説明

擬似移動床の運転方法

【課題】擬似移動床の単位充填床の分離性能偏差による問題を解決し、高品質の分離効果を達成する擬似移動床の運転方法を提供する。
【解決手段】
擬似移動床の一組の供給−抜出口の作動開始から、次の組の供給−抜出口に切替る迄の間に次の3工程を行うが、循環工程毎に移動液量を個別値に調整し、均一な高品質流体を得る。
(1)原料流体供給口から原料流体を、脱着剤供給口から脱着剤を供給し、且つ非吸着質流体抜出口及び吸着質流体抜出口から床内を流下してきた液体を全量抜出す第1の供給−抜出し工程、
(2)原料流体供給口から原料流体を供給し、且つ吸着質流体抜出口から床内を流下してきた液体を吸着質流体として全量抜出すか、又は脱着剤供給口から脱着剤を供給し、且つ非吸着質流体抜出口から床内を流下してきた液体を非吸着質流体として全量抜出す第2の供給−抜出し工程、
(3)全ての供給口及び抜出口を閉じ床内の液体を下流方向に移動させる循環工程

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は擬似移動床の運転方法に関するものである。詳しくは、本発明は複数の単位充填床から構成される擬似移動床装置を用いて、単位充填床の吸着剤に対する親和性が異なった2種以上の成分を分離する際、各単位充填床の分離特性が同一でない場合でも、各単位充填床の出口から抜出される流体中の各成分を所望の濃度あるいは組成に維持し、分離性能良く実施することができる擬似移動床の運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
擬似移動床は、例えば、特公平7−46097号公報や特開2000−79301号公報に記載されている様に、典型的には4以上の複数の単位充填床が直列に接続され、その充填床を、基本的に液体が一方向に循環し得るように構成され、吸着剤が充填された充填床に、原料流体供給口、非吸着質分抜出口、脱着剤供給口、及び吸着質分抜出口からなる供給−抜出口の組を多数設けたものである。そして、充填床は、原料流体供給口と非吸着質分抜出口との間を占める吸着帯域、非吸着質分抜出口と脱着剤供給口との間を占める精製帯域、脱着剤供給口と吸着質分抜出口との間を占める脱着帯域、及び吸着質分抜出口と原料流体供給口との間を占める濃縮帯の4つの帯域に分けられている。
【0003】
擬似移動床の基本的な操作方法は、充填床内に多量の液体を循環させつつ、この循環流に原料流体及び脱着剤を供給し、かつこの循環流から、その一部を非吸着質分及び吸着質分として抜出し、吸着質及び非吸着質の充填床内における濃度分布の移動に応じて、供給−抜出口の組を順次下流のそれに切替える方法であり、いずれの時点でも供給量と抜出量とは同量であり、充填床内は液体で充満している。このような操作方法では、擬似移動床を構成する単位充填床と同数の複数回数の循環工程が実施されるが、その複数回数行われる循環工程の移動液量は、特に限定されておらず、基本的には同量の移動液量で実施されるのが通例である。事実、上記特許公報に記載された実施例でも移動液量は、同一値に設定され実施されている。
【0004】
擬似移動床における循環工程では、各単位充填床内の流体が移動して、流体中の構成成分と吸着剤との相互作用の特性の差、即ち、吸着剤に対する親和性の差異に従って所望する構成成分の濃度分布を構成し、次に行われる供給−抜出工程の所定の抜出位置まで濃度分布を移動することにより、濃度および成分組成に関する一定の均一性を有した流体を抜き出すことができるのである。これは、少なくとも4回行われる循環工程の操作条件としての移動液量を同一値としておけば、少なくとも4つの単位充填床の吸着剤の品質および充填状態が一定の均一性を有しているかぎり、所望する構成成分の濃度分布が、次の4回の抜出−供給工程が行われる所定の抜出位置まで移動していると言う原理に従って分離が行われるからである。
【0005】
複数回行われる循環工程において、移動液量を同一量で操作した場合に、目標の分離性能でもって所望成分の分離が行われるためには、各単位充填床に充填される吸着剤の性能および吸着剤の充填状態が分離対象とする所望成分に対して、ある許容範囲内で均一であることが必要である。しかしながら、実際には、各単位充填床に充填されている吸着剤の分離特性に関する品質がそれぞれ許容される範囲内であっても規格値に対して偏差を持っており、また、各単位充填床に充填されている吸着剤の充填量、非充填容積および充填密度等もそれぞれ許容される範囲内とは言え、多少の偏差が存することは避けられない。
【0006】
ところが、近年これら従来の擬似移動床法が医薬品の分離などを対象として、より高度で厳密な分離性能を求められるようになってきた。これは、擬似移動床における各単位充填床に関し、吸着剤の分離特性に関する品質の許容される規格値からの偏差および各単位充填床に充填されている吸着剤の充填量、非充填容積および充填密度の許容される範囲内の偏差がより少ないこと、即ち、高い分離性能を達成するための前提条件となる各単位充填床におけるこれらのより高い均一性が求められることを意味するのである。従って、所望の分離性能を達成するに必要な前提条件である吸着剤品質および充填状態に関する所定の均一性を実現することができなければ、少なくとも4つの循環工程における移動液量を同一値にする従来の操作方法では、次に行われる4つの供給−抜出工程の所定の抜出位置に移動する濃度分布における成分濃度および組成がそれぞれに許容される偏差から逸脱した成分濃度および組成を示すことになるため、所望するより高度で厳密な分離を達成することは不可能となるのである。
【0007】
一方、クロマト分離において、特定の溶質を含む試料流体を特定の吸着剤が充填された単位充填床に供給して溶質を吸着させ、引き続いて、特定の移動相液(脱離剤)で移動させると、その移動相の移動量に対して、移動相に含まれる特定の溶質の移動位置(もしくは溶離位置)は、吸着剤とその溶質との親和性により定まる。しかしながら、同一原料から製造された吸着剤においても、あるいは同一品質に製造された吸着剤においても、次の(1)吸着剤の品質及び(2)充填床の吸着剤の充填状態の各項目に示すような品質特性や充填状態に関する要因に偏差があれば、一定の移動相の移動相量に対して、その特定の溶質の移動位置(もしくは溶離位置)が変化することが知られている。
【0008】
(1)吸着剤の品質
a)吸着剤内部の空隙率
b)吸着剤内部のミクロポアーのサイズ分布
c)吸着剤内部を含めた比表面積
d)吸着剤内部の分離に関する官能機能
e)吸着剤粒度分布の均一性
f)吸着剤の平均粒度
(2)充填床の吸着剤充填状態
a)複数の単位充填床間の充填量
b)複数の単位充填床間の非充填部容積
c)複数の単位充填床間の充填密度(充填空隙率)
【0009】
上記項目(1)および項目(2)の各要因特性が許容される偏差内に入っていれば、少なくとも4回は同一移動液量で循環工程が行われる従来の擬似移動床においても、所望の分離性能が得られる。例えば、特公平7−46097号公報に記載の実施例−1においては、果糖−ブドウ糖の分離をCa形陽イオン交換樹脂(ダイヤイオンUBK555)が充填された4つの単位充填床からなる擬似移動床において、4回ある循環工程の移動液量の設定値を同一で操作することにより、果糖純度が93.8%以上および果糖回収率が95.5%以上の良好な分離が行われたことが示されている。
しかしながら、現実には、上記項目(1)および項目(2)の各要因特性には少なからず偏差が存在し、また長期間にわたり連続運転が行われるため、従来のように擬似移動床において、少なくとも4回は行われる循環工程の移動液量を同一設定値で行うと、次に行われる供給−抜出工程で抜き出される流体中の成分濃度および成分組成が許容範囲から逸脱する偏差が発生し、より高度で厳密な分離への適用が不可能となる。
【特許文献1】特公平7−46097号公報
【特許文献2】特開2000−79301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述した様に、吸着剤の品質に関する各要因の偏差を回避することは、実際の吸着剤の製造過程に起因して現実には避けがたく、また単位充填床の充填状態に関する要因の偏差を回避することも、実際の吸着剤の充填方法に起因して現実には避けがたい。そのため、より高度で精密な分離を従来の擬似移動床法に従って行うと、抜出口から抜出される少なくとも4つの吸着剤との親和性が強い吸着質成分に富む流体(以下、吸着質流体という)の濃度および成分組成、あるいは少なくとも4つの吸着剤との親和性が弱い非吸着質成分に富む流体(以下、非吸着質流体という)の濃度および成分組成が許容される範囲の偏差から逸脱する。
本発明は、このような従来の擬似移動床の操作方法において単位充填床の吸着剤の品質或いは充填状態の特性に関する偏差によって生じる問題を解決し、所望するより高度で厳密な分離を達成する擬似移動床の運転方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題の解決には、単位充填床の吸着剤を取り替える、あるいは吸着剤の充填をやり直す方法も考えられるが、実際的な方法とは言えない。
本発明者らは、擬似移動床における供給−抜出工程、循環工程における移動流体の組成、挙動等について鋭意検討した結果、少なくとも4回の循環工程における流体移動液量をそれぞれの単位充填床の特性(例えば、吸着剤の品質、充填状態等)に応じて、抜出口から抜出される吸着質流体或いは非吸着質流体のそれぞれの濃度および成分組成を観察し、それに応じて循環工程の移動液量を好適条件に個別に調整すれば、吸着剤の品質、充填状態等の偏差の個々の要因による影響を受けず、吸着質流体或いは非吸着質流体それぞれの抜出流体に生じていた濃度および成分組成の偏差をより少ない偏差に止められることを見出し、本発明を達成した。
【0012】
即ち、本発明の要旨は、
一方向に液体が循環し得るように構成されており、その液体の移動方向に沿って一組の原料流体供給口、非吸着質流体抜出口、脱着剤供給口及び吸着質流体抜出口がこの順序で設けられていて、全体が原料流体供給口と非吸着流体抜出口との間を占める吸着帯域、非吸着質流体抜出口と脱着剤供給口との間を占める精製帯域、脱着剤供給口と吸着質流体抜出口との間を占める脱着帯域、及び吸着質流体抜出口と原料流体供給口との間を占める濃縮帯域の4帯域に分割されており、且つ上記一組の供給口及び抜出口が、所定の操作時間経過後、順次下流にある他の一組の供給口及び抜出口に切替えられるように構成されている少なくとも4個の単位充填床を備えた擬似移動床を用いて原料流体中の成分の分離を行う方法であって、所定の操作時間内に、下記(1)供給−抜出し工程、及び(2)循環工程を行う擬似移動床の運転方法において、供給−抜出し工程から抜出される吸着質流体或いは非吸着質流体が所定の濃度又は組成を有するように、少なくとも4回の循環工程における移動液量を、各循環工程毎に個別値に調整することを特徴とする擬似移動床の運転方法に存する。
【0013】
(1)供給−抜出し工程:
脱着帯域から抜出される吸着質流体の一部を濃縮帯域に流入させ、濃縮帯域から抜出される流体を吸収帯域に流入させながら、原料流体供給口から原料流体を吸収帯域に、脱着剤供給口から脱着剤を脱着帯域に供給し、且つ吸着帯域から抜出される流体の少なくとも一部を非吸着質流体抜出口から、また脱着帯域から抜出される流体の一部を吸着質流体抜出口からそれぞれ抜出す、供給−抜出し工程
(2)循環工程:
全ての供給口及び抜出口から、流体の供給及び抜出しを行うことなく、充填床内の流体を下流方向に移動させる循環工程
【0014】
本発明の他の要旨は、一方向に液体が循環し得るように構成されており、その液体の移動方向に沿って一組の原料流体供給口、非吸着質流体抜出口、脱着剤供給口及び吸着質流体抜出口がこの順序で設けられていて、全体が原料流体供給口と非吸着質流体抜出口との間を占める吸着帯域、非吸着質流体抜出口と脱着剤供給口との間を占める精製帯域、脱着剤供給口と吸着質流体抜出口との間を占める脱着帯域、及び吸着質流体抜出口と原料流体供給口との間を占める濃縮帯域に分割されており、且つ上記一組の供給口及び抜出口が、所定の操作時間経過後、順次下流にある他の一組の供給口及び抜出口に切替えられるように構成されている少なくとも4個の単位充填床から成る擬似移動床を用いて原料流体中の成分の分離を行う方法であって、所定操作時間内に下記(1)〜(3)工程を行うことよりなる擬似移動床の運転方法において、(1)及び(2)工程から抜き出されるそれぞれの吸着質流体同士或いは非吸着質流体同士が所定の濃度又は組成を有するように、少なくとも4回の循環工程における移動液量を、各循環工程毎に個別値に調整することを特徴とする擬似移動床の運転方法に存する。
【0015】
(1)原料流体供給口から原料流体を、脱着剤供給口から脱着剤をそれぞれ供給し、且つ非吸着質流体抜出口及び吸着質流体抜出口から床内を流下してきた液体をそれぞれの流体として全量抜出す第1の供給−抜出し工程、
(2)原料流体供給口から原料流体を供給し、且つ吸着質流体抜出口から床内を流下してきた液体を吸着質流体として全量抜出すか、又は脱着剤供給口から脱着剤を供給し、且つ非吸着質流体抜出口から床内を流下してきた液体を非吸着質流体として全量抜出す第2の供給−抜出し工程、
(3)全ての供給口及び抜出口を閉鎖して、床内の液体を下流方向に移動させる循環工程
【発明の効果】
【0016】
本発明方法を用いれば、擬似移動床における各供給−抜出し工程から流出する流体の成分濃度および成分組成の品質の均一性をより優れたものとすることができるので、結果としてより高純度、より高回収率の分離を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明方法は、公知の擬似移動床の運転方法、例えば特公平7−46097号公報、或いは特開2000−347456号公報に記載されている運転方法において、より分離性能を向上させる改良方法である。
【0018】
本発明方法では、従来の擬似移動床の運転と同じく、供給−抜出口を一定時間毎に循環工程を挟んで、順次下流の供給−抜出口に切り替えるが、ある場所の供給−抜出口からの抜出−供給工程の操作が開始してから、単位充填床1つ下流の供給−抜出口からの抜出−供給工程の操作が開始するまでの間(所定の操作時間内)に、次の2工程、
(1)脱着帯域から流出する流体の一部を濃縮帯域に流入させ、濃縮帯域から流出する流体を吸着帯域に流入させながら、充填床に原料流体供給口から原料流体を、脱着剤流体供給口から脱着剤流体をそれぞれ供給し、且つ充填床からは非吸着質流体抜出口から吸着帯域から流出する流体の少なくとも一部を、吸着質流体抜出口から脱着帯域から流出する流体の一部をそれぞれ抜出す、供給−抜出し工程
(2)充填床への流体の供給及び充填床からの流体の抜出しを行うことなく、床内の流体を下流方向に移動させる循環工程、
【0019】
或いは、次の3工程、
(1)原料流体供給口から原料流体を、脱着剤供給口から脱着剤をそれぞれ供給し、且つ非吸着質流体抜出口及び吸着質流体抜出口から床内を流下してきた液体をそれぞれの流体として全量抜出す第1の供給−抜出し工程、
(2)原料流体供給口から原料流体を供給し、且つ吸着質流体抜出口から床内を流下してきた液体を吸着質流体として全量抜出すか、又は脱着剤供給口から脱着剤を供給し、且つ非吸着質流体抜出口から床内を流下してきた液体を非吸着質流体として全量抜出す第2の供給−抜出し工程、
(3)全ての供給口及び抜出口を閉鎖して、床内の液体を下流方向に移動させる循環工程
から成る工程を行ったのち、供給−抜出口を順次単位充填床1つ下流のそれに切替えることを行う擬似移動床の運転方法であって、少なくとも4回の循環工程の個々の移動液量を個別の適正値(個別値ともいう)に調整し、供給−抜出し工程において抜出される流体が常に均一性の高い品質を有するように調整するものである。
以下簡便のために、本発明方法において所定の操作の際、上記2工程を行う方法を第1の方法、上記3工程を行う方法を第2の方法として説明する。
【0020】
本発明方法を、図面により更に詳細に説明する。図−1は4個の単位充填床からなる擬似移動床の代表例であり、図−2は単位充填床の一例である。図−1において1〜4は単位充填床であり、11は循環ポンプ、21は流量制御弁、31〜34は原料流体供給弁、41〜44は脱着剤供給弁、51〜54は吸着質流体抜出弁、61〜64は非吸着質流体抜出弁である。また図−2において、24は上流の単位充填床からの液体流入管、23は液分散装置、22は充填床であり25と26はそれぞれ原料流体と脱着剤との供給管、27は集液装置、28は下流の単位充填床への流体流出管、29と30とはそれぞれ吸着質流体と非吸着質流体との抜出管である。
【0021】
本発明の第1の方法は、通常の擬似移動床を用いて実施することができ、その際、上記(1)〜(2)工程からなる過程を行ったのち、供給口及び抜出口を順次下流のそれに切替えることよりなる擬似移動床の運転方法において、循環工程における移動液量を、各循環工程毎に個別値に調整することよりなる擬似移動床の運転方法である。
即ち、この第1の方法では、図−1において、弁32より原料流体、即ち吸着質成分と非吸着質成分を含有する原料流体を、弁44より脱着剤を供給し、同時に弁54より吸着質流体を、弁62より非吸着質流体を抜き出す供給−抜出し工程を行う(上記(1)工程)。
次いで、充填床への原料流体及び脱着剤の供給、並びに充填床からの吸着質流体及び非吸着質流体の抜出を中止し、循環ポンプ11により充填床内の流体の循環のみを行い、これによって床内の濃度分布曲線を所定の位置まで移動させる循環工程を行う(上記(2)工程)。
【0022】
この(1)工程及び(2)工程により、弁32、44、54、62の組の作動時間(第1ステップ)が終了したので、それぞれの弁を対応する下流の弁に切り替える。図−1の装置は、4個の単位充填床からなるので、弁の切替を順次4回(第1〜第4ステップ)行うと最初の状態に復帰する。
本発明方法では、このような運転方法において循環工程における移動液量を、各循環工程毎、つまり各ステップ毎に調整する。
【0023】
本発明の第2の方法では、上記第1の方法と同様に通常の擬似移動床の運転と同じく、供給口−抜出口を一定時間毎に順次下流の供給口−抜出口に切り替えるが、1組の供給口−抜出口が作動開始してから、下流の供給口−抜出口が作動開始するまでの間に、上記の3工程が行われる。
第2の方法では、図−1において、弁33より原料流体を、弁41より脱着剤を供給し、同時に弁63より非吸着質流体を、弁51より吸着質流体を抜出す供給−抜出し工程を行う(上記(1)工程)。
弁41より脱着剤を供給し、弁63より非吸着質流体を抜出すか、或いは弁33より原料流体を供給し、弁51より吸着質流体を抜出す供給−抜出し工程を行う(上記(2)工程)。
次いで、充填床への原料流体及び脱着剤の供給、並びに充填床からの吸着質流体及び非吸着質流体の抜出を中止し、循環ポンプ11により充填床内の流体の循環のみを行う(上記(3)工程)。
【0024】
本発明の運転方法では、この循環工程における移動液量を、各循環工程毎、つまり各ステップ毎に個別値に調整することが必要である。
この(1)工程〜(3)工程により、(第1ステップ)が終了したので、それぞれの弁を対応する下流の弁に切り替える。図−1の装置は、4個の単位充填床からなるので、弁の切替を順次4回(第1〜第4ステップ)行うと最初の状態に復帰する。
この第2の方法は、前述の第1方法では、供給−抜出し工程において、脱着帯域を流下してきた流体の一部を抜出し、残部は次の濃縮帯域に流入させているのに対し、第1及び第2の供給−抜出し工程のいずれかにおいても、作動中の抜出口に到達した流体は全量抜出される。これにより、場合により第1の方法で流体の一部を抜出す際に生ずる、下流の単位充填床の分散装置での流量不足による分散不良を回避することができる。
【0025】
擬似移動床方式における循環工程では、流体を循環させることにより充填床内における各成分の濃度分布曲線を所定の位置まで移動させることが必要であり、この濃度分布曲線が所定の位置まで移動されることにより、次ステップの抜出−供給工程において、各成分の抜出口からは一定の濃度或いは品質が保たれた流体が取得されるのである。しかしながら、前述の如く、実際の工業的プロセスにおいては、充填床の吸着剤の品質或いは充填状態に偏差があるので、全ての単位充填床の分離性能を同一にすることは極めて困難であり、また床内の濃度分布の移動は連続的であるにもかかわらず、流体の供給口及び抜出口を下流へのそれに切替る操作は間欠的に実施される。それ故、循環工程における濃度分布の移動が所定の位置に移動されない、つまり所定の位置に達しなかったり或いは移動し過ぎたりすると一作業時間内の循環工程後の次ステップの抜出−供給工程において抜出口から抜出される流体中の成分濃度や組成がステップ毎に変動することとなり、その結果として均質な流体が取得できなくなる。
【0026】
本発明方法においては、各ステップの循環工程における移動液量を個別値に調整して循環させることにより、充填床内の濃度曲線は所定の位置に移動させることができ、それによって各ステップにおいて抜出口から抜出される流体中の成分濃度或いは組成を一定に維持することができるのである。
ここで、個別値とは、「循環工程の個々の移動液量の個別の適正値」であり、吸着質流体および非吸着質流体の均一な品質を確保するために、循環工程毎に、各単位充填床から抜出される吸着質流体或いは非吸着質流体の成分濃度および成分組成の測定値に応じて決められる、移動液量の最適値であり、その測定値により変動する。
【0027】
循環工程の移動液量の調整は、各ステップにおける各単位充填床から抜出される吸着質流体或いは非吸着質流体のそれぞれの成分濃度および成分組成を測定し、該測定値が吸着質流体および非吸着質流体の品質(濃度・組成)が有すべき所定の濃度及び組成の許容される均一性の範囲に入るように、次のステップに移る直前の循環工程の移動液量を変動させて調整することによって行われる。ここで、吸着質流体および非吸着質流体の品質(濃度・組成)が有すべき所定の濃度及び組成(「目標値」でもある)の許容される均一性の範囲は、組成分中の着目成分の所定の濃度及び組成に対する偏差が、通常±3%以内、好ましくは±2%以内である。また、着目成分の純度に関しては、その偏差が通常±1.5%以内、好ましくは±1%以内であり、着目成分の回収率に関しては、±1%以内である。
【0028】
また、各単位充填床に吸着剤を充填した後、この吸着剤に対する親和性が知られている適当な物質から選定した特定物質を含む流体を、各単位充填床の原料流体供給口から各単位充填床に充填されている吸着剤の体積の1%〜30%の範囲、好ましくは5%〜10%の範囲に相当する液量で供給し、引き続いて、各単位充填床の脱着剤供給口より脱着剤(通常は水)を供給して、各単位充填床の流体抜出し口より流出液を採取する。流出液に含まれる特定物質の流出開始位置、当該物質の濃度が最も高い流出位置、および当該物質の流出終了位置を測定する。これによって、擬似移動床の循環工程を操作するときの各単位充填床における移動液量に対する移動位置の偏差を想定し、各単位充填床に対する循環工程の移動液量を決めて調整することもできる。
【0029】
調整すべき各循環工程の移動液量を上記いずれの方法によって予測してもよいし、両方法を併用しても構わない。実際には、擬似移動床の連続運転を行いながら各単位充填床から抜出される流出液の濃度および成分組成を観察し、繰返し実験等により濃度および成分組成に関する品質が許容される同一性を有するまで、各循環工程の移動液量を個別に調整すればよい。
【0030】
本発明方法は、2以上の成分を含みクロマト分離が可能な種々の混合物から各成分の分離に適用することができる。対象とする混合物の代表的なものは、種々の糖類、或いは糖アルコールの混合物であり、例えば異性化糖からの果糖の分離、マルトース、マルトデキストリン等を含む澱粉の加水分解物からの各成分の分離、イソマルトース及びイソマルトースデキストリンを含む混合物からの各成分の分離、ソルビトール、マルチトールなどの糖アルコールを含む混合物からの各成分の分離等に適用することができる。
更に、本発明方法は、特公平7−46097号公報および特開2000−79301号公報等に示される擬似移動床の他に従来から知られている擬似移動床による成分分離法にも適用することができる。本発明方法を適用することによって吸着質及び非吸着質の混合物を、それぞれ吸着質流体と非吸着質流体とに、より高度で精密に分離することができる。
【実施例】
【0031】
以下に実施例により、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
本実施例は、吸着剤の内部空隙率の異なる吸着剤を充填した4つの単位充填床で構成した擬似移動床装置における本発明方法の実施態様を説明するものである。
擬似移動床装置として図−1に示した擬似移動床装置を用い、内径28mm、充填高さ550mmからなる単位充填床4個(第1槽,第2槽,第3槽,第4槽)を直列に連結させ、この充填床に吸着剤としてカルシウム形の強酸性カチオン交換樹脂[DIAION(登録商標)UBK555 三菱化学(株)製)]を合計1384ml充填した。
【0032】
直列に連結された4個の単位充填床(第1槽、第2槽、第3槽、第4槽)の内、第1槽、第3槽には、酸化を受け内部空隙率の増加した水分含有率50%のUBK555(1)各346mlを充填し、第2槽、第4槽には新品の水分含有率45%のUBK555(2)各346mlを充填し、第1槽、第2槽、第3槽、第4槽の順に4個連結して、液循環路を形成した。ここで、循環工程における移動液量が同一の場合、内部空隙率の増加した水分含有率50%のUBK555(1)の充填床における成分移動位置は、内部空隙率が増加していない新品の水分含有率45%のUBK555(2)の充填床におけるよりも遅くなることは公知である。
【0033】
この擬似移動床装置を用いて、ブドウ糖・果糖混合水溶液から脱着剤として水を使用して果糖とブドウ糖の分離を行い、純度90%以上の果糖水溶液を回収した。運転時の充填床の温度は65℃に保った。原料のブドウ糖・果糖混合水溶液は、精製ブドウ糖に異性化酵素を作用させて得られたブドウ糖・果糖混合水溶液であり、その組成を表−1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
表−2に示す運転流量で、工程(1−16工程)を繰り返し実施した。1−16工程は、1−4工程(第1ステップ)、5−8工程(第2ステップ)、9−12工程(第3ステップ)、13−14(第4ステップ)からなり、各ステップにおける各工程の流通液量は、供給抜き出し(A,B,C)工程においては、予め設定した一定値とし、循環工程においては、あらかじめ調整したステップ毎に異なる移動液量を設定した。以上の条件で、吸着質流体として果糖に富む流体を抜き出し、非吸着質流体としてブドウ糖に富む流体を抜き出すように装置を運転した。
【0036】
この時の第16工程終了後(次の第1工程の始まる直前)の充填床内の濃度分布を図−3に示す。以下、第4工程終了後(第5工程の始まる直前)の充填床内の濃度分布を図−4、第8工程終了後(第9工程の始まる直前)の充填床内の濃度分布を図−5、第12工程終了後(第13工程の始まる直前)の充填床内の濃度分布を図−6に示す。この時の原料流体供給量、脱着剤流体供給量、吸着質流体抜出し量、非吸着質流体抜出し量に該当する濃度分布範囲を網掛けで図内に示す。この網掛けで図内に示した抜出範囲に該当する濃度および成分組成に関する品質の均一性をより高める調整を行った。調整は、ステップ毎の循環工程における移動液量を変えることにより行った。
なお、図−3から図−6までのグラフはシミュレーターにより描いたものである。この濃度分布の横軸は各単位充填床の流れ方向の距離を示し、縦軸は各成分の濃度(wt%)を示す。
【0037】
表−2に示す16工程を10回繰り返し、定常状態に到達させた時の吸着質流体濃度、吸着質流体における果糖純度、果糖回収率、非吸着質流体濃度、非吸着質流体におけるブドウ糖純度、ブドウ糖回収率を表−3に示す。
【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
ここでのサイクル値とは、表−3に示す1−3工程、5−7工程、9−11工程および13−15工程における吸着質に富む流体が流出する吸着質流体、および非吸着質に富む流体が流出する非吸着質流体をそれぞれ混合し、混合物の吸着質流体濃度、非吸着質流体濃度、および、吸着質流体における果糖純度、果糖回収率、非吸着質流体におけるブドウ糖純度、ブドウ糖回収率を測定した値をサイクル値として表記した。
【0041】
また表−3に示す1−3工程(第1ステップ)において流出される吸着質流体濃度および非吸着質流体濃度、吸着質流体における果糖純度、果糖回収率、非吸着質流体におけるブドウ糖純度、ブドウ糖回収率を測定した。同様に5−7工程(第2ステップ)、9−11工程(第3ステップ)、13−15工程(第4ステップ)での吸着質流体濃度および非吸着質流体濃度、吸着質流体における果糖純度、果糖回収率、非吸着質流体におけるブドウ糖純度、ブドウ糖回収率を測定した。
【0042】
各ステップ間におけるサイクル値或いは目標値に対する偏差(%)を下式により算出し、最大偏差(%)を表−3に示した。
偏差(%:対サイクル値)=(測定値−サイクル値)÷サイクル値×100
偏差(%:対目標値)=(測定値−目標値)÷目標値×100
【0043】
各ステップ間でのデータの偏差を比較することによって、同一性の評価を行った。その結果、下記に示す比較例に比べより良好な分離が行われていることを確認した。即ち、吸着剤の水分が増加した吸着剤が充填された単位充填床から流出する成分の流出位置は遅れるので、該当する単位充填床での循環工程の移動液量を大きく設定することにより、その流出位置は遅れることなく、新品の吸着剤が充填された単位充填床から流出する成分の流出位置に近づいていることを示した。
【0044】
比較例1
実施例1と同じ同一装置の擬似移動床装置を使用し、実施例と同一の濃度および成分組成の原料(果糖・ブドウ糖混合水溶液)から脱着剤として水を使用して果糖とブドウ糖の分離を行った。運転条件は、表−2における実施例1と同一の運転流量、各ステップの供給抜出し(A,B,C)工程では実施例1と同一の流通液量とし、各循環工程の移動液量は変えず、全て176.6mlとして擬似移動床装置を運転した。
【0045】
表−4に、定常状態に達した後の吸着質流体濃度、吸着質流体における果糖純度、果糖回収率、非吸着質流体濃度、非吸着質流体におけるブドウ糖純度、ブドウ糖回収率を示す。その結果、吸着剤の水分が増加した吸着剤が充填された単位充填床から流出する成分の流出位置は遅れるが、該当する単位充填床での循環工程の移動液量は全て同一値に設定されているため、その流出位置は遅れてしまい、新品の吸着剤が充填された単位充填床から流出する成分の流出位置からかけ離れていることを示した。
【0046】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図−1、は本発明方法を実施するのに用いられる擬似移動床装置の一例である。
【図2】図−2は、擬似移動床を構成する単位充填床の一例である。
【図3】図−3は、実施例1における第16工程終了時の充填床内の濃度分布である。
【図4】図−4は、実施例1における第4工程終了時の充填床内の濃度分布である。
【図5】図−5は、実施例1における第8工程終了時の充填床内の濃度分布である。
【図6】図−6は、実施例1における第12工程終了時の充填床内の濃度分布である。
【符号の説明】
【0048】
1〜4 :単位充填床
11 :循環ポンプ
21 :流量制御弁
31〜34 :原料流体供給弁
41〜44 :脱着剤供給弁
51〜54 :吸着質流体抜出弁
61〜64 :非吸着質流体抜出弁
22 :充填床
23 :液分液装置
24 :流体流入管
25 :原料流体供給管
26 :脱着剤供給管
27 :集液装置
28 :流体流出管
29 :吸着質流体抜出管
30 :非吸着質流体抜出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に液体が循環し得るように構成されており、その液体の移動方向に沿って一組の原料流体供給口、非吸着質流体抜出口、脱着剤供給口及び吸着質流体抜出口がこの順序で設けられていて、全体が原料流体供給口と非吸着流体抜出口との間を占める吸着帯域、非吸着質流体抜出口と脱着剤供給口との間を占める精製帯域、脱着剤供給口と吸着質流体抜出口との間を占める脱着帯域、及び吸着質流体抜出口と原料流体供給口との間を占める濃縮帯域の4帯域に分割されており、且つ上記一組の供給口及び抜出口が、所定の操作時間経過後、順次下流にある他の一組の供給口及び抜出口に切替えられるように構成されている少なくとも4個の単位充填床を備えた擬似移動床を用いて原料流体中の成分の分離を行う方法であって、所定の操作時間内に、下記(1)供給−抜出し工程、及び(2)循環工程を行う擬似移動床の運転方法において、供給−抜出し工程から抜出される吸着質流体或いは非吸着質流体が所定の濃度又は組成を有するように、少なくとも4回の循環工程における移動液量を、各循環工程毎に個別値に調整することを特徴とする擬似移動床の運転方法。
(1)供給−抜出し工程:
脱着帯域から抜出される吸着質流体の一部を濃縮帯域に流入させ、濃縮帯域から抜出される流体を吸収帯域に流入させながら、原料流体供給口から原料流体を吸収帯域に、脱着剤供給口から脱着剤を脱着帯域に供給し、且つ吸着帯域から抜出される流体の少なくとも一部を非吸着質流体抜出口から、また脱着帯域から抜出される流体の一部を吸着質流体抜出口からそれぞれ抜出す、供給−抜出し工程
(2)循環工程:
全ての供給口及び抜出口から、流体の供給及び抜出しを行うことなく、充填床内の流体を下流方向に移動させる循環工程
【請求項2】
一方向に液体が循環し得るように構成されており、その液体の移動方向に沿って一組の原料流体供給口、非吸着質流体抜出口、脱着剤供給口及び吸着質流体抜出口がこの順序で設けられていて、全体が原料流体供給口と非吸着質流体抜出口との間を占める吸着帯域、非吸着質流体抜出口と脱着剤供給口との間を占める精製帯域、脱着剤供給口と吸着質流体抜出口との間を占める脱着帯域、及び吸着質流体抜出口と原料流体供給口との間を占める濃縮帯域に分割されており、且つ上記一組の供給口及び抜出口が、所定の操作時間経過後、順次下流にある他の一組の供給口及び抜出口に切替えられるように構成されている少なくとも4個の単位充填床から成る擬似移動床を用いて原料流体中の成分の分離を行う方法であって、所定操作時間内に下記(1)〜(3)工程を行うことよりなる擬似移動床の運転方法において、(1)及び(2)工程から抜き出されるそれぞれの吸着質流体同士或いは非吸着質流体同士が所定の濃度又は組成を有するように、少なくとも4回の循環工程における移動液量を、各循環工程毎に個別値に調整することを特徴とする擬似移動床の運転方法。
(1)原料流体供給口から原料流体を、脱着剤供給口から脱着剤をそれぞれ供給し、且つ非吸着質流体抜出口及び吸着質流体抜出口から床内を流下してきた液体をそれぞれの流体として全量抜出す第1の供給−抜出し工程、
(2)原料流体供給口から原料流体を供給し、且つ吸着質流体抜出口から床内を流下してきた液体を吸着質流体として全量抜出すか、又は脱着剤供給口から脱着剤を供給し、且つ非吸着質流体抜出口から床内を流下してきた液体を非吸着質流体として全量抜出す第2の供給−抜出し工程、
(3)全ての供給口及び抜出口を閉鎖して、床内の液体を下流方向に移動させる循環工程
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、供給−抜出し工程において吸着帯域から流出する流体を非吸着質流体出口から全量抜出すことを行う擬似移動床において、少なくとも4回の循環工程の移動液量を、各循環工程毎に個別値に調整することを特徴とする請求項1記載の擬似移動床の運転方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、供給−抜出し工程において吸着帯域から流出する流体を、一部は精製帯域に流入させ、残部は非吸着質流体出口から抜出すことを行う擬似移動床において、少なくとも4回の循環工程の移動液量を各循環工程毎に個別値に調整することを特徴とする請求項1記載の擬似移動床の運転方法。
【請求項5】
循環工程の移動液量の調整は、少なくとも4回の各循環工程直前の各供給−抜出し工程における各単位充填床から抜出されるそれぞれの吸着質流体或いは非吸着質流体の濃度及び組成を測定し、該測定値とそれぞれの吸着質流体同士或いは非吸着質流体同士が有すべき所定の濃度及び組成との対比に基づき、それぞれの流体が該所定濃度及び組成を有するように各循環工程毎の移動液量を個別値に調整することで行われることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の擬似移動床の運転方法。
【請求項6】
循環工程の移動液量の調整は、所定操作時間内において各工程における各単位充填床から抜出されるそれぞれの吸着質流体或いは非吸着質流体の成分濃度および組成を測定し、該測定値が、それぞれの吸着質流体同士或いは非吸着質流体同士が有すべき所定の濃度及び組成値の±3%以内の偏差となるように各循環工程毎の移動液量を個別値に調整することで行われることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の擬似移動床の運転方法。
【請求項7】
循環工程の移動液量の調整は、吸着剤が充填された各単位充填床に、吸着剤に対する親和性が既知の特定物質を含む流体を、原料流体供給口から充填吸着剤体積の1%〜30%相当の液量で供給し、次いで各単位充填床の脱着剤供給口より脱着剤を供給し、各単位充填床の流体抜出し口より流出する流出液に含まれる特定物質の流出開始位置、当該物質の濃度が最も高い流出位置、および当該物質の流出終了位置を測定することから想定される擬似移動床の循環工程操作における各単位充填床での移動液量に対する移動位置の偏差に基づき、各単位充填床に対する各循環工程の移動液量を決めることにより行われることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の擬似移動床の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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