説明

擁壁用基礎ブロックの施工方法

【課題】基礎ブロック自体を擁壁の施工現場でもってコンクリート製のパネルを使用して施工し、しかも、基礎ブロックの施工方法においてもコンクリート打設用の型枠は使用しないか、あるいは一部のみ使用する程度とし、コスト的に安価で、手間を要さない擁壁用基礎ブロックの施工方法を提供することを目的とする。
【解決手段】基礎コンクリート(1)上に、多数の貫通穴(2a)を穿設したコンクリート製のパネル(2)で表壁(21)と裏壁(22)とを離間し対向配置させる。そして前記裏壁(22)は擁壁を構築する法面(A)と略直角に傾斜させ、次いで、前記表壁(21)と前記裏壁(22)間を複数の支持部材(3)で支持させた後、少なくとも、前記表壁(21)と前記裏壁(22)との空間(イ)に中込め材(4)を充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擁壁用基礎ブロックの施工方法に関し、特には、河川や道路の擁壁を構築する際に、その基礎となる基礎ブロックの施工が簡単で、且つ、その基礎ブロック内に中込め材を充填できる擁壁用基礎ブロックの施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、河川の岸や道路の傾斜面に擁壁ブロックを順次積み上げて擁壁を構築する際に、最下段には基礎ブロックを構築し、その基礎ブロックを基に斜面に擁壁ブロックを積み上げて擁壁の施工を行っている。この基礎ブロックの構築は、通常、型枠で基礎ブロックの形状に枠組し、これにコンクリートを打設して構築するか、あるいは実開平6−79844号、特開2000−319910号のように、予め工場で製作した擁壁用の基礎ブロックを用意し、それを擁壁の最下段に設置する施工方法であった。
【0003】
【特許文献1】実開平6−79844号公報
【特許文献2】特開2000−319910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の基礎用ブロックにおいては、基礎用ブロック自体を現場で打設コンクリートから施工する場合に、木製又は金属製の型枠によって枠組しなければならず、更に、その型枠の取り外しも必要となり、施工に手間を要すると共に廃材が大量に出て環境的にも悪いという問題点を有していた。
【0005】
他方、上記特許文献1、特許文献2の基礎ブロックを使用した施工では、ブロック自体のコストが高く、又、重量が大きく、嵩張り、これを現場に搬入したり、あるいは設置するにも必ずクレーンを必要とし、いずれにしても手間を要する等の問題点を有していた。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、基礎ブロック自体を擁壁の施工現場でもってコンクリート製のパネルを使用して施工し、しかも、基礎ブロックの施工方法においてもコンクリート打設用の型枠は使用しないか、あるいは一部のみ使用する程度とし、コスト的に安価で、手間を要さない擁壁用基礎ブロックの施工方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の他の目的は、基礎ブロックの内部に石、廃材等を投入でき、且つ基礎ブロック内からの排水性が極めて良い擁壁用基礎ブロックの施工方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、基礎コンクリート(1)上に、多数の貫通穴(2a)を穿設したコンクリート製のパネル(2)で表壁(21)と裏壁(22)とを離間し対向配置させる。そして前記裏壁(22)は擁壁を構築する法面(A)と略直角に傾斜させ、次いで、前記表壁(21)と前記裏壁(22)間を複数の支持部材(3)で支持させた後、少なくとも、前記表壁(21)と前記裏壁(22)との空間(イ)に中込め材(4)を充填する。
【0009】
また、本発明は、前記支持部材(3)が、打設コンクリートの支持板であるのが好ましい。
【0010】
また、本発明は、前記支持部材(3)が、金属製の支持枠であるのが好ましい。
【0011】
また、本発明は、前記中込め材(4)が生コンクリートであるのが好ましい。
【0012】
また、本発明は、前記中込め材(4)が、石、コンクリート殻の単体あるいはそれらと生コンクリートとの混合物であるのが好ましい。
【0013】
また、本発明は、前記中込め材(4)が、ポーラスコンクリートであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、多数の貫通穴(2a)を穿設したコンクリート製のパネル(2)を使用した表壁(21)と裏壁(22)とを離間し対向配置させ、前記裏壁(22)は擁壁を構築する法面(A)と略直角に傾斜させ、次いで、前記表壁(21)と前記裏壁(22)間を複数の支持部材(3)で支持させたことにより、基礎ブロックを構築する際に、前記パネル(2)を表壁(21)と裏壁(22)に使用して配置し、それを支持部材(3)で支持するものであるから、極めて簡単に基礎ブロックの表壁(21)と裏壁(22)とが構築でき、特に、表壁(21)と裏壁(22)自体の型枠を枠組して行う施工が不要となる。つまり、この両壁(21),(22)を打設コンクリートで作る場合の型枠工事及びコンクリートの打設が不要となるのである。
【0015】
また、擁壁を構築する法面(A)に擁壁ブロックを並べる際に、擁壁ブロックの最下部は基礎ブロックと直角に当接するのが好ましいが、法面(A)の勾配は施工現場によって異なっており、従来のプレキャスト製の基礎ブロックを設置する方法では、基礎ブロックを法面(A)と直角に設置することが極めて難しいのが実情である。この点においても本発明では、基礎ブロック上に法面(A)と略直角な傾斜面を自由に作り出すことが可能となる。従って、基礎ブロックと擁壁ブロックとの当接又は接続が強固となり、基礎ブロックが多数段積した擁壁ブロックを確実に支持し、擁壁ブロックがずれることもない。
【0016】
また、本発明では、両壁(21),(22)間に空間(イ)が形成され、且つ、多数の貫通穴(2a)を穿設した両壁(21),(22)の空間(イ)に中込め材(4)を充填したことにより、両壁(21),(22)の強度が高まり、中込め材(4)が石、コンクリート殻等を投入した場合には、現場から出る石や廃材を有効に利用でき、環境面においても好ましい。しかも、両壁(21),(22)内に浸入した雨水等の水が両壁(21),(22)に穿設した貫通穴(2a)から排出され水はけも良好となる。特に、中込め材(4)がポーラスコンクリートの場合には、水分の浸透性及び保水性を有し、植物の植性を促し緑化の役目を成す。
【0017】
更に本発明の基礎ブロックでは両壁(21),(22)に貫通穴(2a)を穿設したパネル(2)を使用しているため、基礎ブロック上に構築する擁壁ブロックの積上げの際に、裏壁(22)の貫通穴(2a)に鉄筋を挿通し、基礎ブロックと擁壁ブロックの裏込めコンクリートとを一体化させることができ、強固となる。尚、貫通穴(2a)に鉄筋を挿通するには、中込め材(4)を充填する前に行えばよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態につき図を基に説明する。図1は本発明の施工方法を示す説明図、図2は本発明の他の支持部材を使用した状態を示す説明図、図3は本発明でまだ中込め材を充填していない状態の基礎ブロックの斜視図である。
【0019】
図1において、先ず、同図(a)に示すように、河川や道路の斜面と離接する平地に沿って掘った溝には、予め基礎コンクリート(1)が構築されている。この基礎コンクリート(1)上に、多数の貫通穴(2a)を穿設したコンクリート製のパネル(2)を使用して、表壁(21)と裏壁(22)とを離間し対向配置させる。この際に表壁(21)と裏壁(22)は構築する長さまで横方向に連続して連結させる。この連結するには連結金具及びネジが使用される。
【0020】
また、前記パネル(2)は、予め工場で製作されたプレキャストコンクリート板であり、これには多数の貫通穴(2a)が穿設されている。
【0021】
そして、対向して配置された表壁(21)と裏壁(22)は、後述する支持部材(3)が打設コンクリートの支持板の場合、先ず、基礎コンクリート(1)から突出する鉄筋杭(5)に鉄筋棒(6)を介して両壁(21),(22)の内側から配置した状態に仮保持する。この仮保持する箇所は、支持部材(3)を設ける箇所に取付けられる。従って、仮保持する鉄筋杭(5)及び鉄筋棒(6)は、支持部材(3)である支持板内に埋設され、表面には出ないのである。また、裏壁(22)は、少なくとも上方側が擁壁を構築する法面(A)と略直角になるように傾斜させている。この傾斜させたことにより、法面(A)に後から擁壁ブロックを積み上げる際に積み上げられた擁壁ブロックの最下部が裏壁(22)に直角又は直角に近い角度で当たり、擁壁ブロックを確実に受け止められ、ずれることがない。
【0022】
次に、上記の鉄筋杭(5)及び鉄筋棒(6)で表壁(21)と裏壁(22)とを仮保持し設置した後に、図1(b)、図3に示す如く、両壁(21),(22)間にコンクリート製の支持部材(3)、つまり支持板を構築するが、これは両壁(21),(22)間に型枠で支持板用の枠組した後、生コンクリートを打設すればよく、好ましくは、型枠にパネル(2)を使用すると脱型が不要となり、作業性がよい。また図3に示すように、この支持部材(3)は、両壁(21),(22)の横方向に対して適宜間隔に複数設けられる。このように、両壁(21),(22)間に打設コンクリートの支持板を複数設けたことにより、両壁(21),(22)が強固に支持でき、且つ両壁(21),(22)間に空間(イ)を形成できる。
【0023】
また、支持部材(3)は、コンクリートの支持板以外に、図2に示すように、金属製、特には鉄製の支持枠が使用される。この支持枠は、山形鋼、みぞ形鋼等の形鋼を使用し、それを折曲して支持枠に形成したものである。この支持枠は、パネル(2)の貫通穴(2a)を利用してボルト、ナットのネジ部材(7)で両壁(21),(22)を支持し、支持枠の取付箇所は前記の打設コンクリート板と同様の箇所に設ければよい。
【0024】
この支持枠を使用した場合には、両壁(21),(22)の設置が極めて簡単となり、作業性を高める。
【0025】
更に、図3の如く、両壁(21),(22)間に支持部材(3)の形成又は取り付けが完了したならば、図1(c)に示すように、両壁(21),(22)間の空間(イ)に中込め材(4)を充填する。この中込め材(4)は、生コンクリート、石、コンクリート殻等の単体あるいはそれらの混合物が充填されるが、好ましくは生コンクリートを入れた混合物がよい。この充填の際に、生コンクリートあるいは生コンクリートとの混合物を充填すると、パネル(2)の貫通穴(2a)から生コンクリートのトロが出ているか否かで生コンクリートの充填状態が確認できる。つまり、パネル(2)の貫通穴(2a)からトロが出ていれば、生コンクリートが両壁(21),(22)間に充分充填されているので、外部から充填状態を容易に確認できる利点を有する。また、中込め材(4)の充填により、本発明の基礎ブロックの全体強度を高めると共に、不要になった石、コンクリート殻等の再利用をもたらす。
【0026】
また、中込め材(4)が、生コンクリートの内でポーラスコンクリートであると、充填したポーラスコンクリートの空隙に細粉分が堆積し、且つポーラスコンクリートの保水性により、植物の植性を確保でき、緑化の役目を成す。つまり、ポーラスコンクリートは多孔質で多数の空隙を有し、透水性,保水性があり、これを本発明の中込め材(4)として使用すると、両壁(21),(22)には多数の貫通穴(2a)が穿設しているため、充填したポーラスコンクリートには、それ自体の上部から浸透する水分と、両壁(21),(22)の外側から貫通穴(2a)を通りポーラスコンクリート内に浸透する水分とが供給され、ポーラスコンクリートに吸収され常時保水性を保ち、これにより中込め材(4)に植物が育成する環境となるのである。
【0027】
更に、中込め材(4)の充填が完了したならば、図1(d)に示すように、必要に応じて、両壁(21),(22)の外側は、土又はコンクリートを充填して埋め戻すとよく、中込め材(4)がポーラスコンクリートの場合は土又は石の埋め戻しがポーラスコンクリートに対する水分供給の面で好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の施工方法を示す説明図である。
【図2】本発明の他の支持部材を使用した状態を示す説明図である。
【図3】本発明でまだ中込め材を充填していない状態の基礎ブロックの斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1 基礎コンクリート
2 パネル
21 表壁
22 裏壁
3 支持部材
4 中込め材
A 法面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎コンクリート(1)上に、多数の貫通穴(2a)を穿設したコンクリート製のパネル(2)で表壁(21)と裏壁(22)とを離間し対向配置させると共に、前記裏壁(22)は擁壁を構築する法面(A)と略直角に傾斜させ、次いで、前記表壁(21)と前記裏壁(22)間を複数の支持部材(3)で支持させた後、少なくとも、前記表壁(21)と前記裏壁(22)との空間(イ)に中込め材(4)を充填したことを特徴とする擁壁用基礎ブロックの施工方法。
【請求項2】
前記支持部材(3)が、打設コンクリートの支持板である請求項1記載の擁壁用基礎ブロックの施工方法。
【請求項3】
前記支持部材(3)が、金属製の支持枠である請求項1記載の擁壁用基礎ブロックの施工方法。
【請求項4】
前記中込め材(4)が、生コンクリートである請求項1、2又は3記載の擁壁用基礎ブロックの施工方法。
【請求項5】
前記中込め材(4)が、石、コンクリート殻の単体あるいはそれらと生コンクリートとの混合物である請求項1、2又は3記載の擁壁用基礎ブロックの施工方法。
【請求項6】
前記中込め材(4)が、ポーラスコンクリートである請求項1、2又は3記載の擁壁用基礎ブロックの施工方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−62680(P2009−62680A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228855(P2007−228855)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(596182209)タカムラ総業株式会社 (33)
【Fターム(参考)】