攪拌用容器
【課題】振る力や回数を少なくして液体に大きな攪拌力を与えて分散や分離を行うことのできる攪拌用容器を提供する。
【解決手段】液体を入れて振ることにより、攪拌された液体の分散や分離を行う攪拌用容器1において、上部に開口部2aを有する有底筒状の外筒2と、開口部2aを塞ぐ着脱自在の蓋体6と、外筒2内に配される筒状の内筒3とを備え、軸方向に所定周期Tで並設される溝部4a、4bを内筒3の内周面3b及び外周面3aに設けた。
【解決手段】液体を入れて振ることにより、攪拌された液体の分散や分離を行う攪拌用容器1において、上部に開口部2aを有する有底筒状の外筒2と、開口部2aを塞ぐ着脱自在の蓋体6と、外筒2内に配される筒状の内筒3とを備え、軸方向に所定周期Tで並設される溝部4a、4bを内筒3の内周面3b及び外周面3aに設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液中に液体若しくは固体の粒子が分散した分散液を作ることのできる攪拌用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
分離液状ドレッシングの内容物は少なくとも油成分を含む油相部と酢などの水溶成分を含む水相部とが混合されており、包装容器内で油相部と水相部とが分離している。容器を振らずにそのまま使用すると上層の油相部だけが取り出されるため、予め包装容器をよく振って油相部と水相部とを混合して分散液として野菜等に振りかけていた。
【0003】
しかしながら、水相部と油相部とは混合しにくいため、分散液を形成するためには力強く振る必要がある。このため、女性、子供、高齢者等の力の弱い使用者の場合は扱いにくい問題があった。即ち、振り方が不十分な場合には上層の油相部だけが流出し、野菜等に振りかけられた分離液状ドレッシングが油っぽくなる。その結果、酢によってもたらされる酸味や香辛料が与える味が生かされなくなってしまう場合が生ずる。
【0004】
また、分離液状ドレッシングの内容物を分散した後に包装容器の蓋を開放するのに手間取ると、油相部と水相部とが分離し始める。これにより、上記と同様に上層の油相部だけが流出する問題がある。
【0005】
上記問題を解決するために、分離液状ドレッシングの内容物に乳化剤や安定剤等の添加剤を添加することが知られている。これにより、振る力や回数が少なくても分散液を生成して安定させることができる。しかし、分離液状ドレッシングの内容物に乳化剤を添加すると乳化してエマルション(乳濁液)が生成される。このため、乳化液状ドレッシングと区別される分離液状ドレッシング特有の風味が失われる。
【0006】
また、乳化剤や安定剤等の添加剤は化学薬品をベースとして生成される。これにより、美味しさが損なわれる場合や、昨今の健康ブームの趨勢においては健康安全面で消費者に避けられる場合が多くなる。
【0007】
一方、内部の液体に大きなせん断力を与えて分散液を生成する攪拌用容器を分離液状ドレッシングの包装容器として用いることが特許文献1に開示されている。この攪拌用容器は上端を開口した有底筒状の本体部を有し、本体部の上部の内周面に放射状の突起部が設けられる。本体部内は突起部の下方の第1チャンバと上方の第2チャンバとに仕切られる。
【0008】
分離液状ドレッシングの内容物は本体部内に入れられ、本体部を振ると第1チャンバ内の内容物が突起部に衝突する。分離液状ドレッシングの内容物は突起部との衝突によって大きなせん断力が与えられて第2チャンバに移動し、第2チャンバ内の空気が含まれる。これにより、エマルションに近い状態の分散液が生成され、第2チャンバ内の空気を含むことによって分散した状態を持続させることができる。
【0009】
また、特許文献2には他の攪拌用容器が開示されている。この攪拌用容器は容器内に捩れ方向の異なる2つの捩れ翼が上下に連結され、連結側の端面が交差している。分離液状ドレッシング等の被処理物は捩れ翼によって旋回して攪拌作用が増加するとともに、上下段に跨って流動する際に捩れ翼の端縁に衝突してせん断作用を受ける。これにより、少ない振動回数で分散液を生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−53582号公報(第3頁−第5頁、第2図)
【特許文献2】実開平2−150023号(第5頁−第9頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1に開示された攪拌用容器によると、空気を入れておく第2チャンバを必要とするため内容量が小さくなる問題があった。また、特許文献2に開示された攪拌用容器によると、攪拌用容器は主に軸方向(長手方向)に振られるため液体が捩り翼の表面に斜め方向に衝突する。このため、被処理物が捩り翼に衝突した際の衝撃力が弱く、いぜんとして振る力や回数を多く必要とする問題があった。
【0012】
また、攪拌用容器を振ることにより、液体中に固体粒子を分散させた分散液(懸濁液)を生成することもでき、中に入れた液体から固体を分離させることもできる。これらの場合も上記と同様に、攪拌用容器を振る力や回数を多く必要とする問題があった。また、分離液状ドレッシングと同様に、攪拌して用いられる分離液状の化粧品や医薬品についても同様の問題がある。
【0013】
本発明は、内容量を小さくせずに振る力や回数を少なくして液体に大きな攪拌力を与えて分散や分離を行うことのできる攪拌用容器を提供することを目的とする。また、この攪拌用容器に入れられた分離液状ドレッシング、分離液状化粧品及び医薬品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明は、液体を入れて振ることにより、攪拌された液体の分散や分離を行う攪拌用容器において、上部に開口部を有する有底筒状の外筒と、前記開口部を塞ぐ着脱自在の蓋体と、前記外筒内に配される筒状の内筒とを備え、軸方向に所定周期で並設される溝部を前記内筒の内周面及び外周面の一方または両方に設け、前記溝部の軸方向の断面形状を矩形状にしたことを特徴としている。
【0015】
この構成によると、例えば、油相部を形成する液体と水相部を形成する液体とが攪拌用容器の外筒内に入れられ、蓋体で開口部が塞がれる。攪拌用容器を振ると内部の液体は内筒及び外筒に沿って上下に揺動する。内筒の内周面または外周面には螺旋状や環状に形成された溝部が軸方向に並設される。内筒に沿って流通する液体の一部は溝部内に流入し、溝部内に渦が形成される。攪拌用容器を軸方向に振ることにより回転方向が逆方向の渦が溝部内に形成されるため、直前の渦が破壊されて液体に大きなせん断力が働く。これにより、水相部と油相部の液体が分散してエマルションに近い状態の分散液が作成される。液体と粉体とを外筒内に入れて分散液(懸濁液)を作成する場合も同様である。
【0016】
また本発明は、液体を入れて振ることにより、攪拌された液体の分散や分離を行う攪拌用容器において、一端を開口して外装を形成する筒状の外筒と、前記開口を塞ぐ蓋体とを備え、軸方向に所定周期で並設される溝部を前記外筒の内周面に設け、前記溝部の軸方向の断面形状を矩形状にするとともに、前記溝部の幅と深さとを略同じにしたことを特徴としている。
【0017】
この構成によると、例えば、油相部を形成する液体と水相部を形成する液体とが攪拌用容器の外筒内に入れられ、蓋体で開口部が塞がれる。攪拌用容器を振ると内部の液体は外筒に沿って上下に揺動する。この時、外筒に沿って流通する液体の一部は溝部内に流入し、溝部内に渦が形成される。外筒を上下に振ることにより回転方向が逆方向の渦が溝部内に形成されるため、直前の渦が破壊されて液体に大きなせん断力が働く。これにより、水相部と油相部の液体が分散してエマルションに近い状態の分散液が作成される。
【0018】
また本発明は、上記構成の攪拌用容器において、前記溝部の側壁を軸方向に対して垂直に形成したことを特徴としている。
【0019】
また本発明は、上記構成の攪拌用容器において、前記溝部の側壁は開放側の端部の曲率半径が1mm以下に形成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、内筒もしくは外筒に軸方向に所定周期で並設される溝部を設けたので、攪拌用容器を軸方向に振ることによって回転方向が逆方向の渦が溝部内に形成され、直前の渦が破壊されて液体に大きなせん断力が働く。従って、振る力や回数を少なくしても、分離液状ドレッシング等の液体を充分分散させることや牛乳等の液体を充分分離させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態の攪拌用容器を示す正面断面図
【図2】本発明の第1実施形態の攪拌用容器の内筒を示す斜視図
【図3】本発明の第1実施形態の攪拌用容器を用いた分離液状ドレッシングを振った時の状態を説明する図
【図4】本発明の第1実施形態の攪拌用容器を用いた分離液状ドレッシングを振った時の状態を説明する図
【図5】図2のD部詳細図
【図6】図3のE部詳細図
【図7】本発明の第1実施形態の攪拌用容器の攪拌による分散の実験結果を示す図
【図8】本発明の第2実施形態の攪拌用容器を示す正面断面図
【図9】本発明の第2実施形態の攪拌用容器を用いた分離液状ドレッシングを振った時の状態を説明する図
【図10】本発明の第2実施形態の攪拌用容器を用いた分離液状ドレッシングを振った時の状態を説明する図
【図11】図9のF部詳細図
【図12】図10のG部詳細図
【図13】本発明の第3実施形態の攪拌用容器を示す正面断面図
【図14】本発明の第4実施形態の攪拌用容器を示す正面断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は第1実施形態の攪拌用容器の正面断面図を示している。攪拌用容器1は分離液状ドレッシング10(図3参照)の包装容器になっている。攪拌用容器1は上面に開口部2aが形成される有底筒状の外筒2を有している。外筒2はガラスやポリエチレンテレフタラート(PET)等の透明材料により形成され、内部を視認可能になっている。開口部2aは外筒2に螺合される着脱自在の蓋体6によって塞がれる。蓋体6はポリプロピレン等の樹脂成形品から成っている。
【0023】
外筒2内には筒状の内筒3が配されている。図2は内筒3の斜視図を示している。内筒3はポリエチレンテレフタラート(PET)等の透明樹脂により形成され、内部を視認可能になっている。内筒3の外周面3a及び内周面3bには複数の環状の溝部4a、4bが内筒3の軸方向に周期的に並設されている。
【0024】
溝部4a、4bは薄肉に形成される内筒3の周壁を屈曲して形成され、共通の側壁を有している。即ち、外周面3aの溝部4a間の陸部5aの裏面に内周面3bの溝部4bが形成され、内周面3bの溝部4b間の陸部5bの裏面に外周面3aの溝部4aが形成される。これにより、容易に溝部4a、4bを形成することができる。尚、溝部4a、4bは幅Wが5mm、深さDが5mm、周期Tが10mmで形成されている。
【0025】
内筒3は外筒2の底面に接して配され、内筒3の下端には切欠き3cが設けられる。切欠き3cによって攪拌用容器1の下部で内筒3の外側と内側とを連通させる連通部が構成されている。これにより、外筒2の内部の液体が内筒3の内外を容易に行き来する。内筒3に設けた貫通孔によって連通部を形成してもよい。また、外筒2の底面に対して内筒3を離して配置し、内筒3の下方に連通部を形成してもよい。
【0026】
外筒2内には所定の内容物8(図3参照)が入れられ、攪拌用容器1を包装容器とする分離液状ドレッシング10(図3参照)が得られる。分離液状ドレッシング10の内容物8は酢を主成分とした液体から成る酸性の水相部と、オイルを主成分とした液体から成る油相部とを有している。水相部の液体は酢の他に酸味料、清水、食塩、糖類、スパイス類、果汁、しょうゆ等が目的とする製品の用途に合わせて適宜加えられる。油相部の液体はサラダ油等のオイルに加え、必要に応じて油溶性のスパイス類を溶解して用いられる。水相部と油相部との体積比は通常、1:9〜9:1になっている。
【0027】
分離液状ドレッシング10の内容物8は一定期間連続して放置状態が続くと水相部と油相部とが分離する。このため、使用する際には使用者によって攪拌用容器1を振ることにより内容物8を混合撹拌する。これにより、内容物8の二相を分散させて分散液にしてから食品等に振り掛けられる。
【0028】
図3、図4は分離液状ドレッシング10を振った時の状態を説明する図である。分離液状ドレッシング10を長手方向に振ると、上方に移動させる期間と下方に移動させる期間とが交互に繰り返される。分離液状ドレッシング10が矢印A1に示すように上方に移動すると内容物8は慣性力を受けて矢印B1に示すように下方に移動する。また、分離液状ドレッシング10が矢印A2に示すように下方に移動すると内容物8は矢印B2に示すように上方に移動する。
【0029】
図5、図6はそれぞれ図3のD部詳細図及び図4のE部詳細図になっている。内容物8が矢印B1の方向に移動すると、図5に示すように内筒3の外周面3a及び内周面3bに沿って流通する液体は溝部4a、4b内に流入する。これにより、溝部4a内には図中、反時計回りに回転する渦21aが形成され、溝部4b内には図中、時計回りに回転する渦21bが形成される。
【0030】
その直後に内容物8が矢印B2の方向に移動すると、図6に示すように、溝部4a内には図中、時計回りの渦22aが形成される。また、溝部4b内には図中、反時計回りの渦22bが形成される。即ち、溝部4aに流入する液体は直前に形成された渦21aを打ち消すように作用してこれを破壊して消滅させ、溝部4a内に逆方向に回転する渦22aが発達する。同様に、溝部4bに流入する液体は直前に形成された渦21bを打ち消すように作用してこれを破壊して消滅させ、溝部4b内に逆方向に回転する渦22bが発達する。
【0031】
その直後に内容物8が矢印B1の方向に移動すると、上記と同様に溝部4a、4b内に渦21a、21bが形成される。即ち、溝部4aに流入する液体は直前に形成された渦22aを打ち消すように作用してこれを破壊して消滅させ、溝部4a内に逆方向に回転する渦21aが発達する。同様に、溝部4bに流入する液体は直前に形成された渦22bを打ち消すように作用してこれを破壊して消滅させ、溝部4b内に逆方向に回転する渦21bが発達する。以降、これらの動作が繰り返される。
【0032】
渦21a、21b、22a、22bが破壊されて消滅する際には液体に大きなせん断力が発生する。溝部4a、4bは複数段にわたって設けられるため、液体は各溝部4a、4bで大きなせん断力が加わって攪拌される。このため、分離液状ドレッシング10を振る力や回数が少ない場合であっても水相部と油相部とが極めて細かく分散してエマルション状態に近い状態の分散液を作成することができる。
【0033】
図7(a)〜(k)は、攪拌用容器1の攪拌による分散の効果を可視化するための実験結果を示す図である。各図において右側は本実施形態の攪拌用容器1を示し、左側は比較のため内筒3を省いた状態を示している。攪拌用容器1内の液体は水相部として水道水を用いるとともに油相部として市販のオリーブオイルを用い、水相部と油相部との体積比を1:1にしている。
【0034】
図7(a)は攪拌前の状態を示している。図7(b)は軸方向の振幅を10cmとして攪拌用容器1を10回振って攪拌した直後の状態を示している。図7(c)〜(k)は攪拌用容器1を攪拌してから15秒後、30秒後、60秒後、90秒後、120秒後、150秒後、180秒後、10分後、20分後の様子をぞれぞれ示している。
【0035】
攪拌用容器1の攪拌直後では本実施形態及び比較例共に液体が分散した状態になっている。比較例では攪拌後15秒が経過すると水相部と油相部の分離が開始され、180秒後にはほぼ完全に二相に分離した。これに対し、本実施形態の攪拌用容器1では攪拌後20分が経過しても水相部と油相部の分離が開始されていない。即ち、混濁復帰時間が本実施形態により著しく増加した。
【0036】
また、内部の液体の粒径ついて調べると、本実施形態では非常に細かい粒径であったのに対して比較例では比較的大きな粒径になっていた。比較例の攪拌用容器1を更に3倍以上の時間をかけて攪拌を行ったが液体の粒径は細かくならず、混濁復帰時間もほとんど延長しなかった。
【0037】
以上の結果より、本実施形態の攪拌用容器1は内部の液体に与えるせん断力が大幅に増加して強い混合攪拌が得られていることが解る。これにより、エマルションに近いクリーミーな状態の分散液が容易に生成される。
【0038】
本実施形態によると、内筒3の外周面3a及び内周面3bに軸方向に周期Tで並設される溝部4a、4bを設けたので、攪拌用容器1を軸方向に振ることによって溝部4a、4b内に渦21a、21b形成される。このため、直前に形成された回転方向が逆方向の渦22a、22bが破壊されて液体に大きなせん断力が働く。従って、振る力や回数を少なくしても、分離液状ドレッシング10の内容物8を充分分散させることができる。その結果、女性、子供、高齢者等の力の弱い使用者の場合でも容易に攪拌することができる。
【0039】
尚、周期Tは一定でなくてもよい。また、内筒3の外周面3aの溝部4a及び内周面3bの溝部4bの一方を省いても同様に、内容物8に大きなせん断力を与えて内容物8を充分分散させることができる。内筒3の外周面3aの溝部4a及び内周面3bの溝部4bの両方を設けると、より多くの渦が形成されて内容物8を更に分散させることができる。
【0040】
また、内筒3の周壁を屈曲して溝部4a、4bを内筒3の内周面及び外周面に設け、内周側の溝部4bと外周側の溝部4aとが共通の側壁を有するので、内筒3の両面の溝部4a、4bを薄肉の樹脂成型品によって容易に形成することができる。これにより、外筒3の内部の内容積を大きく確保できる。
【0041】
また、内筒3の内側と外側とを連通させる切欠き3c(連通部)を下部に設けたので、内筒3の内側と外側とに存在する液体や液体に浮遊する固形物が連通部を介して互いに行き来する。連通部が設けられないと、内筒3の内側の液体に与えられるせん断力と外側の液体に与えられるせん断力とに差が生じて両者の分散度合いが異なる場合がある。連通部を設けることにより、内筒3の内外の物質が互いに行き来して分散度合いを平均化することができる。従って、よりクリーミーな分散液を生成することができる。
【0042】
また、本実施形態では溝部4a、4bの幅Wと深さDを5mmに形成している。溝部4a、4bの幅Wに対して深さDが著しく小さい場合や大きい場合は溝部4a、4b内に渦が生じにくくなる。このため、液体に働くせん断力が大幅に低下して充分分散させることができない。従って、溝部4a、4bの幅Wと深さDとを略同じにするとより望ましい。この時、溝部4a、4bの周期Tを幅Wの2倍にすると最も効率よく溝4a、4bを配置することができる。
【0043】
溝部4a、4bの幅W及び深さDは内容物8の粘性に応じて適切な長さが選択される。即ち、内容物の粘性が比較的小さい場合には溝部4a、4bの幅W及び深さDは比較的小さい方が望ましい。内容物の粘性が比較的大きい場合には溝部4a、4bの幅W及び深さDは比較的大きい方が望ましい。
【0044】
本実施形態では内容物8が酢とオイルとを含み、溝部4a、4bの幅Wを5mmに形成して充分分散させることができる。このため、溝部4a、4bの幅Wを5mm以上にすると、水溶性の液体やオイルを含む内容物に対して充分分散させることができる。
【0045】
例えば内容物8にゴマや玉ねぎの破砕物等の固形物が含まれる場合には、これらが溝部4a、4bに詰まって渦21a、21b、22a、22bの生成が妨げられる。このため、溝部4a、4bの幅Wは少なくとも固形物の大きさの2〜3倍程度にすべきである。但し、溝部4a、4bの幅Wを必要以上に大きくすると、内筒3に形成される溝部4a、4bの数が減少する。これにより、生成される渦21a、21b、22a、22bの数も減少してせん断力が低下する。このため、分離液状ドレッシング10等の固形物が含まれる場合には、溝部4a、4bの幅Wは固形物が詰まらない程度の大きさを確保できる範囲のうち最小にすべきである。
【0046】
また、内容物8に固形物が含まれない場合には、溝部4a、4bの深さD及び幅Wを5mm以下にしてもよい。尚、上下する流体の流路の間隔、溝部4a、4bの深さ、溝部4a、4bの幅Wを略同一にすると最も効率がよい。流路の間隔が広すぎる場合には、せん断力を流体に付与する領域の全体に対する割合が小さくなるため、せん断力を効率的に与えることができなくなる。よって、流路の間隔が広すぎる場合には、内筒を必要に応じて2重、3重等の多重にして流路の間隔(陸部と陸部の隙間)と溝部の深さ、溝部の幅が略同一になるように調整すべきである。
【0047】
分離液状ドレッシング10の包装容器では溝部4a、4bの深さD及び幅Wを5mm程度にすると良好であり、10mm程度までは十分な効果が得られる。10mm以上にすると、溝部4a、4bの数が減少するため望ましくない。これらは、分離液状ドレッシング10の攪拌用容器の断面が直径60mmの円の場合の結果である。この場合、外筒2の内周面と内筒3の外周面3aの陸部5aの間隔が10mm、溝部4a、4bの深さが10mm、内筒3の内周面3bの陸部5bと内筒3の中心までの距離が10mmとなり、最も効率的な配置が可能となる。
【0048】
即ち、外筒2の断面にかかる代表長さをLとして、溝部4a、4bの幅W、溝部4a、4bの深さD、外筒2の内周面と内筒3の外周面3aの陸部5aとの距離をそれぞれL/6程度にすると効率的な配置になる。ここで、代表長さLは断面が円の場合は直径、断面が矩形の場合は一辺の長さになる。また、これらをL/8以上程度に設定すれば高い効果が得られる。
【0049】
また、溝部4a、4bの幅WをL/2よりも大きくすると、溝部4a、4bの幅Wと深さDを略同一にできない。このため、溝部4a、4bに生成される渦21a、21b、22a、22bが楕円になるため渦の生成効率が低下するか、渦の強度が弱くなる。更に、内筒3に形成される溝部4a、4bの数が減少して生成される渦の数も減少し、せん断力が低下する。従って、溝部4a、4bの幅WをL/8以上L/2以下にするとよい。
【0050】
また、溝部4a、4bは側壁が傾斜した断面V字型やアーチ型に形成してもよいが、本実施形態のように溝部4a、4bの側壁が軸方向に対して垂直な断面矩形に形成するとより望ましい。即ち、溝部4a、4bの側壁が軸方向に対して垂直であるため、内容物8の軸方向の往復運動に随伴する液体の流れと、溝部4a、4bの側壁とが垂直になる。これにより、液体の流れが溝部4a、4bの側壁で効率よく剥離して溝部4a、4bに流体が効率よく回り込む。このため、溝部4a、4bの中に強い渦を効率よく生成することができる。生成される渦の強度が強いほど液体に対して与えるせん断が大きくなるため、内容物8を更に分散させることができる。
【0051】
また、溝部4a、4bの側壁は開放側の端部の曲率半径が大きいと液体の流れが円滑に溝部4a、4b内に流入して強い渦が生成されない。このため、溝部4a、4bの側壁は開放側の端部の曲率半径が1mm以下に形成される。これにより、液体の流れがより効率よく剥離して強い渦を発生させることができ、内容物8を更に分散させることができる。
【0052】
外筒2はガラスやポリエチレンテレフタラート(PET)等の透明材料から成るので、容易に内容物8の攪拌状態を確認することができる。内筒3がポリエチレンテレフタラート(PET)等の透明樹脂から成るので内容物8の攪拌状態をより詳細に確認することができる。外筒2や内筒3は少なくとも一部が透明であればよく、内容物8に対して影響がなければ成形が容易なポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等を用いてもよい。また、撹拌状態を確認する必要がなければ陶磁器等のセラミック材料や金属材料を用いてもよい。
【0053】
尚、溝部4a、4bが環状に形成されるが、内筒3の軸方向に所定の周期で並設されていれば螺旋状に形成してもよい。
【0054】
次に、図8は第2実施形態の攪拌用容器を示す側面断面図である。説明の便宜上、前述の図1〜図7に示す第1実施形態と同一の部分は同一の符号を付している。本実施形態は第1実施形態の内筒3が省かれ、外筒2の内周面2bに複数の環状の溝部4cが軸方向に所定の周期で並設されている。その他の部分は第1実施形態と同様である。
【0055】
外筒2はポリエチレンテレフタラート(PET)等の透明樹脂により形成されている。これにより、攪拌状態を容易に視認できる。内容物8(図9参照)に対して影響がなければポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等を用いてもよい。内部の視認の必要がない場合は不透明な材料により外筒2を形成してもよい。溝部4cは外筒2と同時成形によって形成され、幅Wが5mm、深さDが5mm、周期Tが10mmで形成されている。
【0056】
外筒2内には第1実施形態と同様の内容物8(図9参照)が入れられ、攪拌用容器1を包装容器とする分離液状ドレッシング10(図9参照)が得られる。
【0057】
図9、図10は分離液状ドレッシング10を振った時の状態を説明する図である。分離液状ドレッシング10を長手方向に振ると、上方に移動させる期間と下方に移動させる期間とが交互に繰り返される。分離液状ドレッシング10が矢印A1に示すように上方に移動すると内容物8は慣性力を受けて矢印B1に示すように下方に移動する。また、分離液状ドレッシング10が矢印A2に示すように下方に移動すると内容物8は矢印B2に示すように上方に移動する。
【0058】
図11、図12はそれぞれ図9のF部詳細図及び図10のG部詳細図になっている。内容物8が矢印B1の方向に移動すると、図11に示すように外筒2の内周面2bに沿って流通する液体は溝部4c内に流入する。これにより、溝部4c内には図中、時計回りに回転する渦21cが形成される。
【0059】
その直後に内容物8が矢印B2の方向に移動すると、図12に示すように、溝部4c内には図中、反時計回りの渦22cが形成される。即ち、溝部4cに流入する液体は直前に形成された渦21cを打ち消すように作用してこれを破壊して消滅させ、溝部4c内に逆方向に回転する渦22cが発達する。
【0060】
その直後に内容物8が矢印B1の方向に移動すると、上記と同様に溝部4c内に渦21cが形成される。即ち、溝部4cに流入する液体は直前に形成された渦22cを打ち消すように作用してこれを破壊して消滅させ、溝部4c内に逆方向に回転する渦21cが発達する。以降、これらの動作が繰り返される。
【0061】
渦21c、22cが破壊されて消滅する際には液体に大きなせん断力が発生する。溝部4cは複数段にわたって設けられるため、液体は各溝部4cで大きなせん断力が加わって攪拌される。このため、分離液状ドレッシング10を振る力や回数が少ない場合であっても水相部と油相部とが極めて細かく分散してエマルション状態に近い状態の分散液を作成することができる。
【0062】
本実施形態によると、外筒2の内周面2bに軸方向に周期Tで並設される溝部4cを設けたので、攪拌用容器1を軸方向に振ることによって溝部4c内に渦21c形成される。このため、直前に形成された回転方向が逆方向の渦22cが破壊されて液体に大きなせん断力が働く。従って、振る力や回数を少なくしても、分離液状ドレッシング10の内容物8を充分分散させることができる。その結果、女性、子供、高齢者等の力の弱い使用者の場合でも容易に攪拌することができる。
【0063】
また、溝部4cの幅Wと深さDとを略同じにすると内容物8を更に分散させることができる。外筒3の代表長さをLとして溝部4cの幅WをL/8以上L/2以下にすると、水溶性の液体やオイルを含む内容物に対して更に分散させることができる。また、溝部4cの側壁が軸方向に対して垂直な断面矩形に形成すると生成される渦の強度が強くなり、内容物8を更に分散させることができる。加えて、溝部4cの側壁は開放側の端部の曲率半径が1mm以下に形成されるので、内容物8を更に分散させることができる。
【0064】
尚、溝部4cが環状に形成されるが、外筒2の軸方向に所定の周期で並設されていれば螺旋状に形成してもよい。また、周期Tは一定でなくてもよい。
【0065】
次に、図13は第3実施形態の攪拌用容器を示す側面断面図である。説明の便宜上、前述の図1〜図12に示す第1、第2実施形態と同一の部分は同一の符号を付している。本実施形態は第1実施形態と同様の内筒3が設けられ、第2実施形態と同様の溝部4cが設けられる。その他の部分は第1実施形態と同様である。
【0066】
本実施形態によると、内筒3の外周面3a及び内周面3bに溝部4a、4bが形成され、外筒2の内周面2bに溝部4cが形成される。このため、第1、第2実施形態に比してより多くの溝部を設けることができ、溝部によって発生する渦も増加して液体にはより大きなせん断力が働く。従って、振る力や回数を少なくしても、分離液状ドレッシング10の内容物8を充分分散させることができる。
【0067】
また、内筒3の外周面3aの溝部4aと外筒2の内周面2bの溝部4cとが対向配置される。内筒3の外周面3aの陸部5a(図1参照)と溝部4cとが対向すると、外筒2と内筒3間を流通する液体は溝部4a、4cを蛇行して渦の形成が弱くなる。従って、溝部4a、4cを対向配置することにより、強い渦を発生させることができる。
【0068】
次に、図14は第4実施形態の攪拌用容器を示す側面断面図である。説明の便宜上、前述の図1〜図13に示す第1〜第3実施形態と同一の部分は同一の符号を付している。本実施形態は第3実施形態に加えて内筒3の内側に更に内筒9が設けられる。その他の部分は第3実施形態と同様である。
【0069】
内筒9は内筒3よりも小さい内径で、内筒3と同様の溝部4d、4eが外周面9a及び内周面9bにそれぞれ設けられる。内筒9の下端には内筒3の切欠き3c(図2参照)と同様の切欠き(不図示)が設けられる。
【0070】
本実施形態によると、第3実施形態に比して更に多くの溝部を設けることができ、溝部によって発生する渦も増加して液体にはより大きなせん断力が働く。従って、振る力や回数を少なくしても、分離液状ドレッシング10の内容物8を充分分散させることができる。
【0071】
また、内筒3の内周面3bの溝部4bと内筒9の外周面9aの溝部4dとが対向配置される。内筒3の内周面3bの陸部5b(図1参照)と溝部4dとが対向すると、内筒3、9間を流通する液体は溝部4c、4dを蛇行して渦の形成が弱くなる。従って、溝部4b、4dを対向配置することにより、強い渦を発生させることができる。
【0072】
尚、内容物8の粘性が比較的大きい場合には、流動性が悪くなって液体に働くせん断力が低下する場合がある。このため、比較的粘性の小さな内容物を選択するべきである。
【0073】
第1〜第4実施形態において、外筒2及び内筒3が円筒形に形成されるが、角柱形に形成してもよい。また、攪拌用容器1によって複数の液体から分散液を生成しているが、固体粒子の粉体と液体とを外筒2内に入れて分散液(懸濁液)を生成してもよい。また、溶質を溶媒に溶かす溶液生成手段として第1〜第4実施形態の攪拌用容器1を用いても同様の効果を得ることができる。
【0074】
また、攪拌用容器1は分離液状ドレッシング10の包装容器として用いられるが、他の包装容器として用いてもよい。例えば、攪拌用容器1を純水とオイル成分とを含む分離液状の化粧品の包装容器としてもよい。また、例えば難水溶性医薬品と生理食塩水とを含む医薬品の包装容器としてもよく、難水溶性医薬品を生理食塩水に溶解させるための溶解用容器としてもよい。この場合、難水溶性医薬品を生理食塩水に溶かすための溶解促進剤(アルコールや界面活性剤等の副作用のある物質)の使用量の減少させることや使用を無くすことができる。
【0075】
また、洗濯機における洗剤と水との混合を促進する洗剤の高度溶解装置に攪拌用容器1を用いてもよい。コーヒーの抽出などの固体に含まれる可溶成分の液媒体への抽出装置に攪拌用容器1を用いてもよい。液状二酸化炭素または超臨界二酸化炭素で物質抽出や溶解を行う装置での混合促進や、使用する溶解助剤(エントレーナ)と二酸化炭素の混合促進のために攪拌用容器1を用いてもよい。
【0076】
また、液体の混合だけでなく、牛乳からチーズやバターを分離して生成する場合のように、液体から固体を分離する成分分離過程に攪拌用容器1を用いてもよい。これにより、弱い力で効率的に攪拌することによって乳脂肪や蛋白質の良質な凝集・分離を促進することができる。
【0077】
以上の例に示すように、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の攪拌用容器によると、分離液状ドレッシングや化粧品の包装容器に利用することができる。また、洗剤の高度溶解装置、可溶成分の液媒体への抽出装置、液状二酸化炭素で物質抽出や溶解を行う装置に利用することができる。また、牛乳等の成分分離過程に利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 攪拌用容器
2 外筒
3、9 内筒
4a、4b、4c、4d、4e 溝部
6 蓋体
8 内容物
10 分離液状ドレッシング
21a、21b、21c、22a、22b、22c 渦
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液中に液体若しくは固体の粒子が分散した分散液を作ることのできる攪拌用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
分離液状ドレッシングの内容物は少なくとも油成分を含む油相部と酢などの水溶成分を含む水相部とが混合されており、包装容器内で油相部と水相部とが分離している。容器を振らずにそのまま使用すると上層の油相部だけが取り出されるため、予め包装容器をよく振って油相部と水相部とを混合して分散液として野菜等に振りかけていた。
【0003】
しかしながら、水相部と油相部とは混合しにくいため、分散液を形成するためには力強く振る必要がある。このため、女性、子供、高齢者等の力の弱い使用者の場合は扱いにくい問題があった。即ち、振り方が不十分な場合には上層の油相部だけが流出し、野菜等に振りかけられた分離液状ドレッシングが油っぽくなる。その結果、酢によってもたらされる酸味や香辛料が与える味が生かされなくなってしまう場合が生ずる。
【0004】
また、分離液状ドレッシングの内容物を分散した後に包装容器の蓋を開放するのに手間取ると、油相部と水相部とが分離し始める。これにより、上記と同様に上層の油相部だけが流出する問題がある。
【0005】
上記問題を解決するために、分離液状ドレッシングの内容物に乳化剤や安定剤等の添加剤を添加することが知られている。これにより、振る力や回数が少なくても分散液を生成して安定させることができる。しかし、分離液状ドレッシングの内容物に乳化剤を添加すると乳化してエマルション(乳濁液)が生成される。このため、乳化液状ドレッシングと区別される分離液状ドレッシング特有の風味が失われる。
【0006】
また、乳化剤や安定剤等の添加剤は化学薬品をベースとして生成される。これにより、美味しさが損なわれる場合や、昨今の健康ブームの趨勢においては健康安全面で消費者に避けられる場合が多くなる。
【0007】
一方、内部の液体に大きなせん断力を与えて分散液を生成する攪拌用容器を分離液状ドレッシングの包装容器として用いることが特許文献1に開示されている。この攪拌用容器は上端を開口した有底筒状の本体部を有し、本体部の上部の内周面に放射状の突起部が設けられる。本体部内は突起部の下方の第1チャンバと上方の第2チャンバとに仕切られる。
【0008】
分離液状ドレッシングの内容物は本体部内に入れられ、本体部を振ると第1チャンバ内の内容物が突起部に衝突する。分離液状ドレッシングの内容物は突起部との衝突によって大きなせん断力が与えられて第2チャンバに移動し、第2チャンバ内の空気が含まれる。これにより、エマルションに近い状態の分散液が生成され、第2チャンバ内の空気を含むことによって分散した状態を持続させることができる。
【0009】
また、特許文献2には他の攪拌用容器が開示されている。この攪拌用容器は容器内に捩れ方向の異なる2つの捩れ翼が上下に連結され、連結側の端面が交差している。分離液状ドレッシング等の被処理物は捩れ翼によって旋回して攪拌作用が増加するとともに、上下段に跨って流動する際に捩れ翼の端縁に衝突してせん断作用を受ける。これにより、少ない振動回数で分散液を生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−53582号公報(第3頁−第5頁、第2図)
【特許文献2】実開平2−150023号(第5頁−第9頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記特許文献1に開示された攪拌用容器によると、空気を入れておく第2チャンバを必要とするため内容量が小さくなる問題があった。また、特許文献2に開示された攪拌用容器によると、攪拌用容器は主に軸方向(長手方向)に振られるため液体が捩り翼の表面に斜め方向に衝突する。このため、被処理物が捩り翼に衝突した際の衝撃力が弱く、いぜんとして振る力や回数を多く必要とする問題があった。
【0012】
また、攪拌用容器を振ることにより、液体中に固体粒子を分散させた分散液(懸濁液)を生成することもでき、中に入れた液体から固体を分離させることもできる。これらの場合も上記と同様に、攪拌用容器を振る力や回数を多く必要とする問題があった。また、分離液状ドレッシングと同様に、攪拌して用いられる分離液状の化粧品や医薬品についても同様の問題がある。
【0013】
本発明は、内容量を小さくせずに振る力や回数を少なくして液体に大きな攪拌力を与えて分散や分離を行うことのできる攪拌用容器を提供することを目的とする。また、この攪拌用容器に入れられた分離液状ドレッシング、分離液状化粧品及び医薬品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明は、液体を入れて振ることにより、攪拌された液体の分散や分離を行う攪拌用容器において、上部に開口部を有する有底筒状の外筒と、前記開口部を塞ぐ着脱自在の蓋体と、前記外筒内に配される筒状の内筒とを備え、軸方向に所定周期で並設される溝部を前記内筒の内周面及び外周面の一方または両方に設け、前記溝部の軸方向の断面形状を矩形状にしたことを特徴としている。
【0015】
この構成によると、例えば、油相部を形成する液体と水相部を形成する液体とが攪拌用容器の外筒内に入れられ、蓋体で開口部が塞がれる。攪拌用容器を振ると内部の液体は内筒及び外筒に沿って上下に揺動する。内筒の内周面または外周面には螺旋状や環状に形成された溝部が軸方向に並設される。内筒に沿って流通する液体の一部は溝部内に流入し、溝部内に渦が形成される。攪拌用容器を軸方向に振ることにより回転方向が逆方向の渦が溝部内に形成されるため、直前の渦が破壊されて液体に大きなせん断力が働く。これにより、水相部と油相部の液体が分散してエマルションに近い状態の分散液が作成される。液体と粉体とを外筒内に入れて分散液(懸濁液)を作成する場合も同様である。
【0016】
また本発明は、液体を入れて振ることにより、攪拌された液体の分散や分離を行う攪拌用容器において、一端を開口して外装を形成する筒状の外筒と、前記開口を塞ぐ蓋体とを備え、軸方向に所定周期で並設される溝部を前記外筒の内周面に設け、前記溝部の軸方向の断面形状を矩形状にするとともに、前記溝部の幅と深さとを略同じにしたことを特徴としている。
【0017】
この構成によると、例えば、油相部を形成する液体と水相部を形成する液体とが攪拌用容器の外筒内に入れられ、蓋体で開口部が塞がれる。攪拌用容器を振ると内部の液体は外筒に沿って上下に揺動する。この時、外筒に沿って流通する液体の一部は溝部内に流入し、溝部内に渦が形成される。外筒を上下に振ることにより回転方向が逆方向の渦が溝部内に形成されるため、直前の渦が破壊されて液体に大きなせん断力が働く。これにより、水相部と油相部の液体が分散してエマルションに近い状態の分散液が作成される。
【0018】
また本発明は、上記構成の攪拌用容器において、前記溝部の側壁を軸方向に対して垂直に形成したことを特徴としている。
【0019】
また本発明は、上記構成の攪拌用容器において、前記溝部の側壁は開放側の端部の曲率半径が1mm以下に形成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、内筒もしくは外筒に軸方向に所定周期で並設される溝部を設けたので、攪拌用容器を軸方向に振ることによって回転方向が逆方向の渦が溝部内に形成され、直前の渦が破壊されて液体に大きなせん断力が働く。従って、振る力や回数を少なくしても、分離液状ドレッシング等の液体を充分分散させることや牛乳等の液体を充分分離させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態の攪拌用容器を示す正面断面図
【図2】本発明の第1実施形態の攪拌用容器の内筒を示す斜視図
【図3】本発明の第1実施形態の攪拌用容器を用いた分離液状ドレッシングを振った時の状態を説明する図
【図4】本発明の第1実施形態の攪拌用容器を用いた分離液状ドレッシングを振った時の状態を説明する図
【図5】図2のD部詳細図
【図6】図3のE部詳細図
【図7】本発明の第1実施形態の攪拌用容器の攪拌による分散の実験結果を示す図
【図8】本発明の第2実施形態の攪拌用容器を示す正面断面図
【図9】本発明の第2実施形態の攪拌用容器を用いた分離液状ドレッシングを振った時の状態を説明する図
【図10】本発明の第2実施形態の攪拌用容器を用いた分離液状ドレッシングを振った時の状態を説明する図
【図11】図9のF部詳細図
【図12】図10のG部詳細図
【図13】本発明の第3実施形態の攪拌用容器を示す正面断面図
【図14】本発明の第4実施形態の攪拌用容器を示す正面断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は第1実施形態の攪拌用容器の正面断面図を示している。攪拌用容器1は分離液状ドレッシング10(図3参照)の包装容器になっている。攪拌用容器1は上面に開口部2aが形成される有底筒状の外筒2を有している。外筒2はガラスやポリエチレンテレフタラート(PET)等の透明材料により形成され、内部を視認可能になっている。開口部2aは外筒2に螺合される着脱自在の蓋体6によって塞がれる。蓋体6はポリプロピレン等の樹脂成形品から成っている。
【0023】
外筒2内には筒状の内筒3が配されている。図2は内筒3の斜視図を示している。内筒3はポリエチレンテレフタラート(PET)等の透明樹脂により形成され、内部を視認可能になっている。内筒3の外周面3a及び内周面3bには複数の環状の溝部4a、4bが内筒3の軸方向に周期的に並設されている。
【0024】
溝部4a、4bは薄肉に形成される内筒3の周壁を屈曲して形成され、共通の側壁を有している。即ち、外周面3aの溝部4a間の陸部5aの裏面に内周面3bの溝部4bが形成され、内周面3bの溝部4b間の陸部5bの裏面に外周面3aの溝部4aが形成される。これにより、容易に溝部4a、4bを形成することができる。尚、溝部4a、4bは幅Wが5mm、深さDが5mm、周期Tが10mmで形成されている。
【0025】
内筒3は外筒2の底面に接して配され、内筒3の下端には切欠き3cが設けられる。切欠き3cによって攪拌用容器1の下部で内筒3の外側と内側とを連通させる連通部が構成されている。これにより、外筒2の内部の液体が内筒3の内外を容易に行き来する。内筒3に設けた貫通孔によって連通部を形成してもよい。また、外筒2の底面に対して内筒3を離して配置し、内筒3の下方に連通部を形成してもよい。
【0026】
外筒2内には所定の内容物8(図3参照)が入れられ、攪拌用容器1を包装容器とする分離液状ドレッシング10(図3参照)が得られる。分離液状ドレッシング10の内容物8は酢を主成分とした液体から成る酸性の水相部と、オイルを主成分とした液体から成る油相部とを有している。水相部の液体は酢の他に酸味料、清水、食塩、糖類、スパイス類、果汁、しょうゆ等が目的とする製品の用途に合わせて適宜加えられる。油相部の液体はサラダ油等のオイルに加え、必要に応じて油溶性のスパイス類を溶解して用いられる。水相部と油相部との体積比は通常、1:9〜9:1になっている。
【0027】
分離液状ドレッシング10の内容物8は一定期間連続して放置状態が続くと水相部と油相部とが分離する。このため、使用する際には使用者によって攪拌用容器1を振ることにより内容物8を混合撹拌する。これにより、内容物8の二相を分散させて分散液にしてから食品等に振り掛けられる。
【0028】
図3、図4は分離液状ドレッシング10を振った時の状態を説明する図である。分離液状ドレッシング10を長手方向に振ると、上方に移動させる期間と下方に移動させる期間とが交互に繰り返される。分離液状ドレッシング10が矢印A1に示すように上方に移動すると内容物8は慣性力を受けて矢印B1に示すように下方に移動する。また、分離液状ドレッシング10が矢印A2に示すように下方に移動すると内容物8は矢印B2に示すように上方に移動する。
【0029】
図5、図6はそれぞれ図3のD部詳細図及び図4のE部詳細図になっている。内容物8が矢印B1の方向に移動すると、図5に示すように内筒3の外周面3a及び内周面3bに沿って流通する液体は溝部4a、4b内に流入する。これにより、溝部4a内には図中、反時計回りに回転する渦21aが形成され、溝部4b内には図中、時計回りに回転する渦21bが形成される。
【0030】
その直後に内容物8が矢印B2の方向に移動すると、図6に示すように、溝部4a内には図中、時計回りの渦22aが形成される。また、溝部4b内には図中、反時計回りの渦22bが形成される。即ち、溝部4aに流入する液体は直前に形成された渦21aを打ち消すように作用してこれを破壊して消滅させ、溝部4a内に逆方向に回転する渦22aが発達する。同様に、溝部4bに流入する液体は直前に形成された渦21bを打ち消すように作用してこれを破壊して消滅させ、溝部4b内に逆方向に回転する渦22bが発達する。
【0031】
その直後に内容物8が矢印B1の方向に移動すると、上記と同様に溝部4a、4b内に渦21a、21bが形成される。即ち、溝部4aに流入する液体は直前に形成された渦22aを打ち消すように作用してこれを破壊して消滅させ、溝部4a内に逆方向に回転する渦21aが発達する。同様に、溝部4bに流入する液体は直前に形成された渦22bを打ち消すように作用してこれを破壊して消滅させ、溝部4b内に逆方向に回転する渦21bが発達する。以降、これらの動作が繰り返される。
【0032】
渦21a、21b、22a、22bが破壊されて消滅する際には液体に大きなせん断力が発生する。溝部4a、4bは複数段にわたって設けられるため、液体は各溝部4a、4bで大きなせん断力が加わって攪拌される。このため、分離液状ドレッシング10を振る力や回数が少ない場合であっても水相部と油相部とが極めて細かく分散してエマルション状態に近い状態の分散液を作成することができる。
【0033】
図7(a)〜(k)は、攪拌用容器1の攪拌による分散の効果を可視化するための実験結果を示す図である。各図において右側は本実施形態の攪拌用容器1を示し、左側は比較のため内筒3を省いた状態を示している。攪拌用容器1内の液体は水相部として水道水を用いるとともに油相部として市販のオリーブオイルを用い、水相部と油相部との体積比を1:1にしている。
【0034】
図7(a)は攪拌前の状態を示している。図7(b)は軸方向の振幅を10cmとして攪拌用容器1を10回振って攪拌した直後の状態を示している。図7(c)〜(k)は攪拌用容器1を攪拌してから15秒後、30秒後、60秒後、90秒後、120秒後、150秒後、180秒後、10分後、20分後の様子をぞれぞれ示している。
【0035】
攪拌用容器1の攪拌直後では本実施形態及び比較例共に液体が分散した状態になっている。比較例では攪拌後15秒が経過すると水相部と油相部の分離が開始され、180秒後にはほぼ完全に二相に分離した。これに対し、本実施形態の攪拌用容器1では攪拌後20分が経過しても水相部と油相部の分離が開始されていない。即ち、混濁復帰時間が本実施形態により著しく増加した。
【0036】
また、内部の液体の粒径ついて調べると、本実施形態では非常に細かい粒径であったのに対して比較例では比較的大きな粒径になっていた。比較例の攪拌用容器1を更に3倍以上の時間をかけて攪拌を行ったが液体の粒径は細かくならず、混濁復帰時間もほとんど延長しなかった。
【0037】
以上の結果より、本実施形態の攪拌用容器1は内部の液体に与えるせん断力が大幅に増加して強い混合攪拌が得られていることが解る。これにより、エマルションに近いクリーミーな状態の分散液が容易に生成される。
【0038】
本実施形態によると、内筒3の外周面3a及び内周面3bに軸方向に周期Tで並設される溝部4a、4bを設けたので、攪拌用容器1を軸方向に振ることによって溝部4a、4b内に渦21a、21b形成される。このため、直前に形成された回転方向が逆方向の渦22a、22bが破壊されて液体に大きなせん断力が働く。従って、振る力や回数を少なくしても、分離液状ドレッシング10の内容物8を充分分散させることができる。その結果、女性、子供、高齢者等の力の弱い使用者の場合でも容易に攪拌することができる。
【0039】
尚、周期Tは一定でなくてもよい。また、内筒3の外周面3aの溝部4a及び内周面3bの溝部4bの一方を省いても同様に、内容物8に大きなせん断力を与えて内容物8を充分分散させることができる。内筒3の外周面3aの溝部4a及び内周面3bの溝部4bの両方を設けると、より多くの渦が形成されて内容物8を更に分散させることができる。
【0040】
また、内筒3の周壁を屈曲して溝部4a、4bを内筒3の内周面及び外周面に設け、内周側の溝部4bと外周側の溝部4aとが共通の側壁を有するので、内筒3の両面の溝部4a、4bを薄肉の樹脂成型品によって容易に形成することができる。これにより、外筒3の内部の内容積を大きく確保できる。
【0041】
また、内筒3の内側と外側とを連通させる切欠き3c(連通部)を下部に設けたので、内筒3の内側と外側とに存在する液体や液体に浮遊する固形物が連通部を介して互いに行き来する。連通部が設けられないと、内筒3の内側の液体に与えられるせん断力と外側の液体に与えられるせん断力とに差が生じて両者の分散度合いが異なる場合がある。連通部を設けることにより、内筒3の内外の物質が互いに行き来して分散度合いを平均化することができる。従って、よりクリーミーな分散液を生成することができる。
【0042】
また、本実施形態では溝部4a、4bの幅Wと深さDを5mmに形成している。溝部4a、4bの幅Wに対して深さDが著しく小さい場合や大きい場合は溝部4a、4b内に渦が生じにくくなる。このため、液体に働くせん断力が大幅に低下して充分分散させることができない。従って、溝部4a、4bの幅Wと深さDとを略同じにするとより望ましい。この時、溝部4a、4bの周期Tを幅Wの2倍にすると最も効率よく溝4a、4bを配置することができる。
【0043】
溝部4a、4bの幅W及び深さDは内容物8の粘性に応じて適切な長さが選択される。即ち、内容物の粘性が比較的小さい場合には溝部4a、4bの幅W及び深さDは比較的小さい方が望ましい。内容物の粘性が比較的大きい場合には溝部4a、4bの幅W及び深さDは比較的大きい方が望ましい。
【0044】
本実施形態では内容物8が酢とオイルとを含み、溝部4a、4bの幅Wを5mmに形成して充分分散させることができる。このため、溝部4a、4bの幅Wを5mm以上にすると、水溶性の液体やオイルを含む内容物に対して充分分散させることができる。
【0045】
例えば内容物8にゴマや玉ねぎの破砕物等の固形物が含まれる場合には、これらが溝部4a、4bに詰まって渦21a、21b、22a、22bの生成が妨げられる。このため、溝部4a、4bの幅Wは少なくとも固形物の大きさの2〜3倍程度にすべきである。但し、溝部4a、4bの幅Wを必要以上に大きくすると、内筒3に形成される溝部4a、4bの数が減少する。これにより、生成される渦21a、21b、22a、22bの数も減少してせん断力が低下する。このため、分離液状ドレッシング10等の固形物が含まれる場合には、溝部4a、4bの幅Wは固形物が詰まらない程度の大きさを確保できる範囲のうち最小にすべきである。
【0046】
また、内容物8に固形物が含まれない場合には、溝部4a、4bの深さD及び幅Wを5mm以下にしてもよい。尚、上下する流体の流路の間隔、溝部4a、4bの深さ、溝部4a、4bの幅Wを略同一にすると最も効率がよい。流路の間隔が広すぎる場合には、せん断力を流体に付与する領域の全体に対する割合が小さくなるため、せん断力を効率的に与えることができなくなる。よって、流路の間隔が広すぎる場合には、内筒を必要に応じて2重、3重等の多重にして流路の間隔(陸部と陸部の隙間)と溝部の深さ、溝部の幅が略同一になるように調整すべきである。
【0047】
分離液状ドレッシング10の包装容器では溝部4a、4bの深さD及び幅Wを5mm程度にすると良好であり、10mm程度までは十分な効果が得られる。10mm以上にすると、溝部4a、4bの数が減少するため望ましくない。これらは、分離液状ドレッシング10の攪拌用容器の断面が直径60mmの円の場合の結果である。この場合、外筒2の内周面と内筒3の外周面3aの陸部5aの間隔が10mm、溝部4a、4bの深さが10mm、内筒3の内周面3bの陸部5bと内筒3の中心までの距離が10mmとなり、最も効率的な配置が可能となる。
【0048】
即ち、外筒2の断面にかかる代表長さをLとして、溝部4a、4bの幅W、溝部4a、4bの深さD、外筒2の内周面と内筒3の外周面3aの陸部5aとの距離をそれぞれL/6程度にすると効率的な配置になる。ここで、代表長さLは断面が円の場合は直径、断面が矩形の場合は一辺の長さになる。また、これらをL/8以上程度に設定すれば高い効果が得られる。
【0049】
また、溝部4a、4bの幅WをL/2よりも大きくすると、溝部4a、4bの幅Wと深さDを略同一にできない。このため、溝部4a、4bに生成される渦21a、21b、22a、22bが楕円になるため渦の生成効率が低下するか、渦の強度が弱くなる。更に、内筒3に形成される溝部4a、4bの数が減少して生成される渦の数も減少し、せん断力が低下する。従って、溝部4a、4bの幅WをL/8以上L/2以下にするとよい。
【0050】
また、溝部4a、4bは側壁が傾斜した断面V字型やアーチ型に形成してもよいが、本実施形態のように溝部4a、4bの側壁が軸方向に対して垂直な断面矩形に形成するとより望ましい。即ち、溝部4a、4bの側壁が軸方向に対して垂直であるため、内容物8の軸方向の往復運動に随伴する液体の流れと、溝部4a、4bの側壁とが垂直になる。これにより、液体の流れが溝部4a、4bの側壁で効率よく剥離して溝部4a、4bに流体が効率よく回り込む。このため、溝部4a、4bの中に強い渦を効率よく生成することができる。生成される渦の強度が強いほど液体に対して与えるせん断が大きくなるため、内容物8を更に分散させることができる。
【0051】
また、溝部4a、4bの側壁は開放側の端部の曲率半径が大きいと液体の流れが円滑に溝部4a、4b内に流入して強い渦が生成されない。このため、溝部4a、4bの側壁は開放側の端部の曲率半径が1mm以下に形成される。これにより、液体の流れがより効率よく剥離して強い渦を発生させることができ、内容物8を更に分散させることができる。
【0052】
外筒2はガラスやポリエチレンテレフタラート(PET)等の透明材料から成るので、容易に内容物8の攪拌状態を確認することができる。内筒3がポリエチレンテレフタラート(PET)等の透明樹脂から成るので内容物8の攪拌状態をより詳細に確認することができる。外筒2や内筒3は少なくとも一部が透明であればよく、内容物8に対して影響がなければ成形が容易なポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等を用いてもよい。また、撹拌状態を確認する必要がなければ陶磁器等のセラミック材料や金属材料を用いてもよい。
【0053】
尚、溝部4a、4bが環状に形成されるが、内筒3の軸方向に所定の周期で並設されていれば螺旋状に形成してもよい。
【0054】
次に、図8は第2実施形態の攪拌用容器を示す側面断面図である。説明の便宜上、前述の図1〜図7に示す第1実施形態と同一の部分は同一の符号を付している。本実施形態は第1実施形態の内筒3が省かれ、外筒2の内周面2bに複数の環状の溝部4cが軸方向に所定の周期で並設されている。その他の部分は第1実施形態と同様である。
【0055】
外筒2はポリエチレンテレフタラート(PET)等の透明樹脂により形成されている。これにより、攪拌状態を容易に視認できる。内容物8(図9参照)に対して影響がなければポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等を用いてもよい。内部の視認の必要がない場合は不透明な材料により外筒2を形成してもよい。溝部4cは外筒2と同時成形によって形成され、幅Wが5mm、深さDが5mm、周期Tが10mmで形成されている。
【0056】
外筒2内には第1実施形態と同様の内容物8(図9参照)が入れられ、攪拌用容器1を包装容器とする分離液状ドレッシング10(図9参照)が得られる。
【0057】
図9、図10は分離液状ドレッシング10を振った時の状態を説明する図である。分離液状ドレッシング10を長手方向に振ると、上方に移動させる期間と下方に移動させる期間とが交互に繰り返される。分離液状ドレッシング10が矢印A1に示すように上方に移動すると内容物8は慣性力を受けて矢印B1に示すように下方に移動する。また、分離液状ドレッシング10が矢印A2に示すように下方に移動すると内容物8は矢印B2に示すように上方に移動する。
【0058】
図11、図12はそれぞれ図9のF部詳細図及び図10のG部詳細図になっている。内容物8が矢印B1の方向に移動すると、図11に示すように外筒2の内周面2bに沿って流通する液体は溝部4c内に流入する。これにより、溝部4c内には図中、時計回りに回転する渦21cが形成される。
【0059】
その直後に内容物8が矢印B2の方向に移動すると、図12に示すように、溝部4c内には図中、反時計回りの渦22cが形成される。即ち、溝部4cに流入する液体は直前に形成された渦21cを打ち消すように作用してこれを破壊して消滅させ、溝部4c内に逆方向に回転する渦22cが発達する。
【0060】
その直後に内容物8が矢印B1の方向に移動すると、上記と同様に溝部4c内に渦21cが形成される。即ち、溝部4cに流入する液体は直前に形成された渦22cを打ち消すように作用してこれを破壊して消滅させ、溝部4c内に逆方向に回転する渦21cが発達する。以降、これらの動作が繰り返される。
【0061】
渦21c、22cが破壊されて消滅する際には液体に大きなせん断力が発生する。溝部4cは複数段にわたって設けられるため、液体は各溝部4cで大きなせん断力が加わって攪拌される。このため、分離液状ドレッシング10を振る力や回数が少ない場合であっても水相部と油相部とが極めて細かく分散してエマルション状態に近い状態の分散液を作成することができる。
【0062】
本実施形態によると、外筒2の内周面2bに軸方向に周期Tで並設される溝部4cを設けたので、攪拌用容器1を軸方向に振ることによって溝部4c内に渦21c形成される。このため、直前に形成された回転方向が逆方向の渦22cが破壊されて液体に大きなせん断力が働く。従って、振る力や回数を少なくしても、分離液状ドレッシング10の内容物8を充分分散させることができる。その結果、女性、子供、高齢者等の力の弱い使用者の場合でも容易に攪拌することができる。
【0063】
また、溝部4cの幅Wと深さDとを略同じにすると内容物8を更に分散させることができる。外筒3の代表長さをLとして溝部4cの幅WをL/8以上L/2以下にすると、水溶性の液体やオイルを含む内容物に対して更に分散させることができる。また、溝部4cの側壁が軸方向に対して垂直な断面矩形に形成すると生成される渦の強度が強くなり、内容物8を更に分散させることができる。加えて、溝部4cの側壁は開放側の端部の曲率半径が1mm以下に形成されるので、内容物8を更に分散させることができる。
【0064】
尚、溝部4cが環状に形成されるが、外筒2の軸方向に所定の周期で並設されていれば螺旋状に形成してもよい。また、周期Tは一定でなくてもよい。
【0065】
次に、図13は第3実施形態の攪拌用容器を示す側面断面図である。説明の便宜上、前述の図1〜図12に示す第1、第2実施形態と同一の部分は同一の符号を付している。本実施形態は第1実施形態と同様の内筒3が設けられ、第2実施形態と同様の溝部4cが設けられる。その他の部分は第1実施形態と同様である。
【0066】
本実施形態によると、内筒3の外周面3a及び内周面3bに溝部4a、4bが形成され、外筒2の内周面2bに溝部4cが形成される。このため、第1、第2実施形態に比してより多くの溝部を設けることができ、溝部によって発生する渦も増加して液体にはより大きなせん断力が働く。従って、振る力や回数を少なくしても、分離液状ドレッシング10の内容物8を充分分散させることができる。
【0067】
また、内筒3の外周面3aの溝部4aと外筒2の内周面2bの溝部4cとが対向配置される。内筒3の外周面3aの陸部5a(図1参照)と溝部4cとが対向すると、外筒2と内筒3間を流通する液体は溝部4a、4cを蛇行して渦の形成が弱くなる。従って、溝部4a、4cを対向配置することにより、強い渦を発生させることができる。
【0068】
次に、図14は第4実施形態の攪拌用容器を示す側面断面図である。説明の便宜上、前述の図1〜図13に示す第1〜第3実施形態と同一の部分は同一の符号を付している。本実施形態は第3実施形態に加えて内筒3の内側に更に内筒9が設けられる。その他の部分は第3実施形態と同様である。
【0069】
内筒9は内筒3よりも小さい内径で、内筒3と同様の溝部4d、4eが外周面9a及び内周面9bにそれぞれ設けられる。内筒9の下端には内筒3の切欠き3c(図2参照)と同様の切欠き(不図示)が設けられる。
【0070】
本実施形態によると、第3実施形態に比して更に多くの溝部を設けることができ、溝部によって発生する渦も増加して液体にはより大きなせん断力が働く。従って、振る力や回数を少なくしても、分離液状ドレッシング10の内容物8を充分分散させることができる。
【0071】
また、内筒3の内周面3bの溝部4bと内筒9の外周面9aの溝部4dとが対向配置される。内筒3の内周面3bの陸部5b(図1参照)と溝部4dとが対向すると、内筒3、9間を流通する液体は溝部4c、4dを蛇行して渦の形成が弱くなる。従って、溝部4b、4dを対向配置することにより、強い渦を発生させることができる。
【0072】
尚、内容物8の粘性が比較的大きい場合には、流動性が悪くなって液体に働くせん断力が低下する場合がある。このため、比較的粘性の小さな内容物を選択するべきである。
【0073】
第1〜第4実施形態において、外筒2及び内筒3が円筒形に形成されるが、角柱形に形成してもよい。また、攪拌用容器1によって複数の液体から分散液を生成しているが、固体粒子の粉体と液体とを外筒2内に入れて分散液(懸濁液)を生成してもよい。また、溶質を溶媒に溶かす溶液生成手段として第1〜第4実施形態の攪拌用容器1を用いても同様の効果を得ることができる。
【0074】
また、攪拌用容器1は分離液状ドレッシング10の包装容器として用いられるが、他の包装容器として用いてもよい。例えば、攪拌用容器1を純水とオイル成分とを含む分離液状の化粧品の包装容器としてもよい。また、例えば難水溶性医薬品と生理食塩水とを含む医薬品の包装容器としてもよく、難水溶性医薬品を生理食塩水に溶解させるための溶解用容器としてもよい。この場合、難水溶性医薬品を生理食塩水に溶かすための溶解促進剤(アルコールや界面活性剤等の副作用のある物質)の使用量の減少させることや使用を無くすことができる。
【0075】
また、洗濯機における洗剤と水との混合を促進する洗剤の高度溶解装置に攪拌用容器1を用いてもよい。コーヒーの抽出などの固体に含まれる可溶成分の液媒体への抽出装置に攪拌用容器1を用いてもよい。液状二酸化炭素または超臨界二酸化炭素で物質抽出や溶解を行う装置での混合促進や、使用する溶解助剤(エントレーナ)と二酸化炭素の混合促進のために攪拌用容器1を用いてもよい。
【0076】
また、液体の混合だけでなく、牛乳からチーズやバターを分離して生成する場合のように、液体から固体を分離する成分分離過程に攪拌用容器1を用いてもよい。これにより、弱い力で効率的に攪拌することによって乳脂肪や蛋白質の良質な凝集・分離を促進することができる。
【0077】
以上の例に示すように、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の攪拌用容器によると、分離液状ドレッシングや化粧品の包装容器に利用することができる。また、洗剤の高度溶解装置、可溶成分の液媒体への抽出装置、液状二酸化炭素で物質抽出や溶解を行う装置に利用することができる。また、牛乳等の成分分離過程に利用することができる。
【符号の説明】
【0079】
1 攪拌用容器
2 外筒
3、9 内筒
4a、4b、4c、4d、4e 溝部
6 蓋体
8 内容物
10 分離液状ドレッシング
21a、21b、21c、22a、22b、22c 渦
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を入れて振ることにより、攪拌された液体の分散や分離を行う攪拌用容器において、上部に開口部を有する有底筒状の外筒と、前記開口部を塞ぐ着脱自在の蓋体と、前記外筒内に配される筒状の内筒とを備え、軸方向に所定周期で並設される溝部を前記内筒の内周面及び外周面の一方または両方に設け、前記溝部の軸方向の断面形状を矩形状にしたことを特徴とする攪拌用容器。
【請求項2】
液体を入れて振ることにより、攪拌された液体の分散や分離を行う攪拌用容器において、一端を開口して外装を形成する筒状の外筒と、前記開口を塞ぐ蓋体とを備え、軸方向に所定周期で並設される溝部を前記外筒の内周面に設け、前記溝部の軸方向の断面形状を矩形状にするとともに、前記溝部の幅と深さとを略同じにしたことを特徴とする攪拌用容器。
【請求項3】
前記溝部の側壁を軸方向に対して垂直に形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の攪拌用容器。
【請求項4】
前記溝部の側壁は開放側の端部の曲率半径が1mm以下に形成されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の攪拌用容器。
【請求項1】
液体を入れて振ることにより、攪拌された液体の分散や分離を行う攪拌用容器において、上部に開口部を有する有底筒状の外筒と、前記開口部を塞ぐ着脱自在の蓋体と、前記外筒内に配される筒状の内筒とを備え、軸方向に所定周期で並設される溝部を前記内筒の内周面及び外周面の一方または両方に設け、前記溝部の軸方向の断面形状を矩形状にしたことを特徴とする攪拌用容器。
【請求項2】
液体を入れて振ることにより、攪拌された液体の分散や分離を行う攪拌用容器において、一端を開口して外装を形成する筒状の外筒と、前記開口を塞ぐ蓋体とを備え、軸方向に所定周期で並設される溝部を前記外筒の内周面に設け、前記溝部の軸方向の断面形状を矩形状にするとともに、前記溝部の幅と深さとを略同じにしたことを特徴とする攪拌用容器。
【請求項3】
前記溝部の側壁を軸方向に対して垂直に形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の攪拌用容器。
【請求項4】
前記溝部の側壁は開放側の端部の曲率半径が1mm以下に形成されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の攪拌用容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図7】
【公開番号】特開2013−6629(P2013−6629A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−197032(P2012−197032)
【出願日】平成24年9月7日(2012.9.7)
【分割の表示】特願2008−101245(P2008−101245)の分割
【原出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月7日(2012.9.7)
【分割の表示】特願2008−101245(P2008−101245)の分割
【原出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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