説明

撮像装置

【課題】 撮像素子を移動させる手ぶれ補正装置を有する撮像装置において、撮像素子を原点位置に強制的に保持させるための原点保持機構の駆動負荷を低減し、大きな駆動源を要することなく、所要の駆動時間および駆動力を得る。
【解決手段】 撮像素子を移動させる手振れ補正装置における原点保持機構を有する。原点保持機構において、原点保持動作用の第1の圧縮ばね21に対向させて第2の圧縮ばね22を配置し、原点保持時には、ステッピングモータ23からリードスクリュー23aを介して、作動ナット部材35により第2の圧縮ばね22を圧縮させ、圧縮ばね21により、保持状態で必要な保持力量を発生させ、一方、保持解除時点では、最大力量となる圧縮ばね21から作動ナット部材35に印加される力量を対向配置された圧縮ばね22によって減じることができ、ステッピングモータ23の負荷トルクを小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子に被写体光学像を結像させて被写体の画像データを取得するスティルカメラまたはビデオカメラ等の撮像装置に係り、特に、手ぶれによる被写体像の移動に撮像素子を追従させることにより、手ぶれが補正された被写体の画像データを得るための手ぶれ補正機能が設けられた撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レンズ鏡胴に保持収容される撮像レンズにより結像される被写体光学像を、CMOS(相補型金属酸化物半導体)固体撮像素子やCCD(電荷結合素子)固体撮像素子等の撮像素子によって捉えて電子的画像データとして取得する、いわゆるデジタルカメラ等の撮像装置において、撮像時の手ぶれによる像のぶれを補正する手ぶれ補正機能を備えるものがある。この種の手ぶれ補正機能を実現するには、手ぶれによるボディの動きに対応して撮像レンズの少なくとも一部および撮像素子のいずれかを移動させて、手ぶれによる被写体像の移動を相殺させるのが一般的である。
ところで、手ぶれ補正機能を実現するために、手ぶれに対応して撮像素子を移動させて手ぶれを補正する構成では、手ぶれ補正動作中以外には、撮像素子を基準となる原点位置に強制的に復帰保持させることが望ましい。このような技術は、例えば、特許文献1(特開2007−102062号公報)、特許文献2(特開2008−262151号公報)および特許文献3(特開2010−8658号公報)等に開示されている。
【0003】
上述した特許文献1、特許文献2および特許文献3等には、おおむね、手ぶれに相当する運動を手ぶれ検出センサで検出するとともに、前記撮像レンズにおける撮影光軸に沿う軸線をZ軸とし、このZ軸が垂直に交わるX−Y平面と前記Z軸との交点を原点として、前記X−Y平面内で移動自在に枠部材により保持される前記撮像素子を、前記手ぶれによる被写体の像の移動に追従させる手ぶれ補正装置が示されており、この手ぶれ補正装置は、前記撮像素子の光学的な中心が前記原点と一致する原点位置に前記撮像素子を強制的に保持させる原点保持機構を有している。
そして、特許文献1に示された手ぶれ補正装置は、撮像素子を搭載し、手ぶれ検出情報に応じて前記X−Y平面上で駆動される枠部材としての載置ステージを有しており、原点保持機構として、手ぶれ補正動作の非作動時に前記撮像素子の背面側から前記Z軸方向に沿って前記撮像素子および前記載置ステージのいずれかに当接して前記撮像素子を前記原点位置に固定保持させる押圧部材を有し、モータ等の回転駆動源による回転運動をZ軸方向に沿う直線運動に変換して、前記押圧部材を前記載置ステージに対して接離させるようにして、原点保持を行っている。
【0004】
また、特許文献2には、一端が前記枠部材近傍まで延在し他端が前記鏡胴の外側に位置する固定レバーと、前記固定レバーの前記一端をほぼ前記光軸方向に沿って揺動自在に保持する軸部材と、前記固定レバーの前記一端に設けられ、前記枠部材に設けた係合凹部に脱離/係合させて前記枠部材の移動を係合規制する係合部材と、前記固定レバーの前記他端において、前記軸部材を揺動支点として前記固定レバーの前記一端をほぼ前記光軸方向に揺動させる固定レバー揺動手段と、を備え、前記鏡胴が被写体側に繰出されて前記鏡胴と前記枠部材との間に所定の空間が形成されるときに、前記固定レバー揺動手段の作動により前記固定レバーの前記一端をほぼ前記光軸方向に揺動させる構造が示されている。前記固定レバー揺動手段は、ステッピングモータ等のモータによる回転力をギヤにて減速し、ギヤ軸に固着されているカムを回転させることによって、前記固定レバーを光軸方向に揺動させるようにしている。この場合、前記撮像素子を強制的に原点保持させるために、モータ駆動により、円筒カムを回転させ、カムフォロワーを介して作動軸を光軸方向に沿って往復移動させ、固定レバーの先端に固着した係合部材を撮像素子の枠部材に設けた凹部に嵌合させ、さらにばねによって付勢押圧することによって、機械的に撮像素子を原点位置に係止保持している。
【0005】
さらに、特許文献3には、撮像素子を強制的に原点位置に保持するため、レンズ鏡胴の駆動源に加えて新たにステッピングモータ等のモータを用いることは、レンズ鏡胴の大型化とコストの増加を招くとして、撮像素子移動機構を係止する係止部材が、変倍および焦点調節の少なくとも一方を行うレンズ群を保持するレンズ保持枠または鏡筒の移動により、前記撮像素子移動機構を係止する係止位置と、係止が解除された解除位置に移動させられることが示されている。
上述した特許文献1、特許文献2および特許文献3に開示された技術のうち、特許文献3の技術は、構造上、部品配置上および精度上でレンズ群の駆動源に撮像素子の原点保持動作を負担させることが可能な構成である場合に限られている。これに対して、特許文献2の技術は、特許文献1の延長上にある技術である。
特許文献2に開示されたような原点保持方式においては、駆動源、例えばモータの性能によって、必要な力量に対する保持機構の駆動時間が決まってしまう。例えば、モータの回転出力をギヤ等を用いて減速し、その減速比によって発生力量を大きくするようにしても、保持のための駆動時間が長くなり、逆に減速比を小さくするようにすると、所望の駆動時間の条件を満たしても、保持のための力量が不足してしまい、最終的に、所望とする保持のための駆動時間および力量を得るためには、モータのサイズを変更せざるを得なかった。すなわち、この種の原点保持機構においては、原点保持動作のための駆動速度と駆動トルクとがトレードオフの関係にあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、手ぶれを検出しそれに対応して撮像素子を移動させて手ぶれを補正するタイプの手ぶれ補正装置における撮像素子を原点位置に強制的に保持させるための原点保持機構を備えた撮像装置においては、小型化のためにスペースにあったモータを選択せざるを得ない場合や、昨今の撮像素子の大型化により駆動質量が増加する場合には、上述したような駆動速度と駆動トルクとのトレードオフの関係により、トルクが足りなくなったり、駆動時間の条件を満たすことができなかったり、あるいはモータサイズの変更(大型化)により小型化が阻害されたりするなどの問題があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、撮像素子を移動させて手ぶれを補正する手ぶれ補正装置を有する撮像装置において、撮像素子を原点位置に強制的に保持させるための原点保持機構の駆動負荷を低減し、大きな駆動源を要することなく、所要の駆動時間および駆動力を得ることを可能とする撮像装置を提供することを目的としている。
本発明の請求項1の目的は、手ぶれを補正するために移動させられる撮像素子を原点位置に強制的に保持させるための原点保持機構が、大きな駆動源を要することなく、所要の駆動時間および駆動力を得ることを可能とする撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載した本発明に係る撮像装置は、上述した目的を達成するために、
レンズ鏡胴に保持収容される撮像レンズと、前記撮像レンズにより結像される被写体光学像を電子的画像データとしてとらえる撮像素子とを具備し、
手ぶれを手ぶれ検出センサで検出するとともに、前記撮像レンズにおける撮影光軸に沿う軸線をZ軸とし、このZ軸が垂直に交わるX−Y平面と前記Z軸との交点を原点として、前記X−Y平面内で移動自在に枠部材により保持される前記撮像素子を、前記手ぶれによる被写体の像の移動に追従させる手ぶれ補正装置を備え、該手ぶれ補正装置は、前記撮像素子の光学的な中心が前記原点と一致する原点位置に前記撮像素子を強制的に保持させる原点保持機構を有する撮像装置において、
前記原点保持機構は、
一端が前記枠部材近傍に位置し、他端が前記レンズ鏡胴の外側に延びる保持レバーと、
前記保持レバーの前記一端に設けられ、前記枠部材に設けた係合凹部に離脱自在に係合して前記枠部材の移動を規制する係合部材と、
前記保持レバーの前記他端近傍に設けられ前記保持レバーを前記Z軸に平行な方向に移動可能に保持する保持軸と、
前記係合部材を前記係合凹部に係合させるべく前記保持レバーを付勢する第1の付勢手段と、
前記保持レバーを前記係合部材の離脱方向に移動させる保持レバー操作部材と、
前記保持レバー操作部材を、前記第1の付勢手段による第1の付勢力に抗して逆向きに付勢する第2の付勢手段と、
係合時に、前記保持レバー操作部材を前記第2の付勢手段による第2の付勢力に抗して前記保持レバーから離間させる操作部材駆動手段と、
を具備し、
前記操作部材駆動手段により、原点保持時以外には、前記第2の付勢手段と協働して前記保持レバー操作部材を前記係合部材の離脱方向に移動させ、原点保持時にのみ、前記保持レバー操作部材を前記保持レバーから離間させて、前記第1の付勢手段による係合力を前記係合部材に印加させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、撮像素子を移動させて手ぶれを補正する手ぶれ補正装置を有する撮像装置において、撮像素子を原点位置に強制的に保持させるための原点保持機構の駆動負荷を低減し、大きな駆動源を要することなく、所要の駆動時間および駆動力を得ることが可能な撮像装置を提供することができる。
すなわち、本発明の請求項1の撮像装置によれば、
レンズ鏡胴に保持収容される撮像レンズと、前記撮像レンズにより結像される被写体光学像を電子的画像データとしてとらえる撮像素子とを具備し、
手ぶれを手ぶれ検出センサで検出するとともに、前記撮像レンズにおける撮影光軸に沿う軸線をZ軸とし、このZ軸が垂直に交わるX−Y平面と前記Z軸との交点を原点として、前記X−Y平面内で移動自在に枠部材により保持される前記撮像素子を、前記手ぶれによる被写体の像の移動に追従させる手ぶれ補正装置を備え、該手ぶれ補正装置は、前記撮像素子の光学的な中心が前記原点と一致する原点位置に前記撮像素子を強制的に保持させる原点保持機構を有する撮像装置において、
前記原点保持機構は、
一端が前記枠部材近傍に位置し、他端が前記レンズ鏡胴の外側に延びる保持レバーと、
前記保持レバーの前記一端に設けられ、前記枠部材に設けた係合凹部に離脱自在に係合して前記枠部材の移動を規制する係合部材と、
前記保持レバーの前記他端近傍に設けられ前記保持レバーを前記Z軸に平行な方向に移動可能に保持する保持軸と、
前記係合部材を前記係合凹部に係合させるべく前記保持レバーを付勢する第1の付勢手段と、
前記保持レバーを前記係合部材の離脱方向に移動させる保持レバー操作部材と、
前記保持レバー操作部材を、前記第1の付勢手段による第1の付勢力に抗して逆向きに付勢する第2の付勢手段と、
係合時に、前記保持レバー操作部材を前記第2の付勢手段による第2の付勢力に抗して前記保持レバーから離間させる操作部材駆動手段と、
を具備し、
前記操作部材駆動手段により、原点保持時以外には、前記第2の付勢手段と協働して前記保持レバー操作部材を前記係合部材の離脱方向に移動させ、原点保持時にのみ、前記保持レバー操作部材を前記保持レバーから離間させて、前記第1の付勢手段による係合力を前記係合部材に印加させることにより、
撮像素子を移動させて手ぶれを補正する手ぶれ補正装置を有する撮像装置において、撮像素子を原点位置に強制的に保持させるための原点保持機構の駆動負荷を低減し、該原点保持機構が、大きな駆動源を要することなく、所要の駆動時間および駆動力を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一つの実施の形態に係る撮像装置としてのデジタルカメラの外観を被写体側すなわち物体側から見た構成を模式的に示す正面図である。
【図2】図1のデジタルカメラにおけるレンズ鏡胴が沈胴位置に沈胴収納されている状態を模式的に示す側方から見た縦断面図である。
【図3】図1のデジタルカメラにおけるレンズ鏡胴部分の要部を像面側から見た模式的な斜視図である。
【図4】図3のレンズ鏡胴部分の要部を物体側から見た模式的な正面図である。
【図5】図3のレンズ鏡胴部分の要部を撮像素子の背面側から見た模式的な背面図である。
【図6】図1のデジタルカメラにおける原点保持機構の駆動部分の要部の構成を示す背面側から見た斜視図である。
【図7】図6の原点保持機構の保持レバー部分の要部の構成を示す斜視図である。
【図8】図6の原点保持機構の保持レバー操作部材としてのナット部材の要部の構成を示す斜視図である。
【図9】図1のデジタルカメラの原点保持機構の保持レバーを回転規制するための回転規制ばねの形状を示す背面図である。
【図10】図1のデジタルカメラの原点保持機構の保持レバーと枠部材との係合動作を説明するための要部の模式的な斜視図である。
【図11】図1のデジタルカメラの原点保持機構の保持レバーが係合を解き撮像素子を保持する枠部材を解放した状態を説明するための要部の模式的平面図である。
【図12】図1のデジタルカメラの原点保持機構の保持開始時に、保持レバーと撮像素子を保持する枠部材とが接触した状態を説明するための要部の平面図である。
【図13】図1のデジタルカメラの原点保持機構の保持状態において、保持レバー操作部材の駆動が停止し、保持レバーが撮像素子を保持する枠部材を係止している状態を説明するための要部の平面図である。
【図14】図1のデジタルカメラの原点保持機構の保持レバー操作部材の位置決めリセット動作を説明するための要部の平面図である。
【図15】図1のデジタルカメラにおける原点保持機構の保持レバー操作部材の変位に対する各部材における力量変化を説明するための特性図である。
【図16】従来のデジタルカメラにおける原点保持機構の保持レバー操作部材の変位に対する各部材における力量変化を説明するための特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態に係る撮像装置は、レンズ鏡胴に保持収容される撮像レンズと、前記撮像レンズにより結像される被写体光学像を電子的画像データとしてとらえる撮像素子とを具備し、手ぶれを手ぶれ検出センサで検出するとともに、前記撮像レンズにおける撮影光軸に沿う軸線をZ軸とし、このZ軸が垂直に交わるX−Y平面と前記Z軸との交点を原点として、前記X−Y平面内で移動自在に枠部材により保持される前記撮像素子を、前記手ぶれによる被写体の像の移動に追従させる手ぶれ補正装置を備え、該手ぶれ補正装置は、前記撮像素子の光学的な中心が前記原点と一致する原点位置に前記撮像素子を強制的に保持させる原点保持機構を有する撮像装置であって、次のような特徴を有している。
前記原点保持機構は、一端が前記枠部材近傍に位置し、他端が前記レンズ鏡胴の外側に延びる保持レバーと、前記保持レバーの前記一端に設けられ、前記枠部材に設けた係合凹部に離脱自在に係合して前記枠部材の移動を規制する係合部材と、前記保持レバーの前記他端近傍に設けられ前記保持レバーを前記Z軸に平行な方向に移動可能に保持する保持軸と、前記係合部材を前記係合凹部に係合させるべく前記保持レバーを付勢するスプリング等による第1の付勢手段と、前記保持レバーを前記係合部材の離脱方向に移動させる保持レバー操作部材と、前記保持レバー操作部材を、前記第1の付勢手段による第1の付勢力に抗して逆向きに付勢するスプリング等による第2の付勢手段と、モータ等の駆動源を用いて、係合時に、前記保持レバー操作部材を前記第2の付勢手段による第2の付勢力に抗して前記保持レバーから離間させる操作部材駆動手段と、を具備し、前記操作部材駆動手段により、原点保持時以外には、前記第2の付勢手段と協働して前記保持レバー操作部材を前記係合部材の離脱方向に移動させ、原点保持時にのみ、前記保持レバー操作部材を前記保持レバーから離間させて、前記第1の付勢手段による係合力を前記係合部材に印加させることを特徴としている(請求項1に対応する)。
【0011】
このような構成からなる撮像素子を移動させて手ぶれを補正する手ぶれ補正装置を有する撮像装置によれば、撮像素子を原点位置に強制的に保持させるための原点保持機構の駆動負荷を低減し、該原点保持機構が、大きな駆動源を要することなく、所要の駆動時間および駆動力を得ることが可能となる。
また、本発明に係る撮像装置において、前記原点保持機構の前記第1の付勢手段および前記第2の付勢手段は、それぞれ、前記保持軸上において、対向する第1の付勢力および第2の付勢力を、それぞれ、前記保持レバーおよび前記保持レバー操作部材に作用させることが望ましい(請求項2に対応する)。
このように構成することによって、特に、原点保持機構の駆動負荷を、原点保持時以外には、共通の軸上で相殺し、効率良く低減することが可能となる。
また、本発明に係る撮像装置における前記原点保持機構は、前記操作部材駆動手段、前記第1の付勢手段および第2の付勢手段の少なくとも一部の近傍に、前記保持レバー操作部材を前記移動方向にガイドするガイド軸をさらに含むことが望ましい(請求項3に対応する)。
このように構成することによって、特に、原点保持機構の動作を安定化し、原点保持時以外の駆動負荷を、効率良く低減することが可能となる。
【0012】
また、本発明に係る撮像装置における前記原点保持機構は、前記第1の付勢手段による付勢、前記保持レバー操作部材による操作および前記第2の付勢手段による付勢の全ての力点並びに作用点を、前記保持軸上に配置することが望ましい(請求項4に対応する)。
このように構成することによって、特に、原点保持機構の付勢および操作の力点および作用点を、共通の直線上に配置し、駆動負荷を一層効率良く低減することが可能となる。
また、本発明に係る撮像装置における前記原点保持機構は、前記枠部材の前記係合凹部に対する前記係合部材の離脱開放位置から係合保持開始位置までの前記第1の付勢手段と前記第2の付勢手段の変位内のそれぞれの力量f1とf2の関係は、
f1>f2およびf1<f2
のいずれか一方を満足することが望ましい(請求項5に対応する)。
このように構成することによって、特に、原点保持機構の変位内の相反する付勢力の合成力量の方向を一定不変として制御を容易にすることが可能となる。
また、本発明に係る撮像装置における前記第1の付勢手段と前記第2の付勢手段の変位内のそれぞれの最大力量F1とF2の関係は、
|F1−F2|≒|F2|
を満足することが望ましい(請求項6に対応する)。
このように構成することによって、特に、原点保持機構の変位内の相反する付勢力の駆動負荷にかかる力量を最小として駆動を容易にすることが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る撮像装置における前記原点保持機構における前記操作部材駆動手段は、モータによりリードスクリューを回転させ該リードスクリューに螺合する前記操作部材を駆動する手段、ボイスコイルモータにより前記操作部材を駆動する手段、ピエゾ素子により前記操作部材を駆動する手段およびソレノイドにより前記操作部材を駆動する手段のいずれか1つを含むことが望ましい(請求項7に対応する)。
このように構成することによって、特に、原点保持機構が、大きな駆動源を要することなく、所要の駆動時間および駆動力を得ることが可能となる。
以下、本発明の実施の形態に基づき、図面を参照して上述した特徴を有する本発明の撮像装置を詳細に説明する。
本発明の撮像装置の一つの実施の形態に係るデジタルカメラは、原点保持機構に、係合保持用の第1の付勢手段としての第1の圧縮ばねに対向して脱離解放用の第2の付勢手段としての第2の圧縮ばねを配し、保持開始時に、保持レバーとしての保持板と保持レバー操作部材としての作動ナットとを分離させることにより、第1の圧縮ばねにより、保持板に係合保持状態に必要な力量を作用させるようにしつつ、保持解放時には、当該時点で最大力量となる係合保持用の第1の圧縮ばねから前記作動ナットにかかる力量を、対向配置された脱離解放用の第2の圧縮ばねにより減じることによって、作動ナットを駆動する操作部材駆動手段の駆動源としてのモータの負荷トルクを小さくすることを特徴としている。
【0014】
図1〜図6は、本発明の撮像装置の一つの実施の形態に係るデジタルカメラの要部の構成を示している。図1は、この実施の形態に係るデジタルカメラの外観を被写体側、すなわち物体側から見た構成を模式的に示す正面図、図2は、当該デジタルカメラにおけるレンズ鏡胴が沈胴位置に沈胴収納されている状態を模式的に示す側方から見た縦断面図、図3は、当該デジタルカメラにおけるレンズ鏡胴部分の要部を像面側から見た模式的な斜視図、図4は、図3のレンズ鏡胴部分の要部を物体側から見た模式的な正面図、図5は、図3のレンズ鏡胴部分の要部を撮像素子の背面側から見た模式的な背面図、そして図6は、当該デジタルカメラにおける原点保持機構の駆動部分の要部の構成を示す背面側から見た斜視図である。
図1〜図6に示すデジタルカメラ1は、カメラボディ2、撮像レンズ系3、レンズ鏡胴4、レンズ鏡胴収納筒部5、ベース6、撮像素子7、撮像素子保持枠8、手ぶれ補正装置9、原点保持機構10、スライド枠11、スライド保持枠12、保持枠ガイド棒13a、13b、スライド枠ガイド棒14a、14b、駆動磁石15a、15b、駆動コイル16a、16b、第1の圧縮ばね21、第2の圧縮ばね22、ステッピングモータ23、軸受け部材24、ガイド軸25、保持レバー31、保持軸32、副軸33、保持ピン34、保持レバー操作部材としての作動ナット部材35、回転規制ばね36およびロックナット37を具備している。
【0015】
さらに、ベース6に関連して、ベース軸受け部6a、副軸当接面6b、ばねホルダ部6cおよび位置決めピン6dを、撮像素子保持枠8に関連して、係合凹部としての保持枠凹部8aを、ステッピングモータ23に関連して、リードスクリュー23aおよびフランジ状部23bを、保持レバー31に関連して、ばね当接面31aを、保持軸32に関連して、フランジ面32aおよびナット当接面32bを、保持ピン34に関連して、係合部材としての保持ピン先端部34aを、そして保持レバー操作部材としての作動ナット部材35に関連して、リードスクリュー雌ねじ部35a、保持軸当接面35b、ガイド軸受け部35cおよび保持軸孔35dを、それぞれ有している。
図1〜図6に示すこの実施の形態に係るデジタルカメラ1は、撮像素子7を光軸方向に垂直な面内で移動させて手ぶれを補正する手ぶれ補正装置を含んでいる。
図1における前方正面、つまり被写体側から見た外観を示すように、このデジタルカメラ1は、カメラボディ2の前面側に各々1つ以上のレンズを含んで構成される1つ以上のレンズ群からなる撮像レンズ系3を保持収容するレンズ鏡胴4が設けられており、このレンズ鏡胴4は、所定の沈胴位置と所定の撮像位置(撮像待機位置も含む)との間で撮像レンズ系3の光軸(以下、単に「光軸」と称する)に沿って、レンズ群毎に必要に応じて移動させることを可能として構成している。
【0016】
例えば、撮像レンズ系3は、各々1つ以上のレンズを有して構成される固定レンズ系、ズームレンズ系およびフォーカスレンズ系等を構成する1つ以上のレンズ群を備えてズームレンズとして構成されていてもよい。固定レンズ系は、カメラボディ2と一体的に固定され、ズーミングやフォーカシング等に伴って移動しないレンズ群であり、ズームレンズ系は、ズーミングに伴って移動させて、撮像レンズ系3の全レンズ系の焦点距離を変化させるためのレンズ群であり、そしてフォーカスレンズ系は、ピント調整、つまりフォーカシングに伴って移動させ、撮像素子7の受光面上に被写体光学像を結像させるためのレンズ群である。また、レンズ鏡胴4には、通常の場合、撮像レンズ系3以外にも、撮像光路を開閉するためのシャッタユニットや撮像光路の開口径を調整するための絞りユニット等が設けられている。
図2に示すように、レンズ鏡胴4は、レンズ鏡胴収納筒部5の内部の沈胴収納位置に収納される。すなわち、沈胴収納状態では、レンズ鏡胴4は、少なくともその一部が、レンズ鏡胴収納筒部5の内部に収納される。レンズ鏡胴収納筒部5は、カメラボディ2の内部に配設されたベース6の前面側、つまり被写体側に、ベース6と一体的に設けられている。レンズ鏡胴収納筒部5の内周面に形成されたヘリコイド状のカム溝(明確には図示されていない)には、レンズ鏡胴4の外周面に前記カム溝に対応して形成されたほぼヘリコイド状のカムフォロア(やはり、明確には図示されていない)が係合しており、レンズ鏡胴4を駆動するレンズ鏡胴駆動ユニット(やはり図示されていない)による回転駆動力によって、レンズ鏡胴4が所定の沈胴位置と所定の撮像待機位置および撮像位置との間で図示光軸方向(矢印Z方向)に沿って移動する。
【0017】
図3は、レンズ鏡胴収納部近傍の部分を斜め背面側、すなわち斜め像面側方向から見た様子を示しており、図4は、物体側、すなわち前面側から見た様子を示しており、そして図5は、図4に示した部分を、背面側、すなわち像面側から見た様子を示していて、これら図3〜図5においては、レンズ鏡胴収納筒部5の内部に設けられるレンズ鏡筒4は省略して示している。
図3に示すように、ベース6上に、手ぶれ補正装置9および原点保持機構10が配置される。また、図4に示すように、ベース6の表面上には、レンズ鏡胴収納筒部5内の中央部に位置させて、CMOS固体撮像素子およびCCD固体撮像素子等の撮像素子7を保持する枠部材としての撮像素子保持枠8と、この撮像素子保持枠8を介して撮像素子7を光軸が垂直に交わる面内で移動させて手ぶれを補正するための手ぶれ補正装置9と、撮像素子保持枠8の光軸が垂直に交わる面内での移動を機械的に規制して原点位置に保持する原点保持機構10とが配設されている。
ここで、手ぶれ補正装置9の構成について、主として図4を参照してさらに具体的に説明する。
【0018】
手ぶれ補正装置9においては、スライド枠11により撮像素子保持枠8をスライド移動自在に保持し、このスライド枠11は、ベース6上のレンズ鏡胴収納筒部5の内部に設けたスライド保持枠12の内側にスライド移動自在に保持されている。撮像素子保持枠8には、スライド枠11にY軸方向(図4の上下方向)に沿って互いに平行に配設された一対のガイド棒13aおよび13bがスライド可能に挿通され、これら一対のガイド棒13aおよび13bを介してスライド枠11によって、Y軸方向にスライド移動自在として保持されている。そして、スライド枠11には、スライド保持枠12にX軸方向(図4の左右方向)に沿って互いに平行に配設された一対のガイド棒14aおよび14bがスライド可能に挿通され、これら一対のガイド棒14aおよび14bを介してスライド保持枠12によって、X軸方向にスライド移動自在として保持されている。
スライド保持枠12には、スライド枠11のY軸方向端辺およびX軸方向端辺にそれぞれ沿って隣接するようにして、スライド保持枠12の表面側に、第1および第2の磁石15aおよび15bがそれぞれ配置されている。また、磁石15aおよび15bの背面側には、各々に対峙して第1および第2のコイル16aおよび16bがそれぞれ配置されている。第1のコイル16aおよび第2のコイル16bは、撮像素子保持枠8に突出して設けた突出部(図示されていない)に固定されている。
【0019】
第1および第2のコイル16aおよび16bへの印加電流の制御により、第1および第2のコイル16aおよび16bと、第1および第2の磁石15aおよび15bとの間に発生する磁界による吸引反発によって、撮像素子保持枠8をY軸方向と、スライド枠11を伴ってX軸方向にそれぞれ移動させることができる。なお、撮像素子保持枠8およびスライド枠11には、それぞれ該撮像素子保持枠8およびスライド枠11の位置を検出するためのホール素子等を用いた位置検出素子(図示されていない)が設けられている。
このような手ぶれ補正装置9は、撮影時に手ぶれが生じた場合に、カメラボディ2内のジャイロセンサ等の手ぶれセンサ(図示されていない)により検出される手ぶれ検出情報に基づいて、第1および第2のコイル16aおよび16bへの印加電流を制御する。このような制御により、第1のコイル16aと第1の磁石15aとの間および第2のコイル16bと第2の磁石15bとの間に、それぞれ磁界による吸引反発を発生させる。これらの磁界による吸引反発によって、撮像素子保持枠8をY軸方向に、スライド枠11をX軸方向にそれぞれ各方向の手ぶれを相殺するように移動させる。以上のようにして、手ぶれ補正を行う。
【0020】
図6には、原点保持機構10の駆動部分の詳細を示している。
ベース6には、ステッピングモータ23、軸受け部材24およびガイド軸25が固定されている。ステッピングモータ23は、出力回転軸に一体的にリードスクリュー23aを設けたものである。このステッピングモータ23によって回転駆動されるリードスクリュー23aに螺合する作動ナット部材35は、ガイド軸25が摺動可能に挿通嵌合しており、リードスクリュー23aおよびガイド軸25に沿って光軸と平行な方向にスライド移動可能である。
保持軸32は、ベース6の軸受け部6aと軸受け部材24を摺動可能に貫通しており、これらによって、所定の位置において光軸と平行な方向にスライド移動し得るようにして位置決めされている。ベース6の軸受け部6aと保持軸32のフランジ面32aとによって第1の圧縮ばね21を挟み込んでおり、第1の圧縮ばね21によって、原点保持の動作方向となる物体方向(Z軸方向)に付勢力を発生させることにより、保持軸32により作動ナット部材35を物体方向に押圧する方向に付勢する。また、作動ナット部材35と軸受け部材24との間に第2の圧縮ばね22が挟みこまれており、作動ナット部材35を像面方向に押圧する方向に付勢する。すなわち、作動ナット部材35と保持軸32のフランジ面32aは、互いに対向配置された第1の圧縮ばね21と第2の圧縮ばね22によって挟み込まれて係合し、ステッピングモータ23によって回転駆動されるリードスクリュー23aを介して駆動される。ここで、第1の圧縮ばね21と第2の圧縮ばね22とは、変位に対する力量変化を小さくすることが望ましい。すなわち、図6のような圧縮コイルばねの場合は、ばね定数kを極力小さくすればよい。
【0021】
図7には、原点保持機構10の保持部分の詳細を示している。
保持レバー31には、副軸33と、係合部材としての保持ピン34とが、垂直に立設されて一体的に固着されている。保持軸32に第1の圧縮ばね21を取り付けた後、保持レバー31をロックナット37で保持軸32に締結固定することにより、保持軸32を保持レバー31に垂直に一体的に固着する。保持軸32は、ベース軸受け部6aと軸受け部材24に摺動可能に嵌合しており、一体化された保持レバー31と保持軸32は、ベース6および軸受け部材24に対して光軸と平行な方向にスライド移動可能となっている。
図8には、保持レバー操作部材としての作動ナット部材35の詳細な形状を示している。
作動ナット部材35には、リードスクリュー雌ねじ部35a、保持軸当接面35b、ガイド軸受け部35cおよび保持軸孔35dがそれぞれ形成されている。リードスクリュー雌ねじ部35aは、ステッピングモータ23により回転駆動されるリードスクリュー23aに螺合する。ガイド軸受け部35cには、ベース6に固着されたガイド軸25を挿通嵌合しており、作動ナット部材35のスライド移動方向を規制する。作動ナット部材35の保持軸当接面35bと保持軸32のナット当接面32bとが、保持軸32のフランジ面32aを押圧する第1の圧縮ばね21によって、保持レバー31等の保持部分がガイド軸25によるガイド方向に沿って付勢されている。
【0022】
この場合、リードスクリュー雌ねじ部35aとガイド軸受け部35cとが近接して配置されることが望ましいが、スペース等の条件によって、そのような配置が困難である場合には、ガイド軸受け部35cを保持軸穴35dに近接させて配置してもよい。また、ガイド軸受け部35cの長さは、長くとれるようにすることが望ましい。
図9には、原点保持機構10の保持レバー31を回転規制させるための回転規制ばね36を詳細に示している。
回転規制ばね36は、ベース6のばねホルダ部6cおよび位置決めピン6dによって位置決めされて設けられる。この回転規制ばね36は、保持レバー31のばね当接面31aを押圧付勢する。回転規制ばね36により付勢された保持レバー31は、副軸33がベース6の副軸当接面6bに、そして保持軸32がベース6のベース軸受け部6aに、それぞれ当接しており、これら2箇所でベース6を押圧することにより、保持レバー31の回転が規制され、保持レバー31の回転位置が決定保持されている。
【0023】
図10には、原点保持機構10による枠部材としての撮像素子保持枠8の係合保持を詳細に示している。
図6に示したような駆動部分によって駆動される原点保持機構10の図7に示す保持レバー31には、係合部材としての保持ピン34が突設されており、保持ピン34の先端(突出端)は、球面状(半球)の保持ピン先端部34aとして形成されている。このような保持ピン34に対して、撮像素子保持枠8の係合凹部としての保持枠凹部8aは、例えば四角錘状のすり鉢形状に形成されており、押圧保持状態において保持ピン先端部34aの中心位置に、保持枠凹部8aの四角錘すり鉢状の中心が位置するように作動し、撮像素子保持枠8が原点位置にセンタリングされる。
以下、図11〜図14を参照して、原点保持機構10の動作をさらに詳細に説明する。図11は、原点保持機構10の保持レバー31が係合を解き撮像素子7を保持する撮像素子保持枠8を解放した状態、図12は、保持動作の開始時に、保持レバー31と撮像素子保持枠8とが接触した状態、図13は、保持状態において、保持レバー操作部材としての作動ナット部材35の駆動が停止し、保持レバー31が撮像素子保持枠8を係止している状態、そして図14は、作動ナット部材35の位置決めリセット動作、のそれぞれにおける要部の状態を示す模式図である。
【0024】
まず、原点保持機構10による撮像素子保持枠8の係合が解放された状態を図11に示している。
原点保持機構10による撮像素子保持枠8の係合保持は、保持ピン34の先端の保持ピン先端部34aが保持枠凹部8aに係合し、さらに第1の圧縮ばね21による付勢力により保持軸32のフランジ面32a(図7参照)が押圧され、保持軸32およびそれと一体化されている保持レバー31を介して保持ピン34によって撮像素子保持枠8を押圧することにより行われる。
それに対し、保持の解除は、リードスクリュー付きのステッピングモータ23により、光軸に平行に配置されたリードスクリュー23aを回転駆動して、リードスクリュー23aに螺合する作動ナット部材35を、保持軸32の光軸方向物体側に移動させることにより、保持軸32およびそれと一体化されている保持レバー31を光軸方向物体側に移動させて、図11に示すように、保持レバー31に固着された保持ピン34を撮像素子保持枠8の保持枠凹部8aから離脱されることにより行われる。
【0025】
作動ナット部材35には、やはり光軸に平行に配置された倒れ防止用のガイド軸25が挿通されていて、作動時に傾きが生じることがないようにガイド軸25によって規制されている。第2の圧縮ばね22は、作動ナット部材35および保持軸32のフランジ面32aとナット当接面32bとの間のフランジ部を挟んで、第1の圧縮ばね21に対向して配置され、作動ナット部材35を保持解除方向に常時付勢している。
原点保持機構10による撮像素子保持枠8の係合が解放された図11の状態において、手ぶれ補正装置9による手ぶれ補正動作が行われる。
原点保持機構10による撮像素子保持枠8の係合が解放された図11の状態から、原点保持機構10による撮像素子7の強制的な原点保持動作が開始されて、保持ピン34が撮像素子保持枠8の保持枠凹部8aに接触した、保持開始状態を図12に示している。
すなわち、図11の原点保持の開放状態から、ステッピングモータ23にてリードスクリュー23aを回転駆動することにより、作動ナット部材35を、ガイド軸25に沿って光軸に平行に物体側に向かって移動させる。作動ナット部材35は、光軸に平行に物体側に駆動されると、第1の圧縮ばね21によって付勢された保持軸32を係合しながら移動して、その変位に従って第1の圧縮ばね21を開放しつつ、第2の圧縮ばね22を圧縮する。この移動に際しての作動ナット部材35の駆動負荷は、第2の圧縮ばね22の付勢力量が第1の圧縮ばね21の付勢力量によって減じられている。
【0026】
図12の保持開始状態に達すると、保持ピン34が撮像素子保持枠8の保持枠凹部8aに係合する。第1の圧縮ばね21によって保持軸32と作動ナット部材35に印加されていた付勢力は、保持レバー31および保持ピン先端部34aを介し撮像素子保持枠8の保持枠凹部8aを押圧する。ほぼこの状態で、図11の保持解除状態から係合していた保持軸32と作動ナット部材35は分離を開始し、以後作動ナット部材35には、第2の圧縮ばね22による付勢力量のみが作用する。
保持状態が進み、充分な保持状態となってステッピングモータ23が停止する状態を図13に示している。
原点保持機構10における作動ナット部材35の移動量は、各部品の状態変化を含んで撮像素子保持枠8の保持枠凹部8aに保持ピン34aを確実に係合させ、撮像素子7を確実に原点位置に保持させるため、公差等を考慮し、図12の保持開始状態より、充分に変位を進ませた位置に達するように設定されており、この設定位置において作動ナット部材35を停止させる。
【0027】
この時、保持軸32は、それと一体的に動作する保持ピン先端部34aが保持枠凹部8aに係合しているため、係合位置以降は移動しない。このため、図12の保持開始状態以降は、それ以前の解放状態では係合していた保持軸32と作動ナット部材35は、分離して離間した状態となっている。したがって、保持軸32および保持レバー31は、第1の圧縮ばね21によってのみ付勢されており、保持ピン先端部34aは、第1の圧縮ばね21による付勢力のみで、保持枠凹部8aを押圧しており、作動ナット部材35は、第2の圧縮ばね22のみの付勢力を受けている。
図14には、原点保持機構10の光軸方向についての位置決めリセット動作状態を示している。
このリセット動作は、原点保持機構10の作動ナット部材35の原点を決めるための動作であり、電源投入時やエラー復旧時等に行われる。係合保持状態が確立してステッピングモータ23が停止した図13の状態より、さらにステッピングモータ23を動作させて、作動ナット部材35の光軸方向物体側への変位をさらに進ませ、作動ナット部材35をステッピングモータ23の本体に一体的に設けられたフランジ状部23bに当接させる。
【0028】
この場合、作動ナット部材35を当接させる箇所は、フランジ状部23bに限らず、ベース6と一体的に位置規定される任意の箇所でかまわない。この状態で、所定のパルス数を設定することにより、作動ナット部材35の基準位置を設定する。なお、ここでは、基準位置は、図13のモータ停止位置側にて設定する場合を説明したが、図11の保持解除位置側にて設定するようにしても良い。
また、上述したようなリセット動作を行わず、フォトインタラプタ(図示していない)等の位置センサを用いて、図13のモータ停止位置または図11の保持解除位置での位置検出を行って、作動ナット部材35の位置決めを行うようにしても良い。
次に、上述した本発明の実施の形態に係る原点保持機構10における各部の力量変化および比較のための従来の原点保持機構における各部の力量変化について、図15および図16を参照して詳細に説明する。図15には、原点保持機構10の保持レバー31および操作部材である作動ナット部材35の変位に対する各部材における力量変化を示しており、そして、図16には、従来の原点保持機構における保持レバーおよび操作部材の変位に対する各部材における力量変化を示している。
【0029】
図15においては、原点強制保持機構の第1の圧縮ばね21および第2の圧縮ばね22の付勢力の力量と、保持軸32および作動ナット部材35とに及ぼされる力量との変化を、作動ナット部材35の移動変位に関連して具体的に示している。
原点保持機構10における撮像素子保持枠8の係合保持時に、保持軸32と一体化されている保持レバー31が撮像素子保持枠8を押圧する力量を、例えば22gとする。図15では、図示縦軸を第1の圧縮ばね21による付勢力、第2の圧縮ばね22による付勢力、保持軸32が受ける力および作動ナット部材35にかかる各力の力量(gf)とし、図示横軸を変位(mm)としている。動作位相は、作動ナット部材35の位置に基づき、保持解放点a(図11に対応)を変位0(mm)としており、各力量は、保持方向に働く力量を正としている。
保持開始点b(図12に対応)では、例えば変位0.68(mm)にて、保持軸32と一体化されている保持レバー31に固着されている保持ピン34が、撮像素子保持枠8の保持枠凹部8aに係合し、保持軸32と作動ナット部材35との分離が開始される。そのため、b点にて保持軸32に印加される力は、第1の圧縮ばね21による付勢力量となり、作動ナット部材35が受ける力は、第2の圧縮ばね22による付勢力量となる。
【0030】
保持軸32と作動ナット部材35とが分離した後、作動ナット部材35は、余裕ぶんを見込んだ停止点c(図13に対応する)、例えば変位1.26(mm)まで移動する。
保持解放時のa点において作動ナット部材35にかかる力量は、保持開始時のb点において撮像素子保持枠8の保持に、例えば22(g)を必要とする場合、それよりも大きな力量、例えば、27(g)が必要となる。そこで、第1の圧縮ばね21は、必要な力量27(g)にて保持軸32を付勢している。
第2の圧縮ばね22は、第1の圧縮ばね21に対向して配設されており、保持開始時のa点において、保持方向、つまり第1の圧縮ばね21の付勢方向、とは逆方向に例えば8(g)の力量で作動ナット部材35を付勢している。
a点において、作動ナット部材35における力量は、第1の圧縮ばね21により付勢されると同時に、第2の圧縮ばね22により逆向きに作用する力で付勢されるため、作動ナット部材35は、見かけ上、両付勢力の差の力量19(g)にて保持方向に付勢される。
動作位相が保持開始位置のb点の変位、例えば0.68(mm)に達したときに、第1の圧縮ばね21の付勢力量が、保持軸32と一体化されている保持ピン34を介して、撮像素子保持枠8を付勢し、これが全力量となる。
【0031】
作動ナット部材35が、b点〜c点に位置する範囲においては、保持ピン34と撮像素子保持枠8との係合により、保持軸32は変位しなくなるため、保持軸32が受ける力量は、b点における力量を保ち続ける。このため、b点〜c点の範囲では、第1の圧縮ばね21による付勢力量と保持軸32が受ける力量は、グラフが重なり22(g)を保つ。
保持軸32と離間した作動ナット部材35は、第2の圧縮ばね22により逆(負)方向に、例えば12(g)の力量にて付勢されていた保持開始点bよりも、さらに圧縮されチャージされた第2の圧縮ばね22による力量にて、引き続き付勢されている。作動ナット部材35は、上述した余裕ぶん移動して、所定の停止位置にて停止する。第2の圧縮ばね22は、変位が、例えば1.26(mm)に達した時、最大力量15(g)にて作動ナット部材35を付勢する。
第2の圧縮ばね22により作動ナット部材35に逆方向にかかる力量が、保持解放時(a点)における第1の圧縮ばね21による力量を超えなければ、ステッピングモータ23の必要トルクを、a点における合成力量にて設定することができる。作動ナット部材35にかかる最大力量は、第1の圧縮ばね21と第2の圧縮ばね22によって保持開放点aにおいて付勢される19(g)となる。
【0032】
図16には、従来の構成により第2の圧縮ばね22がない場合における原点保持機構の第1の圧縮ばね21の付勢力の力量と、この第1の圧縮ばね21によって保持軸32および作動ナット部材35とに及ぼされる力量との変化を、作動ナット部材35の移動変位に関連して具体的に示している。ここでは、第2の圧縮ばね22による付勢保持および分離機構を持たない原点保持機構の力量変化についても説明する。
図15の場合のように、保持開始点bにおける撮像素子保持枠8を保持するための力量として22(g)を必要とする場合、保持開放点aにおいて作動ナット部材35にかかる力量は、b点におけるよりも大きな力量、例えば、27(g)必要となる。a点において作動ナット部材35にかかる力量は、第2の圧縮ばね22による逆向きに作用する力が存在しないため、第1の圧縮ばね21による付勢力27(g)が、そのままかかる。
動作位相が保持開始のb点の変位、例えば0.68(mm)に達したときに、第1の圧縮ばね21の力量が、例えば22(g)であるとすると、作動ナット部材35を付勢している力量がそのまま撮像素子保持枠8を押圧する力量となるため、撮像素子保持枠8を付勢する力量も22(g)となる。このため、第1の圧縮ばね21が作動ナット部材35を付勢する力量は0(g)となる。
【0033】
b点以降においては、第1の圧縮ばね21と保持軸32にかかる力量は、保持ピン34が撮像素子保持枠8に係合するために変化しなくなる。すなわち、作動ナット部材35が、b点〜c点の範囲では、保持軸32は保持枠8と係合して変位しなくなるため、b点における力量を保ち続ける。このためb点〜c点の範囲で第1の圧縮ばね21の力量と保持軸32が受ける力量は、グラフが重なり22(g)を保つ。したがって、第1の圧縮ばね21と保持軸32が受ける力量はa点からc点まで等しくなる。
また、作動ナット部材35にかかる最大力量は、圧縮ばね21の最大力量である27(g)であるため、図15に示したように、保持軸32と作動ナット部材35を、第1の圧縮ばね21および第2の圧縮ばね22を用いてそれぞれ逆方向に付勢し、保持状態にて作動ナット部材35により第2の圧縮ばね22を分離させる機構のほうが、ステッピングモータ23の負荷を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 デジタルカメラ
2 カメラボディ
3 撮像レンズ系
4 レンズ鏡胴
5 レンズ鏡胴収納筒部
6 ベース
6a ベース軸受け部
6b 副軸当接面
6c ばねホルダ部
6d 位置決めピン
7 撮像素子
8 撮像素子保持枠
8a 保持枠凹部
9 手ぶれ補正装置
10 原点保持機構
11 スライド枠
12 スライド保持枠
13a,13b 保持枠ガイド棒
14a,14b スライド枠ガイド棒
15a,15b 駆動磁石
16a,16b 駆動コイル
21 第1の圧縮ばね
22 第2の圧縮ばね
23 ステッピングモータ
23a リードスクリュー
23b フランジ状部
24 軸受け部材
25 ガイド軸
31 保持レバー
31a ばね当接面
32 保持軸
32a フランジ面
32b ナット当接面
33 副軸
34 保持ピン
34a 保持ピン先端部
35 作動ナット部材
35a リードスクリュー雌ねじ部
35b 保持軸当接面
35c ガイド軸受け部
35d 保持軸孔
36 回転規制ばね
37 ロックナット
【先行技術文献】
【特許文献】
【0035】
【特許文献1】特開2007−102062号公報
【特許文献2】特開2008−262151号公報
【特許文献3】特開2010−8658号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ鏡胴に保持収容される撮像レンズと、前記撮像レンズにより結像される被写体光学像を電子的画像データとしてとらえる撮像素子とを具備し、
手ぶれを手ぶれ検出センサで検出するとともに、前記撮像レンズにおける撮影光軸に沿う軸線をZ軸とし、このZ軸が垂直に交わるX−Y平面と前記Z軸との交点を原点として、前記X−Y平面内で移動自在に枠部材により保持される前記撮像素子を、前記手ぶれによる被写体の像の移動に追従させる手ぶれ補正装置を備え、該手ぶれ補正装置は、前記撮像素子の光学的な中心が前記原点と一致する原点位置に前記撮像素子を強制的に保持させる原点保持機構を有する撮像装置において、
前記原点保持機構は、
一端が前記枠部材近傍に位置し、他端が前記レンズ鏡胴の外側に延びる保持レバーと、
前記保持レバーの前記一端に設けられ、前記枠部材に設けた係合凹部に離脱自在に係合して前記枠部材の移動を規制する係合部材と、
前記保持レバーの前記他端近傍に設けられ前記保持レバーを前記Z軸に平行な方向に移動可能に保持する保持軸と、
前記係合部材を前記係合凹部に係合させるべく前記保持レバーを付勢する第1の付勢手段と、
前記保持レバーを前記係合部材の離脱方向に移動させる保持レバー操作部材と、
前記保持レバー操作部材を、前記第1の付勢手段による第1の付勢力に抗して逆向きに付勢する第2の付勢手段と、
係合時に、前記保持レバー操作部材を前記第2の付勢手段による第2の付勢力に抗して前記保持レバーから離間させる操作部材駆動手段と、
を具備し、
前記操作部材駆動手段により、原点保持時以外には、前記第2の付勢手段と協働して前記保持レバー操作部材を前記係合部材の離脱方向に移動させ、原点保持時にのみ、前記保持レバー操作部材を前記保持レバーから離間させて、前記第1の付勢手段による係合力を前記係合部材に印加させることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記原点保持機構の前記第1の付勢手段および前記第2の付勢手段は、それぞれ、前記保持軸上において、対向する第1の付勢力および第2の付勢力を、それぞれ、前記保持レバーおよび前記保持レバー操作部材に作用させることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記原点保持機構は、前記操作部材駆動手段、前記第1の付勢手段および第2の付勢手段の少なくとも一部の近傍に、前記保持レバー操作部材を前記移動方向にガイドするガイド軸をさらに含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記原点保持機構は、前記第1の付勢手段による付勢、前記保持レバー操作部材による操作および前記第2の付勢手段による付勢の全ての力点並びに作用点を、前記保持軸上に配置することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記原点保持機構は、前記枠部材の前記係合凹部に対する前記係合部材の離脱開放位置から係合保持開始位置までの前記第1の付勢手段と前記第2の付勢手段の変位内のそれぞれの力量f1とf2の関係は、
f1>f2およびf1<f2
のいずれか一方を満足することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記第1の付勢手段と前記第2の付勢手段の変位内のそれぞれの最大力量F1とF2の関係は、
|F1−F2|≒|F2|
を満足することを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記原点保持機構における前記操作部材駆動手段は、モータによりリードスクリューを回転させ該リードスクリューに螺合する前記操作部材を駆動する手段、ボイスコイルモータにより前記操作部材を駆動する手段、ピエゾ素子により前記操作部材を駆動する手段およびソレノイドにより前記操作部材を駆動する手段のいずれかを含むことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−7798(P2013−7798A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138961(P2011−138961)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】