢力により図の反時計回り方向に回転する。ばね部材304は、ばね部材305より十分に付勢力が大きいため、フックレバー303と係合したダウンレバー302もアップレバー301と一体となって回転する。そして、ダウンレバー302が駆動軸114のローラ111を動作させて、ミラーユニット10を撮影光路から退避させる。
【0025】
図3(c)の状態では、撮影完了信号に基づき、フックレバー303が図の時計回り方向に回転して、ダウンレバー302との係合が解除される。そして、ばね部材305の付勢力によりミラーユニット10が図の反時計回り方向に回転して駆動軸114のローラ111によりダウンレバー302が押圧され、これにより、ダウンレバー302が図の時計回り方向に回転する。
【0026】
その後、次の撮影の準備のため、アップレバー301をばね部材304の付勢力に抗して図の時計回り方向に回転させて、ばね部材304のチャージを行い、図3(a)の状態となる。
【0027】
次に、図4を参照して、ホルダ101の保持板102に嵌合された回転軸110のカバー部材107について説明する。図4(a)はミラーユニット10、回転軸110、カバー部材107、及び駆動部支持部材113の分解斜視図、図4(b)はカバー部材107の拡大斜視図である。ここで、カバー部材107は、本発明の第1のカバー部材の一例に相当する。
【0028】
図4に示すように、カバー部材107は、金属又は樹脂等で薄肉の略円筒形状に形成されており、軸嵌合部107a、及び回転軸遮蔽部107bを備える。軸嵌合部107aは、円筒形状をなしており、回転軸110の外周部全周を覆うように回転軸110に対して回転可能に同軸に外挿される。回転軸遮蔽部107bは、円弧板形状をなしており、軸嵌合部107aの駆動部支持部材113側の端部に一体に設けられる。
【0029】
駆動部支持部材113は、ミラーユニット10の保持板102と駆動部120との間に配置されており、回転軸遮蔽部107bの周方向の両側部には、駆動部支持部材113に当接してカバー部材107の回転を規制する回転止め部107cが設けられている。
【0030】
ここで、カバー部材107の回転が規制された状態においては、回転軸遮蔽部107bは、シャッタ幕12及び撮像素子13側を向くように配置される。従って、ミラーユニット10より像面側の空間、即ち、撮像面やシャッタ幕12側の空間に対して、軸嵌合部107aと駆動部支持部材113との間の隙間が回転軸遮蔽部107bにより遮蔽される。
【0031】
これにより、ミラーユニット10より像面側の空間と回転軸110との間が遮蔽されて、ミラーユニット10の回転動作時に回転軸110で発生した摩耗粉等のゴミが撮像面やシャッタ幕12側に飛散するのを防止することができる。なお、組み立てに際しては、保持板102に嵌合された回転軸110に軸嵌合部107aを外挿した後、回転軸110を駆動部支持部材113に嵌め込む。
【0032】
図5(a)は回転軸110に外挿されたカバー部材107とシャッタ地板500との位置関係を説明するための断面図、図5(b)はシャッタ地板500を背面側から見た図である。
【0033】
メインミラー100は、カメラの小型化を図るためになるべくシャッタ地板500側に配置することが望ましい。そのため、シャッタ地板500にカバー部材107の一部である回転軸遮蔽部107bが収容される切欠き501を形成し、これにより、メインミラー100の回転軸110をシャッタ地板500側に寄せて配置することを可能にしている。なお、本実施形態では、回転軸110のカバー部材107をメインミラー100の両側に配置しているが、必要に応じて、いずれか一方の側のみに配置してもよい。
【0034】
次に、図5(a)及び図6を参照して、駆動軸114のカバー部材108について説明する。図6は、駆動軸114のカバー部材108を説明するための分解斜視図である。
【0035】
図5(a)及び図6に示すように、保持板102には、支持軸112が回転軸110と平行になるように固定されており、支持軸112は、駆動部支持部材113に形成された穴113aを貫通して駆動部120のダウンレバー302側に突出して配置されている。また、支持軸112の先端部は、小径部112bが形成されている。
【0036】
支持軸112の小径部112bには、ローラ111より大径に形成された環状板状のカバー部材108が穴113aを塞ぐように外挿される。その後、支持軸112の小径部112bにローラ111が回転可能に嵌合され、ローラ111と支持軸112の小径部112bの段差面112aとの間にカバー部材108が軸方向に挟み込まれて駆動軸114を構成している。
【0037】
図7は駆動部支持部材113に形成された穴113aの幅Lとカバー部材108の直径Dとの関係を説明する図である。図7に示すように、カバー部材108の直径Dは穴113aの幅Lよりも十分に大きい。これにより、ミラーユニット10の回転動作時に保持板102等に付着したグリス等を含むゴミが飛散しても、飛散したゴミは、穴113aの外側でカバー部材108により遮られてカバー部材108に付着する。したがって、飛散したグリス等を含むゴミが穴113aの内側に侵入することを防ぐことができる。
【0038】
また、カバー部材108は、ローラ111と同軸に回転可能になっているため、一定の領域にゴミが偏って付着することを防ぐことができる。なお、カバー部材108に両面テープ等を張り付けて表面に粘着性を持たせることで、飛散したゴミを吸着させるようにしてもよい。ここで、カバー部材108は、本発明の第2のカバー部材の一例に相当する。
【0039】
以上説明したように、本実施形態では、ミラーユニット10の回転動作時に発生したゴミがミラーユニット10より像面側に配置される撮像素子13の撮像面やシャッタ幕12側に飛散するのを防止することができる。これにより、撮像素子13の撮像面やシャッタ幕12にゴミが付着するのを防止することができ、撮像画像へのゴミの映り込みやシャッタ幕12の走行が阻害されるのを回避することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
次に、図8を参照して、本発明の撮像装置の第2の実施形態であるデジタル一眼レフカメラについて説明する。なお、上記第1の実施形態に対して重複する部分については、説明を省略し、符号を流用しつつ相違点についてのみ説明する。
【0041】
本実施形態では、上記第1の実施形態(図4)のカバー部材107に代えてカバー部材107Aを用いている。図8は、ミラーユニット10、回転軸110、カバー部材107A、及び駆動部支持部材113の分解斜視図である。
【0042】
図8に示すように、カバー部材107Aには、回転軸110の外周部に対応する凹形状部107dが形成され、凹形状部107dの図1のY方向の両側には、それぞれ位置決め穴107eが形成されている。
【0043】
凹形状部107dは、シャッタ地板500に形成された切欠き501に収容されており、カバー部材107Aは、回転軸110、シャッタ地板500、及びシャッタ幕12と干渉しないようになっている。
【0044】
そして、カバー部材107Aの位置決め穴107eをシャッタ地板500に形成した位置決め凸部500aに嵌め込んで位置決めし、この状態で、両面テープや接着剤などでカバー部材107Aをシャッタ地板500に固定する。
【0045】
これにより、ミラーユニット10の回転動作時に回転軸110で発生した摩耗粉等のゴミが撮像面やシャッタ幕12側に飛散するのを防止することができる。なお、カバー部材107Aとシャッタ地板500の固定方法や位置決め方法については特に限定されない。その他の構成、及び作用効果は、上記第1の実施形態と同様である。
【0046】
なお、本発明の構成は、上記各実施形態に例示したものに限定されるものではなく、材質、形状、寸法、形態、数、配置箇所等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0047】
12 シャッタ幕
13 撮像素子
107 カバー部材
108 カバー部材
110 回転軸
113 保持板
114 駆動軸
120 駆動部
500 シャッタ地板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転動作により、ファインダ観察時に撮影光路に進入し、撮影時に撮影光路から退避するミラーと、
前記ミラーを保持する保持部材と、
前記保持部材に固定され、前記保持部材を介して前記ミラーを回転可能に支持する回転軸と、
前記ミラーに駆動力を伝達する駆動手段と、
前記駆動手段と前記保持部材との間に配置され、前記駆動手段を支持する支持部材と、
前記支持部材に形成された穴から前記駆動手段の側に突出した状態で前記保持部材に固定され、前記駆動手段から駆動力が伝達される駆動軸と、
前記ミラーより像面側の空間と前記回転軸との間の空間を遮蔽するように前記回転軸を覆う第1のカバー部材と、
前記支持部材と前記駆動手段との間で前記穴を塞ぐように前記駆動軸に外挿される第2のカバー部材と、を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
シャッタ地板に、前記第1のカバー部材の一部が収容される切欠きを形成したことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記駆動軸には、前記駆動手段から駆動力が伝達されるローラが回転可能に支持され、前記第2のカバー部材は、前記ローラと同軸に回転可能に前記駆動軸に外挿されることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−215651(P2012−215651A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79557(P2011−79557)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】