説明

攪拌装置

【課題】高粘度流体を簡単な構造の攪拌翼を用いて良好な攪拌操作が実施できる攪拌装置を提供する。
【解決手段】攪拌翼3を備える攪拌軸2を回転駆動するサーボモータ4と、このサーボモータ4を支持する支持体5と、この支持体5を上下方向に移動操作する上下動用のサーボモータ31と、前記支持体5を上下方向に案内するガイド機構(上下案内部材22とリニアスリーブ15)および前記サーボモータ4と上下動用のサーボモータ31の作動を制御する制御手段35とで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーボモータを用いて攪拌翼を取付けた攪拌軸を正逆回転および上下動させて液体を効率よく攪拌する攪拌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、攪拌装置は多くの工業分野において、混合、分散、溶解、反応などいろいろな目的で使用されている。一般的に低レイノズル数域で攪拌翼にタービン翼を用いて攪拌すると、その攪拌翼の上下にドーナツリング状の未混合領域が発生することはよく知られている。このドーナツリング状の未混合領域を解消するには、多くの場合、ヘリカルリボン翼のような高粘度用の攪拌翼を用いる手段がとられている。一方、他の手段には、非定常攪拌によるものがある。
【0003】
非定常攪拌とは、攪拌翼を一定の方向に一定の速度で回転させて攪拌する定常攪拌とは異なる攪拌方式であり、攪拌翼の回転数や回転方向を変動させる方法や攪拌軸を上下運動させる方法などがある。この攪拌軸を回転させながら上下動させて液体を攪拌するものについては、例えば特許文献1によって知られているものがある。また、攪拌翼を正逆回転および上下運動させることによりドーナツリング状の未混合領域をたやすく解消できる技術については、非特許文献1によっても開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平8−108057号公報
【非特許文献1】伴 昌子、外4名、"非対称翼を用いた不等速攪拌の混合性能評価"、〔online〕、2005.9.28、名古屋工業大学 工学部 生命・物質工学教育類 化学工学講座 研究内容、〔平成18年5月30日検索〕 インターネット<URL:http://www.ach.nitech.ac.jp/chemeng/kakoken1.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
低レイノズル数域での流体を攪拌するには、汎用されるヘリカルリボン翼や近年開発された大型翼など複雑な形状を持つ攪拌翼を使用する必要がある。しかしながら、この種の攪拌翼は構造的に複雑であることから、コストが高くなるという問題点がある。また、前記従来の非定常攪拌方式によれば、攪拌性能を向上させることで効果的であるが、攪拌翼の回転方向の変動操作に際しては、往復方式による変動操作や予め設定された時間間隔での変動操作を行うことができず、任意の手段で自動的に操作することが困難である。
【0006】
また、前記特許文献1で知られる攪拌技術では、攪拌翼の上下移動と回転を同時に行うことができるが、その攪拌翼の上下移動は、攪拌軸に繋がる操作部で、溝カムにより回転と同時に行われる構成とされている。したがって、回転と上下動とは一定の条件で操作されると同時に、回転操作時に必ず攪拌翼が上下動することになるので、攪拌する流体の性状に応じて個別に操作することができないものである。しかも、構造上溝カムを用いているので、大きな攪拌力を必要とする装置に採用するにはコストアップが避けられない。さらに、攪拌翼の正逆回転を行わせる場合、カム機構に大きなトルクが働いて円滑な運動を確保しがたいという問題点もある。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、高粘度流体を簡単な構造の攪拌翼を用いて良好な攪拌、つまり短時間で攪拌処理が実施できる攪拌装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明による攪拌装置は、
攪拌翼を備える軸を回転駆動するサーボモータと、このサーボモータを支持する支持体と、前記攪拌翼を備える軸を上下方向に移動操作する上下動用アクチュエータと、前記サーボモータと上下動用アクチュエータの作動を制御する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
前記発明において、前記攪拌翼を備える軸は、前記サーボモータとともに支持体を介して前記上下動用アクチュエータにより上下方向に移動操作される構成であるのがよい(第2発明)。
【0010】
前記第1発明または第2発明において、前記支持体は、その支持体の両側で上下案内部材に摺動可能に支持され、攪拌槽から離れた位置で前記上下動用アクチュエータにより操作される上下移動作動部材に連結されて支持されている構成であるのがよい(第3発明)。また、前記上下動用アクチュエータは、サーボモータとされ、このサーボモータによりスクリュー軸を駆動して前記支持体を介し、攪拌軸を所要距離上下移動させる構成であるのがよい(第4発明)。
【0011】
次に、第5発明による攪拌装置は、
攪拌翼を備える軸を回転駆動するサーボモータと、前記攪拌翼を備える軸および前記サーボモータを支持する水平関節型の支持アームと、この支持アームを旋回運動させる駆動部およびその支持体と、前記支持アームを介して前記攪拌翼を備える軸を上下方向に移動操作する上下駆動機構および上下動用アクチュエータと、前記サーボモータと支持アームの旋回駆動部および前記上下動用アクチュエータの作動を制御する制御手段とを備えることを特徴とするものである。
【0012】
さらに、第6発明による攪拌装置は、
攪拌翼を備える軸が二重軸にされ、その外側になる中空軸に縦パドル型の攪拌翼が、中心軸に前記縦パドル型の攪拌翼の回転軌跡の内側で回転する攪拌翼が、それぞれ付設されるとともに、これら両軸をそれぞれ単独でサーボモータにより駆動するようにされ、前記中心軸を上下動用アクチュエータで上下方向に移動操作するようにされ、前記各サーボモータおよび上下動用アクチュエータの作動を制御する制御手段を備えることを特徴とするものである。
【0013】
前記第6発明において、前記パドル型の攪拌翼は、攪拌槽の内側面に近接した位置で回転するようにされ、その支持軸内を中心軸が上下摺動自在で回転自在に支持する構造とされるのがよい(第7発明)。
【発明の効果】
【0014】
第1発明によれば、攪拌翼を備える攪拌軸がサーボモータにより駆動され、その攪拌翼がサーボモータとともに所要範囲で上下動できるようにされ、制御手段によって前記サーボモータおよび上下動用アクチュエータを制御するように構成されているので、制御手段によって予め攪拌する流体の物性に応じた攪拌条件を設定することにより、サーボモータの特性を活用して回転および上下操作を任意に設定でき、効果的に流体の攪拌を行うことができる。したがって、複雑な構造の攪拌翼を用いなくとも有効に流体の攪拌効果が高められ、攪拌時間を短縮して作業能率の向上を図ることができるという効果を奏する。
【0015】
また、第5発明によれば、攪拌翼を備える軸(攪拌軸)を水平関節型の支持アームによって支持し、その攪拌軸をサーボモータによって駆動して、前記支持アームを別途駆動部からの動力を受けて予め設定したプログラムによって旋回操作すれば、攪拌槽内で攪拌翼を特定位置に留めることなく移動させて攪拌操作でき、さらに上下駆動機構と上下動用アクチュエータにより攪拌軸を上下動させることにより三次元的作動を行わせることができ、粘性の高い流体の攪拌でもより効果的に攪拌操作を行うことができるという効果を奏する。
【0016】
また、第6発明によれば、二種の攪拌翼を組合わせて流体の攪拌操作を行うことができ、加えてサーボモータによる駆動で各攪拌翼の作動を任意に設定できるから、構造的に簡単であるが従来にない複合された流体の攪拌が三次元的に行わせることができる。したがって、粘性の高い流体であってもより有効に攪拌することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、第1発明による攪拌装置の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1には第1発明に係る攪拌装置の一実施形態を表わす全体概要図が示されている。図2には図1のA−A視図が示されている。
【0019】
本実施形態の攪拌装置1は、主として高粘度の流体を取扱うものである。この攪拌装置1は、攪拌翼3を備える攪拌軸2と、この攪拌軸2を回転駆動するアクチュエータであるサーボモータ4と、このサーボモータ4を支持して上下動可能な支持体5と、その支持体5を上下動させる上下動用のアクチュエータであるサーボモータ31と、これら各機器を支持する支持機構10および前記両サーボモータ4,31の駆動を制御する制御手段35とで構成されている。
【0020】
前記攪拌軸2には、その先端に所要形式の攪拌翼3が運転時における常態で攪拌槽6内の中程所要深さ位置に挿入されるようにして先端部に付設されている。この攪拌軸2の後端は攪拌槽6上方で継手7によって着脱可能にサーボモータ4の出力軸4aと接続されている。
【0021】
前記サーボモータ4は、その軸線を垂直にして前記支持体5上に取付けられ、両側に配設されている支持機構10の上下案内部材11,11に沿って支持体5とともに上下移動できるようにされている。
【0022】
前記支持機構10は、前記サーボモータ4により駆動される攪拌軸2が挿入される攪拌槽6を前方位置から受入れ得る空間部を有して、その攪拌槽6の外側方位置に配設される一対の前記上下案内部材11,11と、前記攪拌槽6の後部位置で後述する支持体上下動用のアクチュエータ支持構造部13とを、ベース部材12上に前記各部材の下端を支持して上端部を頂部部材14によって一体的に取付けられて構成されている。そして、前記各部材は少なくとも前記攪拌軸2を攪拌槽6の外に引き上げるのに要する高さ寸法にして支持機構10が組立構成されている。
【0023】
前記支持体5は、前部中央上面にて前記サーボモータ4を支持し、そのサーボモータ4の支持部の両側で直立する前記上下案内部材11,11(この具体例では軸体)に係合する案内体(リニアブッシュ15)をそれぞれ備え、後方中間位置でスクリュー軸26に螺合する雌ねじ部片16が取付けられて、平面視三角形状に形成されている。そして、この支持体5は必要に応じて上下いずれかで補強された平板状で、前記雌ねじ部片16を上下動用アクチュエータにて駆動されるスクリュー軸26の回転で昇降されるようになされている。また、この支持体5の前記リニアブッシュ15,15の配置近傍には、それぞれカウンタバランス用ワイヤロープ19の尻手を固着して、前記支持機構10の頂部部材14にブラケット17を介して付設されるシーブ18を巡らせて前記ワイヤロープ19の先端にカウンタウエイト20を吊下げ、支持体5の上下動のバランスをとって円滑作動を図っている。
【0024】
前記上下動用アクチュエータには、サーボモータ31が使用され、このサーボモータ31は前記支持機構10の後部で両側に配置される二本ずつの縦部材22,22に両端部を支持されて水平に固定配置されたアクチュエータ支持構造部材23により軸線を垂直にして取付けられている。このサーボモータ31の出力軸31aは、カップリング32により軸心を合致させて前記スクリュー軸26の一端と接続されている。また、そのスクリュー軸26の他端は前記頂部部材14に付設の軸受27にて回転自在に支持されている。なお、図中符号28はスクリュー軸26の連結部側軸頸を支持する軸受ユニットである。前記スクリュー軸26にはボールスクリューを使用して、円滑に作動するようにするのが好ましい。
【0025】
前記攪拌軸駆動用のサーボモータ4および上下動用のサーボモータ31を制御する制御手段35は、攪拌のための制御演算部(図示せず)を内蔵した制御盤を別置き配置されたものである。この制御手段35によって前記攪拌軸駆動用のサーボモータ4の正逆回転速度、切換時間などの設定を、また上下動用のサーボモータ31の正逆回転および切換時間の設定で攪拌翼3の上下移動を行うことができる。そして、それらの組合せを予め設定したプログラムを演算部に記憶させて自動運転できるようにされる。
【0026】
このように構成される本実施形態の攪拌装置1は、所要の流体を注入された攪拌槽6に攪拌翼3を所定の位置になるように攪拌軸2を挿入し、取扱う流体の攪拌条件に対応する制御プログラムに基づいて運転を開始すると、サーボモータ4の駆動によって攪拌軸2が回転され、攪拌翼3により攪拌槽6内の流体がかき混ぜられる。ここで、攪拌翼3は、制御手段35で予め設定された制御プログラムによって攪拌軸駆動のサーボモータ4が作動されることにより、所要の時間経過ごとに正逆回転され、これに併せて上下動用サーボモータ31の作動によって攪拌翼3を回転させながら所要範囲で上下に往復作動される。なお、攪拌翼3を上下動させるには、上下動用サーボモータ31を駆動することにより、出力軸に連結されているスクリュー軸26と螺合の雌ねじ部片16を介して支持体5が上下方向に送られる。この支持体5はサーボモータ4が取付く位置の両側で、上下案内部材11,11にリニアスリーブ15,15が滑合して、かつその近傍でそれぞれカウンタウエイト20と繋がるカウンタバランス用ワイヤロープ19がつながれているから、円滑に追従して上下移動される。したがって、支持体5上のサーボモータ4にて駆動される攪拌軸2もともに上下移動して攪拌翼3を軸方向に移動させることができる。
【0027】
この実施形態の攪拌装置1は、攪拌翼3による流体のかき混ぜ操作の駆動機としてサーボモータ4(31)を採用することにより、高出力で、制御応答性がよく、所望の制御が行える特性を有効に活用することができる。しかも、攪拌翼3の回転駆動と上下動操作とを個別に制御できるように駆動源を別個にして構成したことで、取扱う流体の性状に応じた攪拌条件が任意に設定することが可能となった。したがって、攪拌翼3の回転をプログラムの設定で、例えば攪拌翼3の回転方向を一定とし、周期的に停止させる操作を行わせる、あるいは攪拌翼3の回転を周期的に一定方向に回転させて停止し、その後に逆方向に回転させるという操作を繰返す、さらに、前記攪拌翼3の回転操作に加えて上下方向に所要の距離移動させる操作を周期的に行わせる、などの非定常操作が任意に設定することができる。こうすることにより流体の不規則的なかき混ぜを行うことができ、粘性が高い流体の攪拌効果を高めることができるのである。言換えると、攪拌操作の時間を短縮することができる。
【0028】
次に、本発明に係る攪拌装置について、その作用効果を検証するために、実験を行い、混合時間を測定することで性能評価を行った。その結果を以下に記載する。
【0029】
(実施例)
図3に実験に用いる攪拌槽の概要図を示す。攪拌槽6には邪魔板なしのガラス製透明円筒槽(直径D=124mm,高さH=83mm)を用いた。攪拌液には水あめ水溶液を用いた。攪拌翼3としては6枚羽根ディスクタービン翼(直径d=70mm,高さb=14mm)を用い、液高さの中間に位置するように配置した。攪拌翼3の回転数は60〜300r.p.mとして、サーボモータで駆動した。混合時間の測定および混合過程の観察は、ヨウ素とチオ硫酸ナトリウムの反応による脱色法で行った。
さらに、設定条件として、回転方向の変動は表1に表わし、上下移動については表2に表し、回転方向の切換時間と上下移動の組合せについては表3に表わす、ようにそれぞれ設定した。
【表1】

【表2】

【表3】

【0030】
上述の設定条件による攪拌での混合性能を比較するために、レイノルズ数Reを変化させて混合時間tmを測定した。それぞれの条件において、ReとN・tmを両対数でプロットした攪拌特性曲線を、図4に攪拌翼が正回転の場合を、図5に攪拌翼が正逆回転の場合を、図6に攪拌翼が上下移動の場合を、そして図7に攪拌翼が正逆回転と上下移動を組合わせた場合を、それぞれ示している。
【0031】
まず、攪拌翼3の回転方向の変動について、図4および図5から切換時間2sでは、運転時間が短くなるほど、切換の頻度が多くなるので、混合時間は短くなった。しかし運転時間1sでは運転時間2sよりもN・tmが長くなった。これは運転時間よりも切換時間が長かったためと考えられる。切換時間0sについては運転時間1sがもっともN・tmが短くなった。しかし1回転の場合は、運転時間1sに較べてN・tmが長くなった。これは攪拌翼3からの吐出流量が小さいために十分な攪拌ができなかったためと考えられる。また低Reでは不等速攪拌よりも混合性能が良くなった。また、攪拌翼3が正回転のみと正逆回転とを比較すると、回転方向を変えることで混合性能が良くなることが判る。
【0032】
次に、攪拌翼3を回転させながら上下移動の場合について、図6から、上下移動距離3.0cmでは上下移動速度を大きくするにつれて混合性能が良くなったが、よりドーナツリング状の未混合領域が破壊され易くなるという予想に反して、攪拌翼3の上下移動に伴いそのドーナツリング状の未混合領域も上下移動した。ここで、上下移動距離3.0cmの最良の結果と比較すると、両者はほぼ同じになった。また、上下移動距離を4.0cm、5.0cmと長くすると、攪拌翼3が液面、槽底付近まで移動するので、ドーナツリング状の未混合領域は形成されず、混合性能はさらに良くなった。
【0033】
攪拌翼3の回転方向の切換時間と上下移動との組合せによる場合について、図7から、切換の頻度と攪拌翼の上下移動による相乗効果により、混合時間が短くなった。ここで、回転方向の変動、上下移動の結果と比較すると、例えば運転時間2s、上下移動距離3.0cmでは、切換時間や同じ移動距離の上下移動の結果よりも混合性能が良好になった。また、上下移動距離を長くすると、混合性能は最も混合性能の良かった不等速攪拌(攪拌翼が一回転する間に最大回転速度が平均回転速度の2倍、最小回転速度の0.5倍の値をとる)よりも良くなった。
【0034】
以上のことから、低レイノルズ数Reでは不等速攪拌よりも混合性能が良くなる。そして、回転方向の変動では混合性能を良くするには切換時間の頻度と回転方向の変動が混合性能を良くするのに重要になる。また、上下移動では上下移動速度と上下移動距離を大きくすることが混合性能を良くするのに重要である。このようなことから、切換頻度と攪拌翼の上下移動の相乗効果により、混合性能が他の混合条件よりも良いことが確認できた。
【0035】
前述の説明において、本実施形態の攪拌装置にあって、攪拌翼の上下移動用のアクチュエータには、サーボモータを用いたものについて記載したが、これに限定されることはなく、必要に応じて、サーボ制御機構を用いれば油圧シリンダを採用すること、あるいはサーボモータとリンク機構の組合せによることも可能である。また、攪拌翼の形状については、前記実施形態によるものに限定されるものではなく、取扱う流体の性状に応じて最適な形式のものを選択使用することができる。
【0036】
次に、図8には第5発明に係る攪拌装置の一実施形態を表わす概要図(a)と平面視図(b)が示されている。
【0037】
この実施形態の攪拌装置1Aは、先端に攪拌翼3Aを備えた攪拌軸2Aが水平多関節型の支持アームの先端部にて支持されて、攪拌槽6A内で攪拌軸2Aが回転しながら平面移動自在なように構成された形式の装置である。
【0038】
前記支持アーム40は、第1支持アーム41と第2支持アーム42とが水平回動可能な関節状に連結されてなり、その第1支持アーム41の基端部41aが、攪拌槽6Aから適宜距離で側方に離れた位置にて立設される支持台43の側面部に付設されて上下移動自在な支持フレーム44に支持されている。そして、この支持アーム40は、前記支持フレーム44にてモータ45(限定されないがサーボモータ使用)駆動によって所要回転角の範囲で水平旋回自在に支持されている。また、第1支持アーム41と第2支持アーム42との連結関節部では、サーボモータ46による駆動で第1支持アーム41に対して第2支持アーム42が水平回動するように構成されている。
【0039】
前記支持フレーム44は、高さ寸法が少なくとも前記攪拌槽6Aの上縁より高く形成された支持台43の側面部43aで上下方向に摺動するように付設されており、その上下動は支持台43の内部にて、例えば縦スクリュー軸44dにより前記支持フレーム44の基端部に設けられているブラケット44aに付設の雌ねじ片44bを介して上下動する構成とされ、この上下動に関連させてカウンターバランス機構(図示せず)が取付けられた上下駆動装置47を備えている。
【0040】
このように構成される支持アーム40の先端部(第2支持アーム42の先端部)には前記攪拌軸2Aが軸受機構(図示せず)により回転自在で垂直に支持されており、サーボモータ48により動力伝達機構(図示せず)を介して駆動される。なお、前記サーボモータ48は、前記支持アーム40の関節部に配置して、前記攪拌軸2Aの上部に付設される伝導車と巻掛け伝導でその攪拌軸2Aを回転駆動するようになっている。あるいは前記攪拌軸2Aはサーボモータと直結されて回転駆動するようにしてもよい。
【0041】
このように構成される攪拌装置1Aにおいては、前述の実施形態と同様に、別途設置の制御装置(図示せず)にて、予め用意された制御プログラムにより、各サーボモータ45,46,48および他の駆動機の作動を制御するようにして、被攪拌溶液の物性などに応じて攪拌翼3Aの回転速度やその攪拌軸2Aを攪拌槽6A内で支持アーム40を変位させて、攪拌翼3Aを遊星運動させることにより、攪拌能力を高めることができる。このような運転操作についてはサーボモータの特性をフルに活用することで、従来予測され得なかった攪拌性能の向上を図ることができるのである。したがって、高粘性液の攪拌についても、その粘度などに応じて定位置での攪拌翼3Aの回転にこだわらず、攪拌位置を変更して攪拌混合操作ができ、併せて攪拌軸を上下動させることにより三次元的かき混ぜ作用を加えて効率よく攪拌を行うことができる。
【0042】
前記実施形態では、攪拌翼3Aの上下動を行わせるのに、支持台43に付設した支持フレーム44を上下動させて、この支持フレーム44に基端部を取付けられた支持アーム40がともに上下移動し、攪拌軸2Aを介し攪拌翼3Aが上下動される構成について記載したが、これに限定されるものではなく、図示省略するが、支持アーム40上に上下動する機構を設けて攪拌軸2Aが支持される部分で上下動させるようにするなど他の方式も採用することができる。
【0043】
図9には第6発明に係る攪拌装置の一実施形態の概要を表わす縦断面図が示されている。この実施形態の攪拌装置1Bは、縦パドル型の攪拌翼51と横向きの攪拌翼52とをそれぞれ独立して回転駆動するように構成された複合型のものである。
【0044】
この攪拌装置1Bでは、攪拌槽6Bの上部を覆う蓋体の中央部にペデスタル55を配置して、このペデスタル55上部に攪拌機50の軸受部54が設置されており、その軸受部54で支持されて複合型の攪拌機50が攪拌槽6B内に回転自在に垂設されている。
【0045】
前記攪拌機50は、攪拌槽6Bの内周壁面6bと適宜間隔をもって回転自在に設けられる二枚の縦向きのパドル型攪拌翼51(以下、単に「外側パドル51」という。)と、この外側パドル51の回転軌跡の内側で回転自在に設けられる横向きの攪拌翼52とが複合形成されたものである。なお、前記横向きの攪拌翼52としては、横向きで傾斜角を備えるパドルまたはプロペラ型の羽根もしくはタービン翼などのうちいずれかが選択できる。そして、その横向きの攪拌翼52は例えば上下二段に配置した構造とすることができる。なお、この実施形態では横向きのパドルを上下二段に配した構成のものが用いられている(以下、「内側パドル52」という。)。
【0046】
このような攪拌機50の前記外側パドル51と内側パドル52とは、前記軸受部によって支持される二重軸型の攪拌軸53における中心軸53aに内側パドル52が取付けられ、外嵌する管状軸53bの下端に外側パドル51の基部が取付けられている。その外側パドル51は、基部から左右両側にアーム部51aが張り出し、その各アーム部51aの先端から下向きに所要長さで設定された幅のパドル部51bがそれぞれ攪拌槽6Bの内壁面6bと所要の間隔をもって垂下するようにして対称に配されている。この外側パドル51に対して内側パドル52は、中心軸53aの下端部とその適宜距離離れた上部位置とに配設されている。そして、その内側パドル52は、所要幅のパドルを放射状に少なくとも二枚、所要の傾斜角をもって基端が攪拌軸(中心軸53a)に取付けられている。
【0047】
また、前記内外両側のパドル51,52を支持する攪拌軸53(53a,53b)とその駆動は、外側パドル51の攪拌軸(管状軸53b)が定位置で軸受部54に支承され、この攪拌軸(管状軸53b)に取付く伝導車を前記ペデスタル55に支持される外側パドル51駆動用のサーボモータ56から巻掛け伝導手段57(例えば伝導チェーン)により回転駆動される。また、内側パドル52の攪拌軸(中心軸53a)は、軸受部54と前記管状軸53bとで上下動可能に支承されて、モータ支持台58の頂部に付設された軸受部58aで定位置に保たれて中心軸53aに回転力を伝達するようにして支持される伝導車60に、前記モータ支持台58にて支持される内側パドル駆動用のサーボモータ59から巻掛け伝導手段57aで、回転駆動されるように構成されている。なお、前記両サーボモータ56,59は、いずれも減速機構を備えており別途設置の図示されない制御装置による制御信号で所要の回転速度で駆動される。
【0048】
さらに、前記内側パドル52の攪拌軸53aとその駆動用のサーボモータ59は、前記ペデスタル55に支持される図示されない駆動機(好ましくはサーボモータ)により上下方向に往復作動する昇降駆動機構(例えば、スクリュー軸による駆動、あるいは油圧シリンダなど、公知の往復作動機とガイド手段による。詳細は図示省略)により、内側パドル52を回転させながら所要距離上下動させるように構成されている。
【0049】
このように構成されるこの実施形態の攪拌装置1Bでは、取り扱う溶液の物性などにより制御装置における制御プログラムにより、サーボモータの特性を利用して攪拌機50の各パドル51,52の回転速度や内側パドル52の上下動のタイミングなどを設定することにより、外側パドル51の回転速度に対して内側パドル52の回転速度を高めるようにすれば、攪拌槽6B内での溶液全体の流動は外側パドル51の回転により行われ、内側パドル52の回転で槽中央部でのかき混ぜ作用が行われ、内外両パドル51,52の回転速度の異なりにより溶液全体がかき混ぜられるので、槽内に液の滞留箇所の発生を防止でき、攪拌混合効果を著しく高め得るのである。また、内側パドルにその回転に加えて上下動させることにより、槽内溶液の混合速度がさらに高められ、短時間で攪拌混合操作を行うことができるので、作業能率の向上を図ることができる。
【0050】
なお、この実施形態の攪拌装置において、前記構成に限定されるものではなく、必要に応じて攪拌翼の形状ならびに攪拌軸の駆動構造について任意変更可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】第1発明に係る攪拌装置の一実施形態を表わす全体概要図
【図2】図1のA−A視図
【図3】実験に用いる攪拌槽の概要図
【図4】攪拌翼が正回転の場合の攪拌特性を表わす図
【図5】攪拌翼が正逆回転の場合の攪拌特性を表わす図
【図6】攪拌翼が上下移動の場合の攪拌特性を表わす図
【図7】攪拌翼が正逆回転と上下移動を組合わせた場合の攪拌特性を表わす図
【図8】第5発明に係る攪拌装置の一実施形態を表わす概要図(a)と平面視図(b)
【図9】第6発明に係る攪拌装置の一実施形態の概要を表わす縦断面図
【符号の説明】
【0052】
1,1A,1B 攪拌装置
2,2A 攪拌軸
3,3A 攪拌翼
4,48 攪拌翼を駆動するサーボモータ
5 支持体
6,6A,6B 攪拌槽
10 支持機構
11 支持体の上下案内部材
13 アクチュエータ支持構造部
14 頂部部材
15 リニアスリーブ
16 雌ねじ部片
23 アクチュエータ支持構造部材
26 スクリュー軸
31 上下動用のサーボモータ
35 制御手段
40 支持アーム
43 支持台
44 支持フレーム
45 支持アーム旋回用のモータ
47 上下駆動装置
50 複合型の攪拌機
51 外側パドル
52 内側パドル
53 攪拌軸
55 ペデスタル
56 外側パドル駆動用のサーボモータ
59 内側パドル駆動用のサーボモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌翼を備える軸を回転駆動するサーボモータと、このサーボモータを支持する支持体と、前記攪拌翼を備える軸を上下方向に移動操作する上下動用アクチュエータと、前記サーボモータと上下動用アクチュエータの作動を制御する制御手段とを備えることを特徴とする攪拌装置。
【請求項2】
前記攪拌翼を備える軸は、前記サーボモータとともに支持体を介して前記上下動用アクチュエータにより上下方向に移動操作される構成である請求項1に記載の攪拌装置。
【請求項3】
前記支持体は、その支持体の両側で上下案内部材に摺動可能に支持され、攪拌槽から離れた位置で前記上下動用アクチュエータにより操作される上下移動作動部材に連結されて支持されている構成である請求項1または2に記載の攪拌装置。
【請求項4】
前記上下動用アクチュエータは、サーボモータとされ、このサーボモータによりスクリュー軸を駆動して前記支持体を介し、攪拌軸を所要距離上下移動させる構成である請求項1または2に記載の攪拌装置。
【請求項5】
攪拌翼を備える軸を回転駆動するサーボモータと、前記攪拌翼を備える軸および前記サーボモータを支持する水平関節型の支持アームと、この支持アームを旋回運動させる駆動部およびその支持体と、前記支持アームを介して前記攪拌翼を備える軸を上下方向に移動操作する上下駆動機構および上下動用アクチュエータと、前記サーボモータと支持アームの旋回駆動部および前記上下動用アクチュエータの作動を制御する制御手段とを備えることを特徴とする攪拌装置。
【請求項6】
攪拌翼を備える軸が二重軸にされ、その外側になる中空軸に縦パドル型の攪拌翼が、中心軸に前記縦パドル型の攪拌翼の回転軌跡の内側で回転する攪拌翼が、それぞれ付設されるとともに、これら両軸をそれぞれ単独でサーボモータにより駆動するようにされ、前記中心軸を上下動用アクチュエータで上下方向に移動操作するようにされ、前記各サーボモータおよび上下動用アクチュエータの作動を制御する制御手段を備えることを特徴とする攪拌装置。
【請求項7】
前記パドル型の攪拌翼は、攪拌槽の内側面に近接した位置で回転するようにされ、その支持軸内を中心軸が上下摺動自在で回転自在に支持する構造とされる請求項6に記載の攪拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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