説明

操作レバー耐久試験機

【課題】 ジョイスティック等の操作レバーを様々な方向で往復移動させることのできる取り扱い容易な操作レバー耐久試験機を提供する。
【解決手段】 試験対象物2の操作レバー5に接続する係合部6とカム板取付部4とを備えた移動部材7の位置変化を許容して姿勢変化を禁止する移動部材ガイド手段8を設け、移動部材7の姿勢を保持する。移動方向規制用長穴の方向性が異なる複数のカム板9,10,11を選択的にカム板取付部4に装着するように構成し、カム板の取り替えにより、単一の操作レバー耐久試験機1で操作レバー5を様々な方向に往復移動させて耐久試験を行えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作レバーを有する試験対象物、例えば、トグルスイッチやジョイスティック等の耐久性の試験に適した操作レバー耐久試験機の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
反復動作する操作部の耐久性を試験するための装置としては、例えば、特許文献1に開示されるような耐久試験装置や特許文献2に開示されるような開閉試験機が公知である。
【0003】
前者は車両のシートに配備されたシートセンサに対する交番荷重の影響を調べるもの、また、後者は揺動ウィング等の開閉扉の開閉回数の耐久性を調べるためのものであり、これらのものをトグルスイッチやジョイスティック等の耐久試験に転用することはできない。
【0004】
トグルスイッチやジョイスティック等の耐久試験を実現するための一般的な解決手段としては、例えば、図8(a)あるいは図8(b)に示されるようなクランク式もしくはカム式の直線移動機構が考えられる。
【0005】
図8(a)のものは桿状の移動部材101の移動方向を移動部材ガイド手段102で規制し、モータ等からなる回転駆動手段103でクランクピン104を公転運動させ、クランクピン104に枢着された接続桿105を介して移動部材101の端部を押し引きすることによって移動部材101を往復直線動作させるようになっており、移動部材101の先端部にトグルスイッチやジョイスティック等の操作レバーの先端を係合させれば、これらの操作レバーを単純に往復移動させてトグルスイッチやジョイスティック等の耐久試験を行うことができる。
【0006】
あるいは、図8(b)に示すもののように、接続桿105に代えて、移動部材101の移動方向と交差する長穴106を備えたカム板107を利用するようにしても、前記と同等の作用効果を実現できる。
【0007】
しかし、このような構成では移動部材101の往復移動方向が一方向に制限され、単純なトグルスイッチ等の耐久試験には対応できても、ジョイスティック等のように操作レバーを任意方向に倒せるような構造のものには適切に対処することができない。
【0008】
その理由は、ジョイスティック等の場合、必ずしも、一つの操作方向に対しての耐久性が他の操作方向の耐久性を代表しているとは限らないからであり、この種のものに対して適切な耐久試験を行うためには、2つ以上の異なる方向で操作レバーを往復動作させたり、操作レバーの先端を公転運動させる等の試験方法が望まれる。
【0009】
様々な方向に操作レバーを往復動作させるための手段としては、数値制御装置で駆動制御されるマニピュレータや2軸制御のテーブル送り機構等が考えられるが、これらのものは非常に高価であり、また、動作プログラムの作成や教示操作に専門的な知識が要求されるといった問題がある。
【0010】
【特許文献1】特開2003−227785号公報
【特許文献2】特開平6−117967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の課題は、前記従来技術の不都合を改善し、ジョイスティック等の操作レバーを様々な方向で往復移動させることのできる取り扱い容易な操作レバー耐久試験機を簡便な構造および安価なコストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の操作レバー耐久試験機は、前記課題を達成するため、
操作レバーを有する試験対象物を設置するためのベースプレートと、
カム板を着脱可能に保持するためのカム板取付部および前記試験対象物の操作レバーに接続する係合部を備えた移動部材と、
前記ベースプレートに対する前記移動部材の姿勢を保持し、少なくとも、前記ベースプレートに平行な面内における前記移動部材の位置変化を許容する移動部材ガイド手段と、
前記移動部材のカム板取付部に選択的に装着される複数のカム板と、
前記ベースプレート上に固設された回転駆動手段の回転軸にオフセットして固着され前記ベースプレートに平行な面内で公転運動するクランクピンと、
前記クランクピンの移動領域よりも外側で前記ベースプレート上に立設された固定ピンとを有し、
少なくとも、前記カム板のうちの1枚には、前記固定ピンに係合する移動方向規制用長穴と、前記クランクピンに係合する駆動力伝達用長穴とが直交して設けられ、前記各カム板における移動方向規制用長穴の方向性が相互に異なっていることを特徴とする構成を有する。
【0013】
以上の構成において、操作レバーを有する試験対象物をベースプレート上に設置し、移動部材の係合部を試験対象物の操作レバーに接続する。
また、何れかのカム板を選択して移動部材のカム板取付部に装着し、このカム板の移動方向規制用長穴をベースプレート上の固定ピンに係合させると共に、該カム板の駆動力伝達用長穴をベースプレート上の回転駆動手段のクランクピンに係合させる。
移動部材を保持する移動部材ガイド手段自体はベースプレートに平行な面内における移動部材の位置変化を縦横に許容する構造であるが、移動部材に装着されたカム板の移動方向規制用長穴とベースプレート上の固定ピンとの係合により、移動部材の位置変化は、最終的に、カム板の移動方向規制用長穴の方向に沿って規制される。
また、カム板の駆動力伝達用長穴は移動方向規制用長穴に直交して設けられているので、移動方向規制用長穴とベースプレート上の固定ピンとの係合、および、駆動力伝達用長穴とクランクピンとの係合により、クランクピンの運動が停止した状態におけるカム板のガタツキは、ベースプレートに平行な面内において直交する2つの方向から同時に禁止される。
この際、カム板が単体であれば、移動方向規制用長穴と固定ピンとの間の遊び、および、駆動力伝達用長穴とクランクピンとの間の遊びによって、ベースプレートに対するカム板の姿勢変化、つまり、水平面内でのカム板の回転が或る程度は許容されるが、実際にはカム板は移動部材に装着されており、ベースプレートに対する移動部材の姿勢変化である回転が移動部材ガイド手段によって禁止されているので、この結果として、移動部材に装着されたカム板の姿勢変化つまり水平面内での回転によるカム板の不用意なガタツキも禁止される。
そして、回転駆動手段を作動させてベースプレートに平行な面内でクランクピンを公転運動させると、ベースプレートに対する移動部材およびカム板の姿勢変化である回転が移動部材ガイド手段によって禁止された状態で、クランクピンの公転運動に伴うクランクピンの位置変化に応じ、カム板および該カム板を装着した移動部材が、カム板の移動方向規制用長穴の方向に沿って往復移動を繰り返し、移動部材の係合部に接続された試験対象物の操作レバーが反復動作させられる。
このようにして特定方向に対する操作レバーの反復動作つまり耐久試験を行った後、このカム板の移動方向規制用長穴と方向性が異なる移動方向規制用長穴を有する別のカム板を選択して移動部材のカム板取付部に改めて装着し、前記と同様の操作を行うことで、試験対象物の操作レバーを前記と異なる他の方向に往復移動させて耐久試験を行う。
以上に述べた通り、操作レバー耐久試験機の構造はカム式の移動機構を応用した簡便かつ安価な構造であり、しかも、移動部材の移動方向を特定するカム板を交換するだけの簡単な作業で、試験対象物の操作レバーを様々な方向に往復移動させることができる。
【0014】
ベースプレートに対する移動部材の姿勢を保持し、ベースプレートに平行な面内における移動部材の位置変化を許容する移動部材ガイド手段は、例えば、ベースプレート上に固設された移動方向規制レールと、前記移動方向規制レールに沿って移動し、前記移動方向規制レールと直交する方向に前記移動部材の移動方向を規制するスライダとによって構成することができる。
【0015】
移動方向規制レールおよびスライダにより、直交する2つの方向への平行移動を組み合わせた任意位置への移動部材の位置変化が許容され、かつ、ベースプレートに対する移動部材の姿勢変化である回転が禁止される。
【0016】
移動部材のカム板取付部に選択的に装着される複数のカム板のうちの一枚は、移動方向規制レールと直交する方向の移動方向規制用長穴を備えていることが望ましい。
【0017】
このようなカム板を移動部材のカム板取付部に装着することにより、移動部材の係合部に接続された試験対象物の操作レバーを移動方向規制レールと直交する方向に反復動作させることができる。
【0018】
また、複数のカム板のうちの一枚を、移動方向規制レールに平行となる方向の移動方向規制用長穴を備えたものとすることができる。
【0019】
この場合、移動部材の係合部に接続された試験対象物の操作レバーを移動方向規制レールと平行な方向に反復動作させることができる。
【0020】
更に、複数のカム板のうちの一枚を、移動方向規制レールと直交せずに斜交する方向の移動方向規制用長穴を備えたものとすることが可能である。
【0021】
これにより、移動部材の係合部に接続された試験対象物の操作レバーを移動方向規制レールと斜交する方向に反復動作させることができるようになる。
【0022】
あるいは、一枚のカム板を、ベースプレート上の固定ピンとの干渉を避けるための切欠部、および、回転駆動手段のクランクピンと係合する丸穴を備えたものとしてもよい。
【0023】
このようなカム板を移動部材のカム板取付部に装着することにより、クランクピンの移動軌跡と同等の公転運動の軌跡に沿って試験対象物の操作レバーを連続動作させることができる。
【0024】
また、ベースプレートに垂直な方向の移動部材の位置変化を許容するように移動部材ガイド手段を構成し、
前記ベースプレートにベースプレートと平行な第二の固定ピンを固設する一方、
カム板の側面に、前記第二の固定ピンと係合して該カム板の厚み方向に傾斜する第二の移動方向規制用長穴を設けるようにすることもできる。
【0025】
このような構成を適用することにより、前述した移動方向規制レールと直交する方向,移動方向規制レールと平行な方向,移動方向規制レールと斜交する方向の反復動作等に加え、試験対象物の操作レバーの先端を押圧する反復動作が実現される。
このような構造は、特に、操作レバーの先端にプッシュ式のヘッドスイッチを備えた試験対象物の耐久試験に好適である。
【発明の効果】
【0026】
本発明の操作レバー耐久試験機は、移動部材の位置変化を許容する移動部材ガイド手段によって移動部材の姿勢を保持した状態でベースプレート上の固定ピンとカム板の移動方向規制用長穴との係合を利用して移動部材の移動方向を規制し、カム板の駆動力伝達用長穴に係合したクランクピンを公転運動させることで移動方向規制用長穴に沿って移動部材を往復移動させて移動部材の係合部に接続された試験対象物の操作レバーを反復動作させるようにしているので、動作プログラムの作成や教示操作といった専門的な作業を行う必要がなく、移動部材に装着されたカム板を取り替えて移動方向規制用長穴の方向性を変化させるだけの簡単な作業で、ジョイスティック等を始めとする試験対象物の操作レバーを様々な方向に往復移動させて試験対象物の耐久試験を行うことができる。
また、装置自体の構造が簡便で小規模なことから、操作レバー耐久試験機を安価なコストで提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、発明を実施するための最良の形態の一例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
図1は一実施形態の操作レバー耐久試験機1の構成について示した斜視図、図2(a)〜図2(d)は、この操作レバー耐久試験機1に装着が可能なカム板の構成例の幾つかについて具体的に示した平面図である。
【0029】
この操作レバー耐久試験機1の主要部は、トグルスイッチやジョイスティック等を始めとする試験対象物2を設置するためのベースプレート3と、カム板を着脱可能に保持するためのカム板取付部4および試験対象物2の操作レバー5に接続する係合部6を備えた移動部材7と、ベースプレート3に対する移動部材7の姿勢を保持して移動部材7の位置変化を許容する移動部材ガイド手段8と、移動部材7のカム板取付部4に選択的に装着される図2(a)〜図2(d)のようなカム板9〜12と、ベースプレート3上に固設されたモータ等の回転駆動手段13の回転軸14にオフセットして固着されたクランクピン15、ならびに、クランクピン15の移動領域よりも外側でベースプレート3上に立設された固定ピン16とによって構成される。
【0030】
移動部材ガイド手段8は、図1に示されるように、ベースプレート3上に固設された略台形状の断面を有する移動方向規制レール17と、移動方向規制レール17にドーブテイル嵌合して移動方向規制レール17上を移動するスライダ18とによって構成される。
スライダ18には移動方向規制レール17と直交する方向の溝が形成され、この溝にドーブテイル嵌合した移動部材7の移動方向が、移動方向規制レール17と直交する向きに規制されている。
従って、直交する2つの方向、より具体的には、移動方向規制レール17によって規制されるスライダ18の移動方向、および、スライダ18の溝によって規制され移動部材7の移動方向の2つの方向への平行移動を組み合わせた任意位置への移動部材7の位置変化は許容されるが、ベースプレート3に対する移動部材7の姿勢変化、つまり、任意の水平軸周りの移動部材7の回転と任意の垂直軸周りの移動部材7の回転は完全に禁止される。
【0031】
移動部材7のカム板取付部4は、移動部材7の端部に形成されたカム板挿入スリット19と該スリット19を上下方向に貫通して移動部材7の端部に螺合するカム板固定ネジ20とによって構成され、図2(a)〜図2(d)のようなカム板9〜12の何れかをスリット19に挟み、カム板9〜12のネジ通し穴21にカム板固定ネジ20を貫通させ、このカム板固定ネジ20を締め付けることによって、移動部材7のカム板取付部4にカム板9〜12の何れかを任意に装着できるようになっている。
【0032】
また、移動部材7の係合部6は、移動部材7の先端部から下方に突出して固設されたシャフト22と、このシャフト22の下端部に固設された操作レバーホルダ23とによって構成される。
操作レバーホルダ23は試験対象物2の操作レバー5の先端部の外径よりも僅かに大きな内径を有する円筒体であり、この操作レバーホルダ23を操作レバー5の先端部に被せて操作レバーホルダ23と操作レバー5を接続することで、移動部材7の運動を操作レバー5に伝達するようになっている。
【0033】
トグルスイッチやジョイスティック等の試験対象物2の本体部分は、ネジあるいはクランプ等の固定手段24を利用してベースプレート3上に固定される。
【0034】
次に、図2(a)〜図2(d)を参照して操作レバー耐久試験機1に装着するカム板の構成例の幾つかについて具体的に説明する。
【0035】
図2(a)に示すカム板9は、試験対象物2の操作レバー5を移動方向規制レール17と直交する方向に反復動作させるためのもので、このカム板9には、カム板9を移動部材7のカム板取付部4に装着した状態で移動方向規制レール17と直交する方向の移動方向規制用長穴25aと、この移動方向規制用長穴25aに直交する駆動力伝達用長穴26aとが設けられている。
【0036】
カム板9は、図3に示されるように、移動部材7のカム板取付部4にカム板固定ネジ20を利用して着脱可能に装着され、カム板9の移動方向規制用長穴25aはベースプレート3上の固定ピン16に、また、カム板9の駆動力伝達用長穴26aは回転駆動手段13のクランクピン15に係合される。
【0037】
移動部材7を保持する移動部材ガイド手段8自体は前述した通りベースプレート3に平行な面内における移動部材7の位置変化を縦横に許容する構造であるが、移動部材7に装着されたカム板9の移動方向規制用長穴25aとベースプレート3上の固定ピン16との係合により、移動部材7の位置変化は、最終的に、カム板9の移動方向規制用長穴25aの方向に沿った向き、つまり、この場合は移動方向規制レール17と直交する向きに規制される。
【0038】
また、カム板9の駆動力伝達用長穴26aは移動方向規制用長穴25aに直交して設けられているので、移動方向規制用長穴25aとベースプレート3上の固定ピン16との係合、および、駆動力伝達用長穴26aとクランクピン15との係合により、クランクピン15の運動が停止した状態におけるカム板9のガタツキは、ベースプレート3に平行な面内において直交する2つの方向、つまり、移動方向規制レール17に平行な方向と移動方向規制レール17に直交する方向から同時に禁止される。
【0039】
この際、カム板9が単体であれば、移動方向規制用長穴25aと固定ピン16との間の遊び、および、駆動力伝達用長穴26aとクランクピン15との間の遊びによって、ベースプレート3に対するカム板9の姿勢変化、つまり、水平面内でのカム板9の回転が或る程度は許容されるが、実際にはカム板9は移動部材7に装着されており、ベースプレート3に対する移動部材7の姿勢変化である回転運動が移動部材ガイド手段8によって完全に禁止されているので、この結果として、移動部材7に装着されたカム板9の姿勢変化つまり水平面内での回転によるカム板9の不用意なガタツキも防止される。
【0040】
そして、回転駆動手段13を作動させてベースプレート3に平行な面内でクランクピン15を公転運動させると、ベースプレート3に対する移動部材7およびカム板9の姿勢変化である回転が移動部材ガイド手段8によって禁止された状態で、クランクピン15の公転運動に伴うクランクピン15の位置変化に応じ、カム板9および該カム板9を装着した移動部材7が、カム板9の移動方向規制用長穴25aの方向つまり移動方向規制レール17と直交する方向に沿って往復移動を繰り返し、移動部材7の係合部6に接続された試験対象物2の操作レバー5が図3中の矢印方向に反復動作させられることになる。
【0041】
また、図2(b)に示すカム板10は、試験対象物2の操作レバー5を移動方向規制レール17と平行な方向に反復動作させるためのもので、このカム板10には、カム板10を移動部材7のカム板取付部4に装着した状態で移動方向規制レール17に平行となる方向の移動方向規制用長穴25bと、この移動方向規制用長穴25bに直交する駆動力伝達用長穴26bとが設けられている。
【0042】
カム板10を操作レバー耐久試験機1に装着したときの状態を図4に示す。このカム板10を装着した際には、移動部材7に装着されたカム板10の移動方向規制用長穴25bとベースプレート3上の固定ピン16との係合により、移動部材7の位置変化は、最終的に、カム板10の移動方向規制用長穴25bの方向に沿った向き、つまり、移動方向規制レール17と平行な向きに規制される。
【0043】
図3の例とは方向性が異なるが、前記と同様、カム板10の駆動力伝達用長穴26bは移動方向規制用長穴25bに直交して設けられているので、クランクピン15の運動が停止した状態におけるカム板10の平行移動方向のガタツキ、および、回転方向のガタツキが確実に防止される。
【0044】
回転駆動手段13を作動させてベースプレート3に平行な面内でクランクピン15を公転運動させると、クランクピン15の公転運動に伴うクランクピン15の位置変化に応じ、カム板10および該カム板10を装着した移動部材7が、カム板10の移動方向規制用長穴25bの方向つまり移動方向規制レール17と平行な方向に沿って往復移動を繰り返し、移動部材7の係合部6に接続された試験対象物2の操作レバー5が図4中の矢印方向に反復動作させられることになる。
【0045】
更に、図2(c)に示すカム板11は、試験対象物2の操作レバー5を移動方向規制レール17と斜交する方向に反復動作させるためのもので、このカム板11には、カム板11を移動部材7のカム板取付部4に装着した状態で移動方向規制レール17と直交せずに斜交する方向の移動方向規制用長穴25cと、この移動方向規制用長穴25cに直交する駆動力伝達用長穴26cとが設けられている。
【0046】
カム板11を操作レバー耐久試験機1に装着したときの状態を図5に示す。このカム板11を装着した際には、移動部材7に装着されたカム板11の移動方向規制用長穴25cとベースプレート3上の固定ピン16との係合により、移動部材7の位置変化は、最終的に、カム板11の移動方向規制用長穴25cの方向に沿った向き、つまり、移動方向規制レール17と斜交する向きに規制される。
【0047】
図3および図4の例とは方向性が異なるが、前記と同様、カム板11の駆動力伝達用長穴26cは移動方向規制用長穴25cに直交して設けられているので、クランクピン15の運動が停止した状態におけるカム板11の平行移動方向のガタツキ、および、回転方向のガタツキが確実に防止される。
【0048】
この場合、回転駆動手段13を作動させてベースプレート3に平行な面内でクランクピン15を公転運動させると、クランクピン15の公転運動に伴うクランクピン15の位置変化に応じ、カム板11および該カム板11を装着した移動部材7が、カム板11の移動方向規制用長穴25cの方向つまり移動方向規制レール17と斜交する方向に沿って往復移動を繰り返し、移動部材7の係合部6に接続された試験対象物2の操作レバー5が図5中の矢印方向に反復動作させられることになる。
【0049】
図2(c)では、一例として、移動部材7を移動方向規制レール17に対して45°の角度で斜交して往復移動させるためのカム板11の構成を示しているが、移動方向規制用長穴25cの角度を変えれば、移動方向規制用長穴25cの角度に応じて移動部材7を斜交動作させることができる。何れの場合も、駆動力伝達用長穴26cは移動方向規制用長穴25cに対して直交するように設ける。
【0050】
また、図2(d)に示すカム板12は、クランクピン15の移動軌跡と同等の公転運動の軌跡に沿って試験対象物2の操作レバー5を連続動作させるためのもので、このカム板12には、ベースプレート3上の固定ピンとの干渉を避けるための切欠部25dと回転駆動手段13のクランクピン15に係合する丸穴26dとが設けられている。
【0051】
カム板12を操作レバー耐久試験機1に装着したときの状態を図6に示す。このカム板12を装着した際には、移動部材7に装着されたカム板12の丸穴26dと回転駆動手段13のクランクピン15との係合によってクランクピン15の運動が停止した状態におけるカム板12の平行移動方向のガタツキが防止され、また、カム板12の回転方向のガタツキは、該カム板12を装着した移動部材7の姿勢変化を禁止する移動部材ガイド手段8によって防止される。
【0052】
そして、回転駆動手段13を作動させてベースプレート3に平行な面内でクランクピン15を公転運動させると、クランクピン15の公転運動に伴うクランクピン15の位置変化に応じ、カム板11および該カム板11を装着した移動部材7が姿勢を保持したままクランクピン15の移動軌跡と同等の公転運動の軌跡に沿って連続的に移動し、移動部材7の係合部6に接続された試験対象物2の操作レバー5は、図6中の矢印で示すように、クランクピン15の移動軌跡と同等の公転運動の軌跡に沿って連続的に動作する。
【0053】
以上に述べたように、この実施形態では、複数のカム板9〜12の何れかを選択して移動部材7のカム板取付部4に装着することで、試験対象物2の操作レバー5を移動方向規制レール17と直交する方向,移動方向規制レール17と平行な方向,移動方向規制レール17と斜交する方向の何れかに反復動作させたり、あるいは、クランクピン15の移動軌跡と同等の公転運動の軌跡に沿って連続的に動作させたりすることができる。
【0054】
カム板9〜12の交換作業は極めて簡単であるから、何れかのカム板を選択して操作レバー5の反復動作つまり耐久試験を行った後、このカム板の移動方向規制用長穴と方向性が異なる移動方向規制用長穴を有する別のカム板を選択して移動部材7のカム板取付部4に装着して同様の操作を行うことで、試験対象物2の操作レバー5を様々な方向に往復移動させて耐久試験を行うことができる。
【0055】
しかも、操作レバー耐久試験機1はカム式の移動機構もしくはクランク式の移動機構を応用した簡便かつ安価な構造であるから、装置の製造自体も低コストにて実現できる。
【0056】
次に、図7を参照して他の一実施形態の操作レバー耐久試験機27について説明する。この操作レバー耐久試験機27は、前述した各方向に対する係合部6の往復動作あるいは公転運動の動作に加えて係合部6の上下動作を重複して行えるようにしたものである。
【0057】
図1の操作レバー耐久試験機1と共通する構成要素については図7中に同一の符号を付すにとどめ、図1の操作レバー耐久試験機1との相違点についてのみ具体的に説明する。
【0058】
この実施形態における移動部材ガイド手段28は、略台形状の断面を有する移動方向規制レール17と、移動方向規制レール17にドーブテイル嵌合して移動方向規制レール17上を移動するスライダ18、および、移動方向規制レール17の両端部から下方に向けて突出するガイドロッド29,29と、ガイドロッド29,29の上下移動をサポートするためにベースプレート3上に固設されたガイドブッシュ30,30によって構成され、スライダ18および移動部材7を装着した移動方向規制レール17がベースプレート3に対して姿勢を保持したまま上下移動できるようになっている。
【0059】
また、ベースプレート3上には、前述した固定ピン16に加え、ベースプレート3に対して平行となる第二の固定ピン31がクランクピン15の移動領域を避けるようにしてステー32を介して固設されている。
【0060】
そして、移動部材7のカム板取付部4に装着されるカム板33の側面のうち、移動方向規制レール17と直交する1つの側面には、カム板33の厚み方向に傾斜する第二の移動方向規制用長穴34が設けられ、移動方向規制レール17と平行な位置関係にある第二の固定ピン31と係合する。
符号25aは移動方向規制レール17と直交する方向の移動方向規制用長穴、また、符号26aは移動方向規制用長穴25aに直交する駆動力伝達用長穴である。
【0061】
従って、回転駆動手段13を作動させてベースプレート3に平行な面内でクランクピン15を公転運動させると、クランクピン15の公転運動に伴うクランクピン15の位置変化に応じ、カム板33および該カム板33を装着した移動部材7が、カム板33の移動方向規制用長穴25aの方向つまり移動方向規制レール17と直交する方向に沿って往復移動を繰り返すと共に、第二の固定ピン31に対するカム板33の位置変化、より具体的には、カム板33の厚み方向に傾斜した第二の移動方向規制用長穴34に対する第二の固定ピン31の相対的な係合位置の変化に応じ、移動部材ガイド手段28によって水平姿勢を保持された移動部材7が上下に移動する。
【0062】
この結果、移動部材7の係合部6に接続された試験対象物2の操作レバー5が移動方向規制レール17と直交する方向に沿って反復動作させられ、同時に、1回の往復動作毎に操作レバー5の先端部が係合部6のシャフト22の下端部で押圧されることになる。
【0063】
従って、このような構成は、特に、操作レバー5の先端にプッシュ式のヘッドスイッチ等を備えた試験対象物2の耐久試験に好適である。
【0064】
ここでは、一例として、移動方向規制レール17と直交する方向の移動方向規制用長穴25aを備えたカム板33について示しているが、カム板33の移動方向規制用長穴25aに代えて移動方向規制レール17に斜交する方向の移動方向規制用長穴25cを設け、これに直交する駆動力伝達用長穴26cを設けた場合も(図2(c)参照)、操作レバー5の反復動作方向が変化する点を除き、前記と略同等の作用効果を得ることができる。
【0065】
更に、カム板33の駆動力伝達用長穴26aに代えて丸穴26dを、また、移動方向規制用長穴25aに代えて切欠部25dを設けることも可能であり(図2(d)参照)、このような構成を適用した場合は、操作レバー5が公転運動を1回行う毎に操作レバー5の先端部が係合部6のシャフト22の下端部で押圧されることになる。
【0066】
また、カム板33の移動方向規制用長穴25aに代えて移動方向規制レール17に平行な方向の移動方向規制用長穴25bを設け、これに直交する駆動力伝達用長穴26bを設けることも可能であるが(図2(b)参照)、このような構成を適用する場合は、ベースプレート3に対する第二の固定ピン31の取り付け位置と方向を変更して第二の固定ピン31を移動方向規制レール17に対して直交させると共に、カム板33の側面のうち、移動方向規制レール17と平行な1つの側面にカム板33の厚み方向に傾斜する第二の移動方向規制用長穴34を設け、該第二の移動方向規制用長穴34を第二の固定ピン31と係合させるようにする。
つまり、第二の固定ピン31はカム板33の主たる移動方向に直交して配備されるべきであり、第二の移動方向規制用長穴34は、第二の固定ピン31に合わせ、移動方向に平行となるカム板33の一側面に設ける。
なお、カム板33が公転運動する場合には、カム板33の主たる移動方向というものはないが、この場合は、第二の固定ピン31が第二の移動方向規制用長穴34から脱落しないように第二の固定ピン31を長めに形成すると共に、第二の移動方向規制用長穴34も深めに刻設することが望ましい。
【0067】
以上に述べた実施形態では、移動部材7の端部にカム板取付部4および係合部6を設けて移動部材7の略中央部を移動部材ガイド手段8もしくは28のスライダ18によって保持するようにしているが、理論的には、移動部材7の一端部にカム板取付部4を設けて移動部材7の他端部を移動部材ガイド手段8もしくは28のスライダ18によって保持し、移動部材7の略中央部に係合部6を設けるといったことも可能である。
但し、そのような構成を適用した場合には、カム板取付部4と移動部材ガイド手段8もしくは28との間の離間距離が相対的に冗長されるので、特に、移動方向規制レール17と平行な向きに係合部6を往復移動させる場合、あるいは、係合部6を公転運動させるような場合、もしくは、これらの動作と係合部6の上下移動を組み合わせるような場合において、移動部材7とスライダ18との間,スライダ18と移動方向規制レール17との間,移動方向規制レール17のガイドロッド29とガイドブッシュ30との間でカジリが発生する可能性が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】一実施形態の操作レバー耐久試験機の構成について示した斜視図である。
【図2】同実施形態の操作レバー耐久試験機に装着が可能なカム板の構成例の幾つかについて具体的に示した平面図で、図2(a)は試験対象物の操作レバーを移動方向規制レールと直交する方向に反復動作させるためのカム板、図2(b)は試験対象物の操作レバーを移動方向規制レールと平行な方向に反復動作させるためのカム板、図2(c)は試験対象物の操作レバーを移動方向規制レールと斜交する方向に反復動作させるためのカム板、図2(d)は試験対象物の操作レバーをクランクピンの移動軌跡と同等の公転運動の軌跡に沿って連続動作させるためのカム板を示している。
【図3】同実施形態の操作レバー耐久試験機に試験対象物の操作レバーを移動方向規制レールと直交する方向に反復動作させるためのカム板を装着した状態を示した斜視図である。
【図4】同実施形態の操作レバー耐久試験機に試験対象物の操作レバーを移動方向規制レールと平行な方向に反復動作させるためのカム板を装着した状態を示した斜視図である。
【図5】同実施形態の操作レバー耐久試験機に試験対象物の操作レバーを移動方向規制レールと斜交する方向に反復動作させるためのカム板を装着した状態を示した斜視図である。
【図6】同実施形態の操作レバー耐久試験機に試験対象物の操作レバーをクランクピンの移動軌跡と同等の公転運動の軌跡に沿って連続動作させるためのカム板を装着した状態を示した斜視図である。
【図7】上下動作を重複して行うようにした他の一実施形態の操作レバー耐久試験機の構成について示した斜視図である。
【図8】トグルスイッチやジョイスティック等の耐久試験を実現するための一般的な解決手段について示した概念図で、図8(a)はクランク機構を利用したもの、図8(b)はカム板を利用したものである。
【符号の説明】
【0069】
1 操作レバー耐久試験機
2 試験対象物
3 ベースプレート
4 カム板取付部
5 操作レバー
6 係合部
7 移動部材
8 移動部材ガイド手段
9,10,11,12 カム板
13 回転駆動手段
14 回転軸
15 クランクピン
16 固定ピン
17 移動方向規制レール
18 スライダ
19 カム板挿入スリット
20 カム板固定ネジ
21 ネジ通し穴
22 シャフト
23 操作レバーホルダ
24 固定手段
25a,25b,25c 移動方向規制用長穴
25d 切欠部
26a,26b,26c 駆動力伝達用長穴
26d 丸穴
27 操作レバー耐久試験機
28 移動部材ガイド手段
29 ガイドロッド
30 ガイドブッシュ
31 第二の固定ピン
32 ステー
33 カム板
34 第二の移動方向規制用長穴
101 移動部材
102 移動部材ガイド手段
103 回転駆動手段
104 クランクピン
105 接続桿
106 長穴
107 カム板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作レバーを有する試験対象物を設置するためのベースプレートと、
カム板を着脱可能に保持するためのカム板取付部および前記試験対象物の操作レバーに接続する係合部を備えた移動部材と、
前記ベースプレートに対する前記移動部材の姿勢を保持し、少なくとも、前記ベースプレートに平行な面内における前記移動部材の位置変化を許容する移動部材ガイド手段と、
前記移動部材のカム板取付部に選択的に装着される複数のカム板と、
前記ベースプレート上に固設された回転駆動手段の回転軸にオフセットして固着され前記ベースプレートに平行な面内で公転運動するクランクピンと、
前記クランクピンの移動領域よりも外側で前記ベースプレート上に立設された固定ピンとを有し、
少なくとも、前記カム板のうちの1枚には、前記固定ピンに係合する移動方向規制用長穴と、前記クランクピンに係合する駆動力伝達用長穴とが直交して設けられ、前記各カム板における移動方向規制用長穴の方向性が相互に異なっていることを特徴とする操作レバー耐久試験機。
【請求項2】
前記移動部材ガイド手段は、前記ベースプレート上に固設された移動方向規制レールと、前記移動方向規制レールに沿って移動し、前記移動方向規制レールと直交する方向に前記移動部材の移動方向を規制するスライダとによって構成されていることを特徴とする請求項1記載の操作レバー耐久試験機。
【請求項3】
前記カム板の内の一枚は、前記移動部材のカム板取付部に装着された状態で前記移動方向規制レールと直交する方向の移動方向規制用長穴を備えていることを特徴とする請求項2記載の操作レバー耐久試験機。
【請求項4】
前記カム板の内の一枚は、前記移動部材のカム板取付部に装着された状態で前記移動方向規制レールに平行となる方向の移動方向規制用長穴を備えていることを特徴とする請求項2または請求項3記載の操作レバー耐久試験機。
【請求項5】
前記カム板の内の一枚は、前記移動部材のカム板取付部に装着された状態で前記移動方向規制レールと直交せずに斜交する方向の移動方向規制用長穴を備えていることを特徴とする請求項2,請求項3または請求項4記載の操作レバー耐久試験機。
【請求項6】
前記カム板の内の一枚は、前記移動方向規制用長穴に代えて前記固定ピンとの干渉を避けるための切欠部を備え、かつ、前記駆動力伝達用長穴に代えて前記クランクピンに係合する丸穴を備えていることを特徴とする請求項2,請求項3,請求項4または請求項5記載の操作レバー耐久試験機。
【請求項7】
前記移動部材ガイド手段は、前記ベースプレートに垂直な方向の前記移動部材の位置変化を許容するように構成され、
前記ベースプレートには、前記クランクピンの移動領域よりも外側に前記ベースプレートと平行な第二の固定ピンが固設され、
少なくとも、前記カム板のうちの1枚の側面には、前記第二の固定ピンと係合して該カム板の厚み方向に傾斜する第二の移動方向規制用長穴が設けられていることを特徴とする請求項1,請求項2,請求項3,請求項4,請求項5または請求項6記載の操作レバー耐久試験機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−10324(P2006−10324A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−183446(P2004−183446)
【出願日】平成16年6月22日(2004.6.22)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】