擬似太陽光照射装置および擬似太陽光照射装置における光源出力の調整方法
【課題】光源を交換した後であっても、光源の出力を的確に調整し、光源交換前の照度分布を再現することのできる擬似太陽光照射装置を提供する。
【解決手段】擬似太陽光照射装置100は、(a)光源部10のキセノンランプおよびハロゲンランプをそれぞれ個別に点灯させたときに測定された照度値と、(b)キセノンランプまたはハロゲンランプの一方を全て点灯させたときに測定された照度値と、(c)キセノンランプおよびハロゲンランプの両方を全て点灯させたときに測定された照度値の各照度値となるように、キセノンランプおよびハロゲンランプの照度を調整する。
【解決手段】擬似太陽光照射装置100は、(a)光源部10のキセノンランプおよびハロゲンランプをそれぞれ個別に点灯させたときに測定された照度値と、(b)キセノンランプまたはハロゲンランプの一方を全て点灯させたときに測定された照度値と、(c)キセノンランプおよびハロゲンランプの両方を全て点灯させたときに測定された照度値の各照度値となるように、キセノンランプおよびハロゲンランプの照度を調整する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、擬似太陽光を照射する擬似太陽光照射装置および擬似太陽光照射装置における光源出力の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光に近い人工光(擬似太陽光)を照射できる装置の需要が高まっている。特に、太陽電池技術の急速な発展と普及に伴い、太陽電池モジュールの大型化が進みつつある。このため、太陽電池の検査、測定、および実験に利用可能な、高精度の擬似太陽光を大面積に照射できる擬似太陽光照射装置が特に求められている。照射面積の広い擬似太陽光を生成するためには、波長特性(分光特性)の異なる複数種類の光源が、各々複数個必要になる。さらに、擬似太陽光の照度を均一にするためには、各種類の光源について、個別に、光源の出力を厳密に調整する必要がある。
【0003】
一方、光源には必ず寿命があるため、長期間安定して擬似太陽光を照射するためには、定期的に光源を交換し、光源の出力を再調整する必要がある。この光源交換後の出力調整を単純な手順で調整すると、擬似太陽光照射装置の立ち上げ時と同等の調整時間を要してしまうという課題があった。
【0004】
そこで、特許文献1には、このような課題に対する工夫を行った技術が開示されている。具体的には、特許文献1には、波長特性の異なる2種類の光源として、ハロゲンランプとキセノンランプとが、フレーム内に設置された擬似太陽光照射装置(ソーラーシュミレータ)が開示されている。この擬似太陽光照射装置では、照度測定用のリファレンスセルを用いて、光源交換前(光源劣化がない状態)に予め測定しておいた照度値となるように、個別に光源の出力が調整されている。より詳細には、特許文献1における光源の出力調整方法は、ハロゲンランプおよびキセノンランプの交換時には、各ランプを1灯づつ点灯し、そのときの照度をリファレンスセルにより測定する。次に、その測定値を予めコンピュータ内に保存している基準となるデータと比較して、個々のランプの特性を検知する。これにより、測定時に必要な個々のランプに供給する電力値が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−48704号公報(公開日:2002年2月15日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の技術には、光源交換後であっても、光源交換前の照度分布を再現できないという問題がある。
【0007】
具体的には、特許文献1の擬似太陽光照射装置では、光源の出力は、個別に(各光源ごとに)調整されていない。光源自体に機差がなく、2つのリファレンスセルの目標照度値に対して完全に調整できれば、この方法でも問題はない。しかし、実際の光源の照度分布には機差があり、2つのリファレンスセルの目標照度値に完全に調整することは困難となる。光源の照度分布を調整する方法としては、例えば、2つのリファレンスセルの目標照度値との差分が最小となるように調整する方法が一般的である。しかし、特許文献1の擬似太陽光照射装置において、この方法で光源の出力を個別に調整すると、全ての光源を点灯した場合に照度ムラが強調されるというリスクがある。つまり、個別の光源に対する出力調整の最適化が、全光源の出力調整の最適化にならない。特に、擬似太陽光照射装置が、波長特性の異なる複数種類の光源を、各々複数個備える場合、それぞれの個別光源の出力調整の結果が、全体の照度分布の最適化(擬似太陽光の均一化)には繋がらない。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、光源を交換した後であっても、光源の出力を的確に調整し、光源交換前の照度分布を再現することのできる擬似太陽光照射装置および擬似太陽光照射装置の光源出力調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る擬似太陽光照射装置は、上記の課題を解決するために、第1の光源および第2の光源と、
第1の光源からの光のうち所定波長よりも長波長側の光と、第2の光源からの光のうち前記所定波長よりも短波長側の光とを選択し、選択された光を選択して混合する光選択部とを備え、上記光選択部によって選択された光を混合して擬似太陽光として照射する擬似太陽光照射装置であって、
第1の光源および第2の光源の照度を調整する照度調整部を備え、
上記照度調整部は、
上記光選択部から照射された擬似太陽光の照度値を測定する照度測定部と、
上記照度測定部で測定された照度値を記憶する記憶部と、
上記照度測定部で測定された照度値および上記記憶部に記憶された照度値とを解析する解析部と、
上記解析部の解析結果に基づいて、第1の光源および第2の光源の点灯状態および照度を制御する照度制御部とを備え、
上記記憶部は、(a)上記照度制御部が、第1の光源および第2の光源をそれぞれ個別に点灯させたときに、上記照度測定部によって測定された照度値と、(b)上記照度制御部が、第1の光源または第2の光源の一方を全て点灯させたときに、上記照度測定部によって測定された照度値と、(c)上記照度制御部が、第1の光源および第2の光源の両方を全て点灯させたときに、上記照度測定部によって測定された照度値とを記憶しており、
上記照度制御部は、上記(a)〜(c)における各照度値となるように、第1の光源および第2の光源の照度を調整することを特徴としている。
【0010】
上記の構成によれば、記憶部に保存された(a)〜(c)の照度値を基準として、第1の光源および第2の光源の照度が調整される。すなわち、(a)の照度値は、第1の光源および第2の光源における個々の光源の出力調整を行うための照度値である。(b)の照度値は、同一種類の光源(第1の光源または第2の光源)におけるムラに着目して、出力調整を行うための照度値である。(c)の照度値は、擬似太陽光の短波長と長波長のバランスに着目して、出力調整を行うための照度値である。従って、第1の光源または第2の光源を交換した後であっても、各光源の出力を的確に調整し、光源交換前の照度分布を再現することできる。
【0011】
本発明に係る擬似太陽光照射装置において、上記擬似太陽光が照射され、上記(a)〜(c)における各照度値を測定するための基準被照射体と、上記基準被照射体を保持するステージとを備え、
上記(a)〜(c)における各照度値は、上記基準被照射体が上記擬似太陽光の照射面と同じ高さに保持されたときに測定された照度値であることが好ましい。
【0012】
特許文献1の擬似太陽光照射装置では、照度調整用のリファレンスセルが、ハロゲンランプおよびキセノンランプが設置されるフレームの上部の内側周縁に取付けられている。すなわち、リファレンスセルは、被測定対象となる太陽電池の有効照射面にない。つまり、特許文献1では、有効照射面外に設置されたリファレンスセルを用いて、光源の出力を調整している。このため、特定の照度に調整されたとしても、必ずしも有効照射面で意図とした照度(照度分布)になるとは限らない。例えば、光源の照度分布に差異があった場合、有効照射面外の2か所にリファレンスセルがあり、これら2か所のリファレンスセルの照度値に基づいて光源の出力を調整できたとしても、有効照射面の照度分布が調整前と必ずしも同じになるとは限らない。
【0013】
これに対し、上記の構成によれば、(a)〜(c)の照度値が、照度調整用の基準被照射体が擬似太陽光の照射面と同じ高さに保持されたときに測定されている。従って、光源交換前後で、擬似太陽光の照度分布を均一にすることができる。
【0014】
本発明に係る擬似太陽光照射装置における光源の出力調整方法は、上記の課題を解決するために、第1の光源および第2の光源と、
第1の光源からの光のうち所定波長よりも長波長側の光と、第2の光源からの光のうち前記所定波長よりも短波長側の光とを選択し、選択された光を選択して混合する光選択部とを備え、上記光選択部によって選択された光を混合して擬似太陽光として照射する擬似太陽光照射装置における光源の出力調整方法であって、
第1の光源および第2の光源の照度を調整する照度調整ステップを含み、
上記照度調整ステップは、
上記光選択部から照射された擬似太陽光の照度値を測定する照度測定ステップと、
上記照度測定ステップで測定された照度値を記憶する記憶ステップと、
上記照度測定ステップで測定された照度値および上記記憶ステップで記憶された照度値とを解析する解析ステップと、
上記解析ステップの解析結果に基づいて、第1の光源および第2の光源の点灯状態および照度を制御する照度制御ステップとを備え、
上記記憶ステップは、(a)上記照度制御ステップにおいて、第1の光源および第2の光源をそれぞれ個別に点灯させたときに、上記照度測定ステップによって測定された照度値と、(b)上記照度制御ステップにおいて、第1の光源または第2の光源の一方を全て点灯させたときに、上記照度測定ステップによって測定された照度値と、(c)上記照度制御ステップにおいて、第1の光源および第2の光源の両方を全て点灯させたときに、上記照度測定ステップによって測定された照度値とを記憶し、
上記照度制御ステップは、上記(a)〜(c)における各照度値となるように、第1の光源および第2の光源の照度を調整することを特徴としている。
【0015】
上記の方法によれば、記憶ステップで保存された(a)〜(c)の照度値を基準として、第1の光源および第2の光源の照度が調整される。すなわち、(a)の照度値は、第1の光源および第2の光源における個々の光源の出力調整を行うための照度値である。(b)の照度値は、同一種類の光源(第1の光源または第2の光源)におけるムラに着目して、出力調整を行うための照度値である。(c)の照度値は、擬似太陽光の短波長と長波長のバランスに着目して、出力調整を行うための照度値である。従って、第1の光源または第2の光源を交換した後であっても、各光源の出力を的確に調整し、光源交換前の照度分布を再現することできる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明に係る擬似太陽光照射装置は、上記記憶部は、(a)上記照度制御部が、第1の光源および第2の光源をそれぞれ個別に点灯させたときに、上記照度測定部によって測定された照度値と、(b)上記照度制御部が、第1の光源または第2の光源の一方を全て点灯させたときに、上記照度測定部によって測定された照度値と、(c)上記照度制御部が、第1の光源および第2の光源の両方を全て点灯させたときに、上記照度測定部によって測定された照度値とを記憶しており、上記照度制御部は、上記(a)〜(c)における各照度値となるように、第1の光源および第2の光源の照度を調整するという構成である。それゆえ、第1の光源または第2の光源を交換した後であっても、各光源の出力を的確に調整し、光源交換前の照度分布を再現することできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置における照度調整に関する要部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置の要部構成を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置において、照射面に基準セルが配置された状態を示す模式図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置を上面からみた模式図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置において、個別に光源の照度を確認するためのフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置において、同一種類の光源ごとの照度を確認するためのフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置において、全ての光源の照度を確認するためのフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置において、個別にランプの照度を調整するフローチャートである。
【図9】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置において、個別にランプの照度を調整した後の状態を示すグラフである。
【図10】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置において、同一種類のランプごとに照度を調整するフローチャートである。
【図11】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置において、同一種類のランプの照度を調整した後の状態を示すグラフである。
【図12】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置において、全てのランプの照度を調整するフローチャート図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置において、全てのランプの照度を調整した後の状態を示すグラフである。
【図14】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置において、ランプ出力の調整を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る一実施形態について、図1〜図14を参照して以下に説明する。図2は、擬似太陽光照射装置100の要部構成を示す模式図である。擬似太陽光照射装置100は、照射面に擬似太陽光Sを照射する。擬似太陽光Sは、人工光の一種であり、日本工業規格(JIS)により定められた基準太陽光の発光スペクトルに限りなく近い発光スペクトルを有する。本実施形態の擬似太陽光照射装置100は、キセノン光とハロゲン光との合成光を擬似太陽光Sとして、照射面に配置された太陽電池等の被測定物(被照射体)70に照射する。
【0019】
(擬似太陽光照射装置100の構成)
図2に示すように、擬似太陽光照射装置100は、光を導入する光源部10、導光板(光照射部)20、および光取り出し部21を備える。擬似太陽光照射装置100は、導光板20の照射面(上面)から擬似太陽光Sを、照射面に向けて出射する。照射面には、任意の方向に被測定物70を移動できるステージ71に保持された被測定物70が配置されている。これにより、擬似太陽光Sが被測定物70の受光面70aに照射される。なお、例えば太陽電池である被測定物70の特性を測定する際には、被測定物70に図示しない測定端子が接続され、特性の測定が行われる。なお、擬似太陽光照射装置100は、後述のように、光源部10の出力を調整するための構成も備えている。以下、擬似太陽光照射装置100について詳細に説明する。
【0020】
なお、以下の説明では、導光板20の照射面(出射面)側を上方、照射面とは逆側(裏側)を下方とする。また、上方をz方向とし、図2における導光板20の左端部から右端部への向きをx方向とし、図2における奥方向をy方向とする。
【0021】
導光板20は、互いに対向して配置された2つの光源部10の間に設けられている。導光板20の両側面には、両側に配置された2つの光源部10から擬似太陽光が照射される。導光板20は、導光板20の照射面(上面)から擬似太陽光を照射する。導光板20は、透過率を高くするために好ましくは石英ガラス等で構成される。
【0022】
光取り出し部21は、導光板20の下面(裏面)に形成された散乱溝である。光取り出し部21は、光源部10から出射された擬似太陽光を、導光板20の照射面に取り出す。具体的には、光源部10から導光板20に入射した光(擬似太陽光)は、導光板20内部を伝搬する。このとき、光取り出し部21に当たった光は、導光板20の照射面へ出射される。これにより、より広い面積の照射面から、均一な擬似太陽光を照射することが可能となる。なお、光取り出し部21は、例えば散乱体から形成することができ、導光板20内部の擬似太陽光を散乱させて、照射面へ導くことができる。また、散乱体のパターンを変更すれば、擬似太陽光の照度ムラを調整することもできる。例えばドット形状のパターンを、印刷または成形等によって光取り出し部21に形成することができる。
【0023】
光源部10は、導光板20の両側面に配置されている。擬似太陽光照射装置100では、2つの光源部10が、導光板20の両端に擬似太陽光を出射する。このため、より多くの光量(照度)の擬似太陽光を、照射面から出射することが可能となる。ただし、光源部10は、導光板20の両端に設ける必要はなく、導光板20のいずれか一方の端部にのみ設けられていてもよい。なお、2つの光源部10の光学部品構成は同一である。
【0024】
(光源部10の構成)
光源部10は、キセノンランプ11(第1の光源)、ハロゲンランプ12(第2の光源)、キセノンエアマスフィルタ13、ハロゲンエアマスフィルタ14、波長選択ミラー(波長選択部材;光選択部)15を備える。
【0025】
光源部10は、キセノンランプ11およびハロゲンランプ12からそれぞれ出射された光を波長選択ミラー15で混合することにより擬似太陽光を生成し、擬似太陽光を導光板20の端面(入射面)に照射する。具体的には、キセノンランプ11およびハロゲンランプ12は、擬似太陽光照射装置100に設けられた光源である。キセノンランプ11およびハロゲンランプ12は、擬似太陽光を生成するために必要な分光分布(スペクトル分布)を有する光を照射する。キセノンランプ11およびハロゲンランプ12から照射される光は、互いに異なるスペクトル分布を有している。ハロゲンランプ12は、擬似太陽光に必要な長波長成分の光を多く照射する。一方、キセノンランプ11は、擬似太陽光に必要な短波長成分の光を多く照射する。
【0026】
キセノンランプ11は、所定の発光スペクトルを有するキセノン光を照射する。本実施形態ではキセノンランプ11は、紙面奥行方向(y方向)に長さを有する棒状となっている。キセノンランプ11の数は1本であってもよいし、複数本であってもよい。
【0027】
キセノンエアマスフィルタ13は、透過させたキセノンランプ11からの光のスペクトルを基準太陽光のスペクトル分布に近くするようスペクトルを調整する光学フィルタである。キセノンエアマスフィルタ13は、キセノンランプ11と波長選択ミラー15との間に配置され、キセノンランプ11から出射された光を透過する。キセノンエアマスフィルタ13は、ガラス基板上に光学多層膜を形成したものである。キセノンエアマスフィルタ13は、波長に応じて変化する透過率を有し、透過する光のスペクトルを少なくとも部分的に基準太陽光のスペクトルに近づける。
【0028】
ハロゲンランプ12は、所定の発光スペクトルを有するハロゲン光を照射する。本実施形態では、ハロゲンランプ12は紙面奥行方向(y方向)に長さを有する棒状となっている。ハロゲンランプ12の数は1本であってもよいし、複数本であってもよい。
【0029】
ハロゲンエアマスフィルタ14は、透過させたハロゲンランプ12からの光のスペクトルを基準太陽光のスペクトル分布に近くするようスペクトルを調整する光学フィルタである。ハロゲンエアマスフィルタ14は、ハロゲンランプ12と波長選択ミラー15との間に配置され、ハロゲンランプ12から出射された光を透過する。ハロゲンエアマスフィルタ14は、ガラス基板上に光学多層膜を形成したものである。ハロゲンエアマスフィルタ14は、波長に応じて変化する透過率を有し、透過する光のスペクトルを少なくとも部分的に基準太陽光のスペクトルに近づける。ハロゲンエアマスフィルタ14は、通常エアマスフィルタ(スペクトル調整フィルタ)と称される。
【0030】
このようにして、キセノンランプ11からの光とハロゲンランプ12からの光とが、それぞれ波長選択ミラー15に入射する。なお、キセノンランプ11からの光の光軸とハロゲンランプ12からの光の光軸とは垂直である。
【0031】
波長選択ミラー15は、所定の境界波長より短波長側の光を反射し、境界波長より長波長側の光を透過させる部材である。板状の波長選択ミラー15は、ハロゲンエアマスフィルタ14を透過した光の光軸に対して入射面が45度傾けられて配置されている。また、波長選択ミラー15は、キセノンエアマスフィルタ13を通過した光の光軸に対しても入射面が45度傾けられて配置されている。
【0032】
これにより、キセノンエアマスフィルタ13を透過したキセノン光は、波長選択ミラー15に向かう。その結果、キセノン光の短波長側の光が、波長選択ミラー15で反射され、導光板20の端面へ入射する。一方、ハロゲンエアマスフィルタ14を通過したハロゲン光は、波長選択ミラー15に入射される。波長選択ミラー15は、ハロゲンエアマスフィルタ14から出射されたハロゲン光の長波長側を透過させて、キセノン光と同様に、導光板20の端面へ入射させる。キセノンランプ11、ハロゲンランプ12から導光板20に入射された擬似太陽光は、導光板20の光取り出し部材21などにより、太陽電池等の被測定物70が設置された照射面へ照射される。
【0033】
なお、例えば、700nm以上の波長の光をハロゲンランプ12の光で使用し、キセノンランプ11の光を波長700nm未満で使用するとする。この場合、波長選択ミラー15の反射と透過との境界波長は波長700nmである。つまり、波長選択ミラー15は、波長700nmより短波長の光を反射させ、700nm以上の長波長の光を透過する特性を持っている。これにより、擬似太陽光に必要な波長の光のみが、波長選択ミラー15により選択される。そして、選択された光が合成され、擬似太陽光として出射される。なお、波長選択ミラー15が反射または透過させる光の境界波長は、任意に設定すればよい。ただし、キセノンランプ11の発光スペクトルの輝線成分を低減するために、600〜700nmの範囲で選択することが好ましい。さらに、波長選択ミラー15としては、波長依存性のある鏡またはフィルタを用いることができる。例えば、波長選択ミラー15として、コールドミラー、ホットミラー等を用いることができる。
【0034】
このように、波長選択ミラー15は、ハロゲンランプ12の出射光に含まれる擬似太陽光の合成に必要な長波長成分の光と、キセノンランプ11の出射光に含まれる擬似太陽光の合成に必要な短波長成分の光とを抽出して、擬似太陽光を生成する。この際、スペクトル制御されていないハロゲンランプ12の短波長成分の光が除かれ、同様に、スペクトル制御されていないキセノンランプ11の長波長成分の光が除かれることになる。従って、擬似太陽光の発光スペクトルを基準太陽光の発光スペクトルに、より近似させることが可能となる。
【0035】
本実施形態の擬似太陽光照射装置100は、擬似太陽光Sを大面積に照射できる構成となっている。図4は、擬似太陽光照射装置100の上面図である。図4に示すように、擬似太陽光照射装置100では、導光板20aと光源(キセノンランプ11,ハロゲンランプ12)が複数並んだ構成となっているため、大面積の照射面を確保することができる。
【0036】
なお、図4においては、紙面の都合上、同一方向からキセノン光とハロゲン光とが別々に導光板20a,20bに照射されるようになっている。しかし、上述したように、キセノンランプ11とハロゲンランプ12とは立体的に配置されており、キセノンランプ11からの光の光軸とハロゲンランプ12からの光の光軸とは垂直である。そして、キセノン光およびハロゲン光から、波長選択ミラー15で選択された光が合成され擬似太陽光として、導光板20a,20bに照射される(図2参照)。つまり、異なる種類の光源(キセノンランプ11,ハロゲンランプ12)から合成された擬似太陽光が、導光板20a,20bの同じ位置に入射されるのであって、光源の照射位置が導光板20a,20bの平面内で異なる場所にあるのではない。なお、図4では、2枚の導光板20a,20bが図示されているが、実際には照射面積に応じて、n枚(nは自然数)導光板20が配置されている。これにより、擬似太陽光を大面積の照射面に照射することができる。
【0037】
(擬似太陽光照射装置100における光源の出力調整)
擬似太陽光照射装置100では、照射面内で均一な擬似太陽光Sを、長期間安定して照射することが好ましい。そこで、擬似太陽光照射装置100は、光源部10(キセノンランプ11,ハロゲンランプ12)の出力調整に関する構成(照度調整部)を備えている。図1は、擬似太陽光照射装置100における照度調整に関する要部構成を示すブロック図である。図3は、擬似太陽光照射装置100において、照射面に基準セルが配置された状態を示す模式図である。
【0038】
図3に示すように、擬似太陽光照射装置100は、光源の出力調整に用いる基準セル72を備えている。基準セル72は、ステージ71に保持されている。ステージ71は、任意の方向(xyzの各方向)に移動できるようになっている。図3に示すように、ステージ71は、光源の出力調整時には、図中破線で示す擬似太陽光Sの照射面と、基準セル72の受光面72aとが一致するように高さ調整する。さらに、例えば、基準セル72は、図中の位置A,位置B,位置C,位置Dのように、x軸方向にも移動できるようになっている。また、図4に示すように、基準セル72は任意の導光板20a,20b上の任意の場所(位置A1〜D1,A2〜D2・・・)に移動できるようになっている。
【0039】
基準セル72は、光源(キセノンランプ11,ハロゲンランプ12)の出力調整用の被測定物である。基準セル72に照射される照度Eと、この時の基準セル72の短絡電流値(Isc)とは相関関係にある。従って、基準セル72の短絡電流値が、特定の短絡電流値となるように調整すれば、特定の照度となるように光源の照度(出力)が調整されることになる。
【0040】
具体的には、図1に示すように、擬似太陽光照射装置100は、光源の照度を調整するため照度調整部として、照度制御部30、照度測定部40、記憶部50、解析部60を備えている。照度制御部30は、光源部10に制御信号を送信し、キセノンランプ11およびハロゲンランプ12の点灯状態を制御する。照度制御部30は、例えば、図示しない電源部から、光源部10のキセノンランプ11およびハロゲンランプ12に供給される電力を制御する。照度測定部40は、基準セル72の照度を測定する。記憶部50は、照度測定部40で測定された照度値を記憶する。解析部60は、照度測定部40で測定された照度値と、記憶部50に記憶された照度値とに基づいて、光源の照度調整のために必要な処理を解析する。解析部60は、演算部61と評価部62とを備えている。演算部61は、照度測定部40で測定された照度値と、記憶部50に記憶された照度値との差分を算出する。評価部62は、演算部61での算出結果に基づいて、照度調整の要否を評価し、評価結果を照度制御部30に出力する。照度制御部30は、評価部62からの入力データに基づいて、光源部10のキセノンランプ11およびハロゲンランプ12に供給される電力を制御する。以下、光源の照度調整について詳細に説明する。
【0041】
(光源交換前の処理)
まず、図5〜図7に基づいて、光源交換前の処理について説明する。図5は、擬似太陽光照射装置100において、個別に光源の照度を確認するためのフローチャートである。つまり、図5は、各キセノンランプ11個々の照度、または、各ハロゲンランプ12の個々の照度を確認するためのフローチャートである。図6は、擬似太陽光照射装置100において、同一種類の光源ごとの照度を確認するためのフローチャートである。つまり、ランプ単位(全てのキセノンランプ11の照度、または、全てのハロゲンランプ12の照度)を確認するためのフローチャートである。図7は、全ての光源の照度を確認するためのフローチャートである。つまり、全てのキセノンランプ11の照度+全てのハロゲンランプ12の照度を確認するためのフローチャートである。
【0042】
具体的には、まず、図5〜図7に示す処理に従って、光源交換前の照度分布が、コンピュータによる自動処理により、記憶部50に記憶される。ここで、光源交換前とは、必ずしもキセノンランプ11またはハロゲンランプ12の交換の直前である必要はない。例えば、擬似太陽光照射装置100の立ち上げ調整後であってもよい。擬似太陽光照射装置100の立ち上げ直後は、最も性能が出ている状態の一例であるため好ましい。また、例えば、分光放射照度計などを用いて、擬似太陽光のスペクトルが調整された状態や、規格によって設定精度が定められているワーキングモジュールで、1Sun相当の照度に調整された状態も、最も性能がでている状態といえるため望ましい。
【0043】
このような擬似太陽光照射装置100の性能が高い状態において、個別のランプについて基準照度値を測定し記憶部50に記憶する。具体的には、図5に示すように、まず、個別ランプの照度確認が開始されると、ランプ番号「N=0」が入力される(S11)。次に、1番目のランプ(キセノンランプ11の1つ、または、ハロゲンランプ12の1つ)についての照度を測定する処理に進む(S12)。次に、1番目のランプに対応する場所に、基準セル72を移動させてランプを点灯する(S13)。次に、基準セル72の照度値Erを測定し、測定結果を記憶部50に記憶する(S14)。次に、測定したランプが最後か(全てのランプについて基準セル72の照度値を測定したか)を判定する(S15)。測定するランプが残っていれば、S12〜S15の処理を最後のランプまで繰り返し、個別のランプについての照度確認処理を終了する。このように、個別ランプの照度確認処理は、キセノンランプ11またはハロゲンランプ12をそれぞれ個別に順に点灯させ、各ランプに対応する測定場所での個々に照度を測定し記憶する。例えば、キセノンランプ11およびハロゲンランプ12の個別のランプにつき、各1箇所の照度を測定する場合、ランプの数だけの照度値が得られる。なお、ここでの個別のランプとは、ハロゲンランプ12やキセノンランプ11といった種類を問わず、擬似太陽光照射装置100に搭載される全てのランプ1つ1つを示す。さらに、照度測定の部位である測定場所は、1箇所である必要はなく、2箇所以上でも構わない。また、測定場所とは、そのランプから照射される照度を適切に測定できる場所であればよい。このようにして、個別のランプについて基準となる照度値が測定される。
【0044】
次に、ランプの種類ごとに(ランプの種類単位で)基準照度値を測定し、記憶部50に記憶する。具体的には、図6に示すように、まず、同一種類ランプの照度確認が開始されると、ランプ番号「N=0」が入力され(S21)。次に、1番目のランプ(キセノンランプ11、または、ハロゲンランプ12)についての照度を測定する処理に進む(S22)。次に、照度測定の位置「P=0」が入力され(S23)、キセノンランプ11またはハロゲンランプ12のP番目の位置に基準セル72を移動させる(S24)。次に、N番目の種類のランプのみ一斉に点灯させた状態で、複数の測定場所の照度値Erを測定する(S25)。ここで複数の測定場所とは、有効照射面を均等に照度取得できるような箇所が好ましい。例えば、有効照射面の中心1点と、4隅の4点の合計5点であることが好ましい。1つの測定場所での照度測定が完了したら、照度測定の位置が最後かどうかを判定する(S26)。測定場所が残っていれば、次の位置(P+1)について、S24〜S26の処理を行い、全ての照度測定の位置で照度の測定が終わるまで、S24〜S26の処理を繰り返す。一方、照度測定の位置が最後であれば、全種類のランプの照度値を測定したかを判定する(S27)。照度値を測定していない種類のランプが残っていれば、照度値を測定していないランプについてS21〜S27の処理を行う(S29)。このようにして、同一種類のランプについて基準となる照度値が測定される。
【0045】
最後に、全てのランプ点灯時の基準照度値を測定し、記憶部50に記憶する。具体的には、図7に示すように、全てのランプの照度確認が開始されると、照度測定の位置「P=0」が入力され(S31)、P番目の位置に基準セル72を移動させる(S32)。次に、全てのランプを一斉に点灯させた状態で、複数の測定場所の照度値Erを測定する(S33)。ここでの複数の測定場所とは、図6と同様に、有効照射面を均等に照度取得できるような箇所が好ましい。以上の手順で、ランプ交換前の有効照射面での照度分布の情報が得られるので、この値を目標値として保存し、ランプ交換後は目標値を目指してランプ出力の調整を自動で行う。1つの測定場所での照度測定が完了したら、照度測定の位置が最後かどうかを判定する(S34)。測定場所が残っていれば、次の位置(P+1)について、S32〜S33の処理を行い(S35)、全ての照度測定の位置で照度の測定が終わるまで、S32〜S33の処理を繰り返す。このようにして、全てのランプ点灯時の基準となる照度値が測定される。
【0046】
以上のように、光源交換前には、(1)個々のキセノンランプ11および個々のハロゲンランプ12の出力調整を自動処理するための基準照度値(図5)、(2)同一種類の光源のムラに着目して出力調整を自動処理するための基準照度値(図6)、(3)擬似太陽光Sの短波長(キセノンランプ11)と長波長(ハロゲンランプ12)のバランスに着目して、出力調整を自動処理するための基準照度値(図7)が、記憶部50に保存される。
【0047】
(光源交換後の処理)
次に、図8〜図13に基づいて、光源交換後の処理について説明する。図8は、擬似太陽光照射装置100において、個別にランプの照度を調整するフローチャートである。図9は、擬似太陽光照射装置100において、個別にランプの照度を調整した後の状態を示すグラフである。図10は、擬似太陽光照射装置100において、同一種類のランプごとに照度を調整するフローチャートである。図11は、擬似太陽光照射装置100において、同一種類のランプの照度を調整した後の状態を示すグラフである。図12は、擬似太陽光照射装置100において、全てのランプの照度を調整するフローチャート図である。図13は、擬似太陽光照射装置100において、全てのランプの照度を調整した後の状態を示すグラフである。
【0048】
ランプ交換後には、図5〜図7の各フローチャートに従って測定された光源交換前の照度値(照度分布)となるように、図8,図10,図12の各フローチャートに従って測定される照度値(照度分布)が調整される。
【0049】
具体的には、まず、図8に示すように、個別のランプについて照度値を測定し、出力を調整する。図8におけるS41〜S44までは、図5で説明したS11〜S14と同様である。すなわち、キセノンランプ11またはハロゲンランプ12をそれぞれ個別に順に点灯させ、各ランプに対応する測定場所(図5のフローチャートで測定した測定場所)に基準セル72を移動させて基準セル72の照度値Erを測定する。次に、この照度値Erと、目標照度値Etとの差分照度(ΔE)を演算部61で演算する。目標照度値Etは、図5で測定した照度値Erであってもよいし、図5で測定した照度値Erの許容範囲内の値であってもよい。次に、差分照度(ΔE)が、許容範囲か否かを評価部62で判定する(S46)。差分照度(ΔE)が許容範囲でなければ、ランプ出力を再調整し(S47)、許容範囲になるように(つまり目標照度値となるように)S44〜S46を繰り返す。なお、ランプ出力の調整方法については後述する。一方、差分照度(ΔE)が許容範囲であれば、測定したランプが最後か(全てのランプについて基準セル72の照度値を測定したか)を評価部62で判定する(S48)。測定するランプが残っていれば、S42〜S48の処理を最後のランプまで繰り返し、個別のランプについての照度調整処理を終了する。図9は、図8のような照度調整処理によって、ハロゲンランプ12を個別に調整した結果を示している。図9では、図4に示すハロゲンランプ12(Ha(L1),Ha(L2),Ha(R1),Ha(R2))の例を示している。図9に示すように、ハロゲンランプ12を順に個別に調整することで、すべてのハロゲンランプ12の照度が調整許容範囲に調整される。
【0050】
次に、図10に示すように、ランプの種類ごとに(ランプの種類単位で)照度値を測定し、出力調整する。図10におけるS51〜S55までは、図6で説明したS21〜S25と同様である。すなわち、全てのキセノンランプ11、または、全てのハロゲンランプ12を点灯させ、測定場所(図6のフローチャートで測定した測定場所)に基準セル72を移動させて、同一種類のランプを一斉点灯して基準セル72の照度値Erを測定する。次に、この照度値Erと、目標照度値Etとの差分照度(ΔE)を演算部61で演算する。目標照度値Etは、図6で測定した照度値Erであってもよいし、図6で測定した照度値Erの許容範囲内の値であってもよい。なお、S54においては、ランプ出力の調整回数「I=0」が入力される。次に、差分照度(ΔE)が、許容範囲か否かを評価部62で判定する(S57)。差分照度(ΔE)が許容範囲でなければ、ランプ出力を再調整し、調整回数が加算される(I=I+1)(S58)。そして、許容範囲になるように(つまり目標照度値となるように)S55〜S58を繰り返す。なお、ランプ出力の調整方法については後述する。一方、差分照度(ΔE)が許容範囲であれば、ランプの出力調整回数の有無を判定する(S59)。ランプの出力調整を1度でもしていれば(I≠0)、再度P番目の位置について、S54〜S59の処理を行う。一方、ランプの出力調整を1度もしていなければ(I=0)、照度測定の位置が最後かどうかを判定する(S61)。測定場所が残っていれば、次の位置(P+1)について(S62)、S54〜S61の処理を行い、全ての照度測定の位置で照度の測定が終わるまで、S54〜S61の処理を繰り返す。一方、照度測定の位置が最後であれば、全種類のランプの照度値を測定したかを判定する(S63)。照度値を測定していない種類のランプが残っていれば、照度値を測定していないランプについてS52〜S63の処理を繰り返し(S64)、同一種類ランプの調整を終了する。図11は、図10のような照度調整処理によって、全てのハロゲンランプ12を調整した結果を示している。図11では、図4に示すハロゲンランプ12(Ha(L1),Ha(L2),Ha(R1),Ha(R2))の位置A〜位置Dに対応する照度調整の例を示している。図11に示すように、位置Aでは光源交換後のハロゲンランプ12の照度値が、調整許容範囲を超えていたが、照度調整によって調整許容範囲に収まっている。これにより、同一種類のランプについて、各位置において照度ムラが発生するのを防ぐことができる。
【0051】
なお、S58において、1箇所でもランプ出力を再調整した場合(照度制御部のランプ制御値を調整した場合)、その測定場所のランプ出力を再調整後に、測定場所のランプ出力を最初から確認しなおすことが好ましい。これは、一旦調整できた測定場所においても、再度調整が必要となる場合もあるためである。このため、S59では、ランプの出力調整回数の有無を判定している。このように、同一種類のランプを調整した後は、図11のようにすべての場所において、調整許容範囲に入った状態になる。
【0052】
最後に、図12に示すように、全てのランプ点灯時の照度値を測定し、出力調整する。図12におけるS71〜S73までは、図7で説明したS31〜S33と同様である。すなわち、全てのキセノンランプ11および全てのハロゲンランプ12を点灯させ、測定場所(図7のフローチャートで測定した場所)に基準セル72を移動させて、照度値Erを測定する。次に、この照度値Erと、目標照度値Etとの差分照度(ΔE)を演算部61で演算する。目標照度値Etは、図7で測定した照度値Erであってもよいし、図7で測定した照度値Erの許容範囲内の値であってもよい。なお、S72においては、図10のS54と同様に、ランプ出力の調整回数「I=0」が入力される。次に、差分照度(ΔE)が、許容範囲か否かを評価部62で判定する(S75)。差分照度(ΔE)が許容範囲でなければ、ランプ出力を再調整し、調整回数が加算される(I=I+1)(S76)。そして、許容範囲になるように(つまり目標照度値となるように)S73〜S76を繰り返す。なお、ランプ出力の調整方法については後述する。一方、差分照度(ΔE)が許容範囲であれば、ランプの出力調整回数の有無を判定する(S77)。ランプの出力調整を1度でもしていれば(I≠0)、再度P番目の位置について、S72〜S77の処理を行う。一方、ランプの出力調整を1度もしていなければ(I=0)、照度測定の位置が最後かどうかを判定する(S78)。測定場所が残っていれば、次の位置(P+1)について(S80)、S72〜S78の処理を行い、全ての照度測定の位置で照度の測定が終わるまで、S72〜S78の処理を繰り返す。一方、照度測定の位置が最後であれば、全てのランプの調整を終了する。図13は、図12のような照度調整処理によって、全てのハロゲンランプ12を調整した結果を示している。図13では、図4に示すキセノンランプ11(Ha(L1,L2,L3,L4)、ハロゲンランプ12(Ha(L1,L2,R1,R2))の位置A〜位置Dに対応する照度調整の例を示している。図11に示すように、全ての照度測定位置において、調整許容範囲に収まっている。これにより、全てのランプについて、各位置において照度ムラが発生するのを防ぐことができる。
【0053】
なお、S76において、1箇所でもランプ出力を再調整した場合(照度制御部のランプ制御値を調整した場合)、その測定場所のランプ出力を再調整後に、測定場所のランプ出力を最初から確認しなおすことが好ましい。これは、一旦調整できた測定場所においても、再度調整が必要となる場合もあるためである。このため、S77では、ランプの出力調整回数の有無を判定している。このように、全てのランプを点灯させて調整した後は、図13のようにすべての位置において、調整許容範囲に入った状態になる。このように、全てのランプを調整した後は、図13に示したように、すべての場所において調整許容範囲に調整できる。
【0054】
(光源出力調整について)
次に図8〜図13(S47、S58,S76)におけるランプ出力の再調整処理について説明する。図14は、擬似太陽光照射装置100におけるランプ出力の再調整処理を説明するための図である。図14に示すように、ランプ出力の調整は、差分照度(ΔE)が、調整許容範囲内に収まるまで繰り返される。具体的には、まず1回目として、照度制御部30に格納された初期値のランプ制御値でランプを点灯する。そして、基準セル72の短絡電流値、つまり照度値を測定する。ここで、初期値のランプ制御値とは、目標照度値をオーバーしないような比較的低い制御値であることが好ましい。これは、ランプ交換後に極度に大きい制御値でランプを点灯させてしまうと、ランプの寿命を縮めてしまうためである。1回目の測定照度値と目標照度値との差分照度ΔEを求め、差分照度ΔEが正の場合は1回目の制御値を増加させ、負の場合は、1回目の制御値を減少させる。
【0055】
次に、制御値の変更後、2回目として、上記加減した制御値によりランプを点灯させ、照度値を測定する。このようにして、差分照度ΔEが調整許容範囲に入るまで、測定・調整・評価(解析)を繰り返す。特に、3回目以降の調整に関しては、1回目の制御値と照度、2回目の制御値と照度の関係から、制御値と照度の傾きを求め、3回目の調整を行う方が望ましい。
【0056】
なお、調整許容範囲は小さいほどランプ調整精度は上がるが、極端に小さいと、調整するまでに時間を要してしまう。よって、事前にランプ制御値の最小分解能に対する照度調整可能幅を把握しておき、調整許容範囲を決めることが好ましい。
【0057】
(本実施形態の作用効果)
以上のように、本実施形態の擬似太陽光照射装置100では、記憶部50は、(a)照度制御部30が、キセノンランプ11およびハロゲンランプ12をそれぞれ個別に点灯させたときに、照度測定部40によって測定された照度値と、(b)照度制御部30が、キセノンランプ11またはハロゲンランプ12の一方を全て点灯させたときに、照度測定部40によって測定された照度値と、(c)照度制御部30が、キセノンランプ11およびハロゲンランプ12の両方を全て点灯させたときに、照度測定部40によって測定された照度値とを記憶しており、照度制御部30は、上記(a)〜(c)における各照度値となるように、キセノンランプ11およびハロゲンランプ12の照度を調整することを特徴としている。
【0058】
上記の構成によれば、記憶部50に保存された(a)〜(c)の照度値を基準として、キセノンランプ11およびハロゲンランプ12の照度が調整される。すなわち、(a)の照度値は、キセノンランプ11およびハロゲンランプ12における個々の光源の出力調整を行うための照度値である。(b)の照度値は、同一種類の光源(キセノンランプ11またはハロゲンランプ12)におけるムラに着目して、出力調整を行うための照度値である。(c)の照度値は、擬似太陽光の短波長と長波長のバランスに着目して、出力調整を行うための照度値である。従って、キセノンランプ11またはハロゲンランプ12を交換した後であっても、各光源の出力を的確に調整し、光源交換前の照度分布を再現することできる。
【0059】
また、擬似太陽光照射装置100では、(a)〜(c)の照度値が、照度調整用の基準セル72を擬似太陽光Sの照射面と同じ高さに保持した状態で測定されている。従って、光源交換前後で、擬似太陽光の照度分布を均一にすることができる。
【0060】
すなわち、図5〜7,図8,10,12の各フローチャートに示した手順で処理することで、ランプ交換による機差により、ランプの照度分布に変化があったとしても、ランプ交換前の照度となるように、ランプ制御値を調整することができる。つまり、光源を交換した後であっても、光源の出力を的確に調整し、光源交換前の照度分布を再現することまた、基準セルは、自動ステージに設置されているので、図5〜7、図8,10,12の各フローチャートの処理は、全て自動で(コンピュータ等を用いて)行うことができる。しかも、擬似太陽光照射装置100では、光源交換後に、基準セル72および照度測定部40を用いて、交換前に記憶部50に保存された照度値となるように個々の光源の出力を自動で調整し、交換前に記憶部50に保存した照度値となるように同一種類の光源の出力を自動で調整し、さらに交換前に保存した照度値となるように、全ての光源の出力を自動で調整する。これにより、複数種類の複数個の光源を搭載した高精度な擬似太陽光照射装置において、光源を交換した後であっても、光源の出力を的確に調整し、光源交換前の照度分布を再現することができる。すなわち、光源を交換することで、光源の照度分布に機差が生じたとしても、光源交換前の照度分布に戻すことができる。
【0061】
なお、本発明は、以下のように表現することもできる。すなわち、本発明は、擬似太陽光を照射面に照射する擬似太陽光照射装置であって、
短波長の光を照射するための第1の光源と、
長波長の光を照射するための第2の光源と、
前記第1の光源における所定の境界波長よりも短波長側と、前記第2の光源における前記境界波長よりも長波長側とを選択して出力する光選択部(波長選択ミラー15)と、
前記光選択手段から出射された光を前記照射面に照射する光照射部(導光板20)と、
前記光照射手段によって照射された光の照度を測定する照度測定部40とを備えており、前記照度測定手段を用いて、
各光源を個別に点灯し、測定するステップ(S1)、
S1の測定データを保存するステップ(S2)、
同一種類ごとに光源を一斉に点灯し、測定するステップ(S3)、
S3の測定データを保存するステップ(S4)、
全ての光源を一斉に点灯し、測定するステップ(S5)、
S5の測定データを保存するステップ(S6)
を光源交換前に行い、光源交換後に、
各光源を個別に点灯し、S2の保存データと同じ出力となるように自動調整するステップ(S7)、
同一種類ごとに光源を一斉に点灯し、S4の保存データと同じ出力となるように自動調整するステップ(S8)、
全ての光源を一斉に点灯し、S6の保存データと同じ出力となるように自動調整するステップ(S9)、を有することを特徴としている。
【0062】
前記の構成によれば、照度測定手段によって、S1〜S6のステップを光源交換前に行うことで、必要最低限の工数で光源出力の状態を記録することができる。具体的には、S1とS2のステップで個々の出力調整を自動で行うための照度値を保存し、S3とS4のステップで擬似太陽光照射装置の照射面における同一種類の光源のムラに着目して、出力調整を自動で行うための照度値を保存し、さらにS5とS6のステップで擬似太陽光の短波長(第1の光源)と長波長(第2の光源)のバランスに着目して、出力調整を自動で行うための照度値を保存する。
【0063】
さらに光源交換後S7〜S9のステップで、照度測定手段を用いて、自動で出力調整する。具体的には、S7のステップでは、S1とS2のステップで保存した照度値となるように個々の光源の出力を自動で調整し、S8のステップでは、S3とS4のステップで保存した照度値となるように同一種類の光源の出力を自動で調整し、さらにS9のステップで、S5とS6のステップで保存した照度値となるように、全ての光源の出力を自動で調整する。
【0064】
なお、上記S7〜S9のステップにおける自動調整とは、S1〜S6のステップで測定し保存された照度値Tと、S7〜9のステップで測定した照度値Mの差分(Δ=|T−M|)が最小となるように光源の出力の調整と照度値の測定を繰り返し、出力を自動で個別に調整することである。
【0065】
以上のことから、S7のステップで個別の出力を自動で調整し、S8のステップで同一種類の光源ごとの出力を自動で調整し、S9のステップで異種の光源とのバランスを自動で調整する。よって、光源を交換しても、光源交換前の照度分布を再現できる効果を奏する。
【0066】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、太陽電池の検査、測定、および実験に利用できる。また、化粧品、塗料、接着剤、各種材料の退色および耐光試験にも利用できる。さらに、光触媒の検査および実験、ならびに自然光を必要とするその他の各種実験にも利用できる。
【符号の説明】
【0068】
11 キセノンランプ(第1の光源)
12 ハロゲンランプ(第2の光源)
15 波長選択ミラー(光選択部)
30 照度制御部
40 照度測定部
50 記憶部
60 解析部
71 ステージ
72 基準セル(基準被照射体)
100 擬似太陽光照射装置
S 擬似太陽光
【技術分野】
【0001】
本発明は、擬似太陽光を照射する擬似太陽光照射装置および擬似太陽光照射装置における光源出力の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光に近い人工光(擬似太陽光)を照射できる装置の需要が高まっている。特に、太陽電池技術の急速な発展と普及に伴い、太陽電池モジュールの大型化が進みつつある。このため、太陽電池の検査、測定、および実験に利用可能な、高精度の擬似太陽光を大面積に照射できる擬似太陽光照射装置が特に求められている。照射面積の広い擬似太陽光を生成するためには、波長特性(分光特性)の異なる複数種類の光源が、各々複数個必要になる。さらに、擬似太陽光の照度を均一にするためには、各種類の光源について、個別に、光源の出力を厳密に調整する必要がある。
【0003】
一方、光源には必ず寿命があるため、長期間安定して擬似太陽光を照射するためには、定期的に光源を交換し、光源の出力を再調整する必要がある。この光源交換後の出力調整を単純な手順で調整すると、擬似太陽光照射装置の立ち上げ時と同等の調整時間を要してしまうという課題があった。
【0004】
そこで、特許文献1には、このような課題に対する工夫を行った技術が開示されている。具体的には、特許文献1には、波長特性の異なる2種類の光源として、ハロゲンランプとキセノンランプとが、フレーム内に設置された擬似太陽光照射装置(ソーラーシュミレータ)が開示されている。この擬似太陽光照射装置では、照度測定用のリファレンスセルを用いて、光源交換前(光源劣化がない状態)に予め測定しておいた照度値となるように、個別に光源の出力が調整されている。より詳細には、特許文献1における光源の出力調整方法は、ハロゲンランプおよびキセノンランプの交換時には、各ランプを1灯づつ点灯し、そのときの照度をリファレンスセルにより測定する。次に、その測定値を予めコンピュータ内に保存している基準となるデータと比較して、個々のランプの特性を検知する。これにより、測定時に必要な個々のランプに供給する電力値が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−48704号公報(公開日:2002年2月15日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の技術には、光源交換後であっても、光源交換前の照度分布を再現できないという問題がある。
【0007】
具体的には、特許文献1の擬似太陽光照射装置では、光源の出力は、個別に(各光源ごとに)調整されていない。光源自体に機差がなく、2つのリファレンスセルの目標照度値に対して完全に調整できれば、この方法でも問題はない。しかし、実際の光源の照度分布には機差があり、2つのリファレンスセルの目標照度値に完全に調整することは困難となる。光源の照度分布を調整する方法としては、例えば、2つのリファレンスセルの目標照度値との差分が最小となるように調整する方法が一般的である。しかし、特許文献1の擬似太陽光照射装置において、この方法で光源の出力を個別に調整すると、全ての光源を点灯した場合に照度ムラが強調されるというリスクがある。つまり、個別の光源に対する出力調整の最適化が、全光源の出力調整の最適化にならない。特に、擬似太陽光照射装置が、波長特性の異なる複数種類の光源を、各々複数個備える場合、それぞれの個別光源の出力調整の結果が、全体の照度分布の最適化(擬似太陽光の均一化)には繋がらない。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、光源を交換した後であっても、光源の出力を的確に調整し、光源交換前の照度分布を再現することのできる擬似太陽光照射装置および擬似太陽光照射装置の光源出力調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る擬似太陽光照射装置は、上記の課題を解決するために、第1の光源および第2の光源と、
第1の光源からの光のうち所定波長よりも長波長側の光と、第2の光源からの光のうち前記所定波長よりも短波長側の光とを選択し、選択された光を選択して混合する光選択部とを備え、上記光選択部によって選択された光を混合して擬似太陽光として照射する擬似太陽光照射装置であって、
第1の光源および第2の光源の照度を調整する照度調整部を備え、
上記照度調整部は、
上記光選択部から照射された擬似太陽光の照度値を測定する照度測定部と、
上記照度測定部で測定された照度値を記憶する記憶部と、
上記照度測定部で測定された照度値および上記記憶部に記憶された照度値とを解析する解析部と、
上記解析部の解析結果に基づいて、第1の光源および第2の光源の点灯状態および照度を制御する照度制御部とを備え、
上記記憶部は、(a)上記照度制御部が、第1の光源および第2の光源をそれぞれ個別に点灯させたときに、上記照度測定部によって測定された照度値と、(b)上記照度制御部が、第1の光源または第2の光源の一方を全て点灯させたときに、上記照度測定部によって測定された照度値と、(c)上記照度制御部が、第1の光源および第2の光源の両方を全て点灯させたときに、上記照度測定部によって測定された照度値とを記憶しており、
上記照度制御部は、上記(a)〜(c)における各照度値となるように、第1の光源および第2の光源の照度を調整することを特徴としている。
【0010】
上記の構成によれば、記憶部に保存された(a)〜(c)の照度値を基準として、第1の光源および第2の光源の照度が調整される。すなわち、(a)の照度値は、第1の光源および第2の光源における個々の光源の出力調整を行うための照度値である。(b)の照度値は、同一種類の光源(第1の光源または第2の光源)におけるムラに着目して、出力調整を行うための照度値である。(c)の照度値は、擬似太陽光の短波長と長波長のバランスに着目して、出力調整を行うための照度値である。従って、第1の光源または第2の光源を交換した後であっても、各光源の出力を的確に調整し、光源交換前の照度分布を再現することできる。
【0011】
本発明に係る擬似太陽光照射装置において、上記擬似太陽光が照射され、上記(a)〜(c)における各照度値を測定するための基準被照射体と、上記基準被照射体を保持するステージとを備え、
上記(a)〜(c)における各照度値は、上記基準被照射体が上記擬似太陽光の照射面と同じ高さに保持されたときに測定された照度値であることが好ましい。
【0012】
特許文献1の擬似太陽光照射装置では、照度調整用のリファレンスセルが、ハロゲンランプおよびキセノンランプが設置されるフレームの上部の内側周縁に取付けられている。すなわち、リファレンスセルは、被測定対象となる太陽電池の有効照射面にない。つまり、特許文献1では、有効照射面外に設置されたリファレンスセルを用いて、光源の出力を調整している。このため、特定の照度に調整されたとしても、必ずしも有効照射面で意図とした照度(照度分布)になるとは限らない。例えば、光源の照度分布に差異があった場合、有効照射面外の2か所にリファレンスセルがあり、これら2か所のリファレンスセルの照度値に基づいて光源の出力を調整できたとしても、有効照射面の照度分布が調整前と必ずしも同じになるとは限らない。
【0013】
これに対し、上記の構成によれば、(a)〜(c)の照度値が、照度調整用の基準被照射体が擬似太陽光の照射面と同じ高さに保持されたときに測定されている。従って、光源交換前後で、擬似太陽光の照度分布を均一にすることができる。
【0014】
本発明に係る擬似太陽光照射装置における光源の出力調整方法は、上記の課題を解決するために、第1の光源および第2の光源と、
第1の光源からの光のうち所定波長よりも長波長側の光と、第2の光源からの光のうち前記所定波長よりも短波長側の光とを選択し、選択された光を選択して混合する光選択部とを備え、上記光選択部によって選択された光を混合して擬似太陽光として照射する擬似太陽光照射装置における光源の出力調整方法であって、
第1の光源および第2の光源の照度を調整する照度調整ステップを含み、
上記照度調整ステップは、
上記光選択部から照射された擬似太陽光の照度値を測定する照度測定ステップと、
上記照度測定ステップで測定された照度値を記憶する記憶ステップと、
上記照度測定ステップで測定された照度値および上記記憶ステップで記憶された照度値とを解析する解析ステップと、
上記解析ステップの解析結果に基づいて、第1の光源および第2の光源の点灯状態および照度を制御する照度制御ステップとを備え、
上記記憶ステップは、(a)上記照度制御ステップにおいて、第1の光源および第2の光源をそれぞれ個別に点灯させたときに、上記照度測定ステップによって測定された照度値と、(b)上記照度制御ステップにおいて、第1の光源または第2の光源の一方を全て点灯させたときに、上記照度測定ステップによって測定された照度値と、(c)上記照度制御ステップにおいて、第1の光源および第2の光源の両方を全て点灯させたときに、上記照度測定ステップによって測定された照度値とを記憶し、
上記照度制御ステップは、上記(a)〜(c)における各照度値となるように、第1の光源および第2の光源の照度を調整することを特徴としている。
【0015】
上記の方法によれば、記憶ステップで保存された(a)〜(c)の照度値を基準として、第1の光源および第2の光源の照度が調整される。すなわち、(a)の照度値は、第1の光源および第2の光源における個々の光源の出力調整を行うための照度値である。(b)の照度値は、同一種類の光源(第1の光源または第2の光源)におけるムラに着目して、出力調整を行うための照度値である。(c)の照度値は、擬似太陽光の短波長と長波長のバランスに着目して、出力調整を行うための照度値である。従って、第1の光源または第2の光源を交換した後であっても、各光源の出力を的確に調整し、光源交換前の照度分布を再現することできる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明に係る擬似太陽光照射装置は、上記記憶部は、(a)上記照度制御部が、第1の光源および第2の光源をそれぞれ個別に点灯させたときに、上記照度測定部によって測定された照度値と、(b)上記照度制御部が、第1の光源または第2の光源の一方を全て点灯させたときに、上記照度測定部によって測定された照度値と、(c)上記照度制御部が、第1の光源および第2の光源の両方を全て点灯させたときに、上記照度測定部によって測定された照度値とを記憶しており、上記照度制御部は、上記(a)〜(c)における各照度値となるように、第1の光源および第2の光源の照度を調整するという構成である。それゆえ、第1の光源または第2の光源を交換した後であっても、各光源の出力を的確に調整し、光源交換前の照度分布を再現することできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置における照度調整に関する要部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置の要部構成を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置において、照射面に基準セルが配置された状態を示す模式図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置を上面からみた模式図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置において、個別に光源の照度を確認するためのフローチャートである。
【図6】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置において、同一種類の光源ごとの照度を確認するためのフローチャートである。
【図7】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置において、全ての光源の照度を確認するためのフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置において、個別にランプの照度を調整するフローチャートである。
【図9】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置において、個別にランプの照度を調整した後の状態を示すグラフである。
【図10】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置において、同一種類のランプごとに照度を調整するフローチャートである。
【図11】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置において、同一種類のランプの照度を調整した後の状態を示すグラフである。
【図12】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置において、全てのランプの照度を調整するフローチャート図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置において、全てのランプの照度を調整した後の状態を示すグラフである。
【図14】本発明の一実施形態に係る擬似太陽光照射装置において、ランプ出力の調整を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る一実施形態について、図1〜図14を参照して以下に説明する。図2は、擬似太陽光照射装置100の要部構成を示す模式図である。擬似太陽光照射装置100は、照射面に擬似太陽光Sを照射する。擬似太陽光Sは、人工光の一種であり、日本工業規格(JIS)により定められた基準太陽光の発光スペクトルに限りなく近い発光スペクトルを有する。本実施形態の擬似太陽光照射装置100は、キセノン光とハロゲン光との合成光を擬似太陽光Sとして、照射面に配置された太陽電池等の被測定物(被照射体)70に照射する。
【0019】
(擬似太陽光照射装置100の構成)
図2に示すように、擬似太陽光照射装置100は、光を導入する光源部10、導光板(光照射部)20、および光取り出し部21を備える。擬似太陽光照射装置100は、導光板20の照射面(上面)から擬似太陽光Sを、照射面に向けて出射する。照射面には、任意の方向に被測定物70を移動できるステージ71に保持された被測定物70が配置されている。これにより、擬似太陽光Sが被測定物70の受光面70aに照射される。なお、例えば太陽電池である被測定物70の特性を測定する際には、被測定物70に図示しない測定端子が接続され、特性の測定が行われる。なお、擬似太陽光照射装置100は、後述のように、光源部10の出力を調整するための構成も備えている。以下、擬似太陽光照射装置100について詳細に説明する。
【0020】
なお、以下の説明では、導光板20の照射面(出射面)側を上方、照射面とは逆側(裏側)を下方とする。また、上方をz方向とし、図2における導光板20の左端部から右端部への向きをx方向とし、図2における奥方向をy方向とする。
【0021】
導光板20は、互いに対向して配置された2つの光源部10の間に設けられている。導光板20の両側面には、両側に配置された2つの光源部10から擬似太陽光が照射される。導光板20は、導光板20の照射面(上面)から擬似太陽光を照射する。導光板20は、透過率を高くするために好ましくは石英ガラス等で構成される。
【0022】
光取り出し部21は、導光板20の下面(裏面)に形成された散乱溝である。光取り出し部21は、光源部10から出射された擬似太陽光を、導光板20の照射面に取り出す。具体的には、光源部10から導光板20に入射した光(擬似太陽光)は、導光板20内部を伝搬する。このとき、光取り出し部21に当たった光は、導光板20の照射面へ出射される。これにより、より広い面積の照射面から、均一な擬似太陽光を照射することが可能となる。なお、光取り出し部21は、例えば散乱体から形成することができ、導光板20内部の擬似太陽光を散乱させて、照射面へ導くことができる。また、散乱体のパターンを変更すれば、擬似太陽光の照度ムラを調整することもできる。例えばドット形状のパターンを、印刷または成形等によって光取り出し部21に形成することができる。
【0023】
光源部10は、導光板20の両側面に配置されている。擬似太陽光照射装置100では、2つの光源部10が、導光板20の両端に擬似太陽光を出射する。このため、より多くの光量(照度)の擬似太陽光を、照射面から出射することが可能となる。ただし、光源部10は、導光板20の両端に設ける必要はなく、導光板20のいずれか一方の端部にのみ設けられていてもよい。なお、2つの光源部10の光学部品構成は同一である。
【0024】
(光源部10の構成)
光源部10は、キセノンランプ11(第1の光源)、ハロゲンランプ12(第2の光源)、キセノンエアマスフィルタ13、ハロゲンエアマスフィルタ14、波長選択ミラー(波長選択部材;光選択部)15を備える。
【0025】
光源部10は、キセノンランプ11およびハロゲンランプ12からそれぞれ出射された光を波長選択ミラー15で混合することにより擬似太陽光を生成し、擬似太陽光を導光板20の端面(入射面)に照射する。具体的には、キセノンランプ11およびハロゲンランプ12は、擬似太陽光照射装置100に設けられた光源である。キセノンランプ11およびハロゲンランプ12は、擬似太陽光を生成するために必要な分光分布(スペクトル分布)を有する光を照射する。キセノンランプ11およびハロゲンランプ12から照射される光は、互いに異なるスペクトル分布を有している。ハロゲンランプ12は、擬似太陽光に必要な長波長成分の光を多く照射する。一方、キセノンランプ11は、擬似太陽光に必要な短波長成分の光を多く照射する。
【0026】
キセノンランプ11は、所定の発光スペクトルを有するキセノン光を照射する。本実施形態ではキセノンランプ11は、紙面奥行方向(y方向)に長さを有する棒状となっている。キセノンランプ11の数は1本であってもよいし、複数本であってもよい。
【0027】
キセノンエアマスフィルタ13は、透過させたキセノンランプ11からの光のスペクトルを基準太陽光のスペクトル分布に近くするようスペクトルを調整する光学フィルタである。キセノンエアマスフィルタ13は、キセノンランプ11と波長選択ミラー15との間に配置され、キセノンランプ11から出射された光を透過する。キセノンエアマスフィルタ13は、ガラス基板上に光学多層膜を形成したものである。キセノンエアマスフィルタ13は、波長に応じて変化する透過率を有し、透過する光のスペクトルを少なくとも部分的に基準太陽光のスペクトルに近づける。
【0028】
ハロゲンランプ12は、所定の発光スペクトルを有するハロゲン光を照射する。本実施形態では、ハロゲンランプ12は紙面奥行方向(y方向)に長さを有する棒状となっている。ハロゲンランプ12の数は1本であってもよいし、複数本であってもよい。
【0029】
ハロゲンエアマスフィルタ14は、透過させたハロゲンランプ12からの光のスペクトルを基準太陽光のスペクトル分布に近くするようスペクトルを調整する光学フィルタである。ハロゲンエアマスフィルタ14は、ハロゲンランプ12と波長選択ミラー15との間に配置され、ハロゲンランプ12から出射された光を透過する。ハロゲンエアマスフィルタ14は、ガラス基板上に光学多層膜を形成したものである。ハロゲンエアマスフィルタ14は、波長に応じて変化する透過率を有し、透過する光のスペクトルを少なくとも部分的に基準太陽光のスペクトルに近づける。ハロゲンエアマスフィルタ14は、通常エアマスフィルタ(スペクトル調整フィルタ)と称される。
【0030】
このようにして、キセノンランプ11からの光とハロゲンランプ12からの光とが、それぞれ波長選択ミラー15に入射する。なお、キセノンランプ11からの光の光軸とハロゲンランプ12からの光の光軸とは垂直である。
【0031】
波長選択ミラー15は、所定の境界波長より短波長側の光を反射し、境界波長より長波長側の光を透過させる部材である。板状の波長選択ミラー15は、ハロゲンエアマスフィルタ14を透過した光の光軸に対して入射面が45度傾けられて配置されている。また、波長選択ミラー15は、キセノンエアマスフィルタ13を通過した光の光軸に対しても入射面が45度傾けられて配置されている。
【0032】
これにより、キセノンエアマスフィルタ13を透過したキセノン光は、波長選択ミラー15に向かう。その結果、キセノン光の短波長側の光が、波長選択ミラー15で反射され、導光板20の端面へ入射する。一方、ハロゲンエアマスフィルタ14を通過したハロゲン光は、波長選択ミラー15に入射される。波長選択ミラー15は、ハロゲンエアマスフィルタ14から出射されたハロゲン光の長波長側を透過させて、キセノン光と同様に、導光板20の端面へ入射させる。キセノンランプ11、ハロゲンランプ12から導光板20に入射された擬似太陽光は、導光板20の光取り出し部材21などにより、太陽電池等の被測定物70が設置された照射面へ照射される。
【0033】
なお、例えば、700nm以上の波長の光をハロゲンランプ12の光で使用し、キセノンランプ11の光を波長700nm未満で使用するとする。この場合、波長選択ミラー15の反射と透過との境界波長は波長700nmである。つまり、波長選択ミラー15は、波長700nmより短波長の光を反射させ、700nm以上の長波長の光を透過する特性を持っている。これにより、擬似太陽光に必要な波長の光のみが、波長選択ミラー15により選択される。そして、選択された光が合成され、擬似太陽光として出射される。なお、波長選択ミラー15が反射または透過させる光の境界波長は、任意に設定すればよい。ただし、キセノンランプ11の発光スペクトルの輝線成分を低減するために、600〜700nmの範囲で選択することが好ましい。さらに、波長選択ミラー15としては、波長依存性のある鏡またはフィルタを用いることができる。例えば、波長選択ミラー15として、コールドミラー、ホットミラー等を用いることができる。
【0034】
このように、波長選択ミラー15は、ハロゲンランプ12の出射光に含まれる擬似太陽光の合成に必要な長波長成分の光と、キセノンランプ11の出射光に含まれる擬似太陽光の合成に必要な短波長成分の光とを抽出して、擬似太陽光を生成する。この際、スペクトル制御されていないハロゲンランプ12の短波長成分の光が除かれ、同様に、スペクトル制御されていないキセノンランプ11の長波長成分の光が除かれることになる。従って、擬似太陽光の発光スペクトルを基準太陽光の発光スペクトルに、より近似させることが可能となる。
【0035】
本実施形態の擬似太陽光照射装置100は、擬似太陽光Sを大面積に照射できる構成となっている。図4は、擬似太陽光照射装置100の上面図である。図4に示すように、擬似太陽光照射装置100では、導光板20aと光源(キセノンランプ11,ハロゲンランプ12)が複数並んだ構成となっているため、大面積の照射面を確保することができる。
【0036】
なお、図4においては、紙面の都合上、同一方向からキセノン光とハロゲン光とが別々に導光板20a,20bに照射されるようになっている。しかし、上述したように、キセノンランプ11とハロゲンランプ12とは立体的に配置されており、キセノンランプ11からの光の光軸とハロゲンランプ12からの光の光軸とは垂直である。そして、キセノン光およびハロゲン光から、波長選択ミラー15で選択された光が合成され擬似太陽光として、導光板20a,20bに照射される(図2参照)。つまり、異なる種類の光源(キセノンランプ11,ハロゲンランプ12)から合成された擬似太陽光が、導光板20a,20bの同じ位置に入射されるのであって、光源の照射位置が導光板20a,20bの平面内で異なる場所にあるのではない。なお、図4では、2枚の導光板20a,20bが図示されているが、実際には照射面積に応じて、n枚(nは自然数)導光板20が配置されている。これにより、擬似太陽光を大面積の照射面に照射することができる。
【0037】
(擬似太陽光照射装置100における光源の出力調整)
擬似太陽光照射装置100では、照射面内で均一な擬似太陽光Sを、長期間安定して照射することが好ましい。そこで、擬似太陽光照射装置100は、光源部10(キセノンランプ11,ハロゲンランプ12)の出力調整に関する構成(照度調整部)を備えている。図1は、擬似太陽光照射装置100における照度調整に関する要部構成を示すブロック図である。図3は、擬似太陽光照射装置100において、照射面に基準セルが配置された状態を示す模式図である。
【0038】
図3に示すように、擬似太陽光照射装置100は、光源の出力調整に用いる基準セル72を備えている。基準セル72は、ステージ71に保持されている。ステージ71は、任意の方向(xyzの各方向)に移動できるようになっている。図3に示すように、ステージ71は、光源の出力調整時には、図中破線で示す擬似太陽光Sの照射面と、基準セル72の受光面72aとが一致するように高さ調整する。さらに、例えば、基準セル72は、図中の位置A,位置B,位置C,位置Dのように、x軸方向にも移動できるようになっている。また、図4に示すように、基準セル72は任意の導光板20a,20b上の任意の場所(位置A1〜D1,A2〜D2・・・)に移動できるようになっている。
【0039】
基準セル72は、光源(キセノンランプ11,ハロゲンランプ12)の出力調整用の被測定物である。基準セル72に照射される照度Eと、この時の基準セル72の短絡電流値(Isc)とは相関関係にある。従って、基準セル72の短絡電流値が、特定の短絡電流値となるように調整すれば、特定の照度となるように光源の照度(出力)が調整されることになる。
【0040】
具体的には、図1に示すように、擬似太陽光照射装置100は、光源の照度を調整するため照度調整部として、照度制御部30、照度測定部40、記憶部50、解析部60を備えている。照度制御部30は、光源部10に制御信号を送信し、キセノンランプ11およびハロゲンランプ12の点灯状態を制御する。照度制御部30は、例えば、図示しない電源部から、光源部10のキセノンランプ11およびハロゲンランプ12に供給される電力を制御する。照度測定部40は、基準セル72の照度を測定する。記憶部50は、照度測定部40で測定された照度値を記憶する。解析部60は、照度測定部40で測定された照度値と、記憶部50に記憶された照度値とに基づいて、光源の照度調整のために必要な処理を解析する。解析部60は、演算部61と評価部62とを備えている。演算部61は、照度測定部40で測定された照度値と、記憶部50に記憶された照度値との差分を算出する。評価部62は、演算部61での算出結果に基づいて、照度調整の要否を評価し、評価結果を照度制御部30に出力する。照度制御部30は、評価部62からの入力データに基づいて、光源部10のキセノンランプ11およびハロゲンランプ12に供給される電力を制御する。以下、光源の照度調整について詳細に説明する。
【0041】
(光源交換前の処理)
まず、図5〜図7に基づいて、光源交換前の処理について説明する。図5は、擬似太陽光照射装置100において、個別に光源の照度を確認するためのフローチャートである。つまり、図5は、各キセノンランプ11個々の照度、または、各ハロゲンランプ12の個々の照度を確認するためのフローチャートである。図6は、擬似太陽光照射装置100において、同一種類の光源ごとの照度を確認するためのフローチャートである。つまり、ランプ単位(全てのキセノンランプ11の照度、または、全てのハロゲンランプ12の照度)を確認するためのフローチャートである。図7は、全ての光源の照度を確認するためのフローチャートである。つまり、全てのキセノンランプ11の照度+全てのハロゲンランプ12の照度を確認するためのフローチャートである。
【0042】
具体的には、まず、図5〜図7に示す処理に従って、光源交換前の照度分布が、コンピュータによる自動処理により、記憶部50に記憶される。ここで、光源交換前とは、必ずしもキセノンランプ11またはハロゲンランプ12の交換の直前である必要はない。例えば、擬似太陽光照射装置100の立ち上げ調整後であってもよい。擬似太陽光照射装置100の立ち上げ直後は、最も性能が出ている状態の一例であるため好ましい。また、例えば、分光放射照度計などを用いて、擬似太陽光のスペクトルが調整された状態や、規格によって設定精度が定められているワーキングモジュールで、1Sun相当の照度に調整された状態も、最も性能がでている状態といえるため望ましい。
【0043】
このような擬似太陽光照射装置100の性能が高い状態において、個別のランプについて基準照度値を測定し記憶部50に記憶する。具体的には、図5に示すように、まず、個別ランプの照度確認が開始されると、ランプ番号「N=0」が入力される(S11)。次に、1番目のランプ(キセノンランプ11の1つ、または、ハロゲンランプ12の1つ)についての照度を測定する処理に進む(S12)。次に、1番目のランプに対応する場所に、基準セル72を移動させてランプを点灯する(S13)。次に、基準セル72の照度値Erを測定し、測定結果を記憶部50に記憶する(S14)。次に、測定したランプが最後か(全てのランプについて基準セル72の照度値を測定したか)を判定する(S15)。測定するランプが残っていれば、S12〜S15の処理を最後のランプまで繰り返し、個別のランプについての照度確認処理を終了する。このように、個別ランプの照度確認処理は、キセノンランプ11またはハロゲンランプ12をそれぞれ個別に順に点灯させ、各ランプに対応する測定場所での個々に照度を測定し記憶する。例えば、キセノンランプ11およびハロゲンランプ12の個別のランプにつき、各1箇所の照度を測定する場合、ランプの数だけの照度値が得られる。なお、ここでの個別のランプとは、ハロゲンランプ12やキセノンランプ11といった種類を問わず、擬似太陽光照射装置100に搭載される全てのランプ1つ1つを示す。さらに、照度測定の部位である測定場所は、1箇所である必要はなく、2箇所以上でも構わない。また、測定場所とは、そのランプから照射される照度を適切に測定できる場所であればよい。このようにして、個別のランプについて基準となる照度値が測定される。
【0044】
次に、ランプの種類ごとに(ランプの種類単位で)基準照度値を測定し、記憶部50に記憶する。具体的には、図6に示すように、まず、同一種類ランプの照度確認が開始されると、ランプ番号「N=0」が入力され(S21)。次に、1番目のランプ(キセノンランプ11、または、ハロゲンランプ12)についての照度を測定する処理に進む(S22)。次に、照度測定の位置「P=0」が入力され(S23)、キセノンランプ11またはハロゲンランプ12のP番目の位置に基準セル72を移動させる(S24)。次に、N番目の種類のランプのみ一斉に点灯させた状態で、複数の測定場所の照度値Erを測定する(S25)。ここで複数の測定場所とは、有効照射面を均等に照度取得できるような箇所が好ましい。例えば、有効照射面の中心1点と、4隅の4点の合計5点であることが好ましい。1つの測定場所での照度測定が完了したら、照度測定の位置が最後かどうかを判定する(S26)。測定場所が残っていれば、次の位置(P+1)について、S24〜S26の処理を行い、全ての照度測定の位置で照度の測定が終わるまで、S24〜S26の処理を繰り返す。一方、照度測定の位置が最後であれば、全種類のランプの照度値を測定したかを判定する(S27)。照度値を測定していない種類のランプが残っていれば、照度値を測定していないランプについてS21〜S27の処理を行う(S29)。このようにして、同一種類のランプについて基準となる照度値が測定される。
【0045】
最後に、全てのランプ点灯時の基準照度値を測定し、記憶部50に記憶する。具体的には、図7に示すように、全てのランプの照度確認が開始されると、照度測定の位置「P=0」が入力され(S31)、P番目の位置に基準セル72を移動させる(S32)。次に、全てのランプを一斉に点灯させた状態で、複数の測定場所の照度値Erを測定する(S33)。ここでの複数の測定場所とは、図6と同様に、有効照射面を均等に照度取得できるような箇所が好ましい。以上の手順で、ランプ交換前の有効照射面での照度分布の情報が得られるので、この値を目標値として保存し、ランプ交換後は目標値を目指してランプ出力の調整を自動で行う。1つの測定場所での照度測定が完了したら、照度測定の位置が最後かどうかを判定する(S34)。測定場所が残っていれば、次の位置(P+1)について、S32〜S33の処理を行い(S35)、全ての照度測定の位置で照度の測定が終わるまで、S32〜S33の処理を繰り返す。このようにして、全てのランプ点灯時の基準となる照度値が測定される。
【0046】
以上のように、光源交換前には、(1)個々のキセノンランプ11および個々のハロゲンランプ12の出力調整を自動処理するための基準照度値(図5)、(2)同一種類の光源のムラに着目して出力調整を自動処理するための基準照度値(図6)、(3)擬似太陽光Sの短波長(キセノンランプ11)と長波長(ハロゲンランプ12)のバランスに着目して、出力調整を自動処理するための基準照度値(図7)が、記憶部50に保存される。
【0047】
(光源交換後の処理)
次に、図8〜図13に基づいて、光源交換後の処理について説明する。図8は、擬似太陽光照射装置100において、個別にランプの照度を調整するフローチャートである。図9は、擬似太陽光照射装置100において、個別にランプの照度を調整した後の状態を示すグラフである。図10は、擬似太陽光照射装置100において、同一種類のランプごとに照度を調整するフローチャートである。図11は、擬似太陽光照射装置100において、同一種類のランプの照度を調整した後の状態を示すグラフである。図12は、擬似太陽光照射装置100において、全てのランプの照度を調整するフローチャート図である。図13は、擬似太陽光照射装置100において、全てのランプの照度を調整した後の状態を示すグラフである。
【0048】
ランプ交換後には、図5〜図7の各フローチャートに従って測定された光源交換前の照度値(照度分布)となるように、図8,図10,図12の各フローチャートに従って測定される照度値(照度分布)が調整される。
【0049】
具体的には、まず、図8に示すように、個別のランプについて照度値を測定し、出力を調整する。図8におけるS41〜S44までは、図5で説明したS11〜S14と同様である。すなわち、キセノンランプ11またはハロゲンランプ12をそれぞれ個別に順に点灯させ、各ランプに対応する測定場所(図5のフローチャートで測定した測定場所)に基準セル72を移動させて基準セル72の照度値Erを測定する。次に、この照度値Erと、目標照度値Etとの差分照度(ΔE)を演算部61で演算する。目標照度値Etは、図5で測定した照度値Erであってもよいし、図5で測定した照度値Erの許容範囲内の値であってもよい。次に、差分照度(ΔE)が、許容範囲か否かを評価部62で判定する(S46)。差分照度(ΔE)が許容範囲でなければ、ランプ出力を再調整し(S47)、許容範囲になるように(つまり目標照度値となるように)S44〜S46を繰り返す。なお、ランプ出力の調整方法については後述する。一方、差分照度(ΔE)が許容範囲であれば、測定したランプが最後か(全てのランプについて基準セル72の照度値を測定したか)を評価部62で判定する(S48)。測定するランプが残っていれば、S42〜S48の処理を最後のランプまで繰り返し、個別のランプについての照度調整処理を終了する。図9は、図8のような照度調整処理によって、ハロゲンランプ12を個別に調整した結果を示している。図9では、図4に示すハロゲンランプ12(Ha(L1),Ha(L2),Ha(R1),Ha(R2))の例を示している。図9に示すように、ハロゲンランプ12を順に個別に調整することで、すべてのハロゲンランプ12の照度が調整許容範囲に調整される。
【0050】
次に、図10に示すように、ランプの種類ごとに(ランプの種類単位で)照度値を測定し、出力調整する。図10におけるS51〜S55までは、図6で説明したS21〜S25と同様である。すなわち、全てのキセノンランプ11、または、全てのハロゲンランプ12を点灯させ、測定場所(図6のフローチャートで測定した測定場所)に基準セル72を移動させて、同一種類のランプを一斉点灯して基準セル72の照度値Erを測定する。次に、この照度値Erと、目標照度値Etとの差分照度(ΔE)を演算部61で演算する。目標照度値Etは、図6で測定した照度値Erであってもよいし、図6で測定した照度値Erの許容範囲内の値であってもよい。なお、S54においては、ランプ出力の調整回数「I=0」が入力される。次に、差分照度(ΔE)が、許容範囲か否かを評価部62で判定する(S57)。差分照度(ΔE)が許容範囲でなければ、ランプ出力を再調整し、調整回数が加算される(I=I+1)(S58)。そして、許容範囲になるように(つまり目標照度値となるように)S55〜S58を繰り返す。なお、ランプ出力の調整方法については後述する。一方、差分照度(ΔE)が許容範囲であれば、ランプの出力調整回数の有無を判定する(S59)。ランプの出力調整を1度でもしていれば(I≠0)、再度P番目の位置について、S54〜S59の処理を行う。一方、ランプの出力調整を1度もしていなければ(I=0)、照度測定の位置が最後かどうかを判定する(S61)。測定場所が残っていれば、次の位置(P+1)について(S62)、S54〜S61の処理を行い、全ての照度測定の位置で照度の測定が終わるまで、S54〜S61の処理を繰り返す。一方、照度測定の位置が最後であれば、全種類のランプの照度値を測定したかを判定する(S63)。照度値を測定していない種類のランプが残っていれば、照度値を測定していないランプについてS52〜S63の処理を繰り返し(S64)、同一種類ランプの調整を終了する。図11は、図10のような照度調整処理によって、全てのハロゲンランプ12を調整した結果を示している。図11では、図4に示すハロゲンランプ12(Ha(L1),Ha(L2),Ha(R1),Ha(R2))の位置A〜位置Dに対応する照度調整の例を示している。図11に示すように、位置Aでは光源交換後のハロゲンランプ12の照度値が、調整許容範囲を超えていたが、照度調整によって調整許容範囲に収まっている。これにより、同一種類のランプについて、各位置において照度ムラが発生するのを防ぐことができる。
【0051】
なお、S58において、1箇所でもランプ出力を再調整した場合(照度制御部のランプ制御値を調整した場合)、その測定場所のランプ出力を再調整後に、測定場所のランプ出力を最初から確認しなおすことが好ましい。これは、一旦調整できた測定場所においても、再度調整が必要となる場合もあるためである。このため、S59では、ランプの出力調整回数の有無を判定している。このように、同一種類のランプを調整した後は、図11のようにすべての場所において、調整許容範囲に入った状態になる。
【0052】
最後に、図12に示すように、全てのランプ点灯時の照度値を測定し、出力調整する。図12におけるS71〜S73までは、図7で説明したS31〜S33と同様である。すなわち、全てのキセノンランプ11および全てのハロゲンランプ12を点灯させ、測定場所(図7のフローチャートで測定した場所)に基準セル72を移動させて、照度値Erを測定する。次に、この照度値Erと、目標照度値Etとの差分照度(ΔE)を演算部61で演算する。目標照度値Etは、図7で測定した照度値Erであってもよいし、図7で測定した照度値Erの許容範囲内の値であってもよい。なお、S72においては、図10のS54と同様に、ランプ出力の調整回数「I=0」が入力される。次に、差分照度(ΔE)が、許容範囲か否かを評価部62で判定する(S75)。差分照度(ΔE)が許容範囲でなければ、ランプ出力を再調整し、調整回数が加算される(I=I+1)(S76)。そして、許容範囲になるように(つまり目標照度値となるように)S73〜S76を繰り返す。なお、ランプ出力の調整方法については後述する。一方、差分照度(ΔE)が許容範囲であれば、ランプの出力調整回数の有無を判定する(S77)。ランプの出力調整を1度でもしていれば(I≠0)、再度P番目の位置について、S72〜S77の処理を行う。一方、ランプの出力調整を1度もしていなければ(I=0)、照度測定の位置が最後かどうかを判定する(S78)。測定場所が残っていれば、次の位置(P+1)について(S80)、S72〜S78の処理を行い、全ての照度測定の位置で照度の測定が終わるまで、S72〜S78の処理を繰り返す。一方、照度測定の位置が最後であれば、全てのランプの調整を終了する。図13は、図12のような照度調整処理によって、全てのハロゲンランプ12を調整した結果を示している。図13では、図4に示すキセノンランプ11(Ha(L1,L2,L3,L4)、ハロゲンランプ12(Ha(L1,L2,R1,R2))の位置A〜位置Dに対応する照度調整の例を示している。図11に示すように、全ての照度測定位置において、調整許容範囲に収まっている。これにより、全てのランプについて、各位置において照度ムラが発生するのを防ぐことができる。
【0053】
なお、S76において、1箇所でもランプ出力を再調整した場合(照度制御部のランプ制御値を調整した場合)、その測定場所のランプ出力を再調整後に、測定場所のランプ出力を最初から確認しなおすことが好ましい。これは、一旦調整できた測定場所においても、再度調整が必要となる場合もあるためである。このため、S77では、ランプの出力調整回数の有無を判定している。このように、全てのランプを点灯させて調整した後は、図13のようにすべての位置において、調整許容範囲に入った状態になる。このように、全てのランプを調整した後は、図13に示したように、すべての場所において調整許容範囲に調整できる。
【0054】
(光源出力調整について)
次に図8〜図13(S47、S58,S76)におけるランプ出力の再調整処理について説明する。図14は、擬似太陽光照射装置100におけるランプ出力の再調整処理を説明するための図である。図14に示すように、ランプ出力の調整は、差分照度(ΔE)が、調整許容範囲内に収まるまで繰り返される。具体的には、まず1回目として、照度制御部30に格納された初期値のランプ制御値でランプを点灯する。そして、基準セル72の短絡電流値、つまり照度値を測定する。ここで、初期値のランプ制御値とは、目標照度値をオーバーしないような比較的低い制御値であることが好ましい。これは、ランプ交換後に極度に大きい制御値でランプを点灯させてしまうと、ランプの寿命を縮めてしまうためである。1回目の測定照度値と目標照度値との差分照度ΔEを求め、差分照度ΔEが正の場合は1回目の制御値を増加させ、負の場合は、1回目の制御値を減少させる。
【0055】
次に、制御値の変更後、2回目として、上記加減した制御値によりランプを点灯させ、照度値を測定する。このようにして、差分照度ΔEが調整許容範囲に入るまで、測定・調整・評価(解析)を繰り返す。特に、3回目以降の調整に関しては、1回目の制御値と照度、2回目の制御値と照度の関係から、制御値と照度の傾きを求め、3回目の調整を行う方が望ましい。
【0056】
なお、調整許容範囲は小さいほどランプ調整精度は上がるが、極端に小さいと、調整するまでに時間を要してしまう。よって、事前にランプ制御値の最小分解能に対する照度調整可能幅を把握しておき、調整許容範囲を決めることが好ましい。
【0057】
(本実施形態の作用効果)
以上のように、本実施形態の擬似太陽光照射装置100では、記憶部50は、(a)照度制御部30が、キセノンランプ11およびハロゲンランプ12をそれぞれ個別に点灯させたときに、照度測定部40によって測定された照度値と、(b)照度制御部30が、キセノンランプ11またはハロゲンランプ12の一方を全て点灯させたときに、照度測定部40によって測定された照度値と、(c)照度制御部30が、キセノンランプ11およびハロゲンランプ12の両方を全て点灯させたときに、照度測定部40によって測定された照度値とを記憶しており、照度制御部30は、上記(a)〜(c)における各照度値となるように、キセノンランプ11およびハロゲンランプ12の照度を調整することを特徴としている。
【0058】
上記の構成によれば、記憶部50に保存された(a)〜(c)の照度値を基準として、キセノンランプ11およびハロゲンランプ12の照度が調整される。すなわち、(a)の照度値は、キセノンランプ11およびハロゲンランプ12における個々の光源の出力調整を行うための照度値である。(b)の照度値は、同一種類の光源(キセノンランプ11またはハロゲンランプ12)におけるムラに着目して、出力調整を行うための照度値である。(c)の照度値は、擬似太陽光の短波長と長波長のバランスに着目して、出力調整を行うための照度値である。従って、キセノンランプ11またはハロゲンランプ12を交換した後であっても、各光源の出力を的確に調整し、光源交換前の照度分布を再現することできる。
【0059】
また、擬似太陽光照射装置100では、(a)〜(c)の照度値が、照度調整用の基準セル72を擬似太陽光Sの照射面と同じ高さに保持した状態で測定されている。従って、光源交換前後で、擬似太陽光の照度分布を均一にすることができる。
【0060】
すなわち、図5〜7,図8,10,12の各フローチャートに示した手順で処理することで、ランプ交換による機差により、ランプの照度分布に変化があったとしても、ランプ交換前の照度となるように、ランプ制御値を調整することができる。つまり、光源を交換した後であっても、光源の出力を的確に調整し、光源交換前の照度分布を再現することまた、基準セルは、自動ステージに設置されているので、図5〜7、図8,10,12の各フローチャートの処理は、全て自動で(コンピュータ等を用いて)行うことができる。しかも、擬似太陽光照射装置100では、光源交換後に、基準セル72および照度測定部40を用いて、交換前に記憶部50に保存された照度値となるように個々の光源の出力を自動で調整し、交換前に記憶部50に保存した照度値となるように同一種類の光源の出力を自動で調整し、さらに交換前に保存した照度値となるように、全ての光源の出力を自動で調整する。これにより、複数種類の複数個の光源を搭載した高精度な擬似太陽光照射装置において、光源を交換した後であっても、光源の出力を的確に調整し、光源交換前の照度分布を再現することができる。すなわち、光源を交換することで、光源の照度分布に機差が生じたとしても、光源交換前の照度分布に戻すことができる。
【0061】
なお、本発明は、以下のように表現することもできる。すなわち、本発明は、擬似太陽光を照射面に照射する擬似太陽光照射装置であって、
短波長の光を照射するための第1の光源と、
長波長の光を照射するための第2の光源と、
前記第1の光源における所定の境界波長よりも短波長側と、前記第2の光源における前記境界波長よりも長波長側とを選択して出力する光選択部(波長選択ミラー15)と、
前記光選択手段から出射された光を前記照射面に照射する光照射部(導光板20)と、
前記光照射手段によって照射された光の照度を測定する照度測定部40とを備えており、前記照度測定手段を用いて、
各光源を個別に点灯し、測定するステップ(S1)、
S1の測定データを保存するステップ(S2)、
同一種類ごとに光源を一斉に点灯し、測定するステップ(S3)、
S3の測定データを保存するステップ(S4)、
全ての光源を一斉に点灯し、測定するステップ(S5)、
S5の測定データを保存するステップ(S6)
を光源交換前に行い、光源交換後に、
各光源を個別に点灯し、S2の保存データと同じ出力となるように自動調整するステップ(S7)、
同一種類ごとに光源を一斉に点灯し、S4の保存データと同じ出力となるように自動調整するステップ(S8)、
全ての光源を一斉に点灯し、S6の保存データと同じ出力となるように自動調整するステップ(S9)、を有することを特徴としている。
【0062】
前記の構成によれば、照度測定手段によって、S1〜S6のステップを光源交換前に行うことで、必要最低限の工数で光源出力の状態を記録することができる。具体的には、S1とS2のステップで個々の出力調整を自動で行うための照度値を保存し、S3とS4のステップで擬似太陽光照射装置の照射面における同一種類の光源のムラに着目して、出力調整を自動で行うための照度値を保存し、さらにS5とS6のステップで擬似太陽光の短波長(第1の光源)と長波長(第2の光源)のバランスに着目して、出力調整を自動で行うための照度値を保存する。
【0063】
さらに光源交換後S7〜S9のステップで、照度測定手段を用いて、自動で出力調整する。具体的には、S7のステップでは、S1とS2のステップで保存した照度値となるように個々の光源の出力を自動で調整し、S8のステップでは、S3とS4のステップで保存した照度値となるように同一種類の光源の出力を自動で調整し、さらにS9のステップで、S5とS6のステップで保存した照度値となるように、全ての光源の出力を自動で調整する。
【0064】
なお、上記S7〜S9のステップにおける自動調整とは、S1〜S6のステップで測定し保存された照度値Tと、S7〜9のステップで測定した照度値Mの差分(Δ=|T−M|)が最小となるように光源の出力の調整と照度値の測定を繰り返し、出力を自動で個別に調整することである。
【0065】
以上のことから、S7のステップで個別の出力を自動で調整し、S8のステップで同一種類の光源ごとの出力を自動で調整し、S9のステップで異種の光源とのバランスを自動で調整する。よって、光源を交換しても、光源交換前の照度分布を再現できる効果を奏する。
【0066】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、太陽電池の検査、測定、および実験に利用できる。また、化粧品、塗料、接着剤、各種材料の退色および耐光試験にも利用できる。さらに、光触媒の検査および実験、ならびに自然光を必要とするその他の各種実験にも利用できる。
【符号の説明】
【0068】
11 キセノンランプ(第1の光源)
12 ハロゲンランプ(第2の光源)
15 波長選択ミラー(光選択部)
30 照度制御部
40 照度測定部
50 記憶部
60 解析部
71 ステージ
72 基準セル(基準被照射体)
100 擬似太陽光照射装置
S 擬似太陽光
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光源および第2の光源と、
第1の光源からの光のうち所定波長よりも長波長側の光と、第2の光源からの光のうち前記所定波長よりも短波長側の光とを選択し、選択された光を選択して混合する光選択部とを備え、上記光選択部によって選択された光を混合して擬似太陽光として照射する擬似太陽光照射装置であって、
第1の光源および第2の光源の照度を調整する照度調整部を備え、
上記照度調整部は、
上記光選択部から照射された擬似太陽光の照度値を測定する照度測定部と、
上記照度測定部で測定された照度値を記憶する記憶部と、
上記照度測定部で測定された照度値および上記記憶部に記憶された照度値とを解析する解析部と、
上記解析部の解析結果に基づいて、第1の光源および第2の光源の点灯状態および照度を制御する照度制御部とを備え、
上記記憶部は、(a)上記照度制御部が、第1の光源および第2の光源をそれぞれ個別に点灯させたときに、上記照度測定部によって測定された照度値と、(b)上記照度制御部が、第1の光源または第2の光源の一方を全て点灯させたときに、上記照度測定部によって測定された照度値と、(c)上記照度制御部が、第1の光源および第2の光源の両方を全て点灯させたときに、上記照度測定部によって測定された照度値とを記憶しており、
上記照度制御部は、上記(a)〜(c)における各照度値となるように、第1の光源および第2の光源の照度を調整することを特徴とする擬似太陽光照射装置。
【請求項2】
上記擬似太陽光が照射され、上記(a)〜(c)における各照度値を測定するための基準被照射体と、上記基準被照射体を保持するステージとを備え、
上記(a)〜(c)における各照度値は、上記基準被照射体が上記擬似太陽光の照射面と同じ高さに保持されたときに測定された照度値であることを特徴とする擬似太陽光照射装置。
【請求項3】
第1の光源および第2の光源と、
第1の光源からの光のうち所定波長よりも長波長側の光と、第2の光源からの光のうち前記所定波長よりも短波長側の光とを選択し、選択された光を選択して混合する光選択部とを備え、上記光選択部によって選択された光を混合して擬似太陽光として照射する擬似太陽光照射装置における光源の出力調整方法であって、
第1の光源および第2の光源の照度を調整する照度調整ステップを含み、
上記照度調整ステップは、
上記光選択部から照射された擬似太陽光の照度値を測定する照度測定ステップと、
上記照度測定ステップで測定された照度値を記憶する記憶ステップと、
上記照度測定ステップで測定された照度値および上記記憶ステップで記憶された照度値とを解析する解析ステップと、
上記解析ステップの解析結果に基づいて、第1の光源および第2の光源の点灯状態および照度を制御する照度制御ステップとを備え、
上記記憶ステップは、(a)上記照度制御ステップにおいて、第1の光源および第2の光源をそれぞれ個別に点灯させたときに、上記照度測定ステップによって測定された照度値と、(b)上記照度制御ステップにおいて、第1の光源または第2の光源の一方を全て点灯させたときに、上記照度測定ステップによって測定された照度値と、(c)上記照度制御ステップにおいて、第1の光源および第2の光源の両方を全て点灯させたときに、上記照度測定ステップによって測定された照度値とを記憶し、
上記照度制御ステップは、上記(a)〜(c)における各照度値となるように、第1の光源および第2の光源の照度を調整することを特徴とする擬似太陽光照射装置における光源の出力調整方法。
【請求項1】
第1の光源および第2の光源と、
第1の光源からの光のうち所定波長よりも長波長側の光と、第2の光源からの光のうち前記所定波長よりも短波長側の光とを選択し、選択された光を選択して混合する光選択部とを備え、上記光選択部によって選択された光を混合して擬似太陽光として照射する擬似太陽光照射装置であって、
第1の光源および第2の光源の照度を調整する照度調整部を備え、
上記照度調整部は、
上記光選択部から照射された擬似太陽光の照度値を測定する照度測定部と、
上記照度測定部で測定された照度値を記憶する記憶部と、
上記照度測定部で測定された照度値および上記記憶部に記憶された照度値とを解析する解析部と、
上記解析部の解析結果に基づいて、第1の光源および第2の光源の点灯状態および照度を制御する照度制御部とを備え、
上記記憶部は、(a)上記照度制御部が、第1の光源および第2の光源をそれぞれ個別に点灯させたときに、上記照度測定部によって測定された照度値と、(b)上記照度制御部が、第1の光源または第2の光源の一方を全て点灯させたときに、上記照度測定部によって測定された照度値と、(c)上記照度制御部が、第1の光源および第2の光源の両方を全て点灯させたときに、上記照度測定部によって測定された照度値とを記憶しており、
上記照度制御部は、上記(a)〜(c)における各照度値となるように、第1の光源および第2の光源の照度を調整することを特徴とする擬似太陽光照射装置。
【請求項2】
上記擬似太陽光が照射され、上記(a)〜(c)における各照度値を測定するための基準被照射体と、上記基準被照射体を保持するステージとを備え、
上記(a)〜(c)における各照度値は、上記基準被照射体が上記擬似太陽光の照射面と同じ高さに保持されたときに測定された照度値であることを特徴とする擬似太陽光照射装置。
【請求項3】
第1の光源および第2の光源と、
第1の光源からの光のうち所定波長よりも長波長側の光と、第2の光源からの光のうち前記所定波長よりも短波長側の光とを選択し、選択された光を選択して混合する光選択部とを備え、上記光選択部によって選択された光を混合して擬似太陽光として照射する擬似太陽光照射装置における光源の出力調整方法であって、
第1の光源および第2の光源の照度を調整する照度調整ステップを含み、
上記照度調整ステップは、
上記光選択部から照射された擬似太陽光の照度値を測定する照度測定ステップと、
上記照度測定ステップで測定された照度値を記憶する記憶ステップと、
上記照度測定ステップで測定された照度値および上記記憶ステップで記憶された照度値とを解析する解析ステップと、
上記解析ステップの解析結果に基づいて、第1の光源および第2の光源の点灯状態および照度を制御する照度制御ステップとを備え、
上記記憶ステップは、(a)上記照度制御ステップにおいて、第1の光源および第2の光源をそれぞれ個別に点灯させたときに、上記照度測定ステップによって測定された照度値と、(b)上記照度制御ステップにおいて、第1の光源または第2の光源の一方を全て点灯させたときに、上記照度測定ステップによって測定された照度値と、(c)上記照度制御ステップにおいて、第1の光源および第2の光源の両方を全て点灯させたときに、上記照度測定ステップによって測定された照度値とを記憶し、
上記照度制御ステップは、上記(a)〜(c)における各照度値となるように、第1の光源および第2の光源の照度を調整することを特徴とする擬似太陽光照射装置における光源の出力調整方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−97929(P2013−97929A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237995(P2011−237995)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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