説明

撮像装置

【課題】タイミングずれを抑制しつつ、適切な露出条件で花火の自動撮影機能を可能とする撮像装置を提供する。
【解決手段】花火を含む夜景を撮影する機能を有する撮像装置100は、対象画像を撮影し画像信号に変換するためのイメージセンサ104と、画像信号を受けて、対象画像に対応する画像データを生成するためのデジタルプロセス回路106と、システムコントローラ109とを備える。システムコントローラ109は、夜景中の花火による輝度変化輝度変化に応じて、所定の露光処理を実行する際に、露光開始前の画面内において、観測対象領域から、花火による輝度変化が発生しない領域を除外する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
花火を含む夜景を撮影可能とする撮像モードを備える撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、花火などの輝度が変化する被写体を撮影する際に、撮像レンズを介して入力された輝度信号の変化からシャッターを制御する技術が提案されている(特許文献1を参照)。このシステムは、あらかじめ同じ場所でプレ撮影を行うことにより、花火が点火してから消えるまでの過程を記録し、シャッターを開閉するタイミングや絞り等のパラメータを決める、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−163830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の花火撮影システムは、花火以外の物体・背景などの影響を考慮するため事前に本番と同じ場所でプレ撮影を行う必要があった。
【0005】
また、基本的にプレ撮影と同じ形状かつ同じ明るさの花火しか認識することができないため撮影を失敗してしまう可能性があった。
【0006】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであって、タイミングずれを抑制しつつ、適切な露出条件で花火の自動撮影機能を可能とする撮像装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の1つの局面に従うと、花火を含む夜景を撮影する機能を有する撮像装置であって、対象画像を撮影し画像信号に変換するための撮像素子と、画像信号を受けて、対象画像に対応する画像データを生成するための信号処理手段と、撮像素子および信号処理手段を制御するための制御手段とを備え、制御手段は、信号処理手段からの出力に応じて、夜景中の花火による輝度変化を検出する輝度変化検出手段と、輝度変化に応じて、所定の露光処理を実行する露光手段と、露光開始前の画面内において、輝度変化検出手段による輝度変化の観測対象領域から、花火による輝度変化が発生しない領域を除外するための除外手段とを備える。
【0008】
好ましくは、除外手段は、露光開始前の画面内において明暗のレベルが所定の閾値の範囲外となる領域を除外する。
【0009】
好ましくは、輝度変化検出手段は、露光時間が終了した後、再び輝度の変化を監視することになる場合、次に露光を開始する際の基準となる輝度値を、前回露光を終了した際の輝度値とする。
【0010】
好ましくは、輝度変化検出手段は、露光を開始する際の基準となる輝度値を、花火が完全に消えている状態の最低輝度値とする。
【0011】
好ましくは、撮像装置は、撮像装置の鉛直方向からの傾きを検出するための傾き検出手段をさらに備え、除外手段は、露光開始前の画面内において、画面上で仰角が所定の角度に相当するラインより下の領域を除外する。
【0012】
好ましくは、輝度変化検出手段は、画面を複数のブロックに分割して、ブロックごとに輝度の変化を監視し、除外手段は、露光開始前の画面内において、ブロックごとに除外ための判断を実行し、画面におけるブロックのサイズは、画面内で花火を撮影するする際の花火のサイズとして想定される第1のサイズよりも小さく、画面内に月をとらえた場合の月の大きさに相当する第2のサイズよりも大きく設定される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の撮像装置では、タイミングずれや露出オーバー/アンダーなどの失敗が少なく、より簡単な操作で花火の自動撮影機能を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態による撮像装置100の一構成例を示す機能ブロック図である。
【図2】撮像装置100が、花火モードにおいて撮影する際に、その明るさが花火撮影に害を及ぼす領域(以下、「光害エリア」と呼ぶ)に対する処理を説明するための概念図である。
【図3】撮像装置100が、花火モードにおいて撮影する際に、輝度変化が生じないものとして除外する領域に対する処理を説明するための概念図である。
【図4】撮像装置100が、花火モードにおいて撮影する際に、月について輝度変化を無視するために設定されるブロックの大きさを説明するための概念図である。
【図5】システムコントローラ109が、シャッターを切るタイミングを制御する処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】図5におけるステップS112の評価対象エリア設定処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係わる装置の構成について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態による撮像装置100の一構成例を示す機能ブロック図である。
【0016】
図1を参照して、撮像装置100は、レンズ(撮影レンズ)から構成されるレンズ系101と、レンズ系101の伸縮駆動やレンズ系101内のズームレンズおよびフォーカスレンズの駆動を行うためのレンズ駆動機構部102とを備える。
【0017】
撮像装置100は、さらに、レンズ系101の絞り及びメカニカルシャッタを制御するための露出制御機構103と、被写体像を光電変換するためのCCDセンサ(Charge Coupled Device)またはCMOSイメージセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor Image Sensor)などのイメージセンサ104と、イメージセンサ104を駆動するためのイメージセンサドライバ105と、アナログアンプ及びA/D変換器などによる処理、記録画像の生成のための色信号生成処理、マトリックス変換処理、圧縮伸張処理、その他各種のデジタル処理を行なうためのデジタルプロセス回路106と、撮像された画像データを格納するためのメモリカードなどのフラッシュメモリ107と、液晶などのディスプレイ108とを備える。なお、デジタルプロセス回路106には、画像加算のためのバッファメモリも含まれるものとする。
【0018】
さらに、撮像装置100は、各部を統括的に制御するためのシステムコントローラ(CPUにより実現される)109と、レリーズスイッチ、設定ボタン、メニューボタン、十字キーなどを含む各種スイッチからなる操作部110と、レンズ駆動機構部102を制御するためのレンズ機構ドライバ111と、露出制御機構103を制御するための露出制御ドライバ112と、制御プログラムや各種設定情報等を記憶するための不揮発性メモリ(EEPROM)113と、撮像装置100の傾きを検知するための加速度センサ114とを備える。
【0019】
(撮像装置100の動作の概念)
図2は、撮像装置100が、花火モードにおいて撮影する際に、その明るさが花火撮影に害を及ぼす領域(以下、「光害エリア」と呼ぶ)に対する処理を説明するための概念図である。
【0020】
撮像装置100は、画面をブロック分割し、ブロックごとに輝度の変化を監視する。このとき、あるブロック内の輝度の変化が一定以上検出されると、自動的に撮影を開始するが、街灯などの光害を花火と誤認識することを避けるため、一定の明暗のあるブロックについては撮影開始前に監視対象から除外する仕組みを備えている。
【0021】
すなわち、後により詳しく説明するように、花火モードにおいては、撮像装置100は、画面をブロック分割し、リアルタイムにブロックごとに輝度の変化を監視することによりシャッターを切るタイミング制御する。
【0022】
図2に示すように、この輝度の監視において、撮像装置100は、周囲の光害エリアの領域の輝度の変化を無視する。
【0023】
すなわち、まず、撮像装置100は、輝度の監視を開始する前の時点で、画面を分割したブロックのうち、一定の明るさがあるエリアは監視しないとの設定を行なう、図2の例では、街灯の光っている領域や、光の漏れている住居の窓などを、このように輝度の監視から除外する領域として設定する。
【0024】
その後、輝度変化を検出して、花火を検出し自動的に撮影開始し、タイマ計測により所定の時間が満了後に自動的に撮影終了する。
【0025】
図3は、撮像装置100が、花火モードにおいて撮影する際に、輝度変化が生じないものとして除外する領域に対する処理を説明するための概念図である。
【0026】
すなわち、図3に示すように、加速度センサ114によって検出された所定の仰角(たとえば0°)のラインよりも下の領域には花火の発光が出現しないと判断して、花火を認識する領域の対象から外す仕組みを備えている。
【0027】
なお、画像解析を行い、仰角0°のライン付近の輝度やテクスチャなどが続く場合は、監視対象に加えたり外したりしてもよい。
【0028】
図4は、撮像装置100が、花火モードにおいて撮影する際に、月について輝度変化を無視するために設定されるブロックの大きさを説明するための概念図である。
【0029】
すなわち、図4に示すように、花火の近傍に月のような明るい被写体が出現している場合の誤動作を抑えるために、図2で説明したブロックのサイズは、
花火の発光領域の最終的な大きさ>ブロックサイズ>月の大きさ
の関係となるように設定する。
【0030】
ここで、地球から見る月の大きさは、満月の場合で、所定の大きさであるので、ブロックサイズについては、この大きさを超えるように設定することができる。
【0031】
一方、花火の大きさについては、ユーザの使用態様によることになるものの、画面中に花火をとらえる以上、画面全体の所定の大きさ以上となるように撮影するものと想定することができる。
【0032】
(シャッターを制御するタイミング)
シャッターを制御する方法としては、以下に説明するように、シャッター開放して一定時間経過後に自動的にシャッターを閉じる。なお、他の方法としては、露光中に白飛びする寸前で自動的にシャッターを閉じるような制御を行ってもよい。
【0033】
図5は、システムコントローラ109が、シャッターを切るタイミングを制御する処理を説明するためのフローチャートである。
【0034】
図5を参照して、撮像処理が開始されると(S100)、システムコントローラ109は、各部の初期化を実行する(S102)。
【0035】
続いて、システムコントローラ109は、ファインダーとして機能するディスプレイ108に、イメージセンサ104が現在とらえている画像をスルー画像として表示する(S104)。
【0036】
さらに、システムコントローラ109は、現在の設定が「花火モード」であるかを判断し(S106),花火モードでなければ、通常の撮影モードの処理に移行する(S200)。
【0037】
一方、システムコントローラ109は、花火モードに設定されていると判断した場合は、続いて、花火モード用に事前に設定されている、自動ホワイトバランス(AWB)、自動露光(AE)機能、自動焦点(AF)機能のための設定値をEEPROM113から取得し、以後の撮影処理に使用するために設定する(S108)。
【0038】
次に、システムコントローラ109は、撮影用の露出制御値(露光時間など)を算出する(S110)。
【0039】
そして、後に詳しく説明するように、システムコントローラ109は、花火の撮影の際に、花火が打ち上げられ開いた状態となったことを検知するために輝度を監視する画面内の領域である評価対象エリアを設定する(S112)。
【0040】
続いて、システムコントローラ109は、上述のような輝度の監視のための輝度変化の検出のためのループ処理を実行する。すなわち、システムコントローラ109は、イメージセンサ104が現在とらえている画像が所定時間前にイメージセンサ104がとらえていた画像との間で輝度の差分をとり、差分画像を生成する(S114)。
【0041】
ここで、輝度値の変化とは、特に限定されないが、たとえば、画面を複数のブロックに分割した場合に、上記評価対象エリアが、このブロックによって指定されているときには、評価エリアであるブロックにおける各画素の輝度値の変化の和を用いることができる。
【0042】
システムコントローラ109は、差分画像において、花火が打ち上げられ開いたことで、所定レベル以上の輝度値の変化が生じたかを判断する(S116)。輝度値の変化が生じていなければ、処理は、ステップS114に復帰する。
【0043】
一方、輝度値が所定のレベル以上変化している場合は、システムコントローラ109は、露光処理を開始する(S120)。露光期間中は、各画素からの画像信号が加算され(画像が加算され)る(S122)。タイマにより露光期間が終了したと判断されると(S124)、システムコントローラ109は、露光処理を終了させる(S126)。
【0044】
続いて、システムコントローラ109は、露光した画像データをフラッシュメモリ107に記録して(S128)、処理が終了する(S130)。
【0045】
図6は、図5におけるステップS112の評価対象エリア設定処理を説明するためのフローチャートである。
【0046】
図6を参照して、処理が開始されると(S1120)、まず、システムコントローラ109は、加速度センサ114からの信号を取得する(S1112)。
【0047】
続いて、システムコントローラ109は、加速度センサ114の信号に基づいて、撮像機の向き(傾き)の情報を算出して取得する(S1114)。
【0048】
次に、システムコントローラ109は、画面内に月の画像が存在するかを検出する(S1126)。ここでは、たとえば、所定の輝度レベル以上の発光体が、1つのブロック内に存在しているかで判断するものとする。
【0049】
さらに、システムコントローラ109は、光害エリアの検出を実行する(S1128)。ここでは、複数のブロックにまたがって、所定の輝度レベル以上の領域が存在する場合、これを光害エリアと判断するものとする。
【0050】
そして、システムコントローラ109は、以下の2つの領域については、スルー画像を除外範囲についてマスクして、輝度変化を検出するように設定する(S1130)。
【0051】
i)露光開始前の画面内において明暗のレベルが所定の閾値の範囲外となる領域
ii)露光開始前の画面内において、画面上で仰角が0度に相当するラインより下の領域
以上で、処理は、ステップS114に復帰する(S1132)。
【0052】
なお、露光時間が終了し、シャッターが自動的に閉じられた後、再び輝度の変化を監視することになる場合、次にシャッターを開放にする際の基準となる輝度値は前回シャッターを閉じた際の輝度値とすることができる。あるいは、花火が完全に消えている状態の最低輝度値を、たとえば、ユーザの操作などで取得した場合、この最低輝度値を次にシャッターを開放にする際の基準となる輝度値とすることも可能である。
【0053】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0054】
100 撮像装置、101 レンズ系、102 レンズ駆動機構部、103 露出制御機構、104 イメージセンサ、105 イメージセンサドライバ、106 デジタルプロセス回路、107 フラッシュメモリ、108 ディスプレイ、109 システムコントローラ、110 操作部、111 レンズ機構ドライバ、112 露出制御ドライバ、113 ROM、114 加速度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
花火を含む夜景を撮影する機能を有する撮像装置であって、
対象画像を撮影し画像信号に変換するための撮像素子と、
前記画像信号を受けて、対象画像に対応する画像データを生成するための信号処理手段と、
前記撮像素子および前記信号処理手段を制御するための制御手段とを備え、
前記制御手段は、
前記信号処理手段からの出力に応じて、前記夜景中の花火による輝度変化を検出する輝度変化検出手段と、
前記輝度変化に応じて、所定の露光処理を実行する露光手段と、
前記露光開始前の画面内において、前記輝度変化検出手段による前記輝度変化の観測対象領域から、前記花火による輝度変化が発生しない領域を除外するための除外手段とを備える、撮像装置。
【請求項2】
前記除外手段は、前記露光開始前の画面内において明暗のレベルが所定の閾値の範囲外となる領域を除外する、請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記輝度変化検出手段は、露光時間が終了した後、再び輝度の変化を監視することになる場合、次に露光を開始する際の基準となる輝度値を、前回露光を終了した直後の輝度値とする、請求項2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記輝度変化検出手段は、露光を開始する際の基準となる輝度値を、花火が完全に消えている状態の最低輝度値とする、請求項2記載の撮像装置。
【請求項5】
前記撮像装置の鉛直方向からの傾きを検出するための傾き検出手段をさらに備え、
前記除外手段は、前記露光開始前の画面内において、前記画面上で仰角が所定の角度に相当するラインより下の領域を除外する、請求項1記載の撮像装置。
【請求項6】
前記輝度変化検出手段は、前記画面を複数のブロックに分割して、前記ブロックごとに輝度の変化を監視し、
前記除外手段は、前記露光開始前の画面内において、前記ブロックごとに除外ための判断を実行し、前記画面における前記ブロックのサイズは、前記画面内で前記花火を撮影するする際の前記花火のサイズとして想定される第1のサイズよりも小さく、前記画面内に月をとらえた場合の前記月の大きさに相当する第2のサイズよりも大きく設定される、請求項1記載の撮像装置。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−31065(P2013−31065A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166713(P2011−166713)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】