説明

撮像記録装置

【課題】被写体が目的のポイントに来た時のみ録画が開始され、また、被写体が目的のポイントから離れた時には、録画を停止または待機状態とする。
【解決手段】まず、ユーザが、目的とする被写体の位置を予め予測して、フォーカス設定手段2を操作してカメラ4のフォーカスを手動設定する。そしてユーザは、フォーカス値メモリ手段3を操作して、フォーカスレンズ位置検出部9で検出したカメラ4のフォーカスレンズ位置を、第2メモリ13に記憶させる。そして演算処理部12は、動き検出部8で撮像画像の動きが検出された際に、その時点でフォーカスレンズ位置検出部9によって検出された被写体までのフォーカス値と、第2メモリ13に記憶しているフォーカス値との比較演算を行う。画像書き込み部14は、演算処理部12における比較演算の結果、これらが一致すれば、画像処理部5から出力されるカメラ4による撮像画像を記録媒体15に録画させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像記録装置、より詳細には被写体の動きを検出し、被写体の撮像画像の録画を自動的に開始する撮像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被写体の動きを検出し、被写体の撮像画像の録画を自動的に開始する撮像記録装置が知られている。例えば、特許文献1では、被写体を撮像した画像データを画像メモリに順次記憶し、その画像メモリに記憶された画像データを順次読み出して、画像データ同士の誤差成分を抽出して演算することにより被写体の動きを検出し、その検出結果に応じて画像メモリから読み出された画像データを選択的に記録する監視撮影装置が開示されている。また、この監視撮影装置は、上述の誤差成分の値の大きさから被写体の写る領域を移動させ、装置の撮影画角を制御する手段を備えている。
【特許文献1】特開2002−34031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述したような技術では、被写体と撮像装置との距離に係わらず画角内に被写体の動きがあった場合、被写体の記録を開始し、被写体が画枠の中央にくるように装置の画角の制御(ズーム、パン、チルト)を行うなどの動作を行ってしまう。
また、特定すべき被写体が画角内に入ってこなくても、例えば背景の木などが風等で揺れた場合においても、撮像装置は被写体が動いたと判断し、記録を開始し、上述のような装置の画角等の制御動作をしてしまうといった問題があった。
【0004】
このような動作は、監視装置に限定すれば大きな問題とはならないが、使用する目的によっては、そのユーザにとって撮像記録装置の誤動作となる。このようなユーザにとって望ましくない使用目的としては、例えば、バードウォッチングのために撮像記録を行う場合などが該当する。
【0005】
バードウォッチングで撮像記録を行う場合、例えば、ユーザは、狙いを定めたポイントにカメラの焦点を合わせて、そのポイントに鳥が来るのを気長に待つ。このようなポイントとしては、森の中、木の枝などが多い。また、撮像開始から連続して撮像記録を続行してしまうと記録媒体の容量を無駄に消耗し、鳥がポイントに入って来た時に、記録残容量がなくなっていたなど笑えないケースも多々ある。
【0006】
そこで被写体である鳥がポイントに入ってきた時のみに、撮像記録装置の記録を開始することが好ましい。このような場合、上記従来の撮像記録装置をバードウォッチングで使用すると、被写体である鳥がポイントに入ってくるまでの待ち時間が長いので、その間に、例えば、僅かの風で木の枝が揺れ撮像記録装置の記録が開始されてしまうというような場合が発生し、ユーザは撮像記録装置の誤動作と判断してしまうという問題が生じる。
【0007】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、被写体が目的のポイントに来た時のみ録画が開始され、また、被写体が目的のポイントから離れた時には、録画を停止または待機状態とすることによって、記録媒体の記録可能容量を効率よく使用することができ、省電力化を実現できる撮像記録装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、第1の技術手段は、被写体の撮像を行う撮像手段と、撮像手段のフォーカスを調整するレンズの位置を検出するフォーカスレンズ位置検出手段と、フォーカスレンズ位置検出手段による検出結果を用いて撮像手段が撮像する被写体に対するフォーカスの自動調整を行うフォーカス自動調整手段と、撮像手段により撮像した画像を録画する録画手段とを有する撮像記録装置において、被写体の予測位置に合わせたフォーカス位置における被写体までの距離の値を記憶するフォーカス値記憶手段と、被写体の動きを検出する動き検出手段と、動き検出手段の検出結果に従って、フォーカス値記憶手段に記憶させた値と、フォーカスレンズ位置検出手段による検出値とを比較する比較手段とを備え、比較手段の比較結果に応じて、録画手段に対する画像の録画を実行することを特徴としたものである。
【0009】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、比較手段により比較する値が、互いに一致した場合前記録画手段に対する録画を開始することを特徴としたものである。
【0010】
第3の技術手段は、第2の技術手段において、録画手段に対する録画が開始された後、比較手段により比較する値が互いに一致しなくなった場合、録画手段に対する録画を停止または一時停止することを特徴としたものである。
【0011】
第4の技術手段は、第3の技術手段において、録画手段に対する録画が開始された後、比較手段により比較する値が互いに一致しなくなった場合、予め設定された時間を経過した後に、録画手段に対する記録を停止または一時停止することを特徴としたものである。
【0012】
第5の技術手段は、第2ないし第4のいずれか1の技術手段において、比較手段により比較する値の差が、予め定めた所定の範囲にある場合に、比較値が一致したものとみなすことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の撮像記録装置によれば、被写体が目的のポイントに来た時のみ録画が開始され、また、被写体が目的のポイントから離れた時には、録画を停止または待機状態とすることによって、記録媒体の記録可能容量を効率よく使用することができ、さらに省電力化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明による撮像記録装置の一実施形態を説明するためのハードウエアの構成を示すブロック図である。図1において、撮像記録装置1は、レンズ群,フォーカス調整機構,およびアイリス調整機構を含むカメラ4と、画像処理部5と、表示部(モニタ)6と、第1メモリ7と、動き検出部8と、フォーカスレンズ位置検出部9と、フォーカス(レンズ)制御部10と、CPU11とフォーカス値の比較するための演算処理部12と、第2メモリ13と、画像書き込み部14と、記録媒体15と、を有している。
【0015】
本実施形態では、使用目的の一例として上述したバードウォッチングの使用形態について説明を行うが、本発明は、撮像記録装置の使用目的を限定するものではない。
図1の撮像記録装置の基本的動作から説明する。カメラ4は、光学レンズ(フォーカスを合わせるためのレンズ群(以下フォーカスレンズとする)や画角の倍率を変えるためのズームレンズ群)と、光量を調整するアイリスと、光学レンズ調整およびアイリス調整のために必要な、レンズ位置検出手段,モータ,およびモータの駆動制御部と、光学レンズからの入射光を電気信号に変換するCCDおよびCCDからの出力信号部とから構成され、CCDからの信号出力は画像処理部5に入力される。
【0016】
画像処理部5は、画像の鮮鋭度や明るさ輝度の補正、およびガンマ補正などの補正、カメラ4のフォーカスを調整するための信号処理(例:映像の高域周波数のピーク値検出)を行う。これら一連の処理は第1メモリ7を用いて行われる。
【0017】
フォーカスレンズ位置検出部9は、カメラ4のフォーカスレンズの位置情報を検出し、CPU11にてその検出情報を監視している。フォーカスレンズの位置情報は、フォーカスレンズから被写体までの距離情報であり、以下のこの位置情報をフォーカス値として説明する。
【0018】
フォーカス制御部10は、CPU11の指示に従ってカメラ4のフォーカスレンズの位置を制御する。
またCPU11は、画像処理部5の信号処理結果、及びフォーカスレンズ位置検出部9からの位置検出結果に基づいて、カメラ4のフォーカスレンズのフォーカス調整を行う。ここでは、画像処理部5からの高域周波数がピークとなるよう、フォーカス制御部10でフォーカスレンズを駆動させる。このときに、フォーカスレンズを前後どちらにどれだけ駆動させる必要があるのかを知るために、フォーカスレンズ位置検出部9で検出されたフォーカス値を用いている。
【0019】
フォーカス値メモリ手段3は、例えば、撮像記録装置に設けられたユーザ操作可能な操作ボタンによって構成されるもので、ユーザによる所定の操作入力を可能とするものである。そして、このフォーカス値メモリ手段3に対する所定の操作入力に応じて、CPU11は、フォーカスレンズ位置検出部9で検出したフォーカス値を、第2メモリ13に記憶させる。
また、フォーカス設定手段2は、ユーザの操作によって手動でカメラ4のフォーカス調整を可能とするものである。
【0020】
動き検出部8は、カメラ4で撮像した撮像画像の動きを検出する。そしてCPU11は、動き検出部8で撮像画像の動きが検出された際に、その時点でフォーカスレンズ位置検出部9によって検出されたフォーカス値と、フォーカス値メモリ手段3によって第2メモリ13に記憶しているフォーカス値との比較演算を演算処理部12に実行させる。
またCPU11は、演算処理部12における比較演算の結果に応じて画像書き込み部14を制御し、画像処理部5から出力される撮像画像を記録媒体15に録画させる。
【0021】
図1の実施形態において、本発明の撮像手段はカメラ4によって実現され、本発明のフォーカスレンズ位置制御手段は、フォーカスレンズ位置検出部9により実現される。また、カメラのフォーカスの自動調整を行う本発明のフォーカス自動調整手段は、映像の高域周波数のピーク値検出を行う画像処理部5,その処理を行うために使用する第1メモリ7,フォーカスレンズ位置検出部9,各制御を行うCPU11,フォーカス制御部10,及びカメラ4のモータ駆動機構によって実現される。また、本発明の動き検出手段は、動き検出部8により実現され、本発明のフォーカス記憶手段は、第2メモリによって実現される。さらに本発明の比較手段は、演算処理部12によって実現される。
【0022】
図2は、本発明の撮像記録装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。ここでは、撮像記録装置をバードウォッチングに適用する場合を想定して説明を行う。
まず、バードウォッチングする際、鳥は警戒心が強いので、撮像記録装置のユーザは、人の気配がしないよう撮像記録装置を設定して、その場所から遠ざかる。さらに、不必要な記録をできるだけ避けてバッテリや記録媒体の容量の消費を防ぐことが必須条件となる。
【0023】
通常撮像記録装置は三脚に固定し、鳥が止まりそうな場所(ポイント)を決める。ここで撮像記録装置の電源をONにし(ステップS1)、ユーザが表示部6をモニタしながらカメラ4のズームで画角を設定する(ステップS2)。電源をONしたときの初期状態は、フォーカス調整は自動となっている。また、記録媒体への録画モードは、録画待機(録画停止でもよい)となっている。
【0024】
次に、ユーザは、フォーカス調整を自動から手動に切り替える(ステップS3)。そして鳥が止まると予測したポイントに合うように、フォーカス設定手段2を操作して手動でフォーカス調整を行う(ステップS4)。本発明では手動が絶対条件ではないが、ステップとして理解しやすいのでここでは手動で調整するものとしている。そしてユーザは、撮像記録装置1のフォーカス値メモリ手段3を操作して、フォーカスレンズ位置検出部9により検出されたフォーカス値を第2メモリ13に記憶させる(ステップS5)。
【0025】
次に、ユーザは、撮像記録装置1の所定の操作ボタンを操作して、手動フォーカスから自動フォーカスに切り替える(ステップS6)。そして、さらに所定の操作ボタンを操作することにより、動き検出部8の動作をONにする(ステップS7)。撮像記録装置1は上記のステップS6、またはステップS7、もしくはステップS6とS7の両方で、記録監視モード(例えば、バードウォッチングモード)に移行したものと認識し、動き検出部8による動き検出を監視する(ステップS8)。ここで、ユーザは、撮像記録装置1より離れることができる。
【0026】
上記ステップS8で動き検出部8が被写体の動きを検出すると、CPU11は、フォーカス制御部10を動作させ、カメラ4のフォーカスを自動調整して被写体に合わせる(ステップS9)。そして演算処理部12では、フォーカスレンズ位置検出部9で検出された、動いている被写体までのフォーカス値と、第2メモリ13に記憶されているフォーカス値とを比較演算する(ステップS10)。
【0027】
上記ステップS10の比較演算の結果、動いている被写体までのフォーカス値と、第2メモリ13に記憶されたフォーカス値とが一致するかどうかを判別し(ステップS11)、一致した場合は、目的のポイントに鳥が来たものと判断し、CPU11は画像書き込み部14を動作させて、記録媒体15への撮像画像の録画を開始する(ステップS12)。また、上記ステップS11で、各フォーカス値が不一致であった時は、鳥が来ても目的のポイントではないか、またはカメラの視野を横切っただけであるものと判断し、録画待機状態を継続し(ステップS13)、ステップS8に戻って動き検出を続行する。
【0028】
また、鳥が目的のポイントに来たものと判断され、ステップS12で撮像記録装置1の録画が開始された後も、ステップS8の動き検出を続行し、鳥が他の場所に飛び立った場合は、動き検出部8にて動きが検出され、上述したフォーカス値の自動調整と比較演算が行われる(ステップS9〜10)。この場合、演算結果は、フォーカス値の不一致となり、録画待機(又は録画停止)となる(ステップS11,S13)。
録画待機となった後も、さらに動き検出を続行することにより、再び目的のポイントに鳥がきたときにも、録画を再開することができる。
【0029】
また上記のステップS10で、演算処理部12によるフォーカス値の演算比較を行う際に、フォーカス値が完全に一致したときにのみ録画を開始するだけでなく、ある程度の範囲内の一致をフォーカス値の一致とみなして録画を開始するようにしてもよい。すなわち、演算比較を行う二つのフォーカス値の差が所定の範囲内にあるときに、フォーカス値が一致したものとみなすようにする。これにより、録画中は、鳥がある程度の範囲を動いても録画が待機状態になることを防ぐことができる。
【0030】
また、上記のステップS11において、比較したフォーカス値が一致しなかった場合に、予め設定した時間を経過した後に、録画待機(又は録画停止)となるようにしてもよい。
【0031】
また、上記ステップS10のフォーカス値の比較演算処理を、間欠動作させることにより、動き検出された被写体が鳥ではなく、例えば、背景の小枝が風に揺れて動いた場合に、録画が開始されてしまうことを防止することができる。この間欠動作の時間を任意に設定することにより、風の大きさや小枝の揺れに起因する揺れの周期の変化にも対応が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による撮像記録装置の一実施形態を説明するためのハードウエアの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の撮像記録装置の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
1…撮像記録装置、2…フォーカス設定手段、3…フォーカス値メモリ手段、4…カメラ、5…画像処理部、6…表示部、7,13…メモリ、8…動き検出部、9…フォーカスレンズ位置検出部、10…フォーカス制御部、11…CPU、12…演算処理部、14…画像書き込み部、15…記録媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の撮像を行う撮像手段と、該撮像手段のフォーカスを調整するレンズの位置を検出するフォーカスレンズ位置検出手段と、該フォーカスレンズ位置検出手段による検出結果を用いて前記撮像手段が撮像する被写体に対するフォーカスの自動調整を行うフォーカス自動調整手段と、前記撮像手段により撮像した画像を録画する録画手段とを有する撮像記録装置において、被写体の予測位置に合わせたフォーカス位置における該被写体までの距離の値を記憶するフォーカス値記憶手段と、被写体の動きを検出する動き検出手段と、該動き検出手段の検出結果に従って、前記フォーカス値記憶手段に記憶させた値と、前記フォーカスレンズ位置検出手段による検出値とを比較する比較手段とを備え、該比較手段の比較結果に応じて、前記録画手段に対する画像の録画を実行することを特徴とする撮像記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像記録装置において、前記比較手段により比較する値が、互いに一致した場合前記録画手段に対する録画を開始することを特徴とする撮像記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の撮像記録装置において、前記録画手段に対する録画が開始された後、前記比較手段により比較する値が互いに一致しなくなった場合、前記録画手段に対する録画を停止または一時停止することを特徴とする撮像記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載の撮像記録装置において、前記録画手段に対する録画が開始された後、前記比較手段により比較する値が互いに一致しなくなった場合、予め設定された時間を経過した後に、前記録画手段に対する記録を停止または一時停止することを特徴とする撮像記録装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれか1に記載の撮像記録装置において、前記比較手段により比較する値の差が、予め定めた所定の範囲にある場合に、前記比較値が一致したものとみなすことを特徴とする撮像記録装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−41720(P2006−41720A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216045(P2004−216045)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】