説明

撮像装置

【課題】撮像装置において、人体検出をフォーカス制御に利用する。
【解決手段】撮像装置としてのデジタルカメラは、デジタル信号処理回路18及びシステム制御回路20を備える。デジタル信号処理回路18は、時系列上の画像から人体を検出し、人体のサイズ変化を検出する。システム制御回路20は、人体のサイズ変化を用いてレンズ10を近距離側あるいは遠距離側のいずれかに移動させ、その後、コントラスト方式によるオートフォーカスを実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置に関し、特にフォーカス制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、撮影して得られた画像から被写体としての人体を検出する技術が提案されている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、人体のモデルの輪郭の一部または人体の部位を表す閉曲線からなるテンプレートを記憶するテンプレート管理部と、検出の対象とする画像を入力する画像データ受信部と、入力された画像に対して複数のテンプレートを用いてマッチングを行うことにより、その画像の中から人体を検出する頭部位置検出部を備える物体検出装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、2次元画像に含まれる判定対象物の輪郭データを抽出する輪郭抽出手段と、抽出した輪郭データから輪郭の直線部分と曲線部分の比率を算出する形状値生成手段と、予め決められた閾値と形状値生成手段が算出した輪郭データの直線線分と曲線成分の比率とを比較して人間判定を行う判定手段を備える人間形状判定方法が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、画像からエッジ画像を形成するエッジ画像抽出部と、所定画素のエッジの方向及び所定画素の近隣領域に存在するエッジ画素のエッジ方向と、所定画素と近隣領域に存在するエッジ画素との空間位置関係によって規定したエッジ画素の個数を画像の特徴量として算出し、人物画像の識別精度を向上する装置が開示されている。
【0006】
また、特許文献4には、標準的な顔の大きさを記憶し、この大きさと撮影した顔の大きさから被写体の顔までの実際の距離を演算することが開示されている。
【0007】
さらに、特許文献5には、頭部と胴部の寸法の比率に基づいて人物か否かを判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−149145号公報
【特許文献2】特開2003−132340号公報
【特許文献3】特開2010−117772号公報
【特許文献4】特開2007−248698号公報
【特許文献5】特開2002−298142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、デジタルカメラ等の撮像装置で得られた画像に被写体としての人物あるいは人間が含まれている場合、上記のような各種方法でその画像に人物あるいは人間が含まれていることを検出することが可能であるが、人物あるいは人間を検出した場合に、その検出情報をどのように応用するかについては未だ十分な検討がなされていない。
【0010】
例えば、上記の特許文献1では、画像から人体を検出する技術を施設のセキュリティ管理のために用いることが開示されているにとどまり、より積極的にデジタルカメラ自体の撮影制御に用いることについて何らの言及もない。
【0011】
本発明の目的は、撮影画像に含まれる人体を検出し、その検出情報を利用してフォーカス制御する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、撮像装置であって、レンズを含む光学系と、前記光学系で結像された被写体像を電気信号に変換する撮像手段と、前記撮像手段で得られた画像信号のエッジパターンを用いて人体を検出する検出手段と、時系列上で検出された複数の人体のサイズ変化に基づいて前記レンズを駆動してフォーカス制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明では、撮像手段で得られた画像信号からエッジを抽出し、このエッジのパターンを用いて人体を検出する。すなわち、エッジのパターンが人体固有、あるいは人体共起のパターンに該当する場合に人体として検出する。本願発明では、このような人体検出処理を時系列上、すなわち、少なくとも異なる2つのタイミングにおいて実行し、異なるタイミングにおける人体検出結果を得る。そして、異なる2つのタイミングにおいて得られた人体のサイズ変化、すなわち人体のサイズが大きくなったか、あるいは逆に人体のサイズが小さくなったかに基づいてフォーカス制御する。人体のサイズが大きくなった場合、被写体である人物とこれを撮影している撮像手段との相対的距離が小さくなったことを意味するから、フォーカスを近距離側に制御する。また、人体のサイズが小さくなった場合、被写体である人物とこれを撮影している撮像手段との相対的距離が大きくなったことを意味するから、フォーカスを遠距離側に制御する。このように、人体検出して得られる人体のサイズ変化に基づいてフォーカス制御することで、人体検出結果を有効活用するとともに、フォーカス制御を安定的かつ迅速に実行することができる。フォーカス制御は、コントラスト方式あるいは位相差方法で実行されるが、本発明における人体検出結果に基づくフォーカス制御は、これらコントラスト方式あるいは位相差方式と組み合わせ、これらの方式を補完するものと位置付けることができる。
【0014】
本発明の1つの実施形態では、前記制御手段は、前記人体のサイズ変化に基づいて前記レンズを駆動し、その後、画像のコントラストが最大となる位置まで前記レンズを駆動することでフォーカス制御する。
【0015】
また、本発明の他の実施形態では、前記制御手段は、前記人体のサイズ変化が実質的にない場合に、前記人体のサイズに基づいて前記レンズを駆動してフォーカス制御する。
【0016】
また、本発明の他の実施形態では、前記制御手段は、前記人体のサイズ変化が時系列上で増大変化である場合に前記レンズを近距離側に駆動し、前記人体のサイズ変化が時系列上で減少変化である場合に前記レンズを遠距離側に駆動する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、人体検出情報を用いてフォーカス制御することができる。これにより、フォーカス制御をより安定的に、あるいはより迅速に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態におけるデジタルカメラの構成図である。
【図2】実施形態のフォーカス制御フローチャートである。
【図3】実施形態の人体検出フローチャートである。
【図4】人体のエッジパターンを示す説明図である。
【図5】実施形態のレンズ移動位置を示す説明図である。
【図6】サイズ変化量とレンズ移動量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。但し、以下の実施形態は例示であり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0020】
まず、本実施形態における撮像装置としてのデジタルカメラの基本構成について説明する。
【0021】
図1に、本実施形態におけるデジタルカメラの構成ブロック図を示す。レンズ10、シャッタ・絞り12を介して被写体像は撮像素子14に結像する。撮像素子14は、被写体像を電気信号に変換し、アナログ画像信号としてアナログ前処理回路(アナログフロントエンド)16に出力する。絞りは、システム制御回路20からの露光制御信号により駆動制御される(露出制御:AE)。また、レンズ10は、システム制御回路20からのフォーカス制御信号により駆動制御される(フォーカス制御:AF)。
【0022】
なお、撮像素子14には、IRカットフィルタ、光学ローパスフィルタ、カラーフィルタアレイ等の光学フィルタが設けられている。撮像素子14は、CCD撮像素子やCMOS撮像素子が用いられる。
【0023】
アナログ前処理回路(アナログフロントエンド)16は、アナログアンプ、ゲインコントローラ及びADコンバータを備え、撮像素子14からのアナログ画像信号を増幅し、デジタル画像信号に変換してデジタル信号処理回路18に出力する。
【0024】
デジタル信号処理回路18は、供給されたデジタル画像信号に対し、ゲイン補正(ホワイトバランス調整)、ガンマ補正、同時化処理、RGB−YC変換、ノイズ低減処理、輪郭補正、JPEG圧縮の各処理を実行する。
【0025】
ゲイン補正(ホワイトバランス調整)は、光源色温度によるRGBのバランスを補正する処理であり、入力されたR信号、G信号、B信号のゲインをそれぞれ調整する。ゲインを調整する方法としては、光源の種類(太陽光、電灯光)等をユーザが手動で入力し、入力された光源に基づいてゲインを調整する方法、撮影光源下に白やグレーの物体を配置し、これらをカメラで撮影して補正する方法、カメラで光源を自動的に判断して補正する方法(オートホワイトバランス)がある。
【0026】
ガンマ補正は、撮像素子14の出力特性をディスプレイの入出力特性に合わせる処理である。
【0027】
同時化処理は、Bayer配列のカラーフィルタを用いた単板撮像方式において1つの画素に1つの色の信号しか存在しないため、足りない色の信号を近隣の画素の色信号から演算して算出する処理である。同時化処理の方法として、近隣の画素の値を平均する方法、注目画素からの距離に応じて加重平均する方法等がある。
【0028】
RGB−YC変換処理は、同時化処理されたR信号、G信号、B信号をY信号、Cb信号、Cr信号に変換する処理である。すなわち、
Y=0.30R+0.59G+0.11B
Cb=B−Y
Cr=R−Y
により輝度信号のY信号、色差信号のCb信号、Cr信号に変換する。
【0029】
ノイズ低減処理は、メディアンフィルタ等を用いてパルス性のノイズのような孤立点を除去する処理である。この処理によりノイズは除去されるが同時に解像度も低下するため、通常、色差信号Cb,Crに対して実行される。
【0030】
輪郭補正処理は、光学的ローパスフィルタ等の影響によるMTF(Modulation Transfer Function)の低下を補正するための処理であり、輪郭抽出処理とノンリニア処理により原画像信号に輪郭信号を付加する。通常、輪郭補正処理は、輝度信号に対して実行される。
【0031】
JPEG圧縮は、輝度信号のY信号、色差信号のCb信号、Cr信号それぞれを8画素×8画素のブロックに分割し、各ブロック毎にDCT変換、量子化、ハフマン符号化を順次行い圧縮する。
【0032】
デジタル信号処理回路18は、以上のような処理により圧縮された画像信号をデータバス22を介してバッファメモリ28に格納し、バッファメモリ28に格納された画像データを読み出して液晶モニタ26に表示する。あるいは、画像信号をメモリカード24に記憶する。
【0033】
システム制御回路20は、各種操作スイッチ(SW)19から入力された信号に基づき各部の動作を制御する。例えば、シャッタボタンの操作信号に基づいて各部の動作を制御し、撮影して得られた画像信号を液晶モニタ26に表示し、あるいはメモリカード24に記憶する。また、撮影に際し、既述したように露出制御(AE)及びフォーカス制御(AF)を実行する。フォーカス制御に関しては、コントラスト検出式AFとTTL位相差検出式AFがある。コントラスト検出式AFでは、撮像画像のコントラスト最大点を合焦位置とするもので、現在位置からフォーカスを少し動かし、コントラストが減少した場合に逆方向に、コントラストが増大した場合にさらに同方向に動かし、どちらの方向に動かしても減少する場合に当該位置を合焦位置とするものである(所謂山登り法)。TTL位相差検出式AFでは、レンズ透過光を測距ユニットで計測し、レンズの合焦位置を決定するものであり、測距ユニットでは合焦位置からのずれの方向及びずれ量に応じて像が左右に移動することを利用して合焦位置を決定する。
【0034】
このような構成において、デジタル信号処理回路18は、上記の各処理を実行するとともに、得られた画像信号に人体が含まれているか否かを検出する人体検出処理を実行し、その検出結果をシステム制御回路20に出力する。
【0035】
システム制御回路20は、デジタル信号処理回路18からの人体検出情報を用いて、フォーカス制御を実行する。すなわち、システム制御回路20は、従来のフォーカス制御に加え、人体検出情報を用いてフォーカス制御を実行する。具体的には、人体検出情報に含まれる人体のサイズ変化を利用して、被写体である人物とカメラとの相対距離の変化を検出し、これに合わせてレンズ10を駆動してフォーカス制御する。この意味において、本実施形態における「人体検出」とは、撮影画像に人体が含まれているか否かを判定し、人体が含まれている場合に、その人体の撮影画像におけるサイズを検出する処理を含むものである。人体のサイズとは、より特定的には人体の上半身のサイズであり、上半身のサイズには、頭部のサイズ(頭部の長さ、頭部の幅)、肩部のサイズ(肩幅)、頭部のサイズと肩幅のサイズの比率等が含まれる。サイズは、頭部や肩部を構成する画素数で規定される。
【0036】
図2に、本実施形態におけるフォーカス制御の処理フローチャートを示す。まず、ユーザがシャッタボタンを半押ししてS1をオンすると(S101)、システム制御回路20はまず撮像素子14、アナログ前処理回路16、デジタル信号回路18を動作させて撮像素子14の撮像画像信号を繰り返し読み出し、データバス22を介して液晶モニタ26に表示する。また、読み出した画像信号を用いてコントラストAFを実行して合焦制御する(S102)。次に、デジタル信号処理回路18は、あるタイミング(これをt1とする)において撮像素子14より読み出される撮影画像信号から人体を検出する(S103)。以下では、人体検出処理及びその検出処理による検出結果を総称してHBD(Human Body Detection)とし、時刻t1における人体検出結果をHBD1とする。また、次のタイミング(これをt2とする)において撮影画像から人体を検出する(S104)、時刻t2における人体検出結果をHBD2とする。なお、人体検出の詳細については後述する。
【0037】
所定の時間t1,t2において人体検出結果HBD1,HBD2が得られた後、デジタル信号処理回路18は、これらの人体検出結果が等しいか否かを判定する(S105)。人体検出結果が等しいか否かは、人体検出で得られる人体の像のサイズが実質的に等しいか否かで判断する。
【0038】
例えば、HBDで検出される人体の頭部の像の長さをサイズと定義し、このサイズが実質的に等しいか否かを判定する。実質的に等しいか否かは、両者のサイズの差が所定の許容範囲内にあるか否かで判定する。
【0039】
人体のサイズは、その像における頭部の長さの他、頭部の幅、肩部の幅、頭部の幅と肩部の幅との和、頭部の長さと肩部の長さの和等で定義してもよく、これらを複合的に組み合わせてもよい。人体検出は、撮影画像から抽出されるエッジパターンを用いて行われるから、その際に抽出される人体固有のエッジパターンを用いてサイズを検出することが好適である。具体的には、頭部の曲線状のエッジと肩部の曲線状のエッジとの組み合わせで人体を検出する場合において、その像における頭部のエッジの幅を人体のサイズとみなす、あるいは頭部のエッジの幅と肩部のエッジの幅の和を人体のサイズとみなす等である。
【0040】
なお、人体のサイズは、被写体である人物とカメラとの相対距離変化だけでなく、カメラに対する人物の向きの変化によっても変化し得るが、例えば人体のサイズをその像における頭部の幅と定義した場合、人物が多少横を向いたとしてもそのサイズ変化は距離の変化によるサイズ変化に比べて小さいため無視してよい。もちろん、向きの変化によるサイズ変化を考慮し、人物の向きが変化してもあまり変化しない部位のサイズを人体のサイズとして定義してもよい。例えば、頭部の長さと肩部の長さの和を人体のサイズと定義する等である。
【0041】
そして、人体検出結果HBD1,HBD2が等しくない場合、デジタル信号処理回路18は、次に、HBD1がHBD2よりも大きいか否か、つまり時刻t1で得られた人体のサイズが、時刻t2で得られた人体のサイズよりも大きいか否かを判定する(S106)。HBD1がHBD2よりも大きい場合、撮影画像内の人物がカメラに対して相対的に遠ざかったためにHBD1>HBD2となったものと判定し、システム制御回路20に判定結果を出力する。システム制御回路20は、デジタル信号処理回路18からの判定結果に応じ、HBD1とHBD2の差からレンズの移動量を算出する(S107)。具体的には、例えば予め両者の差とレンズ移動量との関係を規定するテーブルをメモリに記憶しておき、このテーブルを参照することで差に対応する移動量を決定する。そして、システム制御回路20は、算出されたレンズの移動量でレンズ10を遠距離側に移動させる(S108)。なお、S107でレンズの移動量を算出するのは、たとえHBD1とHBD2の比較により被写体の動きを検出したとしても、レンズ10の移動量が大きいため合焦位置を行き過ぎてしまうと意味がないからである。
【0042】
一方、HBD1がHBD2よりも小さい場合(S106でNOと判定された場合)、撮影画像内の人物がカメラに対して相対的に近づいたためにHBD1<HBD2となったものと判定し、システム制御回路20に判定結果を出力する。システム制御回路20は、デジタル信号処理回路18からの判定結果に応じ、HBD2とHBD1の差からレンズの移動量を算出し(S110)、算出されたレンズの移動量でレンズ10を近距離側に移動させる(S111)。
【0043】
以上のようにして、HBD1とHBD2の相違に応じたレンズの移動量でレンズ10を遠距離側あるいは近距離側に移動させた後、システム制御回路20はさらにコントラスト方式AFを実行する(S109)。すなわち、現在位置からレンズを少し動かし、コントラストが減少した場合に逆方向に、コントラストが増大した場合にさらに同方向に動かし、どちらの方向に動かしても減少する場合に当該位置を合焦位置とする。この際、S108あるいはS111でレンズ10を正しい方向に前もって移動させているため、従来よりも高速に合焦位置を決定することができる。
【0044】
また、HBD1とHBD2が等しい場合(S105にてNO)、人物はカメラに対して相対的に静止していると判定し、判定結果をシステム制御回路20に出力する。システム制御回路20は、判定結果に基づき、HBD1あるいはHBD2に基づいて人物までの測距を行い、AFを実行する(S112)。すなわち、HBD1あるいはHBD2のサイズから、カメラと人物との間の距離が一義的に決定され、決定された距離に応じてレンズ10を移動させる。具体的には、予めサイズと距離との関係を規定するテーブルをメモリに記憶しておき、このテーブルを参照することでHBD1あるいはHBD2のサイズに対応する距離を決定する。一例として、予め頭部のサイズとレンズの焦点距離に対する被写体までの距離の関係を規定するテーブルをメモリに記憶しておく。頭部の上下方向のサイズ(頭部の長さ)A、焦点距離28mmの場合には被写体までの距離50cm等である。上記の特許文献4には、標準的な顔の大きさを記憶し、この大きさと撮影した顔の大きさから被写体までの実際の距離を演算することが記載されており、例えばこのような技術を用いてもよい。もちろん、HBD1とHBD2が等しい場合には、被写体である人物とカメラとの相対的距離が実質的に変化していないことを意味するから、レンズ10を駆動することなくそのまま維持してもよいのは言うまでもない。
【0045】
なお、以上は人物の上半身の実サイズが予め既知であることを前提としているが、人物の上半身の実サイズは、人物の年齢に応じて変化し得る。すなわち、一般的に子供の実サイズは成人よりも小さい。そこで、HBD1あるいはHBD2から人物の年齢を推定し、サイズ及び推定した年齢からカメラと人物との距離を決定してもよい。具体的には、HBD1あるいはHBD2において、頭長と肩幅の比率を算出し、算出した比率を用いて年齢を推定する。一般的に、子供の場合は頭部が大きく、このため比率=頭長/肩幅は成人の比率よりも大きくなる。そこで、予め比率と年齢との関係を規定するテーブルをメモリに記憶しておき、HBD1あるいはHBD2における比率に対応する年齢を決定する。もちろん、この比率は性差あるいは人種によっても変化し得るため、これらのファクタを考慮して年齢を推定してもよい。年齢を推定した後、予めHBDの像のサイズ及び年齢と距離との関係を規定するテーブルをメモリに記憶しておき、このテーブルを参照することで人物までの距離を決定する。
【0046】
S112の処理において、HBDのサイズに基づき実行されたフォーカス制御に加え、補完的にコントラスト方式AFを実行してもよい。すなわち、テーブルを参照して距離を決定し、レンズ10を移動させた後、その位置からさらにレンズ10を動かしてコントラストの変化を検出し、コントラスト最大となる合焦位置を決定してもよい。以上のようにしてフォーカス制御した後、ユーザがシャッタボタンを全押ししてS2がオンとなったか否かを判定し(S113)、S2がオンとなるとシステム制御回路20は撮影処理(S114)を行い、得られた撮影画像を液晶モニタ26に表示し、またメモリカード24に格納する。S2がオンされなければ、S103以降の処理を繰り返す。
【0047】
図3に、人体検出の処理フローチャートを示す。まず、デジタル信号処理回路18は、上記の各処理により画像を取得する(S201)。次に、得られた画像からエッジを抽出する(S202)。このエッジ抽出処理は、輪郭補正処理における輪郭抽出結果をそのまま援用してもよく、あるいはこれと別個にエッジを抽出してもよい。
【0048】
エッジを抽出した後、デジタル信号処理回路18は、抽出されたエッジのパターンが、予め決められた人物の上半身のエッジパターンと一致するか否かを判定する(S203)。上半身のエッジパターンは、予めテンプレートとしてデジタル信号処理回路18のメモリに記憶しておく。そして、抽出したエッジパターンが、上半身のエッジパターンと一致する場合には、当該抽出したエッジから人体を検出する(S204)。
【0049】
図4に、撮影画像50から人体を検出する処理を模式的に示す。撮影画像50に人体52が写っているものとする。人体の頭部には、円弧状のエッジ60が存在する。また、人体の肩部にも、曲線状のエッジ62,64が存在する。これらのエッジ60,62,64をテンプレートとしてメモリに記憶しておき、撮影画像から抽出したエッジにこれらのテンプレート60,62,64と一致するパターンが存在するか否かを判定する。もちろん、撮影画像50内の人体52のサイズは種々であるため、相似形のものは一致するとみなすことができる。もちろん、サイズの異なる複数のテンプレートを予め用意してもよい。このように、顔部のエッジと肩部のエッジがともに検出された場合に、被写体から人体を検出することができる。
【0050】
あるいは、頭部の直線上のエッジと、肩部の直線上のエッジとの組み合わせ66をテンプレートとして用意してもよい。
【0051】
図5に、本実施形態におえるフォーカス制御の様子を示す。図において、横軸はフォーカス量(レンズ位置)であり、縦軸は画像のコントラストである。図中、P0がレンズ10の現在位置であるとする。通常のコントラスト方式AFでは、レンズ10をP0から例えばP1の方向に動かしてコントラストの変化を検出する。P0におけるコントラストよりP1におけるコントラストが減少した場合、レンズをP0に対してP1と反対方向のP2まで動かし、再びコントラストの変化を検出する。P0におけるコントラストよりP2におけるコントラストが増加した場合、さらに同一方向にレンズ10を動かす。同一方向への移動を複数回繰り返した後(P2,P3,P4、・・・Pn,Pn+1,・・・)、コントラストが逆に減少した場合、コントラスト最大となる位置を合焦位置として決定する。
【0052】
これに対し、本実施形態では、HBD1とHBD2の大小関係に応じてレンズ10を近距離側あるいは遠距離側に直ちに移動させるため、例えばP0からPnまでレンズを移動させる。その後、Pnを開始点としてコントラスト方式AFを実行するので、従来よりも迅速に合焦位置を決定できる。
【0053】
なお、HBD1は、通常のコントラスト方式AFでフォーカス制御された状態において検出され、フォーカスをその状態で維持したままHBD2を検出するため、HBD2を検出する際には多少ともフォーカスがずれた状態で検出することになるが、エッジパターンを検出できる程度の合焦状態であれば足りるので問題はない。
【0054】
図6に、図2のS107及びS110でレンズ移動量を算出する際のHBD1とHBD2のサイズ変化量とレンズ移動量との関係の一例を示す。図において、横軸はサイズ変化量であり、HBD1に対してHBD2のサイズが増大する場合を+、HBD1に対してHBD2のサイズが減少する場合を−で示す。また、縦軸はレンズ10の移動量であり、近距離側を+、遠距離側を−で示す。サイズの変化量が大きくなるほど、レンズの移動量も比例して増大する。すなわち、変化量が+Δ1のときのレンズ移動量を+M(つまり、サイズが大きくなるとレンズ10を近距離側にM1だけ移動させる)とすると、変化量が+Δ1より大きい場合にはレンズ10の移動量も+M1よりも大きくする。これにより、レンズ10を合焦位置のより近傍まで移動させることが可能となる。もちろん、サイズの変化量によらずにレンズ10の移動量を一定値とすることも可能である。
【0055】
また、本実施形態では、人物の頭部のエッジと肩部のエッジの組み合わせを用いて人体を検出しているが、図4に示したテンプレート60,62,64以外のテンプレートを用いることができる。
【0056】
例えば、人物が正面を向いていない場合には、頭部のエッジや肩部のエッジも変化するが、このような場合にも、予め種々の姿勢における頭部のエッジ及び肩部のエッジを抽出してテンプレートとして記憶しておけばよい。具体的には、標準体型のモデルを種々の姿勢で撮影し、得られた頭部及び肩部のエッジをテンプレートとして記憶しておく。もちろん、正面を向いた姿勢において頭部及び肩部のエッジを基準テンプレートとし、いくつかの姿勢におけるテンプレートをこの基準テンプレートから演算により生成してもよい。
【0057】
また、本実施形態ではテンプレートマッチングにより人体検出を行っているが、他の方法で人体検出してもよい。例えば、エッジを検出し、検出したエッジを直線部分と曲線部分とに分類し、直線部分と曲線部分の比率が一定の範囲内にあるときに人体と検出してもよい。要するに、画像から抽出したエッジが人体に共起するエッジであるか否かを判定する任意のアルゴリズムを用いることができる。
【0058】
また、本実施形態では、図2のS112において、HBD1あるいはHBD2に基づいて人物までの測距を行い、フォーカス制御しているが、上記のように、頭部のサイズや頭部と肩部の比率等は年齢、性別、個人差により変化し得るため、標準的な人物(例えば標準的な成人男性)を基準とした場合には個人差等により測距精度に影響を与える。具体的に測距精度に影響を与える因子を列挙すると、以下の通りである。
(1)個人差
(2)年齢、性別
(3)HBD自体の精度
(4)焦点距離
なお、上記の焦点距離による精度への影響とは、焦点距離が短い場合(ワイド)には画角に対する距離変化に対する頭部の大きさ変化が相対的に小さいため精度が低下することを意味する。そこで、このような因子の影響をできるだけ排除するために、被写界深度を利用してもよい。すなわち、被写界深度は前に浅く後ろに深いことから、HBDより算出された距離よりも一定の割合だけ短い距離に焦点を合わせることにより、発生した誤差を被写界深度内に均等に収めることができる。この割合は撮影レンズの焦点距離や使用する絞り値によって変えてもよい。
【0059】
本実施形態では、デジタルカメラについて例示したが、ビデオカメラにも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 デジタルカメラ、10 レンズ、12 シャッタ・絞り、14 撮像素子、16 アナログ前処理回路、18 デジタル信号処理回路、19 操作スイッチ(SW)、20 システム制御回路、22 データバス、24 メモリカード、26 液晶モニタ、28 バッファメモリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置であって、
レンズを含む光学系と、
前記光学系で結像された被写体像を電気信号に変換する撮像手段と、
前記撮像手段で得られた画像信号のエッジパターンを用いて人体を検出する検出手段と、
時系列上で検出された複数の人体のサイズ変化に基づいて前記レンズを駆動してフォーカス制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1記載の撮像装置において、
前記制御手段は、前記人体のサイズ変化に基づいて前記レンズを駆動し、その後、画像のコントラストが最大となる位置まで前記レンズを駆動することでフォーカス制御する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項1記載の撮像装置において、
前記制御手段は、前記人体のサイズ変化が実質的にない場合に、前記人体のサイズに基づいて前記レンズを駆動してフォーカス制御する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項2記載の撮像装置において、
前記制御手段は、前記人体のサイズ変化が時系列上で増大変化である場合に前記レンズを近距離側に駆動し、前記人体のサイズ変化が時系列上で減少変化である場合に前記レンズを遠距離側に駆動する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の撮像装置において、
前記人体のサイズは、頭部の長さ、頭部の幅、肩部の長さ、肩部の幅の少なくともいずれかであることを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−113922(P2013−113922A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258037(P2011−258037)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】