説明

操作自在な無人低速飛翔体

【課題】二重反転式の回転翼を有した飛翔体の離陸時におけるダイナックロールオーバを防止する。また、各種飛翔の制御を、簡易な構造で、容易に行う。
【解決手段】2つの水平回転翼25、26の下方に、これら2つの水平回転翼25、26の回転によって生ずる下降流を受ける投影面積が調整自在の面積調整手段33が、鉛直軸23に関して対向するように少なくとも2つ(33a、33c)設けられる。そして、対向する面積調整手段33a、33cの両面積が上昇時には同量づつ減少され、下降時には同量づつ増加されるよう面積調整手段33a、33cが制御される。これにより、飛翔体20が昇降される(矢印E)。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鉛直軸に沿って同軸上に、水平方向に回転する2つの水平回転翼が配設された飛翔体のこれら2つの水平回転翼を互いに反対方向に回転させることによって飛翔体の飛翔を、制御する装置に関し、特に、無人飛翔体を遠隔操縦により制御する遠隔操縦装置に関する。
【0002】
【従来の技術および解決しようとする課題】日本の国土では、地震、風水害、土砂崩れ、雪崩、火山噴火、津波、山火事など多種多少の自然災害が発生する。
【0003】近年のように情報化が進んだ社会では、通信回線の途絶は被災地の復興を遅らせるだけではなく、災害現場の状況がつかめないことは後方の支援組織の効率的な活動の妨げになる。
【0004】地震や航空機墜落など、被害者を救援するだけの状況であれば救援ヘリコプターが有効であるが、噴煙をあげている火山の活動を上空から近づいて監視する場合には、突然の噴火による火山弾の直撃による二次災害を防止するためにも無人の飛翔体を用いることが望ましい。
【0005】同様に、低空飛行する有人ヘリコプターを気流の変化の激しい山岳地域での遭難事故の捜索に使うとすると、墜落や衝突などの二次災害の危険があり、雪崩の危険のある地域での捜索に使うとするとヘリコプターから吹き下ろされる強烈な下降流によって新たな雪崩が発生する危険がある。
【0006】このため、上空からの被災者の捜索が困難な場合には、地上から大勢の救援隊が捜索にあたったり、雪解けを待って遺体となった被災者を捜索することになるが、捜索が時間がかかったり事後的であり、迅速に捜索を行うことができない。
【0007】したがって、こうした場合に、小型で遠隔操作できる無人の飛翔体の利用が望ましく、広い地域を迅速に捜索することができる。
【0008】さらに、被災地の映像や通信を緊急に復旧するためには、上空に無線中継器を静止させておく必要があるため、高価で多様な使い道のある有人ヘリコプターを無線中継のためだけに利用することはコスト的に困難である。
【0009】こうした場合にも、小型で遠隔操作できる無人の飛翔体であれば、低コストで緊急の通信回線を確保して救援活動に利用することができる。
【0010】小型で遠隔操作できる無人の飛翔体の利用の要請は、上述した各種災害現場だけではなく、広く農業、牧畜業などの分野からの要請もある。
【0011】小型で遠隔操作できる無人の飛翔体を使って、農業における薬剤散布、種子まき、生育状況や作柄の写真撮影を行うことができる。
【0012】また、牧畜業における放牧状況の監視に利用できる。
【0013】さらには、鉱山における発破前の安全確認、養殖漁業における餌撒きや、赤潮の監視などに利用することができる。さらには、ダムや送電線の監視、上空の排気ガスの採取に、火山噴火や土石流などの状況を遠くの安全な地点から遠隔操作でテレビ中継する場合にもその用途がある。
【0014】このように、遠隔操縦できる小型の無人飛翔体の各分野からの要請は大きいものの、現状では以下のような問題がある。
【0015】すなわち、従来、広い水田の農薬散布は、人間が搭乗して操縦するヘリコプタのほか、全長が2mほどのラジコン模型のヘリコプタを使用して行われる。
【0016】確かに、これらの低速で任意の経路を飛翔する飛翔体を用いて作業を行うことで、農作業の労働力不足を補えたり、作業の合理化を図ることができる。
【0017】しかし、図39に示すように、模型にせよ、有人機にせよ、通常のヘリコプタの形態を有している低速飛翔体70は、機体73の上部のメインロータ71、機体73後部の垂直ロータ72のいずれもが高速回転した状態でむき出しになっているために、樹木や崖などと衝突すると、ロータが瞬時にして破損してしまい、機体は墜落大破してしまう。
【0018】そこで、回転翼(ロータ)が地上の障害物と接触して起きる事故を防止することを目的とする構造のものが公知となっている。たとえば、特開平5−301600号公報には、ヘリコプタのメインロータの側面に二重のロータフレームを設けて、メインロータを保護するようにした発明が開示されている。
【0019】しかし、機体の上部にカバーなどを設けるようにした構造のものは、構造が複雑になってしまう上に、機体の重量が増えてしまい、機体によって輸送できる貨物の重量が著しく制限されることになり、実用化までに至っていない。
【0020】ここで、通常のヘリコプタ70の運転操作にあたっては、メインロータ71の回転に伴うこの回転翼71の抗力によって機体73を逆方向に回そうとするトルクを打ち消すために、機体73後部の垂直ロータ72の推力を調整するという微妙なテクニックが必要となる。しかも、運転中にこのテクニックを駆使しつつ、突風や離着陸時の機体73の運動に伴って機体73が前後方向に傾斜したときに機体73後部の垂直ロータ72が地面などに激突しないように細心の注意を払う必要がある。
【0021】したがって、通常のヘリコプタの構造を持つ低速飛翔体70を安全に運転するには、特殊な技能を必要となる。
【0022】しかしながら、現状では、十分に訓練された運転の専門家を要請し雇用することはコストがかかるため、こうした特殊技能をもって人材を多く要請することができない。さらに、ユーザがヘリコプタなどの低速飛翔体70を使用する際にも、この特殊技能に応じた料金を支払う必要があるため、簡単にヘリコプタなどの低速飛翔体70を使用することができなかった。
【0023】このように、従来はヘリコプタなどの低速飛翔体70を安全に操縦するには制約があり、これが広い分野から潜在的な需要があるにもかかわらずに多く利用されていない原因の一つになっていた。
【0024】ところで、ヘリコプタなどのように垂直ロータ72を必要とする低速飛翔体70とは別に、垂直ロータを必要としない低速飛翔体が、19世紀にすでに英国で発明されている。
【0025】これは、水平方向に回転する2つの回転翼(メインロータ)を鉛直軸同軸上に配置し、これらを互いに逆回転させるようにした、いわゆる二重反転式のメインロータを有する飛翔体である。つまり、メインロータを互いに逆方向に回転させることで、メインロータが空気をかき回して回転するときに受ける空気抵抗の反力で機体が回転しないようにしたものである。
【0026】この種の飛翔体では、メインロータの回転軸に対して軸対称の筒を、メインロータを覆うカバーとして備えたものがある。このカバーの種類としては、板状のものやネット状のものを使用することができる。
【0027】とりわけ、USP4,795,111には、筒状の機体の中に高速回転する換気扇(ファン)のようなプロペラを設け、このプロペラの回転に伴って生じた下向きの空気の流れである下降流の下に制御翼を設けた構造のものが開示されている。この制御翼によって、機体の回転トルクが相殺されるとともに、機体のロール、ピッチ方向の姿勢が調整され、さらに機体が平行移動される。
【0028】この種の二重反転式の回転翼を有した飛翔体は、回転翼の周囲をカバーで覆うことで、機体全体を覆うことができることから、構造的に容易な構造のものにすることができる。
【0029】このように、二重反転式の回転翼を有した飛翔体にカバーを設けることで、従来のヘリコプタのように、構造的に複雑にならずに、安全に運転することが可能となる。
【0030】しかも、このように機体全体をカバーを覆うことによって、空気抵抗が問題となる虞もない。というのは、こうした農作業などに使用されてる飛翔体は、空中で停止したり、せいぜい自動車程度の速度で移動する程度であり、ロケットや航空機のように空気抵抗に逆らって音速に近い速度で飛行することはあり得なく、飛行方向に対して空気抵抗を極端に小さくするような形状にする必要性はないからである。
【0031】しかしながら、通常の航空機が機体寸法に比べて十分に長い平坦な滑走路、ヘリポートなどから離着陸するのに対して、農作業などに用いられる低速飛翔体は、田畑、河原、野原のように機体の寸法に比べて狭い、しかも凹凸の激しい悪条件の地形であっても離着陸する機能が求められる。
【0032】しかし、こうした狭く凹凸の激しい地形での離陸は危険を伴い、その運転操作には細心の注意が必要とされ、いわゆる「ダイナミックロールオーバ」と呼ばれる横転事故を起こさぬようにすることが要求される。
【0033】すなわち、図40はヘリコプタ70が離陸する様子を示したものであり、こうした機体73上部にメインロータ71を備えた飛翔体にあっては、メインロータ71に垂直に上向きの揚力が発生する。しかし、地面60が傾斜している場合には、揚力の鉛直方向成分が機体73の重量を持ち上げるように作用するばかりではなく、揚力の中心点の機体73の低い方の接地点を結ぶ線に直角な揚力の力成分が、矢印に示すように機体を引き倒す方向に作用する。仮に、メインロータ71が起動され、推力が出始めたときに、機体73の最初の傾斜が大きすぎて機体が傾き始めると、メインロータ71の推力の水平方向成分はますます機体73を引き倒す力を大きくする。このため、ついには機体73が横転してしまい、メインローラ71が地面60と激突して大事故になる虞がある。一般に、離陸前の機体73の傾きが15度を超えると危険であるといわれている。
【0034】このことは、同様に水平方向に回転するメインロータを備えた二重反転式の飛翔体でも起きうる現象である。
【0035】ここで、地面に10cmの段差がある地形から離陸する場合の機体の最初の傾きを想定すると、機体の幅が3mもある回転翼式の飛翔体であれば、離陸前の機体の傾きは2度未満であって、実際の運転にはそれほど細心の注意を要することはない。
【0036】しかし、機体の幅が30cm程度の模型の飛翔体であれば、18度もの傾きになってしまうため、細心の注意を払って操縦したとしても横転してしまう可能性は高い。
【0037】したがって、模型のヘリコプタなどを遠隔操作で離陸させる場合には、平坦な場所を選択しなければならず、実際には離陸場所が限定されてしまうという問題があった。
【0038】また、模型のヘリコプタを燃料消費を節約するなどの目的で、操縦者の目の届かない地点に一旦着陸させ、その地点から再び離陸させたい場合がある。
【0039】特に、人が近づけない火山噴火や土石流の被害状況をテレビ中継して監視する場合には、機体を被災地の近くまで飛行させるのみならず、複数の観測地点で次々と離着陸を繰り返して広い被害の様子を詳細に観測したいとの要請がある。
【0040】しかし、こうした場合には、その離陸させる場所はダイナミックロールオーバが生じない地面の凹凸が数センチ以下であることを人間が一々確認しなければならなかったり、横転した場合にはその姿勢を手直しや機体の回収をしなければならない。したがって、こうした一旦着陸しての離陸の操縦は、凹凸の多い野外の地形においては、人間の手間の点から難しく、とりわけ被災地の場合には、人間の安全を確保する上で、実現は事実上不可能である。
【0041】そこで、水平回転翼を備えた飛翔体を運転する場合に、機体回収ないしは離陸前の姿勢の手直しをするための作業者のいる場所でなくても、着陸させることができ、そこからダイナミックロールオーバを生ずることなく離陸させることができることが要求される。
【0042】上述したUSP4,795,111には、機体を取り巻く円筒のすぐ内側に対応して設けられた制御翼を開閉することによってロールとピッチを制御するとともに、機体の下部に取り付けられた垂直翼の下端を曲げることによって機体の重心を前後左右に移動させるという技術が記載されている。
【0043】しかし、この制御翼はロールとピッチを制御するのみで、傾斜した地面から離陸を制御するものではない。つまり、この文献には、傾斜した地面から離陸する場合に、回転翼の揚力の水平方向成分によって機体を横転方向に引き倒す力を打ち消すように制御翼を制御することに関しては記載されていない。
【0044】また、上記文献に記載の制御翼と、垂直翼は全く別構造で、複雑な構造となっている。したがって、より簡易な統一した構造のもので、飛翔体の動きを制御する機構が望まれる。
【0045】以上のように、従来技術にあっては、二重反転式の水平翼を有した飛翔体は、回転翼の周囲にカバーを設けることで、空中にあるときは、簡易な構造、低コストで衝突することなく安全に飛翔できるものの、離陸するときにはダイナミックロールオーバを起こす虞があり、一旦着陸してから再び離陸するという運転、操縦は、人間の手間、人間の安全確保の点から事実上実現不可能であった。
【0046】また、飛翔体の一般的な動作、つまり水平移動、昇降、ヨー方向の回転といった動きを、簡易な構造で容易に行うことができないことになっていた。
【0047】本発明はこうした実状に鑑みてなされたものであり、二重反転式の回転翼を有した飛翔体において、離陸するときにダイナミックロールオーバを起こすことのないようにして、一旦着陸してから再び離陸するという運転、操縦を実現することを第1の解決課題とするものである。
【0048】また、飛翔体の一般的な動作、つまり水平移動、昇降、ヨー方向の回転といった動きを、簡易な構造で容易に行うようにすることを第2の解決課題とするものである。
【0049】ところで、図41(a)に示すように、ヘリコプタ型の低速飛翔体70を遠隔操縦する場合には、この低速飛翔体70は、前後に長い胴長の形状であり、前と後とで形状が異なっているために容易に「正面方向」を遠くからでも視認することができる。よって、オペレータとしては、遠隔操縦装置に設けられたジョイスティックを「正面方向」に対応する方向に倒すことによって、この低速飛翔体70を「正面方向」に、容易に進行させることができる。
【0050】しかし、二重反転式の水平回転翼を有した低速飛翔体20は、水平回転翼の回転軸23に関して対称な形状であるために、たとえ、機体の「正面方向」を予め定めていたとしても、外観をみる限りは、いずれの方向が機体の「正面方向」であるかを特定することができない。
【0051】したがって、こうした二重反転式の水平回転翼を有した低速飛翔体20を遠隔操縦する場合に、ヘリコプタなどの低速飛翔体70と同様に、「正面方向」を遠くからでも容易に視認でき、容易に遠隔操縦を行えるようにする必要がある。
【0052】しかも、低速飛翔体が太陽の向きによって影になって見えにくい状況下であっても、直感的に「正面方向」を特定できることが望まれる。「正面方向」を直感的に把握できずに遠隔操縦の操作を誤まってしまうと、たとえば、空中でホバリングした状態から正面の樹木から離れる方向に動かしたい場合でも、逆に樹木の向こう側に回り込ませてしまい、ますます目視による遠隔操縦を困難にして、墜落させてしまう虞があるからである。
【0053】本発明はこうした実状に鑑みてなされたものであり、二重反転式の水平回転翼を有した飛翔体を遠隔操縦する場合に、ヘリコプタなどと同様に、「正面方向」を遠くからでも容易に視認できるようにし、容易に遠隔操縦を行えるようにすることを第3の解決課題とするものである。
【0054】
【課題を解決するための手段および効果】そこで、本発明の第1発明では、上記第1の解決課題達成のために、鉛直軸に沿って同軸上に、水平方向に回転する2つの水平回転翼が配設された飛翔体のこれら2つの水平回転翼を互いに反対方向に回転させることによって前記飛翔体の飛翔を制御するようにした水平回転翼を有した飛翔体の制御装置において、前記2つの水平回転翼の下方に、これら2つの水平回転翼の回転によって生ずる下降流を受ける投影面積が調整自在の面積調整手段を、前記鉛直軸に関して対向するように少なくとも2つ設け、さらに、前記対向する面積調整手段のうち傾斜面上方側の面積調整手段の面積を、傾斜面下方側の面積調整手段の面積よりも大きくするよう前記面積調整手段を制御することにより、前記飛翔体の傾斜面下方側の接地点を傾斜面上方側の接地点よりも先に地面から離間させる離陸制御手段を具えるようにしている。
【0055】かかる構成によれば、図1、図7に示すように、2つの水平回転翼25、26の下方に、これら2つの水平回転翼25、26の回転によって生ずる下降流を受ける投影面積が調整自在の面積調整手段33が、鉛直軸23に関して対向するように少なくとも2つ(33a、33c)設けられる。
【0056】そして、この対向する面積調整手段33a、33cのうち傾斜面61上方側の面積調整手段33aの面積が、傾斜面61下方側の面積調整手段33cの面積よりも大きくするよう面積調整手段33a、33cが制御される。これにより、飛翔体20の傾斜面61下方側の接地点27bが傾斜面61上方側の接地点27aよりも先に地面から離間され、飛翔体20の姿勢が水平され離陸が行われる。
【0057】このように、二重反転式の水平回転翼を有した飛翔体20において、飛翔体20の傾斜面61下方側の接地点27bを傾斜面61上方側の接地点27aよりも先に地面から離間させ、離陸させるようにしたので、ダイナミックロールオーバを生じることなく安全に離陸させることができる。この結果、一旦着陸してから再び離陸するという運転、操縦が、人間の手間を要せず、危険を伴うことく可能となる。
【0058】また、本発明の第2発明では、上記第1の解決課題達成のために、鉛直軸に沿って同軸上に、水平方向に回転する2つの水平回転翼が配設された飛翔体のこれら2つの水平回転翼を互いに反対方向に回転させることによって前記飛翔体の飛翔を制御するようにした水平回転翼を有した飛翔体の制御装置において、前記2つの水平回転翼の下方に、これら2つの水平回転翼の回転によって生ずる下降流を受ける投影面積が調整自在の面積調整手段を、前記鉛直軸に関して対向するように少なくとも2つ設け、さらに、前記対向する面積調整手段のうち水平移動方向側の面積調整手段の面積を、水平移動方向とは反対側の面積調整手段の面積よりも大きくするよう前記面積調整手段を制御することにより、前記飛翔体を前記水平移動方向に水平移動させる水平移動制御手段を具えるようにしている。
【0059】かかる構成によれば、図1、図31に示すように、2つの水平回転翼25、26の下方に、これら2つの水平回転翼25、26の回転によって生ずる下降流を受ける投影面積が調整自在の面積調整手段33が、鉛直軸23に関して対向するように少なくとも2つ(33a、33c)設けられる。
【0060】そして、この対向する面積調整手段33a、33cのうち水平移動方向(正面方向)側の面積調整手段33aの面積が、水平移動方向とは反対側の面積調整手段33cの面積よりも大きくするよう面積調整手段33a、33cが制御される。これにより、飛翔体20が水平移動方向(正面方向)に水平移動される。
【0061】また、本発明の第2発明の別の発明では、鉛直軸に沿って同軸上に、水平方向に回転する2つの水平回転翼が配設された飛翔体のこれら2つの水平回転翼を互いに反対方向に回転させることによって前記飛翔体の飛翔を制御するようにした水平回転翼を有した飛翔体の制御装置において、前記2つの水平回転翼の下方に、これら2つの水平回転翼の回転によって生ずる下降流を受ける投影面積が調整自在の面積調整手段を、前記鉛直軸に関して対向するように少なくとも2つ設け、さらに、前記対向する面積調整手段の両面積を同量づつ減少させるよう前記面積調整手段を制御することにより、前記飛翔体を上昇させるとともに、これら両面積を同量づつ増加させるよう前記面積調整手段を制御することにより、前記飛翔体を下降させる昇降制御手段を具えるようにしている。
【0062】かかる構成によれば、図1、図34に示すように、2つの水平回転翼25、26の下方に、これら2つの水平回転翼25、26の回転によって生ずる下降流を受ける投影面積が調整自在の面積調整手段33が、鉛直軸23に関して対向するように少なくとも2つ(33a、33c)設けられる。
【0063】そして、対向する面積調整手段33a、33cの両面積が上昇時には同量づつ減少され、下降時には同量づつ増加されるよう面積調整手段33a、33cが制御される。これにより、飛翔体20が昇降される(矢印E)。
【0064】また、本発明の第2発明の別の発明では、鉛直軸に沿って同軸上に、水平方向に回転する2つの水平回転翼が配設された飛翔体のこれら2つの水平回転翼を互いに反対方向に回転させることによって前記飛翔体の飛翔を制御するようにした水平回転翼を有した飛翔体の制御装置において、前記2つの水平回転翼の下方に、これら2つの水平回転翼の回転によって生ずる下降流を、所定のピッチ角をもって受ける板状の部材を、前記鉛直軸に関して対向するように少なくとも2つ設けるとともに、前記板状の部材のピッチ角を調整する角度調整手段を設け、さらに、前記対向する板状の部材の両ピッチ角が、前記飛翔体の所望のヨー方向の回転力に応じた角度になるよう前記角度調整手段を制御することにより、前記飛翔体のヨー方向の姿勢角を変化させるヨー方向姿勢角制御手段を具えるようにしている。
【0065】かかる構成によれば、図1、図34に示すように、2つの水平回転翼25、26の下方に、これら2つの水平回転翼25、26の回転によって生ずる下降流を、所定のピッチ角をもって受ける板状の部材34が、鉛直軸23に関して対向するように少なくとも2つ(34a、34c)設けられる。そして、この板状の部材34a、34cのピッチ角を調整する角度調整手段が設けられる。
【0066】そして、対向する板状の部材34a、34cの両ピッチ角が、飛翔体20の所望のヨー方向Dの回転力に応じた角度になるよう角度調整手段が制御される。これにより、飛翔体20のヨー方向Dの姿勢角が変化される。
【0067】以上のように、第2発明によれば、飛翔体20の一般的な動作、つまり水平移動、昇降、ヨー方向の回転といった動きが、鉛直軸23に関して対向して設けられた面積調整手段33a、33c、ないしは板状部材といった簡易な構造で、これらの面積あるいはピッチ角を調整するという簡易な制御で容易に実現される。
【0068】また、第2発明において、上記面積調整手段を、水平回転翼によって生じる下降流を、所定のピッチ角をもって受ける2つの隣接して対向する板状の部材と、当該2つの対向する板状の部材の両ピッチ角が、極性が異なりかつ同一のピッチ角となるように調整する角度調整手段とからなるものであるとしている。
【0069】このようにすることで、図21に示すように板状の部材に作用するヨー方向の力Fvが相殺され、ヨー方向に機体が回転することなく、上下方向の力Fvをもって機体が水平移動され、昇降されることになる。つまり、ヨー方向に回転しないよう意識することなく、簡易に水平移動の制御ないしは昇降の制御を行うことができる。
【0070】また、第2発明において、前記鉛直軸に関して対向して設けられた2つの板状の部材を、少なくとも2組設け、前記ヨー方向姿勢角制御手段を、予め2組の板状部材の両ピッチ角を、極性が異なりかつ同一の所定角度にして、前記飛翔体のヨー方向の姿勢角が変化しないようにしておき、前記飛翔体のヨー方向の姿勢角を変化させる際には、前記2つの水平回転翼の回転によって生じる下降流を受ける投影面積が維持されるように、前記2組の板状部材のうち一方の組の板状部材のピッチ角を増加させるとともに、前記2組の板状部材のうち他方の組の板状部材のピッチ角を、前記一方の組の板状部材のピッチ角増加方向とは反対側に減少させるように、前記角度調整手段を制御している。
【0071】すなわち、図27(a)に示すように、予め2組の板状部材(34a、34c)、(34b、34d)の両ピッチ角が、極性が異なりかつ同一の所定角度にされ、ヨー方向の回転モーメントM+、M-は相殺され、飛翔体20のヨー方向の姿勢角が変化しないままとなる。そこで、図27(b)に示すように、飛翔体20のヨー方向の姿勢角を変化させる際には、2つの水平回転翼25、26の回転によって生じる下降流を受ける投影面積が維持されるように、2組の板状部材(34a、34c)、(34b、34d)のうち一方の組の板状部材(34a、34c)のピッチ角が増加され、この一方の組の板状部材(34a、34c)で発生するヨー方向の回転モーメントM´+が増加される。また、2組の板状部材(34a、34c)、(34b、34d)のうち他方の組の板状部材(34b、34d)のピッチ角が、一方の組の板状部材(34a、34c)のピッチ角増加方向とは反対側に減少され、この他方の組の板状部材(34b、34d)で発生する回転モーメントM-が減少される。この結果、飛翔体20をヨー方向に発生させる回転モーメント(M+−M-)が発生して、飛翔体20はヨー方向に回転される。このとき、2つの水平回転翼25、26の回転によって生じる下降流を受ける投影面積としては、板状部材(34a、34c)、(34b、34d)のピッチ角を変化させる前後で維持されているので、予め、飛翔体20の高度を維持しておけば、板状部材(34a、34c)、(34b、34d)のピッチ角が変化することに伴って、飛翔体20の高度は変化することはなくなる。つまり、高度を維持するための調整を意識することなく、簡易にヨー方向の回転の制御を行うことができる。
【0072】また、第2発明では、前記飛翔体の飛翔の制御は、遠隔操縦によって行われるものであり、前記遠隔操縦のための遠隔操縦装置の操作子に、前記面積調整手段の数に対応した自由度をもたせ、この操作子が一方側に操作されたときは、前記対向する2つの面積調整手段のうち一方の面積調整手段の面積が他方の面積調整手段の面積よりも大きくなり、前記操作子が前記一方側とは反対側に操作されたときには、前記対向する2つの面積調整手段のうち他方の面積調整手段の面積が前記一方の面積調整手段の面積よりも大きくなるように、操作子の操作方向と、面積を大きくすべき面積調整手段とを対応づけておくようにした遠隔操縦装置を具えるようにしている。
【0073】すなわち、図31に示すように、遠隔操縦のための遠隔操縦装置の操作子2に、面積調整手段33a、33b、33c、33dの数4に対応した自由度をもたせておき、この操作子2が一方側(正面方向)に操作されたときは、対向する2つの面積調整手段33a、33cのうち一方の面積調整手段33aの面積が他方の面積調整手段33cの面積よりも大きくなり、操作子2が上記一方側(正面側)とは反対側に操作されたときには、対向する2つの面積調整手段33a、33cのうち他方の面積調整手段33cの面積が一方の面積調整手段33aの面積よりも大きくなるように、操作子2の操作方向と、面積を大きくすべき面積調整手段33a、33cとが対応づけられる。
【0074】このようにすることで、操作系と制御系の対応づけが、単純で簡易なものとなり、装置を簡易な構造に構築することができることになり、また遠隔操縦を容易に行うことができるようになる。
【0075】なお、操作子としては、ジョイスティックのような2自由度を持ったもの、ボリウムのような1自由度を持ったものであってもよい。
【0076】また、本発明の第3発明では、上記第3の解決課題達成のために、鉛直軸に沿って同軸上に、水平方向に回転する2つの水平回転翼が配設された飛翔体のこれら2つの水平回転翼を互いに反対方向に回転させることによって前記飛翔体の飛翔を、遠隔操縦により制御するようにした水平回転翼を有した飛翔体の制御装置において、前記2つの水平回転翼を、側方から覆う筒状のカバーを設け、このカバーの外周の各水平方位を識別表示するとともに、前記飛翔体を遠隔操縦する遠隔操縦装置の操作子に、前記飛翔体の水平方向の移動方向に応じた自由度をもたせ、前記操作子の周囲の各水平方位を、前記飛翔体のカバーの外周の各水平方位の識別表示に対応して識別表示し、前記操作子の操作方向の識別表示内容と、当該操作方向に前記操作子が操作されたときに前記飛翔体が水平移動する方向の識別表示内容とが一致するように、前記操作子の操作方向と、前記飛翔体が水平移動すべき方向とを対応づけておくようにしている。
【0077】すなわち、かかる構成によれば、図3、図5R>5に示すように、2つの水平回転翼を、側方から覆う筒状のカバーが設けられ、このカバーの外周22aの各水平方位が識別表示される(機体正面が赤色、機体右側が白色、機体左側が青色、機体後方が黒色)。
【0078】そして、飛翔体を遠隔操縦する遠隔操縦装置の操作子2に、飛翔体の水平方向の移動方向に応じた自由度をもたせておき、操作子2の周囲2aの各水平方位が、飛翔体のカバーの外周22aの各水平方位の識別表示に対応して識別表示される(赤色、白色、青色、黒色)。
【0079】そして、操作子2の操作方向の識別表示内容と、当該操作方向に操作子2が操作されたときに飛翔体が水平移動する方向の識別表示内容とが一致するように、操作子2の操作方向と、飛翔体が水平移動すべき方向とが対応づけられる(機体正面方向に水平移動させるための操作方向は赤色、機体右側方向に水平移動させるための操作方向は白色、機体左側方向に水平移動させるための操作方向は青色、機体後方に水平移動移動させるための操作方向は黒色)。
【0080】このように識別表示することで、外観からは機体の方向が特定できない、二重反転式の水平回転翼を有した飛翔体を、ヘリコプタなどと同様に、機体の各水平方位を、遠くから容易に特定することができるとともに、容易に遠隔操縦が行えるようになる。
【0081】なお、操作子としては、飛翔体の水平移動方向の自由度が2(機体正面方向、機体後方、機体左側、機体右側)であれば、ジョイスティックのような2自由度を持った操作子を使用することができ、飛翔体の水平移動の制御をあえて1自由度に限定するならば(機体正面方向、機体後方の制御のみ)、ボリウムのような1自由度を持った操作子を使用することができる。
【0082】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明に係る水平回転翼を有した飛翔体の制御装置の実施の形態について説明する。
【0083】図1は、本発明の実施形態の飛翔体20の構成を示す斜視図であり、図2は、この飛翔体20の飛翔を制御する制御装置の構成を示すブロック図であり、図6はこの飛翔体20の使用例を説明する図である。
【0084】これら図に示すように、本実施形態装置では、飛翔体20を無線にて遠隔操縦する場合を装置を想定している。
【0085】図6に示すように、飛翔体20は、オペレータによって携行されたラジコン操縦器1によって遠隔操縦され、飛翔体20に設けられたノズルを介して農薬が散布される。なお、本実施形態の飛翔体20の用途は、これに限らず、前述したように災害地における監視等の用途に幅広く利用できる。
【0086】図2に示すように本実施形態の制御装置は、大きくは、オペレータが携行して操縦するラジコン操縦器1と、飛翔体(機体)20に搭載された制御装置10とから構成されている。
【0087】機体20は、図1に示すように、大きくは、例えば、軽合金からなるフレーム21と、このフレーム21の上部を覆うカバー22(側壁)と、フレーム21とから構成されている。
【0088】フレーム21の中心、鉛直方向には、回転軸23が配設されており、この回転軸23に沿って同軸上に、水平方向に回転する2つの水平回転翼25(上ロータ)、26(下ロータ)が配設されている。
【0089】カバー22は、これら水平回転翼25、26を覆うように側方に取り付けられている。したがって、飛翔中に図39に示したように樹木等の障害物に衝突したとしても、水平回転翼25、26に損傷を与えることを防ぐことができる。なお、カバー22としては空気を通す網状のものであってもよい。
【0090】水平回転翼25、26は、エンジン28(たとえば模型飛行機用のエンジンが使用される)を駆動源とし、回転軸23を介して、回転される。回転軸23の途中、つまり上ロータ25と下ロータ26の間には、回転翼逆転用ギヤ30が設けられており、このギヤ30の前後で回転軸23の回転方向が逆転される。よって、これら2つの水平回転翼25、26は互いに反対方向に回転される。
【0091】制御装置10のエンジン制御系12は、エンジン28の回転数を制御するアクチュータを中心に構成されており、このエンジン制御系12によりエンジン28が駆動制御される。
【0092】エンジン28の燃料用のタンク29はフレーム21内の適宜箇所に設けられるとともに、緊急時に使用される非常用パラシュート31は、機体20の上部に設けられている。
【0093】図2に示す機体搭載用の制御装置10およびこれの電源であるバッテリ32は、フレーム21とカバー22の間に配設される。
【0094】また、フレーム21の最下部は、着地用の脚27として機能するようになっている。
【0095】上記2つの水平回転翼25、26は回転されることによって、後述するように、下降流が発生する。
【0096】そこで、これら2つの水平回転翼25、26の下方には、これら2つの水平回転翼25、16の回転によって生ずる下降流を受ける投影面積が調整自在の面積調整手段、つまり複数の邪魔板33と、この邪魔板33のピッチ角を変化させる(回転翼25、26に対して平行な面に対する開度を変化させる)回転軸35が設けられている。この回転軸35は、制御装置10により駆動制御される。邪魔板33の開閉により、上記下降流を受ける投影面積(回転翼25、26に対して平行な面に対する邪魔板33の投影面積)が変化され、飛翔体20は水平移動され、昇降される。以下、邪魔板33を「開く」ということは、回転翼25、26に対して平行な面に対するピッチ角を大きくするという意味で使用し、同様に邪魔板33を「閉じる」ということは、回転翼25、26に対して平行な面に対するピッチ角を小さくするという意味で使用する。
【0097】複数の邪魔板33のそれぞれは、後述する図22(a)に示すように、単一対向翼型の邪魔板として構成されている。そして、複数の邪魔板33は、図7(a)に示すように、フレーム21の下方の下フレーム24に、回転軸23に関して対向するように配設されている。すなわち、回転軸23に関して対称に一対の邪魔板33a、33cが配設されるとともに、この一対の邪魔板33a、33cに対して直角な方向に、同様に回転軸23に関して対称に他のもう一対の邪魔板33b、33dが配設されている。このような配置は、後述する図2222(d)に示されるように放射平行配置と呼ばれる。
【0098】機体20の各水平方位は、各邪魔板33a〜33dの位置に応じて予め定められている。すなわち、一対の邪魔板33a、33cに配置に沿った軸をX軸とし、邪魔板33a側をX軸プラス方向とし、邪魔板33c側をX軸マイナス方向としている。よって、他の一対の邪魔板33b、33dに配置に沿った軸がY軸となり、邪魔板33b側をY軸プラス方向とし、邪魔板33c側をY軸マイナス方向としている。以下、邪魔板33aが配置されている方向(X軸プラス方向)を、機体20の「正面方向」と定義する。以下、適宜、邪魔板33a、33b、33cおよび33dをそれぞれ邪魔板X+、Y+、X-、Y-と称する。
【0099】制御装置10の邪魔板制御系13は、各邪魔板33a〜33dそれぞれの回転軸35を回動させる4つのサーボモータを中心に構成されており、この邪魔板制御系13により邪魔板33a〜33dが個別に駆動制御される。つまり、邪魔板の自由度は4である。
【0100】なお、この実施形態では、邪魔板33を板の部材で構成している。つまり、本実施形態の面積調整手段は、図13(c)に示すように、板33の長手方向に沿って回転軸35を設け、この回転軸35を回動させることによって、下降流を受ける投影面積を調整するようにしたブラインド型と呼ばれるものである。
【0101】しかし、これに限定されることなく、投影面積を調整できるものであれば、図13に示すように任意の構成のものを採用することができる。
【0102】すなわち、図12は、邪魔板33の機能を説明する図であり、団扇でモデル化した邪魔板33が、下降流(ダウンウオッシュ)Wを受けた場合を示している。すなわち、回転翼25、26の回転に伴って吹き下ろされる下降流W(ダウンウォッシュ)を受ける団扇33を、水平にかざせば団扇33は下向きの力を受ける。空気力学的には、団扇33が風を受ける表面とその裏側との圧力差によって団扇33に下向きの力が生ずるのである。この団扇33の軸を機体20に取り付ければ、機体20の姿勢を変えるためのモーメントを発生させることができる。
【0103】このとき、団扇33が下降流Wを受ける投影面積を変化させることによって、下降流Wを受けて団扇33に生じる下向きの力を変化させることができる。このため、この下向きの力のうち、機体20の重心Gと団扇33とを結ぶ線分に対して垂直な方向の成分を変化することができ、機体20を倒すように作用するモーメントの大きさを変化させることができる。このため、機体20が離陸時に倒れる方向のモーメントとは反対側のモーメントを大きくするよう、団扇33の投影面積を強制的に変化させることによって、ダイナミックロールオーバの発生を抑制することができる。
【0104】このように、邪魔板33としては、下降流Wを受ける投影面積を変化させることができるものであればよく、図13(a)に示すように、固定した窓に対して、横にスライドして窓とを重ね合わせ、スライドさせることによって、下降流Wを受ける投影面積を変化させるようにした鎧戸型の面積調整手段を使用する実施が可能である。また、図13(b)に示すように、折り畳んで伸縮させることで、下降流を受ける面積を変化させるようにした蛇腹型の面積調整手段を使用してもよい。また、これら図13(a)、(b)、(c)を適宜組み合わせて面積調整手段を構成してもよい。
【0105】また、邪魔板33の数は2対(33a、33c)、(33b、33d)に限定されるわけではない。図15に示すように回転翼25、26の円周25a、26a内に4対の邪魔板を設けるような実施も可能である。多数の邪魔板33を配設することによって、下降流を受ける面積を調整する制御、特にダイナミックロールオーバの発生を抑制する制御をきめ細かく行うことが可能となる。
【0106】また、上記2つの水平回転翼25、26の下方には、これら2つの水平回転翼25、26の回転によって生ずる下降流を、所定のピッチ角をもって受ける複数の垂直翼34と、垂直翼34のピッチ角を変化させる(回転翼25、26に対して平行な面に対する開度を変化させる)回転軸36が設けられている。この回転軸36は、制御装置10により駆動制御される。垂直翼34の開閉により、上記下降流を受ける投影面積(回転翼25、26に対して平行な面に対する垂直翼34の投影面積)が変化され、飛翔体20は回転軸23を中心に、ヨー方向に回転される。以下、垂直翼34を「開く」ということは、回転翼25、26に対して平行な面に対するピッチ角を大きくするという意味で使用し、同様に垂直翼34を「閉じる」ということは、回転翼25、26に対して平行な面に対するピッチ角を小さくするという意味で使用する。
【0107】複数の垂直翼34のそれぞれは、後述する図29(a)に示すように、単葉型の垂直翼として構成されている。そして、複数の垂直翼34は、図7(a)に示すように、フレーム21の下方の下フレーム24に、回転軸23に関して対向するように配設されている。すなわち、回転軸23に関して対称に一対の垂直翼34a(第1垂直翼)、34c(第3垂直翼)が配設されるとともに、この一対の垂直翼34a、34cに対して直角な方向に、同様に回転軸23に関して対称に他のもう一対の垂直翼34b(第2垂直翼)、34d(第4垂直翼)が配設されている。一対の垂直翼は、一対の邪魔板に対して45度だけ傾斜されて配置されている。
【0108】制御装置10の垂直翼制御系14は、各垂直翼34a〜34dそれぞれの回転軸36を回動させる4つのサーボモータを中心に構成されており、この垂直翼制御系14により垂直翼34a〜34dが個別に駆動制御される。つまり、垂直翼の自由度は4である。
【0109】ただし、ヨー角方向の回転は正転と逆転の2方向だけであるので、垂直翼の自由度としては1組あたり1自由度、2組で2自由度最低あればよい。ただし、本実施形態では、離陸時には垂直翼を個別に水平に傾けて邪魔板33として機能させ、ダイナミックロールオーバを防ぐために、垂直翼の自由度を4としている。
【0110】また、制御装置10の傾斜センサ17は、機体20の傾斜角度を検出するセンサであり、地面センサ18は、機体20の対地距離を検出するセンサであり、これらの検出信号は制御装置本体11に入力される。
【0111】たとえば、地面センサ18としては、地上高6メートルまでならば超音波センサを使用することができ、地上高100メートルまでならばレーザ(または電波式)距離計を使用することができる。さらに、それ以上の高度については気圧計から距離を検出するセンサを使用することができる。
【0112】もちろん、GPSを用いた高度計を地面センサ18として使用することも可能である。
【0113】制御装置10の受信機16では、ラジコン操縦器1から送信された電波が受信アンテナ15を介して受信され、この受信電波に重畳された操作指令信号に応じた駆動制御信号が、傾斜センサ17、地面センサ18の検出信号に基づき制御装置本体11で生成され、これがエンジン制御系12、邪魔板制御系13、垂直翼制御系14に出力されることになる。
【0114】さて、図3に示すように、水平回転翼25、26を側方から覆う筒状のカバー22の外周22aの各水平方位は、色の塗り分けによって識別表示されている。すなわち、機体20の正面方向(南の方位)が赤色に、機体20の右側(西の方位)が白色に、機体20の左側(東の方位)が青色に、機体後方(北の方位)が黒色にそれぞれ塗られている。
【0115】そこで、図4に示すように、正面方向に進行する飛翔体20を、これに相対向するラジコン操縦器1を携行したオペレータが、観察したときには、側面図として示すように、「赤色」の領域が、他の白色、青色の領域に比較して大きく視認されることになる。
【0116】ここで、ラジコン操縦器1には、飛翔体20の水平移動方向を変化させるための操舵用ジョイスティック2が設けられている。無風状態ではジョイスティック2を倒した方向に機体20が進行し、ジョイスティック2の操作量に応じて機体20の水平方向の速度は大きくなる。ただし、推力の鉛直方向成分が変化するために高度が変化することが多い。
【0117】この操舵用ジョイスティック2は、飛翔体20の水平方向の移動方向(前後進、左右方向)に応じた2つの自由度を持っている。つまり、図31(a)に示すように前後方向、左右方向に傾動する2自由度を持っている。
【0118】なお、本実施形態では、操舵用の操作子としては、飛翔体20平移動方向の自由度(機体正面方向、機体後方、機体左側、機体右側といった2自由度)に応じて、ジョイスティックのような2自由度を持った操作子を使用しているが、飛翔体20の水平移動の制御(操舵制御)をあえて1自由度に限定するならば(たとえば、機体正面方向、機体後方の制御のみ)、ボリウムのような1自由度を持った操作子を使用してもよい。
【0119】図5に示すように、ジョイスティック2の周囲の円環2aは色分けされており、飛翔体20のカバー22の外周22aの各水平方位の色分けに対応して、赤色、白色、青色、黒色に色分けされている。
【0120】そして、この場合、ジョイスティック2の操作方向の色と、当該操作方向にジョイスティック2が操作されたときに飛翔体20が水平移動する方向の色とが一致するように、ジョイスティック2の操作方向と、飛翔体20が水平移動すべき方向とが対応づけられる。つまり、機体20の正面方向に水平移動させるための操作方向は赤色に塗られており、機体20の右側方向に水平移動させるための操作方向は白色に塗られており、機体20の左側方向に水平移動させるための操作方向は青色に塗られており、機体20の後方に水平移動移動させるための操作方向は黒色に塗られている。
【0121】いま、オペレータとしては、飛翔体20をみて「赤色」の領域が大きく観察されたわけであるから、仮にオペレータがこの「赤色」の方向(オペレータに向かう方向)に飛翔体20を移動させたいという意思をもっているのであれば、ジョイスティック2を円環2aの「赤色」の方向に倒せばよいということを、即座に判断することができる。また、オペレータがこの「赤色」の方向とは反対側(オペレータから遠ざかる方向)に飛翔体20を移動させたいという意思をもっているのであれば、ジョイスティック2を円環2aの「赤色」とは反対側の方向(「黒色」)に倒せばよいということを、即座に判断することができる。同様に、オペレータがこの「赤色」の左側に飛翔体20を移動させたいという意思をもっているのであれば、ジョイスティック2を円環2aの「赤色」の左側の方向(「白色」)に倒せばよいということを、即座に判断することができ、また「赤色」の右側に飛翔体20を移動させたいという意思をもっているのであれば、ジョイスティック2を円環2aの「赤色」の右側の方向(「青色」)に倒せばよいということを、即座に判断することができる。
【0122】このようにオペレータとしては、飛翔体20の操舵を、きわめて直感的に即座に行うことが可能となる。
【0123】このように、飛翔体20の外周および操舵用ジョイスティック2の周囲を識別表示することで、本来、外観からは機体の方向が特定できない、二重反転式の水平回転翼を有した飛翔体20を、ヘリコプタなどと同様に、機体20の各水平方位を、遠くから容易に特定することができ、容易に遠隔操縦が行えるようになる。
【0124】なお、本実施形態では、飛翔体20の外周を、色の塗り分けで識別表示しているが、これに限定されるわけではない。たとえば、図3と同様な配置態様となるよう、発光色の異なる発光体を、機体の外周に貼着してもよい。この場合は、夜間の視認に好適である。
【0125】さて、ラジコン操縦器1には、このような操舵用ジョイスティック2以外に、昇降/姿勢用ジョイスティック3、降下制限用ボタン4、自動離陸用ボタン5が配設されている。これら各種操作子が操作されると、その操作指令信号が送信機7に入力され、送信アンテナ6を介して操作指令信号が、搬送信号に重畳され、電波となって機体20の受信アンテナ15に送られる。
【0126】昇降/姿勢用レバー(ジョイスティック)3は、手動で機体20の昇降とヨー方向の姿勢の変更を行うために設けられたレバーである。レバー3を引き上げると、上昇する方向に、レバー3を引き下げると、下降する方向に、機体20に力が働く。ホバリング(空中停止)中にレバー3を離すと、無風状態であれば機体20はそのときの高度を概ね維持する。このレバー3を捻ると、機体20はヨー角方向に姿勢を変える。つまり、機体20は機体中心軸回りに自転されてヨー角が変化され、機体20の正面方向が変更される。
【0127】自動離陸用ボタン5は、機体20が地面に着陸しているときに、押動されることによって、機体20を、自動的に地上から約1mの高さまで垂直に上昇させ、その地点でホバリングさせるために設けられたボタンである。
【0128】すなわち、前述したように、機体20が地上の凹凸や斜面に乗り上げて着陸してから、その姿勢の状態を維持して、再び離陸動作を行なうには、ダイナミックロールオーバを発生しないように高度の操作テクニックを駆使しながら離陸の操作を行うことが要求される。
【0129】自動離陸用ボタン5は、このような高度な技能を持たない初心者であっても簡単に機体20を安全な高度まで自動的に上昇することができるように設けられている。
【0130】誤って、このボタン5に触れたために機体20が不意に離陸する事故を招かないように、自動離陸用ボタン5は、昇降/姿勢用レバー3を「上昇」方向に引き上げると同時にボタン5を押さなければ、自動離陸の機能は働かないようにしてある。
【0131】降下制限用ボタン4は、機体20が上空でホバリングしているときに、機体20を急速に地上に降下させるために設けられたボタンである。
【0132】上記昇降レバー3を押し下げると同時に、この降下制限用ボタン4が押されると、機体20の降下速度は安全な値に制限されたまま、降下速度と姿勢が制御された状態で、安定に地上近くまで降下して、この地上近くの地点でホバリングする。
【0133】この降下制限用ボタン4は、つぎのような状況下で使用される。
【0134】すなわち、上空を飛翔している機体20を着陸させようとして機体20を急速に降下させると、一瞬の操作ミスによって機体20が地上に激突して破損する虞がある。このために、この降下制限用ボタン4によって、ある下限高度(地上から3m)まで降下させ、その位置でホバリングして次の操作の指示を待つようにしたものである(降下制限モード)。
【0135】この降下制限モードを解除するためには、機体20が下限高度でホバリングしていることを目視確認するために、一旦全ての上昇下降と操舵の操作を中断した上で、降下制限用ボタン4を解除すればよい。
【0136】仮に、燃料切れなどの緊急事態等のために、下限高度でホバリングさせる時間的な余裕がないのであれば、機体20が急速に降下を続けている間に、一旦全ての上昇下降と操舵の操作子から手を離すと同時に、その瞬間に降下制限用ボタン4を解除して、再び降下の操作を開始すればよい。このようにすることで、機体20はホバリング姿勢をとる間もなくそのまま降下を続けることになる。
【0137】以下、各操作子が操作された場合の飛翔体20の動作について説明する。
【0138】・操舵用ジョイスティック2の操作まず、はじめに、図1の飛翔体20が水平移動する原理(ヘリコプタ70でも同様である)について説明する。
【0139】空中でホバリングして停止している飛翔体20では、回転翼25、26の軸23を強制的に傾けることにより、図16に示すように回転翼25、26の回転面25c、26cに垂直方向に働く推力Hの向きを変えることができる。推力Hの方向が鉛直方向Z(X−Yを水平面とする)に対して傾くことによって推力Hの水平方向成分HXYが発生して、これが機体20を水平方向に動かす力となる。同時に、ホバリング中に、下向きの重力Jと釣り合って上向きに働いていた推力Hの鉛直方向成分HZは、回転翼25、26の回転面25c、26cが傾くために減少する。水平方向に速い速度で機体20を移動させる場合には、その速度に応じた分だけ、回転翼25、26の回転面25c、26cに単位時間当たりに流入する空気の質量が大幅に増えるために推力Hそのものが増大するが、水平方向の移動速度が緩やかな場合には、その速度の減少分だけ推力Hの鉛直方向上向きの成分HZが減るために機体20は下向きに動く。
【0140】上述するように、回転翼25、26の軸23を強制的に傾け、回転翼25、26の回転面25c、26cを傾ける機構としては、軸23を機械的に折り曲げる機構を採用したものが従来からあるが、これは機構的に複雑になるために、本発明では採用していない。本発明では回転翼25、26の回転面25c、26cを傾ける機構として、邪魔板33を採用している。
【0141】すなわち、図17に示す機体20の上面図において、邪魔板X+が閉じられると、機体20にはY軸回りに時計方向に回転する力のモーメントが働き、これにより回転翼25、26の回転面25c、26cが傾斜して、機体20の正面側が下向きに動かされる。これにより、機体20はX軸の正の方向(正面方向)に移動し始める。邪魔板33が回転翼25、26の下降流Wを受けることによって、機体20を回転させるモーメントが発生する原理については、図12で説明した通りである。
【0142】逆に、邪魔板X-が閉じられると、機体20の後部が下向きのモーメントを受けるので、機体20はX軸の負の方向に移動し始める。
【0143】また、邪魔板Y+が閉じられると、機体20にはX軸回りに反時計方向に回転する力のモーメントが働き、機体正面に対して左側が下向きに動くように回転翼25、26の回転面25c、26cが傾斜する。これにより、機体20は、Y軸の正の方向に移動し始める。
【0144】逆に、邪魔板Y-が閉じられると、機体正面に対して右側が下向きのモーメントを受けるので、機体20はY軸の負の方向に移動し始める。
【0145】ここで、操縦器1の操舵用ジョイスティック2は、図18に示すように、X軸とY軸の2自由度を持っており、ジョイスティック2の操作方向と機体20の水平移動方向とは対応づけられているので、ジョイスティック2が機体20のX軸の正方向に対応した方向に傾けられると、邪魔板X+が閉じられ、機体20は正面方向に移動し、また、機体X軸の負方向に対応した方向に傾けられると、邪魔板X-が閉じられ、機体20は機体後方に移動し、また、機体Y軸の正方向に対応した方向に傾けられると、邪魔板Y+が閉じられ、機体20は機体左側に移動し、また、機体Y軸の負方向に対応した方向に傾けられると、邪魔板Y-が閉じられ、機体20は機体右側に移動するという具合に、ジョイスティック2を倒した方向に応じた方向に機体20は水平移動することになる。
【0146】つぎに、機体20の操舵制御の内容について、より詳しく説明する。
【0147】操舵用ジョイスティック2は、前後左右に傾動する2自由度を持ち、機体20が上空でホバリングしている時にこのジョイスティック2を前に倒せば機体20は正面の方向に前進し、後ろに倒せば機体20は正面とは逆の方向に後退し、また、このジョイスティック2を右に倒せば機体20は正面に向かって右の方向に移動し、左に倒せば機体20は正面に向かって左の方向に移動することは前述した通りである。
【0148】また、ジョイスティック2は2自由度なので、例えば斜め右側に倒すと、機体20は右に移動すると同時に正面方向に進むことになる。このとき、ジョイスティック2を大きく倒せば、その操作量の大きさに応じた分だけ機体20は大きく傾くことになり、その傾いた方向に向かって、操作量に応じた分だけ急激に移動することになる。逆に、ジョイスティック2をほんの少しだけ倒せば、その操作量は小さくなり、機体20の傾きは小さいながらも傾いた方向に向かって緩やかに移動することになる。
【0149】図31(a)は、操舵用ジョイスティック2から出力される指令信号を示しており、図31(b)は、この指令信号に応じて駆動される機体20の邪魔板33を示している。以下、操舵用ジョイスティック2が操作された場合の制御内容につき図32に示すフローチャートを併せ参照して説明する。なお、図33は、図32R>2に示すフローチャートから指令信号、操作量を抜き出して示したものである。
【0150】すなわち、操舵用ジョイスティック2が操作されると、その操作量のX軸方向成分に応じた分だけ機体20をX軸方向に傾斜させるためのX軸方向傾斜指令信号が出力されるとともに、その操作量のY軸方向成分に応じた分だけ機体20をY軸方向に傾斜させるためのY軸方向傾斜指令信号が出力される。
【0151】つまり、ジョイスティック2をX軸方向に倒せば、その操作量の大きさに応じたX軸傾斜指令信号θxが出力され、Y軸方向に倒せば、その操作量の大きさに応じたY軸傾斜指令信号θYが出力される。そして、ジョイスティック2を斜めに倒せば、その操作量のX軸方向成分に応じた大きさのX軸傾斜指令信号θxと、同操作量のY軸方向成分に応じた大きさのY軸傾斜指令信号θYとが同時に出力される(ステップ101、図33参照)。
【0152】このジョイスティック2の出力信号は、送信機7、送信アンテナ6を介して電波として空中を伝播し、機体20の制御装置10の受信アンテナ15を介して受信機16で受信され、この受信された傾斜指令信号は制御装置本体11に入力される(ステップ102)。
【0153】制御装置本体11では、受信された傾斜指令信号に基づき邪魔板制御系13を駆動制御するための駆動制御信号が生成される。
【0154】ジョイスティック2がX軸方向に倒された場合には、X軸傾斜指令信号θxが出力されているので、この指令信号θxに応じた分だけX軸の邪魔板X+、X-の回転軸35を回転させるための操作量(回転量)φxが、所定の関数φx=F(θx)に基づき演算される(ステップ103、図33参照)。
【0155】ここで、ホバリング中は、各邪魔板X+,X-,Y+,Y-は全開よりもやや閉じた状態に設定されている。つまり、各邪魔板X+,X-,Y+,Y-は、全開の状態からそれぞれ所定のオフセット量ΦX+、ΦX-、ΦY+、ΦY-だけ閉じられた状態になっている。そこで、操作量としてφxが与えられた場合には、一方の邪魔板X+のみを操作量φxだけ閉じるのではなくて、半分の操作量φx/2だけ邪魔板X+を閉じると同時に、半分の操作量φx/2だけもう一方の邪魔板X-を開くことによって、同等の効果が得られるようにしている。
【0156】結局、邪魔板制御系13には、邪魔板X+の操作量として、ΦX++φx/2が、邪魔板X-の操作量として、ΦX-−φx/2が、駆動制御信号として出力される。
【0157】この結果、邪魔板制御系13のサーボモータが、上記駆動制御信号に応じて駆動され、邪魔板X+がオフセット量から操作量φx/2だけ閉じられると同時に、これに対向する邪魔板X-がオフセット量から操作量φx/2だけ開かれることになる。これにより機体20がX軸プラス方向に、操作量φx分だけ、傾斜し、その分だけ機体20の正面側は下がることになる。
【0158】このとき、半分の操作量φ/2だけしか、邪魔板X+、X-が開閉されないので、サーボモータによって邪魔板X+、X-を開閉する絶対量を減らすことができ、開閉に要する時間を節約して応答性を上げることができる。
【0159】また、邪魔板X+と邪魔板X-の開閉操作を逆位相で行うようにしているので、機体20全体が下向きに受ける力の増減が相殺され、機体20の昇降位置の変化を抑えることができる。
【0160】このように、機体20の傾斜の調整と、機体20の昇降動作の調整とを分離することができ、昇降動作の調整に注意を払うことなく、機体20をX軸方向に傾斜させて機体20をX軸方向に水平移動させることができる(ステップ104、図33参照)。
【0161】同様に、ジョイスティック2がY軸方向に倒された場合には、Y軸傾斜指令信号θYが出力されているので、この指令信号θYに応じた分だけY軸の邪魔板Y+、Y-の回転軸35を回転させるための操作量(回転量)φYが、所定の関数φY=G(θY)に基づき演算される(ステップ103、図33参照)。
【0162】ここで、ホバリング中は、各邪魔板X+,X-,Y+,Y-は全開よりもやや閉じた状態に設定されている。つまり、各邪魔板X+,X-,Y+,Y-は、全開の状態からそれぞれ所定のオフセット量ΦX+、ΦX-、ΦY+、ΦY-だけ閉じられた状態になっている。そこで、操作量としてφYが与えられた場合には、一方の邪魔板Y+のみを操作量φxだけ閉じるのではなくて、半分の操作量φY/2だけ邪魔板Y+を閉じると同時に、半分の操作量φY/2だけもう一方の邪魔板Y-を開くことによって、同等の効果が得られるようにしている。
【0163】結局、邪魔板制御系13には、邪魔板Y+の操作量として、ΦY++φY/2が、邪魔板Y-の操作量として、ΦY-−φY/2が、駆動制御信号として出力される。
【0164】この結果、邪魔板制御系13のサーボモータが、上記駆動制御信号に応じて駆動され、邪魔板Y+がオフセット量から操作量φY/2だけ閉じられると同時に、これに対向する邪魔板Y-がオフセット量から操作量φY/2だけ開かれることになる。これにより機体20がY軸プラス方向に、操作量φY分だけ、傾斜し、その分だけ機体20の左側は下がることになる。
【0165】このように、Y軸方向に操作された場合であっても、X軸方向に操作された場合と同様に、邪魔板Y+、Y-の開閉に要する時間を節約して応答性を上げることができるとともに、操作の前後で機体20の昇降位置の変化を抑えることができる。つまり、機体20の傾斜の調整と、機体20の昇降動作の調整とを分離することができ、昇降動作の調整に注意を払うことなく、機体20をY軸方向に傾斜させて機体20をY軸方向に水平移動させることができる(ステップ104、図33参照)。
【0166】また、ジョイスティック2を斜めに倒した場合には、その操作量のX軸方向成分に応じた大きさのX軸傾斜指令信号θxと、同操作量のY軸方向成分に応じた大きさのY軸傾斜指令信号θYとが同時に出力されることになるので、ステップ103、104では、上述したのと同様に、X軸傾斜指令信号θxに基づき、邪魔板X+の操作量ΦX++φx/2、邪魔板X-の操作量ΦX-−φx/2が生成されるとともに、Y軸傾斜指令信号θYに基づき邪魔板Y+の操作量ΦY++φY/2、邪魔板Y-の操作量ΦY-−φY/2が生成され、これが邪魔板制御系13に出力され、各邪魔板のサーボモータが駆動される。この結果、機体20がX軸プラス方向に、操作量φx分だけ、傾斜し、その分だけ機体20の正面側が下がるとともに、機体20がY軸プラス方向に、操作量φY分だけ、傾斜し、その分だけ機体20の左側が下がることになる。
【0167】なお、本実施形態では、操舵用の操作子として、コストを下げるために、傾動式のジョイスティックを使用しているが、コスト的に許容されるのであれば、感圧式のレバー(力センサが内蔵され、傾けようとする力を検出することで、操作指令信号θx、θYを出力するレバー)を使用することができる。
【0168】・昇降/姿勢用レバー3の操作まず、はじめに、図1の飛翔体20が昇降する原理、ヨー方向に姿勢角が変化する原理について説明する。
【0169】・機体20の昇降の原理邪魔板33が回転翼25、26の下降流Wを受けることによって、機体20を回転させるモーメントが発生する原理については、図12で説明した通りであるしたがって、図19に示すように、邪魔板X+と邪魔板X-を同時に操作し、下降流Wを受ける投影面積を同じにすれば、Y軸回りのモーメントを相殺することが可能である。同様に、邪魔板Y+と邪魔板Y-を同時に操作し、下降流Wを受ける投影面積を同じにすれば、X軸回りのモーメントを相殺することが可能である。X軸回り、Y軸回りいずれのモーメントを相殺した場合であっても、邪魔板33が回転翼25、26の下降流Wを受けた結果として機体20を下向きに動かす力Fvが発生し、この下向きの力Fvが機体20にかかる重力Jとともに、回転翼25、26の揚力Kの鉛直方向上向きの力と逆方向に働く。
【0170】このため、例えば、これら4つの邪魔板X+(33a)、X-(33c)、Y+(33b)、Y-(33d)を操作して、機体20のX軸回りのモーメントおよびY軸回りのモーメントを相殺しながら機体20の下向きに働く力Fvを調整すれば、回転翼25、26の回転数とピッチ角を一定に保ったままで(本実施形態では回転翼は固定ピッチのものを想定している)、つまり回転翼25、26による推力は一定のままで、機体20を上昇、下降させることができる。
【0171】・機体20のヨー方向の姿勢角が変化する原理図20に示すように、機体20には、回転軸23に軸対称な位置に、回転翼25、26から吹き降ろされる下降流Wを受けるように2枚の垂直翼34a、34cが取り付けられており、この下降流Wを受けた垂直翼34a、34cには機体20を旋回させる方向(ヨー角方向)に力Frが働く。
【0172】そして、この軸対称な位置に設けられた2枚一組の垂直翼34a、34cの傾斜角(ピッチ角)が等しくなるように操作することによって、機体20の正面方向を、東西南北の方位に自在に位置決めすることが可能となる。
【0173】さて、図21は、本実施形態で採用する邪魔板33に作用する力を説明する図である。
【0174】邪魔板33として好ましい性能は、全閉時(回転翼25、26に対して平行な面に対するピッチ角は零)には、下降流Wを受ける投影面積が最大となり、全開時(回転翼25、26に対して平行な面に対するピッチ角は90度)には、下降流Wを受ける投影面積がほぼ零になることである。つまり、全閉時には、邪魔板33の姿勢を、下降流Wの流れを垂直に受け止める「水平に寝た翼」の状態にして、下降流Wを受ける投影面積を最大にしており、全開時には、邪魔板33の姿勢を、下降流Wの流れの方向に平行な「垂直に立った翼」の状態にして、下降流Wを受ける投影面積を零にしている。このうように、邪魔板33として望ましい構造とは、全閉時は水平な翼として下降流Wを受け止め、全開時は垂直な翼として下降流Wを受け流す、開閉自在な翼のことである。
【0175】ところが、図21に示すように、邪魔板33を全開からやや閉じた状態にすると、下降流Wを受けた垂直翼34に機体20を旋回させる方向(ヨー角方向)に力Frが働くのと同様に、邪魔板33の法線方向に力Fが働き、その横方向の成分Frが機体20をヨー方向に回転する力となる。
【0176】しかし、邪魔板33の場合には、垂直翼34とは異なり、機体20の上下方向の成分Fvだけを活用し、ヨー角方向の力Frはなくしたい。
【0177】そこで、図21に示すように、水平から垂直まで開閉自在な翼としての邪魔板を、2枚一組で隣接して配置し、そのピッチ角度を同一かつ逆極性にすることによって、ヨー角方向の力Frを相殺することが考えられる。
【0178】本実施形態では、邪魔板33として、図22R>2(a)に示すように単一対向翼型の邪魔板33を採用している。つまり、邪魔板33を構成する一対の邪魔板331、332が枠41内に対向して配置され、これら邪魔板331、332のピッチ角度が同一かつ逆極性になるように開閉されることで、ヨー角方向の力Frが相殺されるようになっている。
【0179】また、邪魔板33として、図22(b)に示すように、単一対向翼(一対の邪魔板)を、枠41内に複数並べて構成した複数対向翼型の邪魔板を採用してもよい。
【0180】図22(c)〜図22(e)は、邪魔板33の配置例を示している。
【0181】図22(c)は、下フレーム24を構成する線材のうち、機体20の中心から周囲に伸びる放射状の線材を、回転軸35とし、これに一対の邪魔板331、332を取り付けたものであり、「放射対向配置」と呼ばれるものである。
【0182】図22(d)、(e)は、図22(a)の単一対向翼型の邪魔板の2種類の配置例を示している。
【0183】図22(d)は、本実施形態で想定している配置例であり、下フレーム24を構成する線材のうち、機体20の中心から周囲に伸びる放射状の線材に平行に、回転軸35を配置し、これに単一対向翼型の邪魔板33(331、332)を取り付けたものであり、「放射状の線材に平行して邪魔板を配置した」という意味で「放射平行配置」と呼ばれる。
【0184】図22(e)は、下フレーム24を構成する線材のうち、機体20の中心から周囲に伸びる放射状の線材に直交して、回転軸35を配置し、これに単一対向翼型の邪魔板33(331、332)を取り付けたものであり、「放射状の線材に直交して邪魔板を配置した」という意味で「放射直交配置」と呼ばれる。
【0185】図22(d)、(e)では単一対向翼型の邪魔板を配置した例を示しているが、代わりに図22(b)に示す複数対向翼型の邪魔板を配置してもよい。
【0186】また、図22(d)、(e)は、邪魔板33が90度づつずれて配設されているので、これらを総称してXY軸型の邪魔板と呼ぶことにする。
【0187】なお、邪魔板33の配設箇所としては、必ずしも、機体20のX軸上、Y軸上だけに限定されるわけではなく、図15に示したように、それ以外の場所に設けてもよい。前述したように、X軸、Y軸以外の放射状の線材上に多数の邪魔板33を設けることによって、邪魔板33の全閉と全開の面積比を高めることができ、後述する離陸制御時に、機体20がどちらの方向に傾斜して接地していても離陸における適切な組合せの邪魔板33を選択することができるなど、下降流Wを受ける投影面積を調整する制御をよりきめ細かく行うことができる。
【0188】図23(a)、(b)は、邪魔板33と垂直翼34を組み合わせた場合の配置例を示している。ともに、2枚一組の垂直翼を合計2組(34a、34c)、(34b、34d)、互いに直交して配置した例を示している。
【0189】図23(a)では、一対の邪魔板331、332をX軸方向とY軸方向を挟んで配置した「放射対向配置型の邪魔板」に対して、2組の垂直翼(34a、34c)、(34b、34d)を加えて配置した場合を示している。この例では、X軸とY軸に対して45度の角度をなす4本の放射方向の線材上に、4枚の垂直翼34a、34b、34c、34dがそれぞれ設けられている。また、図23(b)は、本実施形態で想定している配置例であり、邪魔板33(331、332)をそれぞれX軸とY軸上に配置した「XY軸型の邪魔板」に対して、2組の垂直翼(34a、34c)、(34b、34d)を加えて配置した場合を示している。この例でも、X軸とY軸に対して45度の角度をなす4本の放射方向の線材上に、4枚の垂直翼34a、34b、34c、34dがそれぞれ設けられている。
【0190】つぎに、図23(b)に示す本実施形態の配置で、ヨー角方向に回転させる場合の制御ついて説明する。
【0191】・大きな回転トルクを得る場合の制御機体20のヨー方向に速く回転させたい場合には、図24R>4に示すように、4枚の垂直翼34a〜34dが、機体中心軸23回りに全て同じ方向(つまり時計方向または反時計方向のいずれか)に同じピッチ角だけ傾けられる。このため、4枚の垂直翼34a〜34dはそれぞれ、ヨー角方向に機体20を回転させる同じ大きさのトルクTを発生するので、機体20は、その4つの垂直翼でそれぞれ発生するトルクTの合計として、機体20を速く回転させるために必要な大きな回転トルクを得ることができる。なお、これは、図23(a)の配置例でも同様である。
【0192】・微少な回転トルクを得る場合の制御一方、機体20のヨー角をわずかだけ調整したい場合には、図25に示すように、2組の垂直翼(34a、34c)、(34b、34d)の一方(34a、34c)だけが機体中心軸23回りに全て同じ方向(つまり時計方向または反時計方向のいずれか)にわずかに傾けられると同時に、他の一組(34b、34d)が垂直姿勢にされる。このため、わずかに傾けられた2枚の垂直翼(34a、34c)はそれぞれ、ヨー角方向に機体20を回転させる同じ大きさのトルクTを発生するので、機体20は、わずかに傾けられた2つの垂直翼(34a、34c)でそれぞれ発生するトルクTの合計として、ヨー角を僅かに調整するための回転トルクを得ることができる。
【0193】なお、これは、図23(a)の配置例でも同様である。
【0194】・オフセット制御これは、機体20の高度を安定させたままでヨー方向の正転と逆転を切り替えるための垂直翼の制御方法である。
【0195】さて、図26に示すように、垂直翼34によるヨー角回りの回転トルクTが発生する原因は、垂直翼34に向けて回転翼25、26から吹き下ろされる下降流Wに対する揚力が働くためである。つまり、軸対象に配置された2枚一組の垂直翼が閉じられることによって下降流Wに対する揚力が生じて機体20をヨー角方向に回転させることができるが、同時に下降流Wに対する抗力が生じて機体20が下降流Wの下流側に引っ張られることになる。
【0196】いま、垂直翼34を閉じる操作を行ったとすると、機体20は、垂直翼34に働く力Fの横方向成分Frにより、ヨー角方向に回転すると同時に、下方向成分の力Fvを受けて(Fvが増大することによって)下降し始めてしまう。このため、機体20が地上数メートルという低空でホバリングしているときに、こうした垂直翼34を閉じる動作を行えば、機体20が地面に墜落してしまう虞がある。
【0197】つまり、上述した図24、図25に示す制御のように、単純に垂直翼34を操作しただけでは、安全性が損なわれる虞がある。
【0198】そこで、墜落を防止するには、垂直翼34を閉じる動作によって生ずる下向きの力Fvの増加を相殺するように、邪魔板33を開いて下向きの力Fvを減少させることが考えられる。同様に、垂直翼34を開く場合にも、この開く動作によって生ずる下向きの力Fvの減少を相殺するように、邪魔板33を閉じて下向きの力Fvを増大させることが考えられる。
【0199】しかし、垂直翼34の開閉操作を行うと同時に邪魔板33の開閉操作も行い、高度を維持するよう調整することは、操作が複雑なものに、制御が繁雑なものになる。
【0200】そこで、本実施形態では、機体20の高度を安定させたままヨー方向の回転の正転と逆転を切り替える制御を、より簡易に行うべく、図27(a)、(b)に示すオフセット制御を採用している。
【0201】すなわち、図27(a)に示すように、予め2組の垂直翼(34a、34c)、(34b、34d)の一方(34a、34c)で機体中心軸23回りに、ヨー角の時計方向にわずかな回転モーメントM+が発生するように、この1組の垂直翼(34a、34c)がわずかに傾けられると同時に、他の一組(34b、34d)で上記回転モーメントM+と逆方向の回転モーメントM-が発生するように、この他の一組(34b、34d)がわずかに傾けられる。
【0202】この状態では、機体20の中心軸23回りの回転方向(つまりヨー角方向)に働く時計回りの回転モーメントM+と反時計回りの回転モーメントM-が相殺するため、機体20には、ヨー角方向の回転モーメントMが発生しない(M=M+−M-=0)。
【0203】このとき、垂直翼34がわずかに閉じられており、ある程度の力Fvで機体20が下降流Wの下流方向に引っ張られているため、予め邪魔板33を開いておき、機体20が下降流Wの下流に引っ張られる力Fvを軽減しておかれる。また、回転翼25、26の回転数を上昇させ揚力を増やすなどにより、予め機体20に働く上向きの力を増やしておいてもよい(平衡状態)。
【0204】この状態から、機体20を正転させるには、図27(b)に示すように、例えば、一方の組(34a、34c)の垂直翼の鉛直軸に対する傾きが増大される(閉じ側に操作される)。これにより下降流Wに対する揚力が増やされることによって正転方向のモーメントM+がM´+に増大される。また、下降流Wに対する抗力も増大され、これによって機体20を下降流Wの下流側へ引っ張る力Fvが増大される。これと、同時に他の一方の組(34b、34d)の垂直翼の逆方向に傾けてあった傾きが減少される(開き側に操作される)。これにより、逆転方向のモーメントM-がM´-に減少される。また、下降流Wに対する抗力も減少され、これによって機体20を下降流Wの下流側へ引っ張る力Fvが減少される。
【0205】この状態では、機体20の中心軸23回りの回転方向(つまりヨー角方向)に働く時計回りの回転モーメントM´+は、反時計回りの回転モーメントM´-よりも大きくなっているため、機体20には、ヨー角方向の回転モーメントM´が発生し(M´=M´+−M´->0)、機体20はヨー方向に旋回される。しかも、下降流Wの下流側へ引っ張る力Fvは相殺されており、図2727(a)の平衡状態の場合と、機体20を下向きに引っ張る力Fvは変わらない(旋回状態)。
【0206】このように、平衡状態と旋回状態の前後で、下降流Wを受ける投影面積が維持されるように、つまり下向きの力Fvの増減が相殺されるように、2組の垂直翼(34a、34c)、(34b、34d)の一方の組(34a、34c)のピッチ角を減少させ、他方の組(34b、34d)のピッチ角を増大させるようにしたので、邪魔板33を同時に操作する煩わしさなく、機体20の高度を維持することができる。
【0207】つまり、垂直翼34の操作と邪魔板33の操作を分離することができるようになり、ヨー方向の姿勢を変える操縦を簡単に行うことができる。
【0208】本実施形態では、平衡状態から正転方向に回転させる場合について説明したが、平衡状態から逆転方向に回転させる場合にも同様にして行うことができる。
【0209】また、正転状態から逆転状態に切り換える場合にも同様にして行うことができる。
【0210】なお、上述したオフセット制御を、図23(a)に示す「放射配置型」で行ってもよい。
【0211】また、上述した図27(a)、(b)に示すオフセット制御はフィードバック制御で行ってもよく、図28に示すブロック図に示すようにフィードフォアード制御で行うようにしてもよい。
【0212】すなわち、図28に示すように、必要な機体20のヨー方向の回転モーメントMと、一定に維持させたい機体20に下向きの力Fvとに対応する2組の垂直翼(34a、34c)、(34b、34d)の各ピッチ角ψを記憶テーブルに数表として記憶させておき、回転モーメントMおよび下向きの力Fvが目標値として入力されたならば、これに対応する2組の垂直翼(34a、34c)、(34b、34d)の各目標ピッチ角ψを、記憶テーブルから読み出し、この目標ピッチ角ψが得られるように、垂直翼34を制御すればよい。なお、数表ではなく、垂直翼34のピッチ角ψを算出する数式を記憶させておいてもよい。
【0213】この図28に示す制御系を採用すれば、制御系が単純になり応答性を向上させることができるとともに、機体20の製造コストを削減でき、価格を下げることができる。
【0214】さて、図29(a)、(b)は、個々の垂直翼34の構成例を示している。図29(a)で本実施形態で想定している単葉型の垂直翼であり、図29(b)は垂直翼34を一対の翼341、342で構成した複葉型の垂直翼である。複葉型の垂直翼341、342であっても、回転翼25、26から吹き降ろされる下降流Wを翼341、342で受けて、複数の翼341、342に対して横方向に働く力Frが機体20をヨー角方向に旋回させる回転モーメントMを発生させる点では、単葉型の垂直翼34と同じである。
【0215】なお、図30は、図23(b)の「XY軸型」における単葉型の垂直翼34を、図29(b)に示す複葉型の垂直翼341、342で置換した配置例を示している。本実施形態の各種制御をかかる配置にて行ってもよい。
【0216】つぎに、機体20の昇降の制御、ヨー方向の姿勢角の制御について、より詳しく説明する。
【0217】図34(a)は、昇降/姿勢用レバー3から出力される指令信号を示しており、図34(b)は、この指令信号に応じて駆動される機体20の垂直翼34を示しており、図34(c)は、この指令信号に応じて駆動される機体20の邪魔板33を示している。
【0218】同図(a)に示すように、昇降/姿勢用レバー3は、上下方向B1、B2の押し引きと、この上下に伸びる軸を時計方向C1ないしは反時計方向C2にひねる操作を検出して、この操作方向および操作量に応じて、機体20の昇降を指令する昇降指令信号、機体20のヨー角方向の旋回を指令するヨー角旋回指令信号を出力する2自由度の操作器具である。また、この昇降/姿勢用レバー3の側面には、邪魔板オフセット記憶ボタン3aが設けられおり、このボタン3aが押されると、その押された瞬間の邪魔板33のオフセット量ΦX+、ΦX-、ΦY+、ΦY-を記憶するための邪魔板オフセット記憶指令信号が出力される。
【0219】このレバー3が上方向B1に引っ張られると、機体20はE1方向に上昇し、下方向B2に押し下げられると、機体20はE2方向に降下する。また、このレバー3が時計方向C1に捻られると、ホバリング中の機体20は、時計方向D1に旋回し、反時計方向C2に捻られると、ホバリング中の機体20は、反時計方向D2に旋回する(図34(c)参照)。
【0220】すなわち、レバー3が上方向B1に押し上げられると、「上昇E1」を示す昇降指令信号が出力され、下方向B2に押し下げられると、「下降E2」を示す昇降指令信号が出力される。レバー3に、上下方向Bの操作が加えられなければ、「高度保持」を示す昇降指令信号(つまり昇降指令信号オフ)が出力される。ただし、昇降指令信号の値は、必ずしも「上昇−高度保持−下降」の3値だけをとるのではなく、レバー3を上下する操作の程度(操作量)の大きさによって、上昇や下降の程度(速度)を加減することができる。つまり、昇降指令信号としては、3値ないしはそれ以上の多値のディジタル信号を用いることができる。また、昇降指令信号として、全力上昇から全力降下まで昇降動作の速度を連続的に指令することができるアナログ信号を用いるようにしてもよい。
【0221】また、レバー3が時計方向C1に捻られると、「時計方向D1」を示すヨー角旋回指令信号が出力され、反時計方向C2に捻られると、「反時計方向D2」を示すヨー角旋回指令信号が出力される。レバー3に、捻り方向Cの操作が加えられなければ、「方向保持」を示すヨー角旋回指令信号が出力される。ただし、ヨー角旋回指令信号の値は、必ずしも「時計方向−方向保持−反時計方向」の3値だけをとるのではなく、レバー3を捻る操作の程度(操作量)の大きさによって、時計方向D1ないしは反時計方向D2への旋回の角速度を加減することができる。つまり、ヨー角旋回指令信号としては、3値ないしはそれ以上の多値のディジタル信号を用いることができる。また、ヨー角旋回指令信号として、時計方向最大角速度から反時計方向最大角速度まで旋回角速度を連続的に指令できるアナロク信号を用いるようにしてもよい。
【0222】このレバー3の出力信号は、送信機7、送信アンテナ6を介して電波として空中を伝播し、機体20の制御装置10の受信アンテナ15を介して受信機16で受信され、この受信された傾斜指令信号は制御装置本体11に入力される。
【0223】制御装置本体11では、受信された各種指令信号に基づき邪魔板制御系13および垂直翼制御系14を駆動制御するための駆動制御信号が生成される。
【0224】操作内容別に制御内容を説明する。
【0225】・上昇の操作レバー3が上方向B1に押し上げられると、「上昇」を示す昇降指令信号が出力され、制御装置本体11では、邪魔板X+のオフセット量ΦX+、邪魔板X-のオフセット量ΦX-、邪魔板Y+のオフセット量ΦY+、邪魔板Y-のオフセット量ΦY-の絶対値を、それぞれ、同じ量だけ減少させ、各邪魔板X+、X-、Y+、Y-をそれぞれ、同じ角度だけ開かせるための駆動制御信号が生成され、これが邪魔板制御系13に対して出力される。
【0226】邪魔板制御系13では、この駆動制御信号に応じて各邪魔板X+、X-、Y+、Y-を駆動するサーボモータが駆動される。この結果、各邪魔板X+、X-、Y+、Y-の各オフセット量ΦX+、ΦX-、ΦY+、ΦY-の絶対値は、同じ量だけ減少され、各邪魔板X+、X-、Y+、Y-がそれぞれ、同じ角度だけ開かれる。
【0227】すなわち、機体20の全ての邪魔板33a〜33dの傾斜面が垂直に近づくことになり、下降流Wの受ける投影面積が減少され、これにより下降流Wが邪魔板33a〜33dに当たることによって機体20が受ける下向きの力Fvが減少することになる。
【0228】ここで、この上昇操作を行う以前は、上向きの揚力Kと、下向きの重力Jに加えて下降流Wに対する邪魔板33の抗力Fvが平衡していたが、この上昇操作によって下向きの力Fvが減少することになり、機体20に働く上向きの力Kが相対的に大きくなり、機体20が上向き方向E1に運動を始める(図34(c)参照)。つまり、機体20は上昇することになる。
【0229】仮に、邪魔板33a〜33dのうちいずれかの邪魔板33の傾斜面がすでに垂直に達していて、それ以上、下降流Wに対する邪魔板33の抗力Fvを減少させることができない場合には、制御装置本体11からエンジン制御系12に対してエンジン28の回転数を通常の回転数よりも高くするための駆動制御信号が出力される。この結果、エンジン制御系12によりエンジン28の回転数が上昇され、回転翼25、26の回転速度が大きくなる。これにより、回転翼25、26によって生ずる揚力Kそのものが増大するので、機体20に働く上向きの力Kが相対的に大きくなり、機体20が上向き方向E1に運動を始める(図34(c)参照)。つまり、機体20としては上昇することになる。
【0230】・下降の操作レバー3が下方向B2に押し上げられると、「下降」を示す昇降指令信号が出力され、制御装置本体11では、邪魔板X+のオフセット量ΦX+、邪魔板X-のオフセット量ΦX-、邪魔板Y+のオフセット量ΦY+、邪魔板Y-のオフセット量ΦY-の絶対値を、それぞれ、同じ量だけ増加させ、各邪魔板X+、X-、Y+、Y-をそれぞれ、同じ角度だけ閉じさせるための駆動制御信号が生成され、これが邪魔板制御系13に対して出力される。
【0231】邪魔板制御系13では、この駆動制御信号に応じて各邪魔板X+、X-、Y+、Y-を駆動するサーボモータが駆動される。この結果、各邪魔板X+、X-、Y+、Y-の各オフセット量ΦX+、ΦX-、ΦY+、ΦY-の絶対値は、同じ量だけ増加され、各邪魔板X+、X-、Y+、Y-がそれぞれ、同じ角度だけ閉じられる。
【0232】すなわち、機体20の全ての邪魔板33a〜33dの傾斜面が水平に近づくことになり、下降流Wの受ける投影面積が増加され、これにより下降流Wが邪魔板33a〜33dに当たることによって機体20が受ける下向きの力Fvが増大することになる。
【0233】ここで、この下降操作を行う以前は、上向きの揚力Kと、下向きの重力Jに加えて下降流Wに対する邪魔板33の抗力Fvが平衡していたが、この下降操作によって下向きの力Fvが増大することになり、機体20に働く下向きの力Fvが相対的に大きくなり、機体20が下向き方向E2に運動を始める(図34(c)参照)。つまり、機体20は下降することになる。
【0234】仮に、下降操作を行う直前の操作が「全力上昇」であったために、エンジン28の回転数が通常の回転数よりも高くなっている場合には、まず、エンジン制御系12に対して、エンジン28の回転数を通常の回転数まで下げるための駆動制御信号が出力される。この結果、エンジン制御系12によりエンジン28の回転数が減少され、回転翼25、26の回転速度が小さくなる。これにより、回転翼25、26によって生ずる揚力Kそのものが減少するので、機体20に働く上向きの力Kが相対的に小さくなり、機体20が下向き方向E2に運動を始める(図34(c)参照)。つまり、機体20としては下降することになる。この時点で下降の程度を判断し、レバー3の操作量に応じた下降速度に達していない場合に始めて、邪魔板制御系13に対して邪魔板33を閉じさせるための駆動制御信号が出力されることになる。
【0235】・高度保持の操作レバー3の上下方向Bの操作が中断されると、「高度保持」を示す昇降指令信号(昇降指令信号オフ)が出力され、制御装置本体11では、邪魔板X+のオフセット量ΦX+、邪魔板X-のオフセット量ΦX-、邪魔板Y+のオフセット量ΦY+、邪魔板Y-のオフセット量ΦY-をそれぞれ、邪魔板オフセット記憶ボタン3aの押動操作に伴い記憶された後述するオフセット量ΦXm+、ΦXm-、ΦYm+、ΦYm-にするための駆動制御信号が生成され、これが邪魔板制御系13に対して出力される。
【0236】邪魔板制御系13では、この駆動制御信号に応じて各邪魔板X+、X-、Y+、Y-を駆動するサーボモータが駆動される。この結果、各邪魔板X+、X-、Y+、Y-の各オフセット量ΦX+、ΦX-、ΦY+、ΦY-はそれぞれ、ΦXm+、ΦXm-、ΦYm+、ΦYm-にされる。
【0237】すなわち、邪魔板33a〜33dは、指定された高度を維持するために適したオフセット量になるように開閉され、以後、このオフセット量ΦXm+、ΦXm-、ΦYm+、ΦYm-をもって、前述した機体20の操舵の制御がなされることになる。
【0238】・邪魔板オフセット記憶ボタン3aの押動操作ところで、レバー3の上下方向Bの操作を中止して、「高度保持」を示す昇降指令信号(昇降指令信号オフ)が出力された場合に、高度を保持する制御として以下のような制御が考えられる。
【0239】すなわち、地面センサ18から出力される対置距離検出信号に基づき、この対地距離がほぼ一定になるように自動的に、邪魔板X+のオフセット量ΦX+、邪魔板X-のオフセット量ΦX-、邪魔板Y+のオフセット量ΦY+、邪魔板ΦY-のオフセット量ΦY-の絶対値を増減させることが考えられる。
【0240】確かに、この制御によっても、機体20のホバリング中の高度は概ね保持される場合もある。
【0241】しかし、機体20が移動している場合には、高度計としての地面センサ18の検出値は、機体20の高度によらずに機体20の傾斜角や地上の物体の影響で大きく変動する場合がある。このため、地面センサ18の検出値に基づき高度を正確に保持することは期待できない場合がある。
【0242】例えば、地面センサ18として、指向性の高い超音波やレーザあるいは電波式のものを用いた場合には、機体20が水平になっていれば、地面センサ18の指向性は、機体20の真下に向いており、高度を正確に計測することができる。
【0243】しかし、機体20が水平状態から傾いてしまった場合には、これに伴い地面センサ18の指向性の向きも斜めになってしまい、見かけ上、地面センサ18が検出する地上の物体(地面)までの距離が大きくなってしまう。このため、機体20の高度は実際には変化がないにもかからわずに、機体20が突然上昇したことを示す検出信号に基づき制御がなされることから、機体20の異常な上昇を食い止めようとして機体20が自動的に下降される。
【0244】このように、機体20の姿勢が水平から傾斜してしまうと、機体20が自動的に降下してしまう危険がある。
【0245】また、対地センサである地面センタ18は、絶対的な高度を検出するものではなく、地上の物体までの相対的な距離として高度を検出するものであるので、地上に存在する物体の影響を大きく受ける。
【0246】例えば、飛翔体20が地上に大きな建物がある上空にさしかかった場合には、絶対的な高度(地面からの距離)よりも地面センサ18で検出される相対高度は小さくなるので、機体20と建物の上部との距離を一定に保とうとして、機体20が自動的に上昇されるというオペレータの意に反した制御がなされることになる。同様に、飛翔体20が地上に深い谷間がある上空にさしかかった場合には、絶対的な高度(地面からの距離)よりも地面センサで検出される相対高度は大きくなるので、機体20と谷底までの距離を一定に保とうとして、機体20が自動的に下降されるというオペレータの意に反した制御がなされることになる。
【0247】また、地面センサ18に気圧計を使用した場合には、上空で突風による気圧変化が生じると、地面センサ18の検出高度が変動し、突然自動的に昇降動作を始める虞がある。
【0248】また、地面センサ18にGPSを使用した場合には、電波の状態が乱れると、地面センサ18の検出高度が変動し、突然自動的に昇降動作を始める虞がある。
【0249】ここで、こうした機体20の傾斜や外界の状況変化にかかわらずに、実際に機体20が昇降しているかどうかを検出すべく、慣性航法装置を搭載することも考えられるが、これは極めて高価であるため、コスト的に採用することは難しい。つまり、本実施形態の飛翔体20の用途は、主に農業、林業あるいは災害対策のために機体20を目視しながら遠隔操縦する用途であり、なるべくコストを下げたいとの要請がある。
【0250】そこで、本実施形態では、機体20の傾斜や外界の状況変化の影響を受けることなく、しかも低コストで、機体20の高度をオペレータが望む高度に確実に維持するようにしている。
【0251】すなわち、オペレータとしては昇降/姿勢レバー3を押し引きして機体20の昇降を調整して、機体20をホバリング状態に安定させる。このとき、オペレータは、機体20の実際の高度を目視によって確認することができる。そこで、その高度が機体20を維持すべき高度であると判断した場合には、邪魔板オフセット記憶ボタン3aが押動操作される。
【0252】この結果、この押された瞬間における邪魔板X+のオフセット量ΦX+、邪魔板X-のオフセット量ΦX-、邪魔板Y+のオフセット量ΦY+、邪魔板Y-のオフセット量ΦY-が、そのときの高度を維持するために必要な邪魔板X+のオフセット量ΦXm+、邪魔板X-のオフセット量ΦXm-、邪魔板Y+のオフセット量ΦYm+、邪魔板Y-のオフセット量ΦYm-として記憶される。
【0253】これ以降、レバー3の上下方向Bの操作が中断されると、「高度保持」を示す昇降指令信号(昇降指令信号オフ)が出力される。すると、前述したように、各邪魔板X+、X-、Y+、Y-の各オフセット量ΦX+、ΦX-、ΦY+、ΦY-がそれぞれ、上記記憶されたオフセット量ΦXm+、ΦXm-、ΦYm+、ΦYm-になるように制御される。この結果、機体20は、実際の高度を目視によって確認したときの高度(邪魔板オフセットボタン3aが押されたときの高度)に維持される。
【0254】このように、本実施形態によれば、機体20の高度がオペレータが実際に目視で確認したときの所望の高度に確実に維持されることになり、機体20の傾斜や、外界の状況変化などによって、オペレータの意に反して機体20が昇降してしまうことを回避することができる。さらに、慣性航法装置などの高価な機器を用いることなく、低コストで、高度維持装置を具現することができる。
【0255】なお、本実施形態の高度維持装置は、低コスト化のために、ボタン3aにより邪魔板33のオフセット量を記憶させ、邪魔板33の開閉を制御するだけの簡易な構成となっており、実際には、風向きや気温の変化(空気の密度の変化)がある場合には、揚力が変化するので高度を完全に正確に保つことは難しい。しかしながら、通常の使用の範囲では精度上、何らの不都合もない。ただし、機体20を移動させる場合には、機体20が傾いて、機体20の重心Gに対する上下方向の力の釣り合いが崩れてしまうことがあるので、操舵用ジョイスティック2とともに昇降/姿勢レバー3も同時に操作することが望ましい。
【0256】・ヨー角方向の旋回操作さて、いま、昇降/姿勢レバー3が、所定のしきい値以上の操作量をもって時計方向C1に捻られると、「時計方向C1」を示すヨー角旋回指令信号が出力され、これに応じて制御装置本体11は垂直翼制御系14に対して駆動制御信号を出力して、垂直翼制御系14により4枚の垂直翼34a〜34dのすべてが閉じられるよう駆動制御される。
【0257】すなわち、前述した図24に示すように、垂直制御系14により、機体20が中心軸23回りに時計方向D1に旋回するよう、4枚の垂直翼34a〜34dが同じピッチ角だけ水平方向に傾けられる。このとき、各垂直翼34a〜34dは、レバー3を捻った強さに応じたピッチ角度だけ水平方向に傾斜されることになる。この結果、機体20が時計方向D1に、レバー3の大きな操作量に応じた速い速度で旋回される。
【0258】また、レバー3が反時計方向C2に捻られた場合には、機体20は、図示する方向とは反対の反時計方向D2に旋回されることになる。
【0259】一方、昇降/姿勢レバー3が、上記所定のしきい値よりも小さい操作量をもって時計方向C1に捻られると、「時計方向C1」を示すヨー角旋回指令信号が出力され、これに応じて制御装置本体11は垂直制御系14に対して駆動制御信号を出力して、垂直制御系14により2組の垂直翼(34a、34c)、(34b、34d)の一方の組の垂直翼(34a、34c)だけが閉じられるよう駆動制御される。
【0260】すなわち、前述した図25に示すように、垂直制御系14により、機体20が中心軸23回りに時計方向D1に旋回するよう、一方の組の垂直翼(34a、34c)が同じピッチ角だけ水平方向にわずかに傾けられると同時に、他の一組の垂直翼(34b、34d)が垂直姿勢にされる。このとき、垂直翼34a、34cは、レバー3を捻った強さに応じたピッチ角度だけ水平方向に傾斜されることになる。この結果、機体20が時計方向D1に、レバー3の僅かな操作量に応じた低い速度で旋回される。
【0261】また、レバー3が反時計方向C2に捻られた場合には、機体20は、図示する方向とは反対の反時計方向D2に旋回されることになる。
【0262】昇降/姿勢レバー3に捻り方向Cの操作が加えられていないと、「方向保持」を示すヨー角旋回指令信号(ヨー角旋回指令信号オフ)が出力される。このときは、上述した垂直翼34a〜34dを閉じる制御はオフされ、全ての垂直翼34の傾斜面は垂直に維持される。このため、機体20は旋回されずに、現在の方向が保持される。
【0263】ここで、レバー3が捻られたとしても、レバー3を捻る操作が極めて弱く、ある一定の不感帯以下であった場合には、機体20を旋回させないようにしてもよい。
【0264】これは、このレバー3が昇降と旋回のレバーを兼用しているため、昇降の操作を行うつもりであったのに、誤って旋回方向Cに少し捻ってしまった場合に、意図せざる旋回動作を起こさせないようにするためである。
【0265】すなわち、レバー3から出力されるヨー角旋回指令信号の大きさが不感帯を超えない小さな値であれば、全ての制御翼34a〜34dは垂直になるように制御される。このため、機体20は旋回されずに、現在の方向が保持される。
【0266】なお、上述した垂直翼34を制御を行う際に、前述した図27(a)、(b)に示すオフセット制御を適宜組み合わせるようにしてもよい。
【0267】・降下制限用ボタン4の押動操作この降下制限用ボタン4は、前述したように、不慣れな遠隔操縦者が慌てて機体20を着地させようとして地面に激突させることを防止するために設けられた安全装置である。
【0268】機体20を速やかに着陸させたい場合には、昇降/姿勢用レバー3を強く押し下げればよい。このように操作量を大きくすることで、機体20の重心Gに働く力の釣り合いが崩れて、機体20は下向きに強く加速され、機体20の真下に向かって急激に降下し始める(落下する)。
【0269】しかし、降下速度が大きくなりすぎると、下降に伴って機体20の下から当たる空気によって邪魔板33に上向きの抗力が生じ、機体20の姿勢の自動制御が不安定になってしまう。このため、機体20は横倒しになって落下してしまう虞がある。また、回転翼25、26に下降流Wを打ち消す方向に大量の空気が流れ込むほど、高速に落下してしまうと、邪魔板33を全開に開放しても、もはや機体20の墜落を防止することができなくなる虞がある。
【0270】そこで、安全に機体20を降下させるべく、ある一定の降下速度を超えないようにするとともに、ある一定の高度まで降下してきたら、機体20が地上に激突しないように、降下速度を減少させ、一定のホバリング高度に維持させるようにするものである。
【0271】このように、降下制限用ボタン4を押すことによって機体20が一定のホバリング高度まで降下したならば、降下制限用ボタン4を解除し(再度ボタン4を押すことによって解除される)、機体20を安全な着陸地点まで移動させ、昇降/姿勢用レバー3を操作することにより緩やかに機体20を着陸させてやればよい。
【0272】図35は、降下制限用ボタン4が押された場合の制御の手順を示すフローチャートである。以下、このフローチャートを併せ参照して説明する。
【0273】なお、この図35に示す制御アルゴリズムは、機体20の制御装置本体11に組み込まれているものとする。
【0274】機体20がホバリングしているとき、機体20を垂直に降下させるものと判断したならば、降下制限用ボタン4が押されるとともに、昇降/姿勢用レバー3がB2方向に強く押し下げ続けられるよう操作される。この操作に伴い、降下制限モード状態となり、図35R>5に示す処理がスタートする。
【0275】なお、機体20の降下を中断するときには、レバー3をB1方向に強く押し上げればよい。この操作に伴い、降下制限モード状態が解除される。
【0276】降下制限モード状態になっている場合には、予め制御装置本体11で設定された「降下減速予定高度」まで機体20が降下してくるまでの間、機体20の邪魔板33a〜33dを開閉しながら自動的に降下方向への加減速が繰り返される(ステップ201〜203)。
【0277】すなわち、降下中に、サンプリングタイム毎に機体20と地上の距離が地上センサ18で逐次検出され、この逐次の検出距離に基づき機体20の降下速度が逐次演算される(ステップ201)。
【0278】つぎに、上記演算された降下速度が、設定値以下になるように、邪魔板33a〜33dのオフセット量ΦX+〜ΦY-が増減され、機体20の下降方向の速度が増減される(ステップ202)。
【0279】降下中に、機体20の4つの邪魔板X+(33a)、X-(33c)、Y+(33b)、Y-(33d)が開閉操作され、図19で説明したように、機体20のX軸回りのモーメントおよびY軸回りのモーメントが相殺される。このため、機体20はX軸回りに傾斜しないようにされるとともに、Y軸回りに傾斜しないようにされ、水平に姿勢が保持される(ステップ203)。
【0280】機体20が「降下減速予定高度」まで降下されると(ステップ204の判断結果「降下を達成した」)、最大推力をもって降下速度を零まで減速させるように、邪魔板33a〜33dが全開に近い状態になるようにオフセット量ΦX+〜ΦY-が調整されるとともに、エンジン28の回転数が最大にされる。以後、機体20に働く上向きの力が増大され、機体20の降下速度は徐々に減少される(ステップ206)。このときも、ステップ203と同様に、機体20の姿勢を水平に保持する制御が行われる(ステップ205)。
【0281】やがて、機体20の降下速度が零に、つまりホバリング状態になったならば(ステップ207)、この処理は終了する。
【0282】こうして機体20がホバリング状態になったことを確認して、降下制限用ボタン4が再度押されると、降下制限モード状態が解除される。以後、操舵用ジョイスティック2が操作されることにより機体20が安全な着陸地点の上空まで移動される。ここで、機体20がホバリング状態になった時点で、邪魔板オフセット記憶ボタン3aが押されていれば、そのときのホバリング高度を概ね保持するように自動的に邪魔板33a〜33dのオフセット量ΦX+〜ΦY-が調整される。よって、操舵用ジョイスティック2だけを操作するという容易な操作で、機体20の高度をホバリング高度に保持しつつ、着陸地点の上空まで水平移動させることができる。安全な着陸地点の上空に機体20が到来されると、昇降/姿勢用レバー3が操作されることにより、機体20が緩やかに安全な着陸地点に着陸される。
【0283】・自動離陸用ボタン5の押動操作この自動離陸用ボタン5は、機体20が地面に着陸している場合に、機体20を自動的に地上から約1mの高さまで垂直にダイナミックロールオーバを発生させることなく上昇させ、その地点でホバリングさせるために設けられた安全装置である。
【0284】まず、はじめに、機体20が離陸する原理について説明する。
【0285】さて、傾斜の大きな地点からダイナミックロールオーバと呼ばれる離陸時の機体20の横転事故を起こさぬように安全に離陸するためには、機体20を横転方向に引き倒す力を打ち消すモーメントを強制的に発生させる必要がある。
【0286】図8は、ダイナミックロールオーバと呼ばれる離陸時の横転事故のメカニズムを説明する図である。
【0287】すなわち、同図8(a)において、離陸時に機体20に働く力は、回転翼25、26の面に垂直に働く揚力と、機体20の自重と、接地点27a、27bの地面60からの反力である。
【0288】ここで、斜面60の低い方の接地点27b回りのモーメントを考えると、揚力のモーメントと、斜面60の高い方の接地点27aに作用する反力のモーメントは、機体20を転倒させる方向に作用する。一方、接地点27b回りの機体20の自重のモーメントは、機体20を接地させ、安定させる方向に作用する。
【0289】また、通常の機体20では、重心位置Gが接地点27a、27bよりも上部にあるために、斜面60におかれた機体20においては、低い方の接地点27bの反力は高い方の接地点27aの反力よりも大きくなる。
【0290】この状態から、離陸のために揚力をあげてゆくと、高い方の接地点27aが浮上したときでも、低い方の接地点27bはまだ機体20の自重を支えようとしているため、低い方の接地点27b回りに転倒モーメントが作用する。そして、揚力が増大されることによって、この転倒モーメントが大きくなり、やがて機体20が転倒するに至る(図8(b)参照)。
【0291】こうしたダイナミックロールオーバによる事故を防止するためには、下記の対策1)、2)が有効である。
【0292】1)機体の接地点の距離を大きくとる図9(b)に示すように、機体20の接地点間の距離を大きくすれば、機体20の傾斜面60における低い方の接地点と高い方の接地点の反力の差異を、接地点間の距離が小さいときに比べて少なくすることができる。このため、離陸時において、低い方の接地点27b回りの転倒モーメントが、機体20を転倒させる値に達する前に、低い方の接地点27bを浮上させることができ、転倒を回避することが可能となる。
【0293】このことは、ヘリコプタ70の場合も同様である(図9(a)参照)。
【0294】2)機体の重心位置を低くするまた、図10(b)に示すように、機体20の重心位置を低く、接地点に近くすれば、10(a)に示す重心位置が高く、接地点から遠い場合よりも、機体20の傾斜面60における低い方の接地点と高い方の接地点の反力の差異を少なくすることができ、同様に転倒を回避することが可能となる。
【0295】ここで、上記対策1)、2)の効果を、同じ直径の回転翼を有したヘリコプタ70と比較すると、ヘリコプタ70の場合には、一般に機体の接地点の間隔が回転翼の直径よりも短く、かつ重心位置も比較的上部にあるのに対して、二重反転式の回転翼を有した飛翔体20の接地点の間隔は、回転翼25、26の直径よりもやや大きい程度の間隔であり(図1参照)、かつ機体20全体が横に長い円盤状であるために重心位置を低くすることができる。
【0296】このため、機体の構造上、本実施形態の二重反転式の回転翼を有した飛翔体20は、ヘリコプタ70よりも、上記1)、2)の対策が有効に働くことになり、ダイナミックロールオーバを起こしにくく、斜面からの離陸時における事故を軽減することが可能である。
【0297】ただし、飛翔体20の用途としては、無人で小型のものを遠隔操縦する場合が多いものと予想され、接地点27a、27b間の距離は、実際の斜面の傾斜の大きさに対してきわめて小さなものとならざるを得ない。つまり、上記1)、2)の対策のみをもってしては、ダイナミックロールオーバの発生を完全に防止することは困難である。つまり、機体20の構造(大きさ、重心の位置)によらずに、確実に、ダイナミックロールオーバの発生を防止する対策が望まれる。
【0298】そこで、本実施形態では、第3の対策として、下記の対策3)を採用するようにしたものである。
【0299】3)低い方の接地点を先に離陸させる図11(a)、(b)は図8(a)、(b)に対応する図である。図11(a)は図8(a)と同じ離陸開始前の状態を示している。ここで、図11(b)に示すように、図8(b)の場合と異なり、機体20が離陸の動作を開始した時に、高い方の接地点27aよりも先に低い方の接地点27bを浮き上がらせることができれば、高い方の接地点27a回りに、機体20を、水平姿勢にする方向に回転させることができる。そして、機体20が水平姿勢になった状態で、高い方の接地点27aを離間させ、機体20を離陸させるようにすれば、ダイナミックロールオーバによる転倒を伴うことなく安全に機体20を離陸させることができる。しかも、この場合、機体20の構造(大きさ、重心の位置)に影響されることなく、確実に、ダイナミックロールオーバの発生を防止することができる。
【0300】ただし、図11(b)に示すように、高い方の接地点27a回りの転倒モーメントによる転倒を防ぐために、機体20が概ね水平になった時点で、高い方の接地点27aを浮上させることが必要となる。
【0301】高い方の接地点27aよりも先に低い方の接地点27bを強制的に浮き上がらせるためには、図12R>2で既述した原理を利用すればよい。つまり、機体20が離陸時に倒れる方向に作用する転倒モーメントとは反対側に作用するモーメントを大きくするよう、団扇33の投影面積を強制的に変化させればよい。
【0302】すなわち、図14に示すように、段差61の接地点27aに最も近い邪魔板33の投影面積が最大にされると、邪魔板33に下向きの力Fが発生し、この力Fに応じて、機体20の重心G回りに、転倒モーメントとは反対側に作用する反転倒モーメントが発生する。この反転倒モーメントによって、高い方の接地点27aが、自重を支えるために地面を押している力が増大し、逆に低い方の接地点27bが自重を支えるために地面を押している力が減少する。この時点で、回転翼25、26の推力を増せば、低い方の接地点27bが地面を押している力が、より減少され、やがて低い方の接地点27bが高い方の接地点27aより先に浮上するに至るというものである。
【0303】なお、低い方の接地点27bが地面から浮き上がって機体20の傾斜角度が十分小さくなった時点(概ね機体20が水平になった時点)で、直ちに邪魔板33の投影面積を最小にすることが望ましい。このようにすることで、回転翼25、26の揚力によって生ずる上昇方向に働く力を妨げる力、つまり邪魔板33で生じている下向きの力を迅速に最小にできるので、効率良く機体20を離陸させることができる。
【0304】図13(a)、(b)、(c)に示す各種邪魔板のうち、図13(c)に示す本実施形態のブラインド型の邪魔板は、図13(a),(b)に示したものと比較して、全開時の投影面積を最も小さくできるので、最も効率が高く、機体20を離陸させることが可能である。
【0305】以上が機体20を離陸させる動作原理である。
【0306】以下、図37、図38に示すフローチャートを参照して、自動離陸用ボタン5が押された場合の自動離陸制御の内容について説明する。
【0307】本実施形態では、図7(b)、(c)に示すように、機体20が、段差61が存在することにより高低差のある地面に着陸した場合を想定している。図7(c)は上面図であり、図7(b)は、図7(c)の矢視A−Aからみた側面図である。
【0308】これら図7(b)、(c)に示すように、全ての垂直翼34a〜34dのうち、最も高い地点にあるのは、第1垂直翼34aである。一方、最も低い地点にあるのは、第3垂直翼34cである。
【0309】また、最も高い地点は、邪魔板X+と邪魔板Y+に挟まれた地点であり、最も低い地点は、邪魔板X-と邪魔板Y-に挟まれた地点である。
【0310】・第1の処理(ステップ301)
いま、自動離陸用ボタン5が押されると、全ての邪魔板33a〜33dと垂直翼34a〜34dが全閉の状態に設定される。
【0311】・第2の処理(ステップ302)
つぎに、エンジン28が起動され、エンジン回転数が通常の回転数よりも高い回転数に保持される。
【0312】・第3の処理(ステップ303〜306)
つぎに、垂直翼34a〜34dが負担している抗力を下げるために、第1垂直翼34aと第3垂直翼34cで、ヨー方向の時計方向回りの回転力を発生させるとともに、第2垂直翼34bと第4垂直翼34dで、ヨー方向の反時計方向回りの回転力を発生させるように垂直翼34a〜34dが開かれる。このとき、ヨー方向の時計方向回りの回転力と、ヨー方向の反時計方向回りの回転力とが相殺するように同期させつつ、垂直翼34a〜34d全閉状態から全開状態(すなわち、傾斜面が垂直な状態)に、垂直翼34a〜34dのピッチ角を一定変化量づつ変化させていく(ステップ303)。
【0313】・第3の処理の例外処理第3の処理の実行中に、傾斜センサ17の出力に基づき、機体20の傾斜角の変化を計測しており、この計測結果に基づき、機体20が浮き上がる兆候があるか否か(機体20の傾斜角が大きく変化したか否か)を判断している(ステップ304)。この結果、機体20が浮き上がる兆候があるものと判断された場合には、推力が過大であり、このまま垂直翼34a〜34dを開く処理を継続することは危険であるものと判断して、機体20の揚力が過大になるのを防止するために、速やかにエンジン28の回転数を通常の回転数に向けて所定量だけ減少される(ステップ305)。このように推力を下げ、機体20が浮き上がるに必要な推力よりも小さい推力にした上で、再度、垂直翼34a〜34dを開く処理を継続する(ステップ303)。やがて、機体20が浮き上がることなく、全ての垂直翼34a〜34dが垂直に立てられた状態にされる(ステップ306の判断結果「垂直になった」)。
【0314】・第4のステップ(ステップ307〜311)
全ての垂直翼34a〜34dが垂直に立ち上がったならば、地面60のうち最も高くなっている地点TP(図36R>6参照)に最も近い(最も高い地点を挟むよう存在する)X軸上の邪魔板とY軸上の邪魔板、つまり邪魔板X+と邪魔板Y+が全閉にされる。この結果、図14で説明したように、機体20の最も高い地点の接地点27aが、地面60(段差61)を押さえ付けている力が増大される(ステップ307)。
【0315】さらに、エンジン28の回転数が通常回転数よりも高くされ、機体20全体の推力が増大されるとともに、地面60のうち最も低くなっている地点に最も近い(最も低い地点を挟むように存在する)X軸上の邪魔板とY軸上の邪魔板、つまり邪魔板X-と邪魔板Y-が徐々に全開にされる(ステップ308、ステップ311)。この結果、回転翼25、26の推力が増し、低い方の接地点27bが地面を押している力が、より減少され、やがて低い方の接地点27bが高い方の接地点27aより先に浮上するに至る。
【0316】・第4の処理の例外処理第4の処理の実行中に、傾斜センサ17の出力に基づき、機体20の浮き上がりによって機体20が概ね水平になったか否かを判断している(ステップ309)。この結果、機体20が概ね水平になったものと判断された場合には、速やかに全ての邪魔板33a〜33dが全開にされる。これは、前述したように、高い方の接地点27a回りの転倒モーメントによる転倒を防ぐためと、回転翼25、26の揚力によって生ずる上昇方向に働く力を妨げる力である邪魔板33で生じている下向きの力を迅速に最小にして、効率良く機体20を離陸させるためである(ステップ310)。以後、手順は、次の第5の処理を飛ばして直ちに第6の処理に移行される。
【0317】・第5の処理(ステップ312〜316)
第4の処理において、エンジン回転数を通常回転数よりも高くして機体20全体の推力を増大させた上、最も低くなっている地点を挟むよう存在するX軸上の邪魔板X-とY軸上の邪魔板Y-を全開にしたとしても、最も低い地点側の接地点27bが地面60から離間しなかった(機体20が水平にならなかった)場合には(ステップ309の判断結果「水平でない」、ステップ311の判断結果「全開」)、気温、風向きなどの影響で推力が不足している可能性があるものと判断して、最も高くなっている地点TPを挟むよう存在しているX軸上の邪魔板X+とY軸上の邪魔板Y+が徐々に開放される(ステップ312)。この開放に際しては、板X+、Y+の最も高い地点TPへの近接度が考慮される。たとえば、図36に示すように、X軸とY軸の原点から最高の地点TPに結んだベクトルVのX成分VxとY成分VYの比率が、それぞれX軸側の邪魔板X+とY軸側の邪魔板Y+の閉じ具合(閉度)の比率になるように配分した上で、徐々に邪魔板X+と邪魔板Y+の閉度を、VxとVYの比率をもって低くしていく(徐々に邪魔板X+と邪魔板Y+を開いていく)という方法が考えられる。
【0318】すなわち、下記式により、邪魔板X+と邪魔板Y+の閉度(%)が求められる。
【0319】


上記式における係数Kは、最初は2からスタートし、最小値(例えば0.3位)になるまで順次減少される。このようにして邪魔板X+と邪魔板Y+の閉じ具合が順次少なくなる(邪魔板X+と邪魔板Y+を順次開いていく)(ステップ315)。
【0320】最初は、邪魔板X+、Y+の少なくともどちらか一方が閉度100%となっており、完全に閉じているが、係数Kが小さくなるにつれて、邪魔板X+と邪魔板Y+は、上記式にしたがい開かれる。
【0321】通常は、係数Kが最小値になる前に、低い方の接地点27bが離間する。
【0322】よって、上記ステップ309と同様の判断により、機体20が概ね水平になったものと判断された場合には(ステップ313の判断結果「水平」)、上記ステップ310と同様にして、速やかに全ての邪魔板33a〜33dが全開にされる(ステップ314)。
【0323】・第5の処理の例外処理ただし、邪魔板X+と邪魔板Y+が、係数Kが最小値に達するまで完全に開かれても(ステップ315の判断結果「最小値になった」)、低い方の地点27bが地面60から離間しない(機体20が水平にならない)場合には(ステップ315の判断結果「最小値になった」、ステップ313の判断結果「水平でない」)、気象条件などにより揚力が不足している虞があったり、ダイナミックロールオーバの事故を起こす虞があり、それ以上開かせることは無駄であり、また危険であると判断して、この時点で、自動離陸の処理を終了させる(ステップ316)。
【0324】・第6の処理(ステップ317〜319)
このようにして機体20が完全に地面60から離間されると、直ちに邪魔板33a〜33dによる姿勢制御が開始される(ステップ317)。
【0325】すなわち、この時点で機体20は地上から1m程度の高度に上昇している。そこで、エンジン28の回転数が通常の回転数に戻され、回転翼25、26の推力を定常の値に戻すことで、機体20が上昇しすぎないようにされる。そして、地面センサ18の検出高度をフィードバックして、機体20が、現在の高度である約1mの高度を維持するように、邪魔板33a〜33dのオフセット量ΦX+〜ΦY+が調整される。この結果、機体20は、約1mの高度でホバリングする(ステップ318)。さらに、この機体20が約1mの高度でホバリングした時点で、邪魔板X+のオフセット量ΦXm+、邪魔板X-のオフセット量ΦXm-、邪魔板Y+のオフセット量ΦYm+、邪魔板Y-のオフセット量ΦYm-が記憶される(ステップ319)。
【0326】・自動離陸モード終了機体20が安定にホバリングしたところで、自動離陸用ボタン5を解除すれば(再度ボタン5を押すことによって解除される)、図37、図38に示す処理は終了し(自動離陸モード終了)、他の操作子2、3、4によって飛翔体20を操縦することが可能となる。
【0327】なお、機体20が完全に離陸する前に、自動離陸ボタン5が解除されると、機体20がバランスを崩して地面60に衝突するなどして機体20が損傷する場合がある。このため、離陸完了前に、自動離陸モードを中断させたい場合には、誤操作でないことを確認する意味で、昇降/姿勢用レバー3を下向きB2に押し下げている状態でなければ、自動離陸モードを解除できないものとするインターロックを設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は飛翔体の構成を示す図である。
【図2】図2は飛翔体を制御する装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は機体の外観を各色に塗り分けた様子を示す上面図である。
【図4】図4は機体と観測者との位置関係を説明する図である。
【図5】図5は操舵用ジョイスティックの周囲を各色に塗り分けた様子を示す斜視図である。
【図6】図6は無線操縦で飛翔体が飛翔されている様子を示す図である。
【図7】図7(a)、(b)、(c)は飛翔体が傾斜のある地面に着陸した状態を説明する図であり、図7(a)は機体の垂直翼と邪魔板の配置関係を示す上面図であり、図7(c)は段差と飛翔体の位置関係を示す上面図で、図7(b)は図7(c)の矢視A−A図である。
【図8】図8(a)、(b)は離陸時に飛翔体に作用する力を説明する図である。
【図9】図9(a)、(b)は離陸時における転倒を防止するための対策を説明する図である。
【図10】図10(a)、(b)は離陸時における転倒を防止するための対策を説明する図である。
【図11】図11(a)、(b)は離陸時における転倒を防止するための対策を説明する図である。
【図12】図12は、邪魔板の機能を説明する図である。
【図13】図13(a)、(b)、(c)は、各種邪魔板を説明する図である。
【図14】図14は本実施形態における自動離陸制御の原理を説明する図である。
【図15】図15は邪魔板の配置例を示す上面図である。
【図16】図16は飛翔体が水平移動する原理を説明する図である。
【図17】図17は飛翔体が水平移動する原理を説明するために用いた邪魔板の配置図である。
【図18】図18は飛翔体が水平移動方向と操舵用ジョイスティックの操作方向との関係を説明する図である。
【図19】図19は飛翔体が昇降する原理を説明する図である。
【図20】図20は飛翔体がヨー方向に旋回する原理を説明する図である。
【図21】図21は邪魔板に作用する力を説明する図である。
【図22】図22(a)〜(e)は邪魔板の種類と邪魔板の配置の種類を示す図である。
【図23】図23(a)、(b)は邪魔板と垂直板の配置の種類を示す図である。
【図24】図24は飛翔体を大きな回転トルクで旋回させる制御を説明する図である。
【図25】図25は飛翔体を微小な回転トルクで旋回させる制御を説明する図である。
【図26】図26は垂直翼に生ずる力を説明する図である。
【図27】図27(a)、(b)は垂直翼をオフセット制御する様子を説明する図である。
【図28】図28は垂直翼を制御系を説明する図である。
【図29】図29(a)、(b)は垂直翼の種類を示す図である。
【図30】図30は垂直翼の配置関係を示す上面図である。
【図31】図31(a)、(b)は操舵用ジョイスティックの操作による制御を説明する図であり、図31(a)は操舵用ジョイスティックの操作方向を示す図で、図31(b)は機体が操舵される方向と邪魔板の配置関係とを示す図である。
【図32】図32は飛翔体を操舵制御する処理の手順を示すフローチャートである。
【図33】図33は図32から各種パラメータを抜き出して示す図である。
【図34】図34(a)、(b)は昇降/姿勢用レバーの操作による制御を説明する図であり、図34(a)はレバーの操作方向を示す図で、図34(b)はレバーの操作方向と垂直翼の配置関係とを示す図で、図34(c)は機体が昇降、姿勢が変化する方向と邪魔板の配置関係とを示す図である。
【図35】図35は降下制限用ボタンが押された場合の処理の手順を示すフローチャートである。
【図36】図36は機体が傾斜面に着陸している場合の最高地点と機体との関係を示す上面図である。
【図37】図37は自動離陸用ボタンが押された場合の処理の手順を示すフローチャートである。
【図38】図38は自動離陸用ボタンが押された場合の処理の手順を示すフローチャートである。
【図39】図39はヘリコプタが樹木に衝突する様子を示す図である。
【図40】図40がヘリコプタがダイナミックロールオーバにより転倒する様子を示す図である。
【図41】図41(a)、(b)はヘリコプタと本実施形態の飛翔体の外観の違いを比較して示す図である。
【符号の説明】
1 ラジコン操縦器
2 操舵用ジョイスティック
3 昇降/姿勢用レバー
5 自動離陸用ボタン
10 制御装置
11 制御装置本体
13 邪魔板制御系
14 垂直翼制御系
20 飛翔体
22 カバー
25、26 二重反転式の水平回転翼
33a〜33d 邪魔板
34a〜34d 垂直翼

【特許請求の範囲】
【請求項1】 鉛直軸に沿って同軸上に、水平方向に回転する2つの水平回転翼が配設された飛翔体のこれら2つの水平回転翼を互いに反対方向に回転させることによって前記飛翔体の飛翔を制御するようにした水平回転翼を有した飛翔体の制御装置において、前記2つの水平回転翼の下方に、これら2つの水平回転翼の回転によって生ずる下降流を受ける投影面積が調整自在の面積調整手段を、前記鉛直軸に関して対向するように少なくとも2つ設け、さらに、前記対向する面積調整手段のうち傾斜面上方側の面積調整手段の面積を、傾斜面下方側の面積調整手段の面積よりも大きくするよう前記面積調整手段を制御することにより、前記飛翔体の傾斜面下方側の接地点を傾斜面上方側の接地点よりも先に地面から離間させる離陸制御手段を具えたことを特徴とする水平回転翼を有した飛翔体の制御装置。
【請求項2】 鉛直軸に沿って同軸上に、水平方向に回転する2つの水平回転翼が配設された飛翔体のこれら2つの水平回転翼を互いに反対方向に回転させることによって前記飛翔体の飛翔を制御するようにした水平回転翼を有した飛翔体の制御装置において、前記2つの水平回転翼の下方に、これら2つの水平回転翼の回転によって生ずる下降流を受ける投影面積が調整自在の面積調整手段を、前記鉛直軸に関して対向するように少なくとも2つ設け、さらに、前記対向する面積調整手段のうち水平移動方向側の面積調整手段の面積を、水平移動方向とは反対側の面積調整手段の面積よりも大きくするよう前記面積調整手段を制御することにより、前記飛翔体を前記水平移動方向に水平移動させる水平移動制御手段を具えたことを特徴とする水平回転翼を有した飛翔体の制御装置。
【請求項3】 鉛直軸に沿って同軸上に、水平方向に回転する2つの水平回転翼が配設された飛翔体のこれら2つの水平回転翼を互いに反対方向に回転させることによって前記飛翔体の飛翔を制御するようにした水平回転翼を有した飛翔体の制御装置において、前記2つの水平回転翼の下方に、これら2つの水平回転翼の回転によって生ずる下降流を受ける投影面積が調整自在の面積調整手段を、前記鉛直軸に関して対向するように少なくとも2つ設け、さらに、前記対向する面積調整手段の両面積を同量づつ減少させるよう前記面積調整手段を制御することにより、前記飛翔体を上昇させるとともに、これら両面積を同量づつ増加させるよう前記面積調整手段を制御することにより、前記飛翔体を下降させる昇降制御手段を具えたことを特徴とする水平回転翼を有した飛翔体の制御装置。
【請求項4】 前記面積調整手段は、前記水平回転翼によって生じる下降流を、所定のピッチ角をもって受ける2つの隣接して対向する板状の部材と、当該2つの対向する板状の部材の両ピッチ角が、極性が異なりかつ同一のピッチ角となるように調整する角度調整手段とからなるものである請求項1または2または3記載の水平回転翼を有した飛翔体の制御装置。
【請求項5】 鉛直軸に沿って同軸上に、水平方向に回転する2つの水平回転翼が配設された飛翔体のこれら2つの水平回転翼を互いに反対方向に回転させることによって前記飛翔体の飛翔を制御するようにした水平回転翼を有した飛翔体の制御装置において、前記2つの水平回転翼の下方に、これら2つの水平回転翼の回転によって生ずる下降流を、所定のピッチ角をもって受ける板状の部材を、前記鉛直軸に関して対向するように少なくとも2つ設けるとともに、前記板状の部材のピッチ角を調整する角度調整手段を設け、さらに、前記対向する板状の部材の両ピッチ角が、前記飛翔体の所望のヨー方向の回転力に応じた角度になるよう前記角度調整手段を制御することにより、前記飛翔体のヨー方向の姿勢角を変化させるヨー方向姿勢角制御手段を具えたことを特徴とする水平回転翼を有した飛翔体の制御装置。
【請求項6】 前記鉛直軸に関して対向して設けられた2つの板状の部材は、少なくとも2組設けられており、前記ヨー方向姿勢角制御手段は、予め2組の板状部材の両ピッチ角を、極性が異なりかつ同一の所定角度にして、前記飛翔体のヨー方向の姿勢角が変化しないようにしておき、前記飛翔体のヨー方向の姿勢角を変化させる際には、前記2つの水平回転翼の回転によって生じる下降流を受ける投影面積が維持されるように、前記2組の板状部材のうち一方の組の板状部材のピッチ角を増加させるとともに、前記2組の板状部材のうち他方の組の板状部材のピッチ角を、前記一方の組の板状部材のピッチ角増加方向とは反対側に減少させるように、前記角度調整手段を制御するものである、請求項5記載の水平回転翼を有した飛翔体の制御装置。
【請求項7】 前記飛翔体の飛翔の制御は、遠隔操縦によって行われるものであり、前記遠隔操縦のための遠隔操縦装置の操作子に、前記面積調整手段の数に対応した自由度をもたせ、この操作子が一方側に操作されたときは、前記対向する2つの面積調整手段のうち一方の面積調整手段の面積が他方の面積調整手段の面積よりも大きくなり、前記操作子が前記一方側とは反対側に操作されたときには、前記対向する2つの面積調整手段のうち他方の面積調整手段の面積が前記一方の面積調整手段の面積よりも大きくなるように、操作子の操作方向と、面積を大きくすべき面積調整手段とを対応づけておくようにした遠隔操縦装置を具えたことを特徴とする請求項1または2記載の水平回転翼を有した飛翔体の制御装置。
【請求項8】 鉛直軸に沿って同軸上に、水平方向に回転する2つの水平回転翼が配設された飛翔体のこれら2つの水平回転翼を互いに反対方向に回転させることによって前記飛翔体の飛翔を、遠隔操縦により制御するようにした水平回転翼を有した飛翔体の制御装置において、前記2つの水平回転翼を、側方から覆う筒状のカバーを設け、このカバーの外周の各水平方位を識別表示するとともに、前記飛翔体を遠隔操縦する遠隔操縦装置の操作子に、前記飛翔体の水平方向の移動方向に応じた自由度をもたせ、前記操作子の周囲の各水平方位を、前記飛翔体のカバーの外周の各水平方位の識別表示に対応して識別表示し、前記操作子の操作方向の識別表示内容と、当該操作方向に前記操作子が操作されたときに前記飛翔体が水平移動する方向の識別表示内容とが一致するように、前記操作子の操作方向と、前記飛翔体が水平移動すべき方向とを対応づけておくこと、を特徴とする水平回転翼を有した飛翔体の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図20】
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【図24】
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【図25】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図16】
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【図19】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図30】
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【図36】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図40】
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【図31】
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【図33】
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【図34】
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【図39】
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【図41】
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【図32】
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【図35】
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【図37】
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【図38】
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