説明

撮影調整方法、撮影調整システム及び撮影調整プログラム

【課題】簡易な方法で、基準面となる平面を傾斜がないように微調整して画像を撮影することができるようにする。
【解決手段】カメラ中心検出部202は、カメラ10が撮影した撮影画像に含まれるカメラ10の中心位置を検出することによって、平面の法線方向を検出する。切出開始点計算部204は、切り出し開始点を算出する。また、切出開始点計算部204は、平面の法線方向と撮影方向とが合致するように切り出し開始点を補正する。部分切出部205は、切出開始点計算部204が算出(又は補正)した切り出し開始点に基づいて、カメラ10が撮影した画像から部分画像を抽出する。また、周囲補完部206は、部分切出部205が抽出した部分画像の周囲を補完する補完処理を実行する。そして、合成表示部207は、周囲補完部206が補完処理を行った画像を出力画像として表示部209に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面に対して傾斜無く撮影するための撮影調整方法、撮影調整システム及び撮影調整プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理を行う場合、背景となる床や壁を除去するように画像を加工することが行なわれる。また、床や壁を基準面として扱って処理を行うこと等が行なわれ、画像中の床や壁は画像処理の前処理の対象として扱われることがある。この場合、背景となる平面(画像中に映る床や壁)を傾斜がないように映すことによって、これら画像処理における前処理を単純化することができる。
【0003】
例えば、ステレオカメラで天井から真下方向を撮影することによって、人間が移動する軌跡を検出しようとする場合を考える。この場合、ステレオカメラ(以下、単にカメラともいう)で撮影した視差画像は、カメラからの距離を表す距離画像としての処理を経て、床からの高さを表す高さ画像として扱われる。この場合、床面を高さゼロの基準面として用いなければならない。しかし、カメラの取付け角度が傾斜していると、見かけ上、床面自体が傾斜しているかのように画像が撮影されてしまい、画像中の床面自体から傾斜に応じて高さを検出してしまう。そのため、画像中において床面の傾斜がなくなるように画像を前処理しなければ、画像中の床面を基準面として用いることができず、画像処理における前処理が複雑になってしまう。よって、画像処理における前処理を複雑にしないために、床面を傾斜なく水平に撮影することが重要である。
【0004】
背景となる平面(例えば、床面)を傾斜がないように映すために、撮影の中心軸が平面に対して垂直な状態で撮影できるようにすることが必要である。例えば、基準面となる平面が傾斜がないように撮影するために、図8及び図9に示すように、平面に垂直にポールを立て、カメラから見てポールの上部だけが映り側面が映らない様な状態にポール位置を調整して、ポールに画像の中心を合わせる方法がある。
【0005】
また、映像中の平面の傾きを検出できる装置として、例えば、特許文献1には、画像中に映し出される物体の面の傾きを小領域レベルで算出する画像処理装置が記載されている。特許文献1に記載された画像処理装置では、伸縮率を示す伸縮パラメータを特定し、特定した伸縮パラメータに基づいて、ストレオカメラの垂直軸回りにおける物体の面の傾きを算出する。
【0006】
【特許文献1】特開2005−92772号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
背景となる平面を傾斜がないようにするために垂直なポールを用いて撮影する場合、まず、画像を撮影する前にポールの位置調整作業をする必要がある。この場合、カメラに映し出される画面上で、ポールが垂直に見える様にポールを移動する等の調整作業をしなければならず、時間がかかり煩雑である。また、調整作業を手作業で行なわなければならず、ポール位置の誤差(調整誤差)が加わることになり、完全に平面を傾斜がないように撮影することはできない。さらに、ポールの位置調整を行なった後に、カメラの向きの調整を行なわなければならないが、機構調整を行なうだけでは画素単位の微妙な調整を行なうことは容易ではない。
【0008】
また、特許文献1に記載された画像処理装置を用いれば、画像中の面の傾きを小領域レベルで検出することはできる。しかし、画像中の平面を基準面として用いて画像処理を行う場合において、基準面となる平面が傾斜がないように画像を撮影したり、カメラの向き調整を行なったりすることはできない。
【0009】
そこで、本発明は、簡易な方法で、基準面となる平面を傾斜がないように微調整して画像を撮影することができる撮影調整方法、撮影調整システム及び撮影調整プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による撮影調整方法は、撮影手段(例えば、カメラ10)に対向する平面に設置された鏡に映る当該撮影手段自体を含む画像を撮影する撮影ステップと、撮影手段が撮影した撮影画像に含まれる当該撮影手段の中心位置を検出することによって、平面の法線方向を検出する法線方向検出ステップと、撮影手段が撮影した撮影画像から所定の部分画像を抽出する際の抽出開始点(例えば、切り出し開始点)を算出する抽出開始点算出ステップと、算出した抽出開始点に基づいて、撮影手段が撮影した撮影画像から所定の部分画像を抽出する部分画像抽出ステップとを含み、抽出開始点算出ステップで、平面の法線方向と撮影方向とが合致するように、撮影画像から所定の部分画像を抽出する抽出開始点を補正し、部分画像抽出ステップで、補正した抽出開始点から所定の部分画像を抽出することを特徴とする。
【0011】
本発明による撮影調整システムは、撮影手段(例えば、カメラ10)に対向する平面に設置された鏡に映る当該撮影手段自体を含む画像を入力する撮影画像入力手段(例えば、前処理部201によって実現される)と、撮影手段が撮影した撮影画像に含まれる当該撮影手段の中心位置を検出することによって、平面の法線方向を検出する法線方向検出手段(例えば、カメラ中心検出部202によって実現される)と、撮影手段が撮影した撮影画像から所定の部分画像を抽出する際の抽出開始点(例えば、切り出し開始点)を算出する抽出開始点算出手段(例えば、切出開始点計算部204によって実現される)と、抽出開始点算出手段が算出した抽出開始点に基づいて、撮影手段が撮影した撮影画像から所定の部分画像を抽出する部分画像抽出手段(例えば、部分切出部205によって実現される)とを備え、抽出開始点算出手段は、平面の法線方向と撮影方向とが合致するように、撮影画像から所定の部分画像を抽出する抽出開始点を補正し、部分画像抽出手段は、抽出開始点算出手段が補正した抽出開始点から所定の部分画像を抽出することを特徴とする。
【0012】
また、撮影調整システムは、部分画像抽出手段が抽出した所定の部分画像の周囲の部分の画像を補完する補完処理を実行する周囲画像補完手段(例えば、周囲補完部206によって実現される)と、周囲画像補完手段によって補完処理された所定の部分画像を出力する画像出力手段(例えば、合成表示部207によって実現される)とを備えていてもよい。そのような構成によれば、抽出した部分画像を元画像のサイズに合わせて出力することができる。
【0013】
また、撮影調整システムにおいて、法線方向検出手段は、予め設定する所定の閾値(例えば、黒閾値)に基づいて、撮影手段が撮影した撮影画像に含まれる当該撮影手段の中心位置を検出するようにしてもよい。そのような構成によれば、閾値判定を行なうことによって、撮影手段の中心位置を容易に検出することができる。
【0014】
また、撮影調整システムにおいて、法線方向検出手段は、撮影手段が撮影した撮影画像に含まれる当該撮影手段の中心位置と、撮影画像の中心位置との差を求めることによって、平面の法線方向と撮影方向とのズレ値を求め、抽出開始点算出手段は、法線方向検出手段が求めた平面の法線方向と撮影方向とのズレ値に基づいて、平面の法線方向と撮影方向とが合致するように抽出開始点を補正するようにしてもよい。
【0015】
本発明による撮影調整プログラムは、コンピュータに、撮影手段に対向する平面に設置された鏡に映る当該撮影手段自体を含む画像を入力する撮影画像入力処理と、撮影手段が撮影した撮影画像に含まれる当該撮影手段の中心位置を検出することによって、平面の法線方向を検出する法線方向検出処理と、撮影手段が撮影した撮影画像から所定の部分画像を抽出する際の抽出開始点を算出する抽出開始点算出処理と、算出した抽出開始点に基づいて、撮影手段が撮影した撮影画像から所定の部分画像を抽出する部分画像抽出処理とを実行させ、抽出開始点算出処理で、平面の法線方向と撮影方向とが合致するように、撮影画像から所定の部分画像を抽出する抽出開始点を補正する処理を実行させ、部分画像抽出処理で、補正した抽出開始点から所定の部分画像を抽出する処理を実行させるためのものである。
【0016】
本発明では、平面に鏡を置いてカメラ自体を映すと、平面の法線方向を検出できることを利用する。モニタに映るカメラの中心がモニタの表示画面の中心にくるように撮影方向を調整すると、カメラが平面の法線方向を向いた状態にすることができ、平面を傾斜なく撮影することができる。また、メカニカルな調整では難しい撮影方向の微調整を行なう場合には、システムに画像の切り出し機能をもたせ、切り出し開始点を変更することによって微調整機能を実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、平面の法線方向と撮影方向とが合致するように、撮影画像から所定の部分画像を抽出する抽出開始点を補正し、補正した抽出開始点から所定の部分画像を抽出するので、撮影画像から所定の部分画像を抽出することによって撮影方向の微調整機能を備えることができる。具体的には、撮影調整時に、鏡を利用してモニタの中央部付近で鏡が映るように平面に鏡を置くことだけで、誰でも短時間に平面を傾斜なく撮影するための微調整を行なうことができる。そのため、画像処理の前処理が単純化され、基準面の安定化や背景除去等の処理の確実性を増加させることができ、画像処理の性能の向上を図ることができる。従って、簡易な方法で、基準面となる平面を傾斜がないように微調整して画像を撮影することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明による撮影調整方法を用いた撮影調整システムの構成の一例を示すブロック図である。本実施の形態では、2.5mの高さの天井にカメラ10を設置し、カメラ10から真下方向を90度の角度で広角撮影する場合に、撮影調整システムを撮影方向の自動調整に応用する例を説明する。また、本実施の形態では、基準面となる平面として床面を傾斜がないように調整して画像を撮影する場合を説明する。また、本実施の形態において、撮影調整システムは、例えば、所定の撮影領域内において人間が移動する軌跡を検出するシステム等の用途に適用できる。
【0019】
図1に示すように、撮影調整システムは、前処理部201、カメラ中心検出部202、切出開始点補正値カウンタ203、切出開始点計算部204、部分切出部205、周囲補完部206、合成表示部207、統括制御部208、表示部209及び入力部210を含む。なお、撮影調整システムは、具体的には、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置によって実現される。
【0020】
カメラ10は、例えば、ステレオカメラ等によって実現される。カメラ10は、天井に設置され、天井からほぼ真下方向を撮影するようにあらかじめ設置される。なお、本実施の形態において、画像を撮影する際の微調整は、カメラ10の向き等を調整することによって行なう。また、本実施の形態では、カメラ10と対向する床面の箇所に鏡が設置され、カメラ10は、鏡に映るカメラ10自身を含む画像を撮影する。
【0021】
前処理部201は、具体的には、プログラムに従って動作する情報処理装置のCPUによって実現される。前処理部201は、カメラ10に対向する平面に設置された鏡に映るカメラ10自体を含む画像を入力する機能を備える。また、前処理部201は、カメラ10から入力した画像から、孤立点(画像中に含まれる孤立した点)を除去する等の前処理を実行する機能を備える。
【0022】
カメラ中心検出部202は、具体的には、プログラムに従って動作する情報処理装置のCPUによって実現される。また、カメラ中心検出部202は、画像中の中心部分に映るカメラ10自身の中心位置を検出する機能を備える。本実施の形態では、カメラ中心検出部202は、カメラ10が撮影した撮影画像に含まれるカメラ10自身の中心位置を検出することによって、平面の法線方向を検出する。
【0023】
切出開始点補正値カウンタ203は、具体的には、情報処理装置が備えるハードディスク装置やメモリ等の記憶部に確保される。本実施の形態では、撮影調整システムは、カメラ10が撮影した画像から所定パーセント分(例えば、90パーセント分)の部分画像を切り出して出力画像として出力する。切出開始点補正値カウンタ203が記憶するカウント値は、ユーザのマニュアル操作によって部分画像の切り出し開始点を微調整する場合に用いられる。
【0024】
切出開始点計算部204は、具体的には、プログラムに従って動作する情報処理装置のCPUによって実現される。切出開始点計算部204は、撮影画像から画像を切り出す際の切り出し開始点を算出する機能を備える。また、切出開始点計算部204は、平面の法線方向と撮影方向とが合致するように切り出し開始点を補正する機能を備える。また、ユーザのマニュアル操作によって切り出し開始点を微調整する場合には、切出開始点計算部204は、切出開始点補正値カウンタ203が記憶するカウント値に基づいて、切り出し開始点を算出する。
【0025】
部分切出部205は、具体的には、プログラムに従って動作する情報処理装置のCPUによって実現される。部分切出部205は、切出開始点計算部204が算出(又は補正)した切り出し開始点に基づいて、カメラ10が撮影した画像から部分画像を抽出する機能を備える。
【0026】
周囲補完部206は、具体的には、プログラムに従って動作する情報処理装置のCPUによって実現される。周囲補完部206は、部分切出部205が抽出した部分画像の周囲を補完する補完処理を実行する機能を備える。例えば、周囲補完部206は、部分画像の周囲に所定の固定色の画像を補完し、カメラ10が撮影した撮影画像と同サイズの画像を生成する。
【0027】
合成表示部207は、具体的には、プログラムに従って動作する情報処理装置のCPUによって実現される。合成表示部207は、周囲補完部206が補完処理を行った画像を出力画像として表示部209に表示させる機能を備える。なお、合成表示部207は、統括制御部208からの表示情報に基づいて、出力画像に所定の加工を加え、出力画像として表示部209に表示させる。
【0028】
統括制御部208は、具体的には、プログラムに従って動作する情報処理装置のCPUによって実現される。統括制御部208は、画像調整を行なう際の各種設定画面を表示部209に表示させる機能を備える。また、統括制御部208は、ユーザの操作に従って、入力部210から各種操作情報を入力する機能を備える。
【0029】
表示部209は、具体的には、ディスプレイ装置等の表示装置によって実現される。表示部209は、合成表示部207の指示に従って画像を表示したり、統括制御部208の指示に従って各種設定画面を表示する機能を備える。
【0030】
入力部210は、具体的には、キーボードやマウス等の入力装置によって実現される。入力部210は、ユーザの操作に従って、各種操作情報を入力し、統括制御部208に出力する機能を備える。
【0031】
なお、本実施の形態において、映像調整システムを実現する情報処理装置の記憶装置(図示せず)は、基準面となる平面を傾斜がないように調整して画像を撮影するための各種プログラムを記憶している。例えば、情報処理装置の記憶装置は、コンピュータに、撮影手段に対向する平面に設置された鏡に映る当該撮影手段自体を含む画像を入力する撮影画像入力処理と、撮影手段が撮影した撮影画像に含まれる当該撮影手段の中心位置を検出することによって、平面の法線方向を検出する法線方向検出処理と、撮影手段が撮影した撮影画像から所定の部分画像を抽出する際の抽出開始点を算出する抽出開始点算出処理と、算出した抽出開始点に基づいて、撮影手段が撮影した撮影画像から所定の部分画像を抽出する部分画像抽出処理とを実行させ、抽出開始点算出処理で、平面の法線方向と撮影方向とが合致するように、撮影画像から所定の部分画像を抽出する抽出開始点を補正する処理を実行させ、部分画像抽出処理で、補正した抽出開始点から所定の部分画像を抽出する処理を実行させるための映像調整プログラムを記憶している。
【0032】
次に、動作について説明する。図2は、撮影調整システムを用いて、基準面となる平面を傾斜がないように調整して映像を撮影する場合の処理の一例を示すフローチャートである。なお、図2は、2.5mの高さの天井にカメラ10を設置するとともに、カメラ10から真下方向を90度の角度で広角撮影し、基準面となる床面を傾斜がないように調整して映像を撮影する場合の処理を示す。
【0033】
本実施の形態では、撮影調整システムは、画像処理により、カメラ10の中心を検出することで自動調整を実現する。本実施の形態では、前提として、微調整の幅を画角の±5パーセントとし、有効画角を撮影画像全体の画角に対して90パーセントとする。従って、カメラ10のレンズとして水平方向の画角100度のものを用いると、結果として水平方向の画角90度の映像が出力されることになる。また、垂直方向の有効画角が水平方向の画角90度の3/4倍のものを用いるものとする。従って、垂直方向の画角67.5度の映像が出力されることになる。
【0034】
なお、カメラ10が撮影する画像の撮影サイズ(画素を用いて表したサイズ)は、640×480画素であるとする。従って、画角の5パーセントは、それぞれ画素に換算すると、水平方向に対して32画素、及び垂直方向に対して24画素に相当する。また、微調整の幅である画角の±5パーセントは、それぞれ水平方向に対して±5度、及び垂直方向に対して±3.375度に相当する。
【0035】
また、図3に示すように、カメラ10と対向する床面の箇所に鏡を設置するものとする。この場合、カメラ10自体は、鏡で往復されて撮影されるため(すなわち、カメラ10は、鏡にカメラ10自身が映った画像を撮影することになるため)、撮影距離は5mになる。なお、本実施の形態では、100度の広角撮影を行なうので、カメラ10自体は画像中に小さくしか映らない。また、フォーカスも撮影距離5mであるカメラ10自体には合っていない。
【0036】
本実施の形態では、上記に示した点を考慮し、画像処理において検出するものを調整時のカメラ10中心に絞り、調整時に条件を整えて、単純な画像処理で行う。
【0037】
まず、本実施の形態では、鏡に映る天井の色とカメラ10の色の違いを利用して処理を実行する。以下、説明を簡単にするため、天井が白色で、カメラ10の色を相対的に黒色として検出する方法を用いる場合を説明する。なお、本実施の形態で示す天井及びカメラ10の色は一例であり、天井の色とカメラ10の色とを区別しやすい色であれば、白と黒以外の例えば水色と茶色を用いて処理を行なってもよい。
【0038】
また、天井の色とカメラ10の色が近い色合いである場合(例えば、白と薄いグレイである場合)、撮影の間だけ一時的に天井のカメラ10周囲に白い紙を貼ったり、カメラ10に黒テープを貼る等してカメラ10を抽出しやすくすればよい。
【0039】
また、床面に設置する鏡として大きなものを用いる必要はなく、A4程度の大きさの鏡を用いれば十分である。なお、撮影に用いる鏡の大きさは、A4程度の大きさのものに限られず、例えば、さらに大きな鏡を用いてもよい。また、カメラ10を探す範囲も鏡の中央部に限定して処理を行なう。
【0040】
まず、映像撮影を開始する前の準備段階の動作について説明する。ユーザは、カメラ10に対してほぼ真下方向に鏡を置き、モニタ(例えば、表示部209)に表示される鏡の映像を見ながら、鏡の中央にカメラ10が映るように、鏡の位置を調整する。この場合、図4に示すように、映像中の鏡に映るカメラ10自身が鏡のほぼ中央になるように、鏡の左右位置及び前後位置を調整する。また、画像中のカメラ10の中心位置がモニタの表示画面の中心になるように、カメラ10の取り付け位置を調整する。
【0041】
次に、映像調整システムのカメラ中心検出部202は、ユーザの操作に従って、画像処理によって、撮影画像中のカメラ10の中心位置を検出することによって、床面の法線方向を検出する(ステップS101)。すなわち、平面に鏡を置いてカメラ10自体を映すと、鏡に映るカメラ10中心の方向は、常に平面に対する法線方向となるはずである。従って、カメラ中心検出部202は、カメラ10の中心位置を検出することによって、平面の法線方向を検出する。本実施の形態では、平面の法線方向に撮影方向を向けるようにすることによって、平面を傾斜なく撮影できるようにする。また、切出開始点計算部204は、撮影画像から部分画像を抽出する際の切り出し開始点を、後述する所定の標準値に設定する(ステップS102)。
【0042】
以上のように、事前調整を行なうことによって、図5に示すように、カメラ10が多少傾斜しても鏡が真下方向に移るように調整される。
【0043】
次に、天井に設置したカメラ10を用いて所定の画角(本例では100度(結果として90度))の画像を撮影(例えば、人間が移動する軌跡を撮影)する動作を説明する。
【0044】
まず、映像調整システムの前処理部201は、カメラ10が撮影したカメラ映像を入力し、入力したカメラ映像から孤立点を除去する等の前処理を施す(ステップS103)。次いで、カメラ中心検出部202は、画像中の中心部分に映るカメラ10自身の位置(カメラ領域)を検出する(ステップS104)。具体的には、予め天井の白色とカメラ10の黒色とを分離するための所定の閾値(例えば、所定の輝度値)を設定しておく。そして、カメラ中心検出部202は、予め設定した所定の閾値に基づいて、画像中の各画素をニ値判定し、カメラ10とみなされる黒色の部分を抽出する。なお、所定の閾値は、例えば、情報処理装置が備えるるハードディスク装置やメモリ等の記憶部に予め記憶される。
【0045】
次に、カメラ中心検出部202は、画像の中央部に限定して、ラスタースキャンの方向に探索して、天井の白色に対し、カメラ10の黒色の部分を検出した画像中の座標の最小値と最大値とを求める(ステップS105)。この場合、カメラ中心検出部202は、X軸及びY軸それぞれの方向について最大値と最小値とを求める。
【0046】
次に、カメラ中心検出部202は、X軸及びY軸それぞれについて、求めた最小値と最大値との平均値をカメラ10の中心位置として算出する(ステップS106)。例えば、図6に示すように、求めたカメラ領域の左端をXmin、右端をXmax、前の端をYmin及び後ろの端をYmaxとすると、カメラ中心検出部202は、カメラ10位置の中心座標を式(1)を用いて求めることができる。
【0047】
X=(Xmin+Xmax)/2
Y=(Ymin+Ymax)/2 式(1)
【0048】
ここで求めた座標値(カメラ10の中心位置)と画像の中心位置とのズレ値が、床面の法線方向と現在の撮影方向とのズレ値を表す。カメラ中心検出部202は、床面の法線方向と現在の撮影方向とのズレ値を求め、補正値として切出開始点計算部204に渡す(出力する)。
【0049】
次に、切出開始点計算部204は、切出開始点補正値カウンタ203が記憶するカウント値に基づいて、撮影画像から画像を切り出す際の切り出し開始点を算出する(ステップS107)。
【0050】
切り出し開始点を算出する際に、撮影方向の調整は、撮影調整システムに画像の切り出し機能をもたせ、切り出し開始点を変更することによって実現できる。本実施の形態では、切り出し開始点の標準値を、元画像(カメラ10が撮影した状態の画像(すなわち、加工前の画像))の原点位置(例えば、撮影画像の左上端の点)から5パーセント(32,24)の位置とする。この切り出し開始点に画像処理によって求めたズレ値を加算した点が、実際の開始点として求まる。なお、±5パーセントの調整は、X軸及びY軸方向それぞれに±32画素及び±24画素を可変することによって実現できる。
【0051】
次に、部分切出部205は、切出開始点計算部204が求めた切り出し開始点から元画像の90パーセントの部分画像(576×432画素の部分画像)を切り出す処理を行う(ステップS108)。
【0052】
この実施の形態では、カメラ10の方向を変える代わりに、撮影画像の一部を切り出して出力画像とし、その画像の切り出し部分を変えることによって、撮影の中心方向を変えるように処理を行なう。具体的には、切り出し開始点を移動させることによって、撮影の中心位置も移動させることができる。例えば、以上に示した処理を実行し、表示画面の中心方向のズレ値を補正(符号付加算)することによって、図7に示すように、カメラ10の中心位置とモニタの表示画面の中心位置(320,240)とのズレ値を補正することができ、出力画像の中心にカメラ10の中心位置を合わせることができる。
【0053】
次に、周囲補完部206は、必要に応じて、部分切出部205が抽出した部分画像の周囲を補完する補完処理を実行する(ステップS109)。例えば、出力画像を元画像のサイズに加工して表示する場合には、周囲補完部206は、部分切出部205が抽出した部分画像を111.1パーセントの大きさに拡大することによって補完処理を行なう。また、例えば、周囲補完部206は、部分画像の周囲の不足分を所定の固定色の画像を付加することによって、元画像のサイズに加工する。
【0054】
そして、合成表示部207は、周囲補完部206が補完処理した画像を出力する(ステップS110)。例えば、合成表示部207は、補完処理した画像を表示部209に表示させる。
【0055】
また、自動調整が正しく行なわれたかをユーザが確認できるようにするために、モニタ(表示部209)の表示画面の中心にカーソルを表示するようにすることが望ましい。この場合、カーソルの中心位置にカメラ10の中心位置が表示されていれば(すなわち、カメラ10の中心位置と表示画面の中心位置とが一致していれば)、映像調整システムによる自動調整が成功していることがわかる。
【0056】
また、画像処理がうまく処理できなかった場合等を想定して、マニュアルで画像を補正する機能を備えてもよい。例えば、統括制御部208は、表示画面上で左右前後の4方向に対応したボタンを表示部209に表示させる。そして、ユーザは、表示部209の表示画面を見ながら、入力部210を操作して、表示画面上のボタンをマウスクリック等することによって切り出し開始点を1画素ずつ移動する。この場合、切り出し開始点のX座標及びY座標に、標準値(32,24)の固定値を入れる代わりに、初期値を(32,24)とするXカウンタ及びYカウンタを用いてもよい。そして、ユーザによって4方向のボタンが押される毎に、統括制御部208は、増減パルスを生成し、対応するカウンタ(切出開始点補正値カウンタ203に含まれるXカウンタ及びYカウンタ)を1画素単位で増減(カウンタの値をインクリメント又はディクリメント)してもよい。
【0057】
なお、画像処理を用いて法線方向とのズレを検出することによって自動調整する場合には一度にズレ値を補正することができるが、マニュアル操作で調整する場合にはモニタの表示画面を見ながらの操作であるため、何画素ズレているかを目視により計測することは現実的ではない。従って、1操作で1画素だけ移動して、モニタを見ながらボタン操作を繰り返す方法により調整作業を行なうように構成すればよい。
【0058】
以上、本実施の形態では、一例として、天井に設置したカメラ10から床面を傾斜なく撮影するように自動調整する方法を説明したが、映像調整システムを平面を傾斜がないように画像を撮影する他の画像処理装置に適用してよい。
【0059】
以上のように、本実施の形態によれば、カメラ中心検出部202は、カメラ10が撮影した撮影画像に含まれるカメラ10自身の中心位置を検出することによって、平面の法線方向を検出する。また、切出開始点計算部204は、カメラ10が撮影した撮影画像から切り出し開始点を算出し、部分切出部205は、切出開始点計算部204が算出した切り出し開始点に基づいて、カメラ10が撮影した撮影画像から部分画像を抽出する。また、切出開始点計算部204は、平面の法線方向と撮影方向とが合致するように、切り出し開始点を補正し、部分切出部205は、切出開始点計算部204が補正した切り出し開始点から部分画像を抽出する。
【0060】
上記のように構成することによって、撮影画像の部分切り出しによる撮影方向の微調整機能を備えることができる。具体的には、撮影調整時に、鏡を利用してモニタの中央部付近で鏡が映るように平面に鏡を置くことだけで、誰でも短時間に平面を傾斜なく撮影するための微調整を行なうことができる。そのため、画像処理の前処理が単純化され、基準面の安定化や背景除去等の処理の確実性を増加させることができ、画像処理の性能の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、例えば、ステレオカメラで天井から真下方向を撮影することによって、人間が移動する軌跡を検出するシステムにおいて、基準面となる平面(床面)を傾斜がないように自動調整する用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明による撮影調整方法を用いた撮影調整システムの構成の一例を示すブロック図である。
【図2】撮影調整システムを用いて、基準面となる平面を傾斜がないように調整して映像を撮影する場合の処理の一例を示すフローチャートである。
【図3】カメラと床面の鏡との位置関係を示す説明図である。
【図4】カメラに対する鏡の位置の調整の仕方を示す説明図である。
【図5】カメラが傾斜した場合のカメラと床面の鏡との位置関係を示す説明図である。
【図6】撮影画像中のカメラ領域の例を示す説明図である。
【図7】カメラの中心位置とモニタの表示画面の中心位置とのズレ値を補正する例を示す説明図である。
【図8】従来の平面に垂直にポールを立てて、カメラから見たポール位置を調整する方法を示す説明図である。
【図9】従来の平面に垂直にポールを立てて、カメラから見たポール位置を調整する方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0063】
10 カメラ
201 前処理部
202 カメラ中心検出部
203 切出開始点補正値カウンタ
204 切出開始点計算部
205 部分切出部
206 周囲補完部
207 合成表示部
208 統括制御部
209 表示部
210 入力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影手段に対向する平面に設置された鏡に映る当該撮影手段自体を含む画像を撮影する撮影ステップと、
前記撮影手段が撮影した撮影画像に含まれる当該撮影手段の中心位置を検出することによって、前記平面の法線方向を検出する法線方向検出ステップと、
前記撮影手段が撮影した撮影画像から所定の部分画像を抽出する際の抽出開始点を算出する抽出開始点算出ステップと、
算出した抽出開始点に基づいて、前記撮影手段が撮影した撮影画像から所定の部分画像を抽出する部分画像抽出ステップとを含み、
前記抽出開始点算出ステップで、前記平面の法線方向と撮影方向とが合致するように、前記撮影画像から前記所定の部分画像を抽出する抽出開始点を補正し、
前記部分画像抽出ステップで、補正した抽出開始点から前記所定の部分画像を抽出することを特徴とする撮影調整方法。
【請求項2】
撮影手段に対向する平面に設置された鏡に映る当該撮影手段自体を含む画像を入力する撮影画像入力手段と、
前記撮影手段が撮影した撮影画像に含まれる当該撮影手段の中心位置を検出することによって、前記平面の法線方向を検出する法線方向検出手段と、
前記撮影手段が撮影した撮影画像から所定の部分画像を抽出する際の抽出開始点を算出する抽出開始点算出手段と、
前記抽出開始点算出手段が算出した抽出開始点に基づいて、前記撮影手段が撮影した撮影画像から所定の部分画像を抽出する部分画像抽出手段とを備え、
前記抽出開始点算出手段は、前記平面の法線方向と撮影方向とが合致するように、前記撮影画像から前記所定の部分画像を抽出する抽出開始点を補正し、
前記部分画像抽出手段は、前記抽出開始点算出手段が補正した抽出開始点から前記所定の部分画像を抽出することを特徴とする撮影調整システム。
【請求項3】
部分画像抽出手段が抽出した所定の部分画像の周囲の部分の画像を補完する補完処理を実行する周囲画像補完手段と、
前記周囲画像補完手段によって補完処理された前記所定の部分画像を出力する画像出力手段とを備えた請求項2記載の撮影調整システム。
【請求項4】
法線方向検出手段は、予め設定する所定の閾値に基づいて、撮影手段が撮影した撮影画像に含まれる当該撮影手段の中心位置を検出する請求項2又は請求項3記載の撮影調整システム。
【請求項5】
法線方向検出手段は、撮影手段が撮影した撮影画像に含まれる当該撮影手段の中心位置と、撮影画像の中心位置との差を求めることによって、平面の法線方向と撮影方向とのズレ値を求め、
抽出開始点算出手段は、前記法線方向検出手段が求めた前記平面の法線方向と撮影方向とのズレ値に基づいて、前記平面の法線方向と撮影方向とが合致するように抽出開始点を補正する請求項2から請求項4のうちのいずれか1項に記載の撮影調整システム。
【請求項6】
コンピュータに、
撮影手段に対向する平面に設置された鏡に映る当該撮影手段自体を含む画像を入力する撮影画像入力処理と、
前記撮影手段が撮影した撮影画像に含まれる当該撮影手段の中心位置を検出することによって、前記平面の法線方向を検出する法線方向検出処理と、
前記撮影手段が撮影した撮影画像から所定の部分画像を抽出する際の抽出開始点を算出する抽出開始点算出処理と、
算出した抽出開始点に基づいて、前記撮影手段が撮影した撮影画像から所定の部分画像を抽出する部分画像抽出処理とを実行させ、
前記抽出開始点算出処理で、前記平面の法線方向と撮影方向とが合致するように、前記撮影画像から前記所定の部分画像を抽出する抽出開始点を補正する処理を実行させ、
前記部分画像抽出処理で、補正した抽出開始点から前記所定の部分画像を抽出する処理を実行させるための撮影調整プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−148108(P2008−148108A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−334416(P2006−334416)
【出願日】平成18年12月12日(2006.12.12)
【出願人】(000210964)中央電子株式会社 (81)
【Fターム(参考)】