説明

撹拌装置

【課題】電源を用いる必要がなく、費用の削減が可能な撹拌装置を提供する。
【解決手段】撹拌される撹拌流体を収容する撹拌槽2内に配置可能な台座10と、前記台座10に回転可能に設けられ、回転軸Xに垂直な回転面Mに対して傾斜した角度で設けられる撹拌翼23および当該撹拌翼23よりも前記回転面Mに対して垂直に近い角度で設けられた受け翼22を備えた回転撹拌部11と、を有する撹拌装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を撹拌するための撹拌装置に関し、特に、粉体を液体に溶解させる撹拌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、粉体を水等の液体に溶解させるために、撹拌槽内の液体に粉体を投入し、撹拌して溶解させる方法が行われている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の方法では、撹拌槽(溶解槽)内に撹拌羽根を設け、モータにより撹拌羽根を回転駆動することで液体と粉体を撹拌している。
【特許文献1】特開2001−25649号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述の特許文献1に記載の方法では、撹拌羽根の駆動源であるモータを駆動するために電源が必要となるのに加え、例えば、危険物等の可燃物を取り扱う施設内でモータを駆動源とする撹拌装置を用いて粉体を液体に溶解する場合には、モータや付属電気設備の火花等による着火を防止するために防爆構造の機器を使用する等、火災を回避するための対策が必要であり、更には過電流、漏電に対する対策が必要となって構造が複雑となり、費用も増加する。
【0004】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、電源を用いる必要がなく、費用の削減が可能な撹拌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成する本発明に係る撹拌装置は、撹拌される撹拌流体を収容する撹拌槽内に配置可能な台座と、前記台座に回転可能に設けられ、回転軸に垂直な回転面に対して傾斜した角度で設けられる撹拌翼および当該撹拌翼よりも前記回転面に対して垂直に近い角度で設けられた受け翼を備えた回転撹拌部と、を有する。
【0006】
また、上記目的を達成する本発明に係る撹拌装置の他の形態は、撹拌される撹拌流体を収容する撹拌槽と、前記撹拌槽内へ吐出流体を吐出する流体吐出部と、前記撹拌槽内に回転可能に配置され、前記流体吐出部より吐出された吐出流体により生じた流れを受け回転力に変える受け翼および前記受け翼と異なる角度で設けられて前記撹拌流体を撹拌させる撹拌翼を備えた回転撹拌部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
上記のように構成した本発明に係る撹拌装置は、回転撹拌部に設けられる受け翼が、撹拌翼よりも回転面に対して垂直に近い角度で設けられるため、吐出された吐出流体により撹拌槽内で回転軸回りに生じる撹拌流体の旋回流を効率よく受けて回転撹拌部を回転させることができる。これに伴い、回転面に対して傾斜した角度で設けられる撹拌翼が回転し、撹拌槽内で回転軸に沿う方向へ撹拌流体の流れを生じさせて、撹拌流体を撹拌することができる。したがって、撹拌のために電源を用いる必要がなく、更には、火花等による着火を防止するための防爆構造が不要となる等、簡易な構造にすることができるために費用も削減できる。
【0008】
また、上記のように構成した本発明に係る撹拌装置の他の形態は、撹拌槽内に吐出流体を吐出する流体吐出部が設けられ、更に吐出流体から回転力を受ける受け翼が設けられるため、回転撹拌部を回転させることができる。これに伴い、受け翼と異なる角度で設けられた撹拌翼が回転し、撹拌槽内で撹拌流体を撹拌することができる。したがって、撹拌のために電源を用いる必要がなく、更には、火花等による着火を防止するための防爆構造が不要となる等、簡易な構造にすることができるために費用も削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る撹拌装置の断面図、図2は、図1のA−A線に沿う断面図、図3は、本発明の実施形態に係る撹拌装置の撹拌機を示す側面図、図4は、同撹拌装置の撹拌機を示す斜視図、図5は、図2のB−B線の沿う部分断面図である。
【0011】
本実施形態に係る撹拌装置1は、水(撹拌流体)に粉体を溶解させるために加熱しつつ撹拌する装置である。本撹拌装置1は、図1〜5に示すように、水等の液体を収容する撹拌槽2と、撹拌槽2内に設けられて水を撹拌する撹拌機3と、粉体を水に溶解させるために加熱蒸気(吐出流体)を供給する流体吐出部4とを有している。
【0012】
撹拌槽2は、円筒形状で形成されており、上端に位置する天板5に、液体および粉体を供給する開口部6が設けられている。なお、撹拌槽2は円筒形状に限定されず、角筒形状や、他の3次元的形状であってもよい。また、撹拌槽2に、水および粉体の各々を撹拌槽2内に投入するための投入管や、最終的に粉体が溶解した水溶液を排出する排出管が設けられてもよい。
【0013】
流体吐出部4は、撹拌槽2内へ上方から差し込まれるように管形状で形成され、撹拌槽2内に位置する下端部の側面に、撹拌槽2内に加熱蒸気を吐出する吐出口8が設けられる。吐出口8は、撹拌槽2の内部の壁面に沿う水平方向である吐出方向D1(図2参照)へ加熱蒸気を吐出するように形成される。
【0014】
撹拌機3は、撹拌槽2の底面9に置かれる台座10と、台座10に対して回転可能に連結された回転撹拌部11とを備えている。台座10および回転撹拌部11は、例えばステンレス等の金属製であるが、他の材料を適用することもできる。台座10は、例えば円形の板体であり、撹拌槽2の底面9の略中央部に配置される。本実施形態では、台座10にある程度の重量(例えば10kg)を持たせることで、台座10を撹拌槽2の底面9に対して置くだけの構造としている。ただし、台座10を撹拌槽2に対してボルト等により固定したり、または溶接等により一体的に固定することもできる。更には、台座10を設けずに、撹拌槽2に対して回転撹拌部11を回転可能に直接連結することも可能である。
【0015】
回転撹拌部11は、台座10に対して螺合する固定軸部13により回転可能に連結される。固定軸部13はボルトであり、ボルトの先端に形成されるネジ部14が台座10のネジ孔15に螺合し、ボルトのネジ溝が形成されていない軸部16に、回転撹拌部11の一部である円筒状の回転筒18が回転可能に枢着している。固定軸部13(ボルト)のヘッド部17と回転筒18の間、および回転筒18と台座10の間には、テフロン(登録商標)シート19が設けられ、回転筒18が回転する際の摩擦を低減している。
【0016】
回転筒18には、半径方向へ延びる4本の支持梁21が溶接または捩じ込み構造等により連結されている。なお、支持梁21の本数は4本に限定されず、4本未満でも5本以上でもよい。各々の支持梁21には、半径方向外側に受け翼22が固定され、半径方向内側に撹拌翼23が固定されている。受け翼22は、回転軸Xに垂直な回転面M(図3参照)と垂直に支持梁21に固定されており、撹拌翼23は、回転面Mと約30度の角度で支持梁21に固定されている。すなわち、撹拌翼23は、回転軸に垂直な回転面Mと傾斜した角度で設けられ、受け翼22は、回転面Mに対して撹拌翼23よりも垂直に近い角度で設けられる。
【0017】
次に、本実施形態に係る撹拌装置1の作用について説明する。
【0018】
図6は、本実施形態に係る撹拌装置により撹拌する際を示す断面図である。
【0019】
まず、水を開口部6から撹拌槽2内に投入し、更に粉体を投入する。この後、粉体を水に溶解させるために、撹拌槽2内の水よりも温度の高い加熱蒸気を流体吐出部4から吐出する。このとき、流体吐出部4は、撹拌槽2の内部の壁面に沿う水平方向、すなわち回転撹拌部11の回転方向へ向って、吐出口8から加熱蒸気を吐出する。これにより、加熱蒸気が撹拌槽2の内壁面に沿って水平方向へ移動し、水が撹拌槽2内で旋回しつつ加熱される。
【0020】
水が撹拌槽2内で旋回すると、撹拌機3の受け翼22が水によって回転する方向へ力を受け、受け翼22および撹拌翼23を含む回転撹拌部11が回転する。本実施形態では、回転速度が緩やかであり、かつ台座10と固定軸部13が直結していることで振れが小さいため、回転撹拌部11と固定軸部13の間に軸受が設けていないが、軸受を設けた構成とすることも可能である。また、回転筒18の上下にテフロン(登録商標)シート19が設けられているため、回転撹拌部11と固定軸部13の間、回転撹拌部11と台座10の間の摩擦が低減されて、回転撹拌部11が滑らかに回転することができる。
【0021】
撹拌機3は、回転撹拌部11の回転軸Xが、旋回流S1(図6)の中心軸と略一致するように撹拌槽2内に設置されることが好ましい。すなわち、回転撹拌部11の回転軸Xと垂直な回転面Mが、水の旋回する方向に沿う旋回面と略一致することで、回転面Mと垂直に設けられる受け翼22に旋回流S1がより垂直に近い角度で当たり、回転撹拌部11を効率よく回転させることができる。
【0022】
旋回流S1から力を受けて回転撹拌部11が回転すると、回転撹拌部11に設けられる撹拌翼23も回転する。撹拌翼23は、回転面Mに対して傾斜した角度で設けられているため、軸方向へ水を押し出し、上昇流S2(図6)を発生させる。これにより、撹拌槽2内の水は、旋回しつつ上下に撹拌され、粉体が水に効率よく溶解される。
【0023】
本実施形態に係る撹拌装置1によれば、受け翼22により水から旋回流を受けて、撹拌翼23を回転させるため、流体吐出部4から撹拌槽2内に供給される加熱蒸気(吐出流体)を駆動源とすることができる。したがって、撹拌機3を回転させるためのモータ等が不要であり、防爆構造の設備を使用する必要がない。また、手動で撹拌するような既存の装置に対して、撹拌槽の内部に撹拌機3を設置し、流体吐出部4の吐出方向を調整するのみで本発明を実施できるため、低コストで実現が可能である。
【0024】
また、撹拌機3が、撹拌槽2内に配置可能な台座10に回転撹拌部11が連結された構造となっているため、撹拌槽2への取り付け性に優れ、作業性が向上する。更に、台座10にある程度の重量を持たせることで、台座10を撹拌槽2内に置くだけで設置することができるために作業性が向上し、また構造が簡易となって費用も削減できる。
【0025】
また、撹拌翼23が回転面Mに対して傾斜した角度で設けられ、受け翼22が撹拌翼23よりも回転面Mに対して垂直に近い角度で設けられるため、受け翼22で旋回流S1から効率よく回転力を受けて、撹拌翼23により軸方向への流れ(上昇流S2)を発生させることができる。
【0026】
また、受け翼22が撹拌翼23よりも外側に設けられるため、撹拌槽2の内壁に沿って流れる旋回流S1から回転力をより効率よく受けることができる。
【0027】
また、流体吐出部4が、回転撹拌部11の回転方向に向って加熱蒸気(吐出流体)を吐出する吐出口8を有するため、加熱蒸気により回転撹拌部11を効率よく回転させることができる。
【0028】
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変することができる。例えば、支持梁21を設けずに、回転筒18に直接撹拌翼23を固定し、更に撹拌翼23に対して直接受け翼22を固定してもよい。また、受け翼22に回転力を与えられるのであれば、流体吐出部4の吐出方向を撹拌槽2の壁面に沿う方向としなくてもよく、受け翼22へ向って吐出するように、例えば、図2に二点差線で表される吐出方向D2となるようにしてもよい。また、撹拌翼23の回転面Mに対する傾き角を変更して、上昇流S2ではなく下降流を発生させて撹拌してもよい。また、受け翼22と撹拌翼23が、異なる支持梁に設けられてもよい。また、撹拌翼23が受け翼22の外側に配置させてもよく、更には、受け翼22と撹拌翼23が同一半径上に位置してもよい。また、受け翼22と撹拌翼23が、回転軸Xの軸方向にずれて配置されてもよい。また、台座10と底面9の間に、撹拌機3の高さや設置角度を調整するための他の部材を設けてもよい。
【0029】
また、本発明は、粉体の溶解のための撹拌装置1に限定されず、例えば単一の液体の撹拌する装置、複数の液体同士を混ぜ合わせる装置等、撹拌を行う種々の装置に適用できる。また、撹拌流体は水に限定されず、他の流体を用いることもでき、吐出流体も蒸気に限定されず、空気や水等の他の流体を用いることができる。また、本発明はモータ等を必要とせず配線などの付属品が無く、且つ撹拌機3の構造が簡易で軽量である。よって、撹拌機3の固定軸13の上部など、撹拌機の機能を損じない箇所に取っ手を設置し、撹拌槽2の開口部6から撹拌機3が簡便に取り出せる構造とし、併せて、流体吐出部4を脱着が可能な構造とすることによって、撹拌設備を有しない他の溶解槽と共用することが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係る撹拌装置の断面図である。
【図2】図1のA−A線の沿う部分断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る撹拌装置の撹拌機を示す側面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る撹拌装置の撹拌機を示す斜視図である。
【図5】図2のB−B線の沿う部分断面図である。
【図6】本実施形態に係る撹拌装置により撹拌する際を示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 撹拌装置、
2 撹拌槽、
3 撹拌機(撹拌装置)、
4 流体吐出部、
8 吐出口、
10 台座、
11 回転撹拌部、
22 受け翼、
23 撹拌翼、
M 回転面、
S1 旋回流、
S2 上昇流、
X 回転軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撹拌される撹拌流体を収容する撹拌槽内に配置可能な台座と、
前記台座に回転可能に設けられ、回転軸に垂直な回転面に対して傾斜した角度で設けられる撹拌翼および当該撹拌翼よりも前記回転面に対して垂直に近い角度で設けられた受け翼を備えた回転撹拌部と、を有する撹拌装置。
【請求項2】
前記撹拌翼よりも回転外側方向に、前記受け翼が位置する請求項1に記載の撹拌装置。
【請求項3】
撹拌される撹拌流体を収容する撹拌槽と、
前記撹拌槽内へ吐出流体を吐出する流体吐出部と、
前記撹拌槽内に回転可能に配置され、前記流体吐出部より吐出された吐出流体から回転力を受ける受け翼および前記受け翼と異なる角度で設けられて前記撹拌流体を撹拌させる撹拌翼を備えた回転撹拌部と、を有する撹拌装置。
【請求項4】
前記撹拌翼は、前記回転撹拌部の回転軸に垂直な回転面に対して傾斜した角度で設けられ、前記受け翼は、前記撹拌翼よりも前記回転面に対して垂直に近い角度で設けられた請求項3に記載の撹拌装置。
【請求項5】
前記回転撹拌部は、前記撹拌槽内に設置可能な台座に回転可能に連結される請求項3または4に記載の撹拌装置。
【請求項6】
前記撹拌翼よりも回転外側方向に、前記受け翼が位置する請求項3〜5のいずれか1項に記載の撹拌装置。
【請求項7】
前記流体吐出部は、前記回転撹拌部の回転方向に向って吐出流体を吐出する吐出口を有する請求項3〜6のいずれか1項に記載の撹拌装置。
【請求項8】
前記撹拌流体には、加熱により当該撹拌流体に溶解する粉体が含まれ、
前記流体吐出部は、前記撹拌槽内の撹拌流体よりも温度の高い吐出流体を供給する請求項3〜7のいずれか1項に記載の撹拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−155220(P2010−155220A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−335492(P2008−335492)
【出願日】平成20年12月27日(2008.12.27)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】