説明

擁壁構築用アンカー装置

【課題】簡単な構造で、裏ごめ土の沈下に追従し、比較的安価な構造の擁壁構築用アンカー装置を提供する。
【解決手段】一端を擁壁1に止着した接続杆2の他の一端と、一端側を地山3に固定したアンカー杆4の他の一端を裏ごめ土6内において接続手段5を介して互いに回動自在に接続する。そして、接続手段5を、前記接続杆2の他の一端と前記アンカー杆4の他の一端のそれぞれに取付けた接続片8と、該接続片8に設けた接続孔9に挿通した接続リング10とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切盛土工においてその補強のために擁壁を構築する際、地山内に固定するアンカーによって擁壁の安定化を図る、擁壁構築用アンカー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一端を擁壁に止着した接続杆の他の一端と、一端側を地山に固定するアンカー杆の他の一端とを裏ごめ土内において接続手段を介して互いに回動自在に接続し、前記接続手段を、前記接続杆と前記アンカー杆のそれぞれの他の一端それぞれに設けた側面が球面状拡張部と、該拡張部が嵌合する球状内周面を備えた筒体とで構成した構造のものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特許第3121327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来例は、筒体に対して接続杆側およびアンカー杆側のそれぞれが所謂自在継手状に接続した構成を採り、該構成により、擁壁の裏ごめ土の沈下に両杆がある程度まで互いに自由に回動して追従させるようにしたものであるが、構成上構造が複雑となり、高価でもある。
【0005】
本発明は、斯様な従来例の欠点に着目し、簡単な構造で裏ごめ土の沈下に追従し、比較的安価な構造の擁壁構築用アンカー装置を提供すべく創案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一端を擁壁に止着した接続杆の他の一端と、一端側を地山に固定したアンカー杆の他の一端を裏ごめ土内において接続手段を介して互いに回動自在に接続した擁壁構築用のアンカー装置において、前記接続手段を、前記接続杆の他の一端と前記アンカー杆の他の一端のそれぞれに取付けた接続片と、該接続片に設けた接続孔に挿通した接続リングとで構成したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接続リングに対してアンカー杆側と接続杆側とが自由に回動するから裏ごめ土沈下に追従することができ、同時に可動範囲が広く構造も簡単で比較的安価な製品を提供できるものである。
【0008】
また、単一な接続リングに対し、アンカー杆側と接続杆側の一方又は双方を、構造上、複数個用いることができ、従って、複数個用いる場合の施工作業の向上を図ることができる。
【実施例】
【0009】
図面は本発明に係る擁壁構築用アンカー装置の実施例を示し、図1は第一実施例の説明図、図2は図1の一部欠截拡大図、図3は接続リングの他の実施形を示す正面図、図4は第二実施例の説明図、図5は接続片の正面図である。
【0010】
本発明に係るアンカー装置Aは、コンクリートパネル等で成る擁壁1に一端側を止着した接続杆2の他の一端と、盛土で成る地山3に埋設固定したアンカー片4aを一端側に備えたアンカー杆4の他の一端を接続手段5を介して裏ごめ土3´内において互いに接続して構成して擁壁1の安定化を図るものである。
【0011】
前記接続杆2は、ボルト杆で構成し、その一端側を前記擁壁1に貫通させて該擁壁1に組合わせ、接続杆2に螺合したナット6を座金7を介して擁壁1の内外から締め付けるようにして擁壁1に止着したものである。
【0012】
接続杆2と擁壁1との止着(接続)手段は、例えば、擁壁1をコンクリートで造成するなどの場合に該コンクリート(擁壁)内に一端にブロック体を設ける等して該ブロック体を埋設する等自由に選択すれば良い。
【0013】
この接続杆2の他の一端には前記接続手段5を構成する接続片8を筒状本体8aにおいて螺合して取付け、接続片8は内腔部にねじ穴を設けた前記筒状本体8aの先端にリング状部片8bを一体に設けて接続孔9を備えて成り、この接続片8のリング状部片8bに接続孔9に挿通させるようにして前記接続手段5を構成する接続リング10を組付けてある。
【0014】
接続リング10は、長円状の半リング体で成るリング主体10aの両端にねじを刻設し、該両端のねじ部にナット筒10bを螺合してリング体として構成したもので、この接続リング10に接続杆2側の前記接続片8と前記アンカー杆4の他の一端に取付けた接続片8を組付けて前記接続手段5が構成される。
【0015】
アンカー杆4の他の一端側に取付けた接続片8は接続杆2側の接続片8と同様に筒状本体8aとリング状部片8bで構成され、接続杆2と同様に螺杆で構成したアンカー杆4の他の一端側のねじを筒状本体8aのねじ穴に螺合して取付け、アンカー杆4は接続リング10を介して接続杆2と接続され、この接続部すなわち接続手段5部は前記裏ごめ土3´内に設置される。
【0016】
アンカー杆4は一端側に前記アンカー片4aを設けてあり、アンカー片4aはアンカー杆4の一端側に螺合した締付けナット11,11間に介在されたリング体で成り、アンカー杆4に沿う締付けナット11,11の移動によりアンカー杆4の軸線(長手)方向に沿う適所に自在に配置され、地山3を構成する盛土内に埋設、固定したものである。
【0017】
なお、接続リング10は、図3で示すようにU字形の一対のリング主体10a,10a´のそれぞれの両端に刻設したねじにナット筒10b´を螺合するようにして構成するものであっても良いし、リング主体10a,10a´の端部を互いに熔接してナット筒10b,10b´を省略した形態のものであっても良い(ナット筒10b,10b´を用いる場合は現場での組立ては可能であるが、この場合は、現場での熔接作業が煩雑なので、接続リングに、例えば前記接続片8を予め組付けておくことになる)。
【0018】
図4で示すものは、接続リング10を円形リング体で構成し、該リング10に筒状本体8aとリング状部片8bで構成する前記接続片8をリング状部片8bにおいて移動(回動)自在に組付け、該接続片8に前記の通りに接続杆2又はアンカー杆4を取付けて、接続杆1は前記と同様に擁壁1に止着する一方、アンカー杆4は切土で成る地山3にドリルマシン等を用いて穿孔してセメンペーストcを充填した穴hに嵌挿して前記アンカー片4aに代えて地山3に固定し、単一なリング10に一対の接続杆2,2を取付けて、擁壁1の2個所を地山3側に引留めるようにして構成したものである。
【0019】
なお、この図4で示すリング10は、互いに同形な一対の半円リング杆10a,10aに前記接続片8,8,8を組合わせて、該半円リング杆10aの両端同士を互いに熔接して構成したものであるが、図1で示す実施例のように、リング杆10aに雄ねじを設け、これにナット材を螺合するようにしてリング杆10a,10aを互いに接続するように構成しても良い。
【0020】
因みに、本発明装置を得るには、接続杆2やアンカー杆4は螺杆で構成することは必ずしも必要とせず、該接続杆2等に接続片8を筒状本体8aにおいて熔接しても良い(この場合、本体8aはねじ穴を備える必要がないことになる)。
【0021】
接続片8は、接続リング10が緩く挿通する接続孔があれば良いのであって、この意味では、実施例で示す構造(形態)のものに限定する必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第一実施例の説明図。
【図2】図1の一部欠截拡大図。
【図3】接続リングの他の実施形を示す正面図。
【図4】第二実施例の説明図。
【図5】図5は接続片の正面図。
【符号の説明】
【0023】
1 擁壁
2 接続杆
3 地山
4 アンカー杆
5 接続手段
6 裏ごめ土
8 接続片
9 接続孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端を擁壁に止着した接続杆の他の一端と、一端側を地山に固定したアンカー杆の他の一端を裏ごめ土内において接続手段を介して互いに回動自在に接続した擁壁構築用のアンカー装置において、前記接続手段を、前記接続杆の他の一端と前記アンカー杆の他の一端のそれぞれに取付けた接続片と、該接続片に設けた接続孔に挿通した接続リングとで構成した、擁壁構築用アンカー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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