説明

撮影装置

【課題】好適なシャープ化が可能な撮影装置を提供する。
【解決手段】本発明の撮影装置1は、撮影画像を取得する画像取得部13と、シャッタースピード及びカメラ内温度のうちの少なくとも一つを検出する検出部31と、前記検出部31の出力に応じて、前記撮影画像に含まれるノイズ量を判断する判断部31と、前記ノイズ量に応じて選択された前記撮影画像の周波数領域に対して、シャープ度を高める処理を行うシャープ処理部32とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、撮影画像をシャープ化するためにアンシャープマスク処理が行われている(例えば、特許文献1参照)。しかし、アンシャープマスク処理は、画像のノイズも増幅する。特に、元画像にノイズが多い場合、アンシャープマスク処理によってノイズが増大される。このため、ISO感度によってアンシャープマスクのゲインを小さくする技術が存在する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−247872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来技術は以下の問題がある。
1)ISO感度が高い場合に、ハイパスフィルタを通した画像領域におけるアンシャープマスクの増幅率を下げることは、ノイズだけでなく強いエッジのシャープネスも下げてしまう。
2)高感度ノイズ低減処理が可能なカメラの場合、通常そのレベルをユーザが選択可能であるが、この場合、その選択レベルによってもノイズ量が異なる。
3)アプリケーションによってアンシャープマスクを行う場合、様々なカメラで撮影した画像を扱うが、同じISO感度であってもカメラによってノイズ量が異なる。
【0005】
本発明の課題は、好適なシャープ化が可能な撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0007】
請求項1に記載の発明は、撮影画像を取得する画像取得部(13)と、シャッタースピード及びカメラ内温度のうちの少なくとも一つを検出する検出部(40)と、前記検出部(40)の出力に応じて、前記撮影画像に含まれるノイズ量を判断する判断部(31)と、前記ノイズ量に応じて選択された前記撮影画像の周波数領域に対して、シャープ度を高める処理を行うシャープ処理部(32)とを含むことを特徴とする撮影装置(1)である。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載された撮影装置(1)であって、前記シャープ処理部(32)は、前記ノイズ量に応じて下限周波数を決定し、前記撮影画像の前記下限周波数以上の周波数領域に対してシャープ度を高める処理を行うことを特徴とする撮影装置(1)である。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載された撮影装置(1)であって、前記シャープ処理部(32)は、前記ノイズ量が多くなるほど、前記下限周波数を高くすることを特徴とする撮影装置(1)である。
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の撮影装置(1)であって、前記判断部(31)は、前記検出部(40)で検出された前記シャッタースピードと、長秒時ノイズ低減処理の程度に基づき、ノイズ量を判断すること、を特徴とする撮影装置(1)である。
なお、符号を付して説明した構成は、適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、好適なシャープ化が可能な撮影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態であるカメラのブロック構成図である。
【図2】画像処理回路におけるノイズ判断部とアンシャープ処理部に係る処理フローである。
【図3】ノイズ判断部の機能ブロック図である。
【図4】ノイズ判断部における画像ノイズ量の推定とランク付けの判断基準の一覧図である。
【図5】ノイズ判断部における画像のノイズ量の推定とランク付けの具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態であるカメラ1のブロック構成図である。
カメラ1は、撮像部10と、A/D変換回路20と、画像処理部30と、制御部40と、カメラ内温度センサ50とを備えている。また、カメラ1は、操作部材60と、画像表示装置70と、画像データを保存する記録媒体80とを備えている。なお、本実施形態では、撮影装置としてスチルカメラを例にして説明するが、これに限らず、ビデオカメラ、携帯電話などであってもよい。
【0011】
撮像部10は、撮影レンズ11と、シャッター12と、撮像素子13等を備えている。
撮影レンズ11は、複数のレンズ群(図では1枚のレンズとして簡略化して示してある)によって構成されており、被写体像を撮像素子13に結像させる。
撮像素子13は、撮影レンズ11によって結像された被写体像を電気信号に変換するたとえばCCD等の光電変換素子である。
【0012】
そして、撮像部10は、シャッター12の開放によって、撮影レンズ11によって形成された被写体像を撮像素子13の撮像面に結像させる。撮像素子13は、シャッター12が閉じるまでの光(被写体光)を蓄積してアナログ量の電気信号に変換し、A/D変換回路20に出力する。
A/D変換回路20は、撮像部10(撮像素子13)から出力されるアナログの画像信号をデジタルの画像信号に変換する。
【0013】
画像処理部30は、A/D変換回路20から入力されるデジタル画像信号を図示しないバッファメモリに一旦格納すると共に、バッファメモリに格納されている画像データに対して各種画像処理(たとえば、ホワイトバランス調整、シャープネス調整、ガンマ補正、階言周調整等の各種画像補正および各色の画像データに対する補間処理等)を行う。
【0014】
また、画像処理部30は、高感度ノイズ低減処理および長時間ノイズ低減処理も行う。
ここで、高感度ノイズとは、高ISO感度の場合にランダムに発生するノイズであり、電荷が電圧に変換される際に端子間で不規則な電圧が生じるために発生する。このような高感度ノイズは、後述する長秒時ノイズとともに画像の平端部である低周波領域に存在するときわめて目立つものである。
高感度ノイズ低減処理は、使用者の、後述する操作部材60を介した設定によって、ON(する)/OFF(しない)が選択可能であって、さらに、ON(する)場合には、その程度によって3段階(弱く,普通,強く)に設定可能となっている。
【0015】
また長秒時ノイズとは、長秒時シャッターなどで発生する暗電流ノイズである。撮像素子は光に比例した電荷を出力する。仮に真っ暗であれば出力はゼロであるはずであるが、微小ながら不要な信号を出力する。これが長秒時ノイズ(暗電流ノイズ)であり、シャッター時間に比例して増加する。長時間ノイズ低減処理も、使用者の、後述する操作部材60を介した設定によって、ON(する)/OFF(しない)が選択可能となっている。
【0016】
さらに、画像処理部30は、画像に対してシャープネス調整を行う機能部として、ノイズ判断部31と、アンシャープ処理部32とを備えている。ノイズ判断部31は、カメラ1の撮影に係る設定および状態(判断要素)を参照して、撮影画像に発生するノイズ量を推定し、そのノイズの量に応じて当該画像をランク付けする。アンシャープ処理部32は、ノイズ判断部31によって判断されたランク付けに基づいて、当該画像に応じたアンシャープマスク処理を施す。これらノイズ判断部31とアンシャープ処理部32については、後に詳述する。
【0017】
制御部40は、図示しないが、CPUと、制御プログラムが格納された記憶装置等を備えて構成されており、当該カメラ1の各構成要素を統括的に制御する。そして、カメラ1の撮影状態を検出し、ノイズ判断部31に出力可能となっている。
カメラ内温度センサ50は、カメラ1の内部(特に撮像素子13)温度を検知して、制御情報として制御部40に出力する。ここで、制御情報とは、カメラ1のISO感度、シャッタースピード、カメラ内温度、高感度ノイズ低減処理の程度、長秒時ノイズ低減処理の程度、及びピクセルピッチ等である。
【0018】
操作部材60は、電源スイッチやレリーズボタンおよび各種の設定操作ボタン類を含む。当該カメラ1における撮影に係る設定(ISO感度およびシャッタースピード等)は、この操作部材60を介して制御部40に入力される。
【0019】
画像表示装置70は、TFT液晶ディスプレイ等によって構成され、画像等のデータや各種設定メニューを表示する。
記録媒体80は、カメラ1が備えるスロットに着脱可能なメモリーカード等であって、画像情報を保存する。
【0020】
そして、カメラ1は、操作部材60の操作による指令に従って、制御部40の制御によって下記のようにして作用して撮影を行う。
すなわち、操作部材60のレリーズスイッチが操作されると、撮像部10のシャッター12が開き、撮影レンズ11による被写体像を撮像素子13がアナログ量の画像データとして取得する。このアナログ量の画像データを、A/D変換回路20がデジタル画像データに変換し、画像処理部30で各種画像処理を行って、記録媒体80に静止画ファイルとして保存する。このファイルには、当該画像に関する種々の情報(カメラ名,カメラメーカー名,絞り値やシャッター速度および露光補正等の露出条件、撮影時刻,カメラ温度情報等)も共に記録される。
【0021】
つぎに、前述した図1に加えて図2〜図5を参照して、本実施形態の画像処理部30におけるノイズ判断部31とアンシャープ処理部32とについて説明する。
図2は、画像処理部30におけるノイズ判断部31とアンシャープ処理部32に係る処理フローである。なお、図2中および以下の説明では、「ステップ」を「S」と略記する。
【0022】
前述したように、画像処理部30は、画像に対してシャープネス調整を行う機能部として、ノイズ判断部31と、アンシャープ処理部32とを備えている。
ノイズ判断部31は、制御部40から得られるカメラ1の撮影に係る設定および状態(判断要素)を参照して、撮影画像に発生するノイズ量を推定し、そのノイズ量に応じて当該画像を、例えば、「大」,「中」,「小」の三段階にランク付けする。アンシャープ処理部32は、撮影画像に対して、ノイズ判断部31によるランク付けに基づいて、当該画像の推定ノイズ量に対応したアンシャープマスク処理を施す。
【0023】
すなわち、図2に示すように、画像データが入力されると、まず、RGBによる画像データを、YCbCr色空間の画像データに変換する(S01)。
ついで、その画像データに対して、ノイズ判断部31がノイズ量を推定し、その推定ノイズ量に応じて「大」,「中」,「小」の三段階にランク付けする(S02)。
そして、ステップ02におけるノイズ判断部31によるノイズ量判定結果に基づいて、アンシャープ処理部32がノイズ量と対応したアンシャープ処理を施す。(S03)。
その後、YCbCr色空間の画像データをRGBの画像データに変換し(S04)、出力する(S05)。
【0024】
なお、この実施形態では、画像データをRGBから一旦YCbCrに変換し、そのY成分のみに画像処理を施した後、RGBに再変換して出力している。しかし、YCbCrに変換することなくRGBの各色成分それぞれについて画像処理を行っても良い。この場合、YCbCrでは一回で済む同様の画像処理を三回行うこととなるが、G成分のみに代表させて一回のみの画像処理で済ませる構成としても良い。これは、RGBからYCbCrに変換する際におけるY成分の重み係数はG成分が最も大きいため、RGBのG成分に代表させた画像処理によってもYCbCrに対する画像処理と略同様の効果が得られることによる。
【0025】
つぎに、ノイズ判断部31における、画像のノイズ量の推定とランク付けとについて説明する。ノイズ判断部31は、前述したように、カメラ1の撮影に係る設定および状態(判断要素)を参照して、撮影画像に発生するノイズ量を推定し、そのノイズ量に応じて当該画像を、「大」,「中」,「小」の三段階にランク付けする。
【0026】
図3は、ノイズ判断部31の機能ブロック図である。図3に示すように、ノイズ判断部31においてノイズ量を推定する際に用いる撮影条件に係る判断要素は、本実施形態では、設定ISO感度100,設定シャッター速度101,高感度ノイズ低減処理のON/OFFおよびその程度102(以下、あわせて高感度ノイズ低減処理102という),長時間ノイズ低減処理のON/OFFおよびその程度103(以下、あわせて長秒時ノイズ低減処理103という),撮像素子のピクセルピッチ104およびカメラ内温度105である。
【0027】
ノイズ判断部31は、これらの判断要素に基づいて想定ISO感度106と想定シャッター速度と107を導出し、その想定ISO感度106と想定シャッター速度107に基づいて画像のノイズ量の推定とランク付け、すなわち推定ノイズ量判断処理108を行う。
【0028】
ノイズ判断部31における想定ISO感度106の導出は、設定ISO感度100を基準として、これに高感度ノイズ低減処理102および撮像素子のピクセルピッチ104とに応じて補正を加えることで行う。
【0029】
高感度ノイズ低減処理102に応じて補正を加えることで行うのは以下の理由による。
高感度ノイズ低減処理102は、一般に、「しない」、「弱く」、「普通」、「強く」、が使用者の好みによって選択可能となっている。高感度ノイズ低減処理102を強く効かせるとシャープネスがやや弱くなるがノイズが少なくなる。すなわち、高感度ノイズ低減処理102の程度が強い程、ノイズが低減されているので、ノイズ判断部31は、設定ISO感度を低く補正して想定ISO感度とする。
【0030】
撮像素子13のピクセルピッチに応じて補正を加えることで行うのは以下の理由による。
同じ高感度であっても、カメラによりノイズの出方が異なる。例えば、フルサイズのカメラのISO3200とDXサイズのカメラのISO3200とではノイズの出方が一段から2段分異なる。このノイズの出方はピクセルピッチやノイズ処理が総合的に影響しているものと考えられるが、本実施形態では、ピクセルピッチを一つの判断基準としている。
そして撮像素子13のピクセルピッチは、受光面積が大きい程ノイズが少ないことから、たとえばピクセルピッチを二乗した面積の比率に応じて設定ISO感度を補正(面積大→ISO感度低)して想定ISO感度とする。
【0031】
なお、この撮像素子のピクセルピッチによる設定ISO感度の補正は、本実施形態のようにカメラ1の内部に備える画像処理部30が行う場合には、撮像素子のピクセルピッチは変化しないので基本的には必要ない。画像をパソコン等によって処理する際に適用する。
【0032】
また、ノイズ判断部31における想定シャッター速度107の導出は、設定シャッター速度104を基準とし、これに長時間ノイズ低減処理103のON/OFFおよびカメラ内温度105に応じて補正を加えることで行う。
【0033】
長時間ノイズ低減処理のON/OFFおよびカメラ内温度に応じて補正を加えるのは以下の理由による。
長秒時ノイズ低減処理103は、一般に、「する」、「しない」が使用者の好みによって選択可能となっている。長秒時ノイズ低減処理103が「しない」に設定されている場合は、ノイズが多いと考えられる。すなわち、ノイズ判断部31は、長時間ノイズ低減処理がONの場合には、設定シャッター速度を小さく(速く)補正して想定シャッター速度とする。
【0034】
長秒時ノイズは長秒時だけでなく温度によっても大きく影響する。例えば温度が7〜10度上昇すると長秒時ノイズが約2倍になる場合がある。そのため、長秒時ノイズ低減処理103を「する」、「しない」だけでなく、カメラ内温度がどのようになっているかも考慮する。すなわちカメラ内温度が高い程、設定シャッター速度を大きく(遅く)補正して想定シャッター速度とする。
なお、近年は動画機能やライブビュー機能などによって撮像素子の温度が上昇する場合があり、カメラ内温度が測定可能となっているカメラが多い。従って、特別に温度計等の設定は不要の場合が多い。
【0035】
図4は、ノイズ判断部31における画像ノイズ量の推定とランク付けの判断基準を説明する一覧図である。ノイズ判断部31は、図4に一例を示すような判断基準に基づいて、画像のノイズ量を推定し、その推定ノイズ量に応じて「大」,「中」,「小」の三段階にランク付けする。
画像ノイズ「大」は、設定ISO感度が1000以上、シャッター速度が100(s)以上、カメラ内温度が70℃以上、の内、1つでも該当した場合とする。
また、画像ノイズ「中」は、設定ISO感度が500以上1000未満、シャッター速度が30(s)以上100(s)未満、カメラ内温度が50℃以上70℃未満、の内、1つでも該当した場合とする。
さらに、画像ノイズ「小」は、設定ISO感度が500未満、シャッター速度が50s未満、カメラ内温度が50℃未満の場合とする。
【0036】
高感度ノイズ低減処理102の設定と、撮像素子のピクセルピッチ104とは、前述したようにISO感度に対する補正要素であるため、これらによって設定ISO感度100を補正した想定ISO感度106を前述した条件に当てはめる。
【0037】
すなわち、高感度ノイズ低減処理102の設定が「しない」の場合には、設定ISO感度100を想定ISO感度106とする。
高感度ノイズ低減処理の設定が「弱く」の場合には設定ISO感度100から0.3段減じたものを想定ISO感度106とする。
高感度ノイズ低減処理の設定が「普通」の場合には、設定ISO感度100から0.6段減じたものを想定ISO感度106とする。
高感度ノイズ低減処理の設定が「強く」の場合には設定ISO感度100から0.9段減じたものを想定ISO感度106とする。
なお、1段の補正でISO感度(数値)は1/2となる。
【0038】
撮像素子のピクセルピッチは、たとえば6μmを基準として、このピクセルピッチを二乗した面積の比率に応じて設定ISO感度100を補正して想定ISO感度106とする。
なお、この際に用いる数値は、ピクセルピッチそのものを用いても、撮像素子13の撮像領域サイズが同一であれば画素数を用いても、何れでも良い。
【0039】
長時間ノイズ低減処理103の設定とカメラ内温度105の情報とは、前述したようにシャッター速度に対する補正要素であり、これらによって他の条件によって求められた設定シャッター速度を補正した想定シャッター速度を前述した条件に当て嵌める。
長時間ノイズ低減処理103の設定が「しない」の場合には、設定シャッター速度101をそのまま用い、長時間ノイズ低減処理の設定が「する」の場合には、設定シャッター速度101に拘わらず想定シャッター速度を「0(s)」とする。
【0040】
カメラ内温度105は、前述したように、温度が高い程、設定シャッター速度101を大きく補正して想定シャッター速度107とする。このカメラ内温度105による補正は、閾値温度を設定してその閾値温度を越えると設定シャッター速度101に所定量(時間)を加えて(補正して)想定シャッター速度107を得る。また、温度の関数を用いて算出するように構成しても、さらには、温度と補正量とを定めた補正テーブルを予め用意してこれを参照するように構成しても良い。
【0041】
つぎに、図5を参照してノイズ判断部31における画像のノイズ量の推定とランク付けの具体例について説明する。図5は、ノイズ判断部31における画像のノイズ量の推定とランク付けの具体例を示す図である。
図中、画像1については、設定ISO感度が3200である。高感度ノイズ低減処理の設定は「しない」であって、ピクセルピッチも基準の6μmである。このため、ISO感度に補正はなく、推定ノイズ量「大」とする。
画像2については、カメラ内温度が75℃であり、これによって他の条件を参酌するまでもなく推定ノイズ量「大」とする。
【0042】
画像3については、設定シャッター速度が100(s)である。長時間ノイズ低減処理の設定は「しない」であるため、シャッター速度の補正はなく、推定ノイズ量は「大」とする。
画像4については、設定ISO感度が1000であり、このままだと推定ノイズ量は「大」となる。しかし、高感度ノイズ低減処理の設定が「する」であって、その程度が「強く」であるため、設定ISO感度から0.9段減じ、結果、画像4′に示すように想定ISO感度550として推定ノイズ量は「中」とする。
画像5については、設定ISO感度が800である。高感度ノイズ低減処理の設定は「しない」であって、ピクセルピッチも基準の6μmである。このため、設定ISO感度に補正はなく、推定ノイズ量は「中」とする。
【0043】
画像6については、設定ISO感度が400である。高感度ノイズ低減処理の設定は「しない」であって、ピクセルピッチも基準の6μmである。このため、ISO感度の補正はなく、推定ノイズ量は「小」とする。
画像7については、設定ISO感度が1000、高感度ノイズ低減処理の設定は「しない」であって、このままだと推定ノイズ量は「大」となる。しかし、ピクセルピッチが12μmであって、6μmの場合に比較して面積比が4倍である。このため、設定ISO感度を1/4とし、画像7′に示すように想定ISO感度250として、推定ノイズ量は「小」とする。
【0044】
ここで、図1に示すように、アンシャープ処理部32は、処理領域分離部32Aと、アンシャープマスク処理部32Bとを備えている。
そして、処理領域分離部32Aは、ノイズ判断部31による画像の推定ノイズ量(「大」,「中」,「小」)に対応して、領域を分離する。
そして、推定ノイズ量に応じて、増幅率を変化させてアンシャープマスク処理を行う。すなわち、推定ノイズ量が多い領域にはアンシャープマスク処理の増幅率を低くしてノイズを目立たなくする。また、推定ノイズ量が少ない領域にはアンシャープマスク処理の増幅率を高くして画像を鮮鋭化する。
【0045】
なお、アンシャープ処理部32におけるアンシャープマスク処理は、以下の式で表すことができる。
=Y+(Y−Ygauss)*Amp
ここで、
:シャープ化画像の輝度
Y:ボケ画像の輝度
gauss:ボケ画像にガウスボケを付加した画像の輝度(低周波画像)
Amp:増幅率
上式の括弧内の部分は、元画像からその低周波成分を引いているので、元画像の高周波成分を表している。そして、元画像の高周波成分を整数倍し、これを元画像に加えてアンシャープマスク処理後画像とする。
【0046】
高周波成分の分離(周波数領域の選択)は、周波数分離フィルタによって行う。
このような周波数分離フィルタは、2種以上の周波数に分けられるものであればよい。
具体的には、ボケ画像におけるガウスボケの径を変えて、周波数の異なるローパスフィルタを作成し、このローパスフィルタを用いて高周波成分取り出す。また、PrewittoやSobelといったエッジ検出フィルタを元画像にコンボリューションさせる方法であっても良い。
【0047】
以上、本実施形態によると、以下の効果を有する。
(1)カメラ1における画像処理部30は、撮影画像に発生するノイズ量を推定するノイズ判断部31と、ノイズ判断部31によるノイズ量の推定に基づいて、撮影画像に対して、推定ノイズ量が多い程アンシャープマスク処理を施す領域を高周波側に変えてアンシャープマスク処理を施すアンシャープ処理部32とを備えている。これにより、推定ノイズ量が多い場合には平坦部分である低周波領域に生じたノイズが強調されて見苦しくなることを抑え、推定ノイズ量が少ない場合には広い領域にアンシャープマスク処理を施して鮮鋭化することができる。つまり、撮影画像に対して、ノイズの強調を抑えてアンシャープマスク処理を施すことができる。
【0048】
(2)画像処理部30におけるノイズ判断部31は、カメラ1の撮影に係る設定および状態を判断要素とし、この判断要素を参照して、想定ISO感度と想定シャッター速度とを導出し、その想定ISO感度と想定シャッター速度に基づいて画像のノイズ量の推定とランク付けとを行う。つまり、カメラ1の撮影に係る設定および状態をISO感度とシャッター速度に変換して制御要素とする。これにより、カメラ1の撮影に係る設定および状態に応じた画像のノイズ量の推定が容易となる。
【0049】
(変形形態)
以上、説明した実施形態に限定されることなく、以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
(1)本実施形態では、アンシャープ処理部32におけるアンシャープマスク処理は、元画像の高周波成分を整数倍し、これを元画像に加えることで鮮鋭化した画像を得る。しかし、アンシャープマスク処理は、画像に一律のシャーブネスをかけた後に、周波数に応じて低域周波数領域にはマスクをかけてノイズを日立たなくさせる構成であっても良い。
【0050】
(2)本実施形態は、本発明をカメラ1が格納保持したプログラムに基づいて実行する例である。しかし、本発明は、これに限らず、パーソナルコンピュータ等のコンピュータに対して、上述した処理ステップを実行させてアンシャープマスク処理を行うプログラムとして提供しても良い。また、そのようなアンシャープマスク処理が可能な画像処理装置として提供しても良い。
すなわち、各手段を実行させるためのプログラムコードを、それぞれ記録した記録媒体(例えば、CD−ROM、フレキシブルディスク、RAMカード等)によって、または、通信手段を介して提供しても良い。
【0051】
なお、実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。
【符号の説明】
【0052】
1:カメラ、10:撮像部、30:画像処理部、31:ノイズ判断部、32:アンシャープ処理部、32A:処理領域分離部、32B:アンシャープマスク処理部、40:制御部、50:カメラ内温度センサ、60:操作部材、70:画像表示装置、80:記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影画像を取得する画像取得部と、
シャッタースピード及びカメラ内温度のうちの少なくとも一つを検出する検出部と、
前記検出部の出力に応じて、前記撮影画像に含まれるノイズ量を判断する判断部と、
前記ノイズ量に応じて選択された前記撮影画像の周波数領域に対して、シャープ度を高める処理を行うシャープ処理部とを含むことを特徴とする撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載された撮影装置であって、
前記シャープ処理部は、前記ノイズ量に応じて下限周波数を決定し、前記撮影画像の前記下限周波数以上の周波数領域に対してシャープ度を高める処理を行うことを特徴とする撮影装置。
【請求項3】
請求項2に記載された撮影装置であって、
前記シャープ処理部は、前記ノイズ量が多くなるほど、前記下限周波数を高くすることを特徴とする撮影装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の撮影装置であって、
前記判断部は、前記検出部で検出された前記シャッタースピードと、長秒時ノイズ低減処理の程度に基づき、ノイズ量を判断すること、
を特徴とする撮影装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−188162(P2011−188162A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−50075(P2010−50075)
【出願日】平成22年3月8日(2010.3.8)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】