説明

撹拌装置

【課題】エネルギー消費が少なく、確実に槽内全域に渡って液体を撹拌し、汚水の処理効率を向上する。
【解決手段】水槽10Bに液体を供給するポンプ19に第1の端部20aが接続され、水槽10B内の液中に第2の端部20bが配置された吐出管20と、吐出管20の第2の端部20bに接続されるとともに、第1および第4側壁12A,12D間の隅部に配設され、これら第1および第4側壁12A,12D間にかけて延び、これら第1および第4側壁12A.12D間の隅部に対して対角に位置する第2および第3側壁12B,12C間の隅部を臨む吐出口24を有するディフューザ22とを備えた構成とする。または、流入口14の開口部分を除く第1および第2側壁12A,12B間の隅部近傍に配設され、対角に位置する流出口15を臨む吐出口24を有するディフューザ22を備えた構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水槽内の液体を撹拌し、液体の混合や反応等を促進させる撹拌装置に関し、特に、汚泥処理設備の処理槽に好適に適用されるものである。
【背景技術】
【0002】
図11に示すように、汚水を浄化する汚泥処理設備は、流量調整槽1と、生物処理槽2と、沈殿槽3と、濃縮槽4と、貯留槽5と、汚泥可溶化装置6とを備えている。そして、処理される有機性の汚水は、流量調整槽1により流量が調整されて生物処理槽2に供給され、この生物処理槽2で生物学的処理がなされる。この生物学的処理により生じた汚泥を含む汚水は沈殿槽3に導入され、処理済みの上澄み水と沈降する汚泥とに分離される。そして、上澄み水は管路7aから設備外に排出される一方、沈降した汚泥は、一部が生物処理槽2に戻され、残部は濃縮槽4で濃縮された後、貯留槽5に貯留される。この貯留槽5内の汚泥の一部は、該貯留槽5から引き抜かれ、焼却等の処理がなされる。また、貯留槽5内の汚泥の残部は、管路7bを介して汚泥可溶化装置6に供給され、該汚泥可溶化装置6で分解され、可溶化された後、管路7cおよび流量調整槽1を介して生物処理槽2に戻され、再び生物学的処理がなされる。
【0003】
ここで、前記生物学的な処理は、分子状酸素を利用するか否かで、好気性処理方法と嫌気性処理方法とに分類されている。好気性処理方法は、生物処理槽2内に好気性の微生物が投入され、図示のように、この生物処理槽2内に曝気装置8などによって酸素を供給しながら撹拌することにより分解(反応)を促進させるものである。一方、嫌気性処理方法は、生物処理槽2内に嫌気性の微生物が投入され、この生物処理槽2内に図示の曝気装置8で酸素を供給することなく撹拌することにより、分解を促進させるものである。
【0004】
前記生物処理槽2内で液体を撹拌させる撹拌装置としては、撹拌羽根を備えるミキサー型、撹拌羽根による機械的な撹拌と曝気を併用したエアレータ型、および、水槽中に空気を供給する散気型が知られている。また、特許文献1には水槽内に配置した水中ポンプで水槽中の液体を循環させる循環型の撹拌装置が記載されている。
【0005】
【特許文献1】登録実用新案第3018877号公報
【0006】
しかしながら、これらの撹拌装置は、いずれも撹拌のために専用の動力源が必要であり、運転中は撹拌装置のみのエネルギー消費がある。また、ミキサー型の撹拌装置は、微生物が生息した活性汚泥を撹拌羽根で破壊し、汚水処理の効率低下を招くという問題がある。さらに、処理槽の底に上流側からの流入口と、下流側への流出口が存在する場合、特許文献1に記載の撹拌装置では、給排水による水流と撹拌による水流とが逆向きになり、互いに打ち消しあうように作用する部分が生じる。そうすると、沈降を防止できるだけの流速が得られない領域が生じたり、水流が行き渡らない澱み領域が生じる。その結果、それらの領域に活性汚泥が沈殿し、汚水処理の効率低下を招くという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の問題に鑑みてなされたもので、エネルギー消費が少なく、確実に槽内全域に渡って液体を撹拌し、汚水の処理効率を向上できる撹拌装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、第1発明の撹拌装置は、矩形状をなす底壁の外周縁に第1から第4の側壁が順番に立設された直方体形状をなし、その第1側壁における第2側壁と交わる隅部近傍で且つ底壁近傍に位置するように流入口が設けられるとともに、前記第3側壁における第4側壁と交わる隅部近傍で且つ底壁近傍に位置するように流出口が設けられた水槽内の液体を撹拌する撹拌装置であって、前記水槽に液体を供給するポンプに第1の端部が接続され、前記水槽内の液中に第2の端部が配置された吐出管と、前記吐出管の前記第2の端部に接続されるとともに、前記第1および第4側壁間の隅部に配設され、これら第1および第4側壁間にかけて延び、且つ、第1および第4側壁間の隅部に対して対角に位置する前記第2および第3側壁間の隅部を臨む吐出口を有するディフューザとを備えた構成としている。
【0009】
また、第2発明の撹拌装置は、第1発明と同様に使用される撹拌装置であって、前記水槽に液体を供給するポンプに第1の端部が接続され、前記水槽内の液中に第2の端部が配置された吐出管と、前記吐出管の前記第2の端部に接続されるとともに、前記流入口の開口部分を除く前記第1および第2側壁間の隅部近傍に配設され、これら第1および第2側壁間に向けて延び、且つ、これら第1および第2側壁間の隅部に対して対角に位置する前記流出口を臨む吐出口を有するディフューザとを備えた構成としている。
【0010】
本発明の撹拌装置のディフューザには、隣接する側壁にかけて延びるように吐出口を設けているため、この吐出口から液体を吐出すると、その水流が水槽の底壁の全面に沿って行き渡るように供給される。そして、第1発明の撹拌装置は、前記ディフューザが流入口を設けた第1側壁と隣接する第4側壁間の隅部に配設され、その吐出口が対角に位置する第2および第3側壁間の隅部を臨むように配設されている。また、第2発明の撹拌装置は、前記ディフューザが流入口の近傍に配設され、その吐出口が対角に位置する流出口を臨むように配設されている。そのため、ディフューザからの水流は、流入口から供給された液体の水流に対して逆向きになることはない。その結果、2つの水流が互いに打ち消しあうように作用することはなく、互いに相俟って1つの合流した水流を形成する。よって、水槽内の全域に渡って活性汚泥の沈降を防止できる流速を得ることができる。
【0011】
そして、この撹拌装置による撹拌作用は、専用の駆動源は必要なく、水槽に液体を供給するためのポンプが吐出する液体の動圧を無駄にすることなく水槽中の液体の撹拌作用に有効利用している。そのため、撹拌のみのためにエネルギーを消費することを防止できる。勿論、撹拌羽根のような回転部分はないため、水槽内の活性汚泥が破壊されるも防止できる。
【0012】
これら撹拌装置では、前記ディフューザは、内部に略L字形状に屈曲した流路を備え、その屈曲部分の内周部に流速の増大を防止する湾曲状部が設けることが好ましい。このようにすれば、水流を90度方向転換させるベンド構造のものにおいて、損失水頭を確実に抑制できる。
【0013】
また、前記吐出口を先端に形成した前記ディフューザの吐出部は平面視略三角形状をなし、その内部の流路は、前記吐出口にかけて広がる拡開角度を90度以上とすることが好ましい。このようにすれば、隣接する側壁と底壁との境界部分まで確実に水流を付与することができる。
【0014】
さらに、前記吐出口を縦横比が大きい横長形状とすることが好ましい。このようにすれば、底壁上に確実に所望の水流を付与することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の撹拌装置では、専用の駆動源を設けることなく、水槽に液体を供給するためのポンプの動圧により、水槽内の液中に配置したディフューザにおいて、隣接する側壁にかけて延びるように設けた吐出口から水槽内に吐出するため、その水流を水槽内の全域に行き渡らせることができる。そのため、水槽内の全域にかけて活性汚泥の沈降を防止できるだけの流速を得ることができる。また、撹拌装置には、撹拌羽根のような回転部分はないため、活性汚泥の破壊を確実に防止できる。その結果、活性汚泥に生息した微生物による汚水の処理効率を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0017】
図1から図4は、本発明の第1実施形態に係る撹拌装置21を適用した汚泥処理設備の生物処理槽2を示す。まず、この汚泥処理設備は、図11に示す従来と同様に、流量調整槽1と、生物処理槽2と、沈殿槽3と、濃縮槽4と、貯留槽5と、汚泥可溶化装置6とを備え、これらを管路7a〜7cにより接続したものである。
【0018】
本実施形態の生物処理槽2は、図1に示すように、直方体形状をなす3つの水槽10A〜10Cが直列に接続されたものである。例えば、上流側に位置する水槽10Aは嫌気槽であり、中央に位置する水槽10Bは嫌気槽の一種である無酸素槽であり、下流側に位置する水槽10Cは曝気装置8(図11参照)などによって酸素を供給する好気槽である。これら水槽10A〜10Cは、正方形状をなす底壁11を備え、その底壁11の各外周縁からそれぞれ第1から第4側壁12A〜12Dが順番に立設されている。これら側壁12A〜12Dは、平面視で隣接する側壁12B〜12Aとのなす角が90度である。
【0019】
そのうち、上流側に位置する第1側壁12Aには、隣接する第2側壁12Bとの隅部で、且つ、底壁11の近傍に位置するように流入口14が設けられている。また、下流側である第1側壁12Aと対向する第3側壁12Cには、平面視で流入口14に対して略対角に位置するように、第2側壁12Bと対向する第4側壁12Dとの隅部で、且つ、底壁11の近傍に位置するように流出口15が設けられている。そして、第2水槽10Bは、その第1側壁12Aが第1水槽10Aの第3側壁12Cと隣接するように配置された状態で、その流入口14が第1水槽10Aの流出口15と対向する位置に形成されている。また、第3水槽10Cは、その第1側壁12Aが第2水槽10Aの第3側壁12Cと隣接するように配置された状態で、その流入口14が第2水槽10Bの流出口15と対向する位置に形成されている。そして、水槽10Aの流入口14は、連結管16aにより上流側水槽である流量調整槽1に接続され、水槽10Bの流入口14は、連結管16bにより水槽10Aの流出口15に接続され、水槽10Cの流入口14は、連結管16cにより水槽10Bの流出口15に接続され、この水槽10Cの流出口15が、連結管16dにより下流側水槽である沈殿槽3に接続されている。
【0020】
また、生物処理槽2は、汚水の処理効率を向上するために、第3水槽10C内の処理済み汚水を第2水槽10Bに還流させる還流装置17が設けられている。この還流装置17は、一端が水槽10C内の液中に配置された吸水管18と、該吸水管18の他端に接続されたポンプ19と、該ポンプ19に一端が接続され他端が水槽10B内の液中に配置された吐出管20とからなる。そして、ポンプ19の駆動により、吸水管18を介して第3水槽10Cから汚水を吸い込んで、吐出管20を介して第2水槽10B内に吐出する構成としている。
【0021】
本実施形態では、この還流装置17を、第2水槽10B内の液体である汚水を撹拌する撹拌装置21として有効利用する構成としている。この撹拌装置21としての吐出管20は、図1および図2に示すように、第1の端部20aがポンプ19に接続され、他側の第2の端部20bが水槽10B内の液中に配管されている。且つ、第2の端部20bの配設位置は、水槽10Bの第1および第4側壁12A,12Dが交わる隅部に位置され、この隅部に沿って底壁11へ向けて上下方向に延びるように配管されている。
【0022】
そして、液中に配置された吐出管20の第2の端部20bには、ポンプ19の動圧による処理済み汚水で水槽10B内の未処理汚水を全域にかけて撹拌するディフューザ22が接続されている。このディフューザ22は、図3(A),(B)および図4(A),(B)に示すように、その内部に略L字形状に屈曲した流路23を形成し、垂直の水流を水平の水流とするベンド構造のものである。この流路23の先端には、横長の長方形状をなす吐出口24が形成されている。具体的には、このディフューザ22は、側面視略L字形状をなすディフューザ本体30の上端に、吐出管20に接続するための接続部25を接合するとともに、開口した下端に台座部28を接合したものである。
【0023】
まず、接続部25は、六角筒形状の金属筒からなり、その上端に吐出管20に接続するためのフランジ部26を設けたものである。このフランジ部26には、吐出管20の端部20bに形成したフランジ部20cと対応する連結孔27が設けられている。
【0024】
前記台座部28は、台形状の金属板からなり、その両側の斜辺のなす角は、水槽10Bにおける隣接する側壁12A〜12Dの隅部に配設するために90度に設定されている。この台座部28の両側縁近傍には、水槽10Bの底壁11に固定するための貫通孔29が所定間隔をもって複数設けられている。
【0025】
そして、ディフューザ本体30は、複数の金属板を接続することにより、側面視略直角三角形状で、且つ、正面視略二等辺三角形状をなすように形成したものである。具体的には、ディフューザ本体30の上端には、前記接続部25と同一の平面視六角筒状をなす接合部31を備えている。
【0026】
図3(B)に示すように、接合部31の後側縁には、台座部28にかけて垂直に延びる長方形状の第1垂直壁部32が設けられている。また、図3(A)に示すように、接合部31の前側縁には、垂直に延びるとともに下方両側に向けて広がる台形状の第2垂直壁部33が設けられ、この第2垂直壁部33から連続して第1から第4の傾斜壁部34〜37が順番に連設されている。
【0027】
具体的には、第2垂直壁部33の下端縁には、下方前向きに傾斜して延びるとともに下方両側に向けて広がる台形状をなす第1傾斜壁部34が設けられている。この第1傾斜壁部34の下端縁には、該第1傾斜壁部34より台座部28に対して緩やかな傾斜角度で下方前向きに延びるとともに下方両側に向けて広がる台形状をなす第2傾斜壁部35が設けられている。この第2傾斜壁部35の下端縁には、該第2傾斜壁部35より台座部28に対して更に緩やかな傾斜角度で下方前向きに延びるとともに下方両側に向けて広がる台形状をなす第3傾斜壁部36が設けられている。この第3傾斜壁部36の下端縁には、該第3傾斜壁部36より台座部28に対して更に緩やかな傾斜角度で下方前向きに延びるとともに下方両側に向けて広がる台形状をなす第4傾斜壁部37が設けられている。
【0028】
さらに、図3(A),(B)に示すように、接合部31の両側縁には、第2垂直壁部33の下端両側角部にかけて下方外向きに傾斜して延びる三角形状の傾斜側壁部38A,38Bが設けられている。さらにまた、図3(B)に示すように、接合部31の後側において傾斜した縁には、垂直に延び、その上端縁が前記傾斜側壁部38A,38Bの後側縁、第1傾斜壁部34の両側縁、第2傾斜壁部35の両側縁、第3傾斜壁部36の両側縁、第4傾斜壁部37の両側縁と接合される形状とした垂直側壁部39A,39Bが設けられている。
【0029】
これにより、図4(A)に示すように、ディフューザ22の内部には、略L字形状をなし、その屈曲部分の内周部に傾斜壁部34〜37からなる湾曲状部23aを有する流路23が形成される。この湾曲状部23aは、この屈曲部分の内周部での流速の増大を防止する役割をなす。また、この流路23には、台座部28、第4傾斜壁部37および垂直側壁部39A,39Bにより囲繞された先端部分内部に横長の長方形状をなす吐出口24(図3(A)参照)が形成される。図4(B)に示すように、この吐出口24を有する傾斜壁部34〜37および垂直側壁部39A,39Bからなる吐出部40は、平面視三角形状をなし、その内部の流路23は、前記吐出口24にかけて漸次広がるように形成されている。ここで、流路23は、図4(A)に示すように、垂直方向に見ると、下方に向けて開口面積が順次広くなり、水平方向に見ると、吐出口24に向けて開口面積が順次狭くなる。即ち、吐出部40は、吐出口24に向けて横幅は広くなるが、その開口面積は順次狭くなり、十分な吐出流速が得られるように構成している。なお、本実施形態では、吐出口24は、縦横比を約1:64として極端に比率が大きな横長扁平形状に形成されている。また、図4(B)に示すように、吐出部40における流路23の拡開角度αは、90度以上である約96度となるように形成されている。
【0030】
このように構成されたディフューザ22は、前記吐出管20に接続され、流入口14を形成した第1側壁12Aと隣接する第4側壁12Dの間に位置するように、底壁11の隅部に配置される。これにより、吐出口24は、第1および第4側壁12A,12Dの間の隅部に対して、対角に位置する第2および第3側壁12B,12C間の隅部を臨む。
【0031】
ここで、ポンプ19の動力による水槽10B内の撹拌能力(動力)Pは、吐出水量Qと、吐出流速Cと、重力加速度gとに大きな関係があり、下記の数式で表される。
【0032】
【数1】

【0033】
そして、撹拌動力Pが大きければ、水槽10B内の撹拌作用が大きくなり、十分な効果を得ることができる。しかし、ポンプ19の吐出流速より吐出口24からの吐出流速Cが大きくなると、ポンプ19の軸動力が増大し、過大な動力を有する高価なポンプを使用する必要がある。また、本実施形態のように、水流を90度方向転換させるベンド構造のものにおいて、損失水頭は、前記屈曲部分での流速増大によるものである。
【0034】
そこで、本実施形態では、ベンド構造のディフューザ22において、複数の傾斜壁部34〜37により湾曲状部23aを形成し、その流体の内周部分での流速の増大を防止できるように構成している。しかも、底壁11に沿う部分に集中して強い水流を付与するために、吐出口24を極端な横長形状としている。且つ、近接する側壁12A,12Dと底壁11との境界部分にかけて十分に水流を付与するために、吐出口24にかけた拡開角度を90度以上に形成している。そのため、過大な動力を有する高価なポンプ19を使用することなく、底壁11の全域にかけて水槽10B内を撹拌するのに十分な流速、水流を付与することができる。
【0035】
次に、撹拌装置21による水槽10B内の撹拌作用について説明する。
【0036】
まず、第2水槽10B内には、前記撹拌装置21による水流以外に、流入口14から未処理汚水が流入することによる水流が存在する。この未処理汚水流は、撹拌装置21による水流がない場合、流入口14から流出口15へ向けて流れるように作用する。具体的には、この水流は、上流側である第1水槽10Aからの吐出水量に影響されるが、大略、第2および第3側壁12B,12Cに沿って湾曲しながら略直接的に流出口15に向かうことになる。
【0037】
一方、撹拌装置21では、まず、ポンプ19が水槽10Cから吸い込んだ処理済み汚水は、吸水管18から吐出管20に流入する。この吐出管20に流入した処理済み汚水はディフューザ22の吐出口24から水槽10B内に吐出される。ディフューザ22から吐出される際には、その吐出部40の拡開角度を90度以上に形成しているため、処理済み汚水による水流は、近接させて配置した第1および第4側壁12A,12Dと底壁11との境界部分まで拡散される。よって、この処理済み汚水流は、水槽10Bの底壁11の全面に沿って行き渡り、側壁12A〜12Dに沿って水面に向けて上昇するように作用する。
【0038】
このディフューザ22による処理済み汚水流は、流入口14からの未処理汚水流に対して逆向きの流れではなく、一部が未処理汚水流に対して横から衝突する。そして、2つの水流が互いに打ち消しあうように作用することはなく、衝突後の処理済み汚水流と未処理汚水流とは、その異なる方向性が互いに相俟って相乗的な1つの水流を形成する。そのため、水槽10B内では、活性汚泥の沈降を防止できるだけの流速を確実に得ることができ、水槽10B内の活性汚泥を含む汚水が撹拌される。
【0039】
具体的には、合流した撹拌水流により水槽10B内には、図1において、第1および第4側壁12A,12Dの隅部と、第2および第3側壁12B,12Cの隅部とを結ぶ対角線L1を境界として、流入口14からの流れが巻き上がる該流入口14の側に偏った対流領域Aと、流出口15の側の側壁12Dに沿う巻き下がり流れの影響を受ける該流出口15の側に偏った対流領域Bとが形成される。そのため、流入口14から供給された未処理汚水が短時間で流出口15から流出されることはなく、水槽10B内での対流による長い撹拌時間を経て流出口15から下流側の第3水槽10Cへ排出される。その結果、活性汚泥に生息した微生物による反応を十分に得ることができるため、確実に汚水の処理効率を向上できる。
【0040】
このように、本発明の撹拌装置21による撹拌では、専用の駆動源は必要なく、水槽10Bに液体である処理済み汚水を再供給するためのポンプ19が吐出する液体の動圧を無駄にすることなく、有効利用している。そのため、撹拌のみのためにエネルギーを消費することを防止できる。勿論、撹拌羽根のような回転部分はないため、水槽10B内の活性汚泥が破壊されるも防止できる。
【0041】
因みに、還流装置17としてのみポンプ19および吐出管20を使用する場合、該吐出管20の端部20bは、水槽10Bの水面より上方に位置するように配管される。この場合、吐出管20から吐出される処理済み汚水が有する動圧は全く利用されず廃棄されることになる。これに対して本実施形態では吐出管20の下端を水槽10B内の液中に配置することで、吐出管20に接続したディフューザ22から吐出される処理済み汚水の動圧(吐出管動圧)を水槽10B内の汚水撹拌に有効利用できる。
【0042】
図5は第2実施形態の生物処理槽2を示す。この第2実施形態では、撹拌装置21を構成するディフューザ22を流入口14の近傍に配設した点でのみ、第1実施形態と相違している。具体的には、前記流入口14は、水槽10Bにおいて、その一側縁が第2側壁12Bの内面に位置するように形成されている。そして、第2実施形態では、ディフューザ22は、一方の垂直側壁部39Bが、流入口14において側壁12Bから離れた反対側の側縁と略一致するように配設されている。このように、ディフューザ22は、流入口14を塞がないようにその開口部分を除き、且つ、台座部28の一方の側縁が第1側壁12Aに沿うように配置することにより、前記第1および第2側壁間の隅部近傍に配設されている。これにより、ディフューザ22の吐出口24は、これら第1および第2側壁12A,12B間に向けて延び、且つ、これら第1および第2側壁12A,12B間の隅部に対して対角に位置する流出口15を臨むように位置される。
【0043】
次に、第2実施形態の撹拌装置21による水槽10B内の撹拌作用について説明する。
【0044】
まず、流入口14から水槽10B内に供給された未処理汚水は、第2側壁12Bとディフューザ22の垂直側壁部39Bとの間を通過した後に水槽10B内の広い空間内で流動される。そして、撹拌装置21による水流がない場合、側壁12Bと垂直側壁部39Bとの隙間を通過した後、流出口15へ向けて流れるように作用する。
【0045】
一方、撹拌装置21では、第1実施形態と同様に、ポンプ19によって水槽10Cの処理済み汚水が吐出管20を介してディフューザ22の吐出口24から水槽10B内に吐出される。そうすると、処理済み汚水による水流は、近接配置した第1および第2側壁12A,12Bと底壁11との境界部分まで拡散される。よって、この処理済み汚水流は、水槽10Bの底壁11の全面に沿って行き渡り、側壁12A〜12Dに沿って水面に向けて上昇するように作用する。
【0046】
この処理済み汚水流は、流入口14から拡散して流出口15へ向けて流れるため、未処理汚水の水流の妨げになることは全く無く、第2側壁12Bの側では逆に未処理汚水流と合流して流速を増大させるように作用する。そのため、活性汚泥の沈降を防止できるだけの流速を確実に得ることができる。そして、その水流は、特に第3側壁12Cに衝突することにより、上向きの流れに変えられ、第2側壁12Bの側で主に対流される。
【0047】
具体的には、合流した撹拌水流により水槽10B内には、図5において、流入口14と流出口15とを結ぶ略対角線L2を境界として、流入口14からの流れと吐出口24からの流れによって構成される該流入口14の側に偏った対流領域Aと、流出口15の側の吐出口24からの流れによって構成される該流出口の15の側に偏った対流領域Bとが形成される。そのため、第1実施形態と同様に、流入口から供給された未処理汚水が短時間で流出口15から流出されることはなく、水槽10B内での対流による長い撹拌時間を経て流出口15から下流側の水槽10Cへ排出される。その結果、活性汚泥に生息した微生物による反応を十分に得ることができ、確実に汚水の処理効率を向上できる等、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。
【0048】
本発明者らは、本発明の撹拌装置21による撹拌能力を確認するために、第1および第3側壁12A,12Cにかけた縦寸法が7m、第2および第4側壁12B,12Dにかけて横寸法が8m、高さが6mの水槽10Bに対して、流入口14からの液体の給水量を6(m/min)、ポンプ19によるディフューザ22からの吐出水量を6(m/min)として、流入口14から供給された未処理汚水の対流状態を汎用の流れ解析ソフトを使用して確認した。なお、ディフューザの吐出口24の開口面積は、幅が1650mmで高さが26mmであり、流入口14および流出口15の開口面積は、幅が500mmで高さが500mmである。
【0049】
図6(A)に示すように、第1および第4側壁12A,12Dの隅部にディフューザ22を配設した第1実施形態の構成では、流入口14からの未処理汚水流は、ディフューザ22からの処理済み汚水流と衝突した後、対流領域Aにおいて上昇した後、旋回するように第1側壁12Aの側に流れた後、第3側壁12Cの側に徐々に向かう。そして、流出口15からの流出量が少ない点から、水槽10B内での対流時間が長く、その分、浄化に係る反応時間を十分に確保できていることが確認できる。また、図6(B)に示すように、水槽10Bの底壁11では、殆ど箇所で活性汚泥の沈降を防止できるだけの流速が得られ、活性汚泥の沈降も確実に防止できることが確認できる。
【0050】
図7(A)に示すように、第1および第2側壁12A,12Bの隅部近傍にディフューザ22を配設した第2実施形態の構成では、流入口14からの未処理汚水流は、ディフューザ22からの処理済み汚水流と合流した後、対流領域Aにおいて旋回した後、徐々に流出口15が位置する対流領域Bに向かう。この場合も前記と同様に、流出口15からの流出量が少ない点から、水槽内での対流時間が長く、その分、浄化に係る反応時間を十分に確保できていることが確認できる。また、図7(B)に示すように、水槽10Bの底壁11では、殆ど箇所で活性汚泥の沈降を防止できるだけの流速が得られ、活性汚泥の沈降も確実に防止できることが確認できる。
【0051】
図8(A)に示すように、流出口15の近傍で吐出口24が流出口15を臨むように、第3および第4側壁12C,12Dの隅部近傍にディフューザ22を配設した比較例1の構成では、流入口14からの未処理汚水流は、逆向きに流れるディフューザ22からの処理済み汚水流により上昇され、処理済み汚水流の影響が少ない水面を通って迂回するように流出口15から排出される。即ち、この構成では、水槽10B内での対流作用は得られず、浄化に係る反応時間が十分に確保できないことが確認できる。また、図8(B)に示すように、水槽10Bの底壁11では、側壁12A〜12Dとの境界部分の殆どが活性汚泥の沈降を防止できない流速であり、活性汚泥の沈降を防止できない部分が生じることが確認できる。
【0052】
図9(A)に示すように、流入口14の対向位置である第2および第3側壁12B,12Cの隅部にディフューザ22を配設した比較例2では、流入口14からの未処理汚水流は、ディフューザ22からの処理済み汚水流により、流出口15が位置する第4側壁12Dの側に押し出され、特に、ディフューザ22からの第3側壁12Bに沿った水流に重畳して、流出口から排水される。この構成では、一定時間内に流出口15に到達する流れが多い点から、水槽10B内での対流時間が短く、その分、浄化に係る反応時間を十分に確保できないことが確認できる。また、図9(B)に示すように、水槽10Bの底壁11では、側壁12A〜12Dとの境界部分の殆どが活性汚泥の沈降を防止できない流速であり、活性汚泥の沈降を防止できない部分が生じるだけでなく、流入口14の近傍では、澱みが生じる可能性もあることが確認できる。
【0053】
これらの流れ解析結果から、本発明の撹拌装置21による吐出能力は十分であり、水槽10Bに対する設置場所により、十分な撹拌能力が得られることを確認できた。
【0054】
なお、本発明の撹拌装置21は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0055】
例えば、前記実施形態では、生物処理槽2を3つの水槽10A〜10Cにより形成したが、その数は限定されない。特に、1つの水槽10により構成する場合には、沈殿槽3から還流させる管路にポンプ19および吐出管20を介設してディフューザ22を接続することにより、前記と同様の作用および効果を得ることができる。
【0056】
また、生物処理槽2において、本発明の撹拌装置21を無酸素槽である水槽10Bに配設したが、この水槽10Bは、無酸素槽以外の嫌気槽や好気槽であってもよく、このようにしても前記と同様の作用および効果を得ることができる。
【0057】
さらに、前記実施形態では、図10(A)の黒塗り部分に示すように、ディフューザ22の吐出口24を横長の長方形状に形成したが、その形状は、設置する水槽10B内において強い水流が希望される部分に応じて、各部位での高さが一定されていない不均一な非長方形状とすることにより、達成できる。例えば、図10(B)に示すように、左右両端の高さを低く、中央の高さを高くすることにより、左右両側に比べて中央部から吐出される水量を多くすることができる。この場合、吐出口24の下端縁は直線を確保する必要はなく、図10(C)に示すように、傾斜させてもよい。また、図10(D)に示すように、左右両端の高さを高く、中央の高さを低くすることにより、中央部に比べて左右両側から吐出される水量を多くすることができる。この場合、図10(E)に示すように、吐出口24の下端縁を傾斜させてもよい。さらに、直線により囲繞された吐出口24に限られず、図10(F)に示すように、流曲線状に湾曲させた形状としてもよい。
【0058】
本発明の撹拌装置は、汚水を浄化する汚泥処理設備に限られず、ポンプによって所定の液体を水槽に供給し、その供給した液体によって水槽内の液体を撹拌および混合する構成の設備であればいずれでも適用可能であり、前記と同様の作用および効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る撹拌装置を生物処理槽に配設した第1実施形態の構成を示す水平断面図である。
【図2】図1の要部垂直断面図である。
【図3】(A),(B)は撹拌装置のディフューザを示す斜視図である。
【図4】(A)はディフューザの断面図、(B)はディフューザの平面図である。
【図5】撹拌装置を生物処理槽に配設した第2実施形態の構成を示す水平断面図である。
【図6】(A),(B)は第1実施形態の撹拌装置による水槽内の流動特性を示す図である。
【図7】(A),(B)は第2実施形態の撹拌装置による水槽内の流動特性を示す図である。
【図8】(A),(B)は比較例1の撹拌装置による水槽内の流動特性を示す図である。
【図9】(A),(B)は比較例2の撹拌装置による水槽内の流動特性を示す図である。
【図10】(A)〜(F)はディフューザの吐出口形状を示す正面図である。
【図11】撹拌装置を適用する汚泥処理設備の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0060】
2…生物処理槽
10A〜10C…水槽
11…底壁
12A〜12D…側壁
14…流入口
15…流出口
17…還流装置
18…吸水管
19…ポンプ
20…吐出管
20a…第1の端部
20b…第2の端部
21…撹拌装置
22…ディフューザ
23…流路
23a…湾曲状部
24…吐出口
28…台座部
30…ディフューザ本体
40…吐出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状をなす底壁の外周縁に第1から第4の側壁が順番に立設された直方体形状をなし、その第1側壁における第2側壁と交わる隅部近傍で且つ底壁近傍に位置するように流入口が設けられるとともに、前記第3側壁における第4側壁と交わる隅部近傍で且つ底壁近傍に位置するように流出口が設けられた水槽内の液体を撹拌する撹拌装置であって、
前記水槽に液体を供給するポンプに第1の端部が接続され、前記水槽内の液中に第2の端部が配置された吐出管と、
前記吐出管の前記第2の端部に接続されるとともに、前記第1および第4側壁間の隅部に配設され、これら第1および第4側壁間にかけて延び、且つ、第1および第4側壁間の隅部に対して対角に位置する前記第2および第3側壁間の隅部を臨む吐出口を有するディフューザと
を備えたことを特徴とする撹拌装置。
【請求項2】
矩形状をなす底壁の外周縁に第1から第4の側壁が順番に立設された直方体形状をなし、その第1側壁における第2側壁と交わる隅部近傍で且つ底壁近傍に位置するように流入口が設けられるとともに、前記第3側壁における第4側壁と交わる隅部近傍で且つ底壁近傍に位置するように流出口が設けられた水槽内の液体を撹拌する撹拌装置であって、
前記水槽に液体を供給するポンプに第1の端部が接続され、前記水槽内の液中に第2の端部が配置された吐出管と、
前記吐出管の前記第2の端部に接続されるとともに、前記流入口の開口部分を除く前記第1および第2側壁間の隅部近傍に配設され、これら第1および第2側壁間に向けて延び、且つ、これら第1および第2側壁間の隅部に対して対角に位置する前記流出口を臨む吐出口を有するディフューザと
を備えたことを特徴とする撹拌装置。
【請求項3】
前記ディフューザは、内部に略L字形状に屈曲した流路を備え、その屈曲部分の内周部に流速の増大を防止する湾曲状部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撹拌装置。
【請求項4】
前記吐出口を先端に形成した前記ディフューザの吐出部は平面視略三角形状をなし、その内部の流路は、前記吐出口にかけて広がる拡開角度を90度以上としたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の撹拌装置。
【請求項5】
前記吐出口を縦横比が大きい横長形状としたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の撹拌装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2007−75764(P2007−75764A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−268599(P2005−268599)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(000152170)株式会社酉島製作所 (89)
【Fターム(参考)】