説明

操作装置

【課題】バルブの全閉あるいは全開における作動において、必要とする作動トルクを十分に得ることができる操作装置を提供する。
【解決手段】操作装置は、回動軸に固定して取付けられて揺動するスコッチヨークと、該スコッチヨークにスライド自在に係合して直線運動する伝達ブロックと、該伝達ブロックを直線方向に移動させるために前記伝達ブロックに嵌合して設けられた回転ねじ軸と、該回転ねじ軸の端部に取付けられて前記回転ねじ軸に回転を与えるための回転駆動装置とを有する操作装置であって、前記スコッチヨークが前記伝達ブロックを挟む二股のアームを有し、該アームの両内側に対向して設けられた所定幅の軌条部を有するとともに、前記伝達ブロックが前記二股のアームに挟まれる両側面の軸線方向の両端部に前記軌条部に当接させるように設けられた押付部を有することを特徴とするものである。この操作装置は、回動軸がバルブのステムに直結され、バルブ操作のための操作装置として用いるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブを作動するための操作装置、特に、回転動力による操作を可能にした操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バルブの開閉を作動する操作装置には、手動式、電動式、エアーモータ式等の入力を回転駆動によって行い、それによって得られた回転によって伝達ブロックを移動させ、その移動によりスコッチヨークを揺動させて得られる回動作動に変換して、バルブの開閉を行うようにしたものがある。
【0003】
従来の操作装置として、手動式のものには、図8に示すようなウォーム歯車を使用したものがあるが、入力にはウォーム軸5を、出力にはバルブのステム9に取り付けられたウォームホィール6と組合わせた歯車減速機からなるものがある。この操作装置では、はす歯歯車フォームホィール6の歯数を増減することにより、減速比を変えて、出力トルクを発生させ、バルブのステム9を回動させることによりバルブを開閉することができる。
【0004】
また、一般的なスコッチヨーク式の操作装置としては、図9に示すように、図8の装置のウォーム軸に替えて、位置を同位置に固定して軸心回りに回動させることができる回転ねじ軸3を設け、ウォームホィールに替えてスコッチヨーク1を設け、回転ねじ軸3と、この回転ねじ軸3をねじ込むことができる雌ねじ穴28を有する伝達ブロック2とが作動連結されていて、回転ねじ軸3の回転によりその軸心方向に移動する伝達ブロック2を組み込むことにより形成されたものがある。この操作装置では、回転ねじ軸3の回転により伝達ブロック2を移動させる。それにより、スコッチヨーク1を回動軸12を中心に揺動させて、スコッチヨーク1をバルブのステム9に連結する回動軸12を回動させてバルブの開閉を行うように移動させることができる。伝達ブロック2には、回転ねじ軸3がねじ込まれる雌ねじ穴28の軸線とは直角方向に両側面から突出する円筒部24’、26’を設けて、スコッチヨーク1の円筒部スライド溝143、163に嵌合させ、伝達ブロック2を回転ねじ軸3の軸線方向に移動させることによりスコッチヨーク1を揺動させて、バルブのステム9に連結された回動軸12に出力トルクによる回動を生じさせるようにしたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような図8に示され、ウォームおよびウォームホィールを用いたウォーム歯車方式の操作装置では、開閉されるバルブの開位置、閉位置、中間位置の各位置において、それらの位置で得られる出力トルクは同一であり、各操作位置でバルブの開閉に必要とする力が異なる場合、特に、大口径、高圧に多く使用されるボールバルブにおいては、図7に示されるように、閉時にはトルクが高くなり、開放とともに、バルブの中間開放位置までは、必要なトルクが除々に減少し、その後は所定のトルクで一定のトルクになる。それ故、バルブの閉時には、少しでも高いトルクが得られることが望ましいが、図8に示されるウォーム歯車方式を使用した操作装置では、バルブ開閉時の出力トルクが不変であり、操作装置として回転操作に作動力を要することになる。
【0006】
また、図9に示すような、スコッチヨーク方式を使用した操作装置では、その出力トルクが、以下に詳述するように、また、図7に示すように、作動の中間位置では、図8に示すウォーム歯車を用いた操作装置と同じであるが、バルブの開位置、閉位置では、出力トルクTが中間位置の2倍のトルクTaになり、伝達ブロック2を移動させるハンドル4の操作作動力が均一であることが望ましいので、出力トルクTはそれに応じて高くなるような操作を可能にするようにしたほうがよい。
【0007】
図9に示す操作装置について、その構造と、出力トルクの発生の機構を以下において説明する。
伝達ブロック2は、図11に示すように、貫通するその雌ねじ部28に回転ねじ軸3がねじ込み嵌合されて、両円筒部24’、26’が図10に示すようなスコッチヨーク1の両アーム14、16に長手方向の穴として設けた円筒部スライド溝143、163に摺動するように嵌合され、さらに、両円筒部24’、26’がケーシング8および上蓋(図示せず)に設けた伝達ブロックガイド7にも回転ねじ軸3に沿って移動するように同時に係合して設けられている。
【0008】
このような図9に示す操作装置において、ハンドル4が回動操作されて回転ねじ軸3を回転して、伝達ブロック2を図9において左右方向に移動させる場合には、ハンドル4が回転操作されて回転ねじ軸3が回転しても、回転ねじ軸3自体は移動しないために、伝達ブロック2がハンドル4の回動方向に従って左右いずれかの方向に移動することになる。これにより、伝達ブロック2の円筒部24’、26’がスコッチヨーク1のアーム14、16に設けた円筒部スライド溝143、163を押すために、スコッチヨーク1をいずれかの方向に揺動させることになり、スコッチヨーク1の回動軸12の嵌合穴18に嵌合されているバルブのステム9が回動軸12とともに回動されて、バルブの開閉を行うことができる。
【0009】
図10および図11に示されたスコッチヨーク1と伝達ブロック2とを組合わせた図9に示すような操作装置においては、上記したように伝達ブロック2が回転ねじ軸3に沿った直線運動して、スコッチヨーク1が揺動されることにより、図7では回動角度が90°の範囲で作動する場合を示している。このような回動軸12を所定の角度だけ回動する場合には、図7に示すように、中間位置から45°の回転角度範囲で揺動運動した両端部の位置においては、中間位置よりも出力トルクが2倍になることを図12の作動説明図によって説明すると、以下のようになる。図12に示された各部の寸法は記号で示されている。
【0010】
即ち、ここで、
F: ハンドル4の回転により生じた力、
Rt: トルクを生じさせる力、
l: スコッチヨーク1の回動軸12のバルブステム嵌合穴18の中心20と伝達ブロック2の円筒部中心との間の距離、
e: スコッチヨーク1の回動軸12のバルブステム嵌合穴18の中心20と回転ねじ軸3の中心軸線30との間の距離、
η: 作動効率、
とすると、出力トルクは、
T=Rt・l・η
となる。
この場合、Rt=F/cosθ、 l=e/cosθ であるので、
T=(F・e/cos45°)・η
となる。
バルブの開および閉の両端の位置が中間位置に対して対称であり、各々の位置をθ=45°とすると、両端の位置での出力トルクTaは、
Ta=(F・e/cos45°)・η=2・F・e・η
となる。
【0011】
この出力トルク特性を図示すると、図7において点線で示すようなTとなる。即ち、中間位置であるθ=0°のときには、出力トルクTは、T=F・e・ηであるので、Ta=2Tとなり、両端の開および閉では中間位置の2倍の出力トルクになる。
特に、ボールバルブの開閉に要するトルクは、一般に図7に示されるようなTの特性を有しているので、バルブ開閉のための操作装置にはスコッチヨーク式の減速機が適していることが理解される。
【0012】
また、ボールバルブは、閉から開への時には、最もトルクを必要とするので、閉位置側をθ=50°、開位置側をθ=90°−50°=40°にすると、閉から開への時の出力トルクTbは
Tb=(F・l/cos50°)・η=2.42・F・e・η
となり、出力トルクは21%も増加することになる。
しかしながら、バルブの開から閉への時には、出力トルクTcは
Tc=(F・e/cos40°)・η=1.70・F・e・η
となり、出力トルクが15%も減少することになる。これは、図7に示された太いダッシュ線で示されるような特性となる。
このような操作装置が採用されると、バルブがより大口径化、高圧化される今日では、よりコンパクトで高出力トルクを要求されることに対応できなくなっていた。
【0013】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、バルブステムの回転作動に必要とするトルクとしてバルブの閉状態に近い状態では高いトルクが得られるようにした操作装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的を達成するための操作装置は、回動軸に固定して取付けられて揺動するスコッチヨークと、該スコッチヨークにスライド自在に係合して直線運動する伝達ブロックと、該伝達ブロッに直線運動させるために前記伝達ブロックにねじ係合して設けられた回転ねじ軸と、該回転ねじ軸の端部に取付けられて前記回転ねじ軸に回転を与えるための回転駆動装置とを有する操作装置であって、
前記スコッチヨークが前記回動軸から伸びる前記伝達ブロックを挟む二股のアームを有し、該アームの両内側に対向して設けられた所定幅の軌条部を有するとともに、前記伝達ブロックが前記二股のアームに挟まれる両側面の軸線方向の両端部に前記スコッチヨークの必要とする回転半径および揺動角度に対応して前記軌条部に当接させるように設けられた押付部を有することを特徴とする。
【0015】
また、上記操作装置において、前記スコッチヨークは、前記回動軸の中心軸線を通る前記軌条部における長手方向の作動軸線が所定角度範囲で揺動することができ、さらに前記伝達ブロックの両端部における前記押付部の作動中心が前記回転ねじ軸の軸線に一致して位置されるように設けられて、前記軌条部に当接し、前記スコッチヨークの前記回動軸が前記バルブのステムに取付けられていることを特徴とする。
【0016】
上記操作装置におる前記スコッチヨークは、前記軌条部の前記回動軸の軸線を通る長手方向の作動軸線が前記軌条部の幅方向に対して一方の押付部側に偏って位置するように、前記アームが前記回動軸に取付けられ、前記スコッチヨークの揺動終端における回転半径を長くすることにより、前記伝達ブロックに作用するトルクを増大させることができることを特徴とする。
【0017】
上記操作装置における前記伝達ブロックの押付部は、前記回動軸の軸心から前記スコッチヨークの前記軌条部との当接位置を所定距離だけ遠隔にするように、前記当接位置が前記回転ねじ軸の軸線よりも離れて位置されていることを特徴とする。
【0018】
上記操作装置における前記伝達ブロックが矩形状に形成され、前記押付部が前記伝達ブロックにおける前記スコッチヨークの両アームの揺動する面に離隔して設けられ、前記押付部の少なくとも前記軌条部と接する部分が丸味を帯びた形状に形成されていることを特徴とする。
【0019】
上記操作装置における前記伝達ブロックが前記回転ねじ軸を嵌合する嵌合穴に平行に設けられたガイド穴を有し、該ガイド穴が前記回転ねじ軸よりも前記スコッチヨークの回動軸側に位置され、かつ両端が操作装置ケーシングに取付けられたガイドバーを貫通させて設けられていることを特徴とする。
【0020】
上記操作装置における前記伝達ブロックに設けられたガイド穴に貫通する前記ガイドバーが前記回転ねじ軸より大きな軸径を有し、前記回転ねじ軸への負荷を軽減しかつ前記回転ねじ軸の軸径を前記ガイドバーの軸径よりも小さくすることができることを特徴とする。
【0021】
上記操作装置における前記回転駆動装置の駆動源が手動とするためのハンドル、電動モータ、エアーモータあるいはそれらを組合わせたものからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明による操作装置は、回動軸に固定して取付けられて揺動するスコッチヨークと、該スコッチヨークにスライド自在に係合して直線運動する伝達ブロックと、該伝達ブロックを直線方向に移動させるために前記伝達ブロックに嵌合して設けられた回転ねじ軸と、該回転ねじ軸の端部に取付けられて前記回転ねじ軸に往復動を与えるための回転駆動装置とを有し、
前記スコッチヨークが前記回動軸から伸びる前記伝達ブロックを挟む二股のアームを有し、該アームの両内側に対向して設けられた所定幅の軌条部を有するとともに、前記伝達ブロックが前記二股のアームに挟まれる両側面の軸線方向の両端部に前記軌条部に当接させるように設けられた押付部を有するので、
回転駆動装置の回転操作により回転ねじ軸を作動し、回転ねじ軸が嵌合された伝達ブロックは回転ねじ軸の回転によりその軸線方向に移動し、伝達ブロックの両端部に設けられた押付部に当接する軌条部を有する二股のアームを備えたスコッチヨークが伝達ブロックの移動により揺動され、二股のアームをその回転中心に固定した回動軸が回転し、そこに嵌合固定されたバルブのステムを回動し、バルブの開閉を行うことができ、その際、回転駆動装置による回転操作が一定しているのにも関わらず、スコッチヨークにより与えられる回動軸に与えられる出力トルクは、スコッチヨークの各々の始動側の揺動角度が大きくなるために、高いトルクとして得られ、構造がシンプルで、アームと一体の軌条部は高い強度を得ることもでき、その必要とする用途に対応することができる。
【0023】
上記操作装置において、前記スコッチヨークは、前記回動軸の軸線を通る前記軌条部の略中心線が所定角度範囲で揺動することができ、かつ前記スコッチヨークの揺動終端において前記伝達ブロックの両端部の前記押付部に前記軌条部が当接するように、前記回動軸が前記バルブのステムに取付けられているので、スコッチヨークの二股アームの伝達ブロックに対向して設けられた軌条部が伝達ブロックを挿むように設けられ、スコッチヨークの軌条部に対応して設けられた伝達ブロックの押付部に確実に当接して伝達ブロックの軌条部を移動させることができ、所定の回動範囲の回動軸の回転が始端近くでも確実に得られる。
【0024】
また、上記操作装置におる前記スコッチヨークは、前記軌条部の前記回動軸の軸線を通る作動軸線が前記軌条部の幅方向に対して一方の当接部側に偏って位置するように前記回動軸に取付けられているので、伝達ブロックの押付部に対するスコッチヨークの軌条部の回動軸を中心とする回転半径は延長されることになり、前記スコッチヨークの揺動端部における回転半径を長くなり、前記伝達ブロックの移動によって生じられるスコッチヨークの回動軸に作用するトルクを増大させることができ、バルブの開閉時において必要するトルクを増大させることができる。
【0025】
上記操作装置における前記伝達ブロックの押付部は、前記回動軸の軸心から前記スコッチヨークの前記軌条部との当接位置を所定距離だけ遠隔にするように、前記当接位置が前記回転ねじ軸の軸線よりも離隔して位置されているので、スコッチヨークの軌条部と伝達ブロックの押付部への当接位置がスコッチヨークの回転角度を大きくするように位置されて、軌条部の押付部による移動が回動部のトルクをより大きく生じさせて、バルブ開閉時のより強力な回転トルクを必要とする場合にも対処することができる。
【0026】
また、上記操作装置における前記伝達ブロックが矩形状に形成され、前記押付部が前記伝達ブロックにおける前記スコッチヨークの両アームの揺動する面に離隔して設けられ、前記押付部の少なくとも前記軌条部と接する部分が丸味を帯びた形状に形成されているので、押付部とスコッチヨークの軌条部との接触を確実に行うだけでなく、揺動端部における作動をスムーズに行うことができる。
【0027】
また、上記操作装置における前記伝達ブロックが前記回転ねじ軸をねじ込む雌ねじ穴に平行に設けられたガイド穴を有し、該ガイド穴が前記回転ねじ軸よりも前記スコッチヨークの回動軸側に位置され、かつ両端が操作装置ケーシングに取付けられたガイドバーを貫通させて設けられているので、伝達ブロックの押付部が回動軸からさらに遠隔に位置されることになり、スコッチヨークの回転半径が大きくなり、より大きなトルクを生じさせることができる。
【0028】
また、上記操作装置における前記伝達ブロックに設けられたガイド穴に貫通する前記ガイドバーが前記回転ねじ軸より大きな軸径を有し、前記回転ねじ軸への負荷を軽減しかつ前記回転ねじ軸の軸径を小さくすることができるので、伝達ブロックの移動による回転ねじ軸の撓みをより小さくすることができ、回転ねじ軸の軸径をより小さくすることができ、さらにより大きなトルクを生じさせることができる。
【0029】
上記操作装置における前記回転駆動装置の駆動源を手動とするためのハンドル、電動モータ、エアーモータあるいはそれらを組合わせることもできるので、手動操作による操作だけでなく、設置場所で得られる電力、圧力空気により操作装置を操作することができ、さらに、これらの駆動装置を組合わせて設ければ、出力トルクの必要程度に応じて、手動と電動あるいはエアー動力による切り替えての作動を簡単な操作で可能にすることができる。
【0030】
本発明の新規な特徴および構成、効果に関しては、以下の説明に関連する添付図面からさらに理解することができる。なお、図面において、同じ符号は同じ構成部材を示している。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態による操作装置の部分断面図である。
【図2】図1に示す本発明による操作装置の部分破断上面図である。
【図3】図1に示される本発明の一実施の形態による操作装置に用いられるスコッチヨークの斜視図である。
【図4】本発明の一実施の形態による操作装置に用いられる伝達ブロックの斜視図である。
【図5】本発明の一実施の形態による操作装置の作動説明図である。
【図6】本発明の他の実施の形態による操作装置の作動説明図である。
【図7】ボールバルブの開閉とボールバルブ自体および操作装置に生じるトルクの関係を示す線図である。
【図8】従来のウォーム歯車を使用した操作装置を示す断面図である。
【図9】従来のスコッチヨークを使用した操作装置の断面図である。
【図10】図9に示す操作装置に用いられるスコッチヨークの斜視図である。
【図11】図10に示す操作装置のスコッチヨークに組合わせて使用される伝達ブロックの斜視図である。
【図12】図9に示す操作装置におけるスコッチヨークと伝達ブロックの作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
図1から図7を参照すると、本発明を実施するための形態による操作装置100は、バルブステム9を嵌合してキー止め固定される嵌合穴18を有するスコッチヨーク1、このスコッチヨーク1の二股のアーム14、16によって挟まれた伝達ブロック2、この伝達ブロック2に設けられた嵌合穴である雌ねじ穴28に嵌合されてねじ込まれた回転ねじ軸である回転ねじ軸3、この回転ねじ軸3の一方の端部に取付けられた回転駆動装置であるハンドル4、これらを収納するケーシング8等を備えている。
【0033】
パイプライン等に設けられたボールバルブを作動するための操作装置100は、このようなバルブのバルブステム9に取付けられるスコッチヨーク1を備えているが、このスコッチヨーク1は、図3に示されるように、バルブステム9を嵌合してキー止めする嵌合穴18を有した回動軸12、この回動軸12に伝達ブロック2を挟むように軸線方向に間隔をおいて取付けられた二股のアーム14、16を有し、これらのアーム14、16の内側には対向して軌条部142、162が自由端部を有しながら十分な強度を有するようにアーム14、16と一体に形成されて設けられている。
【0034】
このようなスコッチヨーク1と組み合わされる伝達ブロック2は、図4に示されるように、矩形状の伝達ブロック本体22において、その一方の主側面の長辺方向の両端部にスコッチヨーク1の軌条部14、16を当接するための押付部24、24がスコッチヨーク1の揺動角度に応じて離隔されて設けられ、伝達ブロック本体22の他方の主側面にも同様に押付部26、26が長手方向に離隔して設けられている。伝達ブロック本体22には、さらに、回転ねじ軸3がねじ込まれる雌ねじが切られた雌ねじ穴28が押付部24、26の作動中心位置にほぼ一致するか、その近くに中心軸が位置するように空けられて貫通して設けられている。さらに、伝達ブロック本体22には、押付部24、26とは離れた側に雌ねじ穴28に平行にガイド穴29が貫通して設けられている。
【0035】
上記スコッチヨーク1と伝達ブロック2は、強度十分な鋼材からなり、図1および2に示されるように、位置決め組み合わされるが、ケーシング8内に組み込まれたスコッチヨーク1に対して、雌ねじ穴28内に回転ねじ軸3がねじ込み通されるとともに、ガイドバー10がガイドバー穴29内を通すことができる。これらの回転ねじ軸3、ガイドバー10が伝達ブロック2に通されて、回転ねじ軸3の両端部をケーシング8に回転可能に軸受支持されるとともに、ガイドバー10の両端部がケーシング8に固定されて設置される。その際、伝達ブロック2のガイドバー10は、スコッチヨーク1の回動軸12側に位置されるようにケーシング8に固定して取付けられる。伝達ブロック2に対して、ガイドバー10上を自在にスライドするように伝達ブロック2のガイドバー穴29とガイドバー10との間の複数個所に、図示の実施の形態では点線で示す2箇所であるが、ガイドバーベアリングが設けられている。
【0036】
このように設置される伝達ブロック2に対して、スコッチヨーク1は、アーム14、16の軌条部142、162が伝達ブロック2の両主側面の押付部24、26の間に位置するように位置決めされて、鋳物や溶接構造のケーシング8内に設置され、ケーシング8に対しては回動軸12がベアリングにより回動可能に支持されて設けられている。
【0037】
スコッチヨーク1と伝達ブロック2を組込むケーシング8は、底蓋および上蓋によって閉じられるが、底蓋にはセットボルト11が内部に調節可能に進入するように設けられ、スコッチヨーク1の揺動角度範囲を規定することができる。この実施の形態では、揺動角度が90度となるように設定されているが、セットボルト11のケーシング8内への進退によって用途に応じた揺動角度の調節をすることができる。
【0038】
スコッチヨーク1を作動させるため回転ねじ軸3のケーシング8から外側に突出した端部には、回転駆動装置としてハンドル8が取り付けられている。ハンドル8は、手動式の場合には、操作可能であれば、輪環状のものでも、クランク状のものでもよい。また、操作を容易にするために得られる動力源を使用した電動式、あるいはエアーモーター式の回転駆動装置であってもよい。さらに、手動式と電動式の駆動装置を組み合わせて、選択的に操作可能にしてもよい。
【0039】
上記のようなスコッチヨーク1と伝達ブロック2との作動は、図12のような位置関係の寸法に対応した図5に示される作動説明図において以下に説明される。
スコッチヨーク1の両アーム14、16の内側に対向して形成された軌条部142、162の幅を、図3および図5に示すようにWとすると、出力トルクは、図5に基づいた計算よると以下のようになる。軌条部142、162の中央の回動軸12の中心30を通る作動軸線142’、162’は、W/2の位置にあり、揺動角θ°を図12に示された従来例と同様にとると、軌条部142、162に当接した場合の伝達ブロック2の押付部24、26の作動中心と回動軸12の中心30を通る線との間の角度θは、θ>θとなり、その際の出力トルクTは、以下のとおりである。
=(F・e/cosθ)・η
【0040】
ここで、W/2を角度として5°に相当するとした場合、
=(F・e/cosθ)・η=2.42・F・e・η
となる。即ち、このことは、伝達ブロック2の押付部24、26の作動中心位置は、スコッチヨーク1のアーム14、16の作動中心位置が揺動中心の位置から従来の揺動角度の45°ではなくて、50°に相当することになる。また、これに対して、スコッチヨーク1の揺動始端とは反対側の揺動終端位置においては、出力トルクTが上記の場合の出力トルクTと同様になり、従来例では、揺動角度θは40°であり、TX=1.7・F・e・ηとなる。しかしながら、スコッチヨーク1の作動両端位置での出力トルクT、Tの比は、T/T=2.42/1.7=1.42となり、図5に示された状態では、従来に比して出力トルクが42%の増加をすることになる。これを線図で示すと、図7に太い点線または太いダッシュ線で示されるような出力トルクが得られる。このことは、バルブの閉時の場合のように、バルブを開く時よりも高い出力トルクを要する時には、有効である。
【0041】
また、図6に示すように、伝達ブロック2の押付部24、26に対するスコッチヨーク1の軌条部142、162の当接点をさらに遠隔にして、スコッチヨーク1の始動側揺動角度は同じでも、揺動回転半径を長くするために、押付部24、26の作動中心位置は、回転ねじ軸3の中心軸線30のスコッチヨーク1の揺動中心20からの距離eを不変にして、さらに距離fだけ離れて位置されるように伝達ブロック2に押付部24、26を設ければ、より高い出力トルクが得られる。
【0042】
さらに、伝達ブロック2における押付部24、26の作動中心の位置をスコッチヨーク1の揺動中心20からの距離eをさらにfだけ離れて位置させるとともに、スコッチヨーク1の揺動の両始端位置、バルブの開閉で言うならば、軌条部142、162における作動軸線142’が開側に0.6W、閉側に0.4Wになるように、押付部24、26に対して軌条部142、162が当接するようにすると、図12に示す従来例の場合だけでなく、本発明による図5に示される実施の形態に対しても、揺動半径lが長くなり、さらに高い出力トルクを得ることができる。
【0043】
その実際の出力トルクは上記数式を用いて表すと、以下のようになる。
ここで、スコッチヨーク1の作動中心線142’は、図6に示す実施の形態では、揺動中間位置からの角度θが45°に相当するが、押付部24、26に軌条部142、162が当接する状態での作動中心の揺動中間位置からの角度θは、53°、52°になるように軌条部142、162の作動軸線142’が設定されると、
閉側の出力トルクTT1は、(全閉→開方向)
T1=(F・e/cos53°)・η=2.76・F・e・ηとなり、
開側の出力トルクTX1は、(全開→閉方向)
X1=(F・e/cos52°)・η=2.64・F・e・ηとなる。
これらを図7において、出力トルクTをバルブの閉側を0°とした揺動角度θに対して線図で示すと、太い一点鎖線によって示され、また、開側は丸点鎖線で示されるようになる。これは、アーム14、16の中心を中間位置に対して各々45°の場合でも、従来方式のスコッチヨーク10に対し全閉→開においては、2.76倍、全開→閉においては2.64倍の出力トルクが得られることになる。
このように、図6に示された実施の形態による操作装置100において、回転ねじ軸3の回転力Fによる伝達ブロック2によって生じられる出力トルクTは、従来例だけでなく図5に示される本発明による実施の形態において得られる出力トルクよりも高い出力トルクが得られる。
【0044】
以上のように、スコッチヨーク1におけるアーム14、16の内側に設けた軌条部142、162は、その作動軸線142’が軌条部142、162の作動軸線142’を幅Wの方向のいずれかの側に、バルブで言えば開あるいは閉側に片寄らせて位置させることにより、設計要求にしたがって揺動方向に変位させて、軌条部142、162と押付部24、26との当接位置をスコッチヨーク1の回動軸12の中心20からより長くさせることができる。それにより、必要に応じて出力トルクTの調節が可能になる。また、従来の操作装置と比較して、規模として変わらずに、高出力トルクを得ることができるので、設置されるバルブが大きくなっても、装置のコンパクト化が可能になる。
【0045】
以上述べたように、本発明による操作装置は、上記実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された技術範囲において実施し得ることは明らかである。
【符号の説明】
【0046】
1 スコッチヨーク
2 伝達ブロック
3 回転ねじ軸
4 ハンドル
5 ウォーム
6 ウォームホイール
7 伝達ブロックガイド
8 ケーシング
9 バルブステム
10 ガイドバー
11 セットボルト
12 回動軸
14 アーム
16 アーム
18 バルブステム嵌合穴
20 回動軸中心軸線
22 伝達ブロック本体
24 押付部
24’ 円筒部
26 押付部
26’ 円筒部
28 雌ねじ嵌合穴
29 ガイド穴
30 回転ねじ軸軸線
100 操作装置
142 軌条部
142’ 軌条部作動軸線
143 円筒部スライド溝
162 軌条部
163 円筒部スライド溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動軸に固定して取付けられて揺動するスコッチヨークと、該スコッチヨークにスライド自在に係合して直線運動する伝達ブロックと、該伝達ブロックに直線運動をさせるために前記伝達ブロックに嵌合して設けられた回転ねじ軸と、該回転ねじ軸の端部に取付けられて前記回転ねじ軸に回転を与えるための回転駆動装置とを有する操作装置であって、
前記スコッチヨークが前記回動軸から伸びる前記伝達ブロックを挟む二股のアームを有し、該アームの両内側に対向して設けられた所定幅の軌条部を有するとともに、前記伝達ブロックが前記二股のアームに挟まれる両側面の長手方向の両端部に前記スコッチヨークの必要とする回転半径および揺動角度に対応して前記軌条部に当接させるように設けられた押付部を有することを特徴とする操作装置。
【請求項2】
前記スコッチヨークは、前記回動軸の中心軸線を通る前記軌条部における長手方向の作動軸線が所定角度範囲で揺動することができ、さらに前記伝達ブロックの両端部における前記押付部の作動中心が前記回転ねじ軸の軸線に一致して位置されるように設けられて、前記軌条部に当接し、前記スコッチヨークの前記回動軸が前記バルブのステムに取付けられていることを特徴とする請求項1に記載された操作装置。
【請求項3】
前記スコッチヨークは、前記軌条部の前記回動軸の軸線を通る長手方向の作動軸線が前記軌条部の幅方向に対して一方の押付部側に偏って位置するように、前記アームが前記回動軸に取付けられて、前記スコッチヨークの揺動終端における回転半径を長くすることにより、前記伝達ブロックによって作用するトルクを増大させることができることを特徴とする請求項1に記載された操作装置。
【請求項4】
前記伝達ブロックの押付部は、前記回動軸の軸心から前記スコッチヨークの前記軌条部との当接位置を所定距離だけ遠隔にするように、前記当接位置が前記回転ねじ軸の軸線よりも離れて位置されていることを特徴とする請求項3に記載された操作装置。
【請求項5】
前記伝達ブロックが矩形状に形成され、前記押付部が前記伝達ブロックにおける前記スコッチヨークの両アームの揺動する面に離隔して設けられ、前記押付部の少なくとも前記軌条部と接する部分が丸味を帯びた形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載された操作装置。
【請求項6】
前記伝達ブロックが前記回転ねじ軸を嵌合する嵌合穴に平行に設けられたガイド穴を有し、該ガイド穴が前記回転ねじ軸よりも前記スコッチヨークの回動軸側に位置され、かつ両端が操作装置ケーシングに取付けられたガイドバーを貫通して設けられていることを特徴とする請求項1に記載された操作装置。
【請求項7】
前記伝達ブロックに設けられたガイド穴に貫通する前記ガイドバーが前記回転ねじ軸より大きな軸径を有し、前記回転ねじ軸への負荷を軽減しかつ前記回転ねじ軸の軸径を小さくすることができることを特徴とする請求項6に記載された操作装置。
【請求項8】
前記回転駆動装置の駆動源を手動とするためのハンドル、電動モータ、エアーモータあるいはそれらを組合わせたものからなることを特徴とする請求項1に記載された操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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