説明

撮影装置及び撮影プログラム

【課題】読み出しノイズの影響を低減しつつ、画像データの取得時間が必要以上に長くなってしまうのを防ぐことができる撮影装置及び撮影プログラムを提供する。
【解決手段】画像処理装置100は、予め定めた冷却温度で撮像素子を冷却した状態で且つ撮像素子に光を入射させない状態で、撮像素子により撮像した暗画像の画像信号を設定された読み出し時間及びサンプリング数で読み出した画像信号に基づいて、暗画像のノイズレベルを算出する処理を、読み出し時間を変更して複数回行う。そして、読み出し時間を変更して算出した複数のノイズレベルのうち、最小のノイズレベルの読み出し時間をハードディスクに記憶させる処理を、複数の異なる冷却温度で行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影装置及び撮影プログラムに係り、特に、撮像素子を冷却する冷却手段を備えた撮影装置及び撮影プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば生化学の分野において、励起光が照射されることにより蛍光を射出する、蛍光色素で標識された蛍光サンプルを被写体として撮像したり、化学発光基質と接触して発光している化学発光サンプルを被写体として撮像したりする撮影装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような撮影装置では、特に化学発光サンプルの撮影を行う場合、励起光を照射せずに微弱な光を発する被写体を撮影するため、露光時間が蛍光サンプルを撮影する場合と比較して長時間となる。露光時間が長時間になると、CCD等の撮像素子より撮影された撮影画像に温度と露光時間に応じたノイズ成分が多く含まれてしまうため、これを防止するために、特許文献1記載の撮影装置では、CCDを冷却する手段が設けられている。
【0004】
また、特許文献2には、撮影画像のノイズを低減するために、画像信号のレベルに応じてフレーム読み出し周期を制御する撮影装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−283322号公報
【特許文献2】特開2001−298668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
撮影画像の画質に悪影響を及ぼすノイズ成分としては、撮像素子から読み出した信号電荷を電荷電圧変換アンプで電圧に変換する際に生じる読み出しノイズがある。この読み出しノイズは温度依存性があり、温度が上昇するに従って増加する特性があるため、特に化学発光サンプルの撮影を行う場合のように長時間露光する場合には、冷却手段によって撮像素子を冷却する必要がある。
【0007】
また、読み出しノイズは、温度依存性がある一方で、撮像素子からの信号電荷の読み出し速度を低速にする、すなわち信号電荷の読み出し時間を長くすることにより低減することが知られている。
【0008】
しかしながら、信号電荷の読み出し速度を低速にすると、その分画像データの取得時間が長くなってしまう、という問題があった。
【0009】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、読み出しノイズの影響を低減しつつ、画像データの取得時間が必要以上に長くなってしまうのを防ぐことができる撮影装置及び撮影プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、予め定めた検出対象を含む被写体を撮像する撮像素子と、前記撮像素子を冷却する冷却手段と、前記撮像素子からの画像信号の読み出し時間及び前記画像信号のサンプリング数を設定する設定手段と、予め定めた冷却温度で前記撮像素子を冷却した状態で且つ前記撮像素子に光を入射させない状態で前記撮像素子により撮像した暗画像の画像信号を、前記設定手段により設定された読み出し時間及びサンプリング数で読み出した画像信号に基づいて、前記暗画像のノイズレベルを算出する算出手段と、前記読み出し時間を変更し、変更した読み出し時間及び前記サンプリング数で読み出した画像信号に基づいて前記暗画像のノイズレベルを算出する処理を複数回行うことにより得られた複数のノイズレベルのうち、最小のノイズレベルの読み出し時間を記憶手段に記憶させる記憶処理を行う制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、読み出し時間を変更して暗画像のノイズレベルを算出する処理を複数回行い、これらのノイズレベルのうち、最小のノイズレベルの読み出し時間を記憶手段に記憶させる。撮影時には、記憶手段に記憶された読み出し時間で撮影画像の画像信号を読み出すことにより、読み出しノイズの影響を低減しつつ、必要以上に画像データの取得時間が長くなってしまうのを防ぐことができる。
【0012】
なお、請求項2記載の発明のように、前記制御手段は、複数の異なる冷却温度毎に前記記憶処理を行うことが好ましい。これにより、冷却温度毎に最適な読み出し時間を設定することができる。
【0013】
また、請求項3記載の発明のように、前記設定手段は、前記読み出し時間が長いほど、前記サンプリング数が多くなるように設定することが好ましい。これにより、より精度よく暗画像のノイズレベルを算出することができる。
【0014】
また、請求項4記載の発明のように、前記検出対象が化学発光サンプルである場合、すなわち、長時間露光する必要がある被写体を撮影する場合に、本発明の効果が顕著となる。
【0015】
また、請求項5記載の発明のように、前記算出手段は、前記画像信号のフィードスルー部の複数のサンプリング値の標準偏差と信号部の複数のサンプリング値の標準偏差とに基づいて、前記暗画像のノイズレベルを算出することが好ましい。これにより、リセットノイズ成分を除去して精度よく暗画像のノイズレベルを算出することができる。
【0016】
請求項6記載の発明は、予め定めた検出対象を含む被写体を撮像する撮像素子と、前記撮像素子を冷却する冷却手段と、を備えた撮影装置によって、前記撮像素子からの画像信号の読み出し時間及び前記画像信号のサンプリング数を設定するステップと、予め定めた冷却温度で前記撮像素子を冷却した状態で且つ前記撮像素子に光を入射させない状態で前記撮像素子により撮像した暗画像の画像信号を、設定された読み出し時間及びサンプリング数で読み出した画像信号に基づいて、前記暗画像のノイズレベルを算出するステップと、前記読み出し時間を変更し、変更した読み出し時間及び前記サンプリング数で読み出した画像信号に基づいて前記暗画像のノイズレベルを算出する処理を複数回行うことにより得られた複数のノイズレベルのうち、最小のノイズレベルの読み出し時間を記憶手段に記憶させる記憶処理を行うステップと、を含む処理をコンピュータに実行させるための撮影プログラムである。
【0017】
この発明によれば、読み出し時間を変更して暗画像のノイズレベルを算出する処理を複数回行い、これらのノイズレベルのうち、最小のノイズレベルの読み出し時間を記憶手段に記憶させる。撮影時には、記憶手段に記憶された読み出し時間で撮影画像の画像信号を読み出すことにより、読み出しノイズの影響を低減しつつ、必要以上に画像データの取得時間が長くなってしまうのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、読み出しノイズの影響を低減しつつ、画像データの取得時間が必要以上に長くなってしまうのを防ぐことができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】撮影システムの斜視図である。
【図2】撮影装置の正面図である。
【図3】画像処理装置100の概略ブロック図である。
【図4】撮影部30の概略ブロック図である。
【図5】画像処理装置で実行される制御ルーチンのフローチャートである。
【図6】画像信号のサンプリングについて説明するための線図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0021】
図1は、本発明に係る撮影装置を用いた撮影システムの一例を示す斜視図である。撮影システム1は、被写体に応じて励起光を照射せずに又は励起光を照射して被写体を撮影し、被写体の撮影画像を取得する撮影システムであり、撮影装置10及び画像処理装置100を含んで構成されている。
【0022】
撮影装置10は、被写体を撮影して取得した被写体の画像データを画像処理装置100に出力する。画像処理装置100は、受信した画像データに対して、必要に応じて所定の画像処理を施して表示部202に表示させる。
【0023】
なお、被写体は、例えば前述した化学発光サンプルであってもよいし、蛍光サンプルであってもよいが、本実施形態では、化学発光サンプルを被写体として、励起光を被写体に照射せずに撮影する場合について説明する。
【0024】
図2には、撮影装置10の蓋22(図1参照)を開けた状態の正面図を示した。同図に示すように、撮影装置10は、被写体PSが配置される被写体配置部40と、被写体配置部40を内部に収容した筐体20と、被写体配置部40に配置された被写体PSを撮影する撮影部30と、被写体PSに励起光を照射する、筐体20内に配置された落射光源50と、透過光源60と、を備えている。
【0025】
筐体20は、略直方体に形成された中空部21を有するものであって、内部に被写体PSが配置される被写体配置部40を有している。また、筐体20には図1に示す蓋22が開閉可能に取り付けられており、ユーザーが蓋22を開けて筐体20内に被写体PSを収容することができるようになっている。このように、筐体20は中空部21内に外光が入らないような暗箱を構成している。
【0026】
撮影装置10は、筐体20の上面20aに固定されており、詳細は後述するが、例えばCCD等の撮像素子を含んで構成されている。撮像素子には、冷却素子が取り付けられており、撮像素子を冷却することにより、撮影された画像情報に暗電流によるノイズ成分が含まれるのを防止している。
【0027】
撮影装置10にはレンズ部31が取り付けられており、このレンズ部31は、被写体P Sにフォーカスを合わせるために、矢印Z方向に移動可能に設けられている。
【0028】
落射光源50は、被写体配置部40の上に配置された被写体PSに向けて励起光を射出する。透過光源60は、被写体PSの下から励起光を照射する。蛍光サンプルを撮影する場合には、被写体に応じて落射光源50及び透過光源60の少なくとも一方から励起光を被写体に照射させる。
【0029】
図3には、画像処理装置100の概略構成を示した。同図に示すように、画像処理装置100は、メインコントローラ70を含んで構成されている。
【0030】
メインコントローラ70は、CPU(Central Processing Unit)70A、ROM(Read Only Memory)70B、RAM(Random Access Memory)70C、不揮発性メモリ70D、及び入出力インターフェース(I/O)70Eがバス70Fを介して各々接続された構成となっている。
【0031】
I/O70Eには、表示部202、操作部72、ハードディスク74、及び通信I/F76が接続されている。メインコントローラ70は、これらの各機能部を統括制御する。
【0032】
表示部202は、例えばCRTや液晶表示装置等で構成され、撮影装置10で撮影された画像を表示したり、撮影装置10に対して各種の設定や指示を行うための画面等を表示したりする。
【0033】
操作部72は、マウスやキーボード等を含んで構成され、ユーザーが操作部72を操作することによって撮影装置10に各種の指示を行うためのものである。
【0034】
ハードディスク74は、撮影装置10で撮影された撮影画像の画像データ、後述する制御ルーチンの制御プログラムや画像処理プログラム、テーブルデータ等の各種データ等が記憶される。
【0035】
通信インターフェース(I/F)76は、撮影装置10の撮影部30、落射光源50、及び透過光源60と接続される。CPU70Aは、通信I/F76を介して、被写体の種類に応じた撮影条件での撮影を撮影部30に指示したり、被写体に励起光を照射する場合には、落射光源50及び透過光源60の少なくとも一方に励起光の照射を指示したりすると共に、撮影部30で撮影された撮影画像の画像データを受信して画像処理等を施したりする。
【0036】
図4には、撮影部30の概略構成を示した。同図に示すように、撮影部30は、制御部80を備えており、制御部80はバス82を介して通信インターフェース(I/F)84と接続されている。通信I/F84は、画像処理装置100の通信I/F76と接続される。
【0037】
制御部80は、通信I/F84を介して画像処理装置100から撮影が指示されると、指示内容に応じて各部を制御して被写体配置部40に配置された被写体PSを撮影し、その撮影画像の画像データを通信I/F84を介して画像処理装置100へ送信する。
【0038】
制御部80には、レンズ部31、タイミング発生器86、及び撮像素子88を冷却する冷却素子90が接続されている。
【0039】
レンズ部31は、図示は省略するが、例えば複数の光学レンズから成るレンズ群、絞り調整機構、ズーム機構、及び自動焦点調節機構等を含んで構成されている。レンズ群は、図2において被写体PSにフォーカスを合わせるために、矢印Z方向に移動可能に設けられている。絞り調節機構は、開口部の径を変化させて撮像素子88への入射光量を調整するものであり、ズーム機構は、レンズの配置する位置を調節してズームを行うものであり、自動焦点調節機構は、被写体PSと撮影装置10との距離に応じてピント調節するものである。
【0040】
被写体PSからの光は、レンズ部31を透過して被写体像として撮像素子88に結像される。
【0041】
撮像素子88は、図示は省略するが、複数の各画素に対応する受光部、水平転送路、及び垂直転送路等を含んで構成されている。撮像素子88は、その撮像面に結像される被写体像を電気信号に光電変換する機能を有し、例えば電荷結合素子(Charge Coupled Device:CCD)や金属酸化膜型半導体(Metal OxideSemiconductor:MOS)等のイメージセンサが用いられる。
【0042】
撮像素子88は、タイミング発生器86からのタイミング信号により制御され、被写体PSからの入射光を各受光部で光電変換する。
【0043】
撮像素子88で光電変換された信号電荷は、電荷電圧変換アンプ92によって電圧変換されたアナログ信号となり、信号処理部94に出力される。
【0044】
タイミング発生器86は、撮影部30を動作させる基本クロック(システムクロック) を発生する発振器を有しており、例えば、この基本クロックを各部に供給すると共に、この基本クロックを分周して様々なタイミング信号を生成する。例えば、垂直同期信号、水平同期信号及び電子シャッタパルスなどを示すタイミング信号を生成して撮像素子88に供給する。また、相関二重サンプリング用のサンプリングパルスやアナログ・デジタル変換用の変換クロックなどのタイミング信号を生成して信号処理部94に供給する。
【0045】
信号処理部94は、タイミング発生器86からのタイミング信号により制御され、入力されたアナログ信号に対して相関二重サンプリング処理を施す相関二重サンプリング回路(Correlated Double Sampling:CDS)及び相関二重サンプリング処理が施されたアナログ信号をデジタル信号に変換するアナログ・デジタル(Analog/Digital:A/D)変換器等を含んで構成される。または、フィードスルー部と信号部をA/Dサンプルし、フィードスルー部及び信号部の各デジタル値の差分データを算出する処理を行う処理部を含んで構成される。
【0046】
相関二重サンプリング処理は、撮像素子88の出力信号に含まれるノイズ等を軽減することを目的として、撮像素子88の1受光素子(画素)毎の出力信号に含まれるフィードスルー部のレベルと画像部分に相当する信号部のレベルとの差をとることにより画素データを得る処理である。
【0047】
相関二重サンプリング処理されたデジタル信号はメモリ96に出力され、一次記憶される。メモリ96に一次記憶された画像データは、通信I/F84を介して画像処理装置100に送信される。
【0048】
冷却素子90は、例えばペルチエ素子等により構成され、制御部80によって冷却温度が制御される。被写体PSが化学発光サンプルの場合、励起光を照射せずに比較的長時間露光して撮影を行うため、撮像素子88の温度が上昇して暗電流の増加等により画質に悪影響を及ぼす場合がある。このため、制御部80では、画像処理装置100から指示された冷却温度に基づいて冷却素子90を制御し、撮像素子88を冷却する。
【0049】
ところで、撮影画像の画質に悪影響を及ぼすノイズ成分として、撮像素子88から読み出した信号電荷を電荷電圧変換アンプ92で電圧に変換する際に生じる読み出しノイズがある。この読み出しノイズは、前述したように、温度依存性がある一方で、撮像素子からの信号電荷の読み出し速度を低速にする、すなわち信号電荷の読み出し時間を長くすることにより低減することが知られている。
【0050】
しかしながら、信号電荷の読み出し速度を低速にすると、その分画像データの取得時間が長くなってしまう。また、読み出し速度を低速にし過ぎると、固定パターンノイズが増加する。
【0051】
そこで、本実施形態では、検出対象が化学発光サンプルの場合は、長時間の露出時間が必要となる高感度の画像読み取りが要求されるため、読み出しノイズがなるべく小さく且つ読み出し時間がなるべく短くなるように、冷却温度毎に読み出し時間を設定する。具体的には、詳細は後述するが、読み出し時間を変えて暗画像の画像信号の標準偏差をそれぞれ算出し、最小の標準偏差となる読み出し時間をその冷却温度における読み出し時間に設定する。この処理を、複数の異なる冷却温度毎に実行することにより、画像信号の読み出し時間を冷却温度に応じて最適に設定することができる。なお、蛍光サンプルの場合は、励起光を照射して短時間の露出時間で撮影するため、読み出し時間は短時間でよく、基本的には冷却温度に拘わらず予め定めた読み出し時間で読み出せばよいが、化学発光サンプルと同様に冷却温度毎に読み出し時間を設定してもよい。
【0052】
次に、本実施形態の作用として、画像処理装置100のCPU70Aで実行される読み出し時間の設定処理について、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
【0053】
なお、図5に示すフローチャートは、画像処理装置100において、ユーザーが所定の操作を行って読み出し時間の設定処理の実行を指示した場合に実行される。
【0054】
まず、ステップ100では、予め定めた冷却温度Tx、予め定めた読み出し時間Fx、サンプリング数Nxで暗画像を撮影するように撮影部30に指示する。なお、最初にこのステップが実行されるときの冷却温度Txは、例えば撮像素子88の冷却温度の範囲の下限の温度、すなわち最低の温度に設定される。また、最初にこのステップが実行されるときの読み出し時間Txは、例えば撮像素子88からの画像信号の読み出し時間の範囲の下限の時間、すなわち最短の時間に設定される。また、サンプリング数Nxは、例えば撮像素子88からの画像信号のサンプリング数の範囲の下限の値、すなわち最小のサンプリング数に設定される。なお、サンプリング数Nxは、読み出し時間Fxが長くなるに従って多くなるように設定される。
【0055】
撮影部30の制御部80は、上記の条件での撮影が指示されると、指示された冷却温度で撮像素子88を冷却するように冷却素子90を制御する。
【0056】
そして、撮像素子88が冷却温度Txに冷却されると、制御部80は、例えば図示しないシャッターを閉じてレンズ部31から光が入射されない状態にしてタイミング発生器86に撮影指示すると共に、撮影画像の画像信号を読み出し時間Fx、サンプリング数Nxでサンプリングするように信号処理部94にサンプリングパルスを供給する。
【0057】
これにより、撮像素子88によって暗画像が撮影され、暗画像の画像信号が信号処理部94の相関二重サンプリング回路によって、読み出し時間Fx、サンプリング数Nxで読み出される。
【0058】
撮像素子88からの撮影画像の各画素の画像信号は、図6に示すように、フィードスルー部及び信号部を有し、信号部のレベルとフィードスルー部のレベルとの差が画像部分に相当する。
【0059】
相関二重サンプリング回路では、サンプリング数Nxでフィードスルー部及び信号部をサンプリングし、フィードスルー部及び信号部のそれぞれについて、各サンプル値の平均値を求め、これらの差を取って画素信号とする処理を各画素について行い、後段のアナログ・デジタル変換回路へ順次出力する。アナログ・デジタル変換回路で変換された暗画像の画像データは、メモリ96に一次記憶された後画像処理装置100へ送信される。
【0060】
ステップ102では、暗画像の画像データの標準偏差を求める。すなわち、各画素の画素値に基づいて、画素値の標準偏差を求め、ハードディスク74に記憶する。
【0061】
ステップ104では、読み出し時間Fxが予め定めた読み出し時間の範囲の上限であるか否かが判断され、読み出し時間Fxが上限でない場合にはステップ106へ移行し、読み出し時間Fxが上限になった場合には、ステップ108へ移行する。
【0062】
ステップ106では、読み出し時間Fxに予め定めた時間αを加算した時間を新たな読み出し時間Fxとして設定すると共に、サンプリング数Nxに予め定めた値βを加算した値を新たなサンプリング数Nxとして設定してステップ100へ移行する。すなわち、読み出し時間Fxを1段階長くすると共に、サンプリング数Nxを1段階多くして上記と同様の処理を行い、これを読み出し時間Fxが上限になるまで実行する。これにより、予め定めた読み出し時間の範囲内において複数の異なる読み出し時間で暗画像の標準偏差が取得される。
【0063】
そして、読み出し時間Fxが上限になった場合、すなわち、予め定めた読み出し時間の範囲内において複数の異なる読み出し時間全てで上記の処理を行った場合には、ステップ108において、ステップ102で算出し記憶された複数の標準偏差のうち、最小の標準偏差の読み出し時間Fx及びサンプリング数Nxを、その冷却温度の読み出し時間及びサンプリング数としてハードディスク74に記憶する。
【0064】
ステップ110では、冷却温度Txが予め定めた冷却温度の範囲の上限か否かが判断される。そして、冷却温度が上限の場合には、本ルーチンを終了し、冷却温度が上限でない場合には、ステップ112へ移行する。
【0065】
ステップ112では、冷却温度Txに予め定めた温度γを加算した温度を新たな冷却温度Txとしてステップ100へ移行する。すなわち、冷却温度Txを1段階高くして上記と同様の処理を行い、これを冷却温度Txが上限になるまで実行する。これにより、複数の異なる冷却温度で、暗画像の標準偏差が最小となる読み出し時間及びサンプリング数が求められ、ハードディスク74に記憶される。複数の異なる冷却温度全てで上記の処理が行われると、ステップ110で肯定判断され、本ルーチンを終了する。
【0066】
このように、本実施形態では、複数の異なる読み出し時間で暗画像を取得して標準偏差を算出し、これらの中で最小の標準偏差の読み出し時間及びサンプリング数をその冷却温度の読み出し時間及びサンプリング数として記憶する処理を、複数の異なる冷却温度毎に行う。このため、冷却温度に応じて最適な読み出し時間及びサンプリング数を設定することができる。従って、読み出しノイズの影響を低減しつつ、画像データの取得時間が必要以上に長くなってしまうのを防ぐことができる。
【0067】
撮影時には、ユーザーが撮影メニューから化学発光サンプルの撮影を選択して化学発光サンプルを撮影する場合には、画像処理装置100は、その化学発光サンプルに応じて露出時間及び冷却温度を設定し、設定された冷却温度に対応した読み出し時間及びサンプリング数をハードディスク74から読み出し、撮影部30に出力する。
【0068】
これにより、撮影部30では、指定された冷却温度で冷却素子90を冷却し、撮影する。そして、撮影画像の画像信号を、指示された読み出し時間及びサンプリング数で読み出す。
【0069】
一方、蛍光サンプルの撮影が選択された場合には、励起光を照射して短時間露光により撮影するため、撮像素子88の冷却温度に拘わらず、予め定めた読み出し時間及びサンプリング数で画像信号を読み出すように、撮影部30に指示する。なお、蛍光サンプルの撮影においても、化学発光サンプルと同様に冷却温度に応じた読み出し時間及びサンプリング数を撮影部30に出力し、その条件で画像信号を読み出すようにしてもよい。
【0070】
なお、本実施形態では、図5に示す処理を画像処理装置100のCPU70Aで実行する場合について説明したが、撮影部30の制御部80で実行するようにしてもよい。
【0071】
また、本実施形態では、化学発光サンプルや蛍光サンプルを撮影する装置に本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、顕微鏡画像を撮影する装置や天体画像を撮影する装置にも本発明を適用可能である。
【0072】
また、本実施形態で説明した撮影システム1の構成(図1〜4参照)は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要な部分を削除したり、新たな部分を追加したりしてもよいことは言うまでもない。
【0073】
また、本記実施形態で説明した制御プログラムの処理の流れ(図5参照)も一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0074】
1 撮影システム
10 撮影装置
30 撮影部
31 レンズ部
40 被写体配置部
50 落射光源
60 透過光源
70 メインコントローラ
70A CPU(設定手段、算出手段、制御手段)
72 操作部
74 ハードディスク(記憶手段)
80 制御部
86 タイミング発生器
88 撮像素子
90 冷却素子(冷却手段)
92 電荷電圧変換アンプ
94 信号処理部
96 メモリ
100 画像処理装置
202 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定めた検出対象を含む被写体を撮像する撮像素子と、
前記撮像素子を冷却する冷却手段と、
前記撮像素子からの画像信号の読み出し時間及び前記画像信号のサンプリング数を設定する設定手段と、
予め定めた冷却温度で前記撮像素子を冷却した状態で且つ前記撮像素子に光を入射させない状態で前記撮像素子により撮像した暗画像の画像信号を、前記設定手段により設定された読み出し時間及びサンプリング数で読み出した画像信号に基づいて、前記暗画像のノイズレベルを算出する算出手段と、
前記読み出し時間を変更し、変更した読み出し時間及び前記サンプリング数で読み出した画像信号に基づいて前記暗画像のノイズレベルを算出する処理を複数回行うことにより得られた複数のノイズレベルのうち、最小のノイズレベルの読み出し時間を記憶手段に記憶させる記憶処理を行う制御手段と、
を備えた撮影装置。
【請求項2】
前記制御手段は、複数の異なる冷却温度毎に前記記憶処理を行う
請求項1記載の撮影装置。
【請求項3】
前記設定手段は、前記読み出し時間が長いほど、前記サンプリング数が多くなるように設定する
請求項1又は請求項2記載の撮影装置。
【請求項4】
前記検出対象が化学発光サンプルである
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の撮影装置。
【請求項5】
前記算出手段は、前記画像信号のフィードスルー部の複数のサンプリング値の標準偏差と信号部の複数のサンプリング値の標準偏差とに基づいて、前記暗画像のノイズレベルを算出する
請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の撮影装置。
【請求項6】
予め定めた検出対象を含む被写体を撮像する撮像素子と、前記撮像素子を冷却する冷却手段と、を備えた撮影装置によって、前記撮像素子からの画像信号の読み出し時間及び前記画像信号のサンプリング数を設定するステップと、
予め定めた冷却温度で前記撮像素子を冷却した状態で且つ前記撮像素子に光を入射させない状態で前記撮像素子により撮像した暗画像の画像信号を、設定された読み出し時間及びサンプリング数で読み出した画像信号に基づいて、前記暗画像のノイズレベルを算出するステップと、
前記読み出し時間を変更し、変更した読み出し時間及び前記サンプリング数で読み出した画像信号に基づいて前記暗画像のノイズレベルを算出する処理を複数回行うことにより得られた複数のノイズレベルのうち、最小のノイズレベルの読み出し時間を記憶手段に記憶させる記憶処理を行うステップと、
を含む処理をコンピュータに実行させるための撮影プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−211408(P2011−211408A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75928(P2010−75928)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】