説明

操作軸部の防水構造

【課題】シール部材の挿通穴への操作軸の嵌入作業性を改善しながら防水性を保つ操作軸部の防水構造を提供する。
【解決手段】開口穴4を設けた前面部2を有するケース1と、開口穴4を塞ぐ合成ゴムからなるシール部材6と、ケース1内に傾斜して配置され、先端側がシール部材6の挿通穴11に嵌入される操作軸10とを備え、挿通穴11の中心軸X−Xに対して操作軸10が傾斜している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース内に配置したスイッチなどの操作軸部の防水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ケースの開口穴からケース外に突出した操作軸をケースの外部から操作することによってスイッチを作動させるようにしたスイッチ類は、操作軸周りの開口穴から水や埃がケース内に入ってスイッチの作動などに悪影響を及ぼすのを防ぐようになっている。この様に構成したものとして、例えば下記特許文献1があり、ケース5の貫通穴7にゴムからなるグロメット10を装着し、回動軸9(操作軸)をグロメット10に設けた丸孔11から突出させている。このグロメット10は予めケース5の貫通穴7周囲に装着しておき、スイッチ1が固定された回路基板3をケース5に装着する際に回動軸9が丸孔11に挿通され、回動軸9周りの貫通穴7がグロメット10によってシールされている。
【特許文献1】特開2004−39276号公報
【0003】
前記特許文献1に記載のスイッチ1の軸心は、ケース5の前面部6と直交しているが、スイッチノブの回動または押圧操作をやり易くするために、スイッチノブを操作者側に対して傾けて取り付けたい場合がある。図3及び図4は、この様なスイッチ装置の一例を示すもので、図3はスイッチ装置の断面図であり、図4は操作軸をシール部材の挿通穴に嵌入する際の説明図である。
【0004】
図3及び図4に於いて、1はケースであり、前面部2と周壁3を有している。前面部2は周壁3に対して傾斜させてあるとともに開口穴4が設けてあり、周壁3の内面には段部5が斜め(前面部2と平行)に設けてある。ケース1の開口穴4にはゴムからなるシール部材6が装着してある。スイッチ7は取付部材8にナット9を用いて固定してあり、スイッチ7の操作軸10はシール部材6に設けてある挿通穴11に嵌入させてケース1外に突出させ、先端側にスイッチノブ12を装着してある。この様に、ケース1の前面部2を傾斜させ、この傾斜角度に合わせてスイッチ7をケース1に装着するようにしたことにより、スイッチノブ12がスイッチノブ12操作者側に傾き、操作をやり易くしている。
【0005】
次に、シール部材6の挿通穴11に操作軸10の先端側が嵌入される過程を説明する。スイッチ7が固定された取付部材8をケース1の開口側(図4中、下側)から周壁3の内面に沿わせてケース1内に挿入する。すると、操作軸10が傾いた状態で上側に移動し、シール部材6の挿通穴11に操作軸10が嵌入されて取付部材8が段部5に当接することによって、スイッチ7がケース1に装着された状態となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、取付部材8が段部5に当接した状態、つまりスイッチ7がケース1に装着された状態で操作軸10とシール部材6の挿通穴11との位置が合うようになっているため、操作軸10が挿通穴11に入る前は図4に示す様に挿通穴11に対して操作軸10の先端が位置ズレしている。従って、操作軸10を挿通穴11に嵌入させる際、傾いた側の操作軸10先端の角部13が挿通穴11周辺のシール部材6の角部13Aに引っ掛かって嵌入作業性が悪い。また、シール部材6が傾いた状態で前面部2に装着されているために、操作軸10の嵌入方向に対してシール部材6の挿通穴11が図4に記載した様に楕円状となっており、嵌入作業性をより悪くしている。
【0007】
本発明はこの様な点に鑑みなされたもので、シール部材の挿通穴への操作軸の嵌入作業性を改善しながら防水性を保つ操作軸部の防水構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するため、開口穴を設けた前面部を有するケースと、前記開口穴を塞ぐ柔軟性のシール部材と、前記ケース内に傾斜して配置され、先端側が前記シール部材の挿通穴に嵌入される操作軸とを備え、前記挿通穴の中心軸に対して前記操作軸が傾斜しているものである。
【0009】
また、前記操作軸は前記挿通穴に対して傾斜した状態で前記挿通穴の中心軸方向から前記挿通穴に嵌入されるものである。
【0010】
また、前記シール部材は、前記開口穴周縁に取り付けられる装着部と、前記挿通穴が設けられた中央部と、この中央部と前記装着部とを繋ぐ連結部を備えており、前記連結部が肉薄である。
【0011】
また、前記操作軸の反嵌入方向側であって、前記操作軸の傾斜方向に対応した前記中央部と前記装着部との間に断面略V字状あるいは略U字状の溝を設けたものである。
【0012】
また、前記操作軸は前記ケース内に傾斜して配置された取付部材に装着されているものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シール部材の挿通穴への操作軸の嵌入作業性を改善しながら防水性を保つ操作軸部の防水構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の操作軸部の防水構造を適用した回転式のスイッチ装置を実施形態として説明する。図1はスイッチ装置の断面図であり、図2は操作軸をシール部材の挿通穴に嵌入する際の説明図である。なお、本実施形態は従来例(図3及び図4)と基本的な構成が同じため、同一または相当箇所には同一符号を付して説明する。
【0015】
スイッチ装置は、開口穴4を設けた前面部2を有するケース1と、開口穴4を塞ぐ柔軟性のシール部材6と、取付部材8にナット9を用いて固定されケース1内に配置されるスイッチ7と、シール部材6の挿通穴11を嵌入してケース1外に突出したスイッチ7の操作軸10に装着されたスイッチノブ12を備えている。そして、スイッチノブ12を回すことによって操作軸10が回転してスイッチ7が回動される。
【0016】
合成樹脂からなるケース1は前面部2と周壁3を有しており、前面部2は周壁3に対して傾斜させてある。また、周壁3の内面には段部5が斜め(前面部2と平行)に設けてある。従って、スイッチ7および操作軸10はケース1内に傾斜して配置される。この様に、ケース1の前面部2を傾斜させ、この傾斜角度に合わせてスイッチ7をケース1に装着するようにしたことにより、スイッチノブ12がスイッチノブ12操作者側に傾き、スイッチノブ12の回転操作をやりやすくするとともに、前面部2上に表示文字があった場合、読みやすくしている。
【0017】
シール部材6は、柔軟性を有する例えば黒色の合成ゴムからなり、開口穴4周縁に取り付けられる装着部14と、挿通穴11が設けられた中央部15と、この中央部15と装着部14とを繋ぐ連結部16を有し、連結部16は肉薄としてある。また、挿通穴11の中心軸X−Xは図2に示す様にケース1の周壁3方向と一致している。また、シール部材6のケース1外側(操作軸10の反嵌入方向側)の中央部15と装着部14との間には断面略V字状の溝17が全周に渡って設けてある。
【0018】
次に、シール部材6の挿通穴11に操作軸10の先端側が嵌入される過程を説明する。スイッチ7が固定された取付部材8をケース1の開口側(図2中、下側)から周壁3の内面に沿わせてケース1内に挿入する。すると、操作軸10が傾いた状態で上側に移動する。ここで、取付部材8が段部5に当接した状態、つまりスイッチ7がケース1内に装着(配置)された状態で操作軸10とシール部材6の挿通穴11との位置が合うようになっているため、操作軸10が挿通穴11に入る前は、図2に示す様に挿通穴11の中心に対して操作軸10の先端が図2中、左側(操作軸10の傾斜方向)に位置ズレしている。
【0019】
従って、操作軸10の先端側を挿通穴11に嵌入させる際、傾いた側の操作軸10先端の角部13が挿通穴11周辺の中央部15の角部13Aに当たってしまうが、前述した様に挿通穴11の中心軸X−Xが操作軸10の移動方向に沿って設けてあるため、図2に記載した様に円形の挿通穴11に楕円形の操作軸10(操作軸10が傾いているために、操作軸10の先端を挿通穴11の中心軸X−X方向から見た際楕円形となる)が嵌入される状態となり、挿通穴11の入口の穴径が従来に比べて少し大きくなり、嵌入作業性が良くなる。
【0020】
また、中央部15と装着部14とを繋ぐ連結部16の肉厚を薄くしてあるために、操作軸10先端の角部13が挿通穴11周辺のシール部材6の角部13Aに当たった際、連結部16が容易に変形して中央部15が操作軸10に沿いやすくなる(操作軸10が挿通穴11に入りやすくなる)。また、操作軸10が傾斜している側のシール部材6の中央部15と装着部14との間に断面略V字状の溝17が設けてあるため、操作軸10先端の角部13が挿通穴11周辺のシール部材6の角部13Aに当たって中央部15が上側に押し上げ状態となった際、中央部15の上側が図2中、左側に撓み中央部15が操作軸10に沿いやすくなって、操作軸10が嵌入されやすい。
【0021】
また、ケース1内に傾斜して配置できるように構成した取付部材8にスイッチ7を固定して、取付部材8をケース1の内壁に沿わせながら挿入する様にしたことにより、簡単な方法でケース1内で操作軸10を傾斜させることができるとともに、シール部材6の挿通穴11位置に対して操作軸10先端の位置が決まりやすい(一定となりやすい)。
【0022】
なお、本実施形態に於いては回転式のスイッチ装置を実施形態として説明したが、例えば、車両用の計器に用いられ表示切換用のスイッチをケースの外部から押圧操作するスイッチ装置であっても良く、あるいは操作軸を備えていれば、スイッチでなくとも良い。また、中央部15と装着部14との間には断面略V字状の溝を全周に渡って設けたが、少なくとも、操作軸10の傾斜方向に対応した側に略V字状あるいは略U字状の溝が設けてあれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の操作軸部の防水構造を適用したスイッチ装置の断面図。
【図2】同操作軸をシール部材の挿通穴に嵌入する際の説明図。
【図3】従来例を示すスイッチ装置の断面図。
【図4】同操作軸をシール部材の挿通穴に嵌入する際の説明図。
【符号の説明】
【0024】
1 ケース
2 前面部
4 開口穴
6 シール部材
7 スイッチ
10 操作軸
11 挿通穴
X−X 中心軸
14 装着部
15 中央部
16 連結部
17 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口穴を設けた前面部を有するケースと、前記開口穴を塞ぐ柔軟性のシール部材と、前記ケース内に傾斜して配置され、先端側が前記シール部材の挿通穴に嵌入される操作軸とを備え、前記挿通穴の中心軸に対して前記操作軸が傾斜していることを特徴とする操作軸部の防水構造。
【請求項2】
前記操作軸は前記挿通穴に対して傾斜した状態で前記挿通穴の中心軸方向から前記挿通穴に嵌入されることを特徴とする請求項1に記載の操作軸部の防水構造。
【請求項3】
前記シール部材は、前記開口穴周縁に取り付けられる装着部と、前記挿通穴が設けられた中央部と、この中央部と前記装着部とを繋ぐ連結部を備えており、前記連結部が肉薄であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の操作軸部の防水構造。
【請求項4】
前記操作軸の反嵌入方向側であって、前記操作軸の傾斜方向に対応した前記中央部と前記装着部との間に断面略V字状あるいは略U字状の溝を設けたことを特徴とする請求項3に記載の操作軸部の防水構造。
【請求項5】
前記操作軸は前記ケース内に傾斜して配置された取付部材に装着されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の操作軸部の防水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−310141(P2006−310141A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132469(P2005−132469)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】